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・ですから人物等も架空のものです(一部は実在します)
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・体質によって読後にアレルギー反応を起こす場合があります
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・どのような表記表現もすべて好意的に解釈してください
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・ブログは生ものですので開示後は速やかにお読みください
・室内を明るくして モニターから離れてお読みください
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・ブログ内容の複製配布商業使用は常識の範囲内で許可します

2006年10月11日

連作23 廉連作13 あめもよい

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 種別 連作系第23期 廉連作13
 題名 『 あめもよい 』
 初出 ニフティサーブ/FJAMEA/18番会議室
    1997年03月28日02時15分
 注釈 行頭スペース+30W
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SUBJ:【廉連作】13 あめもよい

 Sibi-Tem V.4.1

 廉直に清廉に 無心から始めるのもいい 廉連作 #13(B群)
 



          『 あめもよい 』


                        作:しびる





  かなり郊外の それも小高い山の山頂にある 一般的な交通手段
 は路線バス これは学校と契約しているらしくて 頻繁にターミナ
 ルと学校を往復している 大抵の生徒はこのバスを利用して通学し
 ている だからバスが走らなければ休校になる 当然だろう
  しかし路線バス通学以外の生徒もいる バスターミナルは山の麓
 にあるけれど それよりも学校に近い場所に自宅がある生徒は自転
 車通学をしている この自転車通学は書類審査があって 条件を満
 たさなければ許可されない 妙な話だけれど 学校側としては自転
 車通学よりも路線バス通学を推奨している その方が費用が掛かる
 のに なんでも過去に自転車通学中に死亡事故があったらしい

 『なに 変に静かだと思えば やっぱり休校なわけ なんだかな』
 『さっき決まったんだよ バス組は誰も来てねーもん 帰るか』
  バス会社がストを起こせば休校になる そんなことは前日からで
 もテレビでわかることだ 今日の休校はそれ以外の理由 台風並み
 に発達した低気圧は台風じゃない 台風なら即休校 判断は難しい
 『今更帰るのも悔しいわよね この暴風の中を無理して登校したの
 に 結局は杉浦第3小学校だけが割を食うのよ いつでも』
 『このままいても仕方ないだろ まきこだって自分で自転車を選ん
 だんだからさ 文句を言うのは筋違いじゃないか いいけど』
 『自転車組は特権階級だもんな なんたって機動力 吉岡はどうす
 るんだ 弁当を食ってから帰るか 夜まで収まらねーぞ』
  教室には3人だけ 僕も含めて全員が同じ小学校の出身だ この
 高校の学区には中学が4校 その内の杉浦中学の さらに杉浦第4
 小学校の出身者だけが自転車通学を許可されている 外は暴風雨
 『まきこは部活して帰るのか 俺達は弁当だな そうと決まれば』
 『さっき朝食を食べたところなのに 城島の胃袋ってなんだかな』
  みんな幼馴染み 夕方のような外の暗さに教室の照明が輝いてい
 る 黒板に落書きをしているのは城島 窓際で腕を組み 眉を寄せ
 ているのがまきこ 高橋まきこだ ちなみにまきこは女子バレー部
 『どうせ食べてないんでしょ 寝坊して朝食抜いて ははん それ
 で休校だもの ばっかみたい なにごとも中途半端なのよねえ』
 『いいじゃん別に てきとーだから致命傷にならないんだぜ 自分
 の首を絞めるような生き方はしない 吉岡には理解できるよな』
  黒板に大きく描かれているのはまきこの似顔絵 三角形の上に蝶
 の羽を乗せた記号のようなもの 1秒間に1個は描ける 昔はこれ
 を描いただけでまきこは泣きだしたものだ なにか懐かしい
 『なにを言ってるんだか どちらにしても休校だろ こんなところ
 で同窓会をしてても仕方ないし 帰ろうかな どうせ濡れるもん』
 『あたしも帰ろうかな こんなところでバカと同じ空気を吸ってて
 もつまらないわよね あたし達は帰るけれど それは消しておきな
 さいよ 明日まで残ってたら 悲しいことになるわよ 聞いてる』
  まきこはさらに険しい表情で城島を睨み付ける 黒板の似顔絵は
 既に数十個になっている 執り憑かれたように描き続ける城島も変
 だけど まきこの悲しいことって脅しも変だ どうでもいいけど
 『あと30個描いてからだ あと少しでなにかがわかるような気が
 する 俺って まきこを愛してるのかもしれない これは愛だ』
 『ばーか どうしてそんなことが真顔で言えるのかしら 城島 あ
 んたが告白するには 輪廻2回分は足りないわ 2回死になさい』
  なんだかんだと仲の良いふたり 普段は他の人間に紛れてしまっ
 ているけれど こんなふうに昔の知り合いだけで話をするのも面白
 い 小学生の頃なら 僕はこのふたりと距離があったのにだ
 『あたしのために死になさいってか まきこは凄いことを言うよな
 でもだな 俺は死なないぜ もう少しでなにかがわかる ふうむ』
 『なにがわかるわけ さっきからだと少しずつ形が変わってるよう
 な感じだよね なにかこう 横にすれば魚の形みたいな』
  どうでもいい話 休校なのは決定事項で このままここにいても
 仕方ないのはみんな納得している ただ問題は徐々に強くなってい
 く暴風雨 この中を帰宅するのは勇気が必要 びしょ濡れは必至
 『ビンゴ! それだな まきこ魚類説 つまりこうだ 前から生臭
 い女だとは思っていたが お前って魚だったんだな って がっ』
 『殺すわよ もういい歳なんだから限度を知りなさい 今あたしが
 殺さなくても その調子で世の中を生きて渡れると思うわけ』
  含み笑いしながら城島が振り返る その襟首をまきこが掴む そ
 のまま上に持ち上げて 黒板に押しつけられた城島は苦笑い 折り
 良く窓の外では雷が轟く どこまでも馴れ合いだったりする
 『思う かわいらしくって仕方がないんだよな ほら 好きな女の
 子は苛めたくなるだろ まきこも俺を苛めるのか 完璧な理論な』
 『はん もういいわよ 魚で結構 煮るなり焼くなりしてちょうだ
 い これじゃいよいよダメらしいわ 今のうちに帰るのが正解ね』
 『そうかもしれない 城島はどうする 本当に弁当を食べるわけ』
  物凄いことになってきた 窓はアルミサッシなのにガタガタ揺れ
 ているし 打ち付ける雨はかなりの量 絶え間なく雷は鳴っている
 わけで こんな調子が夜まで続くのなら 見切りは大切だと思う
 『どうせなら朝までいるか そもそも帰ってもだな 平日のテレビ
 なんか面白くないぞ 出掛けるわけにもいかないだろ これじゃ』
 『だからってこうしてるのか それもなんだかなあ まきこはどう
 する 篭城するのか突撃するのか 城島は篭城組らしいけれど』
  会話も聞き取れないような轟音だ 自然と内容もいいかげんにな
 る 誰もなにも決めたがらない どちらに決めるのもうんざりする
 ような結果は見えている たぶんもう少しダラダラが正解だろう
 『突撃組 と思ったけれど 付き合うわよ城島 食べましょうか』
 『なんだ まきこも寝坊で朝食抜きか だと思ったんだよな』
 『結局そうなるわけ どうでもいいけど なんだかなあ』

  窓の外をじっと眺めて まきこの意見はこのていたらく 苛々し
 ていたのは空腹が原因 なんともおざなりな馴れ合い状態ではある
 けれど 今更だからどうでもいい それなりに楽しくなくもない
  楽しそうに弁当を広げる城島と 向かい合って眉を寄せるまきこ
 僕は仕方なく近くに座り 朝の教室でピクニック気分 外はとても
 じゃないけど行楽なんて天気ではなく 絵に描いたような暴風雨だ
 ったりする なんでもいいけど 夜までには帰れるのかな





             》 しびる 《
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(のりこ)>この学校はいつもの学校ですよね 校舎が小高いところ
      にあって バスターミナルが近所にあって もしかすれ
      ばしびさんの母校がモデルですか?
(しびる)>いや ウチの学校はぜんぜん違うな 似たようなところ
      は知ってるけど そこも基本は自転車通学だったし
(のりこ)>そうですか まあそりゃそうでしょうね あと この頃
      の作品はどうもセリフの判読がむつかしいのが多いです
      よね ええっと誰が喋ってるのかな って感じで
(しびる)>すごい加速が付いてたからな 赤○氏みたいに と某が
      言ったで追い掛けるのは負けだと思ってたし
(のりこ)>の長者番付作家の○川先生ですか あの人の文章は謎が
      ないですよね まるで映画の台本のような
(しびる)>ホントはそうじゃなきゃいけないのな この頃はきちん
      と反省して わかりやすく描こうと努力してるし
(のりこ)>ですよね 内容や展開にこそ作家性や拘りが必要なので
      あって まずは伝わらなきゃ意味ないですし
(しびる)>ふん 普段ならなにを生意気なことって怒鳴り散らすと
      ころだけど それ正論 守らなきゃいけないことその1
(のりこ)>正しいこと言って叱られるのもイヤですし
posted by 篠原しびる at 17:54| シンガポール ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 連作系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年10月10日

すきま あにめだいすき 48

(しびる)>ういーっす んじゃまアニメの新作やるか
(のりこ)>あ おはようございます えーっと修正です 前回だか
      に『ホリック』が次週で最終回だと発言したのは間違い
      です 当事務所の誤報についての取り決めは 当事務所
      発行のブログ ヘッダ部分の『*閲覧するにあたっての
      注意事項』における該当項を参照してください そゆわ
      けで謝りませんので そこんところヨロシクです
(しびる)>間違ったら謝ろうよ まあいいけど なんかでも今週の
      ホリックのラストはあきらかに最終話の締めだよな ワ
      タヌキの母親ネタは 2話通話でいかにもラストの大ネ
      タだったし 完全に大締めの流れだったじゃん?
(のりこ)>ですよね 侑子さんがアップで見栄切ったときには あ
      あ長いこと楽しませてもらったなあって感慨に浸りまし
      たもん したらば次週の予告でしょ 珍しくED飛ばさ
      ずに全部見たのに 時間を損しました(ぷんぷん)
(しびる)>まだ23話だしな あとぜんぜんまじめに見てない『R
      AY』も終了 最終話だけ見ても筋わかんないけど
(のりこ)>あの長髪の情けない顔の男性は誰ですかね なんかクロ
      ーンとかいってますし これ最後まで見ます?
(しびる)>もういいや 時間がもったいないし しかしなんだ ウ
      チがどんな情報を流そうとまったくツッコミが入らない
      のはどうかね 気が付かないだけで毎回かなり怪しいの
      か(苦笑) そこんところも考えた方がいいのかな
(のりこ)>生暖かく見守ってくださってる それでいいじゃないで
      すか(笑) ってことで新作いきましょうか
(しびる)>うい どんどん未確認の怪しい情報を流してさ あのブ
      ログはどうよ?って陰口言われるようになろうぜ
(のりこ)>またそういうことを仰る んじゃ時系列でいきますかね
      ならまず最初は『ブラックラグーン2』 前作の続編で
(しびる)>設定そのまんまの続編だわな OPもまったく同じ
(のりこ)>ならまあそのまま視聴続行ですかね 前のフォルダーは
      別作品に使ってますけど 新規で開設します
(しびる)>議論の余地はないかな ロックはあいかわらずジャパニ
      ーズビジネスマンなのか 馴染まないヤツだな
(のりこ)>ある意味スタイルに固執したキャラばかりですしね ま
      あみんな荒んでること荒んでること あはは(笑)
(しびる)>初回のネタは双子の殺し屋か しかし こんなところに
      も吸血鬼ネタか あんまし外さなきゃいいけどな
(のりこ)>どうですかね そもそもユメのマフィア天国の話でしょ
      絵空事ならなんでも同じ しびさんの持論ですし?
(しびる)>まあな とにかくフォルダ作成 継続視聴でよろしく
(のりこ)>了解っす なら次は『パンプキン・シザーズ』です
(しびる)>さて めんどうそうな設定だな GONZOか んー
(のりこ)>ただ戦争なんですかね お姫様が少尉さんですか B
      パートのこれは生理的に受け付けませんが
(しびる)>謎の元軍人が超人的パワーの片鱗を見せる 基本に忠
      実だな 本来ならもう数本はチェックするところだが
      今期も尋常じゃない新作の数だし んー 切るか?
(のりこ)>私的には気になる部分ゼロです まーったく興味なし
(しびる)>なら切るか EDがちょっとだけあれだけどな
(のりこ)>んじゃパンプキンシザーズは終了と んじゃ次はこれ
      かな『護くんに女神の祝福を!』
(しびる)>ちびっこ主人公か また魔法絡みだし 生徒会と な
      んかこのジャンルには心のヒダが延びきってるよな
(のりこ)>ですね この緩さ なにを期待して見るのか なにを
      期待して作られてるのか いろいろ時間のムダですね
(しびる)>ちなみにパンツ見える系だし ややオッパイアニメだ
      し しかし 脳内のどの部分もまったく刺激されない
      この緩さ 時間のムダだから即中止決定な
(のりこ)>んじゃ護くんも終了と 次は『コードギアス』です
(しびる)>なんか戦争多いな そういう御時勢かね モビルスー
      ツの登場が戦局を劇的に変化させた ってやつか
(のりこ)>キャラデザにCLAMPの名前が なるほど
(しびる)>こういうのも食傷気味だなあ とにかく最近のは初回
      から飛ばすじゃん キツイんだわ あ ナイナイサイ
      ズのゲストがベッキーじゃん わー 録画しなきゃ
(のりこ)>こっちに集中してくださいよ どうするんですか?
(しびる)>なにが? あー コードギアスはあと数本チェックし
      て判断する よって継続審議扱いとする
(のりこ)>はいはい コードギアスは継続審議と んじゃ次はど
      れかな これか『銀色のオリンシス』っす
(しびる)>タイトルに付いてるTOKIOってのはなんだ なん
      か微妙なデザインのメカが闊歩してるなあ
(のりこ)>ランクの違う生物を狩るって設定 なにやら懐かしい
      香りがしますが あと古川さんの声とか(笑)
(しびる)>これもまったく脳に刺激が伝わってこないなあ と思
      いきやオッパイアニメか 取って付けたシャワーシー
      ンに逆に悲哀を感じるよな なのにパンツ見えない系
(のりこ)>そういうことばっかし言ってるとー
(しびる)>とにかく終了 時間がもったいないから即時終了な
(のりこ)>はいはい オリンシスは終了と 次はー
(しびる)>悪い もう眠くなったから帰る 続きはまたあした
(のりこ)>ういっす んじゃまたあしたということで お疲れさ
      までした お気をつけてお帰りくださいまし
(しびる)>別位相だけど座標は同じだからな んじゃま
posted by 篠原しびる at 01:37| シンガポール 🌁| Comment(0) | TrackBack(0) | すきま あにめだいすき | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年10月07日

連作23 廉連作12 俯瞰(5分28秒)

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 種別 連作系第23期 廉連作12
 題名 『 俯瞰(5分28秒) 』
 初出 ニフティサーブ/FJAMEA/18番会議室
    1997年03月26日16時14分
 注釈 行頭スペース+30W
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SUBJ:【廉連作】12 俯瞰(5分28秒)

 Sibi-Tem V.4.1

 廉直に清廉に 無心から始めるのもいい 廉連作 #12(B群)
 



         『 俯瞰(5分28秒) 』


                        作:しびる





  標高差はどれくらいだろうか 視界はどこまでも無限大にフォー
 カス 聳える樹木の先端部分を上から眺める 昼過ぎの太陽はほぼ
 垂直に差し込み 距離も陰影が不確かなら計りようがない
  先程から同じ眺め 右手に見えるのは眩暈のするような樹海 黒
 を基調にした濃緑の世界 激しい角度で一気に下り 数キロ単位で
 再び上昇する 本来なら人の踏み込む場所ではないだろうに 強引
 な有料道路は尾根伝いに伸びる これが素晴らしい眺めかどうかは
 それぞれの価値観の問題 どちらにしてもすぐに飽きる

 『ふあっと なに まだ動いてないの 事故かしらね』
 『ああ 5メートルくらい走ったか 時速5メートルだ 寝てろ』
  渋滞の車内 市街地なら退避方法もあろうが 転回もできない専
 用道路に車の列 確かに行楽日和 考える気にもならない
 『もう起きたから しょっと こんな時ってなにをしてもらうのが
 嬉しいの ご苦労さんだからなんでもしてあげるわよ』
 『ふん そうだな なら返事しなくてもいいような話をしてくれ』
  部屋でテレビを見ているのも飽きたから どこかに出掛けようと
 誰が言ったか 海原を見た記憶は数時間前のもの それ以降は代わ
 り映えのしない景色ばかり 気分は完全ににフラット ベタだ
 『いつもそうじゃない あたしが喋って あなたに返事してもらう
 ことって少ないと思うけれど その辺はこの際かな いいけど』
 『俺も喋ってるだろ 覚えていないだけだな タバコ』
  隣に座るのは女性だ 関係なんて説明するまでもない 同じ部屋
 で暮らし 常にどちらか一方が仕事をしている 暗黙の了解は不文
 律 あたりまえが馴れ合いなら それが世の中を定める道理だ
 『はいはい でも密室だから窓は開けるわよ なんか話っても こ
 うも毎日一緒だと そんなに珍しいことも起きないわね でしょ』
  鼻腔に掛かる刺激が心地よい 遠くからクラクション 限界を超
 えたドライバーがどこかで爆発している どうにもならないことな
 ら仕方がないと 楽になる方法も人知の中には用意されている
 『ううむ あそうそう 先週オークションに行ってきた話はしてな
 かった ブランドもの関係 あとはエミちゃんの創作ジャンケン』
  鼻から煙を吐きだして 前の車両のステッカーを眺める 俺の名
 前と同じなのはバイクメーカー それ以外はFM局 よもやすべて
 の会社の社員でもあるまいし なにが楽しくて広報に荷担する
 『なんたって市価の1割程度よ 最低落札価格が1割に設定されて
 るのね だからそれ以上の値がつかない仕組み 高いのは買わない
 もの 品物は山積みだし 市場原理からなら供給過多の暴落よね』
  ぼんやり空を眺める まったくの晴天は完全な青一色 じっと見
 つめればなにやら光る点 青い空にきらきらと不思議な輝き
 『場所代も回収できないんじゃないかって そんな心配もするくら
 い 今着てるのもそうよ 古着じゃなくって 全部が新品』
  発光体は不規則に明滅し そして不意に消えてなくなった もし
 かすれば網膜に出血でもあるのか UFOもしくは網膜剥離だ
 『古着のオークションもあるけど それってなにか しみったれた
 感じでしょ なにも他人が着古したものまで買わなくても ねえ』
  サイドミラーに人影 後方から誰かが歩いてくる ちらちらと赤
 い染みのようなものは女性の姿 長い髪の赤い服の女性 渋滞に我
 慢ができなくなったか それとも男に放りだされたか 表情までは
 確認できない距離 この陽気に散歩も楽しかろうか
 『そうそう この前エミちゃんが引き付け起こしたって 夜にいき
 なり電話があったのよ 妹ったら同じくらい混乱して あれじゃ母
 娘揃って泡吹くんじゃないかって でも実際に見れば凄いの』
  一車線の一方通行 どちらが下りか知らないが 逆走車線は十数
 メートル上にある 奇妙な造りの有料道路 その路肩を女性が歩い
 ている どこまで歩くのか最近のSAまで数キロはある
 『引きつけってなにかしら 力んで白目むいて 憑き物って言うじ
 ゃない 霊媒でもできそうな 本人は覚えてないのよ 変よね』
  右側のサイドミラーに上半身 数台後ろを歩いている それなり
 の美人 直射日光に目も細めず すぐ後方の観光バスに隠れて ル
 ームミラーでは確認できない その瞬間 女性と視線が絡む
 『子供って大変だわ 生めば体型が崩れるでしょ 泣くわ吐くわ熱
 をだすわ 少し目を外せば怪我するじゃない 姪っ子で充分ね』
  そしてミラーから消えた 運転席の脇を通りすぎる間合いに 少
 し不釣り合いな時間が数秒間 しかし女性は通過しなかった バス
 の後ろを回り込んだのか それともそれ以外のなにかか
 『こんなとき子供がいれば大変よ お腹が空いたのトイレに行きた
 いの あたしも駄々こねようかしら そんなの毛嫌いするでしょ』
  前方の車両が少し前進 僅か数メートルの移動にクラッチを合わ
 せる 後方のバスは前進を断念したか バスの助手席にバスガイド
 が見える 無防備に座り込み 丈の短いスカートから下着が覗く
 『この調子で進めばいいのに こんな中途半端な乗り物じゃなくて
 UFOみたいに飛べれば渋滞もないでしょ それとも降りて歩くの
 が正解かしら 飛ぶか歩くか 文明の利器も形無しね』
  ルームミラーをぼんやりと眺める 虚ろな表情のバスガイドはど
 こを見つめるのか 魂の抜けたような瞳 つまらない仕事に予想外
 の渋滞 だらしなく股を広げ 目を開けて眠っているのか
 『このまま夜になるのかしら それも面白いかな この状況って飛
 行機の中や落盤事故のトンネルの中に似てるでしょ 産気づく女の
 人がいたり 誰かお医者様はいませんかって 大変よね』
  見るとなしにバスガイドの股間を眺める 薄暗い中に白く下着の
 色 隣の運転手は苛々と指でリズムをとり 搭乗する団体名までは
 読み取れない 眺めていると ガイドの股間がすっと暗く陰る
 『これだけの人数でこれだけの時間 きっと死んじゃう人もいるわ
 よ こんな天気にかわいそうに 逆に幸せかしら どう思う』
  その途端にバスガイドの目が見開かれる 驚いたような 少し隠
 微な表情の意味はなにか 股間の陰りが物体に変化する 数本の触
 手に丸い胴体 まるでクモのような黒い生物 慌てて振り返る
 『どうしたの どうでもいいけど前が空いてるわよ 少し走れるん
 じゃないかしら ほら どんどん走っていくわ ねえってば』
  誰かに声を掛けられたのか バスガイドが立ち上がる 何事もな
 かったかのように営業スマイル 黒いクモはどこにもいなかった
 『いや なんでもない どうやら解消するようだな ふん』

  少し角度が変化して かなり遠くまで見渡せる 車両の列は緩や
 かに進んで行く しかし行き詰まった予感は感じない おそらくこ
 のまま流れ続けるのだろう 数時間の淀みが一気に解放される
  雲ひとつなく快晴の青空が 濃緑の山並みに切り取られて拡がっ
 ている なにか感慨があるとするならば ただ倦怠感だけだ







             》 しびる 《
+++++++++++++++++++++++++++++++
(のりこ)>これはどう分類すればいいんですかね 異界もの?
(しびる)>そゆのの境界をどうにかできんかなと模索してた頃だか
      らな ムリこに分類するなら まあ 非日常系かな
(のりこ)>最初のUFOはちょっとどうかなと思いましたけど 少
      しずつ近付いてくる女性とか バスガイドちゃんの股間
      の異生物とか そゆのはちょっとおもしろいですね
(しびる)>助手席との会話に直リンクは気持ち悪いからさ 軽く繋
      げてみたのは演出不足かね こゆのはタイミングだしな
(のりこ)>後半にちょっとリンクするだけでしょ 私はこれくらい
      が小気味よいですけどね ただ タイトルにもなってる
      景色とのリンクは薄すぎるんじゃないかと思いますけど
(しびる)>んー ただの環境設定だしなあ そこはあまりいじるつ
      もりはなかったんだけど どうこうしようってなら U
      FOネタを拡げるとか? そゆのはダメだろ
(のりこ)>それもそうですね
posted by 篠原しびる at 21:35| シンガポール 🌁| Comment(0) | TrackBack(0) | 連作系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年10月06日

すきま あにめだいすき 47

(しびる)>ういーっす んじゃまアニメ枠の続きやるか
(のりこ)>あ おはようございます きょうは早くの来所だって聞
      いてましたのに なんかありましたか コーヒーっす
(しびる)>あー アフタヌーンを読んでて遅くなった
(のりこ)>まだ先月号を読んでなかったんですか なら『くじアン
      』の新連載とかご存じじゃなかったわけで
(しびる)>いや パラ見はしてたんだけど 先々月号から放置して
      て 小原慎司の新作とか 幸村も移籍前のコミックスを
      片し始めたし ちょい気合い入れてチェックしなきゃと
      思うと逆に腰が重くなるんだよな
(のりこ)>小原さんは『二十面相の娘』の人ですね 今回はかなり
      柔らかめの連載ですけど あと幸村さんの『ヴィンラン
      ド・サガ』はコミックスでようやく世界観が理解できま
      した やっぱし激ウマですよね それとアフタヌーンネ
      タならいつか言おうと思ってたんですけど 今回の植芝
      理一さんの連載 しびさんストライクでしょ?
(しびる)>あー 『謎の彼女X』な 植芝はディスコミで見切った
      なんて公言してるしなあ いまさらどのツラ下げてコミ
      ックスをチェックするよ? なんだよ 謝るよ
(のりこ)>謝ってるし(笑) 長いお付き合いですからねえ しび
      さんのツボは熟知してます故 んじゃXはチェックで
(しびる)>うん そゆことで しかし来月号の付録はどうよ アフ
      タヌーンは取り置きで買ってるんだけど あの付録がま
      んまプリントされた付録も込みでお取り置きか うひー
(のりこ)>しりませんよそんなこと もうなにをいまさらじゃない
      ですか それよか新連載の『くじアン』はどうです?
(しびる)>どうもこうも まあいいんじゃねーの ネタネタだから
      ちょいネタ薄感はあるけど そゆのもきちんと楽しんで
      こそオトナだ ってことにしておこうや まあ
(のりこ)>ならそゆことで あと 私的に論外でチェック対象外だ
      った『ラブやん』ですけど 最近なーんとなく軌道修正
      の雰囲気があるんですけど なんかコメントありますか
(しびる)>別に どうでもいいや コミックスは買うけど
(のりこ)>あと個人的に『江古田ちゃん』は要チェックなんですが
(しびる)>それよか 『世界の孫』のSABEっての たまたま他
      所で仕事してるのを発見したんだけど どこで読んだか
      は言えないのがウチのシーリングか やばやば(苦笑)
(のりこ)>なにがなにやら ところでこの枠ってアニメですよね?
(しびる)>あーそうそう えーっとな 終了点検で漏れ落ちがあっ
      た 『ゼロの使い魔』を忘れてたのな
(のりこ)>ふぁっきっすからーはーじまるーふーたりのこいのゆー
      くえー ってひらがなで唄うのもアウトなんでしょうか
(しびる)>とうぜんアウトだ のりこ 刑事告訴されて懲役10年
(のりこ)>それはいけませんね しかしかなり勢いつけて終わらせ
      た感がありますよね ちょい消化不良で
(しびる)>DVDにはオリジナルラストで云々って感じじゃねーし
      ままキレイに終わったんじゃないか 悪くないだろ
(のりこ)>虚無の魔法ってなんなんでしょうね いきなし伏線もな
      しに最強魔法で敵を全滅だー とかいわれましても
(しびる)>例えば最初の対ゴーレム戦のときにネタ振りしておくと
      か そゆのは簡単なことなのにな
(のりこ)>それはOPのことですか あのルイズちゃんの魔法は件
      の虚無系の威力ってことでしょ 零戦も飛んでるし 覚
      醒後って設定だろうと推測するんですけど
(しびる)>零戦のゼロも韻を踏むか なるほどな
(のりこ)>とにかく男女関係も含めていろいろ放置したまま終了で
      すね サイトくんがまったく元世界に帰りたがらないの
      も頷けますか 帰る必要ないでしょ ひどいもんです
(しびる)>ひどいよな もてもてだし異能者で無敵だし 普段はツ
      ンデレ娘のパンツ洗ってるし 帰るバカいないよな
(のりこ)>男の子のパラダイスですよね ホントは事故で頭打って
      昏睡状態のユメだったりして あーそうだ ガンダール
      ってガンダーラが元ネタでしょうか
(しびる)>そのーくにのなはーがんだーら ってやつか だろうな
(のりこ)>どうでもいいようなアニメでしたが
(しびる)>だわな 今期はそこそこ最後まで見てるけど これだけ
      の本数の中で残ったんだからままおもしろかったのかな
(のりこ)>それはなにより んじゃ次は新作関係ですけど
(しびる)>まだなにもチェックしてない 今週はコミックスのチェ
      ックで手が一杯だし また次回にやる
(のりこ)>はやく切るものは切らないと かなりヤバイですよ
(しびる)>うし 心得た
posted by 篠原しびる at 22:38| シンガポール ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | すきま あにめだいすき | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

すきま あにめだいすき 46

(しびる)>ういーっす んじゃアニメ枠やるぞい コーヒーな
(のりこ)>あ おはようございます てかお久しぶりです やっぱ
      お忙しいですか コーヒーっす ちゃんと寝てますか?
(しびる)>そゆこと言うなよ いちおうほぼ毎日活動してることに
      なってるんだからさ ってことは前にも説明したな
(のりこ)>そんなことは些末なことです 私はしびさんの心配をし
      てるんです 忙しいとホントにムチャするでしょ
(しびる)>ムチャ上等じゃん 仕事ばりばりで叱られるとは心外だ
      な お前何様だよ 上司の仕事に意見か ったくよう
(のりこ)>叱るって そういう受け止め方しかできないんですか
(しびる)>ふん まあいいや さて今期新作もどんどこ始まってる
      からさ その前に終了作品を片しておくかね
(のりこ)>んー ならまあいいですけどね 終了作品はなにがあり
      ましたかね まずはこれかな『ああっ女神さまっ』
(しびる)>いきなしそれか えーっと なにが最終回って感じの作
      品だしな てきとうにラストっぽいネタを持ってきて終
      了ってところか 特に通話のネタ振りもなかったし
(のりこ)>時間軸をいじる設定はややこしいですよね こゆの多用
      するとデタラメになりますし まま最終回ですね
(しびる)>またそのうち再開されるだろ んじゃ次いけ
(のりこ)>ういっす んじゃ次は『ひぐらしのなく頃に』ですがー
(しびる)>こうきたか てか よく考えればこれしかないかな パ
      ラレルワールドの亜種ってところだろ 時間軸の遷移は
      説明不足の感はあるけど キレイに落ちたかな
(のりこ)>サトコちゃんがゲームマスターだったんですね ケイイ
      チくんが1人称ぽかったので気付きませんでしたが
(しびる)>誰でもいいんだろうけど ラストのキャスティングで考
      えれば ちびっこのどちらかってことになるわな
(のりこ)>この構成はどう解釈すればいいのかずっと悩んでたんで
      すよ 分岐の派手なアドベンチャーなのかなとか どこ
      まで見ても惨殺ばかりでうんざりだとか
(しびる)>ウチは元ネタなしで見てるからさ 原作を先に踏んでる
      視聴者には失笑ものってことらしいけど よくまあこん
      なのを2クールキッチリ見終わったもんだ(苦笑)
(のりこ)>ですね まあこれはまたこれで んじゃ次いきます
(しびる)>『ザ・サード』やってるな もう視聴停止してるけどさ
      どうなってるんだこの話? まだ続くのか
(のりこ)>さあ 私も見てないですから んじゃ次は『となグラ』
(しびる)>これも最終回だかなんだか しかしこの登場人物たちは
      若いくせに昔話ばかりしやがってよう なにかってーと
      昔はよかっただのどうだの 年寄りクサイったらありゃ
      しねーよな いまを生きろ 未来に思いを巡らせろ
(のりこ)>あー なるほど そういえばそうですね なんかずっと
      閉塞感を感じてたのは そのへんが原因ですか
(しびる)>だろうな なんか閉じてるんだ 周囲にキャラが増えて
      も 肝心のメインが過去と未来を行き来するだけの構成
      昔っても高校生の過去にたいしてなにがあるってのか
(のりこ)>にゃーるほど とにかく引っ越しネタがラストの大ネタ
      ってのは簡単すぎますけど 原作が継続してる状態で仕
      方がないのかもしれません もしやの続編がある場合に
      あんまし奇抜ないじり方もできませんしね
(しびる)>実は両家の間に市の境界線があって 隣り合う市同士が
      戦争状態になって ラスト5話を使って市街戦から怒濤
      の大団円までをものすごい作画レベルで一気に見せるっ
      てのはどうかな どっちも市民兵として戦線に巻き込ま
      れて ふたりの抱擁から市民が立ち上がり 双方の狂っ
      た電子頭脳に操られた市庁舎を陥落させるのでラスト
(のりこ)>あのですね 終わったアニメのウソラストなんか考えて
      も仕方ないですし そもそもそんなの見ますか?
(しびる)>いや 世界観ぶちこわし大暴走だろ まず見ないな
(のりこ)>ところで これってツンデレですか?
(しびる)>あー ちょっと違うんじゃねーか んじゃ次
(のりこ)>ういっす えーと 次は『とよきす』ですか
(しびる)>わるい まだ最後まで見てねーや 何話から放置してる
      かねえ またチェックしたらコメントする
(のりこ)>んじゃまた後日ってことで あと『ホリック』や『ホス
      ト部』は次週が最終回ですし それ以外は継続してます
      から なんなら新作を片してゆきますか
(しびる)>新作はまとめてやろう んじゃこのくらいか
(のりこ)>またぞろ今期もすごいラッシュですから どんどこ順番
      に片してゆかないと コミックス枠も溜まりに溜まって
      ますし 『はやて×ブレード』の特集とかも組みたいし
(しびる)>はやて×ブレードか のりこは好きだもんな
(のりこ)>もう通しで20回くらい再読しました
(しびる)>んじゃ次回はアニメ枠新作編か マンガ枠ってことにす
      るか ってことで締めるぞい
(のりこ)>ういっす
posted by 篠原しびる at 01:21| シンガポール ☁| Comment(1) | TrackBack(0) | すきま あにめだいすき | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

連作23 廉連作11 ころあい

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 種別 連作系第23期 廉連作11
 題名 『 ころあい 』
 初出 ニフティサーブ/FJAMEA/18番会議室
    1997年03月23日02時00分
 注釈 行頭スペース+30W
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SUBJ:【廉連作】11 ころあい

 Sibi-Tem V.4.1

 廉直に清廉に 無心から始めるのもいい 廉連作 #11(A群)
 



           『 ころあい 』


                        作:しびる





  朝は自然と目が覚める 睡眠時間は充分で 規則正しい生活が毎
 日繰り返される 以前の暮らしが嘘のようなリズム 血液の循環や
 呼吸の深さ 血糖値の増減に感情の振幅 努めて穏やかな暮らしは
 そのうち本当に平穏な暮らし どんなことだって慣れるものだ
  焦ることもなく急ぐこともなく 二律背反に苦しんだり なにか
 を犠牲にする悲しみも感じず 怒鳴ったり苦笑いしたり 冷や汗や
 脂汗をかくこともない こんな生活も人生に用意されていたのか
  まるでサナトリウム 鬱蒼と茂る庭木はオークの森か サイズの
 大きい服を着て たまに去来する感情は さて なんだろう

 『何時に帰れるの 夕食に間に合うなら 今日はせいや君が遊びに
 来るらしいわよ 一緒に食べられると楽しいのに』
 『ああ どうかな たぶん遅くなると思うな もう出掛ける』
  土曜日の朝 既に両親は朝食を済ませて 旦那とふたりで食卓を
 囲む 土日も関係なしに仕事をする あたしも昔はこうだった
 『そう それじゃ仕方ないわよね 飲みすぎないでね』
 『前期の決算が近いからな 飲んでる場合じゃないぞ ああ それ
 で思いだしたが ふじこさんが連絡するそうだ もう決めたか』
  立ち上がる旦那のネクタイをチェックして 不意に訪れた不穏な
 話題に眉を寄せる この最近は思考も穏やかで なにかを慌てて処
 理する方法を忘れてしまった 面倒なことは後回し 時間はいくら
 でもあるから 成り行きに任せる解決方法もある すべてソレ式
 『どっちも選べないのが 正直なところ かな だってね あたし
 が結局決めなくちゃいけないわけでしょ そんなのって ねえ』
 『ふうん 俺から話しておいてもいいけど さいかは変わったな』
  手櫛で掻き上げる前髪の 少し広くなった生え際を片手で撫でて
 みる 旦那は視線を合わせずに あたしが昔とどう違うのか ある
 部分が増長されただけで 双方納得ずくの沈黙は 結局おざなり
 『まあ仕方ないか どちらにしてもこのままじゃダメだろ 俺の仕
 事は単純に労使関係と割り切って ふん 籍を抜くのが妥当だな』
 『そんなの ハッキリ言ってくれればいいのに もう大丈夫だから
 向こうの家で暮らすのも あたしが説得するから はああ』
  考えればどうにもならないことばかり あたし達の籍は伯父の戸
 籍に揃って養子 その伯父夫婦も母方の祖父母の養子である 血よ
 りも濃いのは渡世の義理 昔のあたしならどう解決しただろうか
 『ストレスを溜めるのは良くないが これは重要なことだから考え
 ろ でもな さいか 全員が笑う方法はないからな わかるだろ』
  飲み残したカップを一気に煽り 旦那は渋面に優しさを隠す あ
 たしが悩んでいる構図でも すべてに対して浮き上がるのは旦那な
 のだ あたしの身勝手で振り回し どの場面でも板挟みになる
 『ごめんなさい あたしばかり悩む振りで ごめんなさい』
 『謝るなよな ああ 悪かった また今度にしよう もういい』
  旦那がなにを考えて あたしがなにを悟るのか どうすることが
 正解で そんなことはすべて言うまでもない 会話を交わすのは意
 思の疎通のためではなくて なにかを起想する合図でしかない
 『あら ゆたかさん 急がなくっちゃ遅れるんじゃないかしら ほ
 うら 早く支度してあげなさい 急くと危ないでしょ』
 『あ お義母さん おはようございます 今出掛けるところです』
  不意の声にハッとする それとわかるように鼻歌まじりに 耳で
 は聞こえていたけれど聴いていなかった 母の登場でこの場も終わ
 り 旦那はいつもの笑顔を作り あたしはだらしなく頭を掻く
 『まだ充分に時間はあるもの 支度だってカバンを手渡せばいいだ
 け そうやって煽る方が急かしてるのに そういうわけ なの』
 『あらそう それじゃゆたかさん お気をつけて 安全運転でね』
 『こおら さいか そんな言い方はないだろ なんだかなあ』
  型に収まった会話を続ける 年老いた両親と今更の同居 誰だっ
 てみんな立場や責任は自覚している どこからどこまでが愛情の範
 疇で 馴れ合いの許容範囲を手探りで暮らす それも自然に
 『この娘は昔からこうなのよ あそうそう ゆたかさんは遅くのお
 帰りかしら その話をしに来たんだわ すぐ忘れちゃう』
 『はあ 今もその話を たぶん夕食には間に合わないと思います』
 『いいじゃない 別に無理しなくても たいしたことじゃないわ』
  これ以上引っ張る話ではない もう終わりにして旦那を見送りた
 い 父はかなり怪しいが 母も最近物忘れがひどい 変な繰り言を
 聞くつもりもなくて やや荒っぽく遮ってみる ある種の配慮
 『あいかとふみやさんも来るのよ あなた達のことも そろそろ決
 めなくちゃいけないでしょ だからと思って 無理かしら』
 『はあ でしたらばなるべく急いで たぶん できるだけ』
  まるであたし達の会話を聞いていたかのような話題 姉や義兄を
 同席させての意味も理解できる でもまったく根回しなしに運ぶ展
 開に少しムッとする 母は無表情に旦那を見つめる
 『そうね あなた達のことですもの よほど遅くなるようなら連絡
 してちょうだい まあ 構わないでしょうけど でもね』
 『すみません ご心配をおかけしまして なんともはやまったく』
 『いいじゃない また今度にすれば 別に急がなくても』
  ならばいつまで放置するのか 伯父の引退の時期も近く あたし
 が継承すべきポストは保留のまま しかしこの有り様ではどうしよ
 うもなく 地方市場に2部上場を果たした今 既に手遅れになった
 ことも多い どうすべきかは 決まっていると言ってもいい
 『それじゃ本当に行ってらっしゃい お早くお帰りを さてさて』
 『はい 行ってきます さいか そういうわけだ』
 『わかったけど 無理して急がなくてもいいわよ 危ないから』

  なにかを決めるためには いや決めようと考えるためには 穏や
 かな状況を 再びシリアスに観察することから始めなければならな
 い 日常はどんどん平穏な方向へと均衡するもの 悩んでばかりで
 は生きていけない人間の ある種の本能だと思う すぐ慣れる
  その予感に煩わしさを感じながら それでも仕方がないことは理
 解している 何事も永遠には続かない どこかで区切りをつけて再
 出発をするべきなのだ ケジメとも言うのか どうだか







             》 しびる 《
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(のりこ)>もでらーとです ちびっこちゃんたちを交えた歓迎会か
      ら一転 実際のとこはこうなんだってオトナサイドのお
      話ですね 展開としてはとうぜんこうでしょうけど
(しびる)>そもそも渡世の義理的にいえば 実家に帰るってのが筋
      違いなのかもしれんが どこかで静養するなら実家が正
      解だろ そのケリをつけるなら養子縁組の解消って手続
      きも必要になってくるわな じゃなきゃ伯父夫婦のとこ
      ろに戻るって選択肢を残したまま あちらにこどもがい
      ない 家業の継承も必要になる その状態でモラトリア
      ムはあり得ないだろうし その後押しとして上場が云々
      ってネタも用意しておいたし さあ悩め って感じか
(のりこ)>そりゃ悩みますよねえ ばりばりさいかちゃんの頃なら
      とにかく いちど気が抜けちゃうと考えるのって億劫で
      すもん そゆ感じがよく描けてますよね
(しびる)>アシスタントに褒められたよ(笑) まあ さいかはい
      いんだ 描くべきは黒崎だろ 旦那の板挟み感こそが醍
      醐味じゃん 泣き言を言えないのはきつかろう
(のりこ)>でしょうね ホントは黒崎くんこそどこ行っても他人ば
      かりで なのにえらいなあ 彼こそがオトナですか
(しびる)>そんなもん できてあたりまえだ えらかねーよ
(のりこ)>またそういうことを仰る
posted by 篠原しびる at 01:19| シンガポール ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 連作系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年10月05日

連作23 廉連作10 ななめならずも 3

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 種別 連作系第23期 廉連作10
 題名 『 ななめならずも 3 』
 初出 ニフティサーブ/FJAMEA/18番会議室
    1997年03月21日03時13分
 注釈 行頭スペース+30W
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SUBJ:【廉連作】10 ななめならずも 3

 Sibi-Tem V.4.1

 廉直に清廉に 無心から始めるのもいい 廉連作 #10(A群)
 



         『 ななめならずも 3 』


                        作:しびる





  何色かのグラジオラスを放射状に配置して 隙間を埋めるように
 ユリとカーネーションをやや多めに 全体に満遍なくカスミソウが
 ふんわりと 純白にワンポイントの花瓶が似合っている
  V局のキャスターなら衣装協力なんてのがついて楽なのに じり
 貧テレビ局では誰もが自前 当然メイクさんなんかいるわけもなく
 噂ではアナウンサーがカラー調整までやるところもあるらしい 真
 っ白な紙に向かってホワイトバランスを微調整 きっと情けなくっ
 て涙がでるか それともそれなりの使命感か どうだろう
  エンドタイトルにCMを入れ込んで セットの生花はタイアップ
 に持ち込んだ あたしだって営業も兼任 自分の番組だと言っても
 件のカラー調整とどれだけ違う 楽な仕事なんて存在しない

 『         です 失礼しました CMのあとは明日の』
  明日の天気と言い終わる前にジングルが鳴り響く 咄嗟にバツの
 悪い顔 この最近珍しい失敗である 突っ伏して溜息 はああ
 『なんだ 大泉 金魚じゃないんだから すぐにフォローしろ』
 『しましたっ したのにCM入れるタイミングが もういいです』
  CMは120秒 半分が大手のスポット あとは近くのショッピ
 ングセンターや工務店 今聞こえているのは確か葬儀屋のもの
 『さきこさーん 烏龍茶ください なんか喉からから』
 『CM明け90秒前です 鈴木さんスタンバイお願いします』
  セットから立ち上がりインカムを外す 顔に張り付く営業スマイ
 ル カフを人差指で弾いて背伸び これを入れなきゃ無声番組だ
 『ふああああん さきこさん 恥ずかしいってばないもんねえ』
 『しまったって顔がかわいかったわよ いいんじゃない 観てる人
 は それが楽しみなわけだし わざとはダメだけど 60秒前』
  さきこさんはTK兼AD たまにカメアシや小道具さん エンタ
 ー所属の何でも屋さんである 年齢は40代前半くらい あたしの
 番組ロックン5ジラの専属スタッフ 彼女がいなきゃ仕事にならな
 い 精神的な拠り所 なんて言いすぎだけど それなりに
 『大泉 遊んでる場合じゃないぞ 戻れほら CM明けるぞ』
 『はいはい そんなやいやい言われなくてもわかってますっ それ
 じゃ きみかちゃん 今日も頑張っていきましょうね よしっ』
 『はあい よろしくお願いしまあす みなさあん よろしくお願い
 しまあす ええっと できるできるなんでもできるきみかちゃん』
  チーフディレクターの檄が飛ぶ あたしもDだけどD職は3人い
 て サブに陣取るのが古館D 彼が番組のすべてを仕切る しかし
 プロデューサーではなくて現場監督 営業を兼任するあたしが最も
 偉いらしいけれど なにかよくわからない仕組み 誰の番組だろ
 『なにそれ 間違わない呪文なら あたしもやろうかな』
 『やあだあ 大泉さんは天然系じゃないですもん きみかちゃんは
 本当にトチるんですよ だから勇気をつけなきゃいけないと』
 『はいそれじゃCM明けます 5秒前 4 3  』
  番組の最後は天気予報で締める CBSでは気象予報士なんて雇
 えないから 担当は当然のことながら派遣タレント 鈴木きみか嬢
 は女子大生らしい あまりのブリブリは演技じゃない 少し不気味
 『それでは明日のお天気です 鈴木さん よろしくお願いします』
 『はい この数日とても気持ちのいいお天気が続いていますが 明
 日からは少しお天気が崩れそうです 気象衛星からの映像です』
  天気予報に振って少し休憩 あたしの失敗は天然系じゃないって
 ことは 狙ってやってると思うわけだ なにかゲンナリしながら肩
 の関節を鳴らす 背伸びをすると節々が痛む 昨日の取材が原因
 『明日の6区は曇りのち雨 日曜日の午後には晴れ間が見えると思
 います 明日の洗濯指数は20 行楽指数は30です 以上です』
 『はい鈴木さん ありがとうございました 明日は洗濯物が乾きま
 せんね お出掛けには傘を忘れないように それではお別れの映像
 は 6区青少年科学センターが撮影したパパヤ彗星です』
  去年の夏ヒットしたイタリア映画のテーマ曲だ 静かなノクター
 ンにぼやけた星の映像が重なる パパヤ彗星は先週紹介した1万年
 周期の小さな彗星 もう少しましな撮影ができないものか
 『それではまた来週 シーユーネクストウイーク さいちぇん!』
  小さく右手を挙げてニッコリ微笑む すぐにカメラはセットの限
 界まで引く フレームの端できみか嬢が同じく微笑み やや照明を
 落として提供タイトルに切り替わる それを確認して溜息
 『ふう はいっ みなさん お疲れさまでした あ お疲れ』
 『ほいほい 大泉ご苦労さん きみかちゃんもお疲れさん エンタ
 ーは18時集合 ダメだしするぞ あ 大泉 伊藤が呼んでるぞ』
 『ななみちゃん そっち片したらデスクに来てよね 速攻でね』
  さきこさんにインカムを外してもらいながら スタジオに響く古
 館Dと伊藤氏の声を聞く ダメだしはエンターの人間だけでやるら
 しいけれど どうせあたしの悪口ばかりだ 言いたければ直接言え
 ばいいのに 番組の視聴率がいいから婉曲攻撃 男らしくないぞ
 『叱られるのかな さきこさん 終わったら飲みに行きませんか』
 『叱られないでしょ ななみちゃん 今日はダメ 子供の面会日』
 『きみかちゃんを誘ってくださいよお ねえねえ 大泉せんぱい』
  さきこさんは優しく微笑む 前に離婚して子供は旦那さんが引き
 取ったらしい みんないろいろ きみか嬢のいろいろは知ったこと
 じゃない この娘を相手にしているとストレスが溜まる
 『また今度ね エンターの人でも誘いなさい ほらほら』
 『そんなあ 仲良くしましょうよお 仕事の話もしたいしい』
  きみか嬢の意味深な表情 どうもこの娘の真意は伺い知れないと
 思う 仕事の話もなにもない 彼女とは仕事に対する姿勢が違うの
 だ 会話が平行線をたどるのは目に見えている わからないのかな
 『仲良くした方がいいですよ 仕方ないから古館さんを誘おう』
 『そうしなさい それじゃさきこさん また今度ですよ』

  スタッフ皆さんに会釈して とにかく急いで伊藤氏のデスクに向
 かった 伊藤氏はあたしの直属の上司 報道部の中間管理職 どう
 せ部長からの小言を伝聞口調で捲し立てるのだろう
  と思っていたらばそうじゃなかった 伊藤氏からの通達はキャス
 ティングに関すること 来週から番組の構成が変更になるらしいと
 のこと あたしがピンで喋る形式から 隣りにアシスタントが就く
 らしい それが誰かと思えば件のきみか嬢 お天気娘が来週からの
 アシスタントだって 意外と彼女は人気があるらしい
  あたしなんからしいらしいと未定の話なのに さっきの口振りで
 は彼女は既に知っていた感じだ どうでもいいけど なんだかなあ
 である 誰の番組かって部分がどんどん怪しくなる気分なのだ







             》 しびる 《
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(のりこ)>ななめ3です が 本業のアナウンスの方でも障壁登場
      ですね このきみかちゃんというのはどうですか
(しびる)>とにかくトラブルというか なんだかなあって展開で追
      い掛けようって企画だし トラブルの方はなんでもいい
      っちゃいいんだけど あれか ちょいひどいか
(のりこ)>ひどくはないですけど 甘ったるいのが対称軸ってのも
      簡単すぎますか あと 広報番組に一般企業のスポンサ
      ーが付くってことがありますかね
(しびる)>アシスタントに関しては ままセリフの判読率の問題だ
      わな 声優に読ませるならとにかく テキスト業界は苦
      労が多いのな あと スポンサーの件は スポットCM
      枠を故意に操作するってぎりぎりの方法だな
(のりこ)>ふうん よくわからないですけど
posted by 篠原しびる at 01:33| シンガポール ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 連作系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

連作23 廉連作09 夜の踏切

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 種別 連作系第23期 廉連作09
 題名 『 夜の踏切 』
 初出 ニフティサーブ/FJAMEA/18番会議室
    1997年03月14日02時38分
 注釈 行頭スペース+30W
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SUBJ:【廉連作】09 夜の踏切

 Sibi-Tem V.4.1

 廉直に清廉に 無心から始めるのもいい 廉連作 #09(B群)
 



           『 夜の踏切 』


                        作:しびる





  私鉄が二社乗り入れる快速停車の駅 北東と北からV字に合流し
 次の駅まで同じ線路を走る だからこの付近は線路だらけに感じる
 高架や踏切が多いのは ごちゃごちゃした細い道と傾斜した大地が
 原因 普段はわからないけれど よく見れば東側の丘を迂回するよ
 うに線路が走る それもキロ単位の話だから ただなんとなく
  その線路を跨ぐ高架道路が湾曲し 駅の手前で路地に入る 侵入
 口は僅か数メートルだけ一方通行 付近の住民は対向車を見極めて
 一気に通過する ならばソレ式 ブロック塀に残る擦過傷が気にな
 っても かなり遠くまで真っ直ぐに伸びる路地 踏切が3箇所

 『今日はどうもありがとうございました 楽しかったです』
 『なんだって ああ いやいや それはよかった』
  いつもそうなのだけど 路地に入った途端に開く景色 こちらが
 わから眺めるときは夜ばかり 俯瞰気味は何故か頭が空白になる
 『今日はツイてると思うよ なんたって 隣りにかわいい女の子が
 座っている のに加えて踏切がどれも開いている 奇跡的かな』
 『はあ そうですね でも時間が遅いですから 前とは違ってて』
  前回も夜だった 朝夕の通勤時間には 開かずの踏切で有名な難
 所でも 23時を過ぎれば最終までに数十分 適度に気取った会話
 には あまり興味も示さずに状況説明 普通に喋る娘だ
 『そりゃそうだ 少し遅くなったかな 悪いね 引っ張って』
 『それはいいんですよ お誘いしたのはあたしですから 車で送っ
 てもらったりして なんか 甘えすぎてるかなーって思います』
  かと思えば殊勝な発言 段差を踏み越えて少し加速 そのついで
 に隣りを見れば 眼鏡の奥の瞳が合う 小さく肩を窄めて右手の人
 差指をこめかみに なるほど頭の悪い娘ではない 当然だ
 『甘えていいんじゃないの かわいい娘はそれだけで なんての充
 分だと思うけどね って冗談 本当はどうだろう わからない』
 『はあ あまり褒めてもらうようなものでもないですけど かわい
 いなんて言ってもらったことないですし あ ダメですね』
  そのまま突っ切れるかと思いきや 寸でのところで踏切信号が明
 滅 それに呼応するかのように他の2個も明滅し始める 途中で停
 車するのも少し気味が悪い やや急停車で舌打ちする
 『それなりっちゃ失礼かな 車の移動は飲めないのが欠点 今度は
 こちらが誘うよ 電車かタクシーで あまり飲まなかったっけ』
 『それが飲むんですよ 浪人中に荒んでましたから 毎日飲んでま
 したね よく社会復帰できたなって 自分でも驚いています』
  3箇所の踏切が微妙にズレて明滅している しかし警報は完全に
 同期 アイドリングの車内には締めを匂わせた会話が続く 名残を
 惜しむほどには馴れ合いも薄く 間合いの見極めの延長にある
 『来年卒業だろ 飲み歩く女子大生ってのも ある意味貴重な存在
 かもね ウチの会社の娘も飲むのが多いけれど いいんじゃない』
 『最近は控えてます 失敗することが多くって 困ったものです』
  停車してからどれくらいか まだどちらからも列車の気配はない
 都合3連の車輌が通過する予定だろうに まさか警報機の試験でも
 ない 白々しく街灯に照らされた踏切 イライラする警報
 『本当はですね こんなふうに男の人とふたりっきりなんて あま
 りないもので イベントが続いていないと 緊張します はい』
 『ふんふん それはまあ違った意味で こっちだってそうかもしれ
 ないなあ 状況は珍しくないけど 歳の功だから 電車来ないね』
  かわいらしいことを言うものだと思う ほんの知り合いに突然誘
 いの連絡を入れて 妙にテンションの高い日程だったが その最後
 にこの台詞 彼女なりの告白だろうが 頭の中にかんかんと鳴り響
 く警報 すべての思考がそのリズムに侵食されてゆく
 『今度誘って頂けるって さっき仰ってましたよね あたしって感
 情表現がヘタクソですから 凄く喜んでいるのです 来ませんね』
 『来ないね 故障か試験じゃないだろうし なにかこう癇に触るの
 は まあ警報だから仕方ないか 喜んでくれるのは嬉しいね』
  おそらく非常に踏み込んだ状況になっているだろうに それを凌
 駕する苛立ち 世界はすべて交互に点滅する赤色灯 何故に列車は
 来なくて 踏切の手前からは誰も逃れられない因果律 なにか変だ
 『初めてお会いしたときから あたしってば あはっ すみません
 どうしてこんなこと喋ってるのでしょう 少し変な気分です』
 『いいんじゃないかな なにを今更 だよ 子供じゃないんだから
 素直にいこう 段取りや手順が好きなら 合わせるけれど』
  たまにすべての明滅が重なり合う 数百メートル離れた場所の駅
 には列車の気配もなく これは明らかに異常事態 警報が鳴り響き
 周囲の街並みも赤く照らされている 数分か数十分か 彼女の言葉
 の腕を取り引き寄せ ねじ上げて微笑んでみせる
 『すべて納得ずく ですか そうですよね あたしから誘ったわけ
 ですから こう見えても少女趣味なのですよ 恥ずかしいですね』
 『普通の女の子はそんなこと言わないかな 醒めてるじゃない 仲
 良くできると思うよ 浮かれないのも たまにはいいかな』
  踏切は開くことが前提に存在している 無理に通過するものでも
 なく 通れないからと引き返すものでもない 目的地への最短距離
 ならば 迂回のロスは意味がない ただおとなしく待つだけだ
 『どうして来ないのでしょうか どうもすみません 送っていただ
 いたせいで こんなことになりまして もしお急ぎでしたら』
 『急いでないよ あとは帰って寝るだけ 明日の仕事までには8時
 間以上あるからね まだ2時間程度なら大丈夫だよ って冗談』
  などと言ったところで妙な予感 それは彼女も同じだったらしく
 ふたり揃って右を見る 遠く線路の信号機が赤く輝いている かな
 り遠くまで点々と赤信号 それが凄まじい勢いで青に変化してゆく
 『なにか来ますね なにかわかりませんが』
 『そうらしい 通れればそれでいいけれど 怖いかい』

  途端にまったくなにもなかったように 余韻も残さず警報が消え
 る 気配はなかったが おそらくなにかが通過したのだろう 遮断
 機が揃って振り上げられて それでまったく事もなし
  もしやと思って彼女を見れば 別段平然と肩を窄めて 驚くじゃ
 なし怖がるじゃなし ならば それはそれで構わないのだけれど







             》 しびる 《
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(のりこ)>これもまた定番の 女の子がデートの帰りに送ってもら
      うお話です と思いきや ラストはなんですかこれ?
(しびる)>定番なのか? そんなにも使ってないだろ
(のりこ)>なんかすごいデジャヴがありますけど それよりも こ
      のラストは怪現象ですか かなり冷静な描写で
(しびる)>どうなのかなあ なんか男女の会話だけでは弱かろうっ
      てことで ちょっと付加価値も必要かなと企画段階で考
      えたんだけど あまりばしばしの怪現象も興醒めだし
(のりこ)>もしかして路線のメンテかなにかだったのでしょうか?
(しびる)>かもしれないし そのことを彼女は知ってて この彼氏
      はちょっと不思議な気分に浸ってるだけとか
(のりこ)>『なにか来ますね』ってのは彼女のセリフですよね
(しびる)>それだって比喩的なものかもしれないじゃん それまで
      の会話で先手を打たれてた彼女の応酬話法で
(のりこ)>ふうん そう読むと違った感想になりますか
posted by 篠原しびる at 01:19| シンガポール ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 連作系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

連作23 廉連作08 ないとめあ・ないと16

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 種別 連作系第23期 廉連作08
 題名 『 ないとめあ・ないと16 』
 初出 ニフティサーブ/FJAMEA/18番会議室
    1997年03月12日12時33分
 注釈 行頭スペース+30W
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SUBJ:【廉連作】08 ないとめあ・ないと16

 Sibi-Tem V.4.1

 廉直に清廉に 無心から始めるのもいい 廉連作 #08(A群)
 



        『 ないとめあ・ないと16 』


                        作:しびる





  非常に端正な顔立ちだけど ほんの少し変なのは 映画やアニメ
 なんかで登場する キザっぽい自惚れ二枚目キャラに似ているから
 ではなくて あくまでも正統派貴族タイプの容貌は 歴史の資料集
 で見たことのあるような大仰な衣装 胸には勲章のようなもの ヘ
 ルメットのようなものの頭頂部にはクジャクの羽根のようなもが揺
 れている ようなものってのは別世界だから 変なのは別のこと
  こんなに凛々しいのに なにか変だ クレメンチ公爵の姿を騎兵
 隊がマスゲームも変だけど この感じはもっと心の底に語り掛ける
 もの なんだろうなんだろうって考えているうちに クレメンチ公
 爵の顔が変形する っても実物じゃなくて肖像画の方だ

 『おほほほ 刃向かうものは容赦せん 遂に見付けたぞクレメンチ
 そっ首は このリギダ様が貰った 退け退け 邪魔立てするな』
  静かに喋れば綺麗な声なのに 楽しそうに叫んでいる表情が容易
 に想像できる まだ映像は届いていないけれど おそらくは
 『リギダはナントカ城に向かったんじゃなかったっけ せっかく穏
 やかに話してるのに フィラ 無茶は辞めるように言ってよ』
 『うぬらがごとき雑兵に この疾風怒涛のリギダ様が討てると思う
 か おほほほ 警報を受けたるものは即刻退避 該当空間は5シン
 ク後に完全消滅する パルメルシアの前には何者も立てぬわ』
  クレメンチ公爵の肖像画の右目の部分 小さな点のひとつひとつ
 が巨大生物だから 距離感が掴めないような変な気分 かなり遠く
 になにやら高速で移動する物体 あれがリギダの乗り物か
 『聞かないんじゃないかな むしろ手っ取り早いと考えなくもない
 どうせ掃討して築城するわけだし まあ 別に構わないでしょ』
 『まだそんなこと言ってる この場を収められるのはフィラだけな
 のに もういい リギダ聞いてる 辞めなさい フィラの命令よ』
 『先刻からの狼藉者は これは失礼 フィランサス姫様の臣下の者
 でありましたか しかし我が騎兵隊も狼藉振りでは負けませぬぞ』
  噛み合わない会話が交されているその時 オレンジ色の世界に青
 白い光球が煌めいた 先程リギダが暴れていた部分 公爵の右目が
 輝いたように見えるけれど 問題はそれどころじゃない
 『ほう 面白い 貴公の騎兵隊とやら 如何程の猛者達か見せても
 らおうではないか 我が帝国の技術力を識るも一興であろうな』
 『心憎いご配慮 まことに痛み入りまするな ならば受けて立ちま
 すのが報いる道理 全軍に命ずるっ 構わん 撃破せよ』
  どうしてこんなに好戦的なのか クレメンチ公爵は楽しそうに叫
 んでいる その間にも閃光が煌めく ざっと見ても数百単位で巨大
 生物が消滅している感じ きっとリギダは大騒ぎだろう
 『あーあ あたしの言葉なんて誰も聞いてくれないんだもん こん
 な無意味な殺し合いなんてさ フィラ もう我慢できない』
 『無意味じゃないでしょ 薄っぺらな同盟関係なんて この際だか
 ら好都合 ビデンス中尉 一気にク城を陥落するぞ あっ』
  あたし達の乗るロドゲルシアって乗物は あたしが思うように操
 縦できるわけだから 意を決しての実力行使 とにかくリギダの暴
 走を止めて なんとか対話へと持ち込まなくてはならない
  不気味に歪む公爵の肖像画の顔の右半分 すべての点が集結しつ
 つある方向へ向かって意識を傾けてみる なにをどうするじゃなく
 て なにをどうしたいか なんとなく操縦方法も掴めてきた
 『リギダ辞めなさい フィラの命令だってのが聞こえなかったの』
 『ななよ いくらロドゲルシアでも ランタルシアからの攻撃を受
 ければ危ないわよ 仕方ない 波動隔壁は任せなさい まったく』
 『姫様ななよ様 もし御命令とあらば このリシアにて露払いを致
 しますが 単独にての迎撃は危険かと思われます 何卒御命令を』
  とにかく方向を定める フィラの考えの真意はわからないけれど
 あたしの頭の上でお腹を膨らませて ものすごい速度で移動を始め
 ると それまで黙っていたビデンスが慌てて進言する 部下の鑑だ
 『お前は後詰めにて手出し無用 これも一興だろう 我等にて瞬時
 に殲滅する ななよの初陣には充分な リギダ そこまでだ』
 『おや これは姫姉様 その空域は危のうございますわ』
  リギダを中心に凄まじい数の雪だるま達 それらを回避しながら
 リギダお得意の長剣攻撃 振り下ろす度に 巨大生物達が分裂する
 浮かんでいるのは大小様々な雪だるま 一瞬リギダの姿が見えたと
 思えば すぐに視界は青一色 躊躇しないリギダの攻撃だ
 『リギダってば もう無茶は辞めなさい これ以上暴れるなら』
  と叫んだところで驚いた 自然と延ばした右手から黄色い光線が
 迸る リギダを止めなきゃって気持ちが増幅される感じ 捕まえる
 気分が遥か彼方まで一気に伸びる これが波動ってものなのか
 『カリン界の下等生物の指示は聞かぬわ おあっ 何事だっ』
 『ふうん ななよの波動は王家のものと少し違うわね リギダ こ
 れ以上の狼藉は慎め なにが起こるかわからぬぞ』
  青色が消え去ると ポッカリなにもないオレンジ色の空間が広が
 る リギダは巨大生物を分解して消し去っていたらしい そのなに
 もない中心に 銀色に光るリギダの乗り物 完全に身動きできない
 のは黄色い光の束に捉えられているからだ とにかく止めることが
 できた あたしの右手にはもぞもぞ動く感触 気持ち悪い
 『フィラ あたしどうやったのかな どうしてもって思うと 手か
 ら勝手に光が なんか変な気分 これからどうしよう』
 『どうもこうもないでしょ 遊離兵達を蹴散らして とにかくこの
 周囲を支配下において スツーヌ王国への進軍の足掛かりにする』
 『大規模な総攻撃が 姫様ななよ様 公爵親衛隊が到着した様子で
 す 凡そ700体 遊離兵の数倍の質量があります』

  あまり事態は好転しない 視界にビデンスの姿が割り込んで そ
 れと同時にどこかからの映像 今までの綺麗なペインティングの巨
 大生物とは明らかに違った物体 確かに大きさは更に巨大 でもカ
 タチは雪だるまではない どちらかと言えばナメクジかナマコみた
 いな感じがする 燻銀に輝くその姿は もしかすれば肖像画のヘル
 メットの部分かもしれない どうでもいいけどウンザリする
  なんだろうって考えて気が緩んだのか 黄色の光からリギダが逃
 亡する そしてそのままナメクジに向かって突撃 どうしてこんな
 に好戦的なのか すぐに青色の閃光 同じ方法らしい








             》 しびる 《
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(のりこ)>ないない16です もう16本目ですか 早いなあ
(しびる)>だなあ 調子よく進めてるとあっといまに増えちゃって
      それだけ前方向にフロシキが拡がってゆくんだ
(のりこ)>今回は ななよちゃんの能力が発現しましたね 業界で
      いうところの『いやーぼーん』ではないですけど
(しびる)>サルまんか それほど切迫してないしな なんとなく使
      えるようになっちゃってさあ的な感じでよかろうと考え
      たんだけど そもそもあんまし障害は必要ないし
(のりこ)>まあユメの中って設定ですしね
posted by 篠原しびる at 01:18| シンガポール ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 連作系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

連作23 廉連作07 5年間

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 種別 連作系第23期 廉連作07
 題名 『 5年間 』
 初出 ニフティサーブ/FJAMEA/18番会議室
    1997年03月09日01時02分
 注釈 行頭スペース+30W
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SUBJ:【廉連作】07 5年間

 Sibi-Tem V.4.1

 廉直に清廉に 無心から始めるのもいい 廉連作 #07(B群)
 



           『 5年間 』


                        作:しびる





  あたしが5歳だった頃 幼稚園の年長組だったはずで 今ではあ
 まり覚えていないけれども 夏休みをまるまる風疹で寝込んだらし
 い 風疹なら3日で治りそうなものなのに それだけ両親の心配が
 大きかったのかと なにやら歯痒い気分になったりする
  人から聞いた話はたくさんあっても 自分で覚えている5歳の記
 憶となればどうか 生まれてから5年間 あたしの人生で空白の5
 年間 最も古い記憶となれば 年長組の夏休み明け 9月の初日だ
 と思っていたけれど 実際には8月の20日 だったらしい

 『手伝ってくれなくてもいいけど 邪魔はしないように』
 『ああ うん ちょっと休みにしよう コーヒー入れてよ』
  短大を卒業してからずっと だからもう10年近くになる 古い
 けれど造りのシッカリしたアパート 壁の厚さは家賃に比例する
 『この段ボールを片してからね ゆうくんは全然役に立たないんだ
 から もう わかりましたっ コーヒーを入れるわよ まったく』
 『これさ まりの写真なわけ 小さいね 幼稚園くらいかな』
  引っ越しである なんだかんだで膠着した事態を打破するために
 は あたしが行動しなければいけないと そう痛感したからだ
 『なにって そうよ 幼稚園の年長組 その写真のすぐ後に転んじ
 ゃって 前に話したでしょ このオデコの傷 その時のよ』
 『ふうん 俺なんか生まれてないや こっちの写真は』
  ゆうくんは婚約者 結婚の約束だけでなく 両家の御対面までは
 どうにか済ませた でも結納はまだ 何故だか進まない展開の理由
 は ゆうくんの優柔不断な性格だと思いたい でも少し悲しくなる
 『生まれてる ゆうくんは生まれてたの ゆうくんが生まれた次の
 日にあたしはっ ごめんなさい もう もういいわ』
 『なに怒ってんの コーヒーまだ ダメならいいけど』
  ゆうくんは年下の彼 どこからかアルバムを見付けて開いている
 退屈そうにクッションを抱えて 通らない声でボソボソ喋る いつ
 だってこんな感じ どんな仕草もかわいらしくて愛苦しいばかり
 『まりはさ この頃すぐに怒るよね なんで なんかあるの』
 『別に なにもないわよ ほらゆうくん テーブルで飲まなきゃ』
  開いているページは幼稚園の頃 風疹で寝込んだ夏休み 夏休み
 明けのプール遊び あたしは黄茶けた水着を着ているけれど 本当
 は真紅のワンピース はしゃいだ記念撮影の後 転んで怪我をした
 『うん でもここで飲む ちょっとくらいイヤなことがあってもさ
 あんまり怒るのはよくないよね 大らかに生きなきゃ おっと』
 『あらもう こぼしちゃって だめっ動いちゃ すぐに拭くから』
  いつも気を付けているのに いや この頃はもういいかなって少
 し思っているけれど あたしはすぐにお姉さんになる 酷いときに
 はお母さんだ たった5歳の違い そんなに違わないはずなのに
 『悪い 少しアルバムにこぼれた ああ でも大丈夫 かな』
 『いいから動かない ヤケドしなかった もう 気を付けてよね』
  寝転んでコーヒーを飲もうとして 思った通りこぼしている 人
 に忠告されたのなら 普段の倍は気を付けるもの あたしなら考え
 ることだって ゆうくんはまったく意に介さない まるで子供だ
 『飲んじゃったら少し手伝ってね 大らかは今度にして 今日は少
 し急いでるの 運送屋さんに荷造りまでお願いしてないから』
 『はいはい たまの日曜日に使うもんな まあ まりの引っ越しだ
 から仕方ないけどさ お任せパックにすればいいのに ケチだな』
  引越先は新居の予定のマンション まだ結納も済ませてないけれ
 ど むりやり契約して引っ越す計画である なにか少しでも進めな
 ければ この先数年はまとまりそうにもない 30歳までにはだ
 『お金ないもの 自分で荷造りすれば2割は安いのに 確かにあた
 しの引っ越しだけど だけど ゆうくんの引っ越しでもあるでしょ
 そんな寂しくなるようなこと 悲しくなるから言わないで ね』
 『泣くなよ まりは泣き虫で困るな ちょっと来い ほら』
  手を引かれて抱き寄せられる 中途半端な不安と安堵 なにかと
 ても複雑な気分で胸に顔を埋める できることならこのまま抱き殺
 されたい 軽く髪を梳かれて おそらくあたし自身の問題
 『つまりあれだろ 俺が頼りないって怒るわけだろ まりの理想と
 はズレるかもしれないけどさ 俺は俺なりのセンスで生きるわけ』
 『そうじゃないの きっとあたしが あ ごめんなさい』
  何度もなぞった思考経路は 言葉にする前に行き着くところまで
 実のところは全部が嘘で ばかばかしいほどに良くできた夢の世界
 にいるような眩暈 基礎の部分が柔く揺れるのは たぶんあたしが
 いちばん裏切っているからだと 言い終わる前に終わらせてしまう
 『謝るのは変だろ 別にいいけどさ もう5年も付き合ってるんだ
 から あまり他人行儀なのも辞めろよな 少し落ち着けな』
 『そう そうよね うん そうだと思う もう大丈夫』
  平行線なら跨げばいいだけ 最初から違う方向に向かって伸びる
 あたしとゆうくんは まるで母性愛のようだと苦笑してみたり 乱
 れた髪をかきあげながら 何故か視線が合わせられない
 『なんか不安定なのよ 色々なことに押し潰されそうに思えて』
 『ふうん 考えすぎるのが悪い癖だよ 気楽に気楽に あ この写
 真のまりパンツ見えてるぞ 前歯もないし 気楽そうだよな』
  能天気そうに話して その実は優しさの配慮で でも本当は無神
 経なだけだと そう思わせようと細工した仕草 アルバムを見なが
 ら楽しそうに笑うゆうくんを あたしはどの部分で愛している
 『折れた前歯は乳歯だったから 怪我の方は残っちゃったけど で
 も それがいちばん古い記憶かな ゆうくんの誕生日の次の日』
 『そんなの関係ないよなあ 俺が後ろから押したわけじゃないし』

  書架の文庫本を段ボール箱に詰め込みながら あたしは再び眩暈
 に襲われる 原因はすべてあたしにある あたしが変わればすべて
 解決する問題 あたしの考え方ひとつで きっとすべてが好転する
  そう考えながら黙々と この引っ越しが転機になるはずだと 唇
 を強く噛み締めて眩暈を堪える すぐに大丈夫になると思う 不安
 な気持ちはどこかへ消えて 大丈夫になるはずなのだ








             》 しびる 《
+++++++++++++++++++++++++++++++
(のりこ)>年上の彼女って設定ですが たまにありますよね
(しびる)>女性が年上だと どうしてもこんなふうな展開になるな
      ホントはお姉さんぶるとか 女性教師みたいな展開だと
      スッキリするんだろうけど なかなかねえ
(のりこ)>どうとでもなるんじゃないですか?
(しびる)>んー エロ展開になるんだわ 攻めで構成すると
(のりこ)>それはいけませんねえ(苦笑) でもその逆がこれじゃ
      使えない設定ってことになりますよ なのになぜ?
(しびる)>だわなあ 基本を受けにしながらも葛藤を描く それで
      なにか見付かるかといつも思うんだけど その希望を残
      してのラストだったのな 実際にはどうにもならんが
(のりこ)>ふうん このふたり うまくいかないんでしょうか
(しびる)>さあね 作品に描かれないのなら 知ったことじゃなし
(のりこ)>そう仰ると思いました
posted by 篠原しびる at 01:16| シンガポール ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 連作系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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