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2006年10月05日

連作23 廉連作06 意外と単純な繰り返し

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 種別 連作系第23期 廉連作06
 題名 『 意外と単純な繰り返し 』
 初出 ニフティサーブ/FJAMEA/18番会議室
    1997年03月06日00時45分
 注釈 行頭スペース+30W
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SUBJ:【廉連作】06 意外と単純な繰り返し

 Sibi-Tem V.4.1

 廉直に清廉に 無心から始めるのもいい 廉連作 #06(B群)
 



        『 意外と単純な繰り返し 』


                        作:しびる





  ぼんやりと天井を眺める 身体中の力が抜けて 頭の芯に耳鳴り
 が響いている 静かに流れる空気はどこからか空調機の風 火照っ
 た体を冷風が舐めまわし どろんと目を閉じて深呼吸してみる
  さっきから同じフレーズはピアノの音 同じところで詰まってや
 り直し 何度も繰り返しその度に激しくなる もう飽きるかと聞い
 ていても また静かにやり直す 激昂するのに直向きさも兼ね備え
 ているのか でも こんな性格を しつこい性格って言うのだ

 『飽きないよね 3回無理だったことは できても偶然じゃない』
 『バカ言え 毎日の努力は偶然を必然にするんだ 丸見えだぞ』
  素っ裸でベッドに寝転がる 終われば終わりの動物と違って あ
 たしは余韻を楽しむ主義なのだ 丸見えはお互い様 なにを今更
 『ふみゅううん 朝起きてから初めての背伸びが襲ってきた なん
 か年々 起きてから背伸びまでの時間が長くなる 気のせいかな』
 『気のせいだろ さっき車で背伸びしてたじゃないか 同じことを
 言ってたぞ 一日に4時間以上寝る奴は おう おうおう』
  背伸びのついでに起き上がる シャワーでも浴び直そうと立ち上
 がるとドロリ 内股を流れる生暖かい粘液 元の持ち主に返そうと
 膝に座り込んで 自分の過敏な部分に無理矢理刺激を与えてみる
 『気持ちのいいことをするじゃないか もう少し練習させろよ 怠
 けてると先生に叱られるんだぜ ははん 20歳の小娘にさあ』
 『こんなふうに 怠けてますねっ 特にここっ お仕置きですよ』
  完全にだらけちゃっている さっきの勢いとは同じものには見え
 ない ピアノがある部屋を選んだのは やはりピアノが目的だった
 のだろう なにを考えてか30の手習い 秘密は小娘らしい
 『一生懸命な感じがいいぞ 先生らしく振舞おうとするほどに無理
 があってな 俺も生徒として頑張ろうって思うじゃないか』
 『ふうん だから練習するわけねえ 変な趣味 鈍臭い女がいいな
 ら あたしなんかすんごく愚鈍になろう ふへへへーん あん』
  インター近くのホテル街 平日の午前中ならゴーストタウン そ
 う思っていたけれど 入ってみれば8割程度に駐車車輌 やはりや
 っている人はやっている 自分もその内だと苦笑したりして
 『愚鈍じゃない お前なんかには100万年理解できない あんな
 性格をだな むっ へいひゅんらへいはふってひゅうんら』
  正しい名前は知らないけれどピアノのペダル こんなに頻繁に使
 うのかってほどに膝の上下運動 他所の女を褒める唇を大袈裟に塞
 いで そのまま頬から耳元へ 肩に顎を乗せて背中に手をまわす
 『くうううっ みちみち音がしてる こっちの方はまだダメなの』
 『さっきしたところだろうが 俺はバイエルの62番で忙しいんだ
 我慢できないなら自分でしろよ なんなら 見てやってもいいぞ』
  さっきは勢いで終わったような気になっていたけれど 体はなん
 とも正直らしい 腰の辺りから悪寒のような焦燥感が拡がってゆく
 我慢できなくなって強く抱き締め 悔しいから肩に歯を立てる
 『やあだあ なんとかしてくれないとお あたしがひとりでやって
 るのを見れば なんか興奮してできるようになるわけ ねえ』
 『ハンディカムを持ってくるべきだったか なかなか撮らせてくれ
 ないからな あとCCDとクスコも欲しいところ ミクロ決死圏』
  ブツブツ言いながら それでも外れたピアノの音 この練習はピ
 アノ教室の小娘のためなのだと 無理して嫉妬を掻き立ててみたり
 する イライラするようなジェラシー それも快感に置換される
 『あんっ 生を見ればいいじゃない お願いするならいつでも見せ
 てあげるのに ほーらっ もうこんなになってるの 触って』
 『こんなにって これは俺のだろ シャワーで流してこいよ』
  イライラとムラムラが一緒になって そのまま立ち上がり指で開
 いてみる しかし中腰では奥までとはいかないで 仕方がないから
 腕を掴んで触らせる 後半の粘液はあたしのモノ 知ってるくせに
 『ひどおおい あたしってばこんなに欲しがってるのに やんやん
 って感じだと興奮する それとも黙って唇を噛もうか くって』
 『ふうん 趣味だと黙っての方だな 上気した頬に押し殺した喘ぎ
 声 たまに我慢できなくなって 目を閉じたまま顎をあげるのな』
  あたしは振り絞って喋っているのに あいかわらずヘタクソなピ
 アノの音 それに重なるネタ話 違った種類のイライラが募り 片
 足をあげて両膝を跨ぐ そのまま下腹部を密着させて激しくまわす
 『いい加減にそのピアノは辞めろおおおん はうっ くにゃあん』
 『いつになく激しいよな 他の女の話が効いたのか まだ女子大生
 で生徒の質問が曖昧だと 困った顔が子供みたいでさ なんだ』
  それでもゆるゆると膨張を始める 途中で折れないように手をあ
 てがって 一気に収めて背筋に悪寒が走る 後ろを締める要領で力
 を込めれば こっちもそれなりに締めることができる 何事も日々
 の鍛錬なんて さっきと意見が違うのは のは もうどうでもいい
 『終わってすぐは敏感なんだぞ ゆっくりやれゆっくり こーら』
 『そんなの知らないっ ううんむんむん たまんない やん』
  もうごちゃごちゃウルサイだけ 背中にまわされた手に体重を掛
 けて 思い切って後ろに反り返る 上下に合わせてピアノが鳴るな
 んてのは 普段なら2時間は馬鹿笑いの状況 それはもう馬鹿笑い
 『うはははは って笑っちゃ悪いが なんだその 場所が悪いな』
 『ううんっ もうちょっとだから喋んないの そうそうそうそう』
  一度終わっているから余裕があるらしい こっちはさっきの続き
 だから勢いがある 敏感だって話は 同じ敏感でも少しベクトルが
 違う 合わせてくれないかなと思うけれど そんなことは超能力で
 察知するものだ なんて考えがまとまらない あは どうでもいい
 『なだよ えらく早いな まあいいや 合わせるぞ』
 『んんんっ くにゅううん しょっと 練習しなさい いいから』

  なんかそれ程でもなかったけれど このまま引き抜くのもドロリ
 ン状態 ティシュを取るにも距離がある 仕方ないから余韻を楽し
 んで BGMはド素人の練習曲だ そんなのもたまにはいいか
  そしてまた同じところで間違える もしかすれば間違える箇所を
 決め込んで ピアノ教師の娘っ子に教えを請う計画かもしれないが
 それはそれで構わないと感じたりもする 嫉妬心だって性欲の一部
 しばらくはヘタクソなピアノを弾けばいい なんてね






             》 しびる 《
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(のりこ)>またこんなの描いてらっしゃるし
(しびる)>うんまあ
posted by 篠原しびる at 01:15| シンガポール ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 連作系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年10月03日

連作23 廉連作05 フェーブルカンパニー33

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 種別 連作系第23期 廉連作05
 題名 『 フェーブルカンパニー33 』
 初出 ニフティサーブ/FJAMEA/18番会議室
    1997年03月04日02時27分
 注釈 行頭スペース+30W
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(のりこ)>FC33です ついに巡洋艦レヴァインが登場ですけど
      今回の連作紹介はFCの以後の展開のネタバレを含むの
      で そこんとこ注意して読んでください
(しびる)>外伝であんだけ展開して ようやくラストの大ネタに突
      入か まだあと1本くらいあったかね 記憶ないけど
(のりこ)>結局はどうなんです? つまり前大戦100年戦争で対
      消滅したってのはウソなんですか
(しびる)>ネタバラシ禁止ってこともねーだろうけど つまりそゆ
      ことだわな 反物質の対消滅ってのが 光子機関が崩壊
      する際のセーフティなわけだろ? 大規模な爆散が起こ
      らないように自己崩壊で爆縮することで 外に向かって
      消滅すれば星系を吹っ飛ばすかもしれないって代物だし
(のりこ)>あー 反物質の対消滅に2種類あるんですか?
(しびる)>そゆことだわな 光子機関の自己崩壊ってのは つまる
      ところSSVシステムの最期ってことになるわけ ブラ
      ックボックスだって語られてるSSVシステムは その
      設計の基本理念に怪しいものを含んでて それがたまに
      自己の保身のために現象を偽装するのな
(のりこ)>んじゃ レヴァインの爆散とかってのは 実はシステム
      の偽装だって可能性があるわけですか
(しびる)>うんまあ 執筆当時はその方向で進めてたんだけど 公
      証人ネットってのがあるじゃん? あれが個々のSSV
      システムをシナプスにして脳細胞のように銀河全体に拡
      がっててさ まさに宇宙の神のように機能しはじめてる
      ってのがラストのラストの大ネタだったのな
(のりこ)>すごい壮大な展開ですね そんなの描ききれますか
(しびる)>なにも設定は全体を語るだけが方法じゃねーだろ でか
      いナスを表現するのに 夜空にヘタをつけたようなって
      表現があるじゃん ヘタの部分だけ描けば充分だろうさ
(のりこ)>なるほど しかしこれだけネタバラシしてもいいんです
      かね 楽しみにしてる人がいるのか知りませんけど
(しびる)>いいんじゃねーの 別に
(のりこ)>それは続編を描かないってことですね ってわけにもい
      かないので 冒頭にネタバレ警告を入れておきます
(しびる)>気にしすぎだろ
posted by 篠原しびる at 00:43| シンガポール 🌁| Comment(0) | TrackBack(0) | 連作系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年10月02日

連作23 廉連作04 ななめならずも 2

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 種別 連作系第23期 廉連作04
 題名 『 ななめならずも 2 』
 初出 ニフティサーブ/FJAMEA/18番会議室
    1997年03月01日01時32分
 注釈 行頭スペース+30W
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SUBJ:【廉連作】04 ななめならずも 2

 Sibi-Tem V.4.1

 廉直に清廉に 無心から始めるのもいい 廉連作 #04(A群)
 



         『 ななめならずも 2 』


                        作:しびる





  超豪華遊覧フェリーの沈没や 巨大ジャンボジェット機の墜落炎
 上なんてのは それはもう事故の中では最も派手な部類で そうじ
 ゃなくても 高速道路での数十台の玉突き衝突や 急行列車の脱線
 転覆事故とか 非常に希な確率で巨大な事故は発生する
  しかしなのだけど こと人の生死に関わる問題は 事故の大小や
 死傷者の寡多では語れない 現場ではすべての当事者に個々の悲し
 みや苦しみがあって メディアが取り上げる事件事故の重要性の選
 択尺度は 結局のところ悲しむ人々の人数でしかないのだと思う
  その点からすれば あたしのやっている仕事なんてのは 視聴者
 の人数に比例した選択尺度 ひとりでも悲しむ人がいるのなら そ
 れを伝える義務がある 地域に根差すってのは こうした意味かも

 『それじゃ大泉さん 事故現場の絵は2カットでいいですね どう
 しましょう 献花も入れた方がいいですか 森内 車を止めろ』
 『そうですね 進行方向だから 坂の上からお願いします』
  なんとも嫌な現場だけど それはそれとして ある意味あたしは
 非常に快適な状態にある なにかこう 噛み合う歯車か 643で
 トリプルプレーな感じ いつもこうなら悩みはないのに
 『血痕は残ってませんね 森内っ 交互に行かせりゃいいだろ』
 『まだ時間はありますから 向こうはあたしが交通整理しますよ』
  森内君は見た目は学生のアルバイトのようだけど 実際には30
 手前の正規の照明さん さっきから森内君を怒鳴っているのはカメ
 ラマンの土居さん 土居さんはエンターじゃなくて外注なのだ
 『それはどうも なんでしたら先にアポ取りをしてもらっても こ
 っちは片しておきますから それとエンドは標識にしましょうか』
 『構いません さっき携帯で連絡しましたから できれば一緒に移
 動するのが都合がいいです 標識はあれですね 交通安全協会の』
  交通事故現場である 発生時刻は昨夜の午後10過ぎ 原付バイ
 クに乗った高校生がカーブを曲がりきれずガードレールに激突 ほ
 ぼ即死だったらしい 地元の高校は免許修得を禁止していない
 『他にイメージがありましたら 俺はあれがいいとは思いますが』
 『結構ですよ あれでお願いします 森内さん 交互に通します』
 『はい それじゃ合図してください 僕が合わしますから』
  今日はたまたま土曜日だったから この事故のレポートはロック
 ン5ジラに割り振られたのだ それ以外の仕事で事故現場は珍しく
 ない 5ジラで事故はあまり扱わないけれど 別に番組の方針でも
 ないから 報道部の指示があればその通り これも地域の話題
 『OK 大泉さん あとは移動ですか 森内 ロケ車まわせ』
 『ええっと 住所はわかるんですが 行ったことのない地域なんで
 すよね これですけど 土居さんは御存知ですか ここです』
  なんて逆に尋ねてみたりする 今日はなんともやりやすい雰囲気
 だ これがエンタープライズの人なら文句たらたら 勝手に仕切ら
 れちゃってメチャクチャになるところ 土居さんはディレクターで
 あるあたしを立てて仕事を進める これがプロってもんだ
 『どれどれ ああここなら知っているよ 大丈夫 森内も知ってる
 から そう15分もあれば行けるかな 途中から車は無理だけど』
 『そうですか 機材の運搬が大変そうですね なんでしたらあたし
 も運びます 分担して 早く切り上げちゃいましょう』
  土居さんは40代半ばか 長身の痩身で短く刈り込んだ髪に白髪
 が交じっている まさに職人気質の風貌は 実際に仕事の厳しさで
 定評がある 一緒に仕事をするのはこれで2回目 少し慣れたかな
 『気遣いは無用 と言いたいところだけれど 俺も歳かな さっき
 からどうにも肩が重い 大宮さんにカメアシを付けてもらおう』
 『部長はケチですからね あたしが持ちますよ とか言ってますが
 あたしもさっきから背中が重いんですよね 怠けてるのに』
  肩をクキクキ上下させる土居さんと 右手をグルグル振り回すあ
 たし 快晴の午前中の陽射しは もう何事もなかったかのように車
 が往来する道路に木漏れ陽 真新しい献花が風に揺れている
 『事故現場ってのはたまに いや その話は止しましょうかね 若
 い娘さんは これは失礼かもしれないが 感化されやすいから』
 『うううむん 憑き物の話ですか 大丈夫です あたしはこれでも
 プロですからねえ なんて土居さんには言えませんが なんとも』
  事故現場の取材は場数を踏んでいるけれど それでも気分以外の
 ワダカマリが残る日もある CBSの仕事は他と違って緊張感があ
 るから 精神的なものが実際に肉体に影響することもしばしば
 『まあプロでしょう 段取りの良し悪しは別として 大泉さんの姿
 勢にはいつも感心していますよ 真摯な態度は基本ですから』
 『いやあ あはははは 急に褒めていただくと 照れますよねえ』
  ずっしりと重い背中は変わらないけれど タバコに火を点けた土
 居さんの前で馬鹿笑いする 午前中にコメントを取って そのまま
 午後一までに別の取材 うだうだ考えている暇はないのだ
 『画面で喋ってるのもいいけれど そっちに飽きたらウチのスタッ
 フにスカウトしたいくらい しかし大泉さんは飽きないだろうな』
 『そうですね 喋る仕事は飽きないと思います おっと来ました』
  坂の上からロケ車が走ってくる 運転しているのは森内君 ちな
 みに森内君は土居組の組員 照明兼音声で 今回の取材チームは3
 人だけ エンターは特番の仕切りで忙しいらしい 構わないけど
 『森内さん この住所までお願いします よいしょっと なんかや
 っぱり重いですね 情けないなあ 感化されちゃったようですよ』
 『憑きましたか そのままじゃ危ないですな 森内 ダッシュボー
 ドに入ってるだろ おう それだ なんでも気休めでしょうが』

  横腹に大きく6区中央放送局と記されたステーショナリーワゴン
 そのドアを開いて後部座席に座る 深く座席に沈み込んで あたし
 はいよいよ体が重くなる これは完全になにかに憑かれたらしい
  隣りに乗り込んだ土居さんは 森内さんからなにかを受け取って
 真面目な表情 気休めでしょうがと手に持つのは黄色い札 そのま
 ま札はあたしの額に これじゃまるでキョンシーだ 土居さんは至
 って真面目だから言葉も返せなかった
  暫くそのまま黙って座っていた この札が緩んだ気持ちへの叱咤
 だと気付いたのは それからかなり経ってからだった








             》 しびる 《
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(のりこ)>ななめ2です ななみちゃん きょうもがんばってお仕
      事してます ロックン5ジラでは交通事故の取材もする
      んですね 区役所の広報番組じゃないんですか
(しびる)>スポンサーであって 地域の話題とニュース そしてメ
      インが市の広報ってスタイルだな まったく広報だけっ
      てわけじゃない 事件や事故も扱うって感じで
(のりこ)>なるほど で 今回はエンターの人がいないって設定で
      登場キャラは別の外注スタッフの人たちですね
(しびる)>うん スムーズに進む仕事ってのもありありなんだけど
      てか 普通の仕事はまま普通に進むものなんだけど ト
      ラブルを設定するのは基本だしな 仕方ないわな
(のりこ)>基本ですよね そゆのが主人公を成長させるわけですし
      特にラストの1文はいいですよね 叱咤ですか
(しびる)>仕事には緊張感がないといけないだろ?
(のりこ)>ごもっともです
posted by 篠原しびる at 23:23| シンガポール 🌁| Comment(0) | TrackBack(0) | 連作系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

連作23 廉連作03 境界線

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 種別 連作系第23期 廉連作03
 題名 『 境界線 』
 初出 ニフティサーブ/FJAMEA/18番会議室
    1997年02月26日11時30分
 注釈 行頭スペース+30W
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SUBJ:【廉連作】03 境界線

 Sibi-Tem V.4.1

 廉直に清廉に 無心から始めるのもいい 廉連作 #03(B群)
 



           『 境界線 』


                        作:しびる





  6時間目の授業が終わればSHRの時間 だけど出欠は友達に頼
 んで自分は欠席する だって担任のブラック佐藤は名簿の朗読だけ
 で 生徒の顔も見ずに出欠を取るのだ 隣りの1Cの担任であるサ
 トピーならSHRは漫談タイム 同じ佐藤教諭でもこんなに違うの
 だから 姓名判断なんかは当てにならないと思ったりする
  少し話が逸れちゃったけど それであたしはどうするのかと言え
 ば ズルで稼いだ時間の有効利用 速攻で着替えてグランドの場所
 取りに走るのだ その点で考えると ブラック佐藤も良い先生なの
 かもしれない なんてね そんなわけないけど 言ってみただけ

 『急げ ちこ さっき椎名のバカが走ってた あいつ着替えないつ
 もりらしい 急げって言ってるのに また説教されるからっ』
 『待ってってば 今日はお花見セット あたしの番じゃないっ』
  デザインはそれなりだけど 色が気に入らない体育ジャージ 速
 攻で着替えて部室にダッシュする お花見セットはお花見用じゃな
 くて 布袋に入った金属性の杭とナイロンザイル とにかく走る
 『先週は はあはあ あたしが3でちこが2っ だからそれでっ』
 『うひい 重いよおおおん でもそれじゃ もうダメだああ』
  確か体育部連合会の規約では 放課後の場所取りはSHR終了の
 チャイムが鳴り終わった瞬間から でも規則は破るためにあるわけ
 で 昼休みからってわけにはいかないから 実際には少しのフライ
 ング 新入生は雑用係と決まっているらしい でももうダメだ
 『ぷしゅうう あたしはここで死んじゃうから なんちゃんがこの
 プレゼントを子供達に ああ みんなの喜ぶ顔が目に浮かぶよお』
 『なにバカ言ってるのっ 持ったげるから 座るんじゃない』
  なんちゃんは同じ1年生 クラスは隣りの1E 小学校は別だっ
 たから中学に入ってからの親友 あたしと同じようにSHRをキッ
 クして グランドに向かって走っている最中 今は走ってないけど
 『ほいほい 結局なんちゃんは優しい なら急ごう 椎名はどうせ
 単独行動だから ふたりで掛かればまだ間に合うと思う』
 『だろ ちこっ 誰も見てなきゃ完全犯罪 やってしまおう』
  お花見セットを抱えあげて なんちゃんはニヤリと頬を歪めてい
 る やってしまおうのやるは 殺すにるを付けて殺ると書くのだ
 『椎名は偉そうだから桜の木の下に埋めよう でも なんちゃんに
 は殺せないと思うけど なんちゃんは言うばっかり よっと』
 『そんなのわけないっ 変な噂を流さないでよね きーっ』
  部室から新体育館の脇を抜けるとグランドが見える 新館と新体
 育館の間は土足厳禁エリアだけど そんなの守っていると間に合わ
 ない 学校全体が少し高い所にあって グランドには階段状の観客
 席を駆け降りる感じになる もう椎名はグランドにいる
 『ひどーいっ あんなに広く場所取ってる こんなのほっておいた
 ら凄いことになるね なんちゃん 強制排除しよう』
 『とにかく あたしが話を着ける まったくあのバカ ちこは陸上
 部の方を先に仕切って もう しーなっ なにしてるのーっ』
  椎名は男子サッカー部の1年 クラスはなんちゃんと同じの1E
 小学生の頃は天才エースストライカーと言われたらしいけれど 中
 学に入ればみんな雑用係から始まる なんちゃんは前から知り合い
 『なにって聞かなくても知ってるだろ 南野も同じじゃないのか』
 『椎名君は制服のままで場所取りするわけ なんちゃん お花見セ
 ットを開いて そーゆーのはズルイんじゃないかな』
 『ほいっ 先にアップコーナーに杭を打っちゃえばいい』
  ちなみにあたし達は女子サッカー部 先輩の訓話によれば 数年
 前に女子サッカー部が正部昇格 それとと同時に男子テニス部も正
 部に昇格 一気にグランドは戦国時代へと突入したらしい
 『椎名だけよ こんなに南寄りにラインを張るのは 他の男子はも
 っと遠慮してるのに そんなに褒められたいわけ やな奴っ』
 『なんちゃーん 抜いちゃえばいいじゃない やっちゃえっ』
 『バカなことを言うな 早い者勝ちって決まってるんじゃないのか
 クレームなら3年を通してくれ 俺が決めたルールじゃない』
  椎名はしゃがんで杭を打つ なんちゃんは両手を腰に当てて仁王
 立ち あたしは陸上部がヒートアップに使うコーナーのラインギリ
 ギリに杭を打ってゆく 基本はギリギリで 椎名の意見は間違い
 『あたしがっ 今ここでっ 椎名に話してるのよっ』
 『あーダメだな 南野の話は聞かないことにしてる お前と喋って
 も得することはなにもない 荒井を連れてこい お前じゃダメだ』
 『嘘はいけないなあ 椎名君は素直じゃない なんちゃんも』
  女子サッカー部の新入生は9人 今月はあたしとなんちゃんが当
 番だ 男子は30人以上 総数でも23対65 だけどサッカーコ
 ートの占有はだいたい半分 普通は女子だからって邪険にしない
 『なによ素直じゃないって 陸上部の方は片したの』
 『俺は素直だ 自分の仕事を知っている 荒井が来たのなら仕事も
 終わり このマーキングは正式なものだから見ろ もう抜けない』
 『正式らしいよ なんちゃん 抜けるのはなんちゃんだけだ』
  今回の占有比率は2対3 こんなに狭くなれば先輩連中にどやさ
 れるのは決定事項 確かに早い者勝ちだけど なんちゃんと椎名の
 関係ならどうにかならなくもない ちなみにふたりはイトコ同士
 『むうううん しーなっ そんなにあたしにお願いさせたいわけ』
 『別に 俺は南野みたいな女は嫌いだ どちらかなら新井に頭を下
 げてもらいたいな 荒井は女らしくてかわいいと思うぞ』
 『女らしいって あはははは 素直じゃないよねえ 嬉しいけど』
  椎名は背も高くてかっこいい サッカーの才能もそれなりだと思
 う いつも眩しそうに目を細めて でも見ているのはなんちゃんの
 ことだ そんなことは誰にだってわかる 素直じゃないふたり
 『うんもうっ わかったわよ お願いします いつもの場所に杭を
 打ってもらえませんか ちこもほらっ お願いしなさい』
 『あははは 椎名君 女の子に恥をかかせちゃいけないって』
 『仕方ない 南野にはひとつ貸しだ 抜くのを手伝え』

  なんちゃんが頭を下げると 後ろのポニーテールがふわりと揺れ
 る あたしはそれを眺めながら 椎名の表情の変化は見逃さなかっ
 たりする 一緒に帰ったりする仲なのに お互いバカって罵ったり
 微笑ましいったらありゃしない 見ているとニマニマしてしまう
  3人掛かりで仕切り直して その頃には他の部の1年達もぞろぞ
 ろ集まってきた SHRが終了したのだろう これからハードな部
 活が始まる 楽しみは終わってからの買食いだけど 今日は椎名も
 誘ってみよう みんな楽しければいいと思う







             》 しびる 《
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(のりこ)>ひさしぶりに学園モノですね 高校生ですよね
(しびる)>中学生だって描いてるだろうが いまのいま読んでその
      意見か ったくそれで敏腕アシスタントとか言うしよう
(のりこ)>あー違います いま中学生って言ったつもりで高校生っ
      て言いました 単純なミスです そんなことはいいんで
      すけど このお話って簡単な筋なのに会話がややこしい
      ですよね 登場人物を整理しないと
(しびる)>ややこしいか? えーっとな まず1人称は『ちこ』こ
      と新井ちかこ 冒頭の相手は『なんちゃん』こと南野某
(のりこ)>某って なんちゃんは名前ナシですか
(しびる)>展開に必要なかったし んで3人目の男子は椎名 この
      3人でぜんぶだろ あとは新入生がよくやらされるグラ
      ウンドの場所取りな そんなにややこしくないわな
(のりこ)>整理するとそうですけどね んじゃ皆さんはいまの解説
      を念頭に置いて読み返してくださいね(ハート)
(しびる)>そもそもどうなんだろ? 画面をコピペして別アプリで
      じゃなきゃ読みづらいよな それとも拡大表示か?
(のりこ)>さあ ウチは元原稿をT−Timeでチェックしますか
      ら 他所様はどうしてらっしゃるんでしょうね そゆの
      訊いてみるのもおもしろいかもしれません んじゃ 返
      事ナシでけっこうだって方はコメントでもください
(しびる)>実際にコメントもらったらどうするんだよ 無責任なこ
      と言うなよな いちいちコメントに返事するのか
(のりこ)>そこはそれ 放置プレイで満足してもらいます
(しびる)>女の子がプレイとかいうなって言ってるだろうが
posted by 篠原しびる at 22:49| シンガポール 🌁| Comment(0) | TrackBack(1) | 連作系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

連作23 廉連作02 椿屋綺譚 3

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 種別 連作系第23期 廉連作02
 題名 『 椿屋綺譚 3 』
 初出 ニフティサーブ/FJAMEA/18番会議室
    1997年02月23日01時50分
 注釈 行頭スペース+30W
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SUBJ:【廉連作】02 椿屋綺譚 3

 Sibi-Tem V.4.1

 廉直に清廉に 無心から始めるのもいい 廉連作 #02(B群)
 



          『 椿屋綺譚 3 』


                        作:しびる





  今回はハッキリ見えた 体裁は和風なのに洋風のドアを 廊下側
 に引き開けて室内を見渡す 少し飲んで別のことを考えていたのだ
 が それでも瞬間に妙な予感 いや予感よりは悪寒に近いか 部屋
 の中央にテーブルがそのままに 先程と同じ場所 女が座っていた
  仲居と見間違えたのは寝惚けていたからか こちらを振り向く女
 は旅館の浴衣に長い黒髪 年齢ならば20歳そこそこ もしかすれ
 ばもう少し若いか 振り向きそして睨付ける なにか喋ろうとして
 唇が僅かに開き 途端に消えた すべてはほんの数秒

 『誰かいるのか おいっ』
  明らかに異常な光景であったが 思わず声がでた 誰もいない部
 屋に声だけが響く いったいなにが起こっているのか 寂れた宿に
 つきものの怪談かと 部屋に踏み込もうとして鼻白む
 『どうかなさいましたか よろしければお床を用意させていただき
 ますけれど お風呂に入られますか』
 『さっきは黙っていたが この部屋には妙なものがいるらしいな』
  まったく足音を立てずに背後から声 振り返るまでもなく仲居の
 声だ 今見たものは幻ではない ドアノブを握ったまま声を低く尋
 ねてみる こうなれば遠慮もなにもない 部屋を替えさせよう
 『南京虫ですか そんなのウチにはいませんよ なんですか』
 『なぜ茶化すんだ 真面目に話すつもりがないなら構わない とに
 かく部屋を替えてもらおうか 知らないわけないだろう』
  あれだけハッキリと現われたのだ 様々な客が寝泊まりする部屋
 に 少しの苦情も聞かないわけがないだろう 仲居の態度にムッと
 する 脇をすり抜けて部屋に入ろうとする姿は欺瞞に見える
 『はあ なにを仰っているのかわかりませんが 女将さんに聞いて
 みます 他に誰もおられませんから 大丈夫だと思いますよ』
 『ならそうしてもらおう 風呂は10時まで それまで出掛けるか
 ら荷物を移動しておいてくれればいい』
  若い女の幽霊を見ただなんて こちらから話すのも馬鹿らしいか
 あくまでも知らぬ振りならいいだろう しかしこれも一興と笑い飛
 ばすほどに度量は広くない 非常に不愉快 興醒めでもある
 『わあかりました 帰られましたら帳場の方へ声を掛けてください
 ますか おそらくこの階のどこかになると思います』
 『あ そう この部屋以外ならどこでもいい』
  だらだらと寝転がって過ごすつもりだったが 軽い興奮状態にあ
 る気持ちを沈静化するためには 夕食のビールだけでは足りない気
 がする 場末の酒場も某かの役には立つか そう考えた

  訝しげに部屋を見渡す仲居を後目に そのままふらりと宿から屋
 外へ 生臭い潮風に遠くざわめきが混じる 振り返れば椿屋旅館
  寂れた港町に季節外れの滞在者 道路を挟んで普通の民家 土産
 物屋があるでなく ただこの町には人々の生活だけ この時間には
 歩行者もいない おそらく午後8時かそれくらい
  ツギハギだらけのアスファルトを渡り 路肩の溝板を踏みながら
 歩く 彼方に赤く照らされたミニバン その向こうに赤提灯が見え
 る ぶらりと立ち寄る余所者もいいかと 懐のタバコを確認した
 『こんちわ ちょっとだけいいかな』
 『はい いらっしゃいませえ どうぞどうぞ 2名さんお通しね』
  黒い格子に真紅の障子 これがこの辺りの色彩感覚か 暖簾を潜
 れば華やかな叫び声 満面の笑みに迎えられて 言葉尻に驚いた
 『ひとりだけど なに 気味の悪いことを言うじゃない』
 『あららん あーっと どなたかいらっしゃったように とにかく
 どうぞ お客さんはあれですか シーサイドスワンにお泊まりで』
  勢いよく捲し立てて そのまま促されてカウンターへ 店内は洋
 風かぶれの居酒屋か 年配の女性が破顔の笑み 隣りに座り込むの
 は女性の娘かもしれない 店員はこのふたりだけ 客もいない
 『いや この先の椿屋旅館 スワンの客が多いわけ』
 『ミキちゃん ご注文をお聞きして いらっしゃいませ 椿屋さん
 ですの お飲みものはどうしましょ まだ営業なさってたのねえ』
 『市場で見ましたよ この辺りで宿ならスワンですよ』
  店長かチーママかしらないが 年配の方がビールの栓を抜く 客
 の注文も何もあったものじゃない ミキと呼ばれた方が立ち上がり
 カウンターの向こうに手を延ばす 取りだした小鉢はヌタらしい
 『他の客はいないようだけど ああ ここじゃなくて椿屋 傾いて
 るとかって話かい ほう 蛍イカとネギでテッパイなのか』
 『時期じゃないんですけどね そうそう椿屋さん ウチも傾いてた
 りして あはははは ミキちゃん 遊んでないでお注ぎして』
  タバコを取りだすと すかさず隣りからライターの火だ ベタベ
 タの接客はなにが手本か 苦笑するのも失礼だが 注がれたビール
 を飲み干し箸を割る 妙に居心地がいいと感じるのは何故か
 『この季節はどこも閑古鳥よね スワンはツアー会社と提携してる
 もの ウチもタイアップできればいいのにさあ あ 飲んでね』
 『まだ注文もいてないのに注ぐよな あとで怖い人がでてきたりし
 ないだろうな 確かこの町の地酒があったと思うけど』
 『面白くないイモ焼酎ですわよ ミキちゃん 持ってきて』
  飲み直すなら焼酎だ 椿屋で所望したときには切れていた この
 港町の興味と言えばイモ焼酎 前回の滞在で試してから なんとも
 忘れられない味覚である
 『そうそう 椿屋さんで思いだしたわ 先週のお客さんが言ってた
 もの なんでも あ 切れちゃってます 買ってきましょうか』
 『いや ないなら構わない 無理にってわけじゃなし』

  ここでも品切れ よもや大人気で生産が追い付かないわけでもな
 いだろうから おそらくはそれほど大量に製造していないのだろう
 仕方なしにビールを煽る タバコを揉み消し更に取りだす
  ミキと呼ばれる方に火を点けてもらいながら なにを椿屋で連想
 したのか 質問しようとそちらを眺める しかしその前に年配の方
 と視線が絡んだ 瞬間表情に影が過って消える なにか禁忌に触れ
 たのか それほどのことでもなさそうだが 僅かに躊躇した








             》 しびる 《
+++++++++++++++++++++++++++++++
(のりこ)>椿屋3です 完全にでましたね こんないきなし霊体を
      登場させて どうするつもりですかって言うのもアレで
      すが やたら展開早いですよね
(しびる)>うんまあ 7本くらいで終了かなあとか考えてたし
(のりこ)>このシリーズってオチまで決め込んで始めてるんですか
(しびる)>まあだいたいは てか 数本のシリーズで さすがに行
      き当たりばったりってわけにはいかねーだろ?
(のりこ)>それはそうなんでしょうけど なら終了させるのはワケ
      ないと思うんですが マジ終了させませんか?
(しびる)>んー あー まー
posted by 篠原しびる at 21:55| シンガポール 🌁| Comment(0) | TrackBack(0) | 連作系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年10月01日

連作23 廉連作01 ななめならずも 1

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 種別 連作系第23期 廉連作01
 題名 『 ななめならずも 1 』
 初出 ニフティサーブ/FJAMEA/18番会議室
    1997年02月21日00時45分
 注釈 行頭スペース+30W
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SUBJ:【廉連作】01 ななめならずも 1

 Sibi-Tem V.4.1

 廉直に清廉に 無心から始めるのもいい 廉連作 #01(A群)
 



         『 ななめならずも 1 』


                        作:しびる





  編集用ブースに陣取る 編集と言っても あたしは座って眺めて
 いるだけで もうもうとタバコの煙が立ち込める中 意味的には編
 集ではなく試写 絵コンテを握っているあたしは いったいなんな
 んだろうってのは あまり考えないようにしているのも事実
  昨日の夜に原稿を仕上げて それを元にして現場の取材 撮影し
 た映像を尺に合わせて 更に原稿に修正を加える 本来ならばすべ
 ての指揮権はディレクターであるあたしのものだけれど 現場現場
 で偉い人間が違うのだ 舐められているのかと思えば腹も立つ

 『ええっと すみません少しよろしいでしょうか 3カット目です
 けれど 子供達の姿を順番に流してもらうようにと あの』
 『これでいいんだよ 先生は美人だろ 絵的に綺麗なら構わない』
  モニターが3個に編集用機器 あたしのアパートよりも少し広い
 くらいの部屋が編集用ブース 撮影したVはここで編集されて電波
 に載せる 在室は4名 あたしと編集さんと宮崎氏と伊藤氏である
 『お願いしたように撮影してもらわないと コンテ通りに絵を造る
 のがカメラマンの仕事じゃないんですか できないのですか』
 『まあまあ ななみちゃん これはこれで内容に問題はないじゃな
 い できちゃったVに合わせて原稿を書くのも Dさんの仕事ね』
 『伊藤さんは話がわかる それじゃお疲れさん 今日は帰るわ』
  なんてことのない取材ではあったが それでも仕事は仕事である
 6区にある南浦第4小学校の話題のクラス 区の企画する絵画コン
 クールにクラスの半数が入賞とか 話題と言ってもこの程度
 『帰るって ちょっと待ってくださいよ エンド5秒についても』
 『あんたが原稿通りに喋りゃ問題ないでしょうに お疲れさん』
 『ななみちゃん もうそれくらいにしてちょうだいね はい解散』
  タバコを揉み消して立ち上がるのは宮崎氏 画面に流れているの
 はピンボケブレブレの映像 この場合のエンド5秒は 朗読が超過
 した場合の予備映像 確かに原稿通りに収まれば使うことはない
 『まだ話は終わっていないのに イトーさん ぶうぶう』
 『意見はあとで聞きましょう ななみちゃん エンターの人とは揉
 めないでちょうだいね 膨れっ面はかわいいけど 抑えてね』
  あたしの役職は報道部のディレクター でも正社員じゃなくて派
 遣社員 肩書きはDでも実状は雑用係なのである 6区のU局であ
 るCBSは自転車操業だから 正社員なんて管理職に一握りだけ
 『エンターだってウチと正式に契約してるんでしょ イトーさんな
 んかがビシッと言ってくれなきゃ なーんか釈然としないもん』
 『いろいろ事情もあるのよん 読めるんだから文句言わないの』
 『それじゃ大泉さん ホン通りで編集しますから 確認は4時で』
  あたしが所属するのはオザキ音楽事務所 この局ではタレント事
 務所からの派遣なんてのも珍しくない あたしはアナウンサー志望
 で契約しているのに 畑違いのD職に半年 先月から始まった新番
 組でようやく原稿が読めるようになったのだ それでもDだけど
 『はーい それじゃそんな感じでよろしく なんだかなあ』
 『ななみちゃんの番組なんだから にこやかに どーんとね』
  新番組は6区の区役所 その中の企画活性化が提供している広報
 番組 どうせCBSの番組なんてほとんどが広報番組 それ以外は
 V局のお下がりか 酷いときには他のU局から買ってきたもの
 『はあ どーんとですね そりゃまあ仕事ですから やりますよ』
 『ロックン5ジラは ななみちゃんの笑顔がいいって 先週なんか
 3%台に乗ってるのよ この調子なら夢の5%も可能よね』
  ロックン5ジラは土曜日の夕方5時から30分間 CBSで視聴
 率5%超の番組はただひとつだけ 月金の午前中に放送している情
 報番組 岩淵よしおのロクなてれび これが平均6%台である
 『聞きました トチるのが楽しみだって葉書が来てましたよ なん
 か複雑な気持ちですねえ 努めて真面目にやってるんですが あ』
 『おう大泉君 CBSの看板アナウンサーが浮かない顔だな 伊藤
 にセクハラされたのなら話をつけてやろうか こら伊藤』
 『なによ あたしがそんなことするわけないでしょうに ななみち
 ゃんは あんたなんかと身分が違うのよん 気安く喋んないの』
  編集ブースから廊下へ抜ける ブリブリ怒っていたところで出逢
 ったのは編成部の竹村氏 あたしの上司の伊藤氏とは同期らしいけ
 れど 竹村氏はあたしと同じ契約社員 ちなみに伊藤氏は正社員
 『エンタープライズの人達って なんかすんごく いえ もう愚痴
 は言いません 文句言ってるとそんな顔になっちゃいますもん』
 『なるほど エンターは特殊だからな なんて言うのか治外法権だ
 ろ 娘っ子ディレクターには手に負えないかもな 言い過ぎたか』
 『うまく乗せちゃえばいいのよ みんなプロなんだから』
  エンターはCBSエンタープライズ CBSが契約している制作
 会社のことである カメラマンや音声さんはエンターが仕切って番
 組が制作される たまに外注するときも仲介するのはエンター ほ
 ぼ独占契約だから態度が大きい 現場ではエンターの言いなり状態
 『だってねえ さっきの宮崎さん これからインタヴューしようっ
 てときに 時間がねーから早く聞いてこいよなんて言うのよ』
 『わはは ひでーや それで大泉君は切れたってか ある程度は我
 慢しなくちゃいけないぞ 俺なんか若い頃は殴られたこともある』
 『あんたは生意気すぎるのよ それで編成部に飛ばされたんでしょ
 ウチの部長の親心で首が繋がってるんだから 感謝なさい』
  竹村氏は馬鹿笑い 伊藤氏の話からすれば 殴られたって展開は
 すこぶる怪しい 切れて殴り飛ばしたのが正解だろう あたしもそ
 うできれば楽になるだろうか なんてことは考えるだけ無駄
 『なんかストレスが溜まりますよ きちんとやんなくちゃいけない
 責任感と なあなあを受け入れなくちゃいけない柔軟性 それでニ
 コニコ笑って喋るんですよ 精神分裂症になりそうな感じかな』
 『ある意味 分裂するのもいいかもな ずっと楽になると思うよ』
 『すごく危ない番組になったりして なんて冗談 緊急会議はここ
 まで 編集が終わったら部長のところに謁見よ さあさあ』

  伊藤氏に背中を押されて 廊下をずんずん歩いてゆく 部長に会
 ってなんの話か とにかくエンターのことを進言してみよう 社内
 に治外法権なんてやりにくくって仕方がない 無駄で元々だと思う
  今日の放送まであと4時間 片さなくちゃいけないことは山積み
 なのである 精神だけじゃなくて カラダ本体の方も分裂してしま
 えば 凄く楽になるのになあと思ったりして 思うだけだけど





             》 しびる 《
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(のりこ)>さて連作も第23シーズン 廉連作の1本目は ななみ
      ちゃんのシリーズでしたか ななめ1です
(しびる)>気合い入れて始めてるよなあ 何重にも設定を作り込ん
      でさ あとで使う伏線もばりばりじゃん
(のりこ)>このシリーズは何本仕上げましたかね ななみちゃんは
      がんばって働くんですよねえ しかしこの零細U局の内
      情ってのは 実際のとこ こんなものなんですかね
(しびる)>これはかなりいじってるけど まあこんなもんだ 意味
      的にはそう違わないな まんまじゃねーけど
(のりこ)>ふうん しびさんってそっち関係に詳しいですか
(しびる)>そっちの方のツレがいるからな
posted by 篠原しびる at 00:33| シンガポール ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | 連作系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年09月29日

連作22 涼連作15 なるようになるかな

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 種別 連作系第22期 涼連作15
 題名 『 なるようになるかな 』
 初出 ニフティサーブ/FJAMEA/18番会議室
    1997年02月18日02時18分
 注釈 行頭スペース+30W
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SUBJ:【涼連作】15 なるようになるかな

 Sibi-Tem V.4.1

 飄々と涼しげな でも無責任じゃなくて 涼連作 #15(A群)
 



         『 なるようになるかな 』


                        作:しびる





  公立高校一本に絞る 私立と併願して安全策は甘えに繋がる た
 だでさえ類型別出願で併願ぽいのに とにかく禁欲的に勉強するし
 かないのだから 自分に甘くなるのはなによりも危険 後があるな
 んて考えると気が緩む 緩んだ気持ちは二度と締まらないと思う
  地元公立高校の2類は文系進学クラス 英語と社会の単位数が普
 通科1類とは少し多い 3類は美術科で過半数が推薦枠 あたしは
 2類と1類の併願 直前3カ月情報では2類の倍率は3.5 3人
 の受験生で1人が合格するかどうか 1類は1.4倍で楽勝だけど

 『その気があるのなら 美大に進むのもいいわよ 別にOLになる
 だけが人生じゃないでしょ やりたいように生きなさいね』
 『やりたいかどうか 今になってもわからないです だからとにか
 くは いちばん大変な方を選ばなきゃと そう思います』
  特に状況を設定したわけじゃなくて たまたまふたりきりになっ
 たから話題が傾いた だからなんとなくダラダラと ママは仕事の
 最中だし あたしはぼんやりと年表を眺めていた 土曜日の午後
 『あいかわらず優等生ねえ さいかを意識してるなら考えものよ』
 『別にそういうわけでは でも そうかもしれないです』
  ママは鼻眼鏡で悪戯っぽく どうしてこんな笑顔ができるのだろ
 う 最近ポッチャリしてきた頬に軟らかいシワが拡がり とてもと
 ても濃厚な微笑み ママは容姿も仕草も性格も深くて甘い感じだ
 『うん あやみはあやみなりに頑張ってるから それでもさいかに
 そっくりに育つのは なにか不思議な感じがしなくもない っと』
 『あたしは あたしですよ ママみたいにも さいかお姉ちゃんみ
 たいにもなってみたいけれど それは無理だと知っています』
  以前にパパ達と進路のことは話し合った とにかく高校進学は決
 定事項で 公立高校を受験するのもほぼ決定 そこから先はあたし
 の意見であり 3類の美術科は最後まで悩んでいた その話
 『ママとさいかねえ そういや正反対に見えるのかしら あの娘は
 もしかすれば単独行動の芸術家肌だったかもしれないわよ』
 『芸術家ならママですよ さいかお姉ちゃんは 他の人を引き付け
 る魅力があります ママにも あると思いますけど』
  自分で話しながら矛盾を感じていた よく考えると ふたりとも
 に不思議な魅力がある 正反対に見えるのかしらと 首を傾げたマ
 マの意見が理解できるような気もする 大人の女性の魅力だろうか
 『あはははは 親をヨイショしてどうするの ママのは無理矢理だ
 から さいかのカリスマとは別 立派な社長さんになるでしょ』
 『あれ さいかお姉ちゃんは会社を辞めたのでは 違うんですか』
  ママはテーブルに機械を置いて耳には小さなイヤホン すっかり
 冷めたコーヒーはママのお気に入り ウチの家系は代々猫舌 あた
 しはソファーに深く座り 静かな会話はせいや君がいないからだ
 『休職扱いよ 回線を使って少しは仕事もしてるみたいね 仕事中
 毒が体に染み付いてるのよ まったく懲りない妹だわ っと』
 『それはママも同じじゃないですか 家事をしながら仕事もしてる
 なんて あたしは勉強しながらお手伝いは無理です』
  その問題のせいや君は さいかお姉ちゃんのところ 正確には祖
 父の家に出掛けている どんな楽しみがあるのか 弟は年配の男性
 と仲良くなる 同世代と同じくらい友人の数はいるだろう
 『なんにしろ 大学まで行っとくのも楽しいわよ あの2年なり4
 年は得るモノが多いわね っと 今日はこれくらいにするかな』
  ママは機械を閉じて 眼鏡を外しながらコーヒーカップを引き寄
 せる 普段のとおりなら これから近所の中村屋まで夕食の買い物
 パパはどうせ遅くなって せいや君を回収してから御帰宅だろう
 『買い物なら手伝いますよ 前言は撤回で 実は少し息抜きだった
 りします なんだか集中力が続かなくっていけません』
 『んまあ 適当にやんなさい あやみの細胞の中にはヤリスギDN
 Aが多量に含まれてるのよ きっと そーちゃん氏の遺伝子ね』
  そーちゃんは母方の祖父の名前だ さっき話した祖父のこと 親
 戚の多くは愛情を込めてそう呼んだりする もちろん本人の前で言
 える人はいない 唯一の例外はまなみさんである 祖母のことだ
 『どうでしょうね 本当はそれほど真面目にやれる性格じゃないと
 そんなふうには思うんですけど うーん よくわからないです』
 『わからなくてもいいでしょうに さて あやみが勉強しないなら
 夕食は外食と洒落込むかねえ 旦那と息子は遅くなるだろうし』
  話の展開から そうなるだろうとは思っていた ママの仕事は進
 展していないらしくて 会話の最中に気合を入れてキーを叩いてい
 たのは 少し煮詰まっているときの癖だったりする
 『連絡しておかなくてもいいでしょうか パパとせいや君とマイケ
 ルの晩ご飯を 後で用意しなくちゃいけませんよ 面倒ですね』
 『冷蔵庫にあるものを食べさせるわ そうと決まれば着替えてお出
 掛け 娘とふたりで食事なんてのはね ふふふ こりゃいいわ』
  ママはなにやら急に上機嫌 ママが楽しそうに笑っているのを見
 ると あたしの心の中で なにかが熱いくらいに心地良くなる あ
 たしはもう中学生だけど もしかすればせいや君より子供な心の持
 ち主なのかもしれない 女の子でもマザコンはマザコンだ
 『着替えるのですか そんな贅沢でなくてもいいですよ』
 『いいじゃない とびきりのフレンチレストランに連れて行ってあ
 げるわよ で 進路の話でもなんでも聞こうじゃない さてさて』
  この近所にフランス料理の店なんてあっただろうか 遠出するく
 らいならパパやせいや君も誘えばいいのに そう言おうとして辞め
 にした 今日はなんだかママとふたりだけも楽しそうに思う
 『はあ 進路の話は決めましたから まあ いいですけど』
 『あやみが選んだワンピースと 同じ色のスーツにしよう 仲良し
 姉妹に見えるかもしんないし なーんてね あははははは』

  仲良し姉妹と言って笑っている あたしは返事のしようがなくて
 楽しそうなママを眺めてぼんやりしていた もしかして さいかお
 姉ちゃんもこんな気分だったのかと なんとなくそんなふうに考え
 たり どうでもいいけれど きっとあたしは ママのような女性に
 はならないんじゃないかって それだけは思うのだった
  どんなふうになるのか それもわからないけれど なるようにな
 るじゃ少し無責任かな よくわからないのであった ううむ









             》 しびる 《
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(のりこ)>もでらーとです あやみちゃんは高校受験ですね あい
      かさんもちょっと歳をとって 少しずつ時間が経ってま
      す このくらいの流れって気持ちいいですね
(しびる)>まあな このシリーズはやたらタイヘンなんだけど そ
      の分 とにかくこだわって作り込めるからさ
(のりこ)>あやみちゃんとあいかさんの微妙な違和感とか さいか
      ちゃんのパターンを踏んでるから それほど踏み込まな
      くてもすごく臭わせるでしょ そゆのが強みですか
(しびる)>強みってのはどうかね とにかくさ そうと臭わせたな
      ら外すわけだし 展開ってそれの繰り返しとか裏返しと
      か 基本形は数種類で あとはバリエーションだしな
(のりこ)>そゆのよくわかんないですけど 内容は多く語るまでも
      ないですか ある日の母娘の会話ってことで
(しびる)>そゆことだな
posted by 篠原しびる at 22:58| シンガポール ☁| Comment(0) | TrackBack(1) | 連作系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

連作22 涼連作14 腐水盆に還らず

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 種別 連作系第22期 涼連作14
 題名 『 腐水盆に還らず 』
 初出 ニフティサーブ/FJAMEA/18番会議室
    1997年02月17日01時03分
 注釈 行頭スペース+30W
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SUBJ:【涼連作】14 腐水盆に還らず

 Sibi-Tem V.4.1

 飄々と涼しげな でも無責任じゃなくて 涼連作 #14(B群)
 



          『 腐水盆に還らず 』


                        作:しびる





  緑色に変色した発砲スチロールが浮かんでいる 幾重にも波紋を
 描いて汚物の帯 水面から数メートルの高さの枝に まるでなにか
 の印のように白いビニール片が絡まっている その高さまで水位が
 上昇するのか それとも特殊な気流が発生するのか かなり上流で
 はおそらく膨大な不法投棄がおこなわれている 死んだダムに溜ま
 る物達 様々な物を塞き止めて これが本来の姿かもしれないが
  環境保護団体が世界的にも巨大な圧力団体と変貌した時代に 堆
 積した土砂の放出なんてのは生態系に対して論外 無用の長物は無
 用のままで放置され 死んだダムの再利用は打つ手なし それでも
 維持管理には膨大な費用が必要であり この巨大な建造物を眺める
 につけ 途方もない無駄にばからしくもなる

 『水面から生えている木って 気味が悪いよな ダムって子供の頃
 から嫌いなんだよ 社会見学で泣いた記憶がある 怖くって』
 『泣くことないじゃない でも 年平均5人はいるのよね』
  新車を買った最初のドライブ 山間部を縫って有料道路 行き着
 いた先は世界の果て 世界の果てにはダムがあるのだ
 『なに5人って なんか変な形の魚とか泳いでいそうだろ あと真
 夜中に真っ白な子供が泳いでいたり とにかく気味が悪いよな』
 『追い打ちを掛けるみたいで悪いけれど 年間5体くらい死体が上
 がるのよ だから夜間には通行禁止になってるわけ 怖いでしょ』
  そう言えばどこかにそんな表示があったか 800万を越える都
 市の近くなら 死体遺棄をしたがっている人間もかなりいるだろう
 絶好の遺棄スポットと考えるとイヤになる 何故この場所にいる
 『ああ 泣きたいくらいに怖いな もう帰ろう 楽しくない』
 『だから来たんじゃないの 今にも雨が降りそうなうっとおしい空
 に不気味な眺め しかめっ面して並んで立つ なにが起こるの』
  いつもそうだが 小難しい顔して指を振っている 別に貧乏じゃ
 ないがそれでも高価な新車の試走 説明を始めて質問で締める 彼
 女の長い髪を生暖かい風が揺らしている 滅入るような状況だ
 『なにか起こるわけ 別れ話とか もしかして保険金のために殺さ
 れるとか 実は宇宙人とか なんでも痛いのは辞めてくれよな』
  割りと不用心な造り ダムの上と言えばいいのか尾根の部分 軽
 自動車なら走行できそうな 通路になっている場所を並んで歩いて
 いる 彼女はお馴染の黒ずくめ 右手をヒラヒラ振って返事のつも
 り 柵もなければ金網もない どちらに転ぶも手摺一本だけ
 『このダムって ほら 死んじゃってるでしょ イヤになるほど水
 だらけなのに すぐ近くまで砂と泥 だから搬出するらしいわね』
 『ふうん ペイラインがあるのなら 再利用するのが正解だろうさ
 大量の土砂で人口島でも造るとか で 建設国債でも買う相談か』
  ダム容量の7割が土砂だ ドロリと鴬色の水面のすぐ下に 周囲
 の山並から流れた堆積物 胡散臭い儲け話には適当な場所だろうが
 『そうじゃないの この場所から そうね2キロほど上流 数年前
 の渇水騒動で確認できたのよ 建物が残っていたわ』
 『なんの話だよ ダムに沈んだ集落の話か 確か50年も前のこと
 だろ お前に関係あるとは思えないが もしかして埋蔵金とか』
  どちらとも解釈できる表情だ 大きな瞳をスッと細めて 回想に
 耽溺しているようにも 俗欲に塗れているようにも見える 彼女の
 年齢は30そこそこ 50年前の因縁もないだろう ダム建設から
 半世紀 今更なにがどうだというのか すべては土砂の下だ
 『20年前 あなたが社会見学で泣いていた頃よ あたしは干上が
 ったダムの底で遺跡の探検をしてたわけ 生臭い建物よ』
 『泣いてた頃って 社会見学は土砂の放出実験までの話 干上がっ
 てたのならそれ以降だろ イヤな趣味の子供だな 勝手だけど』
  空が徐々に暗くなる 持って回った説明は昔話か 構わないと言
 えばそれまでだが どうもそれだけではない気がする 彼女が含め
 るときには怪しくなるのが常 ただでさえ生臭い風に雨の予感
 『時制の一致なんてどうでもいいの 今問題なのは またその建物
 が地上に現われるって事実 だからあなたを連れてきたのよ』
 『直に話せよ なに言ってるのか理解できないぞ なにが問題だ』
  そうは言いながらも なんともイヤな予測が固まりつつある 水
 面に浮かぶ死体の話から始めたのなら それがネタ振りで結論に結
 びつくのが常套手段 謎の多い女だが もしかして殺人を犯したか
 『誰か殺したのか 20年前なら小学生くらいだろ 時効を待たず
 して悪事の露呈だな 黙ってりゃバレないんじゃないか』
 『そうもいかないわね この辺りで身辺の整理も考えてるのよ』
  そうならば関わり合いは御免だ 虫の知らせで少し後退する あ
 まり手摺に接近しているのは危険かもしれない 話している相手は
 殺人犯だ 某かの口論が隠蔽工作に繋がらないとも限らない
 『なるほど 期せずして新車の試走が悪事の告白 悪いけれど協力
 できそうにない どうせ夜陰に紛れて死体を運べとか』
 『言うわけないでしょうに あたしが殺したんじゃないわ』
  殺人は否定しているが これで死体絡みであることが確定したわ
 けだ そうこうしているうちに霧雨が風に混じる 水面に遠くから
 細波が迫ってくる やや強めの突風に息が詰まる すべて不快だ
 『でも死体はあるんだろ なんの建物か知らないけど 前回の渇水
 でバレなかったわけだな 今度も発見されないんじゃないか』
 『きっとダメね 渇水は雨が降らないから渇水 雨で土砂が洗い流
 されると それが決定的な物証になるでしょうね もうおしまい』
  なにかがキッカケとなり 彼女はぷいときびすを返す 仕方なく
 後に続き この場所から解放されるのかと思えば 少し気分が楽に
 なる ダムは基本的に嫌いだ ましてや死体が眠っているなら尚更
 『なにが物証だ なにを疑われる 待てよ 説明しろよな』
 『コンクリート製の壁に 死体発見記念って 署名入りでスプレー
 したのよ だって早い者勝ちでしょ 若かったのよね』

  言い放つと彼女はさっさと車に乗り込む どこまで本当の話か怪
 しいが 落ちがないなら本当だろう 干上がったダムの底に署名入
 りの建物が現われる マスコミ好きのしそうな映像だ 死体発見記
 念だなんて 騒いでくれと言わんばかりである
  腐臭の漂うこの死んだダムに まったく当たり前のように死体が
 沈んでいる こんなに面白くない状況も珍しい どんなことでも愉
 快な側面が見いだせるものだが この場所だけは例外であるらしい
 とにかく早く立ち去ろう それが正解だ






             》 しびる 《
+++++++++++++++++++++++++++++++
(のりこ)>しびさんはダムがスキですよね
(しびる)>ダムいいよな なんか視野が狭くなると近所のダムを見
      にゆくんだ ダムって大きいじゃん すごいよな
(のりこ)>私はキライですね まったくもってここに描かれてるよ
      な理由でキライです できることなら一生近付きたくな
      いです 大きさも水の量もイヤです 怖くて
(しびる)>そゆのもあるかもな なにが沈んでるのかわからないし
      基本的に水はよどんで腐ってるし やたらデカイし
(のりこ)>この渇水のネタはよくニュース媒体で見ますよね
(しびる)>うん 生活環境が沈むってのはよく作品に活用されるけ
      ど それが再びあらわになるってのはそんなに使われな
      いじゃん? ならそれかってのが企画意図だな
(のりこ)>そうですね ダムに沈む村とかって ホラーなら沈んだ
      村が因縁の原因で 渇水で現われたのはニュースで重宝
      されますけど 作品のネタにはならないですもんね
(しびる)>そゆこと まあダム関係でなにか描いとかなきゃっての
      は基本だったけど ほら いやあダムの話は描いたこと
      ないんですよってのは作家の端くれとして恥ずかしいし
(のりこ)>それは恥ずかしいことなんですね よく聞きますが
(しびる)>そりゃ恥ずかしいだろ グルメ評論家がタラバガニ食っ
      たことないんですよって言うくらい恥ずかしいな
(のりこ)>タラバガニですか
(しびる)>タラバガニな
posted by 篠原しびる at 02:30| シンガポール ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 連作系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年09月26日

連作22 涼連作13 ののさまはいつも

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 種別 連作系第22期 涼連作13
 題名 『 ののさまはいつも 』
 初出 ニフティサーブ/FJAMEA/18番会議室
    1997年02月12日02時21分
 注釈 行頭スペース+30W
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SUBJ:【涼連作】13 ののさまはいつも

 Sibi-Tem V.4.1

 飄々と涼しげな でも無責任じゃなくて 涼連作 #13(B群)
 



         『 ののさまはいつも 』


                        作:しびる





  拘りがないわけじゃないけれど その拘りが他の人と少しずれて
 いるなんてことを 自分の評価として他人から聞くこともあるから
 見る人によっては拘りがない人間だなんて思われたりも している
 のかもしれない まあどちらでもいいけれど なんて感じかな
  どうでもいいことは脇に置いといて この場合の脇は座って左側
 のこと 右側に置いてあるのはどうでもいいの反対 あたしの命と
 引き換えてもいいもの 静かに黙って目を閉じている なにかに拘
 るのならこの娘だと思う あたしの娘が座っている

 『しいちゃんは なにをお祈りしましたか お願いしてないでしょ
 うね お願いするとダメになりますよ お祈りをするのです』
 『まだ 今日はお爺ちゃんにお祈りしてるの まだ途中だもん』
  畳の上に座布団を並べる あたし専用と娘専用 きちんと正座し
 て暫く あたしは毎日同じ台詞をつぶやく 朝日が煌めく
 『お爺ちゃんとお婆ちゃんだけじゃダメですよ 御先祖様全員にお
 祈りをしなくては それが正しいお祈りの方法です』
 『お爺ちゃんとお婆ちゃんしか知らないもん 御先祖様ってダレ』
  巨大な平屋建ての屋敷 その北東の端にある部屋 入れ換えたば
 かりの畳は12枚 高く天井に入り組んだ欄間 娘とあたしは並ん
 で座る 目の前には仏壇 ゆっくりと線香の煙が漂う
 『御先祖様は御先祖様 お爺ちゃんとお婆ちゃんもしいちゃんの御
 先祖様 誰って説明できないくらいたくさんの人がいるの』
 『おかあさんも知らないんじゃないの とにかく途中だもん』
  目を閉じて両手を合わせ 娘は小声で静かに話す 小学3年生に
 なる娘は親馬鹿でも素直な女の子 あたしが最も大切にしている時
 間を一緒に過ごしてくれる 会話もまた至福のエッセンス
 『はいっ 終わりました 今日はみんな仲良くをお祈りしました』
 『お母さんは しいちゃんとお父さんの健康 それと交通安全です
 学校や会社に行く途中で 事故に遭わないようにお祈りしました』
  自分なりの道徳心は持っていたけれど 信心となれば別問題だっ
 た 毎朝の務めは嫁いでから すぐに御両親は揃って他界 残され
 た習慣はあたしのやるべきこと そうなのだから そう
 『でも どーしてお願いしちゃいけないのかな お祈りとお願いの
 違いはなんとなくわかるけど 自分のことがお願いでしょ』
 『そうですね 本当は同じような言葉です でもしいちゃん 謙虚
 って言葉を知っていますか 無理にお願いしないのがお祈りです』
  この説明も何度目か もしかすれば毎日同じ まるで朝の挨拶の
 ように 朝日の煌めくこの時間に 娘と並んで手を合わせる 泣く
 ばかりの赤ん坊だった娘がもう小学生 いつしか言葉が整い 今で
 はこうして意思の疎通に不都合はない なにやら感慨深く
 『無理にお願いしないのかあ それじゃ自分以外のことでも無理な
 お願いは聞いてもらえないのかな お祈りって難しい』
 『そんなことありません しいちゃんの御先祖様は みんなしいち
 ゃんの味方ですよ 凄くたくさんの人が しいちゃんを見守ってく
 れているの だから無理にお願いしちゃダメなのですね』
  煌めく朝日は鴨居にぶつかり ちょうど仏壇に影を作る 仏具の
 間に飾られた遺影は誰のものだったか 義父か義母 すぐに思い返
 せないのは何故だろう あたし自身の信心は如何程か
 『そうかもしんない あたしだって勉強しようってときに 勉強し
 なさいって言われるとヤル気がなくなるもん それと同じでしょ』
 『そんな感じでしょうね 御先祖様はヤル気がなくなるとかではな
 いかもしれませんけど 見守ってもらうなら失礼のないようにね』
  娘はあたしの娘であると同時に 夫の娘でもある この家の先祖
 は娘の先祖ではあるが あたしの先祖ではない 子供は常に親の倍
 の数の先祖を背負う 娘は無数の魂に加護されて暮らしている
 『昔は自分のこととかお願いしてたけど 今はおかあさんの言うこ
 とがわかるから だから大丈夫 もう子供じゃないもん』
 『しいちゃんも知らない間にお姉さんね みんなの幸せが自分の幸
 せって それがわかるのなら大丈夫 お母さんも安心ですよ』
  不思議な感覚 なんとなく覚えている完成型に向かって レゴブ
 ロックを組み立てていくような 過去に訪れた場所に向かって ぼ
 んやりと歩いているような 言葉を発するごとに なにか大切なこ
 との輪郭が定まる 不安と安堵の入り交じった 不思議な感覚
 『こうしておかあさんと話していると あたしも凄く安心するの』
 『安心 そうね お爺ちゃんやお婆ちゃんのように お母さんもず
 っとしいちゃんを見守っていてあげるわ いつまでもずっとね』
  ゆっくりと朝日が移動する 隣りに座る娘は手を合わせ目を閉じ
 て 徐々に差し込む光が時を告げる こうしているのはいつからか
 小学3年生の娘は静止した時間 娘の髪を撫でようと手を延ばして
 それを合図に時間が動き始めた 不意の声は背後から
 『しいな もう時間だぞ 母さんと話しているのもいいが そろそ
 ろ朝飯を作ってくれないか 腹が減って困ってるんだ』
 『うん すぐに作るから ちょっと待ってね』
  声の主は夫 その声を聞きながら すべての輪郭が定まった 娘
 の目蓋がゆっくりと開いてゆく あたしの視点は観念へと変化して
 娘の体をゆっくりと抱き締めてゆく 高校生にまで成長した姿 小
 学3年生の記憶は 彼女が心に留めるあたしの記憶
 『あまり待てないな しいなの朝食を食べずに出勤するのは でき
 れば回避したいと父さんは思うぞ なんだ 座布団は2枚か』
 『うん ちっちゃい頃はこうしてね おかあさんと御先祖様にお祈
 りしてたの お願いしちゃダメよって おかあさんの口癖』

  娘が見つめるその先には 朝日を浴びたあたしの遺影が微笑んで
 いた あたしの最も大切な時間 朝のこの一時を 娘は今も一緒に
 過ごしてくれている あたしの大事な 命と引き換えてもいい大切
 な娘 いつもこうして ずっと見守っている いつも





             》 しびる 《
+++++++++++++++++++++++++++++++
(のりこ)>この作品は 私の最も大好きな作品のひとつです しび
      さんのこゆのを読ませてもらうたびに 私がこの事務所
      のスタッフであることを誇りに思います
(しびる)>それほどかねえ あまりに予定調和だから 展開がやぼ
      ったいよな もすこし整理できなかったかね
(のりこ)>んー 充分じゃないですか お母さんの1人称で始めて
      途中から記憶の混濁が怪しいなあと思わせて ぼやーっ
      とぼやかして最後スッキリまとめる すごいですよ
(しびる)>その辺はうまくいってるけど ヘッダの部分はうるさい
      な あそこは情景描写で片す方がキレイか
(のりこ)>お母さんの思い入れが溢れてるってことでいいでしょ
(しびる)>後半からフッタはいい流れなのになあ オチを完全に決
      め込むと 作業中にだれるんだよな 悪いクセだわ
(のりこ)>そゆこと仰ると読後の余韻がだいなしに
(しびる)>なら最初から解説部分を省けばいいじゃん
posted by 篠原しびる at 00:04| シンガポール ☁| Comment(0) | TrackBack(1) | 連作系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年09月25日

連作22 涼連作12 へきすべくして

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 種別 連作系第22期 涼連作12
 題名 『 へきすべくして 』
 初出 ニフティサーブ/FJAMEA/18番会議室
    1997年02月06日00時38分
 注釈 行頭スペース+30W
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SUBJ:【涼連作】12 へきすべくして

 Sibi-Tem V.4.1

 飄々と涼しげな でも無責任じゃなくて 涼連作 #12(B群)
 



          『 へきすべくして 』


                        作:しびる





  市街地から数キロ 幹線道路から少し分け入り小山がある その
 小山に寄生するように 会場となる某私立大学が存在していた 安
 い土地を贅沢に使い 疎らに点在する校舎群 教職員専用駐車場は
 当然のこと 生意気にも学生専用の駐車場も広大な面積である
  講演会聴講者はその学生専用駐車場に車を停める 今回の仕事は
 交通整理だった ウチの設計事務所が加盟するところの連合会の主
 催する講演会 聴講者の大半は事業主かその関係者 演者は会場と
 なる大学の教授 専門は都市環境経済学 地に足の着いた講義で定
 評のある先生らしいが なにも聞けなかった 交通整理だったから

 『ひゃはらあ ポーター君がいるじゃなーい 飲んでるかあ』
 『なんか できあがっちゃってるな 飲んでるから向こうへ行け』
  その講演会の打ち上げ 大学関係者をも含めての一次会は盛大に
 某ホテルの大会場で それから二次会は設計事務所連合会とイベン
 ト会社からの派遣スタッフで賑やかに 三次会は崩れて大騒ぎ
 『できあがってない しらふ ノープロブレム 飲んでるか』
 『島崎さーん おたくの課長さんが暴れてますよーっ 困った奴だ
 仕方ないから座れ みみこは弱いんだから自重するように』
  大暴れしているのはオフィス島崎の女子社員 三次会は系列事務
 所毎に分かれてしまったから ウチの事務所と島崎さんのところは
 同系列ということになる 社長同士が元同僚なのだ
 『みみこって言った あたひ達の仲はさ 公然の秘密なのにひゃ』
 『呂律が回ってねーじゃん 公然の秘密なら構わないだろ こいつ
 普段は猫被ってるでしょ あははは その反動で騒ぐんですよね』
  オフィス島崎の専務さんと喋っていた 仕事を一緒にすることは
 業種からして少ないけれど ゴルフコンペやこのようなイベントで
 は同席することが多い バカ女との関係もソレ式だったりする
 『落合君は減り張りがあってよろしい まだ少し結婚退職させたく
 ないものだな 次代の幹部候補として考えていたりする ふむ』
 『ひゃありい 幹部候補だって 聞いたでしょ 祝杯を上げよう』
 『じきに辞めるから言ってくださってるんだ 少し静かに喋れ』
  自分で言うのもなんだと言うのもなんだが 落合みみこは美人で
 ある それに普段は仕事もできるらしい らしいとか言っているが
 この場にいる何割かの人間も 彼女が飲んで騒ぐことを知っている
 『いやしかしらね のんちゃん あたひは嬉しいわけだあね のん
 ちゃんと専務さんに祝福されてひゃあ ぐすんぐすん』
 『この場でのんちゃんは辞めろよな なんでそこで泣きが入るんだ
 みみこはウルサイから退場だな 誰かに引き取ってもらおう』
  馬鹿騒ぎの飲み会だが そこここで怪しげな内緒話も交されてい
 る 系列4事務所の合同だから そこはそれの業界話の情報交換だ
 今だってオフィス島崎の専務さんと喋っていたのに この業界は仕
 事を覚えればすぐに独立 各種の情報はなによりも貴重
 『野垣さんはのんちゃんですか まあなにより結婚するのも大切で
 すからな 家庭は必要です 落合君 聞いているか』
 『聞いていますよ やらなあ のんちゃんは野垣君じゃなくてのん
 ちゃんですよねえ ええっ のんちゃんてば誰と結婚するのっ』
 『こらこら ひとのグラスをオモチャにするな 飲まないぞ』
  専務さんは既に社交モード 伏せ語をみみこが叫んでしまうのを
 危惧してのことだろう まったく配慮の足りない女だ 他の人間は
 騒いでいても押さえるべきを押さえている 無礼講でもない
 『飲んで 飲んでくれなきゃやだっ なーんてね あははははは』
 『チョコチップとオレオが入ってるじゃないか すみませんね こ
 いつばかりが騒いでしまいまして なんとお詫びしてよいか』
 『ウチのかわいい社員ですから お詫びするなら私でしょう 落合
 君 こうなれば君がいちばん偉いのかもしれないぞ ふうむ』
  ふうむのところで専務さんの目が細くなる 途端に馬鹿笑いして
 いたみみこの表情が変化する いくら馴れ合っていても あちらの
 事務所とこちらの事務所 遠くからウチの社長の笑い声
 『少し騒ぎすぎました いけませんねえ 野垣君 静かに飲みまし
 ょう 高橋専務 すぐに水割りを御作りします いそいそ』
 『いそいそって言葉で言うのな みみこってば怒られてやんの』
 『怒ってはいませんよ さて 年寄りは年寄り同士で仲良くするこ
 とにしますか 先程の話 片岡さんにそれとなしに伝えましょう』
  苦労して専務さんと話す状況を作ったのに みみこの馬鹿騒ぎで
 台無しである 片岡はウチの社長の姓 片岡設計事務所の社長だ
 『はいっ ええその そうですね よろしくお願いします』
 『悪いようにはしませんよ 落合君もお世話になっていますから』
  専務さんは微笑みながら立ち上がる 合わせて立ち上がり最敬礼
 みみこは黙々と水割りの調合 やはりかなり酔っているようだ 他
 所の社員がこの丁寧さなのに まったくダメな社員である
 『みみこさ 飲めば騒ぐってものでもないだろ ふう まったく』
 『はいっ 特製の水割り あの高橋専務ってのも曲者よ 仲良くす
 るのも気を付けなくちゃね 毒にも薬にもなるタイプだから』
  溜息をついて座り込む みみこを見れば素面に戻っている 加え
 て訳知り話をしているではないか 普段はあまり仕事の話もしない
 が みみこのこんな台詞はどんな状況であれ珍しいことだ
 『なに 騒いでた振りをしてたわけ 曲者なのは知ってるよ どう
 転がっても大丈夫な話しかしてないもの ある意味婉曲だね』
 『ならいいけど そっちの社長さんの名前がでてたじゃない 危な
 いことはしないのが得策 石橋を叩いて壊せば設計事務所』
  いつまでも平でやってくつもりはない 噂程度の情報は流してお
 く 10年経てば誰が偉くなっているかわからない業界 入社10
 年目なら危ない橋も渡ってみたりする 石橋なら尚更だろう
 『変な格言だな さてこちらも移動するか こんなところで家族の
 団欒もないだろ 鈴木さんのところに乱入しよう みみこも来い』
 『家族の団欒だってさ あはははは 酒が腰に来て立てない』

  酔った振りをしていただなんて 結局かなり酔っているのだ た
 またま素面な瞬間が訪れただけであって かわいい顔をして両手を
 延ばしている この調子では潰れるのも時間の問題だろう
  某所のクラブを貸し切っての大宴会 こんな機会に同業者の交流
 を深めたいのに 泥酔女を連れてはそうもいかないか 騒がしい周
 囲を後目に座り直す みみこの顔を眺めているのも それはそれな
 りに楽しくないわけでもない と考えるしかないだろう







             》 しびる 《
+++++++++++++++++++++++++++++++
(のりこ)>飲み会のお話ですね OL時代にもあまり仕事関係の飲
      み会って知らないんですけど こんなものですか
(しびる)>んなもん場面場面だろうが よかさ 企画段階ではこれ
      もでらーとの亜種として考えてたんだけど
(のりこ)>あー そういや設計事務所業界ですよね なんか最近は
      設計業界もキナ臭い話題が多いですが これはそゆのが
      なかった平和な頃のお話ですね
(しびる)>まあな でもなんか描き始めると これはこれで独立さ
      せても問題ないかなあとか思ってさ てきとうに創った
      わりにはキャラも動いてるし むしろシリーズ化できる
      か なんて勢いじゃん? とかって始めないけど
(のりこ)>てきとうなキャラって(苦笑) でもまあみみこちゃん
      は身近にいそうな感じですよね 飲んでるとしらふなん
      だか泥酔してるんだか たぶん酔ってるんでしょうけど
(しびる)>いるかねえ いるかもなあ でも創作キャラだし
(のりこ)>チカラ入れてるのか抜いてるのか どっちですか
(しびる)>そりゃ 描いてたときは全力だし 解説するときはてき
      とうだろ 自作についてならそんなものだわな
(のりこ)>ふうむ まあいいですけど
posted by 篠原しびる at 23:01| シンガポール ☁| Comment(0) | TrackBack(1) | 連作系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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