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2006年10月27日

連作24 寧連作07 まなかい

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 種別 連作系第24期 寧連作07
 題名 『 まなかい 』
 初出 ニフティサーブ/FJAMEA/18番会議室
    1997年05月14日03時11分
 注釈 行頭スペース+30W
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SUBJ:【寧連作】07 まなかい

 ST V.4.2 the Sibylline Books

 寧日を語るなら 丁寧よりも寧ろ激しく 寧連作 #07(B群)
 



           『 まなかい 』


                        作:しびる





  言葉にすると少し違うような気もするけれど いちばん近い言葉
 なら違和感 なんかちょっと変だ なにが変なのかわからない 普
 通の生活が毎日続いているだけ 別段変化のない毎日
  朝起きて平日なら仕事 休日なら昼前まで眠っている 夜になれ
 ばお風呂に入って それから仕事をしたりしなかったり 土曜日と
 日曜日を休日に決めて あたしなりの普通の毎日が続いている
  両親の残してくれた一軒家 仕事はしなくちゃいけないから在宅
 で 相続のときにお世話になった税理士さんに簡単な仕事を分けて
 もらって どこかの個人商店の記帳代行 家でできる仕事だ
  もうこんな生活が5年間 両親が揃って他界して 残されたあた
 しはひとりで暮らす 社交的じゃないから友達もいなくて 別に困
 らないから家にいる ちょっと買い物をしたり それくらいの外出
 はするけれど 基本的には家の中 あたしひとりテレビを見たり
  働いたお金は銀行に振り込まれる 電気代や水道代や税金は口座
 から引き落とされる 近所の機械でちょっとのお金を引きだしてき
 て それであたしの生活はどうにかなる もう大人だから困ったと
 きには電話して 家や電気製品の修理も依頼できる どうにかなる

  そんな毎日が普通に過ぎていたのに それがこのごろ少し変なの
 だ なにが変なのかわからない 細かいことは気にしないから か
 なり変になるまで気がつかなかった でも やっぱり変だった
  最初に気がついたのは些細なこと いつものように朝起きて な
 にか見ていた夢の続き どんな夢だったのか考えながら ああそう
 だ電話が鳴るんだと思った途端 電話が鳴った 間違い電話だった
  テレビを見ながら朝食を食べていた いつも見ている朝の情報番
 組 どこかで見たような場面 レポーターの女性が雨の中 強風に
 煽られて傘が揺れる ああ飛んじゃうなと思った途端 傘が舞った
  そんなことが少しずつ多くなる グラスが割れる 新聞の勧誘の
 人が来る 停電になる 牛乳が古くなっていて 階段を踏み外して
 冷や汗をかく 全部ちょっと前に気がつく 以前にこんなことがあ
 ったなあって いやほんの少し前にこんなことがあったって 気が
 ついて大丈夫なことや それでもダメなことが少しずつ増える
  予知能力だろうか 知らない間に超能力が身について そんなふ
 うに考えて少しドキドキしてみた それほど役に立つこともなくて
 も それでもこんなことってあるのかなあと不思議な気分 誰にも
 話さなけれど誇らしくて そんな感じの数日間が過ぎた

  数日が過ぎて気がついた 予知能力が苛々するくらいに重なりは
 じめて どんなことも前にやったことがある テレビを見ても前に
 見たことがある 歩いていても眩暈がしそうな感じ 少し未来のあ
 たしと頭の中が重なってしまったのか 我慢できなくなった そし
 て気がついた 誰もいない部屋にテレビがついていたからだ
  テレビを見ようと思ってキッチンからリビングへ 廊下の途中で
 男性の笑い声 なんだろうと緊張すればテレビの音だった 確か消
 してあったはずなのにテレビがついている 今つけたところだ
  確かにテレビを見ようと思っていた なぜかテレビの内容は頭の
 中に浮かばなくて その代わりにテレビがついていた 予知能力が
 なくなって遠隔操作の能力が身についたのか そう考えて納得した
 どちらかならこちらの方が役に立つ 家にいるだけなら事故などは
 考えなくてもいい ならば家事の手助けになる能力が便利だ
  寝室のドアが開いている 冷蔵庫の中のジュースがテーブルに置
 いてある 洗面所の水道から水が迸っている やろうと思った少し
 先に 見ていないところでもうできている 不思議と現場は確認で
 きないけれど そんなことは構わなかった 歩いていけば少しだけ
 手間が省けている ほんの些細なこと イスの位置とか照明とか

  そしてまた数日 夕食の買い物に行こうと玄関へ 開け放たれた
 ドアはまだ揺れている あたしの超能力が押し開けたのだろう 靴
 を履いてドアを閉める お隣の奥さんに会釈 そして睨まれた
  近所付合いは好きじゃない 挨拶くらいならするけれど なのに
 今日は睨まれてしまった 物凄い形相で化け物でも見るように そ
 んなに憎まれるようなことなんて 挨拶程度の付き合いでどんな誤
 解が生まれたのか 急に悲しくなって 買い物は辞めてしまった
  足早に玄関に入り そのままキッチンへと駆けていく 閉め忘れ
 たドアは音を立てて閉まる 座ろうと思ったイスは少し引かれてい
 た こんなところでも超能力 悲しくなってテーブルに突っ伏す
  あたしを憎んでいる人がいる もうそれだけで死にそうな気分だ
 なぜあんな顔で睨み付けられたのか どう考えても理由がわからな
 い その日はそのまま仕事もせずに考えていた
  他人の気持ちがわかればいいのに そう切に感じていた 今必要
 な超能力は読心術 お隣の奥さんの気持ち 夜も眠れずに天井を眺
 めて このまま眠り朝になって 目が覚めればわかるようになって
 いるんじゃないかって そう考えて眠れずに 何時だろう夜中にな
 っても考えていた あたしは超能力者なのに そしてなにか

  少しうとうとしていたのか 尿意に目が覚めて トイレに行こう
 と起き上がる すぐには動くのも億劫で そのままベッドに座って
 いた 癖になった超能力 あたしが行こうと思った先には まるで
 もうひとりのあたしがいるように もうひとりのあたし あたしの
 すぐ先を そう考えて身体中の血液が逆流した

  遠くトイレのドアの音 軋みながら開き そして音を立てて閉ま
 る 閉まる音 ドアの閉まる音だ 目が覚めて立ち上がり そのま
 ま歩いていけばトイレで用をたしている頃 でもあたしはまだベッ
 ドの上に座っている ドアは開き そして閉まった トイレのドア
 は閉まったのだ あたしがまだ入っていないのに 誰もいないトイ
 レのドアは閉まってしまった これは これは超能力じゃない

  もうひとりのあたし もうひとりのあたし 冷蔵庫を開けようと
 したほんの寸前に テレビを見ようとしたちょっと前に いすに座
 ろうと 水道の蛇口をひねろうと あたしが行こうとした少し前に
 もうひとりのあたし もうひとりのあたしが 誰かがこの家にいる
  お隣の奥さんの形相 まるで化け物でも見るようなあの顔 あれ
 はあたしを睨んでいたんじゃない あれは あれは恐怖に引きつっ
 た人間の顔だ もうひとりのあたし 奥さんはあたしを見たのだ

  廊下を静かに足音が ゆっくりとゆっくりと 息を殺して気配を
 感じさせないように 寝室の前で足音が止まり そしてゆっくりと
 ドアノブが回転しはじめる そろりそろりとドアが開く 薄暗い廊
 下に寝室の明かりが漏れる そこには そこにはあたしのようなも
 のが立っていた

  あたしと同じパジャマ 真っ白な顔には 目だけが光っていた










             》 しびる 《
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(のりこ)>あれですね ドッペルゲンガー もうひとりの自分
(しびる)>いつかやっとかなきゃと思ってたんだ このジャンルの
      キモはただひとつ どこまでそうとわからないように進
      めるか 超能力ネタを使ったのは苦肉の策かな
(のりこ)>まあ それに関しては成功してますかね タイトルだけ
      じゃなにを意味してるのは判断できないですし 自分で
      ばらすところまでは超能力で通用してますよ
(しびる)>もうちょい料理のしようもあったかもな 隣人の活用も
      イマイチ甘いし やっぱ一気描きは詰めが足りんか
(のりこ)>この頃のしびさんは 神懸かり的な執筆速度でしたから
      ねえ どうなってるんだろこのひと? っていつも思っ
      てました それを理由にしたくないでしょうけど
(しびる)>しちゃいかんわな 当時2時間で仕上げても こうやっ
      て10年後に同じ作品として扱われるんだし ものごと
      は吟味しながら慎重に進めなきゃいかんな
(のりこ)>理想ですねえ そうできれば完璧ですが
(しびる)>そゆこった
posted by 篠原しびる at 22:06| シンガポール ☁| Comment(0) | TrackBack(1) | 連作系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年10月26日

連作24 寧連作06 ゆうやけこやけで

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 種別 連作系第24期 寧連作06
 題名 『 ゆうやけこやけで 』
 初出 ニフティサーブ/FJAMEA/18番会議室
    1997年05月09日01時47分
 注釈 行頭スペース+30W
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SUBJ:【寧連作】06 ゆうやけこやけで

 ST V.4.2 the Sibylline Books

 寧日を語るなら 丁寧よりも寧ろ激しく 寧連作 #06(B群)
 



         『 ゆうやけこやけで 』


                        作:しびる





  もうすぐ午後6時 冬なら外は真っ暗になっている時間 でも今
 はまだ夕方 窓の外は気持ち悪いくらいの夕焼け みんなは綺麗な
 夕焼けなんて言うけど 僕はどうも綺麗だとは感じない 夕焼けは
 気持ち悪い 理由は説明できない でも怖いくらいに嫌いだ
  どこでこんな話になったんだろう 言いはじめたのは吉岡君だっ
 たかな 提案するのはいつもみえぴーで 場所が図書室だったのが
 悪かったのかもしれない みんなは知らないけれど 森本さんは不
 思議な話が好きなのだ 結局は森本さんが強引に決めてしまった

 『守衛さんが見回る前に鍵を返さなきゃ 早く終わらせましょう』
 『鈴木はさ 怖いんだぜ たつやも怖がりだけどさ どっちが先に
 泣くか掛けないか 俺は鈴木だな 森本はたつやに掛けろよ』
  廊下の突き当たりに音楽室がある 音楽室にはいつも鍵が掛かっ
 ていて その鍵は守衛室にぶら下げてある 守衛さんは6時半にや
 ってくる そして朝まで学校にいる 夜の学校は守衛さんだけだ
 『ゆみこは そうね 吉岡君に掛けようかな 強がる人って 本当
 は怖がりだったりするのよね 結城君は強い人だと思うな』
 『ははん たっちゃんはダメよ 見掛けどーりの根性なしだもん』
 『主電源はどこにあるんだろ 喋ってないで誰か手伝ってよ』
  音楽室は夕焼けでオレンジ色 吉岡君が持ってきたCD 吉岡君
 のお母さんが高校生の頃に買ったCDらしい 変なふうに笑ってい
 る女の人の顔 聞いたことのない名前 タイトルはカタカナで英語
 『壁際のスイッチがそうだ オーディオ2って書いてあるだろ メ
 カに弱い男じゃ仕方ないよなあ 貸してみろよ ゆーきくーん』
  音楽室の鍵を指でぐるぐる回してみえぴー 森本さんはピアノに
 向かって座っている 足を組んで座っていた吉岡君が オーディオ
 セットの前まで歩いてくる 僕は壁際へ とにかく変な集まりだ
 『そのCD 2版目からは違ってるのよね 当時は凄く噂になっち
 ゃって おかげで凄く売れたらしいわよ でも変えちゃったの』
 『それが作戦だったんじゃないの 話題作りって ばかばかしい』
  森本さんは楽しそうだ そもそも森本さんが決めた集まりだから
 みえぴーはそれほど乗り気じゃなかったらしい でも時間とかを仕
 切ったのはみえぴーだ みえぴーの負けず嫌いはいつものことだ
 『かーさんに聞いたらさ どうや らわざとじゃなかったらしいな
 回収騒ぎにまでなったらしい プレミア付いてるんじゃないか』
 『音楽にまつわる不思議な話って 割りとたくさんあるのよ 童謡
 なんてほとんど悲しい裏話があるし 逆に楽しい歌って少ないわ』
  吉岡君がお母さんから聞いた話だ なんとかって歌手の歌の中に
 変な声が入っているって 昔はかなり有名な話だったらしくて そ
 れを聞いてみようと言ったのはみえぴーだ それとなぜか森本さん
 『気味の悪いことを言うじゃない たっちゃん 早くしなさいよ』
 『やっぱり鈴木で決まりだな なんだよ裏話って 聞きたいな』
  セッティングが終わって あとは再生ボタンを押せばいいだけだ
 できれば早く終わらせて欲しい 実は怖い話は苦手だ 森本さんの
 笑顔を見ていると そんな裏話も聞きたくない気分 凄い夕焼け
 『シャボン玉飛んだって歌 あれは死んじゃった子供の歌だって話
 屋根まで飛んで 壊れて消えたって 2番は飛ばずに消えたって』
 『うへえ 気持ちの悪い話だな なあたつや 泣きそうだろ』
 『そんなわけないよ ただの童謡だよ こじつけだね 聞こうよ』
  森本さんは歌いながら説明 そんなふうに聞かされると 幼くし
 て死んじゃった子供の魂とか もしかすれば高いところから落ちち
 ゃったのかとか 変な想像がどんどん広がる 音楽室は真っ赤だ
 『あとカラスの歌とか あれは山の中で子供を亡くしちゃったお母
 さんの歌なの なぜ泣くって 子供が山にいるからなのよ』
 『ばかばかしい そうやってなんでも悪い方へ解釈する人って 心
 のどこかが病気なのよ 森本さんは明るく考える練習をしなさい』
  リモコンを吉岡君に手渡して 僕は前の方の席に座る 音楽室は
 4人掛けの長い机 端にはみえぴーが座っている 誰かと同じ並び
 じゃないと 少し心細いのが正直なところ 言うと笑われるけれど
 『そんなのならさ 俺も聞いたことがあるな 洋楽でさ 聞くと必
 ず発狂する音楽があるって メロディーに問題があるってさ』
 『そんなわけないじゃない 誰が作って演奏したのよ 話が矛盾し
 てるわよ 音楽は音楽 楽器が空気を震わせてるだけのものよ』
  森本さんはピアノの前で微笑んでいる その辺りには夕焼けも届
 かなくて 薄暗い中にぼんやりと森本さんの姿 みえぴーは姿勢を
 崩しながら少し真ん中寄りに座り直す 吉岡君の笑顔は少し違う
 『そりゃそうだ まあとにかく聞いてみよう 確か3曲目の間奏の
 部分らしい たーすーけーてーってな 消えそうな声らしいぞ』
 『コーラスでしょ なんでも理由があるものよ ねえたっちゃん』
  そう話ながらみえぴーは僕の隣に座る ふと見ると 森本さんが
 こちらをじっと見ている さっきとは違って笑っていない なんだ
 か森本さんの顔が怖い 始まった曲はとても静かで 女の人の歌声
 『この先だな 少し大きくするか やな感じだな なんだかさ』
  綺麗な声が音楽室に響く とても優しい内容が 逆に変に聞こえ
 てしまう 男の人のことを思い続ける女の人の気持ち ずっと待ち
 続けていますって歌詞を何回か繰り返して そろそろ間奏だ
 『ねえ 辞めない あたし 悪いけど聞きたくない』
 『俺の勝ちだな 森本には なにをしてもらおう でも ダメだ』
  気がつくと 僕の左手をみえぴーが握っている 吉岡君は振り返
 らずにCDプレーヤーを眺めている 森本さんは影だけ もうかな
 り暗くなって森本さんの辺りはよく見えない こちらを見てるのか
 『あたし こんなのやだな』
 『ほら今っ 聞こえただろ すげーっ 本当に聞こえてやんの』
  なんだかわからなかった 吉岡君は興奮して叫ぶ みえぴーは下
 を向いて僕の左手を強く握る もしかすれば泣いているのか 森本
 さんの影が動く 森本さんはゆっくりと吉岡君の側へ歩く
 『何回も聞くと 本当に現れるらしいわよ もう いいでしょ』
 『なんだよ 戻して確かめようぜ なあ たつやも聞きたいだろ』
  頭が変になりそうな真っ赤な夕焼け こんなふうに音楽室にいる
 のは初めてなのに なのに前にも見たことのあるような感じ みん
 なの姿が真っ赤に染まる なにか危ない気がしていた
 『もう帰ろう そろそろ守衛さんが来るよ 怒られるのは嫌だな』
 『ちっ 根性なしだな まあ仕方がないか それも一理ある』
 『はいこれ 鍵はゆみこが返しておくわ 今日はおしまいね』

  微笑みながら森本さんは さっきまでみえぴーが座っていた机の
 端から鍵を取り上げる いつのまにか手に持っていたCDを吉岡君
 に手渡して 真っ赤な顔に白い歯が見える そう言われれば従うし
 かなくて 僕とみえぴーと吉岡君は帰ることにした
  真っ赤な夕焼けがどんどん夜になってゆく あんなに興奮してい
 た吉岡君も静かになって 3人並んで廊下を歩く みえぴーはさっ
 きから喋りもしない なんか視線を感じて振り返ると 音楽室の扉
 のところに森本さんが立っていた 僕を見ていた







             》 しびる 《
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(のりこ)>たっちゃんシリーズですね もうないのかと思いきや
(しびる)>小学生ネタがたまってたし もでらーとの方でやるには
      ちょっとどうかなって感じだったし
(のりこ)>いままでバラバラに登場してたキャラの総動員ですね
(しびる)>これで最後だったかねえ よく覚えてねーや
(のりこ)>曲の中にヘンな声が聞こえるって たまに流行りますよ
      ね この夏くらいにも聞いたような 定番ですか
(しびる)>どこも必死なんだろ なんとかして話題づくり
(のりこ)>童謡の裏の意味がどうとか これは既に基礎知識みたい
      な感じですね 怪談テラーの初級みたいな
(しびる)>小学校高学年くらいを相手にしたときの枕にいいな 中
      学生くらいになるともうちょい深くしないと
(のりこ)>そゆの考えたことないですけど やっぱ相手によって替
      えていかなきゃいけないですよね なるほど
(しびる)>お前さ 怪談嫌いってキャラじゃなかったっけ?
(のりこ)>あ きゃー そゆこと言わないでくださいよ うひー
(しびる)>遅せーよ
posted by 篠原しびる at 02:31| シンガポール ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 連作系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

連作24 寧連作05 閑話休題 10

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 種別 連作系第24期 寧連作05
 題名 『 閑話休題 10 』
 初出 ニフティサーブ/FJAMEA/18番会議室
    1997年05月04日02時15分
 注釈 行頭スペース+30W
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(しびる)>カンキューはパス扱いでよろしく
(のりこ)>閑話休題も10本目ですか 今回はなんか300行近く
      ありますし 登場人物もー
(しびる)>もういい 次いけ
posted by 篠原しびる at 02:29| シンガポール ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 連作系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年10月18日

連作24 寧連作04 青空に淡く浮かんで

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 種別 連作系第24期 寧連作04
 題名 『 青空に淡く浮かんで 』
 初出 ニフティサーブ/FJAMEA/18番会議室
    1997年04月27日00時52分
 注釈 行頭スペース+30W
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SUBJ:【寧連作】04 青空に淡く浮かんで

 ST V.4.2 the Sibylline Books

 寧日を語るなら 丁寧よりも寧ろ激しく 寧連作 #04(B群)
 



        『 青空に淡く浮かんで 』


                        作:しびる





  青い空に青い海原 遠く水平線が丸く見えるのは 地球が丸い証
 拠ではなくて 自分の眼球が丸い証拠らしい 常に逆説を信用する
 のは それはそれで錯覚かもしれない そう考えるとすべて怪しい
  青い空に青い海原 海の色は空の色 空が青い理由と同じで 海
 の青さも 別段青い粒子が混じっているわけではない 光の束の根
 性の強弱だ 青い光には根性がない ならば海の底は夕焼けなのか
  青い空に青い海原 遠く浮かぶのは真白な船影 海鳥も白く旋回
 している 耳鳴りのような潮騒は 波に擦れる風の音か それとも
 風に削られる波の音か 同じなら潮騒のような耳鳴りかもしれない

 『青い空に白い雲 わりと 低いところに浮かんでいるんだよな』
 『半分正解 今はね 空と海のことを考えてたの あ こっち側』
  左に座ろうとするから 慌てて制止して右側を指さす 利き腕の
 方向に対処すべきものを配置する それでも毎回説明するハメに
 『ふうん もっと細かいことで悩んでるものだと まあいいか』
 『悩んだりしないもの 自分のしたいようにしてるから』
  少し高台にある墓地 海原を見下ろすイメージは きっと天気の
 良い日に下見をしたのだと思う 夜はなおさら寂しいところ
 『なにしに来たの わざわざ追いかけて来たわけ 意味ないわよ』
 『別に 心配はしてない 泣いてればかわいいのに 無理か』
  なぜ泣く 天気が良くて 丈の短い草の上にヒザを抱えて座り込
 む 暖かい風に潮の香り 周囲の雑草は 葬られた死体を栄養に育
 っている いや火葬ならば 土に還ることもないのだろう
 『どうして 悲しいことなんてないのに 凄く機嫌がいいくらい』
 『ならいいんだ でも普通は 疎外されるとイヤな気分になるもの
 だから これ飲む さっき途中の売店で買ってきた 柿ジュース』
  疎外されるってことは どこかの時点で共通項を見いだしていた
 ってこと 最初から馴れ合いなんて皆無なら 疎外されることは不
 可能になる こんなに簡単な理屈もない 馬鹿げた心配だ
 『いつも来てるみたいだね 売店の人に聞いたよ この柿ジュース
 マズイからほとんど売れないって ほんと ひどい味だ』
 『嬉しがって買う人間がいるのよ いらない 美味しくないなら』
  そろそろ正午になるだろうか 午前中の授業を途中で抜けだして
 いつものように電車に乗って そしていつものように墓地にやって
 くる ゆっくりと流れる時間は 着色料を使わない普通の時間
 『ここって 墓地だろ 丘の上にある海の見える墓地 こんなとこ
 ろで考え事 耽美的よりは ナルシズムに近いものがあるのかな』
 『正解 褒めてあげるから帰りなさい 今は必要ないのよ』
  見なくてもわかる 困ったように唇を歪めて 数回瞬きをして向
 き直る 台詞は違えども意味は同じ 意味のないことをこれ以上聞
 くのは無駄 ゆっくりと移動する船影に視線を固定する
 『すぐ帰る もう少しすればね いつまでもこんな陰気な場所に座
 っていられない なにが楽しいのか知らないけれど』
 『楽しいのよ それにほら そのすぐ後ろ あたしの父親が入って
 るの ファザコンだから こうして座っているわけ 納得した』
  父親が埋葬されているのは事実 しかしそれはあまり意味のない
 こと きっかけ以上の価値はない こうして座っているのは海が見
 えるからだ 肉体が亡びれば魂も消えてなくなる 常識だ
 『ああ そう お父さんいないのか てっきり自殺でもしに来たん
 じゃないかって なるほど 悪いこと言ったかな 謝ろう』
 『嘘よ 父親ならいるわ 殺しても死なないくらいに元気なのが』
  面倒になって寝転がる 見上げれば青空に真昼の月 青白く無表
 情に輝きもせず 真昼の月は空の染 雑草の香り 潮風の突風
 『どの話が本当なんだろ とにかく それほど深刻じゃないのは理
 解した 凄い形相だったから ただ事じゃないと思っただけ』
 『ばか相手に 腹を立てても仕方ないじゃない 無駄なことはしな
 いの あんなの生きている意味もないのよ 逆に哀れむわね』
  目を閉じる 遠く潮騒は耳鳴りだったか 潮の香りと噎せ返る雑
 草の香り 至福の時間に無粋な侵入者 この瞬間が永遠に続く錯覚
 を 邪魔する気なら突き落とそうか そうぼんやりと考える
 『ふうん なら大丈夫だな 学校にいないときは いつもここに来
 てるの はは 海に向かって叫んだりするわけ 青春だね』
 『もう帰りなさい ハッキリ言うわ 邪魔なのよ 話し相手が欲し
 いなら他を当たって 続けるなら 海へ突き落としてしまうわ』
  ゆっくりと静かに話す 暖かい日差し 会話にも飽きてしまった
 目を開け立ち上がり きびすを返す 墓石に足を掛けてその上に立
 つ 潮風にバランスを取りながら 初めて視線を合わせる
 『もういい 興醒め そんな顔でどうするつもり ご希望通り海に
 飛び込んであげようか 見物に来たんでしょ 構わないわよ』
  風に煽られて 隣の墓石に飛び移る 少し勢いをつければ本当に
 海まで落下しそうな そんな予感に惹かれながら 不意に訪れる潮
 風に揺れる この高さから水面まではどれくらいか 飛び込んでも
 死なない気がする 意識のどこかが痺れてしまっている
 『危ないって 邪魔なら帰るけれど 変に鬱屈してるなら 無理に
 でも連れてかなきゃとっ 捕まえた 危ないって言ってるだろ』
 『放してよ 触らないで ばかっ 放せばかっ ばかばかっ』
  腕を掴まれた 血液が逆流して言葉が紡げなくなる 堪らなくて
 墓石から飛び降りる 空いた左手で殴りつけて 足で蹴って暴れて
 みる 身体中のチカラが急速に失われてゆく 握られた手首が熱く
 燃えるように なぜあたしは拘束されるのか 遂に動けなくなる
 『せっかく捕まえたんだ このまま連れて帰ろうか それがイヤな
 ら このまましばらく海を眺めててもいい どうする』
 『放してよ あたしはひとりで いい のに って』

  チカラが入らなくて その場に座り込む 誰かの墓石を背にして
 仕方なしに海を眺める 変わらない潮風 遠くから潮騒 青い空に
 青い海原 先程の船影もどこかに消え去り なぜあたしはこんなと
 ころに座り込んでいるのか 意識の違った場所が痺れてしまう
  海を望む高台に 白い墓石の並ぶ場所 空高く昼間の月が青白く
 微妙に均衡していたなにかが ずっと彼方で波頭を見せ始めていた
 いずれ間近まで迫り あたしを飲み込んでしまう予感 だからひと
 りでいたかったのに 既に手遅れ 仕方なしに海を眺める








             》 しびる 《
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(のりこ)>いわゆるツンデレですか ちょっと違うかな
(しびる)>いや 真性ツンデレ趣味は本来こうだろ いまのデレは
      なにか勘違いしている 鬱屈した排他思考にわずかに混
      じる弱気な情動がデレの醍醐味だと思う
(のりこ)>なにかよくわかりませんが なるほど この彼女は学校
      でなにかあったんですね それを追い掛けて男の子が
(しびる)>そうなんだろうな そう描いてあるから でもまあ背景
      はどうでもいいじゃん こちらに向かってなにか説明す
      るキャラってホントはすごくヘンだし ふたりのあいだ
      で共通の認識は ふつうは語られないものだし
(のりこ)>そりゃそうでしょうけど それを言っちゃうとストーリ
      ーテラーができることってすごく少ないですよ?
(しびる)>そゆのを追求してたんだ 前にも話したけど できる限
      り削ぎ落として なにが残るのかなってテストだ
(のりこ)>ふうん あと お父さんのお墓で実際には元気ってこと
      は 彼女のお母さんは再婚したってことですかね
(しびる)>さあな
posted by 篠原しびる at 10:54| シンガポール ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 連作系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年10月17日

連作24 寧連作03 はばかりさま

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 種別 連作系第24期 寧連作03
 題名 『 はばかりさま 』
 初出 ニフティサーブ/FJAMEA/18番会議室
    1997年04月24日00時28分
 注釈 行頭スペース+30W
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SUBJ:【寧連作】03 はばかりさま

 Sibi-Tem V.4.1

 寧日を語るなら 丁寧よりも寧ろ激しく 寧連作 #03(B群)
 



          『 はばかりさま 』


                        作:しびる





  家族って概念は 生まれたときから既に 当然のように存在して
 いて 姉と両親と祖母 祖父はあたしが生まれる前に他界していた
 から除外するとして この4人は完全な家族 大抵のことは共有で
 きて ほとんどすべてのことについて 遠慮せずに会話することが
 できたと思う 数年前までは 家族の概念は実家に存在していた
  しかし今は少し違う いや表面上は少しの違いだけれど 実際に
 はまったく違っている 個人の親密な集合体だった家族 それが今
 では自分の意識の拡散か複製 家族の捉え方が完全に変化した

 『どうする ウチはウチでフルーツでも買おうか みんな一緒にっ
 てのも変だし どうせ他所もそうすると思うけどな どうする』
 『そうね 様子を見てからでいいんじゃないの 金封だけなら そ
 れこそ揃えた方が 逆にウチがいちばん濃いわけだもん 決まり』
  夫とふたりタクシーに乗って 前方の交差点を左折する予定 曲
 がったすぐのところに総合病院が建っていて 通りを挟んだその向
 かい側には 少しハイソなスーパーがある 絶好の立地条件
 『まあ それもそうか 同年代なら妻帯者はいないし 役付きの御
 仁達に勝っちゃうのも問題かもしれない ああっと 何時だっけ』
 『3時 まだ2時半過ぎ あたしだけかあ なんか緊張する』
  どこでこんな話になったのか みんな誘い合わせてのお見舞いだ
 ったりする 入院患者は初老の男性 夫の勤める会社の重役であり
 さらにはあたし達の仲人さん 本当は独断専行がよかったのに
 『見舞いますって 気合い入れない方がいい できれば普段着がさ
 りげなくて プライドの高い人だからね 嫌だろうね きっと』
 『うん わかんなくもないけど ジーンズでってわけにもいかない
 し 初対面の人もいるでしょ 常識がないって思われるのもねえ』
  盆と正月くらいの疎遠な付き合いだったから 入院されていたの
 も手術後に知った不義理さ しかし終生現役を論じる人らしいから
 雰囲気として 見舞いは遠慮するべし的な空気が流れていた
 『あたしは なんて挨拶すればいいのかな こんな時って 会社の
 人にはお世話になってうんぬんぬんだけど 紺野さんには』
 『ううん ご気分はいかがでうんぬんぬん で 奥さんには そう
 だねえ 見舞いが遅れての話より ああ やっぱり花でも買おう』
  すぐに見舞いに行かないって 実家の両親にも叱られた 夫のご
 両親も同じ意見だったらしいけど 微妙な雰囲気は仲々に説明の難
 しいもの それはしかし 裏返せば先様に対する危険度の高さだ
 『花瓶を持って退室するのもねえ 楽だけど なんかロクに挨拶も
 できない子供みたいで 恥ずかしいでしょ それじゃ』
 『別に 必要以上のことは無理しなくても 花くらい買っても抜け
 駆けにはならないだろうね ウチは立場的には身内の次だし』
  その次元で話せばすべてがそうなのだけど 停滞気味の道路をの
 ろのろと進み ようやくタクシーは交差点を左折 向い合った歩道
 には人の波 どこもかしこも人だらけ 病院にもスーパーにも
 『身内の次ねえ 勘弁してよって感じかな あ 少し手前で結構で
 す そのケータリング車の後ろに 悪いことは言いたくないけど』
  運転手に停車位置を指示する 基本的に合わないのだ 確かに夫
 の上司であり地位も名声もある御仁 さらには俳句だかなんだかの
 免許皆伝だとかどうとか しかしただの老人である つまりは
 『なんか今日はハッキリ言うじゃない でも病気で臥せっている人
 に関しては あまり悪いことは言わないように それは良くない』
 『うん ごめんなさい ちょっと緊張してたから もう言わない』
  タクシーは指示通り花屋の配達車の背後に停まる あたしが左で
 夫が右 ドアが開くと外気と共に街の喧噪 バッグを握って歩道に
 降り立つ 振り返れば 料金を支払う夫の目尻に笑い皺
 『まだ時間があるね でもなにかする時間もない もう誰か来てる
 かもしれないけど どうする 談話室に行こうか』
 『そうね 遅刻してもいけないし 早いくらいがいいんじゃない』
  向かいのスーパーの入口に花屋 目の前に駐車する配達車はその
 花屋のものだ 結局手ぶらになるけれど 誰か年嵩の上の人が仕切
 ればいいことだと思う そもそもイベント自体に問題がある
 『あ どうも梶原さん こちら奥さんですか はじめまして』
 『こりゃどうも そう 妻のりかこです 彼は営業3課の真野君』
 『どうも はじめまして いつも主人がお世話になっています』
  不意の声はあたしの正面から いわくありげに歩いてきた若者が
 夫を回り込んで挨拶する おそらくそうじゃないかと思えばそのと
 おり 営業3課なら課が違う 今回はどのような構成なのだろう
 『いえいえ お世話になっているのは僕の方で ところで梶原さん
 帝大組なら岡本部長も来られるわけですよね どうでしょう』
 『それは 来られるんじゃないですか 紺野常務は代表ですからね
 ましてや病気見舞い 確執はこの際でしょう おそらくはね』
  聞いたことのあるようなないような名前 夫は家ではあまり職場
 の話をしない この真野氏とも親しそうだけど 顔はおろか名前す
 ら初めて聞いた 歩き始めたふたりに続いて あたしは少し遅れて
 歩いている あたしは黙っているのが正解だと思う
 『見舞いなら行かない方がいいくらいですよね 逆に悪くなっちゃ
 ったりして 手術は心臓ですよね いいのかなあ 知らないけど』
 『君が心配することじゃないです おや あれは伊吹さんかな』
  誰か知り合いを見つけたのか そろそろ集合時間の15分前 雑
 踏の中に視線を泳がせる そんな夫の姿を横で確認し 真野氏は慌
 てて駆けだした また挨拶をしなくてはならない 少し気が重い
 『どの人 上司の人なの なんかあたし 緊張してきちゃったな』
 『大丈夫 紋切りで済むように話をするから 心配しなくていい』

  今となっては夫とふたりだけの家族 あたしの実家は姉の家族で
 夫の実家は義理の兄の家族 それぞれ本当の両親に兄姉だけど も
 う既に別の集合体 兄姉なんて連れ合いができれば他人になる 両
 親もソレ式 だからあたしの家族は夫だけになる
  双方が深い底の部分まで知ってしまっているけれど その逆に細
 かい情報がおざなりになったりして こんな時には少し反省したり
 もする でも微妙な機微なら手に取るようだから あまりまごつか
 ないで対処もできる 対外的にはふたりでひとりかもしれない
  だからどうかと言えば 別にどうってこともないけれど







             》 しびる 《
+++++++++++++++++++++++++++++++
(のりこ)>どんどん切り取る時間に事件性がなくなってきますよね
(しびる)>まあな そもそも事件性なんてないけど この頃は特に
      なにもないことを珍重するようなクセがあったからさ
(のりこ)>ウチの事務所ではあたりまえのことですけど なにもな
      いことを懸命に描写するって よく考えればヘンですよ
(しびる)>ヘンってのは意見だな なにもないったって なにもな
      いわけにもいかないし 維持するためにはなにか織り込
      まなきゃいけないだろ その濃度を極限まで下げる作業
      が醍醐味なのな あまりやるとホントになにもないから
(のりこ)>すごく理解できますけどね これでも長いことアシスタ
      ントをしてますから でも読者の人はどうなんでしょ?
(しびる)>ほとんど大半は同シチュあたりからの付き合いだし ま
      あ誰が読んでるなんてわかりようもないんだけど その
      辺は心配しなくていいんじゃねーの イチゲンの読者は
      なにこれ? ってスルーして終わり 好きにやろうや
(のりこ)>しびさんがそれでいいならいいですけど 物語を立ち上
      げるって作業も大事なんじゃないですか? てか基本的
      なスキルだと思うんですよ 作家さんとしては
(しびる)>やればできるもん 別に練習なんかしなくてもさ
(のりこ)>それも知ってますけどね んー まあいいのかな
posted by 篠原しびる at 03:38| シンガポール 🌁| Comment(0) | TrackBack(1) | 連作系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年10月15日

連作24 寧連作02 昼食のちょっと前

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 種別 連作系第24期 寧連作02
 題名 『 昼食のちょっと前 』
 初出 ニフティサーブ/FJAMEA/18番会議室
    1997年04月22日01時20分
 注釈 行頭スペース+30W
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SUBJ:【寧連作】02 昼食のちょっと前

 Sibi-Tem V.4.1

 寧日を語るなら 丁寧よりも寧ろ激しく 寧連作 #02(B群)
 



         『 昼食のちょっと前 』


                        作:しびる





  今週は月曜日から直入りの直帰 端末を使っての定時連絡以外は
 完全に現場専従でのびのび勤務 と思っていたけれどそうもいかな
 くて ブースの設置は段取り変更 機材の搬入は業者の手違い 派
 遣のコンパニオンは国語力ゼロ ご近所さんが漏電でボヤ騒ぎを起
 こし 昨日などは女優のサイン会とやらで将棋倒し 軽傷者数名
  同じ事務機器でもOA関係は 期間中数十万人の巨大イベントだ
 ったりするのに 昨日の時点で水木金の3日間 荒計で総入場者数
 は1万人弱 今日明日の土日を考慮しても 3万人は辛いんじゃな
 いかって見込みらしい 文房具の見本市なんて一般受けはしない

 『そんなこともないでしょ 昨日の騒ぎを見てると 色があれば客
 は来るって感じ ウチもタレントが呼べればね なんてね』
 『色ってやな表現ですね 華って言ってくださいよ でもケガ人が
 でるほど集まってもアレだけでしょ 閑散としてますもん』
  海辺の巨大な埋立地 見渡す限りのだだ広い土地に巨大な施設群
 うんざりするくらい駅から歩いて 見本市会場は途方もなく大きな
 建物だ その気になれば世界規模のイベントが開催できるキャパ
 『卸業者と小売業者が対象ですからね こんなもんでしょ しかし
 まあ 午後には一般人も来ると思いますよ 土曜日ですからね』
 『大島さんは多いんですかココ あたしは初めてでして いや 新
 人研修の時に来ましたか あはは あの頃はもう少しいましたよ』
  施設群には連番が振ってあって 東西南北がアルファベットでE
 WSN そのそれぞれに1から4の番号 都合16棟が放射状に展
 開している 今いるのはS1棟 今回のイベントは1棟のみで開催
 『確か第4回の文具ショウでした そうそう ヌイグルミに入りま
 してね ああ やなことを思いだしたなあ 辞めようかななんて』
 『ナビ社さんは たまに奇抜なことをされますね ヌイグルミは覚
 えてますよ なんだ あの中に岩城さんが入ってたんですか』
  ウチは外資系の筆記具メーカーだ ナビゲーター万年筆 マスコ
 ットのナビちゃんは80年前のテレビCF 似非ルネッサンス
 『キャリア組が目標でしたから それが入社3週間目でヌイグルミ
 ですもん 真剣に転職を考えました 奥歯かみしめてましたよ』
 『いやいや 現場主義でしょ わざとやらせたりしますよね おや
 向こうのあの御仁は 岩城さんところの課長さんじゃないですか』
  まだ午前中 会場を見下ろして談話スペース 段取りに慣れてき
 たコンパニオンに仕切らせて あたしは遠くから鳥瞰する 他社の
 状況を観察するのも仕事の一部 課長の登場は計算外であったが
 『こちらに気付かれたようですよ それじゃ僕はこれで なんでし
 たら昼食をご一緒しましょうか あとで誘いますよ じゃ』
 『あはは それではそういうことで 課長が来るって聞いてないの
 に またごちゃごちゃ まったく はあ おはよーございまーす』
  タバコをもみ消して大島氏は退散 あたしは手摺から身を乗りだ
 して朝の挨拶 もう既に昼前 頭の中で会話の筋道が瞬時に4通り
 どれに決まるかは課長の表情次第 どうだか あ 手を振っている
 『これはこれは チーフ直々のご視察 そうそう朝イチに喜国物産
 の木村さんが陣中見舞いだそうで 派遣嬢に聞きませんでしたか』
 『いや なにも 木村が来たか コンパニオンはお前が面接したん
 だろ うちのロゴ入り娘が通路でタバコ吸ってたぞ 行ってこい』
  にこにこと恵比須顔だけれども 揉み手をしたところでフォロー
 にはならなかった そもそも業界の付き合いで出展している見本市
 だから 社としての位置付けは最低 ダメなら辞めればいいのだ
 『はあ ウチのロゴ入りですか ちっ ちょっと目を離すと油断も
 隙もない それはもうすぐ絞めてきます ダメですね派遣は』
 『岩城 全部お前の責任だ 文具協会の常任理事としての格を考え
 ろ 老舗のイベントだからな 業界人ばかりなんだぞ 早く行け』
  課長は微笑みながら怒髪天を突いている よく見ればウチのブー
 スには欠伸娘がふたりだけ 茶髪にメッシュのあとひとりがいない
 精密機械じゃなし説明は不要 黙って立っていれば仕事になる こ
 れ以上の会話は課長の不機嫌を助長するだけだ 慌てて駆けだす
 『岩城さん 叱られてましたね 休憩に誘ったのは悪かったかな』
 『あ いやいや そんなのじゃないですよ ウチのコンパニオンが
 サボってまして それも課長の目の前で 捕まえに行きます』
  途中のブースに先程の大島氏 ジャケットを小脇に抱えて女性と
 喋っていたところ 彼はサラリーマンらしからぬ風貌の通り まこ
 と真面目な職務態度とは思えない しかし営業の神様らしい
 『それなら 見つからなかったってことで そのまま昼食に出掛け
 ませんか なあに 現場なら船越課長に任せれば大丈夫ですよ』
 『はあ それもそうですかね いやいや そうもいきませんか で
 も魅力的な誘惑ですね どうしたものでしょう 10秒ください』
  人の勢いを削ぐ発言である 言われてみれば考えなくもない せ
 っかく課長にご足労願ったのなら いやしかし昼食となれば1時間
 は必要だろう 30分に切り上げても待つ身に長し さてどうする
 『そうですね 行きましょうか 大島さんに奢ってもらえる話を蹴
 るのも惜しいですし コンパニオンを連れて帰っても どうせ課長
 の説教ですもんね 意味的には冷却期間とエネルギー補給ですか』
 『話がわかりますね それでこそ岩城さん ミカちゃん それじゃ
 後は頼んだよ すぐに交代するからね 商談してくるから』
  大島氏が話していたのは同僚だったのか 危ない微笑みに片手を
 上げて ミカちゃんと呼ばれた女子社員との関係が容易に想像でき
 る 気を許すと食べられそうなタイプだ 締めて掛かるべき
 『商談ですか あたしの社章を外しておかないと メーカー同士で
 話とくれば やっぱり談合でしょうか なににしましょうね』
 『次回のコンパニオンの契約料でも決めますか ウチも高いばかり
 で馬鹿ばかり いっそナビ社さんみたいにヌイグルミかな』

  どこもかしこもがらがらのブースばかり 文具協会の鳴り物入り
 だから 義理か厄介の出展揃い 客だってどこぞの招待客 誰も必
 要としない見本市がなぜ続く 無駄の集大成だと思わないのか
  キャリア組へのワンステップなのか あたしひとりで現場を仕切
 る 入社5年目にしてこのポジション どう考えるも微妙なところ
 鼻息荒くでは渡っていけないことも この歳になれば知っていたり
 する 隣を歩く大島氏などは その権化かもしれないと感じた







             》 しびる 《
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(のりこ)>こちらは一転 テンポいいですよね 前半はちょっと掴
      みづらい展開ですけど 後半はいい感じで
(しびる)>だな キャラ増やした方がいいのかね 最小限で転がす
      方がいいと思ってたけど セリフ3人 登場5人か
(のりこ)>全編じゃなくて 今回みたいにちょいかましがいいです
      か 場面も替えてるでしょ 流れがいいですよね
(しびる)>ふむ 語呂合わせとかも効くな 高いばかりでバカばか
      り 実際に言ってみたいねえ スッキリするだろうなあ
(のりこ)>ダメですよ そゆこと言っちゃ(笑)
posted by 篠原しびる at 00:58| シンガポール 🌁| Comment(0) | TrackBack(0) | 連作系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

連作24 寧連作01 わからなくて不安

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 種別 連作系第24期 寧連作01
 題名 『 わからなくて不安 』
 初出 ニフティサーブ/FJAMEA/18番会議室
    1997年04月06日00時56分
 注釈 行頭スペース+30W
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SUBJ:【寧連作】01 わからなくて不安

 Sibi-Tem V.4.1

 寧日を語るなら 丁寧よりも寧ろ激しく 寧連作 #01(B群)
 



         『 わからなくて不安 』


                        作:しびる





  不精で伸ばしていた髪がうっとおしくなり 部屋にあったリボン
 で結わえてみた 頭を振ると小気味よく ポニーテールも悪くない
 かわいらしいゴムを買ったり 色々とアクセサリーに凝る楽しみも
 それなりに 某かの主義主張があるように見えるのも面白い
  そもそも社会人じゃないから なにがどうだろうと摩擦もなくて
 よれたスーツに黒いネクタイ そんな姿で終日過ごす 猫背に半眠
 りの寝ぼけ顔 ろくに授業も出席せず 毎日をダラダラとなにをす
 るじゃなし 倦怠感なんて高尚なものじゃなく 怠けているのだ

 『失業中に見えるのかな どう思う 色はこれで良かったのかな』
  コンビニ袋には生活資材 Pボトルの烏龍茶 ヒジキと油揚げの
 煮物 2週間TV雑誌 カルボナーラの缶詰 新ジャガぽてち ス
 モモが3個 チンゲン菜 色がどうこうは白色パンスト2足入
 『それよりもクリーム掛かったのがあったでしょ なんで真っ白を
 買ってくるのよ こんなの看護婦しか履かないって まったく』
 『文句があるなら自分で買え そんなことよりも 失業中のサラリ
 ーマンに見えるのかな さっき声を掛けられた どう思う』
  パンストの平べったい袋を放り投げて さっそく新ジャガぽてち
 を開封する 回転台に乗ったテレビをこちらに向けて とにかく画
 面になにかが映っていなければ死んでしまう 禁断症状だ
 『ひとりで食べないでよ なに 失業中のサラリーマンって 仕事
 してなきゃサラリーは貰ってないじゃない 考えて話すように』
 『ああ そうか まあいいや 学生には見えないのかな さっきさ
 バロンの店員に 店長にならないかって 店長からの伝言らしい』
  バロンは近所のコンビニの名前 コンビニエンスストア・バロン
 名前の由来は不明 なぜコンビニが男爵 旧華族が経営するコンビ
 ニなのか 個人的趣味のネーミングなら劣悪 謎は深まるばかり
 『なにそれ そんなに仲良しだったの 引き受ければいいじゃない
 非常に向いてると思うわよ 晩ご飯はなに なに買ったの』
  ベッドの上で雑誌を眺めている女性 テレビに映るのは夕方の情
 報番組 ローカルタレントが粗末な料理屋を紹介している 窓の外
 は気味が悪いくらいの夕焼け 部屋の中はオレンジ色が基調
 『ヒジキ この前買って美味しかったやつ だって向こうは学生だ
 とは思ってないよ 面白いだろうけど どうかな 5講目ないの』
 『あるけど行かない 飲み会の留守電が入ってる ぴーって』
  確かにメッセージマークが点滅している パンストがどうこうと
 聞いたのは午前中 それからこの部屋は初めて きっと彼女は一日
 中この調子だったのだ ゴロゴロとなにをするじゃない無為な時間
 『仕入れとか面倒かな 今のバイト全部辞めて引き受ける手もある
 給料次第だろうけど なんかいい加減だなあ いいのかそれで』
 『別にいいんじゃないの バロンも疲れてるのよ 誰かに爵位を譲
 って引退したいんでしょ 凄いじゃない 貴族だもん』
  その件の店長は 見たところ20代の後半から30歳くらい 常
 に目の下の隈も黒々と 誠実そうな笑顔に哀愁を帯びて なにが楽
 しいのかって程に明るく挨拶 貴族の暮らしも楽じゃないのだろう
 『学生貴族って なんかさあ いんちきドラマのタイトルみたい』
 『いんちきいんちき 安く買えるじゃない 生活費が助かる』
  彼女は足をバタバタさせて雑誌に突っ伏す テレビは音を立てず
 にキラキラと輝く 内容に意味はない テレビジョンはテレなビジ
 ョン再現機であって ビジョンはただの視覚効果だ 音は必要ない
 『でもなあ きっと拘束時間は凄い 自由時間はないと思う 夫婦
 の危機が訪れるかもしれない 徒歩5分だけど職場だし』
 『夫婦じゃないでしょうに 結婚なんかしない あたしは理想が高
 いもん 貴族でもコンビニ店長じゃなーって 男爵って最下位ね』
  爵位は5階級 公爵に始まり侯爵で伯爵で子爵 男爵はその下で
 最下位 彼女も同じ欧州の古典文学を専攻している うつ伏せに寝
 転がっていると きっとそのまま眠ってしまう 眠り姫だ
 『あ そう ならいいけど 寝ちゃう前に晩ご飯にしよう それと
 も飲み会でなにか食べる びんが茶屋なら焼きおにぎりだな』
  留守電の内容は聞かなくてもわかっている まったくいつも決ま
 った文面 びんが茶屋に午後6時集合 びんが茶屋は居酒屋で 正
 式名称はカリョウビンガ茶屋 名前の由来はこれまた不明である
 『めんどくさい あたし寝る ヒジキは起きてから食べる』
 『なら仕方ないか ひとりで行くのも面白くないし』
  オレンジ色が朱色に変わる そのうち赤になって闇が訪れる 立
 ち上がらずに手だけ延ばして室内灯のスイッチ 長い髪を散らして
 彼女の後頭部 不機嫌そうに左右に振り 寝るから消せと言ってい
 るのだろう 邪魔するのも悪いから再び夕暮れ 朱色の世界
 『行けばいいじゃない でもひとりで帰ってくるように すぐに泣
 き入れて呼ぶでしょ あーれは悪い癖ね 寝てるから』
 『愛情表現の変種 今日はいいや 面倒だし飲み会も なんか』
  座り込んで立ち上がる気もしない 新ジャガぽてちも食べ終えて
 スモモを服で擦って洗浄の代わりに そのままかじって果汁が床に
 滴る スモモは果物の王様 近所ではバロンが最初に入荷する
 『そうすれば どちでもいいもの ウオッカの買い置きが腐るから
 飲んじゃってもいいわよ えうれか 寝酒に飲むかな 流しの下』
 『ゆりーかだろ なにで割る ウーロンなら買ったけど 確かハイ
 パー70が残っていたような気がして これも腐ってるか』
  舌の上でスモモの種を転がす 梅干し然り プラム・アプリコッ
 ト系は種の楽しみ そのまま仰け反ってシンク下のドアを開く 3
 割残ったウオッカの瓶 グレープジュースはいつからここにある
 『そのままでいい どうせ寝酒だから あ そうそう さっき思い
 だしたけど なんだっけ 今あたしなにしてたっけ ああっと』
 『寝てたろ 酒を飲むんじゃないのかあ ほら これ』

  彼女の横顔にテレビの照り返し この番組は青色が基本色 少し
 潤んだ瞳に青い閃光が明滅する 窓の外は赤を混ぜた黒 向いのア
 パートの廊下の蛍光灯が点灯する もうそろそろ夜の時間
  夕闇になにやら郷愁を感じて それでも今日は適当にごまかして
 しまう 胸の疼きは気付かなくても生きていける 眠ってやり過ご
 すのも手段のひとつ いや郷愁感なんて高尚なものではなくて こ
 れはやはり不安なだけ なにが不安なのか わからなくて不安







             》 しびる 《
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(のりこ)>ビンガ茶屋とか えうれかとか コンビニバロンもどこ
      かで見ましたか なんかデジャヴですね
(しびる)>基本は夕方恐怖症なんだけど それだけじゃ前にもやっ
      たネタだし この虚ろな感じをどうにか表現できないか
      って企画だな てきとうに日常を描写して その中にち
      ょっとずつ空虚な感じを混ぜていけないかとか
(のりこ)>んー テンションの低さとかは感じられますけど それ
      が空虚かっていわれると どうですかね
(しびる)>汎用できる表現じゃねーしな これくらいになってくる
      と 波長が合えば理解してもらえるとか そゆ感じかな
(のりこ)>それはダメなんじゃないでしょうか 強くいいますと
(しびる)>ダメだろうなあ でもまあこれが極めだしの1本じゃな
      いし まま実験の内かね 成功かどうかはとにかく
(のりこ)>1000本の1本ですけどね
posted by 篠原しびる at 00:56| シンガポール 🌁| Comment(0) | TrackBack(0) | 連作系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

連作23 廉連作15 満月の下 桜色の

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 種別 連作系第23期 廉連作15
 題名 『 満月の下 桜色の 』
 初出 ニフティサーブ/FJAMEA/18番会議室
    1997年04月03日01時30分
 注釈 行頭スペース+30W
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SUBJ:【廉連作】15 満月の下 桜色の

 Sibi-Tem V.4.1

 廉直に清廉に 無心から始めるのもいい 廉連作 #15(B群)
 



         『 満月の下 桜色の 』


                        作:しびる





  スエットスーツを着込んでジョギングシューズを履く 腕時計に
 ウエストポーチ 中身は小銭と小形のスタンガン 今まで使ったこ
 とはないが 何事も用心の護身用 使わないに越したことはない 
  身支度を整えて時計を眺める そろそろ午後9時 玄関ドアを施
 錠して鍵はポーチに 階段を駆け降りて郵便受けを確認 中身はピ
 ンクチラシと紳士服のDM そのままゴミ箱に廃棄してマンション
 から飛びだした 見上げれば満月 快晴の夜空に星は見えない

 『遅いぞ よっちゃん 時間厳守 もたもたしてると置いてくよ』
 『遅れてないって 最初は9時半に公園だったのにさ いいけど』
  マンションはデコボコと多角形 その一辺が道路に面してメイン
 ゲート 管理事務所は午後5時以降は無人になる 樹木の透き間か
 ら道路に飛びだし 街灯の明かりの下 桜色の姿があった
 『なら9時にここでしょ 30分じゃ公園はムリ さあ行くわよ』
 『小学生じゃないんだから 迎えに来るって 律儀だかなんだか』
  全身を薄いピンク色で統一 長い髪を後ろで結わえる 彼女はす
 らりと長い足で駆けだした 彼女の住まいは近所のマンションだ
 『今日はどうするの また いつきのお任せコース 危ない所はダ
 メだよ 犬神大社の外苑周回コースは どうかな 明るいしね』
 『あんな邪教の暗黒魔殿 ほいほい 見かけの明るさに 騙されて
 るようじゃ 真の走る人にはなれないわね こっちこっち』
  彼女はジョギング仲間 それと同時に飲み友達でもある さらに
 はゲームや怪しい秘密の収集癖 学生の頃からのつきあいで あた
 りまえだけど肉体関係もある 最近はないけれど 別に構わない
 『健康のために走るんじゃなかったっけ ゲームばっかりで体が腐
 るって いつきは極端すぎると 思うよ 暗黒魔殿ってなに さ』
  走り始めて3週間と少し 残業に配慮してこの時間 いきなり長
 距離は体に悪いから 最初は近所を数キロ程度 この最近は区の名
 所めぐり それにも飽きたのか繁華街にも足を延ばす
 『よっちゃんの その偽善ぶりは だって 新興宗教も古参宗教も
 仕組みは同じじゃない 不安を煽って マルチ商法よね 休憩』
 『まだ20分も走ってないのに タバコは辞めた方がいいね』
  その初期の集合場所だった公園の手前 勢いに乗れば危ないくら
 いのピッチなのに たまに息切れでへばってしまう そう言ってい
 るそばからライターの炎 なにが目的で走っているのか疑問だ
 『ばかねえ よっちゃん あああ 頭がくらくらする なんたって
 ジョギング中の喫煙に勝るものは よっちゃんは吸っちゃダメよ』
 『吸わないよ 真の走る人にならなきゃいけないしね まったく』
  彼女は同じく25歳 もうかれこれ7年のつきあい どちらもい
 い大人なのに コンビニの前でウンコ座り 唯一の救いは彼女がす
 こぶるの美人であること 絵的に華があれば許される所以だ
 『よかった あたしが大事に育てているよっちゃんが 俗世に汚れ
 ていくだなんて もっと甲斐性があればねえ 情けないわ』
  鼻から煙を吐きだし 脇をすり抜けるカップルの視線を睨み返す
 なにがどうあれマイペース イベントに関することは なんだって
 彼女の発案で決定される 拒否しても無駄 既に決まっている
 『情けなくて悪かった 休憩は終わり さっさと走る』
 『あら あたしのことよ 働いて食べさせてあげるわ さーてと』
  タバコを地面にもみ消し 唇を歪めてニヤリと微笑む そのまま
 立ち上がって走り始めるのかと思いきや 微笑みながら股間に手を
 伸ばす ではなくて ウエストポーチが狙いだった
 『しかし今月はビンボーだから よっちゃん 持ってるんでしょ』
 『甘えてもダメ 水分は走り終えてからの楽しみ いつきは自分に
 甘すぎる そんな顔したって はいはい わかったって ふう』
  ポーチを後ろに回して突き放す 抱き付かれておねだり顔 拒否
 しても無駄 既に決まっている 彼女を甘やかす悪い癖 声をださ
 ずに唇だけ動く ありがとうって 読唇術じゃなくてもわかる
 『飲んだら走るわよ あたしに口答えするなんて 最近のよっちゃ
 んは生意気よね どれにする 要はなんだっていいのよ つまり』
 『なんでもいいってことはないよ 好みはあるからね 右の端の』
  お互いに仕事は忙しく 入浴と睡眠以外の時間はなるべく遊んで
 いる 彼女の言わんとするなんだって それはなるべくなら言っち
 ゃいけないことである 故意にはぐらかして 右端はコーヒーだ
 『キリマンジャロね 好みでしょうに 嫌いだとは言わせないわ』
 『はいはい いつきには逆らいません 今更だけど』
  自販機にコインを投入してボタンを押す なにが楽しいのか 笑
 いを堪えて肩が揺れている 確かに好みである 一緒に遊んでいる
 のがあたりまえの関係 血の繋がらない双子のような 彼女のこと
 ならなんだって受け入れる 同じ部屋で暮らさないのは賢明な処置
 『それじゃ行きましょうか 今日は商店街を攻略するわ この時間
 はアーケードの中まで不法駐車が溢れてるから 躱しながら走る』
 『なんでもいいよ ヘルス街攻略計画に比べれば 割りとまとも』
  一気飲みしてゴミ箱へ投棄 彼女はその場で2回飛び跳ねて駆け
 だした スタイルのいい体 結わえた髪が乱れて揺れる 桜色も目
 に鮮やかに 釣り合うだけの男だと自負していても どうだか
 『あれはダメよ よっちゃんの教育に良くないわ 不純な気持ちで
 スポーツに取り組むのは そもそも発散するためにね 走るの』
 『それは違うんじゃないの みんな性欲を発散するために 走って
 るわけじゃないと 思うけどね 中学生じゃ ないんだからさ』
  彼女が先頭で 追いかけながら走る 大声で話しながら走るのは
 思いの外体力を使う 歩道は並ぶほどに広くなく その辺も考えて
 の犬神大社だったのに 気流からすれば後方ほどに大声が必要
 『聞こえないわよ 性欲がなにって よっちゃんは あたしのお尻
 を見てて興奮しちゃったわけ あははは 仕方ないわねえ』
 『なに言ってるんだか いつきの脳味噌は どうなってるんだよ』

  馬鹿笑いしながら速度をあげる 彼女はすこぶるの上機嫌 そろ
 そろ脳内麻薬が分泌されてきたのか あまりはしゃぐとぶり返しが
 怖いのに お構いなしのピッチ走法である なにが仕方ないのか
  満月の輝きの下 街灯に照らされて 彼女の後ろを走る 街の喧
 噪をBGMに 頭の中が桜色に染まりそうな気がしていた








             》 しびる 《
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(のりこ)>別に春ってわけじゃないんですよね 満月の夜ですけど
      なんか桜の咲いてる光景を連想してました
(しびる)>あー そうだな ピンクの上下を見ながら走ってるって
      だけで しかしあれだ もうちょいスピード感が欲しか
      ったなってのが正直なところだな やっぱ難しいわ
(のりこ)>スピード感ですか んー セリフはちょっと工夫されて
      ますよね 文節で区切って 呼吸の感じとか
(しびる)>ちょい説明しすぎなんだ もっといろいろすっ飛ばして
      よくわからないってくらいでいいと思うな
(のりこ)>はあ そゆものですかね
(しびる)>ふとい筆でずばあっと1本幹を描いて もうしわけ程度
      に枝葉を描いてできあがり そういうスピード感な
(のりこ)>わかるようなわからないような
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連作23 廉連作14 ねこみを襲え

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 種別 連作系第23期 廉連作14
 題名 『 ねこみを襲え 』
 初出 ニフティサーブ/FJAMEA/18番会議室
    1997年04月01日03時00分
 注釈 行頭スペース+30W
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SUBJ:【廉連作】14 ねこみを襲え

 Sibi-Tem V.4.1

 廉直に清廉に 無心から始めるのもいい 廉連作 #14(B群)
 



          『 ねこみを襲え 』


                        作:しびる





  適度な距離を保つ 基本の基本は馴れ合わないことだ もしかす
 ればこれがすべてかもしれない うだうだと講釈を垂れることは可
 能だけど きっとあまり意味がないと思う そもそも種族が違うの
 だから なにがどうあろうと相互理解は無理 ぜったいに無理だ
  ほんの子供の頃は少し期待もしたけれど 勝手に近所を徘徊する
 段になって考えを改めた どうせ住居が重複しているだけの関係な
 ら 適当な意味付けでごまかすより やはり距離を保つのが正解

 『おっはよう ほらあ にゃみこちゃんもおっはよう ほらほら』
  最初に感じたのは頭上からの圧迫感 うつ伏せに寝ている後頭部
 に蠢く感触 それと全身を包み込む柔らかな過重 テンションの高
 い叫び声は耳もとで響く とにかく眠い 体は眠っている
 『起きてよっ にゃああああ あははははは 窒息攻撃だああっ』
 『やめろ やめてくれ 頭の上の猫を退けてくれ やめろばか』
  両手の感覚がない おそらく体の下敷きになって痺れているのだ
 ろう 背中に感じるのは彼女の胸の肉 完全に重なって騒いでいる
 どうにも目蓋が開かない なぜこんな仕打ちを受けるのか
 『起きてくれないとやめないもん 3日振りににゃみこちゃんが帰
 ってきたのに パパさんが寝てちゃダメですよ ほら ねってば』
 『誰がパパさんだ なみこさあ 頼むから眠らせてくれえええ』
  朝っぱらから全開パワーで騒ぐ理由はとにかく 後頭部の小動物
 には我慢がならない 生暖かい肉の塊が重心を変化させながら 筋
 肉の動きまで感じられるのは不気味この上ない このバカ猫めが
 『ダメです ほら にゃみこちゃんもお願いしまーすっ きゃっ』
 『いてて いいかげんにしろばか 異常なことをするんじゃない』
  なみこの柔らかい感触は悪くないが ばか猫の両足を掴んで頭を
 叩く 我慢の限界に腹筋がフル稼働 なみこ諸共ばか猫を振り落と
 す たまの休日に朝寝もさせないつもりか 非常に憤って頭を掻く
 『なんのつもりだ ばか 汚れてるじゃないか なんだその目は』
 『少し怒っています パパさんは寝起きが悪くって なみこもにゃ
 みこちゃんも そんなパパさんには怒るのです がああっ』
  頭がくらくらする 連日の睡眠不足を休日に解消する 昼まで眠
 る計画が強引に中断された ベッドの上にはパジャマ姿のなみこと
 でぶでぶのバカ猫 こちらが怒られる筋合いはない 純粋な被害者
 『にゃみこちゃんが帰ってこなくて なみこはどれだけ不安な毎日
 だったか なのにパパさんは ばかばかって 噛んじゃえ があ』
 『いてっ なに最近見ないと思ったら このばか家出してたわけか
 なんか薄汚れてるぞ 汚いから布団の上に乗せるな 降りろって』
  なみこに首筋を噛まれる それは構わないとして なみこを抱き
 寄せながらバカ猫を蹴り落とす ベッドの上は色々な意味で聖域だ
 小汚い小動物が侵入を許される場所ではない これでいいのだ
 『うん きっと大変なことに巻き込まれていたはずだから にゃみ
 こちゃんはちょっと汚れてるけど 仕方ないもん 許したげてね』
 『なみこの暴挙は許すがなあ 汚い猫はダメ 基本的に不可だな』
  もうバカ猫のことなどどうでもいい かわいらしく哀願する様を
 見ていると なにやらむらむらと劣情を催す 勝手知ったるなみこ
 の体 思いたったが吉日である すぐに押し倒してみる
 『そんなあ パパさんはにゃみこちゃんのパパさんなのに あん』
 『パパさんってのはやめろ なみこの肉布団もいいか これはいい
 考えかもしれないよな でも最後までしてから ほいほい』
  さっさと半裸に剥いていつもの手順 窓からはさんさんと午前中
 の日差し なみこも適度にその気になっている 手で愛撫しながら
 舌を這わす この感触は飽きることがない いいものだ
 『お前っていい体してるよな ふむふむ 何度やっても飽きない』
 『ふにゃあ そんなに気持ちいい なみこって そっかいいのか』
  本心を吐露すれば睦言 完全に裸にして入念にチェックする な
 みこの言葉にも自然と幼児が入る 天然系のカマトトが 性的興奮
 によって加速されるらしい それもまた趣味だから問題なし
 『それはもう だな この体なしには暮らせないと思うぞ 餌付け
 されてるらしい おっ もう準備万端か いつになく早いな』
 『えへへへ 褒められると嬉しいもん すぐでも構わないよ なみ
 こが上でしてあげてもいいし してあげようか こっちも』
  基本パターンからなら前段階なのだが 最初のチェックで完璧な
 状態 のらないときはここまで来るのに30分は掛かる なみこは
 妙な笑顔で下腹部を握っている してくれるならしてもらおう
 『でもなみこが先だもんね 途中でしてあげるからね うんしょ』
 『長続きするかな なみこがはりきると調子が狂う はいはい』
  そのまま引っ張られて仕方なし なにも付けずにそのまま押し込
 む ぬめぬめとざらざらが混在して波打っている 突き当たったと
 ころでなみこの顎が上がる 毎朝体温を計ってるから大丈夫だろう
 『気持ちのいい体だ ふっ 気をつけないと こりゃ 終わるな』
 『くうっ まだダメっ 合わしてくんないとやだもん やっ』
  これも本心 なみこの腋の下から背中に手を回し 背中を反らせ
 るようにして抱きかかえる 動きが制限される姿勢を取るのも な
 ぜか急に逼迫し始めた事態への対処方法 油断すると危ない感じ
 『一度終わらせてからって そうもいかないか あっ がああっ』
 『そんなの早いもん まだやだああ ああって どうかしたの』
  我慢をしなければと力んだ途端 背中にすさまじい激痛が走った
 思わず声をあげたが 考えるまでもなく原因はわかっていた どう
 も静かだと思えば どこかから隙を伺っていたのだろう
 『いててててっ ばか猫だ 背中に飛び付きやがった いてーっ』
 『はあ にゃみこちゃんは きっとママが苛められてるんだと思っ
 たんじゃないかな 苛めてないのにね ちっちゃい子だから』

  とにかく激痛 服を着ていない素肌に爪を立てられた 苛めるも
 なにもないだろうに ただ動いている背中に我慢がならなかっただ
 けだ 動いていれば飛び付く まったくただのケモノである
  これで完全に気分も萎えてしまい 続きになにかって気分ではな
 かった そもそも種族が違うのだから 発情期以外は無関心のばか
 猫には理解できない まったく 邪魔な猫だ






             》 しびる 《
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(のりこ)>なにを描いてますかまったく で片してもいいんですけ
      ど ねこちゃんって飛びつきますよね
(しびる)>ああん? のりこが性行為の最中にか?
(のりこ)>ばっ なにをバカなことを 怒りますよホント そうじ
      ゃなくて 例えば洗濯物をたたんでるときとか
(しびる)>ふうん あーそう
posted by 篠原しびる at 00:54| シンガポール 🌁| Comment(0) | TrackBack(0) | 連作系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年10月11日

連作23 廉連作13 あめもよい

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 種別 連作系第23期 廉連作13
 題名 『 あめもよい 』
 初出 ニフティサーブ/FJAMEA/18番会議室
    1997年03月28日02時15分
 注釈 行頭スペース+30W
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SUBJ:【廉連作】13 あめもよい

 Sibi-Tem V.4.1

 廉直に清廉に 無心から始めるのもいい 廉連作 #13(B群)
 



          『 あめもよい 』


                        作:しびる





  かなり郊外の それも小高い山の山頂にある 一般的な交通手段
 は路線バス これは学校と契約しているらしくて 頻繁にターミナ
 ルと学校を往復している 大抵の生徒はこのバスを利用して通学し
 ている だからバスが走らなければ休校になる 当然だろう
  しかし路線バス通学以外の生徒もいる バスターミナルは山の麓
 にあるけれど それよりも学校に近い場所に自宅がある生徒は自転
 車通学をしている この自転車通学は書類審査があって 条件を満
 たさなければ許可されない 妙な話だけれど 学校側としては自転
 車通学よりも路線バス通学を推奨している その方が費用が掛かる
 のに なんでも過去に自転車通学中に死亡事故があったらしい

 『なに 変に静かだと思えば やっぱり休校なわけ なんだかな』
 『さっき決まったんだよ バス組は誰も来てねーもん 帰るか』
  バス会社がストを起こせば休校になる そんなことは前日からで
 もテレビでわかることだ 今日の休校はそれ以外の理由 台風並み
 に発達した低気圧は台風じゃない 台風なら即休校 判断は難しい
 『今更帰るのも悔しいわよね この暴風の中を無理して登校したの
 に 結局は杉浦第3小学校だけが割を食うのよ いつでも』
 『このままいても仕方ないだろ まきこだって自分で自転車を選ん
 だんだからさ 文句を言うのは筋違いじゃないか いいけど』
 『自転車組は特権階級だもんな なんたって機動力 吉岡はどうす
 るんだ 弁当を食ってから帰るか 夜まで収まらねーぞ』
  教室には3人だけ 僕も含めて全員が同じ小学校の出身だ この
 高校の学区には中学が4校 その内の杉浦中学の さらに杉浦第4
 小学校の出身者だけが自転車通学を許可されている 外は暴風雨
 『まきこは部活して帰るのか 俺達は弁当だな そうと決まれば』
 『さっき朝食を食べたところなのに 城島の胃袋ってなんだかな』
  みんな幼馴染み 夕方のような外の暗さに教室の照明が輝いてい
 る 黒板に落書きをしているのは城島 窓際で腕を組み 眉を寄せ
 ているのがまきこ 高橋まきこだ ちなみにまきこは女子バレー部
 『どうせ食べてないんでしょ 寝坊して朝食抜いて ははん それ
 で休校だもの ばっかみたい なにごとも中途半端なのよねえ』
 『いいじゃん別に てきとーだから致命傷にならないんだぜ 自分
 の首を絞めるような生き方はしない 吉岡には理解できるよな』
  黒板に大きく描かれているのはまきこの似顔絵 三角形の上に蝶
 の羽を乗せた記号のようなもの 1秒間に1個は描ける 昔はこれ
 を描いただけでまきこは泣きだしたものだ なにか懐かしい
 『なにを言ってるんだか どちらにしても休校だろ こんなところ
 で同窓会をしてても仕方ないし 帰ろうかな どうせ濡れるもん』
 『あたしも帰ろうかな こんなところでバカと同じ空気を吸ってて
 もつまらないわよね あたし達は帰るけれど それは消しておきな
 さいよ 明日まで残ってたら 悲しいことになるわよ 聞いてる』
  まきこはさらに険しい表情で城島を睨み付ける 黒板の似顔絵は
 既に数十個になっている 執り憑かれたように描き続ける城島も変
 だけど まきこの悲しいことって脅しも変だ どうでもいいけど
 『あと30個描いてからだ あと少しでなにかがわかるような気が
 する 俺って まきこを愛してるのかもしれない これは愛だ』
 『ばーか どうしてそんなことが真顔で言えるのかしら 城島 あ
 んたが告白するには 輪廻2回分は足りないわ 2回死になさい』
  なんだかんだと仲の良いふたり 普段は他の人間に紛れてしまっ
 ているけれど こんなふうに昔の知り合いだけで話をするのも面白
 い 小学生の頃なら 僕はこのふたりと距離があったのにだ
 『あたしのために死になさいってか まきこは凄いことを言うよな
 でもだな 俺は死なないぜ もう少しでなにかがわかる ふうむ』
 『なにがわかるわけ さっきからだと少しずつ形が変わってるよう
 な感じだよね なにかこう 横にすれば魚の形みたいな』
  どうでもいい話 休校なのは決定事項で このままここにいても
 仕方ないのはみんな納得している ただ問題は徐々に強くなってい
 く暴風雨 この中を帰宅するのは勇気が必要 びしょ濡れは必至
 『ビンゴ! それだな まきこ魚類説 つまりこうだ 前から生臭
 い女だとは思っていたが お前って魚だったんだな って がっ』
 『殺すわよ もういい歳なんだから限度を知りなさい 今あたしが
 殺さなくても その調子で世の中を生きて渡れると思うわけ』
  含み笑いしながら城島が振り返る その襟首をまきこが掴む そ
 のまま上に持ち上げて 黒板に押しつけられた城島は苦笑い 折り
 良く窓の外では雷が轟く どこまでも馴れ合いだったりする
 『思う かわいらしくって仕方がないんだよな ほら 好きな女の
 子は苛めたくなるだろ まきこも俺を苛めるのか 完璧な理論な』
 『はん もういいわよ 魚で結構 煮るなり焼くなりしてちょうだ
 い これじゃいよいよダメらしいわ 今のうちに帰るのが正解ね』
 『そうかもしれない 城島はどうする 本当に弁当を食べるわけ』
  物凄いことになってきた 窓はアルミサッシなのにガタガタ揺れ
 ているし 打ち付ける雨はかなりの量 絶え間なく雷は鳴っている
 わけで こんな調子が夜まで続くのなら 見切りは大切だと思う
 『どうせなら朝までいるか そもそも帰ってもだな 平日のテレビ
 なんか面白くないぞ 出掛けるわけにもいかないだろ これじゃ』
 『だからってこうしてるのか それもなんだかなあ まきこはどう
 する 篭城するのか突撃するのか 城島は篭城組らしいけれど』
  会話も聞き取れないような轟音だ 自然と内容もいいかげんにな
 る 誰もなにも決めたがらない どちらに決めるのもうんざりする
 ような結果は見えている たぶんもう少しダラダラが正解だろう
 『突撃組 と思ったけれど 付き合うわよ城島 食べましょうか』
 『なんだ まきこも寝坊で朝食抜きか だと思ったんだよな』
 『結局そうなるわけ どうでもいいけど なんだかなあ』

  窓の外をじっと眺めて まきこの意見はこのていたらく 苛々し
 ていたのは空腹が原因 なんともおざなりな馴れ合い状態ではある
 けれど 今更だからどうでもいい それなりに楽しくなくもない
  楽しそうに弁当を広げる城島と 向かい合って眉を寄せるまきこ
 僕は仕方なく近くに座り 朝の教室でピクニック気分 外はとても
 じゃないけど行楽なんて天気ではなく 絵に描いたような暴風雨だ
 ったりする なんでもいいけど 夜までには帰れるのかな





             》 しびる 《
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(のりこ)>この学校はいつもの学校ですよね 校舎が小高いところ
      にあって バスターミナルが近所にあって もしかすれ
      ばしびさんの母校がモデルですか?
(しびる)>いや ウチの学校はぜんぜん違うな 似たようなところ
      は知ってるけど そこも基本は自転車通学だったし
(のりこ)>そうですか まあそりゃそうでしょうね あと この頃
      の作品はどうもセリフの判読がむつかしいのが多いです
      よね ええっと誰が喋ってるのかな って感じで
(しびる)>すごい加速が付いてたからな 赤○氏みたいに と某が
      言ったで追い掛けるのは負けだと思ってたし
(のりこ)>の長者番付作家の○川先生ですか あの人の文章は謎が
      ないですよね まるで映画の台本のような
(しびる)>ホントはそうじゃなきゃいけないのな この頃はきちん
      と反省して わかりやすく描こうと努力してるし
(のりこ)>ですよね 内容や展開にこそ作家性や拘りが必要なので
      あって まずは伝わらなきゃ意味ないですし
(しびる)>ふん 普段ならなにを生意気なことって怒鳴り散らすと
      ころだけど それ正論 守らなきゃいけないことその1
(のりこ)>正しいこと言って叱られるのもイヤですし
posted by 篠原しびる at 17:54| シンガポール ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 連作系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年10月07日

連作23 廉連作12 俯瞰(5分28秒)

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 種別 連作系第23期 廉連作12
 題名 『 俯瞰(5分28秒) 』
 初出 ニフティサーブ/FJAMEA/18番会議室
    1997年03月26日16時14分
 注釈 行頭スペース+30W
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SUBJ:【廉連作】12 俯瞰(5分28秒)

 Sibi-Tem V.4.1

 廉直に清廉に 無心から始めるのもいい 廉連作 #12(B群)
 



         『 俯瞰(5分28秒) 』


                        作:しびる





  標高差はどれくらいだろうか 視界はどこまでも無限大にフォー
 カス 聳える樹木の先端部分を上から眺める 昼過ぎの太陽はほぼ
 垂直に差し込み 距離も陰影が不確かなら計りようがない
  先程から同じ眺め 右手に見えるのは眩暈のするような樹海 黒
 を基調にした濃緑の世界 激しい角度で一気に下り 数キロ単位で
 再び上昇する 本来なら人の踏み込む場所ではないだろうに 強引
 な有料道路は尾根伝いに伸びる これが素晴らしい眺めかどうかは
 それぞれの価値観の問題 どちらにしてもすぐに飽きる

 『ふあっと なに まだ動いてないの 事故かしらね』
 『ああ 5メートルくらい走ったか 時速5メートルだ 寝てろ』
  渋滞の車内 市街地なら退避方法もあろうが 転回もできない専
 用道路に車の列 確かに行楽日和 考える気にもならない
 『もう起きたから しょっと こんな時ってなにをしてもらうのが
 嬉しいの ご苦労さんだからなんでもしてあげるわよ』
 『ふん そうだな なら返事しなくてもいいような話をしてくれ』
  部屋でテレビを見ているのも飽きたから どこかに出掛けようと
 誰が言ったか 海原を見た記憶は数時間前のもの それ以降は代わ
 り映えのしない景色ばかり 気分は完全ににフラット ベタだ
 『いつもそうじゃない あたしが喋って あなたに返事してもらう
 ことって少ないと思うけれど その辺はこの際かな いいけど』
 『俺も喋ってるだろ 覚えていないだけだな タバコ』
  隣に座るのは女性だ 関係なんて説明するまでもない 同じ部屋
 で暮らし 常にどちらか一方が仕事をしている 暗黙の了解は不文
 律 あたりまえが馴れ合いなら それが世の中を定める道理だ
 『はいはい でも密室だから窓は開けるわよ なんか話っても こ
 うも毎日一緒だと そんなに珍しいことも起きないわね でしょ』
  鼻腔に掛かる刺激が心地よい 遠くからクラクション 限界を超
 えたドライバーがどこかで爆発している どうにもならないことな
 ら仕方がないと 楽になる方法も人知の中には用意されている
 『ううむ あそうそう 先週オークションに行ってきた話はしてな
 かった ブランドもの関係 あとはエミちゃんの創作ジャンケン』
  鼻から煙を吐きだして 前の車両のステッカーを眺める 俺の名
 前と同じなのはバイクメーカー それ以外はFM局 よもやすべて
 の会社の社員でもあるまいし なにが楽しくて広報に荷担する
 『なんたって市価の1割程度よ 最低落札価格が1割に設定されて
 るのね だからそれ以上の値がつかない仕組み 高いのは買わない
 もの 品物は山積みだし 市場原理からなら供給過多の暴落よね』
  ぼんやり空を眺める まったくの晴天は完全な青一色 じっと見
 つめればなにやら光る点 青い空にきらきらと不思議な輝き
 『場所代も回収できないんじゃないかって そんな心配もするくら
 い 今着てるのもそうよ 古着じゃなくって 全部が新品』
  発光体は不規則に明滅し そして不意に消えてなくなった もし
 かすれば網膜に出血でもあるのか UFOもしくは網膜剥離だ
 『古着のオークションもあるけど それってなにか しみったれた
 感じでしょ なにも他人が着古したものまで買わなくても ねえ』
  サイドミラーに人影 後方から誰かが歩いてくる ちらちらと赤
 い染みのようなものは女性の姿 長い髪の赤い服の女性 渋滞に我
 慢ができなくなったか それとも男に放りだされたか 表情までは
 確認できない距離 この陽気に散歩も楽しかろうか
 『そうそう この前エミちゃんが引き付け起こしたって 夜にいき
 なり電話があったのよ 妹ったら同じくらい混乱して あれじゃ母
 娘揃って泡吹くんじゃないかって でも実際に見れば凄いの』
  一車線の一方通行 どちらが下りか知らないが 逆走車線は十数
 メートル上にある 奇妙な造りの有料道路 その路肩を女性が歩い
 ている どこまで歩くのか最近のSAまで数キロはある
 『引きつけってなにかしら 力んで白目むいて 憑き物って言うじ
 ゃない 霊媒でもできそうな 本人は覚えてないのよ 変よね』
  右側のサイドミラーに上半身 数台後ろを歩いている それなり
 の美人 直射日光に目も細めず すぐ後方の観光バスに隠れて ル
 ームミラーでは確認できない その瞬間 女性と視線が絡む
 『子供って大変だわ 生めば体型が崩れるでしょ 泣くわ吐くわ熱
 をだすわ 少し目を外せば怪我するじゃない 姪っ子で充分ね』
  そしてミラーから消えた 運転席の脇を通りすぎる間合いに 少
 し不釣り合いな時間が数秒間 しかし女性は通過しなかった バス
 の後ろを回り込んだのか それともそれ以外のなにかか
 『こんなとき子供がいれば大変よ お腹が空いたのトイレに行きた
 いの あたしも駄々こねようかしら そんなの毛嫌いするでしょ』
  前方の車両が少し前進 僅か数メートルの移動にクラッチを合わ
 せる 後方のバスは前進を断念したか バスの助手席にバスガイド
 が見える 無防備に座り込み 丈の短いスカートから下着が覗く
 『この調子で進めばいいのに こんな中途半端な乗り物じゃなくて
 UFOみたいに飛べれば渋滞もないでしょ それとも降りて歩くの
 が正解かしら 飛ぶか歩くか 文明の利器も形無しね』
  ルームミラーをぼんやりと眺める 虚ろな表情のバスガイドはど
 こを見つめるのか 魂の抜けたような瞳 つまらない仕事に予想外
 の渋滞 だらしなく股を広げ 目を開けて眠っているのか
 『このまま夜になるのかしら それも面白いかな この状況って飛
 行機の中や落盤事故のトンネルの中に似てるでしょ 産気づく女の
 人がいたり 誰かお医者様はいませんかって 大変よね』
  見るとなしにバスガイドの股間を眺める 薄暗い中に白く下着の
 色 隣の運転手は苛々と指でリズムをとり 搭乗する団体名までは
 読み取れない 眺めていると ガイドの股間がすっと暗く陰る
 『これだけの人数でこれだけの時間 きっと死んじゃう人もいるわ
 よ こんな天気にかわいそうに 逆に幸せかしら どう思う』
  その途端にバスガイドの目が見開かれる 驚いたような 少し隠
 微な表情の意味はなにか 股間の陰りが物体に変化する 数本の触
 手に丸い胴体 まるでクモのような黒い生物 慌てて振り返る
 『どうしたの どうでもいいけど前が空いてるわよ 少し走れるん
 じゃないかしら ほら どんどん走っていくわ ねえってば』
  誰かに声を掛けられたのか バスガイドが立ち上がる 何事もな
 かったかのように営業スマイル 黒いクモはどこにもいなかった
 『いや なんでもない どうやら解消するようだな ふん』

  少し角度が変化して かなり遠くまで見渡せる 車両の列は緩や
 かに進んで行く しかし行き詰まった予感は感じない おそらくこ
 のまま流れ続けるのだろう 数時間の淀みが一気に解放される
  雲ひとつなく快晴の青空が 濃緑の山並みに切り取られて拡がっ
 ている なにか感慨があるとするならば ただ倦怠感だけだ







             》 しびる 《
+++++++++++++++++++++++++++++++
(のりこ)>これはどう分類すればいいんですかね 異界もの?
(しびる)>そゆのの境界をどうにかできんかなと模索してた頃だか
      らな ムリこに分類するなら まあ 非日常系かな
(のりこ)>最初のUFOはちょっとどうかなと思いましたけど 少
      しずつ近付いてくる女性とか バスガイドちゃんの股間
      の異生物とか そゆのはちょっとおもしろいですね
(しびる)>助手席との会話に直リンクは気持ち悪いからさ 軽く繋
      げてみたのは演出不足かね こゆのはタイミングだしな
(のりこ)>後半にちょっとリンクするだけでしょ 私はこれくらい
      が小気味よいですけどね ただ タイトルにもなってる
      景色とのリンクは薄すぎるんじゃないかと思いますけど
(しびる)>んー ただの環境設定だしなあ そこはあまりいじるつ
      もりはなかったんだけど どうこうしようってなら U
      FOネタを拡げるとか? そゆのはダメだろ
(のりこ)>それもそうですね
posted by 篠原しびる at 21:35| シンガポール 🌁| Comment(0) | TrackBack(0) | 連作系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年10月06日

連作23 廉連作11 ころあい

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 種別 連作系第23期 廉連作11
 題名 『 ころあい 』
 初出 ニフティサーブ/FJAMEA/18番会議室
    1997年03月23日02時00分
 注釈 行頭スペース+30W
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SUBJ:【廉連作】11 ころあい

 Sibi-Tem V.4.1

 廉直に清廉に 無心から始めるのもいい 廉連作 #11(A群)
 



           『 ころあい 』


                        作:しびる





  朝は自然と目が覚める 睡眠時間は充分で 規則正しい生活が毎
 日繰り返される 以前の暮らしが嘘のようなリズム 血液の循環や
 呼吸の深さ 血糖値の増減に感情の振幅 努めて穏やかな暮らしは
 そのうち本当に平穏な暮らし どんなことだって慣れるものだ
  焦ることもなく急ぐこともなく 二律背反に苦しんだり なにか
 を犠牲にする悲しみも感じず 怒鳴ったり苦笑いしたり 冷や汗や
 脂汗をかくこともない こんな生活も人生に用意されていたのか
  まるでサナトリウム 鬱蒼と茂る庭木はオークの森か サイズの
 大きい服を着て たまに去来する感情は さて なんだろう

 『何時に帰れるの 夕食に間に合うなら 今日はせいや君が遊びに
 来るらしいわよ 一緒に食べられると楽しいのに』
 『ああ どうかな たぶん遅くなると思うな もう出掛ける』
  土曜日の朝 既に両親は朝食を済ませて 旦那とふたりで食卓を
 囲む 土日も関係なしに仕事をする あたしも昔はこうだった
 『そう それじゃ仕方ないわよね 飲みすぎないでね』
 『前期の決算が近いからな 飲んでる場合じゃないぞ ああ それ
 で思いだしたが ふじこさんが連絡するそうだ もう決めたか』
  立ち上がる旦那のネクタイをチェックして 不意に訪れた不穏な
 話題に眉を寄せる この最近は思考も穏やかで なにかを慌てて処
 理する方法を忘れてしまった 面倒なことは後回し 時間はいくら
 でもあるから 成り行きに任せる解決方法もある すべてソレ式
 『どっちも選べないのが 正直なところ かな だってね あたし
 が結局決めなくちゃいけないわけでしょ そんなのって ねえ』
 『ふうん 俺から話しておいてもいいけど さいかは変わったな』
  手櫛で掻き上げる前髪の 少し広くなった生え際を片手で撫でて
 みる 旦那は視線を合わせずに あたしが昔とどう違うのか ある
 部分が増長されただけで 双方納得ずくの沈黙は 結局おざなり
 『まあ仕方ないか どちらにしてもこのままじゃダメだろ 俺の仕
 事は単純に労使関係と割り切って ふん 籍を抜くのが妥当だな』
 『そんなの ハッキリ言ってくれればいいのに もう大丈夫だから
 向こうの家で暮らすのも あたしが説得するから はああ』
  考えればどうにもならないことばかり あたし達の籍は伯父の戸
 籍に揃って養子 その伯父夫婦も母方の祖父母の養子である 血よ
 りも濃いのは渡世の義理 昔のあたしならどう解決しただろうか
 『ストレスを溜めるのは良くないが これは重要なことだから考え
 ろ でもな さいか 全員が笑う方法はないからな わかるだろ』
  飲み残したカップを一気に煽り 旦那は渋面に優しさを隠す あ
 たしが悩んでいる構図でも すべてに対して浮き上がるのは旦那な
 のだ あたしの身勝手で振り回し どの場面でも板挟みになる
 『ごめんなさい あたしばかり悩む振りで ごめんなさい』
 『謝るなよな ああ 悪かった また今度にしよう もういい』
  旦那がなにを考えて あたしがなにを悟るのか どうすることが
 正解で そんなことはすべて言うまでもない 会話を交わすのは意
 思の疎通のためではなくて なにかを起想する合図でしかない
 『あら ゆたかさん 急がなくっちゃ遅れるんじゃないかしら ほ
 うら 早く支度してあげなさい 急くと危ないでしょ』
 『あ お義母さん おはようございます 今出掛けるところです』
  不意の声にハッとする それとわかるように鼻歌まじりに 耳で
 は聞こえていたけれど聴いていなかった 母の登場でこの場も終わ
 り 旦那はいつもの笑顔を作り あたしはだらしなく頭を掻く
 『まだ充分に時間はあるもの 支度だってカバンを手渡せばいいだ
 け そうやって煽る方が急かしてるのに そういうわけ なの』
 『あらそう それじゃゆたかさん お気をつけて 安全運転でね』
 『こおら さいか そんな言い方はないだろ なんだかなあ』
  型に収まった会話を続ける 年老いた両親と今更の同居 誰だっ
 てみんな立場や責任は自覚している どこからどこまでが愛情の範
 疇で 馴れ合いの許容範囲を手探りで暮らす それも自然に
 『この娘は昔からこうなのよ あそうそう ゆたかさんは遅くのお
 帰りかしら その話をしに来たんだわ すぐ忘れちゃう』
 『はあ 今もその話を たぶん夕食には間に合わないと思います』
 『いいじゃない 別に無理しなくても たいしたことじゃないわ』
  これ以上引っ張る話ではない もう終わりにして旦那を見送りた
 い 父はかなり怪しいが 母も最近物忘れがひどい 変な繰り言を
 聞くつもりもなくて やや荒っぽく遮ってみる ある種の配慮
 『あいかとふみやさんも来るのよ あなた達のことも そろそろ決
 めなくちゃいけないでしょ だからと思って 無理かしら』
 『はあ でしたらばなるべく急いで たぶん できるだけ』
  まるであたし達の会話を聞いていたかのような話題 姉や義兄を
 同席させての意味も理解できる でもまったく根回しなしに運ぶ展
 開に少しムッとする 母は無表情に旦那を見つめる
 『そうね あなた達のことですもの よほど遅くなるようなら連絡
 してちょうだい まあ 構わないでしょうけど でもね』
 『すみません ご心配をおかけしまして なんともはやまったく』
 『いいじゃない また今度にすれば 別に急がなくても』
  ならばいつまで放置するのか 伯父の引退の時期も近く あたし
 が継承すべきポストは保留のまま しかしこの有り様ではどうしよ
 うもなく 地方市場に2部上場を果たした今 既に手遅れになった
 ことも多い どうすべきかは 決まっていると言ってもいい
 『それじゃ本当に行ってらっしゃい お早くお帰りを さてさて』
 『はい 行ってきます さいか そういうわけだ』
 『わかったけど 無理して急がなくてもいいわよ 危ないから』

  なにかを決めるためには いや決めようと考えるためには 穏や
 かな状況を 再びシリアスに観察することから始めなければならな
 い 日常はどんどん平穏な方向へと均衡するもの 悩んでばかりで
 は生きていけない人間の ある種の本能だと思う すぐ慣れる
  その予感に煩わしさを感じながら それでも仕方がないことは理
 解している 何事も永遠には続かない どこかで区切りをつけて再
 出発をするべきなのだ ケジメとも言うのか どうだか







             》 しびる 《
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(のりこ)>もでらーとです ちびっこちゃんたちを交えた歓迎会か
      ら一転 実際のとこはこうなんだってオトナサイドのお
      話ですね 展開としてはとうぜんこうでしょうけど
(しびる)>そもそも渡世の義理的にいえば 実家に帰るってのが筋
      違いなのかもしれんが どこかで静養するなら実家が正
      解だろ そのケリをつけるなら養子縁組の解消って手続
      きも必要になってくるわな じゃなきゃ伯父夫婦のとこ
      ろに戻るって選択肢を残したまま あちらにこどもがい
      ない 家業の継承も必要になる その状態でモラトリア
      ムはあり得ないだろうし その後押しとして上場が云々
      ってネタも用意しておいたし さあ悩め って感じか
(のりこ)>そりゃ悩みますよねえ ばりばりさいかちゃんの頃なら
      とにかく いちど気が抜けちゃうと考えるのって億劫で
      すもん そゆ感じがよく描けてますよね
(しびる)>アシスタントに褒められたよ(笑) まあ さいかはい
      いんだ 描くべきは黒崎だろ 旦那の板挟み感こそが醍
      醐味じゃん 泣き言を言えないのはきつかろう
(のりこ)>でしょうね ホントは黒崎くんこそどこ行っても他人ば
      かりで なのにえらいなあ 彼こそがオトナですか
(しびる)>そんなもん できてあたりまえだ えらかねーよ
(のりこ)>またそういうことを仰る
posted by 篠原しびる at 01:19| シンガポール ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 連作系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年10月05日

連作23 廉連作10 ななめならずも 3

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 種別 連作系第23期 廉連作10
 題名 『 ななめならずも 3 』
 初出 ニフティサーブ/FJAMEA/18番会議室
    1997年03月21日03時13分
 注釈 行頭スペース+30W
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SUBJ:【廉連作】10 ななめならずも 3

 Sibi-Tem V.4.1

 廉直に清廉に 無心から始めるのもいい 廉連作 #10(A群)
 



         『 ななめならずも 3 』


                        作:しびる





  何色かのグラジオラスを放射状に配置して 隙間を埋めるように
 ユリとカーネーションをやや多めに 全体に満遍なくカスミソウが
 ふんわりと 純白にワンポイントの花瓶が似合っている
  V局のキャスターなら衣装協力なんてのがついて楽なのに じり
 貧テレビ局では誰もが自前 当然メイクさんなんかいるわけもなく
 噂ではアナウンサーがカラー調整までやるところもあるらしい 真
 っ白な紙に向かってホワイトバランスを微調整 きっと情けなくっ
 て涙がでるか それともそれなりの使命感か どうだろう
  エンドタイトルにCMを入れ込んで セットの生花はタイアップ
 に持ち込んだ あたしだって営業も兼任 自分の番組だと言っても
 件のカラー調整とどれだけ違う 楽な仕事なんて存在しない

 『         です 失礼しました CMのあとは明日の』
  明日の天気と言い終わる前にジングルが鳴り響く 咄嗟にバツの
 悪い顔 この最近珍しい失敗である 突っ伏して溜息 はああ
 『なんだ 大泉 金魚じゃないんだから すぐにフォローしろ』
 『しましたっ したのにCM入れるタイミングが もういいです』
  CMは120秒 半分が大手のスポット あとは近くのショッピ
 ングセンターや工務店 今聞こえているのは確か葬儀屋のもの
 『さきこさーん 烏龍茶ください なんか喉からから』
 『CM明け90秒前です 鈴木さんスタンバイお願いします』
  セットから立ち上がりインカムを外す 顔に張り付く営業スマイ
 ル カフを人差指で弾いて背伸び これを入れなきゃ無声番組だ
 『ふああああん さきこさん 恥ずかしいってばないもんねえ』
 『しまったって顔がかわいかったわよ いいんじゃない 観てる人
 は それが楽しみなわけだし わざとはダメだけど 60秒前』
  さきこさんはTK兼AD たまにカメアシや小道具さん エンタ
 ー所属の何でも屋さんである 年齢は40代前半くらい あたしの
 番組ロックン5ジラの専属スタッフ 彼女がいなきゃ仕事にならな
 い 精神的な拠り所 なんて言いすぎだけど それなりに
 『大泉 遊んでる場合じゃないぞ 戻れほら CM明けるぞ』
 『はいはい そんなやいやい言われなくてもわかってますっ それ
 じゃ きみかちゃん 今日も頑張っていきましょうね よしっ』
 『はあい よろしくお願いしまあす みなさあん よろしくお願い
 しまあす ええっと できるできるなんでもできるきみかちゃん』
  チーフディレクターの檄が飛ぶ あたしもDだけどD職は3人い
 て サブに陣取るのが古館D 彼が番組のすべてを仕切る しかし
 プロデューサーではなくて現場監督 営業を兼任するあたしが最も
 偉いらしいけれど なにかよくわからない仕組み 誰の番組だろ
 『なにそれ 間違わない呪文なら あたしもやろうかな』
 『やあだあ 大泉さんは天然系じゃないですもん きみかちゃんは
 本当にトチるんですよ だから勇気をつけなきゃいけないと』
 『はいそれじゃCM明けます 5秒前 4 3  』
  番組の最後は天気予報で締める CBSでは気象予報士なんて雇
 えないから 担当は当然のことながら派遣タレント 鈴木きみか嬢
 は女子大生らしい あまりのブリブリは演技じゃない 少し不気味
 『それでは明日のお天気です 鈴木さん よろしくお願いします』
 『はい この数日とても気持ちのいいお天気が続いていますが 明
 日からは少しお天気が崩れそうです 気象衛星からの映像です』
  天気予報に振って少し休憩 あたしの失敗は天然系じゃないって
 ことは 狙ってやってると思うわけだ なにかゲンナリしながら肩
 の関節を鳴らす 背伸びをすると節々が痛む 昨日の取材が原因
 『明日の6区は曇りのち雨 日曜日の午後には晴れ間が見えると思
 います 明日の洗濯指数は20 行楽指数は30です 以上です』
 『はい鈴木さん ありがとうございました 明日は洗濯物が乾きま
 せんね お出掛けには傘を忘れないように それではお別れの映像
 は 6区青少年科学センターが撮影したパパヤ彗星です』
  去年の夏ヒットしたイタリア映画のテーマ曲だ 静かなノクター
 ンにぼやけた星の映像が重なる パパヤ彗星は先週紹介した1万年
 周期の小さな彗星 もう少しましな撮影ができないものか
 『それではまた来週 シーユーネクストウイーク さいちぇん!』
  小さく右手を挙げてニッコリ微笑む すぐにカメラはセットの限
 界まで引く フレームの端できみか嬢が同じく微笑み やや照明を
 落として提供タイトルに切り替わる それを確認して溜息
 『ふう はいっ みなさん お疲れさまでした あ お疲れ』
 『ほいほい 大泉ご苦労さん きみかちゃんもお疲れさん エンタ
 ーは18時集合 ダメだしするぞ あ 大泉 伊藤が呼んでるぞ』
 『ななみちゃん そっち片したらデスクに来てよね 速攻でね』
  さきこさんにインカムを外してもらいながら スタジオに響く古
 館Dと伊藤氏の声を聞く ダメだしはエンターの人間だけでやるら
 しいけれど どうせあたしの悪口ばかりだ 言いたければ直接言え
 ばいいのに 番組の視聴率がいいから婉曲攻撃 男らしくないぞ
 『叱られるのかな さきこさん 終わったら飲みに行きませんか』
 『叱られないでしょ ななみちゃん 今日はダメ 子供の面会日』
 『きみかちゃんを誘ってくださいよお ねえねえ 大泉せんぱい』
  さきこさんは優しく微笑む 前に離婚して子供は旦那さんが引き
 取ったらしい みんないろいろ きみか嬢のいろいろは知ったこと
 じゃない この娘を相手にしているとストレスが溜まる
 『また今度ね エンターの人でも誘いなさい ほらほら』
 『そんなあ 仲良くしましょうよお 仕事の話もしたいしい』
  きみか嬢の意味深な表情 どうもこの娘の真意は伺い知れないと
 思う 仕事の話もなにもない 彼女とは仕事に対する姿勢が違うの
 だ 会話が平行線をたどるのは目に見えている わからないのかな
 『仲良くした方がいいですよ 仕方ないから古館さんを誘おう』
 『そうしなさい それじゃさきこさん また今度ですよ』

  スタッフ皆さんに会釈して とにかく急いで伊藤氏のデスクに向
 かった 伊藤氏はあたしの直属の上司 報道部の中間管理職 どう
 せ部長からの小言を伝聞口調で捲し立てるのだろう
  と思っていたらばそうじゃなかった 伊藤氏からの通達はキャス
 ティングに関すること 来週から番組の構成が変更になるらしいと
 のこと あたしがピンで喋る形式から 隣りにアシスタントが就く
 らしい それが誰かと思えば件のきみか嬢 お天気娘が来週からの
 アシスタントだって 意外と彼女は人気があるらしい
  あたしなんからしいらしいと未定の話なのに さっきの口振りで
 は彼女は既に知っていた感じだ どうでもいいけど なんだかなあ
 である 誰の番組かって部分がどんどん怪しくなる気分なのだ







             》 しびる 《
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(のりこ)>ななめ3です が 本業のアナウンスの方でも障壁登場
      ですね このきみかちゃんというのはどうですか
(しびる)>とにかくトラブルというか なんだかなあって展開で追
      い掛けようって企画だし トラブルの方はなんでもいい
      っちゃいいんだけど あれか ちょいひどいか
(のりこ)>ひどくはないですけど 甘ったるいのが対称軸ってのも
      簡単すぎますか あと 広報番組に一般企業のスポンサ
      ーが付くってことがありますかね
(しびる)>アシスタントに関しては ままセリフの判読率の問題だ
      わな 声優に読ませるならとにかく テキスト業界は苦
      労が多いのな あと スポンサーの件は スポットCM
      枠を故意に操作するってぎりぎりの方法だな
(のりこ)>ふうん よくわからないですけど
posted by 篠原しびる at 01:33| シンガポール ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 連作系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

連作23 廉連作09 夜の踏切

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 種別 連作系第23期 廉連作09
 題名 『 夜の踏切 』
 初出 ニフティサーブ/FJAMEA/18番会議室
    1997年03月14日02時38分
 注釈 行頭スペース+30W
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SUBJ:【廉連作】09 夜の踏切

 Sibi-Tem V.4.1

 廉直に清廉に 無心から始めるのもいい 廉連作 #09(B群)
 



           『 夜の踏切 』


                        作:しびる





  私鉄が二社乗り入れる快速停車の駅 北東と北からV字に合流し
 次の駅まで同じ線路を走る だからこの付近は線路だらけに感じる
 高架や踏切が多いのは ごちゃごちゃした細い道と傾斜した大地が
 原因 普段はわからないけれど よく見れば東側の丘を迂回するよ
 うに線路が走る それもキロ単位の話だから ただなんとなく
  その線路を跨ぐ高架道路が湾曲し 駅の手前で路地に入る 侵入
 口は僅か数メートルだけ一方通行 付近の住民は対向車を見極めて
 一気に通過する ならばソレ式 ブロック塀に残る擦過傷が気にな
 っても かなり遠くまで真っ直ぐに伸びる路地 踏切が3箇所

 『今日はどうもありがとうございました 楽しかったです』
 『なんだって ああ いやいや それはよかった』
  いつもそうなのだけど 路地に入った途端に開く景色 こちらが
 わから眺めるときは夜ばかり 俯瞰気味は何故か頭が空白になる
 『今日はツイてると思うよ なんたって 隣りにかわいい女の子が
 座っている のに加えて踏切がどれも開いている 奇跡的かな』
 『はあ そうですね でも時間が遅いですから 前とは違ってて』
  前回も夜だった 朝夕の通勤時間には 開かずの踏切で有名な難
 所でも 23時を過ぎれば最終までに数十分 適度に気取った会話
 には あまり興味も示さずに状況説明 普通に喋る娘だ
 『そりゃそうだ 少し遅くなったかな 悪いね 引っ張って』
 『それはいいんですよ お誘いしたのはあたしですから 車で送っ
 てもらったりして なんか 甘えすぎてるかなーって思います』
  かと思えば殊勝な発言 段差を踏み越えて少し加速 そのついで
 に隣りを見れば 眼鏡の奥の瞳が合う 小さく肩を窄めて右手の人
 差指をこめかみに なるほど頭の悪い娘ではない 当然だ
 『甘えていいんじゃないの かわいい娘はそれだけで なんての充
 分だと思うけどね って冗談 本当はどうだろう わからない』
 『はあ あまり褒めてもらうようなものでもないですけど かわい
 いなんて言ってもらったことないですし あ ダメですね』
  そのまま突っ切れるかと思いきや 寸でのところで踏切信号が明
 滅 それに呼応するかのように他の2個も明滅し始める 途中で停
 車するのも少し気味が悪い やや急停車で舌打ちする
 『それなりっちゃ失礼かな 車の移動は飲めないのが欠点 今度は
 こちらが誘うよ 電車かタクシーで あまり飲まなかったっけ』
 『それが飲むんですよ 浪人中に荒んでましたから 毎日飲んでま
 したね よく社会復帰できたなって 自分でも驚いています』
  3箇所の踏切が微妙にズレて明滅している しかし警報は完全に
 同期 アイドリングの車内には締めを匂わせた会話が続く 名残を
 惜しむほどには馴れ合いも薄く 間合いの見極めの延長にある
 『来年卒業だろ 飲み歩く女子大生ってのも ある意味貴重な存在
 かもね ウチの会社の娘も飲むのが多いけれど いいんじゃない』
 『最近は控えてます 失敗することが多くって 困ったものです』
  停車してからどれくらいか まだどちらからも列車の気配はない
 都合3連の車輌が通過する予定だろうに まさか警報機の試験でも
 ない 白々しく街灯に照らされた踏切 イライラする警報
 『本当はですね こんなふうに男の人とふたりっきりなんて あま
 りないもので イベントが続いていないと 緊張します はい』
 『ふんふん それはまあ違った意味で こっちだってそうかもしれ
 ないなあ 状況は珍しくないけど 歳の功だから 電車来ないね』
  かわいらしいことを言うものだと思う ほんの知り合いに突然誘
 いの連絡を入れて 妙にテンションの高い日程だったが その最後
 にこの台詞 彼女なりの告白だろうが 頭の中にかんかんと鳴り響
 く警報 すべての思考がそのリズムに侵食されてゆく
 『今度誘って頂けるって さっき仰ってましたよね あたしって感
 情表現がヘタクソですから 凄く喜んでいるのです 来ませんね』
 『来ないね 故障か試験じゃないだろうし なにかこう癇に触るの
 は まあ警報だから仕方ないか 喜んでくれるのは嬉しいね』
  おそらく非常に踏み込んだ状況になっているだろうに それを凌
 駕する苛立ち 世界はすべて交互に点滅する赤色灯 何故に列車は
 来なくて 踏切の手前からは誰も逃れられない因果律 なにか変だ
 『初めてお会いしたときから あたしってば あはっ すみません
 どうしてこんなこと喋ってるのでしょう 少し変な気分です』
 『いいんじゃないかな なにを今更 だよ 子供じゃないんだから
 素直にいこう 段取りや手順が好きなら 合わせるけれど』
  たまにすべての明滅が重なり合う 数百メートル離れた場所の駅
 には列車の気配もなく これは明らかに異常事態 警報が鳴り響き
 周囲の街並みも赤く照らされている 数分か数十分か 彼女の言葉
 の腕を取り引き寄せ ねじ上げて微笑んでみせる
 『すべて納得ずく ですか そうですよね あたしから誘ったわけ
 ですから こう見えても少女趣味なのですよ 恥ずかしいですね』
 『普通の女の子はそんなこと言わないかな 醒めてるじゃない 仲
 良くできると思うよ 浮かれないのも たまにはいいかな』
  踏切は開くことが前提に存在している 無理に通過するものでも
 なく 通れないからと引き返すものでもない 目的地への最短距離
 ならば 迂回のロスは意味がない ただおとなしく待つだけだ
 『どうして来ないのでしょうか どうもすみません 送っていただ
 いたせいで こんなことになりまして もしお急ぎでしたら』
 『急いでないよ あとは帰って寝るだけ 明日の仕事までには8時
 間以上あるからね まだ2時間程度なら大丈夫だよ って冗談』
  などと言ったところで妙な予感 それは彼女も同じだったらしく
 ふたり揃って右を見る 遠く線路の信号機が赤く輝いている かな
 り遠くまで点々と赤信号 それが凄まじい勢いで青に変化してゆく
 『なにか来ますね なにかわかりませんが』
 『そうらしい 通れればそれでいいけれど 怖いかい』

  途端にまったくなにもなかったように 余韻も残さず警報が消え
 る 気配はなかったが おそらくなにかが通過したのだろう 遮断
 機が揃って振り上げられて それでまったく事もなし
  もしやと思って彼女を見れば 別段平然と肩を窄めて 驚くじゃ
 なし怖がるじゃなし ならば それはそれで構わないのだけれど







             》 しびる 《
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(のりこ)>これもまた定番の 女の子がデートの帰りに送ってもら
      うお話です と思いきや ラストはなんですかこれ?
(しびる)>定番なのか? そんなにも使ってないだろ
(のりこ)>なんかすごいデジャヴがありますけど それよりも こ
      のラストは怪現象ですか かなり冷静な描写で
(しびる)>どうなのかなあ なんか男女の会話だけでは弱かろうっ
      てことで ちょっと付加価値も必要かなと企画段階で考
      えたんだけど あまりばしばしの怪現象も興醒めだし
(のりこ)>もしかして路線のメンテかなにかだったのでしょうか?
(しびる)>かもしれないし そのことを彼女は知ってて この彼氏
      はちょっと不思議な気分に浸ってるだけとか
(のりこ)>『なにか来ますね』ってのは彼女のセリフですよね
(しびる)>それだって比喩的なものかもしれないじゃん それまで
      の会話で先手を打たれてた彼女の応酬話法で
(のりこ)>ふうん そう読むと違った感想になりますか
posted by 篠原しびる at 01:19| シンガポール ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 連作系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

連作23 廉連作08 ないとめあ・ないと16

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 種別 連作系第23期 廉連作08
 題名 『 ないとめあ・ないと16 』
 初出 ニフティサーブ/FJAMEA/18番会議室
    1997年03月12日12時33分
 注釈 行頭スペース+30W
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SUBJ:【廉連作】08 ないとめあ・ないと16

 Sibi-Tem V.4.1

 廉直に清廉に 無心から始めるのもいい 廉連作 #08(A群)
 



        『 ないとめあ・ないと16 』


                        作:しびる





  非常に端正な顔立ちだけど ほんの少し変なのは 映画やアニメ
 なんかで登場する キザっぽい自惚れ二枚目キャラに似ているから
 ではなくて あくまでも正統派貴族タイプの容貌は 歴史の資料集
 で見たことのあるような大仰な衣装 胸には勲章のようなもの ヘ
 ルメットのようなものの頭頂部にはクジャクの羽根のようなもが揺
 れている ようなものってのは別世界だから 変なのは別のこと
  こんなに凛々しいのに なにか変だ クレメンチ公爵の姿を騎兵
 隊がマスゲームも変だけど この感じはもっと心の底に語り掛ける
 もの なんだろうなんだろうって考えているうちに クレメンチ公
 爵の顔が変形する っても実物じゃなくて肖像画の方だ

 『おほほほ 刃向かうものは容赦せん 遂に見付けたぞクレメンチ
 そっ首は このリギダ様が貰った 退け退け 邪魔立てするな』
  静かに喋れば綺麗な声なのに 楽しそうに叫んでいる表情が容易
 に想像できる まだ映像は届いていないけれど おそらくは
 『リギダはナントカ城に向かったんじゃなかったっけ せっかく穏
 やかに話してるのに フィラ 無茶は辞めるように言ってよ』
 『うぬらがごとき雑兵に この疾風怒涛のリギダ様が討てると思う
 か おほほほ 警報を受けたるものは即刻退避 該当空間は5シン
 ク後に完全消滅する パルメルシアの前には何者も立てぬわ』
  クレメンチ公爵の肖像画の右目の部分 小さな点のひとつひとつ
 が巨大生物だから 距離感が掴めないような変な気分 かなり遠く
 になにやら高速で移動する物体 あれがリギダの乗り物か
 『聞かないんじゃないかな むしろ手っ取り早いと考えなくもない
 どうせ掃討して築城するわけだし まあ 別に構わないでしょ』
 『まだそんなこと言ってる この場を収められるのはフィラだけな
 のに もういい リギダ聞いてる 辞めなさい フィラの命令よ』
 『先刻からの狼藉者は これは失礼 フィランサス姫様の臣下の者
 でありましたか しかし我が騎兵隊も狼藉振りでは負けませぬぞ』
  噛み合わない会話が交されているその時 オレンジ色の世界に青
 白い光球が煌めいた 先程リギダが暴れていた部分 公爵の右目が
 輝いたように見えるけれど 問題はそれどころじゃない
 『ほう 面白い 貴公の騎兵隊とやら 如何程の猛者達か見せても
 らおうではないか 我が帝国の技術力を識るも一興であろうな』
 『心憎いご配慮 まことに痛み入りまするな ならば受けて立ちま
 すのが報いる道理 全軍に命ずるっ 構わん 撃破せよ』
  どうしてこんなに好戦的なのか クレメンチ公爵は楽しそうに叫
 んでいる その間にも閃光が煌めく ざっと見ても数百単位で巨大
 生物が消滅している感じ きっとリギダは大騒ぎだろう
 『あーあ あたしの言葉なんて誰も聞いてくれないんだもん こん
 な無意味な殺し合いなんてさ フィラ もう我慢できない』
 『無意味じゃないでしょ 薄っぺらな同盟関係なんて この際だか
 ら好都合 ビデンス中尉 一気にク城を陥落するぞ あっ』
  あたし達の乗るロドゲルシアって乗物は あたしが思うように操
 縦できるわけだから 意を決しての実力行使 とにかくリギダの暴
 走を止めて なんとか対話へと持ち込まなくてはならない
  不気味に歪む公爵の肖像画の顔の右半分 すべての点が集結しつ
 つある方向へ向かって意識を傾けてみる なにをどうするじゃなく
 て なにをどうしたいか なんとなく操縦方法も掴めてきた
 『リギダ辞めなさい フィラの命令だってのが聞こえなかったの』
 『ななよ いくらロドゲルシアでも ランタルシアからの攻撃を受
 ければ危ないわよ 仕方ない 波動隔壁は任せなさい まったく』
 『姫様ななよ様 もし御命令とあらば このリシアにて露払いを致
 しますが 単独にての迎撃は危険かと思われます 何卒御命令を』
  とにかく方向を定める フィラの考えの真意はわからないけれど
 あたしの頭の上でお腹を膨らませて ものすごい速度で移動を始め
 ると それまで黙っていたビデンスが慌てて進言する 部下の鑑だ
 『お前は後詰めにて手出し無用 これも一興だろう 我等にて瞬時
 に殲滅する ななよの初陣には充分な リギダ そこまでだ』
 『おや これは姫姉様 その空域は危のうございますわ』
  リギダを中心に凄まじい数の雪だるま達 それらを回避しながら
 リギダお得意の長剣攻撃 振り下ろす度に 巨大生物達が分裂する
 浮かんでいるのは大小様々な雪だるま 一瞬リギダの姿が見えたと
 思えば すぐに視界は青一色 躊躇しないリギダの攻撃だ
 『リギダってば もう無茶は辞めなさい これ以上暴れるなら』
  と叫んだところで驚いた 自然と延ばした右手から黄色い光線が
 迸る リギダを止めなきゃって気持ちが増幅される感じ 捕まえる
 気分が遥か彼方まで一気に伸びる これが波動ってものなのか
 『カリン界の下等生物の指示は聞かぬわ おあっ 何事だっ』
 『ふうん ななよの波動は王家のものと少し違うわね リギダ こ
 れ以上の狼藉は慎め なにが起こるかわからぬぞ』
  青色が消え去ると ポッカリなにもないオレンジ色の空間が広が
 る リギダは巨大生物を分解して消し去っていたらしい そのなに
 もない中心に 銀色に光るリギダの乗り物 完全に身動きできない
 のは黄色い光の束に捉えられているからだ とにかく止めることが
 できた あたしの右手にはもぞもぞ動く感触 気持ち悪い
 『フィラ あたしどうやったのかな どうしてもって思うと 手か
 ら勝手に光が なんか変な気分 これからどうしよう』
 『どうもこうもないでしょ 遊離兵達を蹴散らして とにかくこの
 周囲を支配下において スツーヌ王国への進軍の足掛かりにする』
 『大規模な総攻撃が 姫様ななよ様 公爵親衛隊が到着した様子で
 す 凡そ700体 遊離兵の数倍の質量があります』

  あまり事態は好転しない 視界にビデンスの姿が割り込んで そ
 れと同時にどこかからの映像 今までの綺麗なペインティングの巨
 大生物とは明らかに違った物体 確かに大きさは更に巨大 でもカ
 タチは雪だるまではない どちらかと言えばナメクジかナマコみた
 いな感じがする 燻銀に輝くその姿は もしかすれば肖像画のヘル
 メットの部分かもしれない どうでもいいけどウンザリする
  なんだろうって考えて気が緩んだのか 黄色の光からリギダが逃
 亡する そしてそのままナメクジに向かって突撃 どうしてこんな
 に好戦的なのか すぐに青色の閃光 同じ方法らしい








             》 しびる 《
+++++++++++++++++++++++++++++++
(のりこ)>ないない16です もう16本目ですか 早いなあ
(しびる)>だなあ 調子よく進めてるとあっといまに増えちゃって
      それだけ前方向にフロシキが拡がってゆくんだ
(のりこ)>今回は ななよちゃんの能力が発現しましたね 業界で
      いうところの『いやーぼーん』ではないですけど
(しびる)>サルまんか それほど切迫してないしな なんとなく使
      えるようになっちゃってさあ的な感じでよかろうと考え
      たんだけど そもそもあんまし障害は必要ないし
(のりこ)>まあユメの中って設定ですしね
posted by 篠原しびる at 01:18| シンガポール ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 連作系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

連作23 廉連作07 5年間

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 種別 連作系第23期 廉連作07
 題名 『 5年間 』
 初出 ニフティサーブ/FJAMEA/18番会議室
    1997年03月09日01時02分
 注釈 行頭スペース+30W
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SUBJ:【廉連作】07 5年間

 Sibi-Tem V.4.1

 廉直に清廉に 無心から始めるのもいい 廉連作 #07(B群)
 



           『 5年間 』


                        作:しびる





  あたしが5歳だった頃 幼稚園の年長組だったはずで 今ではあ
 まり覚えていないけれども 夏休みをまるまる風疹で寝込んだらし
 い 風疹なら3日で治りそうなものなのに それだけ両親の心配が
 大きかったのかと なにやら歯痒い気分になったりする
  人から聞いた話はたくさんあっても 自分で覚えている5歳の記
 憶となればどうか 生まれてから5年間 あたしの人生で空白の5
 年間 最も古い記憶となれば 年長組の夏休み明け 9月の初日だ
 と思っていたけれど 実際には8月の20日 だったらしい

 『手伝ってくれなくてもいいけど 邪魔はしないように』
 『ああ うん ちょっと休みにしよう コーヒー入れてよ』
  短大を卒業してからずっと だからもう10年近くになる 古い
 けれど造りのシッカリしたアパート 壁の厚さは家賃に比例する
 『この段ボールを片してからね ゆうくんは全然役に立たないんだ
 から もう わかりましたっ コーヒーを入れるわよ まったく』
 『これさ まりの写真なわけ 小さいね 幼稚園くらいかな』
  引っ越しである なんだかんだで膠着した事態を打破するために
 は あたしが行動しなければいけないと そう痛感したからだ
 『なにって そうよ 幼稚園の年長組 その写真のすぐ後に転んじ
 ゃって 前に話したでしょ このオデコの傷 その時のよ』
 『ふうん 俺なんか生まれてないや こっちの写真は』
  ゆうくんは婚約者 結婚の約束だけでなく 両家の御対面までは
 どうにか済ませた でも結納はまだ 何故だか進まない展開の理由
 は ゆうくんの優柔不断な性格だと思いたい でも少し悲しくなる
 『生まれてる ゆうくんは生まれてたの ゆうくんが生まれた次の
 日にあたしはっ ごめんなさい もう もういいわ』
 『なに怒ってんの コーヒーまだ ダメならいいけど』
  ゆうくんは年下の彼 どこからかアルバムを見付けて開いている
 退屈そうにクッションを抱えて 通らない声でボソボソ喋る いつ
 だってこんな感じ どんな仕草もかわいらしくて愛苦しいばかり
 『まりはさ この頃すぐに怒るよね なんで なんかあるの』
 『別に なにもないわよ ほらゆうくん テーブルで飲まなきゃ』
  開いているページは幼稚園の頃 風疹で寝込んだ夏休み 夏休み
 明けのプール遊び あたしは黄茶けた水着を着ているけれど 本当
 は真紅のワンピース はしゃいだ記念撮影の後 転んで怪我をした
 『うん でもここで飲む ちょっとくらいイヤなことがあってもさ
 あんまり怒るのはよくないよね 大らかに生きなきゃ おっと』
 『あらもう こぼしちゃって だめっ動いちゃ すぐに拭くから』
  いつも気を付けているのに いや この頃はもういいかなって少
 し思っているけれど あたしはすぐにお姉さんになる 酷いときに
 はお母さんだ たった5歳の違い そんなに違わないはずなのに
 『悪い 少しアルバムにこぼれた ああ でも大丈夫 かな』
 『いいから動かない ヤケドしなかった もう 気を付けてよね』
  寝転んでコーヒーを飲もうとして 思った通りこぼしている 人
 に忠告されたのなら 普段の倍は気を付けるもの あたしなら考え
 ることだって ゆうくんはまったく意に介さない まるで子供だ
 『飲んじゃったら少し手伝ってね 大らかは今度にして 今日は少
 し急いでるの 運送屋さんに荷造りまでお願いしてないから』
 『はいはい たまの日曜日に使うもんな まあ まりの引っ越しだ
 から仕方ないけどさ お任せパックにすればいいのに ケチだな』
  引越先は新居の予定のマンション まだ結納も済ませてないけれ
 ど むりやり契約して引っ越す計画である なにか少しでも進めな
 ければ この先数年はまとまりそうにもない 30歳までにはだ
 『お金ないもの 自分で荷造りすれば2割は安いのに 確かにあた
 しの引っ越しだけど だけど ゆうくんの引っ越しでもあるでしょ
 そんな寂しくなるようなこと 悲しくなるから言わないで ね』
 『泣くなよ まりは泣き虫で困るな ちょっと来い ほら』
  手を引かれて抱き寄せられる 中途半端な不安と安堵 なにかと
 ても複雑な気分で胸に顔を埋める できることならこのまま抱き殺
 されたい 軽く髪を梳かれて おそらくあたし自身の問題
 『つまりあれだろ 俺が頼りないって怒るわけだろ まりの理想と
 はズレるかもしれないけどさ 俺は俺なりのセンスで生きるわけ』
 『そうじゃないの きっとあたしが あ ごめんなさい』
  何度もなぞった思考経路は 言葉にする前に行き着くところまで
 実のところは全部が嘘で ばかばかしいほどに良くできた夢の世界
 にいるような眩暈 基礎の部分が柔く揺れるのは たぶんあたしが
 いちばん裏切っているからだと 言い終わる前に終わらせてしまう
 『謝るのは変だろ 別にいいけどさ もう5年も付き合ってるんだ
 から あまり他人行儀なのも辞めろよな 少し落ち着けな』
 『そう そうよね うん そうだと思う もう大丈夫』
  平行線なら跨げばいいだけ 最初から違う方向に向かって伸びる
 あたしとゆうくんは まるで母性愛のようだと苦笑してみたり 乱
 れた髪をかきあげながら 何故か視線が合わせられない
 『なんか不安定なのよ 色々なことに押し潰されそうに思えて』
 『ふうん 考えすぎるのが悪い癖だよ 気楽に気楽に あ この写
 真のまりパンツ見えてるぞ 前歯もないし 気楽そうだよな』
  能天気そうに話して その実は優しさの配慮で でも本当は無神
 経なだけだと そう思わせようと細工した仕草 アルバムを見なが
 ら楽しそうに笑うゆうくんを あたしはどの部分で愛している
 『折れた前歯は乳歯だったから 怪我の方は残っちゃったけど で
 も それがいちばん古い記憶かな ゆうくんの誕生日の次の日』
 『そんなの関係ないよなあ 俺が後ろから押したわけじゃないし』

  書架の文庫本を段ボール箱に詰め込みながら あたしは再び眩暈
 に襲われる 原因はすべてあたしにある あたしが変わればすべて
 解決する問題 あたしの考え方ひとつで きっとすべてが好転する
  そう考えながら黙々と この引っ越しが転機になるはずだと 唇
 を強く噛み締めて眩暈を堪える すぐに大丈夫になると思う 不安
 な気持ちはどこかへ消えて 大丈夫になるはずなのだ








             》 しびる 《
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(のりこ)>年上の彼女って設定ですが たまにありますよね
(しびる)>女性が年上だと どうしてもこんなふうな展開になるな
      ホントはお姉さんぶるとか 女性教師みたいな展開だと
      スッキリするんだろうけど なかなかねえ
(のりこ)>どうとでもなるんじゃないですか?
(しびる)>んー エロ展開になるんだわ 攻めで構成すると
(のりこ)>それはいけませんねえ(苦笑) でもその逆がこれじゃ
      使えない設定ってことになりますよ なのになぜ?
(しびる)>だわなあ 基本を受けにしながらも葛藤を描く それで
      なにか見付かるかといつも思うんだけど その希望を残
      してのラストだったのな 実際にはどうにもならんが
(のりこ)>ふうん このふたり うまくいかないんでしょうか
(しびる)>さあね 作品に描かれないのなら 知ったことじゃなし
(のりこ)>そう仰ると思いました
posted by 篠原しびる at 01:16| シンガポール ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 連作系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

連作23 廉連作06 意外と単純な繰り返し

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 種別 連作系第23期 廉連作06
 題名 『 意外と単純な繰り返し 』
 初出 ニフティサーブ/FJAMEA/18番会議室
    1997年03月06日00時45分
 注釈 行頭スペース+30W
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SUBJ:【廉連作】06 意外と単純な繰り返し

 Sibi-Tem V.4.1

 廉直に清廉に 無心から始めるのもいい 廉連作 #06(B群)
 



        『 意外と単純な繰り返し 』


                        作:しびる





  ぼんやりと天井を眺める 身体中の力が抜けて 頭の芯に耳鳴り
 が響いている 静かに流れる空気はどこからか空調機の風 火照っ
 た体を冷風が舐めまわし どろんと目を閉じて深呼吸してみる
  さっきから同じフレーズはピアノの音 同じところで詰まってや
 り直し 何度も繰り返しその度に激しくなる もう飽きるかと聞い
 ていても また静かにやり直す 激昂するのに直向きさも兼ね備え
 ているのか でも こんな性格を しつこい性格って言うのだ

 『飽きないよね 3回無理だったことは できても偶然じゃない』
 『バカ言え 毎日の努力は偶然を必然にするんだ 丸見えだぞ』
  素っ裸でベッドに寝転がる 終われば終わりの動物と違って あ
 たしは余韻を楽しむ主義なのだ 丸見えはお互い様 なにを今更
 『ふみゅううん 朝起きてから初めての背伸びが襲ってきた なん
 か年々 起きてから背伸びまでの時間が長くなる 気のせいかな』
 『気のせいだろ さっき車で背伸びしてたじゃないか 同じことを
 言ってたぞ 一日に4時間以上寝る奴は おう おうおう』
  背伸びのついでに起き上がる シャワーでも浴び直そうと立ち上
 がるとドロリ 内股を流れる生暖かい粘液 元の持ち主に返そうと
 膝に座り込んで 自分の過敏な部分に無理矢理刺激を与えてみる
 『気持ちのいいことをするじゃないか もう少し練習させろよ 怠
 けてると先生に叱られるんだぜ ははん 20歳の小娘にさあ』
 『こんなふうに 怠けてますねっ 特にここっ お仕置きですよ』
  完全にだらけちゃっている さっきの勢いとは同じものには見え
 ない ピアノがある部屋を選んだのは やはりピアノが目的だった
 のだろう なにを考えてか30の手習い 秘密は小娘らしい
 『一生懸命な感じがいいぞ 先生らしく振舞おうとするほどに無理
 があってな 俺も生徒として頑張ろうって思うじゃないか』
 『ふうん だから練習するわけねえ 変な趣味 鈍臭い女がいいな
 ら あたしなんかすんごく愚鈍になろう ふへへへーん あん』
  インター近くのホテル街 平日の午前中ならゴーストタウン そ
 う思っていたけれど 入ってみれば8割程度に駐車車輌 やはりや
 っている人はやっている 自分もその内だと苦笑したりして
 『愚鈍じゃない お前なんかには100万年理解できない あんな
 性格をだな むっ へいひゅんらへいはふってひゅうんら』
  正しい名前は知らないけれどピアノのペダル こんなに頻繁に使
 うのかってほどに膝の上下運動 他所の女を褒める唇を大袈裟に塞
 いで そのまま頬から耳元へ 肩に顎を乗せて背中に手をまわす
 『くうううっ みちみち音がしてる こっちの方はまだダメなの』
 『さっきしたところだろうが 俺はバイエルの62番で忙しいんだ
 我慢できないなら自分でしろよ なんなら 見てやってもいいぞ』
  さっきは勢いで終わったような気になっていたけれど 体はなん
 とも正直らしい 腰の辺りから悪寒のような焦燥感が拡がってゆく
 我慢できなくなって強く抱き締め 悔しいから肩に歯を立てる
 『やあだあ なんとかしてくれないとお あたしがひとりでやって
 るのを見れば なんか興奮してできるようになるわけ ねえ』
 『ハンディカムを持ってくるべきだったか なかなか撮らせてくれ
 ないからな あとCCDとクスコも欲しいところ ミクロ決死圏』
  ブツブツ言いながら それでも外れたピアノの音 この練習はピ
 アノ教室の小娘のためなのだと 無理して嫉妬を掻き立ててみたり
 する イライラするようなジェラシー それも快感に置換される
 『あんっ 生を見ればいいじゃない お願いするならいつでも見せ
 てあげるのに ほーらっ もうこんなになってるの 触って』
 『こんなにって これは俺のだろ シャワーで流してこいよ』
  イライラとムラムラが一緒になって そのまま立ち上がり指で開
 いてみる しかし中腰では奥までとはいかないで 仕方がないから
 腕を掴んで触らせる 後半の粘液はあたしのモノ 知ってるくせに
 『ひどおおい あたしってばこんなに欲しがってるのに やんやん
 って感じだと興奮する それとも黙って唇を噛もうか くって』
 『ふうん 趣味だと黙っての方だな 上気した頬に押し殺した喘ぎ
 声 たまに我慢できなくなって 目を閉じたまま顎をあげるのな』
  あたしは振り絞って喋っているのに あいかわらずヘタクソなピ
 アノの音 それに重なるネタ話 違った種類のイライラが募り 片
 足をあげて両膝を跨ぐ そのまま下腹部を密着させて激しくまわす
 『いい加減にそのピアノは辞めろおおおん はうっ くにゃあん』
 『いつになく激しいよな 他の女の話が効いたのか まだ女子大生
 で生徒の質問が曖昧だと 困った顔が子供みたいでさ なんだ』
  それでもゆるゆると膨張を始める 途中で折れないように手をあ
 てがって 一気に収めて背筋に悪寒が走る 後ろを締める要領で力
 を込めれば こっちもそれなりに締めることができる 何事も日々
 の鍛錬なんて さっきと意見が違うのは のは もうどうでもいい
 『終わってすぐは敏感なんだぞ ゆっくりやれゆっくり こーら』
 『そんなの知らないっ ううんむんむん たまんない やん』
  もうごちゃごちゃウルサイだけ 背中にまわされた手に体重を掛
 けて 思い切って後ろに反り返る 上下に合わせてピアノが鳴るな
 んてのは 普段なら2時間は馬鹿笑いの状況 それはもう馬鹿笑い
 『うはははは って笑っちゃ悪いが なんだその 場所が悪いな』
 『ううんっ もうちょっとだから喋んないの そうそうそうそう』
  一度終わっているから余裕があるらしい こっちはさっきの続き
 だから勢いがある 敏感だって話は 同じ敏感でも少しベクトルが
 違う 合わせてくれないかなと思うけれど そんなことは超能力で
 察知するものだ なんて考えがまとまらない あは どうでもいい
 『なだよ えらく早いな まあいいや 合わせるぞ』
 『んんんっ くにゅううん しょっと 練習しなさい いいから』

  なんかそれ程でもなかったけれど このまま引き抜くのもドロリ
 ン状態 ティシュを取るにも距離がある 仕方ないから余韻を楽し
 んで BGMはド素人の練習曲だ そんなのもたまにはいいか
  そしてまた同じところで間違える もしかすれば間違える箇所を
 決め込んで ピアノ教師の娘っ子に教えを請う計画かもしれないが
 それはそれで構わないと感じたりもする 嫉妬心だって性欲の一部
 しばらくはヘタクソなピアノを弾けばいい なんてね






             》 しびる 《
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(のりこ)>またこんなの描いてらっしゃるし
(しびる)>うんまあ
posted by 篠原しびる at 01:15| シンガポール ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 連作系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年10月03日

連作23 廉連作05 フェーブルカンパニー33

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 種別 連作系第23期 廉連作05
 題名 『 フェーブルカンパニー33 』
 初出 ニフティサーブ/FJAMEA/18番会議室
    1997年03月04日02時27分
 注釈 行頭スペース+30W
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(のりこ)>FC33です ついに巡洋艦レヴァインが登場ですけど
      今回の連作紹介はFCの以後の展開のネタバレを含むの
      で そこんとこ注意して読んでください
(しびる)>外伝であんだけ展開して ようやくラストの大ネタに突
      入か まだあと1本くらいあったかね 記憶ないけど
(のりこ)>結局はどうなんです? つまり前大戦100年戦争で対
      消滅したってのはウソなんですか
(しびる)>ネタバラシ禁止ってこともねーだろうけど つまりそゆ
      ことだわな 反物質の対消滅ってのが 光子機関が崩壊
      する際のセーフティなわけだろ? 大規模な爆散が起こ
      らないように自己崩壊で爆縮することで 外に向かって
      消滅すれば星系を吹っ飛ばすかもしれないって代物だし
(のりこ)>あー 反物質の対消滅に2種類あるんですか?
(しびる)>そゆことだわな 光子機関の自己崩壊ってのは つまる
      ところSSVシステムの最期ってことになるわけ ブラ
      ックボックスだって語られてるSSVシステムは その
      設計の基本理念に怪しいものを含んでて それがたまに
      自己の保身のために現象を偽装するのな
(のりこ)>んじゃ レヴァインの爆散とかってのは 実はシステム
      の偽装だって可能性があるわけですか
(しびる)>うんまあ 執筆当時はその方向で進めてたんだけど 公
      証人ネットってのがあるじゃん? あれが個々のSSV
      システムをシナプスにして脳細胞のように銀河全体に拡
      がっててさ まさに宇宙の神のように機能しはじめてる
      ってのがラストのラストの大ネタだったのな
(のりこ)>すごい壮大な展開ですね そんなの描ききれますか
(しびる)>なにも設定は全体を語るだけが方法じゃねーだろ でか
      いナスを表現するのに 夜空にヘタをつけたようなって
      表現があるじゃん ヘタの部分だけ描けば充分だろうさ
(のりこ)>なるほど しかしこれだけネタバラシしてもいいんです
      かね 楽しみにしてる人がいるのか知りませんけど
(しびる)>いいんじゃねーの 別に
(のりこ)>それは続編を描かないってことですね ってわけにもい
      かないので 冒頭にネタバレ警告を入れておきます
(しびる)>気にしすぎだろ
posted by 篠原しびる at 00:43| シンガポール 🌁| Comment(0) | TrackBack(0) | 連作系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年10月02日

連作23 廉連作04 ななめならずも 2

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 種別 連作系第23期 廉連作04
 題名 『 ななめならずも 2 』
 初出 ニフティサーブ/FJAMEA/18番会議室
    1997年03月01日01時32分
 注釈 行頭スペース+30W
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SUBJ:【廉連作】04 ななめならずも 2

 Sibi-Tem V.4.1

 廉直に清廉に 無心から始めるのもいい 廉連作 #04(A群)
 



         『 ななめならずも 2 』


                        作:しびる





  超豪華遊覧フェリーの沈没や 巨大ジャンボジェット機の墜落炎
 上なんてのは それはもう事故の中では最も派手な部類で そうじ
 ゃなくても 高速道路での数十台の玉突き衝突や 急行列車の脱線
 転覆事故とか 非常に希な確率で巨大な事故は発生する
  しかしなのだけど こと人の生死に関わる問題は 事故の大小や
 死傷者の寡多では語れない 現場ではすべての当事者に個々の悲し
 みや苦しみがあって メディアが取り上げる事件事故の重要性の選
 択尺度は 結局のところ悲しむ人々の人数でしかないのだと思う
  その点からすれば あたしのやっている仕事なんてのは 視聴者
 の人数に比例した選択尺度 ひとりでも悲しむ人がいるのなら そ
 れを伝える義務がある 地域に根差すってのは こうした意味かも

 『それじゃ大泉さん 事故現場の絵は2カットでいいですね どう
 しましょう 献花も入れた方がいいですか 森内 車を止めろ』
 『そうですね 進行方向だから 坂の上からお願いします』
  なんとも嫌な現場だけど それはそれとして ある意味あたしは
 非常に快適な状態にある なにかこう 噛み合う歯車か 643で
 トリプルプレーな感じ いつもこうなら悩みはないのに
 『血痕は残ってませんね 森内っ 交互に行かせりゃいいだろ』
 『まだ時間はありますから 向こうはあたしが交通整理しますよ』
  森内君は見た目は学生のアルバイトのようだけど 実際には30
 手前の正規の照明さん さっきから森内君を怒鳴っているのはカメ
 ラマンの土居さん 土居さんはエンターじゃなくて外注なのだ
 『それはどうも なんでしたら先にアポ取りをしてもらっても こ
 っちは片しておきますから それとエンドは標識にしましょうか』
 『構いません さっき携帯で連絡しましたから できれば一緒に移
 動するのが都合がいいです 標識はあれですね 交通安全協会の』
  交通事故現場である 発生時刻は昨夜の午後10過ぎ 原付バイ
 クに乗った高校生がカーブを曲がりきれずガードレールに激突 ほ
 ぼ即死だったらしい 地元の高校は免許修得を禁止していない
 『他にイメージがありましたら 俺はあれがいいとは思いますが』
 『結構ですよ あれでお願いします 森内さん 交互に通します』
 『はい それじゃ合図してください 僕が合わしますから』
  今日はたまたま土曜日だったから この事故のレポートはロック
 ン5ジラに割り振られたのだ それ以外の仕事で事故現場は珍しく
 ない 5ジラで事故はあまり扱わないけれど 別に番組の方針でも
 ないから 報道部の指示があればその通り これも地域の話題
 『OK 大泉さん あとは移動ですか 森内 ロケ車まわせ』
 『ええっと 住所はわかるんですが 行ったことのない地域なんで
 すよね これですけど 土居さんは御存知ですか ここです』
  なんて逆に尋ねてみたりする 今日はなんともやりやすい雰囲気
 だ これがエンタープライズの人なら文句たらたら 勝手に仕切ら
 れちゃってメチャクチャになるところ 土居さんはディレクターで
 あるあたしを立てて仕事を進める これがプロってもんだ
 『どれどれ ああここなら知っているよ 大丈夫 森内も知ってる
 から そう15分もあれば行けるかな 途中から車は無理だけど』
 『そうですか 機材の運搬が大変そうですね なんでしたらあたし
 も運びます 分担して 早く切り上げちゃいましょう』
  土居さんは40代半ばか 長身の痩身で短く刈り込んだ髪に白髪
 が交じっている まさに職人気質の風貌は 実際に仕事の厳しさで
 定評がある 一緒に仕事をするのはこれで2回目 少し慣れたかな
 『気遣いは無用 と言いたいところだけれど 俺も歳かな さっき
 からどうにも肩が重い 大宮さんにカメアシを付けてもらおう』
 『部長はケチですからね あたしが持ちますよ とか言ってますが
 あたしもさっきから背中が重いんですよね 怠けてるのに』
  肩をクキクキ上下させる土居さんと 右手をグルグル振り回すあ
 たし 快晴の午前中の陽射しは もう何事もなかったかのように車
 が往来する道路に木漏れ陽 真新しい献花が風に揺れている
 『事故現場ってのはたまに いや その話は止しましょうかね 若
 い娘さんは これは失礼かもしれないが 感化されやすいから』
 『うううむん 憑き物の話ですか 大丈夫です あたしはこれでも
 プロですからねえ なんて土居さんには言えませんが なんとも』
  事故現場の取材は場数を踏んでいるけれど それでも気分以外の
 ワダカマリが残る日もある CBSの仕事は他と違って緊張感があ
 るから 精神的なものが実際に肉体に影響することもしばしば
 『まあプロでしょう 段取りの良し悪しは別として 大泉さんの姿
 勢にはいつも感心していますよ 真摯な態度は基本ですから』
 『いやあ あはははは 急に褒めていただくと 照れますよねえ』
  ずっしりと重い背中は変わらないけれど タバコに火を点けた土
 居さんの前で馬鹿笑いする 午前中にコメントを取って そのまま
 午後一までに別の取材 うだうだ考えている暇はないのだ
 『画面で喋ってるのもいいけれど そっちに飽きたらウチのスタッ
 フにスカウトしたいくらい しかし大泉さんは飽きないだろうな』
 『そうですね 喋る仕事は飽きないと思います おっと来ました』
  坂の上からロケ車が走ってくる 運転しているのは森内君 ちな
 みに森内君は土居組の組員 照明兼音声で 今回の取材チームは3
 人だけ エンターは特番の仕切りで忙しいらしい 構わないけど
 『森内さん この住所までお願いします よいしょっと なんかや
 っぱり重いですね 情けないなあ 感化されちゃったようですよ』
 『憑きましたか そのままじゃ危ないですな 森内 ダッシュボー
 ドに入ってるだろ おう それだ なんでも気休めでしょうが』

  横腹に大きく6区中央放送局と記されたステーショナリーワゴン
 そのドアを開いて後部座席に座る 深く座席に沈み込んで あたし
 はいよいよ体が重くなる これは完全になにかに憑かれたらしい
  隣りに乗り込んだ土居さんは 森内さんからなにかを受け取って
 真面目な表情 気休めでしょうがと手に持つのは黄色い札 そのま
 ま札はあたしの額に これじゃまるでキョンシーだ 土居さんは至
 って真面目だから言葉も返せなかった
  暫くそのまま黙って座っていた この札が緩んだ気持ちへの叱咤
 だと気付いたのは それからかなり経ってからだった








             》 しびる 《
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(のりこ)>ななめ2です ななみちゃん きょうもがんばってお仕
      事してます ロックン5ジラでは交通事故の取材もする
      んですね 区役所の広報番組じゃないんですか
(しびる)>スポンサーであって 地域の話題とニュース そしてメ
      インが市の広報ってスタイルだな まったく広報だけっ
      てわけじゃない 事件や事故も扱うって感じで
(のりこ)>なるほど で 今回はエンターの人がいないって設定で
      登場キャラは別の外注スタッフの人たちですね
(しびる)>うん スムーズに進む仕事ってのもありありなんだけど
      てか 普通の仕事はまま普通に進むものなんだけど ト
      ラブルを設定するのは基本だしな 仕方ないわな
(のりこ)>基本ですよね そゆのが主人公を成長させるわけですし
      特にラストの1文はいいですよね 叱咤ですか
(しびる)>仕事には緊張感がないといけないだろ?
(のりこ)>ごもっともです
posted by 篠原しびる at 23:23| シンガポール 🌁| Comment(0) | TrackBack(0) | 連作系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

連作23 廉連作03 境界線

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 種別 連作系第23期 廉連作03
 題名 『 境界線 』
 初出 ニフティサーブ/FJAMEA/18番会議室
    1997年02月26日11時30分
 注釈 行頭スペース+30W
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SUBJ:【廉連作】03 境界線

 Sibi-Tem V.4.1

 廉直に清廉に 無心から始めるのもいい 廉連作 #03(B群)
 



           『 境界線 』


                        作:しびる





  6時間目の授業が終わればSHRの時間 だけど出欠は友達に頼
 んで自分は欠席する だって担任のブラック佐藤は名簿の朗読だけ
 で 生徒の顔も見ずに出欠を取るのだ 隣りの1Cの担任であるサ
 トピーならSHRは漫談タイム 同じ佐藤教諭でもこんなに違うの
 だから 姓名判断なんかは当てにならないと思ったりする
  少し話が逸れちゃったけど それであたしはどうするのかと言え
 ば ズルで稼いだ時間の有効利用 速攻で着替えてグランドの場所
 取りに走るのだ その点で考えると ブラック佐藤も良い先生なの
 かもしれない なんてね そんなわけないけど 言ってみただけ

 『急げ ちこ さっき椎名のバカが走ってた あいつ着替えないつ
 もりらしい 急げって言ってるのに また説教されるからっ』
 『待ってってば 今日はお花見セット あたしの番じゃないっ』
  デザインはそれなりだけど 色が気に入らない体育ジャージ 速
 攻で着替えて部室にダッシュする お花見セットはお花見用じゃな
 くて 布袋に入った金属性の杭とナイロンザイル とにかく走る
 『先週は はあはあ あたしが3でちこが2っ だからそれでっ』
 『うひい 重いよおおおん でもそれじゃ もうダメだああ』
  確か体育部連合会の規約では 放課後の場所取りはSHR終了の
 チャイムが鳴り終わった瞬間から でも規則は破るためにあるわけ
 で 昼休みからってわけにはいかないから 実際には少しのフライ
 ング 新入生は雑用係と決まっているらしい でももうダメだ
 『ぷしゅうう あたしはここで死んじゃうから なんちゃんがこの
 プレゼントを子供達に ああ みんなの喜ぶ顔が目に浮かぶよお』
 『なにバカ言ってるのっ 持ったげるから 座るんじゃない』
  なんちゃんは同じ1年生 クラスは隣りの1E 小学校は別だっ
 たから中学に入ってからの親友 あたしと同じようにSHRをキッ
 クして グランドに向かって走っている最中 今は走ってないけど
 『ほいほい 結局なんちゃんは優しい なら急ごう 椎名はどうせ
 単独行動だから ふたりで掛かればまだ間に合うと思う』
 『だろ ちこっ 誰も見てなきゃ完全犯罪 やってしまおう』
  お花見セットを抱えあげて なんちゃんはニヤリと頬を歪めてい
 る やってしまおうのやるは 殺すにるを付けて殺ると書くのだ
 『椎名は偉そうだから桜の木の下に埋めよう でも なんちゃんに
 は殺せないと思うけど なんちゃんは言うばっかり よっと』
 『そんなのわけないっ 変な噂を流さないでよね きーっ』
  部室から新体育館の脇を抜けるとグランドが見える 新館と新体
 育館の間は土足厳禁エリアだけど そんなの守っていると間に合わ
 ない 学校全体が少し高い所にあって グランドには階段状の観客
 席を駆け降りる感じになる もう椎名はグランドにいる
 『ひどーいっ あんなに広く場所取ってる こんなのほっておいた
 ら凄いことになるね なんちゃん 強制排除しよう』
 『とにかく あたしが話を着ける まったくあのバカ ちこは陸上
 部の方を先に仕切って もう しーなっ なにしてるのーっ』
  椎名は男子サッカー部の1年 クラスはなんちゃんと同じの1E
 小学生の頃は天才エースストライカーと言われたらしいけれど 中
 学に入ればみんな雑用係から始まる なんちゃんは前から知り合い
 『なにって聞かなくても知ってるだろ 南野も同じじゃないのか』
 『椎名君は制服のままで場所取りするわけ なんちゃん お花見セ
 ットを開いて そーゆーのはズルイんじゃないかな』
 『ほいっ 先にアップコーナーに杭を打っちゃえばいい』
  ちなみにあたし達は女子サッカー部 先輩の訓話によれば 数年
 前に女子サッカー部が正部昇格 それとと同時に男子テニス部も正
 部に昇格 一気にグランドは戦国時代へと突入したらしい
 『椎名だけよ こんなに南寄りにラインを張るのは 他の男子はも
 っと遠慮してるのに そんなに褒められたいわけ やな奴っ』
 『なんちゃーん 抜いちゃえばいいじゃない やっちゃえっ』
 『バカなことを言うな 早い者勝ちって決まってるんじゃないのか
 クレームなら3年を通してくれ 俺が決めたルールじゃない』
  椎名はしゃがんで杭を打つ なんちゃんは両手を腰に当てて仁王
 立ち あたしは陸上部がヒートアップに使うコーナーのラインギリ
 ギリに杭を打ってゆく 基本はギリギリで 椎名の意見は間違い
 『あたしがっ 今ここでっ 椎名に話してるのよっ』
 『あーダメだな 南野の話は聞かないことにしてる お前と喋って
 も得することはなにもない 荒井を連れてこい お前じゃダメだ』
 『嘘はいけないなあ 椎名君は素直じゃない なんちゃんも』
  女子サッカー部の新入生は9人 今月はあたしとなんちゃんが当
 番だ 男子は30人以上 総数でも23対65 だけどサッカーコ
 ートの占有はだいたい半分 普通は女子だからって邪険にしない
 『なによ素直じゃないって 陸上部の方は片したの』
 『俺は素直だ 自分の仕事を知っている 荒井が来たのなら仕事も
 終わり このマーキングは正式なものだから見ろ もう抜けない』
 『正式らしいよ なんちゃん 抜けるのはなんちゃんだけだ』
  今回の占有比率は2対3 こんなに狭くなれば先輩連中にどやさ
 れるのは決定事項 確かに早い者勝ちだけど なんちゃんと椎名の
 関係ならどうにかならなくもない ちなみにふたりはイトコ同士
 『むうううん しーなっ そんなにあたしにお願いさせたいわけ』
 『別に 俺は南野みたいな女は嫌いだ どちらかなら新井に頭を下
 げてもらいたいな 荒井は女らしくてかわいいと思うぞ』
 『女らしいって あはははは 素直じゃないよねえ 嬉しいけど』
  椎名は背も高くてかっこいい サッカーの才能もそれなりだと思
 う いつも眩しそうに目を細めて でも見ているのはなんちゃんの
 ことだ そんなことは誰にだってわかる 素直じゃないふたり
 『うんもうっ わかったわよ お願いします いつもの場所に杭を
 打ってもらえませんか ちこもほらっ お願いしなさい』
 『あははは 椎名君 女の子に恥をかかせちゃいけないって』
 『仕方ない 南野にはひとつ貸しだ 抜くのを手伝え』

  なんちゃんが頭を下げると 後ろのポニーテールがふわりと揺れ
 る あたしはそれを眺めながら 椎名の表情の変化は見逃さなかっ
 たりする 一緒に帰ったりする仲なのに お互いバカって罵ったり
 微笑ましいったらありゃしない 見ているとニマニマしてしまう
  3人掛かりで仕切り直して その頃には他の部の1年達もぞろぞ
 ろ集まってきた SHRが終了したのだろう これからハードな部
 活が始まる 楽しみは終わってからの買食いだけど 今日は椎名も
 誘ってみよう みんな楽しければいいと思う







             》 しびる 《
+++++++++++++++++++++++++++++++
(のりこ)>ひさしぶりに学園モノですね 高校生ですよね
(しびる)>中学生だって描いてるだろうが いまのいま読んでその
      意見か ったくそれで敏腕アシスタントとか言うしよう
(のりこ)>あー違います いま中学生って言ったつもりで高校生っ
      て言いました 単純なミスです そんなことはいいんで
      すけど このお話って簡単な筋なのに会話がややこしい
      ですよね 登場人物を整理しないと
(しびる)>ややこしいか? えーっとな まず1人称は『ちこ』こ
      と新井ちかこ 冒頭の相手は『なんちゃん』こと南野某
(のりこ)>某って なんちゃんは名前ナシですか
(しびる)>展開に必要なかったし んで3人目の男子は椎名 この
      3人でぜんぶだろ あとは新入生がよくやらされるグラ
      ウンドの場所取りな そんなにややこしくないわな
(のりこ)>整理するとそうですけどね んじゃ皆さんはいまの解説
      を念頭に置いて読み返してくださいね(ハート)
(しびる)>そもそもどうなんだろ? 画面をコピペして別アプリで
      じゃなきゃ読みづらいよな それとも拡大表示か?
(のりこ)>さあ ウチは元原稿をT−Timeでチェックしますか
      ら 他所様はどうしてらっしゃるんでしょうね そゆの
      訊いてみるのもおもしろいかもしれません んじゃ 返
      事ナシでけっこうだって方はコメントでもください
(しびる)>実際にコメントもらったらどうするんだよ 無責任なこ
      と言うなよな いちいちコメントに返事するのか
(のりこ)>そこはそれ 放置プレイで満足してもらいます
(しびる)>女の子がプレイとかいうなって言ってるだろうが
posted by 篠原しびる at 22:49| シンガポール 🌁| Comment(0) | TrackBack(1) | 連作系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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