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2006年09月29日

連作22 涼連作15 なるようになるかな

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 種別 連作系第22期 涼連作15
 題名 『 なるようになるかな 』
 初出 ニフティサーブ/FJAMEA/18番会議室
    1997年02月18日02時18分
 注釈 行頭スペース+30W
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SUBJ:【涼連作】15 なるようになるかな

 Sibi-Tem V.4.1

 飄々と涼しげな でも無責任じゃなくて 涼連作 #15(A群)
 



         『 なるようになるかな 』


                        作:しびる





  公立高校一本に絞る 私立と併願して安全策は甘えに繋がる た
 だでさえ類型別出願で併願ぽいのに とにかく禁欲的に勉強するし
 かないのだから 自分に甘くなるのはなによりも危険 後があるな
 んて考えると気が緩む 緩んだ気持ちは二度と締まらないと思う
  地元公立高校の2類は文系進学クラス 英語と社会の単位数が普
 通科1類とは少し多い 3類は美術科で過半数が推薦枠 あたしは
 2類と1類の併願 直前3カ月情報では2類の倍率は3.5 3人
 の受験生で1人が合格するかどうか 1類は1.4倍で楽勝だけど

 『その気があるのなら 美大に進むのもいいわよ 別にOLになる
 だけが人生じゃないでしょ やりたいように生きなさいね』
 『やりたいかどうか 今になってもわからないです だからとにか
 くは いちばん大変な方を選ばなきゃと そう思います』
  特に状況を設定したわけじゃなくて たまたまふたりきりになっ
 たから話題が傾いた だからなんとなくダラダラと ママは仕事の
 最中だし あたしはぼんやりと年表を眺めていた 土曜日の午後
 『あいかわらず優等生ねえ さいかを意識してるなら考えものよ』
 『別にそういうわけでは でも そうかもしれないです』
  ママは鼻眼鏡で悪戯っぽく どうしてこんな笑顔ができるのだろ
 う 最近ポッチャリしてきた頬に軟らかいシワが拡がり とてもと
 ても濃厚な微笑み ママは容姿も仕草も性格も深くて甘い感じだ
 『うん あやみはあやみなりに頑張ってるから それでもさいかに
 そっくりに育つのは なにか不思議な感じがしなくもない っと』
 『あたしは あたしですよ ママみたいにも さいかお姉ちゃんみ
 たいにもなってみたいけれど それは無理だと知っています』
  以前にパパ達と進路のことは話し合った とにかく高校進学は決
 定事項で 公立高校を受験するのもほぼ決定 そこから先はあたし
 の意見であり 3類の美術科は最後まで悩んでいた その話
 『ママとさいかねえ そういや正反対に見えるのかしら あの娘は
 もしかすれば単独行動の芸術家肌だったかもしれないわよ』
 『芸術家ならママですよ さいかお姉ちゃんは 他の人を引き付け
 る魅力があります ママにも あると思いますけど』
  自分で話しながら矛盾を感じていた よく考えると ふたりとも
 に不思議な魅力がある 正反対に見えるのかしらと 首を傾げたマ
 マの意見が理解できるような気もする 大人の女性の魅力だろうか
 『あはははは 親をヨイショしてどうするの ママのは無理矢理だ
 から さいかのカリスマとは別 立派な社長さんになるでしょ』
 『あれ さいかお姉ちゃんは会社を辞めたのでは 違うんですか』
  ママはテーブルに機械を置いて耳には小さなイヤホン すっかり
 冷めたコーヒーはママのお気に入り ウチの家系は代々猫舌 あた
 しはソファーに深く座り 静かな会話はせいや君がいないからだ
 『休職扱いよ 回線を使って少しは仕事もしてるみたいね 仕事中
 毒が体に染み付いてるのよ まったく懲りない妹だわ っと』
 『それはママも同じじゃないですか 家事をしながら仕事もしてる
 なんて あたしは勉強しながらお手伝いは無理です』
  その問題のせいや君は さいかお姉ちゃんのところ 正確には祖
 父の家に出掛けている どんな楽しみがあるのか 弟は年配の男性
 と仲良くなる 同世代と同じくらい友人の数はいるだろう
 『なんにしろ 大学まで行っとくのも楽しいわよ あの2年なり4
 年は得るモノが多いわね っと 今日はこれくらいにするかな』
  ママは機械を閉じて 眼鏡を外しながらコーヒーカップを引き寄
 せる 普段のとおりなら これから近所の中村屋まで夕食の買い物
 パパはどうせ遅くなって せいや君を回収してから御帰宅だろう
 『買い物なら手伝いますよ 前言は撤回で 実は少し息抜きだった
 りします なんだか集中力が続かなくっていけません』
 『んまあ 適当にやんなさい あやみの細胞の中にはヤリスギDN
 Aが多量に含まれてるのよ きっと そーちゃん氏の遺伝子ね』
  そーちゃんは母方の祖父の名前だ さっき話した祖父のこと 親
 戚の多くは愛情を込めてそう呼んだりする もちろん本人の前で言
 える人はいない 唯一の例外はまなみさんである 祖母のことだ
 『どうでしょうね 本当はそれほど真面目にやれる性格じゃないと
 そんなふうには思うんですけど うーん よくわからないです』
 『わからなくてもいいでしょうに さて あやみが勉強しないなら
 夕食は外食と洒落込むかねえ 旦那と息子は遅くなるだろうし』
  話の展開から そうなるだろうとは思っていた ママの仕事は進
 展していないらしくて 会話の最中に気合を入れてキーを叩いてい
 たのは 少し煮詰まっているときの癖だったりする
 『連絡しておかなくてもいいでしょうか パパとせいや君とマイケ
 ルの晩ご飯を 後で用意しなくちゃいけませんよ 面倒ですね』
 『冷蔵庫にあるものを食べさせるわ そうと決まれば着替えてお出
 掛け 娘とふたりで食事なんてのはね ふふふ こりゃいいわ』
  ママはなにやら急に上機嫌 ママが楽しそうに笑っているのを見
 ると あたしの心の中で なにかが熱いくらいに心地良くなる あ
 たしはもう中学生だけど もしかすればせいや君より子供な心の持
 ち主なのかもしれない 女の子でもマザコンはマザコンだ
 『着替えるのですか そんな贅沢でなくてもいいですよ』
 『いいじゃない とびきりのフレンチレストランに連れて行ってあ
 げるわよ で 進路の話でもなんでも聞こうじゃない さてさて』
  この近所にフランス料理の店なんてあっただろうか 遠出するく
 らいならパパやせいや君も誘えばいいのに そう言おうとして辞め
 にした 今日はなんだかママとふたりだけも楽しそうに思う
 『はあ 進路の話は決めましたから まあ いいですけど』
 『あやみが選んだワンピースと 同じ色のスーツにしよう 仲良し
 姉妹に見えるかもしんないし なーんてね あははははは』

  仲良し姉妹と言って笑っている あたしは返事のしようがなくて
 楽しそうなママを眺めてぼんやりしていた もしかして さいかお
 姉ちゃんもこんな気分だったのかと なんとなくそんなふうに考え
 たり どうでもいいけれど きっとあたしは ママのような女性に
 はならないんじゃないかって それだけは思うのだった
  どんなふうになるのか それもわからないけれど なるようにな
 るじゃ少し無責任かな よくわからないのであった ううむ









             》 しびる 《
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(のりこ)>もでらーとです あやみちゃんは高校受験ですね あい
      かさんもちょっと歳をとって 少しずつ時間が経ってま
      す このくらいの流れって気持ちいいですね
(しびる)>まあな このシリーズはやたらタイヘンなんだけど そ
      の分 とにかくこだわって作り込めるからさ
(のりこ)>あやみちゃんとあいかさんの微妙な違和感とか さいか
      ちゃんのパターンを踏んでるから それほど踏み込まな
      くてもすごく臭わせるでしょ そゆのが強みですか
(しびる)>強みってのはどうかね とにかくさ そうと臭わせたな
      ら外すわけだし 展開ってそれの繰り返しとか裏返しと
      か 基本形は数種類で あとはバリエーションだしな
(のりこ)>そゆのよくわかんないですけど 内容は多く語るまでも
      ないですか ある日の母娘の会話ってことで
(しびる)>そゆことだな
posted by 篠原しびる at 22:58| シンガポール ☁| Comment(0) | TrackBack(1) | 連作系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

連作22 涼連作14 腐水盆に還らず

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 種別 連作系第22期 涼連作14
 題名 『 腐水盆に還らず 』
 初出 ニフティサーブ/FJAMEA/18番会議室
    1997年02月17日01時03分
 注釈 行頭スペース+30W
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SUBJ:【涼連作】14 腐水盆に還らず

 Sibi-Tem V.4.1

 飄々と涼しげな でも無責任じゃなくて 涼連作 #14(B群)
 



          『 腐水盆に還らず 』


                        作:しびる





  緑色に変色した発砲スチロールが浮かんでいる 幾重にも波紋を
 描いて汚物の帯 水面から数メートルの高さの枝に まるでなにか
 の印のように白いビニール片が絡まっている その高さまで水位が
 上昇するのか それとも特殊な気流が発生するのか かなり上流で
 はおそらく膨大な不法投棄がおこなわれている 死んだダムに溜ま
 る物達 様々な物を塞き止めて これが本来の姿かもしれないが
  環境保護団体が世界的にも巨大な圧力団体と変貌した時代に 堆
 積した土砂の放出なんてのは生態系に対して論外 無用の長物は無
 用のままで放置され 死んだダムの再利用は打つ手なし それでも
 維持管理には膨大な費用が必要であり この巨大な建造物を眺める
 につけ 途方もない無駄にばからしくもなる

 『水面から生えている木って 気味が悪いよな ダムって子供の頃
 から嫌いなんだよ 社会見学で泣いた記憶がある 怖くって』
 『泣くことないじゃない でも 年平均5人はいるのよね』
  新車を買った最初のドライブ 山間部を縫って有料道路 行き着
 いた先は世界の果て 世界の果てにはダムがあるのだ
 『なに5人って なんか変な形の魚とか泳いでいそうだろ あと真
 夜中に真っ白な子供が泳いでいたり とにかく気味が悪いよな』
 『追い打ちを掛けるみたいで悪いけれど 年間5体くらい死体が上
 がるのよ だから夜間には通行禁止になってるわけ 怖いでしょ』
  そう言えばどこかにそんな表示があったか 800万を越える都
 市の近くなら 死体遺棄をしたがっている人間もかなりいるだろう
 絶好の遺棄スポットと考えるとイヤになる 何故この場所にいる
 『ああ 泣きたいくらいに怖いな もう帰ろう 楽しくない』
 『だから来たんじゃないの 今にも雨が降りそうなうっとおしい空
 に不気味な眺め しかめっ面して並んで立つ なにが起こるの』
  いつもそうだが 小難しい顔して指を振っている 別に貧乏じゃ
 ないがそれでも高価な新車の試走 説明を始めて質問で締める 彼
 女の長い髪を生暖かい風が揺らしている 滅入るような状況だ
 『なにか起こるわけ 別れ話とか もしかして保険金のために殺さ
 れるとか 実は宇宙人とか なんでも痛いのは辞めてくれよな』
  割りと不用心な造り ダムの上と言えばいいのか尾根の部分 軽
 自動車なら走行できそうな 通路になっている場所を並んで歩いて
 いる 彼女はお馴染の黒ずくめ 右手をヒラヒラ振って返事のつも
 り 柵もなければ金網もない どちらに転ぶも手摺一本だけ
 『このダムって ほら 死んじゃってるでしょ イヤになるほど水
 だらけなのに すぐ近くまで砂と泥 だから搬出するらしいわね』
 『ふうん ペイラインがあるのなら 再利用するのが正解だろうさ
 大量の土砂で人口島でも造るとか で 建設国債でも買う相談か』
  ダム容量の7割が土砂だ ドロリと鴬色の水面のすぐ下に 周囲
 の山並から流れた堆積物 胡散臭い儲け話には適当な場所だろうが
 『そうじゃないの この場所から そうね2キロほど上流 数年前
 の渇水騒動で確認できたのよ 建物が残っていたわ』
 『なんの話だよ ダムに沈んだ集落の話か 確か50年も前のこと
 だろ お前に関係あるとは思えないが もしかして埋蔵金とか』
  どちらとも解釈できる表情だ 大きな瞳をスッと細めて 回想に
 耽溺しているようにも 俗欲に塗れているようにも見える 彼女の
 年齢は30そこそこ 50年前の因縁もないだろう ダム建設から
 半世紀 今更なにがどうだというのか すべては土砂の下だ
 『20年前 あなたが社会見学で泣いていた頃よ あたしは干上が
 ったダムの底で遺跡の探検をしてたわけ 生臭い建物よ』
 『泣いてた頃って 社会見学は土砂の放出実験までの話 干上がっ
 てたのならそれ以降だろ イヤな趣味の子供だな 勝手だけど』
  空が徐々に暗くなる 持って回った説明は昔話か 構わないと言
 えばそれまでだが どうもそれだけではない気がする 彼女が含め
 るときには怪しくなるのが常 ただでさえ生臭い風に雨の予感
 『時制の一致なんてどうでもいいの 今問題なのは またその建物
 が地上に現われるって事実 だからあなたを連れてきたのよ』
 『直に話せよ なに言ってるのか理解できないぞ なにが問題だ』
  そうは言いながらも なんともイヤな予測が固まりつつある 水
 面に浮かぶ死体の話から始めたのなら それがネタ振りで結論に結
 びつくのが常套手段 謎の多い女だが もしかして殺人を犯したか
 『誰か殺したのか 20年前なら小学生くらいだろ 時効を待たず
 して悪事の露呈だな 黙ってりゃバレないんじゃないか』
 『そうもいかないわね この辺りで身辺の整理も考えてるのよ』
  そうならば関わり合いは御免だ 虫の知らせで少し後退する あ
 まり手摺に接近しているのは危険かもしれない 話している相手は
 殺人犯だ 某かの口論が隠蔽工作に繋がらないとも限らない
 『なるほど 期せずして新車の試走が悪事の告白 悪いけれど協力
 できそうにない どうせ夜陰に紛れて死体を運べとか』
 『言うわけないでしょうに あたしが殺したんじゃないわ』
  殺人は否定しているが これで死体絡みであることが確定したわ
 けだ そうこうしているうちに霧雨が風に混じる 水面に遠くから
 細波が迫ってくる やや強めの突風に息が詰まる すべて不快だ
 『でも死体はあるんだろ なんの建物か知らないけど 前回の渇水
 でバレなかったわけだな 今度も発見されないんじゃないか』
 『きっとダメね 渇水は雨が降らないから渇水 雨で土砂が洗い流
 されると それが決定的な物証になるでしょうね もうおしまい』
  なにかがキッカケとなり 彼女はぷいときびすを返す 仕方なく
 後に続き この場所から解放されるのかと思えば 少し気分が楽に
 なる ダムは基本的に嫌いだ ましてや死体が眠っているなら尚更
 『なにが物証だ なにを疑われる 待てよ 説明しろよな』
 『コンクリート製の壁に 死体発見記念って 署名入りでスプレー
 したのよ だって早い者勝ちでしょ 若かったのよね』

  言い放つと彼女はさっさと車に乗り込む どこまで本当の話か怪
 しいが 落ちがないなら本当だろう 干上がったダムの底に署名入
 りの建物が現われる マスコミ好きのしそうな映像だ 死体発見記
 念だなんて 騒いでくれと言わんばかりである
  腐臭の漂うこの死んだダムに まったく当たり前のように死体が
 沈んでいる こんなに面白くない状況も珍しい どんなことでも愉
 快な側面が見いだせるものだが この場所だけは例外であるらしい
 とにかく早く立ち去ろう それが正解だ






             》 しびる 《
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(のりこ)>しびさんはダムがスキですよね
(しびる)>ダムいいよな なんか視野が狭くなると近所のダムを見
      にゆくんだ ダムって大きいじゃん すごいよな
(のりこ)>私はキライですね まったくもってここに描かれてるよ
      な理由でキライです できることなら一生近付きたくな
      いです 大きさも水の量もイヤです 怖くて
(しびる)>そゆのもあるかもな なにが沈んでるのかわからないし
      基本的に水はよどんで腐ってるし やたらデカイし
(のりこ)>この渇水のネタはよくニュース媒体で見ますよね
(しびる)>うん 生活環境が沈むってのはよく作品に活用されるけ
      ど それが再びあらわになるってのはそんなに使われな
      いじゃん? ならそれかってのが企画意図だな
(のりこ)>そうですね ダムに沈む村とかって ホラーなら沈んだ
      村が因縁の原因で 渇水で現われたのはニュースで重宝
      されますけど 作品のネタにはならないですもんね
(しびる)>そゆこと まあダム関係でなにか描いとかなきゃっての
      は基本だったけど ほら いやあダムの話は描いたこと
      ないんですよってのは作家の端くれとして恥ずかしいし
(のりこ)>それは恥ずかしいことなんですね よく聞きますが
(しびる)>そりゃ恥ずかしいだろ グルメ評論家がタラバガニ食っ
      たことないんですよって言うくらい恥ずかしいな
(のりこ)>タラバガニですか
(しびる)>タラバガニな
posted by 篠原しびる at 02:30| シンガポール ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 連作系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年09月26日

連作22 涼連作13 ののさまはいつも

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 種別 連作系第22期 涼連作13
 題名 『 ののさまはいつも 』
 初出 ニフティサーブ/FJAMEA/18番会議室
    1997年02月12日02時21分
 注釈 行頭スペース+30W
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SUBJ:【涼連作】13 ののさまはいつも

 Sibi-Tem V.4.1

 飄々と涼しげな でも無責任じゃなくて 涼連作 #13(B群)
 



         『 ののさまはいつも 』


                        作:しびる





  拘りがないわけじゃないけれど その拘りが他の人と少しずれて
 いるなんてことを 自分の評価として他人から聞くこともあるから
 見る人によっては拘りがない人間だなんて思われたりも している
 のかもしれない まあどちらでもいいけれど なんて感じかな
  どうでもいいことは脇に置いといて この場合の脇は座って左側
 のこと 右側に置いてあるのはどうでもいいの反対 あたしの命と
 引き換えてもいいもの 静かに黙って目を閉じている なにかに拘
 るのならこの娘だと思う あたしの娘が座っている

 『しいちゃんは なにをお祈りしましたか お願いしてないでしょ
 うね お願いするとダメになりますよ お祈りをするのです』
 『まだ 今日はお爺ちゃんにお祈りしてるの まだ途中だもん』
  畳の上に座布団を並べる あたし専用と娘専用 きちんと正座し
 て暫く あたしは毎日同じ台詞をつぶやく 朝日が煌めく
 『お爺ちゃんとお婆ちゃんだけじゃダメですよ 御先祖様全員にお
 祈りをしなくては それが正しいお祈りの方法です』
 『お爺ちゃんとお婆ちゃんしか知らないもん 御先祖様ってダレ』
  巨大な平屋建ての屋敷 その北東の端にある部屋 入れ換えたば
 かりの畳は12枚 高く天井に入り組んだ欄間 娘とあたしは並ん
 で座る 目の前には仏壇 ゆっくりと線香の煙が漂う
 『御先祖様は御先祖様 お爺ちゃんとお婆ちゃんもしいちゃんの御
 先祖様 誰って説明できないくらいたくさんの人がいるの』
 『おかあさんも知らないんじゃないの とにかく途中だもん』
  目を閉じて両手を合わせ 娘は小声で静かに話す 小学3年生に
 なる娘は親馬鹿でも素直な女の子 あたしが最も大切にしている時
 間を一緒に過ごしてくれる 会話もまた至福のエッセンス
 『はいっ 終わりました 今日はみんな仲良くをお祈りしました』
 『お母さんは しいちゃんとお父さんの健康 それと交通安全です
 学校や会社に行く途中で 事故に遭わないようにお祈りしました』
  自分なりの道徳心は持っていたけれど 信心となれば別問題だっ
 た 毎朝の務めは嫁いでから すぐに御両親は揃って他界 残され
 た習慣はあたしのやるべきこと そうなのだから そう
 『でも どーしてお願いしちゃいけないのかな お祈りとお願いの
 違いはなんとなくわかるけど 自分のことがお願いでしょ』
 『そうですね 本当は同じような言葉です でもしいちゃん 謙虚
 って言葉を知っていますか 無理にお願いしないのがお祈りです』
  この説明も何度目か もしかすれば毎日同じ まるで朝の挨拶の
 ように 朝日の煌めくこの時間に 娘と並んで手を合わせる 泣く
 ばかりの赤ん坊だった娘がもう小学生 いつしか言葉が整い 今で
 はこうして意思の疎通に不都合はない なにやら感慨深く
 『無理にお願いしないのかあ それじゃ自分以外のことでも無理な
 お願いは聞いてもらえないのかな お祈りって難しい』
 『そんなことありません しいちゃんの御先祖様は みんなしいち
 ゃんの味方ですよ 凄くたくさんの人が しいちゃんを見守ってく
 れているの だから無理にお願いしちゃダメなのですね』
  煌めく朝日は鴨居にぶつかり ちょうど仏壇に影を作る 仏具の
 間に飾られた遺影は誰のものだったか 義父か義母 すぐに思い返
 せないのは何故だろう あたし自身の信心は如何程か
 『そうかもしんない あたしだって勉強しようってときに 勉強し
 なさいって言われるとヤル気がなくなるもん それと同じでしょ』
 『そんな感じでしょうね 御先祖様はヤル気がなくなるとかではな
 いかもしれませんけど 見守ってもらうなら失礼のないようにね』
  娘はあたしの娘であると同時に 夫の娘でもある この家の先祖
 は娘の先祖ではあるが あたしの先祖ではない 子供は常に親の倍
 の数の先祖を背負う 娘は無数の魂に加護されて暮らしている
 『昔は自分のこととかお願いしてたけど 今はおかあさんの言うこ
 とがわかるから だから大丈夫 もう子供じゃないもん』
 『しいちゃんも知らない間にお姉さんね みんなの幸せが自分の幸
 せって それがわかるのなら大丈夫 お母さんも安心ですよ』
  不思議な感覚 なんとなく覚えている完成型に向かって レゴブ
 ロックを組み立てていくような 過去に訪れた場所に向かって ぼ
 んやりと歩いているような 言葉を発するごとに なにか大切なこ
 との輪郭が定まる 不安と安堵の入り交じった 不思議な感覚
 『こうしておかあさんと話していると あたしも凄く安心するの』
 『安心 そうね お爺ちゃんやお婆ちゃんのように お母さんもず
 っとしいちゃんを見守っていてあげるわ いつまでもずっとね』
  ゆっくりと朝日が移動する 隣りに座る娘は手を合わせ目を閉じ
 て 徐々に差し込む光が時を告げる こうしているのはいつからか
 小学3年生の娘は静止した時間 娘の髪を撫でようと手を延ばして
 それを合図に時間が動き始めた 不意の声は背後から
 『しいな もう時間だぞ 母さんと話しているのもいいが そろそ
 ろ朝飯を作ってくれないか 腹が減って困ってるんだ』
 『うん すぐに作るから ちょっと待ってね』
  声の主は夫 その声を聞きながら すべての輪郭が定まった 娘
 の目蓋がゆっくりと開いてゆく あたしの視点は観念へと変化して
 娘の体をゆっくりと抱き締めてゆく 高校生にまで成長した姿 小
 学3年生の記憶は 彼女が心に留めるあたしの記憶
 『あまり待てないな しいなの朝食を食べずに出勤するのは でき
 れば回避したいと父さんは思うぞ なんだ 座布団は2枚か』
 『うん ちっちゃい頃はこうしてね おかあさんと御先祖様にお祈
 りしてたの お願いしちゃダメよって おかあさんの口癖』

  娘が見つめるその先には 朝日を浴びたあたしの遺影が微笑んで
 いた あたしの最も大切な時間 朝のこの一時を 娘は今も一緒に
 過ごしてくれている あたしの大事な 命と引き換えてもいい大切
 な娘 いつもこうして ずっと見守っている いつも





             》 しびる 《
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(のりこ)>この作品は 私の最も大好きな作品のひとつです しび
      さんのこゆのを読ませてもらうたびに 私がこの事務所
      のスタッフであることを誇りに思います
(しびる)>それほどかねえ あまりに予定調和だから 展開がやぼ
      ったいよな もすこし整理できなかったかね
(のりこ)>んー 充分じゃないですか お母さんの1人称で始めて
      途中から記憶の混濁が怪しいなあと思わせて ぼやーっ
      とぼやかして最後スッキリまとめる すごいですよ
(しびる)>その辺はうまくいってるけど ヘッダの部分はうるさい
      な あそこは情景描写で片す方がキレイか
(のりこ)>お母さんの思い入れが溢れてるってことでいいでしょ
(しびる)>後半からフッタはいい流れなのになあ オチを完全に決
      め込むと 作業中にだれるんだよな 悪いクセだわ
(のりこ)>そゆこと仰ると読後の余韻がだいなしに
(しびる)>なら最初から解説部分を省けばいいじゃん
posted by 篠原しびる at 00:04| シンガポール ☁| Comment(0) | TrackBack(1) | 連作系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年09月25日

連作22 涼連作12 へきすべくして

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 種別 連作系第22期 涼連作12
 題名 『 へきすべくして 』
 初出 ニフティサーブ/FJAMEA/18番会議室
    1997年02月06日00時38分
 注釈 行頭スペース+30W
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SUBJ:【涼連作】12 へきすべくして

 Sibi-Tem V.4.1

 飄々と涼しげな でも無責任じゃなくて 涼連作 #12(B群)
 



          『 へきすべくして 』


                        作:しびる





  市街地から数キロ 幹線道路から少し分け入り小山がある その
 小山に寄生するように 会場となる某私立大学が存在していた 安
 い土地を贅沢に使い 疎らに点在する校舎群 教職員専用駐車場は
 当然のこと 生意気にも学生専用の駐車場も広大な面積である
  講演会聴講者はその学生専用駐車場に車を停める 今回の仕事は
 交通整理だった ウチの設計事務所が加盟するところの連合会の主
 催する講演会 聴講者の大半は事業主かその関係者 演者は会場と
 なる大学の教授 専門は都市環境経済学 地に足の着いた講義で定
 評のある先生らしいが なにも聞けなかった 交通整理だったから

 『ひゃはらあ ポーター君がいるじゃなーい 飲んでるかあ』
 『なんか できあがっちゃってるな 飲んでるから向こうへ行け』
  その講演会の打ち上げ 大学関係者をも含めての一次会は盛大に
 某ホテルの大会場で それから二次会は設計事務所連合会とイベン
 ト会社からの派遣スタッフで賑やかに 三次会は崩れて大騒ぎ
 『できあがってない しらふ ノープロブレム 飲んでるか』
 『島崎さーん おたくの課長さんが暴れてますよーっ 困った奴だ
 仕方ないから座れ みみこは弱いんだから自重するように』
  大暴れしているのはオフィス島崎の女子社員 三次会は系列事務
 所毎に分かれてしまったから ウチの事務所と島崎さんのところは
 同系列ということになる 社長同士が元同僚なのだ
 『みみこって言った あたひ達の仲はさ 公然の秘密なのにひゃ』
 『呂律が回ってねーじゃん 公然の秘密なら構わないだろ こいつ
 普段は猫被ってるでしょ あははは その反動で騒ぐんですよね』
  オフィス島崎の専務さんと喋っていた 仕事を一緒にすることは
 業種からして少ないけれど ゴルフコンペやこのようなイベントで
 は同席することが多い バカ女との関係もソレ式だったりする
 『落合君は減り張りがあってよろしい まだ少し結婚退職させたく
 ないものだな 次代の幹部候補として考えていたりする ふむ』
 『ひゃありい 幹部候補だって 聞いたでしょ 祝杯を上げよう』
 『じきに辞めるから言ってくださってるんだ 少し静かに喋れ』
  自分で言うのもなんだと言うのもなんだが 落合みみこは美人で
 ある それに普段は仕事もできるらしい らしいとか言っているが
 この場にいる何割かの人間も 彼女が飲んで騒ぐことを知っている
 『いやしかしらね のんちゃん あたひは嬉しいわけだあね のん
 ちゃんと専務さんに祝福されてひゃあ ぐすんぐすん』
 『この場でのんちゃんは辞めろよな なんでそこで泣きが入るんだ
 みみこはウルサイから退場だな 誰かに引き取ってもらおう』
  馬鹿騒ぎの飲み会だが そこここで怪しげな内緒話も交されてい
 る 系列4事務所の合同だから そこはそれの業界話の情報交換だ
 今だってオフィス島崎の専務さんと喋っていたのに この業界は仕
 事を覚えればすぐに独立 各種の情報はなによりも貴重
 『野垣さんはのんちゃんですか まあなにより結婚するのも大切で
 すからな 家庭は必要です 落合君 聞いているか』
 『聞いていますよ やらなあ のんちゃんは野垣君じゃなくてのん
 ちゃんですよねえ ええっ のんちゃんてば誰と結婚するのっ』
 『こらこら ひとのグラスをオモチャにするな 飲まないぞ』
  専務さんは既に社交モード 伏せ語をみみこが叫んでしまうのを
 危惧してのことだろう まったく配慮の足りない女だ 他の人間は
 騒いでいても押さえるべきを押さえている 無礼講でもない
 『飲んで 飲んでくれなきゃやだっ なーんてね あははははは』
 『チョコチップとオレオが入ってるじゃないか すみませんね こ
 いつばかりが騒いでしまいまして なんとお詫びしてよいか』
 『ウチのかわいい社員ですから お詫びするなら私でしょう 落合
 君 こうなれば君がいちばん偉いのかもしれないぞ ふうむ』
  ふうむのところで専務さんの目が細くなる 途端に馬鹿笑いして
 いたみみこの表情が変化する いくら馴れ合っていても あちらの
 事務所とこちらの事務所 遠くからウチの社長の笑い声
 『少し騒ぎすぎました いけませんねえ 野垣君 静かに飲みまし
 ょう 高橋専務 すぐに水割りを御作りします いそいそ』
 『いそいそって言葉で言うのな みみこってば怒られてやんの』
 『怒ってはいませんよ さて 年寄りは年寄り同士で仲良くするこ
 とにしますか 先程の話 片岡さんにそれとなしに伝えましょう』
  苦労して専務さんと話す状況を作ったのに みみこの馬鹿騒ぎで
 台無しである 片岡はウチの社長の姓 片岡設計事務所の社長だ
 『はいっ ええその そうですね よろしくお願いします』
 『悪いようにはしませんよ 落合君もお世話になっていますから』
  専務さんは微笑みながら立ち上がる 合わせて立ち上がり最敬礼
 みみこは黙々と水割りの調合 やはりかなり酔っているようだ 他
 所の社員がこの丁寧さなのに まったくダメな社員である
 『みみこさ 飲めば騒ぐってものでもないだろ ふう まったく』
 『はいっ 特製の水割り あの高橋専務ってのも曲者よ 仲良くす
 るのも気を付けなくちゃね 毒にも薬にもなるタイプだから』
  溜息をついて座り込む みみこを見れば素面に戻っている 加え
 て訳知り話をしているではないか 普段はあまり仕事の話もしない
 が みみこのこんな台詞はどんな状況であれ珍しいことだ
 『なに 騒いでた振りをしてたわけ 曲者なのは知ってるよ どう
 転がっても大丈夫な話しかしてないもの ある意味婉曲だね』
 『ならいいけど そっちの社長さんの名前がでてたじゃない 危な
 いことはしないのが得策 石橋を叩いて壊せば設計事務所』
  いつまでも平でやってくつもりはない 噂程度の情報は流してお
 く 10年経てば誰が偉くなっているかわからない業界 入社10
 年目なら危ない橋も渡ってみたりする 石橋なら尚更だろう
 『変な格言だな さてこちらも移動するか こんなところで家族の
 団欒もないだろ 鈴木さんのところに乱入しよう みみこも来い』
 『家族の団欒だってさ あはははは 酒が腰に来て立てない』

  酔った振りをしていただなんて 結局かなり酔っているのだ た
 またま素面な瞬間が訪れただけであって かわいい顔をして両手を
 延ばしている この調子では潰れるのも時間の問題だろう
  某所のクラブを貸し切っての大宴会 こんな機会に同業者の交流
 を深めたいのに 泥酔女を連れてはそうもいかないか 騒がしい周
 囲を後目に座り直す みみこの顔を眺めているのも それはそれな
 りに楽しくないわけでもない と考えるしかないだろう







             》 しびる 《
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(のりこ)>飲み会のお話ですね OL時代にもあまり仕事関係の飲
      み会って知らないんですけど こんなものですか
(しびる)>んなもん場面場面だろうが よかさ 企画段階ではこれ
      もでらーとの亜種として考えてたんだけど
(のりこ)>あー そういや設計事務所業界ですよね なんか最近は
      設計業界もキナ臭い話題が多いですが これはそゆのが
      なかった平和な頃のお話ですね
(しびる)>まあな でもなんか描き始めると これはこれで独立さ
      せても問題ないかなあとか思ってさ てきとうに創った
      わりにはキャラも動いてるし むしろシリーズ化できる
      か なんて勢いじゃん? とかって始めないけど
(のりこ)>てきとうなキャラって(苦笑) でもまあみみこちゃん
      は身近にいそうな感じですよね 飲んでるとしらふなん
      だか泥酔してるんだか たぶん酔ってるんでしょうけど
(しびる)>いるかねえ いるかもなあ でも創作キャラだし
(のりこ)>チカラ入れてるのか抜いてるのか どっちですか
(しびる)>そりゃ 描いてたときは全力だし 解説するときはてき
      とうだろ 自作についてならそんなものだわな
(のりこ)>ふうむ まあいいですけど
posted by 篠原しびる at 23:01| シンガポール ☁| Comment(0) | TrackBack(1) | 連作系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年09月24日

連作22 涼連作11 椿屋綺譚 2

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 種別 連作系第22期 涼連作11
 題名 『 椿屋綺譚 2 』
 初出 ニフティサーブ/FJAMEA/18番会議室
    1997年02月04日02時29分
 注釈 行頭スペース+30W
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SUBJ:【涼連作】11 椿屋綺譚 2

 Sibi-Tem V.4.1

 飄々と涼しげな でも無責任じゃなくて 涼連作 #11(B群)
 



          『 椿屋綺譚 2 』


                        作:しびる





  座布団を枕にして仰向けに眠っていた 右腕を顔の上に乗せてい
 たから どうにも視界がぼやけている 左腕の時計を確認すれば午
 後5時30分 後ろ頭を掻きながら生欠伸 この光は天井の蛍光灯
 だろうか ぼんやりとした白色の世界に それはその場所にいた
  やけに声が近いと思えば 向かい合って座るのは件の仲居か ま
 だ視界がハッキリしないが 机の向かい側に女性が見える 理由は
 どうあれ客間に無断で侵入するのはいかほどか そう考えて苦笑す
 る 自分の寝起きの悪さは自覚しているのだ しかしこれからのこ
 ともある 距離感を再確認するのも有益だと考えた

 『あのさ 基本的にほおっておいてくれないかって さっき言わな
 かったか そうやって友達みたいに向かい合ってても困るんだよ』
  仲居がなにか喋ろうとしたが それを制してまずは言い切る 大
 仰に頬を歪めて視線を戻す ようやく視力が回復してきた ぼんや
 りと霞んだ映像に仲居の表情が現われる なにか変だ
 『お客様 夕食の時間です お客様 お休みのところすみません』
  眩暈のような衝撃にたまらず瞬き 反射的に視線は声の方へ向か
 う 仲居の声は入口ドアの向こうから ならば向かい合って座る女
 性は誰だ 再び視線を正面に戻したとき ドアが開いた
 『声が聞こえましたので お邪魔します 夕食の時間ですが』
 『今ここに女がいたが どこだ いや いやいや なんでもない』
  目の前には誰もいなかった 仲居はしゃがみながらドアを開けて
 そのままの姿勢でスリッパの方向を変えている まるで当たり前の
 仕草に 非現実的な自分の言葉を慌てて訂正する 錯覚か
 『うまい具合に入ったりするんですよ 夕食はこちらに運びますが
 なんでしたらば大食堂でも召し上がれますよ どうしましょう』
 『なにがうまい具合に入るんだ それに夕食は6時だろ』
  タバコに火を点けて頭の中を整理する 仲居は素早く灰皿の交換
 先程飲みかけの湯呑みを下げて 急須にポットの湯を注ぎ足す す
 べて一連の動作なのだろう 湯呑みを差しだしたところで返事
 『なにって 携帯電話で喋っておられたんでしょ 隣町にアンテナ
 が立ちましたから なんです もう6時は過ぎていますよ ほら』
  仲居が指さす方向に壁掛け時計 時間は6時15分 慌てて腕を
 見ればこちらも同じ 記憶違いか寝惚けていたのか 妙な既視感に
 煙を吐く 仲居がこちらを眺めているのは返事を待っている
 『そうか ふうん この部屋ばかりも飽きたな その大食堂とやら
 で食べるよ どちらにしても貸切り ははん 贅沢な話だ』
 『では大食堂に 1階にございますので どうぞ』
  仲居のミサエ君はおざなりな台詞で頭を下げる しかし貸切りの
 部分で一瞬だけ表情が変化した なにか意味があるのだろうが こ
 れ以上の拘りも仕方ない 先程の男女の騒ぎもある 揉め事があっ
 ても関係ない そうタカを括ってタバコを揉み消した

  大食堂と呼ばれる部屋は20帖程度の洋間 6人掛けテーブルが
 5台 暖簾を隔てて隣室が厨房らしい 先導する仲居に続き入室し
 見渡せども誰もいない 他の宿泊客がいないのは本当らしい
 『女将さん こちらで召し上がるそうです お願いします』
 『はいはい すぐにお持ちしますから お酒 いえビールがよろし
 いかしら ミサエさん テレビの前にお通ししてね』
  大食堂にテレビ このキッチュな感覚が醍醐味だろう 厨房から
 聞こえるのは女将の声 調理担当は彼女か もしかすればこの宿に
 は彼女達だけ いやしかし先程の男性もいるはずだ
 『なに 女将さんの手料理なわけか 板さんも兼任じゃ大変だね』
 『ここだけの話 先月辞めちゃったんですよ だから女将さんが』
  仲居にビールを注がれ そう言えばまだ浴衣に着替えていなかっ
 たと気付いた 仲居が小声で話すのに意味があるのか 予備知識の
 ない者に噂話は成立しない 狭い世間で常識が歪んだのだろう
 『なあに ひそひそ話なんて はいどうぞ 豪勢な料理はご用意で
 きませんが 魚だけは新鮮ですから ビールはいかが』
 『ああ 手酌で結構だから そういや海だったね 海なら鮮魚か』
  質素だが丁寧な料理だ 先付から始まり 煮物に刺身に酢の物が
 並ぶ 鍋の中身も魚 しかしやはり素人料理 見た目はそれなりだ
 が付け焼き刃 板前が辞めたのは宿にとって痛手だったろう
 『ところでさっき 昼寝する前だったかな どこかで いや辞めて
 おこう たいしたことじゃない それよりも確か地酒があった』
 『地酒ですか たいして面白くないイモ焼酎ですよ お飲みになる
 なら持ってきましょう ミサエさん よろしくね』
  できれば放置してもらいたいものだ ふたり並んで笑顔はいいが
 怠惰に過ごすための滞在である なにか聞こうと思って辞めにした
 酒はどうでもいい どちらかひとりでも減るだろうと考えた
 『なにか不都合でもございましたか なにぶん人手の足りない状況
 ですので なにかございましたら遠慮なさらずに仰ってください』
 『いや どちらかなら 構ってくれない方が嬉しい』
  女将にビールを注がれて 余計なことを言ったと反省する どこ
 かで痴話喧嘩が起こっていようが 興味がないなら話題にするべき
 ではなかった ある程度の距離を常に保つ 最善は不干渉だ
 『耳の痛いお話です ささビールを ミサエさん 早く用意してく
 ださいね 続いて天麩羅をお持ちしますので』
 『なきゃいいから 特にどうしてもってわけじゃなし』
 『女将さん 切れてます 買ってきましょうか 今から』

  入れ替わり立ち替わり 仲居と女将が付きっきりで給仕だ 途中
 で点けられたテレビからはつまらない歌謡曲 旅館というよりは定
 食屋の様相 なにかばたばたと夕食が進み ふたりに見つめられな
 がら最後の茶をすすった
  カラオケでもとの女将の提案を断り部屋へ向かう この状況でな
 にを唄えと言うのか 怠惰な休暇を端から壊すもてなしに 少しゲ
 ンナリしながら部屋へ戻った 満腹感に眠気が混じり 生欠伸をし
 ながらドアを開ける 瞬間 なにかが消えるところだった






             》 しびる 《
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(のりこ)>椿屋綺譚2です やにわに怪しくなってきました これ
      の体裁は怪談ですよね そういやしびさんって一時怪談
      ばっかし描いてらしたのに 近作ではないですよね
(しびる)>そうか? たしか終連作にも1本あっただろ ちゃんと
      ネタが組めれば 怪談話は大好きなジャンルなんだけど
      そうじゃなきゃグダグダになるからさ 気を付けないと
(のりこ)>まあ 臭わせてなにもないとなんだそりゃって感じにな
      りますもんね で 話題を椿屋に戻しますが このひな
      びた旅館はモデルがあるんですか?
(しびる)>まあな そのまんまじゃねーけど 若いときよく逗留し
      た旅館がこんな感じでさ やたら汐臭いんだこれが
(のりこ)>ふうん 珍しくモデルアリですか それはたまに休暇を
      取ってこんなふうに? なにもしないでだらだらと?
(しびる)>そんなヒマあるわけねーじゃん
(のりこ)>まあそうでしょうね
posted by 篠原しびる at 00:07| シンガポール ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 連作系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年09月23日

連作22 涼連作10 椿屋綺譚 1

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 種別 連作系第22期 涼連作10
 題名 『 椿屋綺譚 1 』
 初出 ニフティサーブ/FJAMEA/18番会議室
    1997年02月01日01時41分
 注釈 行頭スペース+30W
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SUBJ:【涼連作】10 椿屋綺譚 1

 Sibi-Tem V.4.1

 飄々と涼しげな でも無責任じゃなくて 涼連作 #10(B群)
 



          『 椿屋綺譚 1 』


                        作:しびる





  故意に海水浴シーズンを外す 夏休みだなんて馬鹿騒ぎは辞めて
 一段落の秋頃に休暇を取る 海は土用波とおばけクラゲの大群 温
 泉なんか無縁の漁港 観光名所もない方がいい 宿もなるべく簡素
 なのを選んで できれば自分で電話予約 飛行機や列車はらしくな
 るから マイカーで玄関先に乗り付けよう
  秋休みは怠惰に過ごす 熟した果実が美味しいなんて 極まれば
 腐った酸味の楽しみに到達する 時機を逸した贅沢は シーズンオ
 フの民宿だ 俗っぽく安価に しかし行き届いた清潔さ うわつい
 た観光客に遠慮せず なにもしないでダラダラ過ごす

 『あとで浴衣を合わせます 非常出口は廊下の突き当たりとリネン
 室の隣り 夕食は6時に用意します 御用の際には帳場9番に電話
 してくださいね ささ 浴衣を合わせましょう』
  仲居は目尻の下がった冗舌な女性 腰の名札にはミサエと記され
 ている 決まり文句を捲し立て 脇の浴衣を掴んで広げる
 『6時に夕食か あ これ 少ないけど取っといてよ いいから』
 『あらやだ 寸志は受け取らない規則ですのに 悪いですね』
  浴衣合わせには協力しないが 机の茶菓子の敷き紙に現金を包む
 仲居のミサエ君に手渡して 灰皿を引き寄せタバコを吸う
 『お客さんは営業の方ですか お茶をどうぞ この季節には仕事の
 方ばかりですもの 夜は女の子を呼びましょうか』
 『若い娘いないだろ それよりさ ああっと まあいいや』
  この町の違う宿で 以前に酷い目に遭ったことがある 自業自得
 ながら懲りたのも確か そもそも最近はその気もない
 『ではごゆっくり そうそう 風呂場は10時に火を落とします』
 『10時ね OK 基本的にほっといてくれればいいから』
  仲居のミサエ君は慇懃に頭を下げて退室 別に人恋しいわけでも
 ないから 宿の仲居と馴れ合うつもりもない 怠惰に過ごすための
 時空間だからして 風呂も食事も特に興味はない
  ゴロリと横になって座布団を枕にする 窓の外からは車のエンジ
 ン音 どこかから話し声 タバコの灰が顎に落ち 崩さぬように起
 き上がる それとドアが開くのが同時だった
 『失礼いたします いらっしゃいませ 椿屋の女将でございます』
 『ああ そりゃどうも 女将さん直々のご挨拶ですか』
  大抵なら夕食時だろうに チェックイン早々に女将の挨拶 丁寧
 なのは理解できるが できれば放置してもらえないものか ちなみ
 に宿は椿屋旅館 形態としてはビジネスホテルの亜種 程度だ
 『本日は当椿屋へお越しくださいまして まことにありがとうござ
 います 真心を込めたおもてなしをさせていただきます どうぞご
 ゆっくりお寛ぎくださいませ お客様はなにか営業の方ですか』
 『いいや ただの旅行者だけど この季節に観光客ってのは珍しい
 わけ さっきの仲居さんも珍しがってたな 仕事でもしようか』
  タバコを灰皿に揉み消す 馴れ合うつもりはなくとも相手は宿の
 責任者 無下にも対応できず愛想笑い 女将は大年増だがそれなり
 の美人である だからどうだってことでもないが とにかくか
 『ご冗談 そうですね 特に名所もございませんし 温泉でも湧け
 ば別でしょうけど でも意外と冬場はお客様がいらっしゃいます』
 『ふうん 雪景色に荒波かな 通ぶる奴も多かりし なんて』
  9月の上旬 秋なら観光シーズンだろうが 見るべきもののない
 土地にシーズンは関係ない 一泊海水旅行のメッカである限り 夏
 場以外の盛り上がりは望めない 当地はそれ故の選択である
 『お恥ずかしい話ですが この数日間というもの お客様以外の予
 約はお聞きしておりませんのよ 椿屋にお客様ただおひとり』
 『ははん 貸切りか そりゃいいや わかった 寛ぐよ』
  女将は膝に手を乗せ微笑んでいる たまの客が嬉しかろうが そ
 んなことは知ったことじゃない 他の宿泊客がいないのは歓迎する
 しかし女将がつきっきりでは意味がない タバコに火を点ける
 『それではごゆっくり そう お風呂の方は』
 『10時でしょ 夕食は6時 さっきも聞いた ありがとう』
  風呂と飯しかないのだろう 女将は苦笑いして退室した 廊下の
 軋む音を聞きながら横になる 座布団を枕に天井を眺める 遠くか
 ら聞こえる子供達の声 平日のこの時間 そろそろ小学生の下校時
 間なのか そしてどこからか話し声 階下か窓の外か判別できない
  それらをぼんやり聞きながら煙を吐く 8帖程度のくすんだ部屋
 に なにをするでもなく寝転がっている こんな時間が人生には不
 可欠と考える なにもせずゴロゴロと あと2日 たいした贅沢だ
 『そうじゃない ばかやろう 何遍言えばわかるんだ』
  話し声が俄に慌ただしくなる 誰かがどこかで言い争っているら
 しい 聞くとはなしに聞いていると どうやら男女 女性の甲高い
 叫び声は意味不明 聞き取れるのは低く響く男性の声
 『もういい もう聞き飽きた 勝手にしろ なにをするっ』
  男性の声に続いて女性のすすり泣く声 他の宿泊客はいないと聞
 いていたから もしかすれば先程の女将か そうでなければ仲居か
 もしれない 相手は下男か主人だろう 争うのは勝手だが 客に聞
 こえないように願いたいものだ それほど構いもしないのだが
 『悪かった 俺が悪かった おいこら まて なにをするんだっ』
  争う声を聞きながら目を閉じる どうやら女性が逆上したらしい
 呪詛のような女性の声 狼狽える男性の声になにかの割れる音 雰
 囲気としては夫婦喧嘩か 聞いているこちらも急に興味が失せてし
 まう 起き上がらずに灰皿を引き寄せ タバコを揉み消して生欠伸
 こうしてこのまま寝てしまうのもいいか そう考え力を抜く
 『やめろって言ってるのが あっ おい どうしたんだ おいっ』

  徐々に薄れてゆく意識 適度な気温に睡魔が襲う 夕食の時間が
 どうしたとか なにかあれば起こしに来るだろう 無理に覚醒する
 必要のない時間 こんな贅沢な時間も珍しい 貴重な休暇だ
  完全に眠りに就く寸前 言い争う声に妙な変化 なにか不測の事
 態が発生したのか ただならぬ雰囲気は遠く遠く なにがどうあれ
 他人事 そしていつしか完全に眠ってしまった

  何度目の呼び声か 気が付けば部屋の外から女性の声 これは確
 か仲居の声 そろそろ夕食なのだろうと起き上がった 時計を見れ
 ば午後5時30分 夕食までには時間がある
  なにか用事でもあるのだろうか どうやら客を放置してくれない
 宿らしい 困ったものだなと頭を掻いた その時である







             》 しびる 《
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(のりこ)>あー この時期でしたか椿屋綺譚は どうします? て
      か どうするつもりなんですかとお尋ねしたいですね
(しびる)>どうするかねえ 途中から予定外の拡げ方しちまってさ
      いろいろ考えてるウチに放置プレイ どうするかねえ
(のりこ)>とにかく最後まで再掲載して 続きは新作でとにかく終
      わらせるってのはどうですか 2本くらいの描き足しで
(しびる)>10年前の作品だろ 繋がるかね
(のりこ)>それを繋げるのがテクニックじゃないですか
(しびる)>言うのは簡単だよな
posted by 篠原しびる at 23:43| シンガポール ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 連作系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

すきま てれびだいすき 34

(しびる)>ういーっす さて夏も終わりか 冬ごもりの準備だな
(のりこ)>あ おはようございます もう冬の準備っすか(笑)
(しびる)>『鳥人間』を見たらば夏の終わり 気が付きゃ30回だ
      ってさ 初回から全部見てるとか言うとトシがばれるか
(のりこ)>私は15回くらいから見てます あれは4年生くらいで
      したか 10歳ですから 足すと25歳 うひゃあ
(しびる)>ずーっとお前いるじゃん 知る限りずーっといるじゃん
(のりこ)>あはは まあ しびさんと私は一心同体少女隊ですし
(しびる)>少女隊って名前こそある世代から認知率バカ下がりだろ
      って 諸刃の話題はいいんだ 鳥人間な
(のりこ)>今回から新ルールですよね プロペラ部門にタイムトラ
      イアル部門が新設 やっぱあれですか ディスタンス部
      門が限界にきてるからですかね 36キロなんてまあ
(しびる)>だわな そもそも漕いで飛んでる飛行機が1時間以上も
      既にただの体力勝負じゃん? 飛距離だって対岸に25
      キロが限界 折り返しても36キロで終わりだしな
(のりこ)>んじゃこれからは機能とか操作性とか システム方向に
      精鋭化してゆくんですかね もうちょっと仕組みを考え
      ないとダメなような気もしますけど
(しびる)>100Mから1キロへの折り返しタイムトライアル そ
      れだって今回の成功はエアセプの中山のオッサンだけじ
      ゃん これでゆるいっちゃ ちょい厳しくないか?
(のりこ)>んー 初回ですからね 他のチームが今回の大会を見て
      研究すれば すぐに手狭な部門になると思いますよ
(しびる)>辛口だねえ しかしまあ一理あるかな 長距離飛行は本
      命だとしても パイロットの体力だけが頼みの部門は基
      本的に限界があるわな そうか 2キロ100だけ飛べ
      ばいいわけだし もうちょい攻撃的な設計をするチーム
      も現われるか そうなればたしかにルールはゆるいな
(のりこ)>でしょ 今回の中山さんのとこだって 伝説の対岸マシ
      ンを流用しただけですし 滑空のフォーミュラクラスの
      機体で それもタンデム仕様のプロペラなんてことにな
      ると かなりすごいことになりますよ
(しびる)>タンデムか タンデムは馬力はあるけど機体の強度に問
      題があるわな 重くすれば長距離はキツイし なら硬め
      に仕上げて短距離タイムトライアルに参戦か なるほど
      のりこにしては冴えた意見を言うじゃん ほほう
(のりこ)>褒められました だとすると ただの折り返しなんてデ
      ィスタンス部門の延長で考えないで もう少し高度とか
      そゆのをクリアする仕組みにしないと 3回もやってキ
      ツキツじゃ継続性がないと思うんですよ
(しびる)>ふむふむ 高度はおもしろいな 高く飛ぶって発想はな
      いもんな 従来のイメージじゃ対置効果を狙って水面1
      Mで飛ぶことばかり考えてるし 上は無限か
(のりこ)>そゆことです まあ危険性とかも加味しなきゃなんない
      ですけどね 50Mから落下すると水面だってコンクリ
      ートと同じらしいですから そこは考えるとして
(しびる)>ふむ んじゃそのへんは運営委員会に任せることにしよ
      う で 本命のプロペラディスタンス部門だけど
(のりこ)>日大はなんですかあれ 設計ミスでしょうか
(しびる)>かもな Vだけ見てるとパイロットの調整ミスかなとか
      思ったけど つまり揚力が足りないんだろ だからパイ
      ロットがあんなに早く消耗したのな
(のりこ)>可変装置とか搭載してたとか よくわからないですけど
(しびる)>あれだろ プロペラの角度を調整するようになってたん
      だろうけど ずばり空を切ってるからさ タイヤで坂道
      を走るのとは根本が違うと思うんだわ 違うか?
(のりこ)>さあ? とにかく効果がなかったことは確かですよね
(しびる)>だわな 結局は東北大がキッチリ距離を稼いで問題なく
      優勝 それでも折り返し完遂はキツイのかね
(のりこ)>やっぱりほら体力勝負ですし
(しびる)>んー この部門は36キロ飛んで終了するのかね なん
      か どうにかならんものか ちょい寂しいな
(のりこ)>昔はプロペラなんてコミカル部門みたいな扱いだったの
      に それがもう体力さえ続けば無限に飛べる機体にまで
      なっちゃって 30年の科学の進歩ですよ これは
(しびる)>喜ばしいことなんだろうけど 最初の頃のさ すげー1
      キロも飛んじゃったよ とか そゆのがなくなっちゃう
      と見てる意味もないような気もするわな
(のりこ)>ホントしびさんは鳥人間コンテストが好きですね
(しびる)>うん なんだかんだって毎年見てるもんな
(のりこ)>夏の風物詩ですか
(しびる)>そんな感じかな
posted by 篠原しびる at 01:06| シンガポール ☁| Comment(1) | TrackBack(0) | すきま てれびだいすき | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年09月22日

すきま かんじだいすき 09

(しびる)>ういーっす 漢字枠やるぞい
(のりこ)>あ おはようございます って いやはや
(しびる)>ついにきたかって感じだわな
(のりこ)>ですね とゆーことで てれってれってー マコトくん
      没シュートです 昇級なしの4級です 停滞してます
(しびる)>そもそもさあ 7月ってのは競書大会があってさ 採点
      というか審査というか そゆのが若干甘いってウワサな
      のな その翌月だからもしやとは思ってたんだ
(のりこ)>でも実際 停滞するとちょっとショックですよね 停滞
      でお馴染のKくんの気持ちがわかるような気がしますよ
(しびる)>だわな んでもこれであたりまえの展開なんだろうさ
(のりこ)>あら けっこう達観されてる様子で 気にしませんか?
(しびる)>いや すげー気になる ってことで今回は漢字の部を提
      出してからまだ自主トレで鍛錬した さらには くらし
      の部をちゃっちゃと切り上げて漢字を再チャレンジ
(のりこ)>やたら気合いが入ってますねえ
(しびる)>そりゃとうぜん 特に今月の課題『生涯学習』はやたら
      むつかしい構成だしな 生の2・4・5画の配置 涯の
      サンズイと中の土土とか 学の冠に 習の羽 どれもこ
      れもいままでにない難しさ これは気合いを入れていか
      ないと4級足踏みが延々続くぜ? だからー
(のりこ)>それはいいんですけど 8月の課題の講評とか片してお
      かないと 9月分は10月にやりましょう
(しびる)>それもそうだな んじゃま8月の課題だけど なにこの
      サンズイ攻勢は? 3文字サンズイだぜ ったく
(のりこ)>あーでもサンズイは苦手じゃないですし 結局は渓の1
      0画が問題なだけで あとは無難に収まってません?
(しびる)>無難な 2個丸なしじゃん せめてこれで2個丸がふた
      つあるか 修正なしの2個丸1個じゃねーとさ
(のりこ)>んー カタチはそこそこまとまってきましたけど やっ
      ぱし冷静に他人の目で見ると いろんなところがダメダ
      メですか うまくいかないものですねえ
(しびる)>基本かな 基本ができてないから複雑な応用に追い付か
      なくなってきたんだな 付け焼き刃じゃダメなんだ
(のりこ)>そうなんでしょうけどね 基本は練習してるじゃないで
      すか 毎週の鍛錬そのものが応用であり基本練習なわけ
      でしょ 習字ってそゆものだと解釈してますけど
(しびる)>まま全体はそうなんだろうけど でもさ 例えば教本に
      はもっとパーツ的な学習方法も掲載されてるわけじゃん
(のりこ)>R子先生の進め方に疑問があるんですか?
(しびる)>そんなこと言ってねーだろ 教室は教室 なんて言うの
      かな 自宅での予習と復習か そんな感じのものが必要
      なんじゃないかと思う
(のりこ)>お忙しいでしょうに?
(しびる)>うん そりゃもう死ぬんじゃないかと思うくらい忙しい
      ときもある 筆を握ってる時間があるなら睡眠に充てる
      のが正しいオトナの暮らし方だとも思う でもさ この
      先に抜けてゆこうと思うならあたりまえのことじゃダメ
      なんじゃないか 自主練習の時間を確保しないと
(のりこ)>まあ私的にはそれほど問題ないことですけどね しびさ
      んはあんましムチャしない方がいいと思いますよ ゆっ
      くりやればゆっくり上達しますって ゆるゆるとー
(しびる)>使う金も時間も最小限に抑える それがなにやるときも
      基本だろ だらだら生きるほどヒマじゃないんだわ
(のりこ)>なんでそう追い込みますかね んじゃま週に1回程度自
      主練習の時間を設けましょうか 火曜日の夜くらい?
(しびる)>だわな いろいろ考えてもその時間しかねーか
(のりこ)>ういっす んじゃま以降の活動方針も決まったところで
      締めてしまいます えーっと 画像は8月の課題『清流
      渓谷』です 今回は昇級なしの4級です 残念!
kanji006.jpg
posted by 篠原しびる at 00:33| シンガポール ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | すきま かんじだいすき | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年09月20日

編集会議 122

(しびる)>ういーっす 夜は寒いよなあ 20度切ってるし
(のりこ)>あ おはようございます なんかごぶさたさまでしたけ
      ど ちゃんと暮らしてましたか? コーヒーっす
(しびる)>おう ちゃんと暮らすってなんだよ お前はお母さんか
(のりこ)>だって 忙しいと寝なかったり食べなかったり食べ過ぎ
      たり とにかくロクでもないことになるじゃないですか
(しびる)>オトナのすることつかまえてロクなもんじゃねーっての
      は意見だなおい でもまあ たしかにムチャクチャだわ
(のりこ)>でしょ んでもこうやって来所されてるってことは一段
      落ですか しびさんは手の届くところにおいとかないと
(しびる)>えらい言われようだわ とにかくやたらやること溜め込
      んでるからな ちょっとでも片さないとさ
(のりこ)>やることやりたいこと ふふん お忙しいことで
(しびる)>笑うなよ こうでもしなきゃ ま いいけど
(のりこ)>んじゃきょうはひさしぶりなのでなにか食べ物を作りま
      しょうか 細長い物なら うどんかな 牛肉入れて
(しびる)>いいなあ 肉うどんか UDONブームはとにかく
(のりこ)>てきとうにランクは上ですしね うどんをいまさら持ち
      上げる必要もなかろうと思いますけど まあいいのかな
(しびる)>ウチの事務所ほどには食事内ランキングは上じゃねーだ
      ろ マジランクで中くらいじゃないのかな うどん
(のりこ)>ですかね これ特売でそれも日限切りの8割引だったん
      ですよ あー牛肉ですけどね ニオイも変じゃないし
(しびる)>牛肉は大丈夫 って そういや前に大騒ぎしてブログの
      サイドに載せてたそうめんの記事 お詫び記事掲載か
(のりこ)>あれ あはは まあ基本的に大丈夫なんですけどね や
      っぱ万が一のことも考えて情報発信をしないと なにか
      あってからじゃ遅いですし ってことで日和ました
(しびる)>根性ねーな ちったああやふやなくらいの情報でもガン
      ガン押してゆかなきゃ それじゃ天下取れんわな
(のりこ)>でもですねえ 発ガン性があるとかってのは やっぱマ
      ズイでしょ 死人でもでた日にはお詫び会見じゃすみま
      せんよ そりゃ責任はないでしょうけど 道義的に
(しびる)>毒素だして急性中毒ってことじゃないわな 遠い将来に
      ガンが発症したって それが10年前にネットでそその
      かされて食ったカビカビそうめんが原因なんて誰が考え
      る? この発ガン性物質にどっぷりの世界でよう
(のりこ)>それもそうですけどね うどんっす これ七味っす
(しびる)>おうおう ネギはちゃんと九条ネギ あの無粋な白ネギ
      なんざ事務所で使うなよ 肉々 じるじるじる うめー
(のりこ)>ホント美味しそうに食べますよね 私も食べよう
(しびる)>とにかくさ どうせみんななにかを見切りながら生きて
      るんだ その裏付けが欲しいだけなのな 少々のことな
      ら大丈夫って断言してやれよ そゆのがキモなのな
(のりこ)>んじゃ10%怪しいときに大丈夫って言えますか
(しびる)>パーセンテージじゃなくてさ ほぼ大丈夫なら よし大
      丈夫だって断言するのが上に立つ人間の仕事だってこと
      もあるんだぞ かなりの勇気と 責任があるわな
(のりこ)>そんなものですかね 私には縁のない話ですが
(しびる)>だからダメなのな まあいいや のりことこういう話を
      しても仕方がねーし よし んじゃ締めるか
(のりこ)>あーはいはい 私まだ食べてるのに
(しびる)>食ってればいいじゃん 次行くぞ次
(のりこ)>はいはい 忙しいなあ
posted by 篠原しびる at 23:57| シンガポール ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 編集会議 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年09月19日

連作22 涼連作09 指圧のココロ

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 種別 連作系第22期 涼連作09
 題名 『 指圧のココロ 』
 初出 ニフティサーブ/FJAMEA/18番会議室
    1997年01月30日00時45分
 注釈 行頭スペース+30W
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SUBJ:【涼連作】09 指圧のココロ

 Sibi-Tem V.4.1

 飄々と涼しげな でも無責任じゃなくて 涼連作 #09(B群)
 



          『 指圧のココロ 』


                        作:しびる





  誰にも謝らないで暮らすつもりなら 妙なプライドを持たないこ
 とだ 上っ面の陳謝ならとにかく 自責の念は自負によるもの 結
 局自分を責め立てるのは自分自身 なんてこんなに情けないんだろ
 う それがごめんなさいの正体だと思う 突き詰めればね
  時間は逆走しない 補填はできても取り返しはつかない お金を
 払おうが死んでお詫びしようが どんな些細なことだって償うこと
 はできやしない 人間は罪を犯さずに生きてゆけない だから自分
 が自分を押し潰す 生き残るためにはプライドを捨て去るべきだ

 『あらん 鍵が掛かってないから物騒だと思えば なにしてるの』
 『うん なんか頭がごちゃごちゃしちゃって なんでもない』
  仕事から帰ってそのまま いつの間にか陽が落ちて 物音に続い
 て煌めく閃光 部屋の照明だと判断するのに約1秒 少し眩しい
 『またなんか考え込んでたんでしょ なんか知らないけど気にしな
 い気にしない エアコン入れるわよ この部屋は蒸し暑いわ』
 『もう大丈夫 少し鬱気味なだけだから 今 何時かな』
  特に大失敗があったわけでなく なんとなくままならないことば
 かりの毎日に疲れてしまった そんなふうに対処する人なのだ自分
 はと そう考えれば片せることばかりなのに しかしそれでも
 『午後7時ちょい 夜の帳が街の輝きを際立たせる時間 なんて』
 『なんか約束してたっけ なつみ あたしってばすっぽかしちゃっ
 たのかな ごめんなさい その そんな気分じゃなかったから』
 『別に ただ遊びに来たのよん すぐに謝るなって』
  喋っている相手は親友のなつみ 卓袱台の前に座り込みテレビを
 つけて眺めている 謝るなと言われて苦笑 確かにナーバスすぎる
 『そっか ならいいけれど うんしょっ コーヒーでも入れるね』
 『いやいや 飲むのなら酒にしよう 少し話がある』
  なつみとはいつからの付き合いか 高校が同じでそれ以来 大学
 や職場は別々で それでもずっと親友だ 頻繁に交流があるときや
 数カ月間電話もしないこともある 親友だからこその怠惰な関係
 『はあ 悪いけど相談に乗れるような精神状態じゃないな』
 『バカね 反対よ なにか悩んでるんでしょ 聞いてあげるから喋
 っちゃいなさい お金のこと以外なら協力しようじゃない』
  それでもなつみはテレビを眺めたままだ 冗談めかしているのは
 優しいから あたしが少し困惑するのは原因が特定できないから
 『いいよ 意味なんてないもの なんとなく それだけ 急に寂し
 くなっただけだから なつみが来てくれて 少し治ったかな』
 『ふうん そんなふうには見えなかったけど なんでもいいか』
  わざと言葉を区切って話す なつみが飲みたいのなら飲ませてあ
 げよう 冷蔵庫に出来合いカクテルの買い置きがあった それ以外
 は買ってこなくちゃいけない 出掛けるのは少し億劫に思う
 『ゆきはさ 気が小さいよね やることは大胆なのに ま ゆきの
 そんなところが魅力と言えば やっぱ魅力じゃないか ふむふむ』
 『もういい 色々思いだすから辞めよう あたしは2時間ほど気を
 失う 勝手にくつろいでててね ごめんなさい あああああ』
  声にしてみる ベッドに倒れ込んで頭がグルグル 少しのことで
 行き来する やってから後悔するのは悪い癖 その時には最善だと
 考えて 反芻しては悶え苦しむ きっと長生きできない
 『あああって なにしてんだか いいかね ゆき ちょっと上に乗
 るけど なんかいやらしいかな 目的を忘れそうな気がする』
 『重いってば 死んでるから辞めて ああ 消えてしまいたい』
  なつみはのそのそ立ち上がり そのままあたしに乗りかかる そ
 れでも手にはテレビのリモコンを握り 消えてしまいたいは死んで
 しまいたいと少し違う できれば知り合いのいないところでやり直
 したい気持ち なつみの目がスッと細くなる なにを考えてか
 『犯罪を犯したわけじゃないでしょうに ゆきのやることだから悪
 気もないだろうし ならいいじゃない 恥ずかしいだけでしょ』
 『御明察 でも実は 恥ずかしいのかどうかもわからない なにか
 こう もっと上手にできなかったのかと そう思うだけね』
  お腹に乗り掛かられると苦しい 無理して体を反転させる 腰に
 掛かる体重は心地良く なつみの言葉も少しの癒し 問題の簡素化
 にはヒーリング効果が伴う しかし裏返しが効くかは別問題
 『なつみにはなんでもわかるんだね あたしはダメ 他人の気持ち
 なんて理解できない ましてや配慮なんてできないし きゅう』
 『できてる方なんじゃないの 世間なんか無神経な奴等ばかりだと
 思うけどね ゆきのプライドがもっと高いなら仕方ないけどさ』
  よしんば親友だとしても どうしてここまで推測できるのか プ
 ライドって単語がでてくれば観念するほかない
 『やっぱり高いのかな 普段は努めて下げてるのに できる限りの
 低姿勢 配慮はダメでも譲歩はしてるつもり なのにねええ』
 『ははん 努力してプライドを下げるってのはなんだかさ ゆきは
 慇懃無礼って言葉を知らないな そっから治すか ここかっ』
  なつみに指圧されて呻き声 その辺りのバランスが年々難しくな
 ってくる 強気な自分と弱気な自分 どちらかに偏ればそれなりに
 楽になるだろう 最適なのは使い分け 失敗すれば奈落の底だ
 『いてててて 痛いけど効くかなっ やっぱり痛い くうううっ』
 『痛ければいいってものでもない カイロで背骨を矯正するのは治
 療だけどさ そもそも姿勢が悪いのが原因 おまけに運動不足』
  まことそのとおり なにもかも百も承知 背中をぐいぐい押され
 てぐうの音もでず 運動不足の場当たり主義 姿勢の悪さは致命的
 だと自覚してはいる 確かに解されるのは今だけだ
 『はあああ やっぱりダメ人間 なんか涙がでてきた』
 『泣くほど痛いのは それだけ怠けてる証拠 がんばんなさいっ』

  背中をぽんと叩かれて なつみは再び卓袱台へ テレビを眺めて
 馬鹿笑いしている あたしはそのまま突っ伏して 静かに呼吸を整
 える ただなんとなく時間が過ぎる
  ごめんなさい その正体が自責だなんて なつみに対しては少し
 違うかな それとも解れた体と同じ また凝り固まってしまうのか
 どうだかわからないけれど 今はほんの少し 気分が楽になった








             》 しびる 《
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(のりこ)>こゆのも多いですよね なんかテンパってる女の子の部
      屋に女の子がやってくる設定 だいたいそゆときは仕事
      の関係でちょいウツになってて こゆの好きですか?
(しびる)>いや スキのキライのって話じゃないんだけど 男ふた
      りじゃうっとおしいし 男女にすると まあ男女の設定
      も多いけどな 男女はやっぱし性的なことになるじゃん
(のりこ)>性的 むう セクシャルな展開ですね それはまた意味
      が変わってきますか んじゃま設定はいいんですけども
      今回のこれ 途中から微妙にポイントがずれてません?
(しびる)>ずれてるか? なんも意識してねーけど?
(のりこ)>細かく検証するつもりはないんですけど ゆきちゃんの
      上になつみちゃんが乗っかったあたりから 最後また戻
      ってるようにも読めますけどね 自己内の話が対他の話
      に変化してません? ちょっと気になります
(しびる)>それって同じことじゃねーの? おかしいか?
(のりこ)>しびさんがそれでいいと思われるならそれでいいです
(しびる)>んじゃま それでいいと思ってるってことで
(のりこ)>んー まあいいですか
posted by 篠原しびる at 01:46| シンガポール ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 連作系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年09月15日

連作22 涼連作08 えのころぐさ

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 種別 連作系第22期 涼連作08
 題名 『 えのころぐさ 』
 初出 ニフティサーブ/FJAMEA/18番会議室
    1997年01月26日01時30分
 注釈 行頭スペース+30W
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SUBJ:【涼連作】08 えのころぐさ

 Sibi-Tem V.4.1

 飄々と涼しげな でも無責任じゃなくて 涼連作 #08(A群)
 



          『 えのころぐさ 』


                        作:しびる





  俺の命令ならなんでも聞くのだ たぶん心が通い合っているから
 だと思う 俺がピンチなら助けてくれるだろうし あいつがピンチ
 なら助けてやる 友達なら当たり前だと思う 友情パワーだな 
  でも偉いのは俺の方で だから命令するのは俺の方だ あいつは
 ちゃんと喋れないから それは仕方がないと思う それにたぶん喋
 れると ママがテレビ局に売り飛ばしてしまうとと思う 冗談じゃ
 なくてママはそんな人だ だから喋れなくて幸せなんだ

 『来いってば なにしてんだよ 俺が来いって言えば来るんだぞ』
 『なにをしているのですか せいや君 みんな待ってますよ』
  お爺ちゃんの家の庭 ウチの倍ぐらいのでっかい家だから 庭の
 広さも倍くらいある お爺ちゃんは金持ちの人だから こんなにで
 っかい家に住めるのだと思っていた でもちょっと違うらしい
 『マイケルが命令を聞かない おねえちゃん なんかきんちょーし
 てるらしいぞ 初めての家には入んないのかな 動けよっ』
 『この子は臆病さんですからねえ きっと違う臭いがするからじゃ
 ないですか 慣れるまで庭にいればいいですよ』
  眼鏡の奥でおねえちゃんの目が笑っている 俺とマイケルは一緒
 にいるから おねえちゃんの話では 俺も庭にいなくちゃいけない
 ってことになる でもおねえちゃんがそんなことを言うはずない
 『どうにかなんないか おねえちゃん マイケルも一緒でいいって
 お婆ちゃんが言ってたのに 俺 どうしたらいいかわかんねーや』
 『せいや君についてこないのなら どうしましょうね なにかこの
 子の好きな物で誘い込むとか 食べ物なんかもいいですね』
  おねえちゃんは縁側にしゃがみこんで 右側のほっぺたに手を当
 てる おねえちゃんは質問してもすぐに答が浮かぶのだ 俺なんか
 そんなことは思い付かなかった おねえちゃんは凄いと思う
 『ここに来る前に食べてたぞ 食べのもはいらないと思うな』
 『おうおうちびっこども 揃ってなんの相談だ なにか壊したのな
 らお仕置きだぞ ここにあるのは高いものばかりだからな』
 『そんなことしませんよ せいや君は隠しているかもしれません』
  おねえちゃんの後ろにお爺ちゃんが現れた お爺ちゃんはお爺ち
 ゃんだけど俺の親友でもある それはお爺ちゃんが決めたのだ マ
 マ達には内緒にしておけって命令 お爺ちゃんは偉いから命令する
 『せいやは悪い奴だからな お婆ちゃんの鉢植えはせいやの小遣い
 の1億2千万年分だ 死ぬまで働かなくちゃならん 泣くか』
 『壊してないから泣かない でも 壊してても泣かないけどな』
  そんな脅しで泣いたりするもんか 俺とお爺ちゃんが冗談で笑っ
 ているときは おねえちゃんは楽しそうだけど黙っている おねえ
 ちゃんはそんなふうな人なのだ それよりもマイケルの問題だ
 『それよりもお爺ちゃん マイケルが動かない どうすればいい』
 『臆病なんですよ なにも怖くないのに 少し失礼ですね』
 『わんこはせいやに似てるか せいやも赤ん坊のときには人見知り
 で泣いたからな いやあれは あやみか あいかかもしれん』
  あやみはおねえちゃんだからいいとしても あいかはママの名前
 だ お爺ちゃんはなんでもごちゃ混ぜ たまに本当にわからなくな
 ったりするらしい ママがパパと話していたのを聞いたことがある
 『誰でもいいぞ それよりお爺ちゃん なんかいい方法はないか』
 『そうだな わんこに効くかしれんが せいやの後ろに生えている
 だろうに そのえのころぐさを使ってみろ 本当は猫用だがな』
 『ああ なるほど えのころぐさ 別名猫じゃらしですね』
  急いで後ろを見る お爺ちゃんが言っているのはどれのことだろ
 う 庭は広くていろんなものが生えている 端の方は塀が見えない
 くらいに木が生えていて 花とかはお婆ちゃんの趣味らしい
 『おねえちゃんは知っているのか にゃんころ草ってどれだ にゃ
 んころなのにマイケルが動くのかな わんころじゃないよな』
 『えのころぐさですよ すぐ後ろの先にふさふさの付いた そうそ
 うそれですね さて効きますかねえ とにかくやってみましょう』
  おねえちゃんはゆっくり喋っているけれど でも少し急いでいる
 のは俺にはわかる みんなが待っているって話だから きっとこう
 しているのは良くないことなのだろう わかっているけれどマイケ
 ルが動かないのだ だから急いでにゃんころ草を引き抜く
 『これをどうするんだ 食べさせるのかな 食べないと思うな』
 『わんこの目の前で振ってみろ じゃれれば成功だな』
  マイケルの鼻の先で振ってみる マイケルは少し興味があったみ
 たいだけど なんか動くような感じでもない それを見ておねえち
 ゃんが立ち上がった お爺ちゃんはタバコに火を点けた
 『みんなに話してきますね 待ってもらうか 先に始めてもらって
 もいいかもしれません ちょっと失礼 どうしたものでしょう』
 『どうでもいいような会だ ちびっこが気にしなくてもいいぞ』
  さいかおねえちゃんはママの妹だけどおねえちゃんだ そのさい
 かおねえちゃんがお爺ちゃんの家に帰ってきたのだ さいかおねえ
 ちゃんは心臓の病気で入院して 元気になるまでここで暮らすらし
 い 今日は退院祝と引っ越し祝のパーティーなのだ
 『マイケルも仲間に入れてやりたい 仲間外れはいけないと思う』
 『せいやは良い事を言うな その気持ちは大事だぞ 友達は大切に
 しろ 一匹狼なんてのは尻の青い奴の言うことだ わかるか』
  お爺ちゃんは一匹狼だったって 前にパパに聞いたのを思いだし
 た ものすごい大きな会社を創った偉い人だって だからこんなで
 っかい家に住んでいる さいかおねえちゃんと旦那さんは少し違う
 『なんとなくわかる マイケルが行かないなら俺も行かない それ
 でいいのか お爺ちゃん でも おねえちゃんは困るかな』
 『そんなことは気にするな せいやが自分で決めろ それでいい』

  お爺ちゃんは俺の手からにゃんころ草を受け取る そしてそれを
 ふらふら振りながら話している お爺ちゃんはパパよりも話しやす
 い パパともなんでも話すけれど お爺ちゃんの話し方はなんだか
 かっこよく聞こえる 意味はよくわからないけど
  それにしてもマイケルは動かない もしかしたらマイケルは怒っ
 ているのか なにを怒っているのか知らないけれど 喋らないから
 わからないのだ でも喋るとママがテレビに売り飛ばしてしまうか
 もしれない こんな時はどうしたらいいのだろう






             》 しびる 《
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(のりこ)>もでらーとです 1人称はせいやくんですね マイケル
      とかあやみちゃんとかそーちゃん氏とか 登場してるメ
      ンバー以外が話のキモですね さいかちゃんとか
(しびる)>だわな イヌの話は捨てネームとか言うと言いすぎだけ
      ど さいかを実家に帰す経緯は 当事者でやるとどうし
      ても生臭くなるじゃん ならいっそ最縁部で四方山話に
      した方がおもしろかろうと って感じの企画だったかな
(のりこ)>しかしまあよくまとまりましたよね 伯父さん夫婦の方
      でもこうなった以上は責任を取ろうってことになるでし
      ょうし 黒崎くんもすごく抵抗があるでしょ
(しびる)>だろうな でもまあ最善はこれだろ? やっぱ実家だし
      全員がオトナなら簡単にまとまる話だとも思うけどな
(のりこ)>まあ皆さんオトナなんでしょうけどね さいかちゃんも
      見栄きって家をでて それでこんな帰宅じゃいろいろ思
      うところもあるでしょうに あのさいかちゃんがよくこ
      んなふうに納得したなと思いますよ
(しびる)>さいかもオトナになったってことだろ
(のりこ)>オトナかあ んー
posted by 篠原しびる at 22:36| シンガポール ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 連作系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年09月13日

連作22 涼連作07 あおいそら

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 種別 連作系第22期 涼連作07
 題名 『 あおいそら 』
 初出 ニフティサーブ/FJAMEA/18番会議室
    1997年01月24日00時29分
 注釈 行頭スペース+30W
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SUBJ:【涼連作】07 あおいそら

 Sibi-Tem V.4.1

 飄々と涼しげな でも無責任じゃなくて 涼連作 #07(B群)
 



          『 あおいそら 』


                        作:しびる





  雨が降っても雪が降っても どんより鉛色の厚い雲だって その
 上にはいつでも青空が拡がっている あたりまえだけど雲ひとつな
 くて 透明度を増した空気が なにものにも遮られることなくどこ
 までも 遥か下方の雲を照り返し 青い空は拡がっている
  なにかの折にふと 気持ちだけが上昇する 青白い昼間の月を目
 指して 勢いよく雲間を抜け ほんの数秒で到達する 地球の自転
 に速度を合わせ 視界はすべての方向に 壮快感に若干の不安を混
 ぜて どこまでもどこまでも 青い空はなぜ青いのか

 『さーゆりっ ほら 見えてるかな さゆりってば』
  瞬間に視界が変化する 目の前に明りが明滅する なにかと思え
 ば鼻先に振られる手 その向こうに女性の顔 なにが起きている
 『電池が切れちゃったわけ お腹空いてるなら分けてあげるわよ』
 『はあ いやいや お昼は食べたから なんかぼーっとしてて』
  中庭の噴水の脇でぼんやりしていたらしい 3講目の講義が終わ
 って いや確か途中で抜けてきたと思う 窓の外の天気が良かった
 ので 青い空を見上げているうちにふらふらと よく覚えていない
 『ふうん さゆりは夜遊びが過ぎるのよね 少し自重しなさい』
 『あまり遊んでないけど なんか疲れてるかな なんだろ』
  喋っているのに 相手の名前がすぐに思いだせない 毎日のよう
 に逢って話している仲良し なんだっけ まだぼんやりしている
 『病気じゃないの しゃんとしなさいよ 精神力ね なにごとも』
 『さゆり そうか あたしってば さゆりって名前だったか いつ
 お昼を食べたんだろ こんなに天気が良くって ふあああ』
  空を見上げて生欠伸 周囲には屯する学生達 そろそろ昼休みだ
 ろうか 気怠い空気に噴水の飛沫がそよぐ みんな楽しそうになに
 が楽しいのか 隣りに座る女性の名前 聞いたような名前だった
 『まだボケてるのね 聞いた端から忘れるってのはあるけど 自分
 の名前なんて真ん中じゃないの 真ん中を忘れると重症よね』
 『そうかもしんない ええっと あなたは誰だっけ ごめん』
  冗談にもならない 真顔で質問すれば不気味な喪失感 どこかで
 切断された回線を 間際で眺めているような未視感 風景すべての
 情報が まるで衛星中継のように僅かにずれる そうだ確か
 『い い いずみさん ああっ いずみちゃんじゃないの なに』
 『なにって さゆり いつになく変 ようやく正気に戻ったかな』
  頭の中のモヤ その一部に隙間ができる 垣間見えるのは現実世
 界 同じ英文科のいずみちゃん それを拠り所にどんどん拡がる
 『さっきまで誰と喋ってたのかしら 食べる タクアンのお寿司っ
 て嫌いなのよね いらないなら捨てちゃうけれど どうする』
 『ううん お腹は膨れてるから きっとなにか食べたのかな』
  かなり回復したものの 妙な感覚は拭いきれない ベンチの脇に
 くずかご その中に落下してゆく生協のお寿司弁当 緑色の人造バ
 ランがヒラヒラ 回転しながらタクアン巻 醤油入れの金魚がゆっ
 くりと すべてがスローモーションで見えている なにか変だ
 『寝惚けてるんでしょ それとも危ない薬かな 危ないわよ』
 『くすり くすり くすりってなんだっけ ええっと ああああ』
  またぼやけてくる 言葉の意味が薄れてゆく 見えている 見え
 ているのに遠くなる 意識に力を込めないと どんどん現実味がな
 くなってしまう どこかから笑い声 誰かを呼ぶ声 クラクション
 『こりゃダメだわ さゆり もう帰りなさいよ きっと頭の病気ね
 どろんって目が死んでるわよ 魚みたいな目をしてるもの』
 『なんかぼーっとしちゃって ごめん なんの話だっけ』
  まただ 鼻先に手が振られ 覗き込んでいる女性の顔 見たこと
 のある女性 凄く仲が良くて毎日のように逢っている なのに名前
 が思いだせない たまらなくなって空を見上げる 真っ直ぐに太陽
 の光 光の洪水は徐々に青く染まる 青いモヤ とても青い
 『凄くいい天気 なんか気持ちがいいなって だから教室になんか
 いられないの どこまでも青空が拡がって 綺麗なのよ』
 『ふうん なにかもうメチャクチャねえ 相手してられないわ』
  隣りの女性が立ち上がる それがキッカケになり目を閉じる 周
 囲の喧噪が唸る 奥歯を噛み締めるごとに聞こえなくなる スッと
 肩の力が抜けて項垂れる 座っているのも怪しいくらい しかしあ
 たしも立ち上がっていた 自分の頬が勝手に歪む
 『もう大丈夫 ちょっと疲れていたのよね 4講目は同じでしょ』
 『心配させないでよね 怖いじゃない 人類学は旧館よ』
  視界だけを軸にして あたしの意識は逆立ちをしている 空に向
 かって落ちてゆく 瞬きをすれば引き剥がされて 本当は空の方が
 下だったのだ どうして今まで気付かなかったのだろう 空に向か
 って落下する 勝手に喋る体が繋ぎ止めているだけだ
 『たまにぼーっとしちゃって その時はなにか考えているのに あ
 とになると覚えていないのよね ははん 夜遊びは控えなくちゃ』
 『なら合コンはキャンセルするわけ でもないか さゆりから飲み
 会を取っちゃえば残らないものね 18時集合 時間厳守のこと』
  剥がれる剥がれる もう少しのところでぶら下がって 体が歩く
 たびに剥離の予感 剥がれれば空に向かって落下する 恐怖と安堵
 が交互に沸き上がる 足の届かない深み 真っ暗な部屋
 『でも真剣に さゆり 具合が悪いのなら無理しない方がいいんじ
 ゃないの さすがにさっきはおかしかったわよ 目が死んでた』
 『もう二度と大丈夫な気がするの きっと大丈夫ね なぜか』
  あたしの体が髪をかきあげた 剥がれた 最初はゆっくりと そ
 して徐々に速度をあげて あたしは空に向かって落下する 見上げ
 れば地上 あたしの体が小さくなってゆく
 『ほんとーかしらねえ 頼むわよ 途中で変にならないでね』
 『凄くいい天気 とても清々しいじゃない あれ なにかしら』

  あたしの体と視線が絡んで それが最後の地上物だった すぐに
 地上も見えなくなり 周囲は白いモヤ 突き抜ければ一面の青空が
 拡がる どれくらい落下したのか 青い光に包み込まれて もうな
 にも感じられなくなった なにもかもどうでもいい
  どこまでも拡がる青い空 なぜこんなに青いのか 意識すべてが
 青色で満たされる ただそれだけ なにもかもとても青い







             》 しびる 《
+++++++++++++++++++++++++++++++
(のりこ)>ふうん 青い空が下だとイヤですよね なんかこれは例
      の鏡遊びに繋がりますか 空に落ちるのはわりと一般的
      なイメージですが 実際描いちゃいますかね
(しびる)>まあな でもほらやっつけておかなきゃいけないイメー
      ジだろ 描きもしないでえらそうなことは言えないし
(のりこ)>それもそうですけどね ココロが分離してどこかに行っ
      ちゃうってことってあるんでしょうか 比喩的にはある
      でしょうけど ココロの病気でもなしに
(しびる)>ないこともないんじゃねーの 病的じゃなくてもさ な
      にか急にふっきれるときとか 逆にとんでもなく重いも
      のがやってくるときとか そゆときはなにかがどうにか
      なってるんだろ 増減や分離融合なのかはとにかく
(のりこ)>むうん 分離しちゃった方にも意識ってあるんですかね
      そゆのは分離してどうなっちゃうんだろ
(しびる)>消えてなくなるんだろ 死ぬのと同じだ
(のりこ)>死ぬと意識って消えてなくなるんですか
(しびる)>だろ 死んでまで意識を保ってなきゃいけない方がタイ
      ヘンじゃねーのか? 死んだらもうカンベンしてくれよ
(のりこ)>それはそうなんでしょうけど
posted by 篠原しびる at 23:51| シンガポール ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 連作系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

すきま あにめだいすき 45

(しびる)>ういーっす なんか眠くてさあ カゼかなあ んー
(のりこ)>あ おはようございます それはそれは んじゃまとっ
      ととお帰りになって寝てください あすは休みでしょ?
(しびる)>まあどうにかすりゃ休めるかな 急ぎじゃない仕事を溜
      めてるだけだし こゆときはアニメやコミックスを片さ
      なきゃなあと思って出社したわけ で ビールくれ
(のりこ)>調子悪いなら帰って寝ればいいのに なんだかなあ
(しびる)>いや 調子は悪くないんだわ 経験則で眠気が過剰なと
      きはカゼ気味だって判断できるだけで けっこう快調な
(のりこ)>それはなんですか カゼとかそんなのはテンションやモ
      チベーションに関与しないってことですか 死にますよ
(しびる)>ヤなこと言うなよ 上司が機嫌よく仕事しようってとき
      にさあ ちょいカゼなんざビール飲んで騒げば治るって
(のりこ)>あえて言わしてもらいますけど バカじゃないですか?
      暑いお風呂に入って ぐっすり眠るってのならとにかく
      ビール飲んで騒いで治すカゼなんてありますか
(しびる)>上司つかまえてバカって言うなよバカちんが 体調なん
      ざ気合いでどうにでもなるっての オトナの致命傷はメ
      ンタルな部分にこそある ハートな ここが大丈夫なら
      大丈夫 だから大事にしろ 上司のハートを
(のりこ)>なんですかそれ(とほほ) こんな夜中になにを叫びま
      すかねえ んじゃま上司さまのハートを大事にするって
      方向でやりますけど ビールはダメですよ 熱は?
(しびる)>熱はない まったくの平熱 てか普段より低いくらいな
      発熱しない外科手術を施してあるからさ それは大丈夫
(のりこ)>なにがなにやら まあいいです 眠くなったら途中で寝
      てくださってもかまいませんから てことでコーヒーを
(しびる)>休みの前だからどんどこ飲めると思ったのになあ むー
(のりこ)>ホントはコーヒーもダメなんですけどね ホットミルク
      なんか飲めないでしょ だから文句言わないの
(しびる)>軽くあしらわれてるし まあいいや んじゃなにやるか
      って アニメ枠で立ち上がってるな どれやる?
(のりこ)>ってゆーか しびさんは最近なにをご覧になりました?
(しびる)>んー まあレギュラーものかね 『ホスト部』とか
(のりこ)>いい感じに安定してますよね 新キャラのボサノバくん
      ホスト部はホント 悪人設定がストライクですよ
(しびる)>流して見てるんだけどなあ 笠野田ってレギュラーにな
      るのか? 次回も絡んでくるみたいだけどさ
(のりこ)>やっぱ新撰組はコスプレの基本ですか
(しびる)>そうなんじゃねーの 腐女子の趣味は詳しくないが
(のりこ)>ハルヒちゃんが混じると塚趣味ですけどね
(しびる)>ヅカって あー宝塚か まあなんでもいいや あと続き
      に『無敵看板娘』も見てる あいかわらずの内容だけど
(のりこ)>こっちも安定してますね 今回はお互いのお店のナゾ紹
      介でしたけども 殺伐とした設定の中にも暖かみが?
(しびる)>仕事はちゃんとしろよ 生活の基本なんだからさ みん
      ないい大人じゃん 殴る蹴るのってのはダメだろ
(のりこ)>それを外すとなにも残らないですけどね 前回みたいな
      批評したてらば 今回はエキストラの人たち総動員でし
      たし ちゃんと社会性もあるってことの証明ですよ
(しびる)>んじゃなにお前? あの作品を評価してるわけ?
(のりこ)>ぜーんぜん 見るのも時間のムダです
(しびる)>なんだそりゃ まあいいや あとは『ひぐらし』かな
(のりこ)>バラバラ殺人とか もう慣れちゃいましたね また誰か
      が凶悪な顔して殺人するんだろうなあって
(しびる)>罪滅ぼし編か これがおそらくラストのユニットだろ?
(のりこ)>でしょうね 2クールものでしょうし 10月の改編を
      考えれば ラストが罪滅ぼしってのは予定調和ですし
(しびる)>村中が有毒ガスで全滅ってのはやっちゃってるし 最期
      の清算はどうするね? 何人か逮捕されるだけじゃ締め
      としてはゆるいだろ ここはどかんと核爆発とか
(のりこ)>なんか前ユニットではタタリの実働部隊は存在しないっ
      てことになってたじゃないですか ここはやはりツイン
      ピークス方式で マジの悪霊が現われて大オチですよ
(しびる)>ここまで引っぱって悪霊オチかよ まあ ありものコピ
      ペの作品だし そゆのもアリかな しょーもないけど
(のりこ)>あの刑事さんが犯人ってパターンはなかったでしょ そ
      れを絡めてそうきたか! のオチにかぶせて山から悪霊
      が現われて うわーってことでエンディングですよ
(しびる)>ありそうだな んじゃそれ採用ってことで あとは『ケ
      モノヅメ』か あの喪黒福蔵 あいつ悪人キャラか?
(のりこ)>次男坊くんをそそのかしてますよね しかしまあなんと
      も欲望まみれな作品でしょ うんざりしますよね
(しびる)>そこはまあ別にいいと思うけど とにかくこれはって女
      はみんな食人鬼なのな イヤな世界観だ
(のりこ)>それは設定だから仕方ないでしょうけどね あの山田く
      んって やっぱし最後は食べられちゃったんですよね
(しびる)>そうなんだろ サナ入り指定なのに なに見てるんだろ
(のりこ)>んじゃ辞めればいいじゃないですか
(しびる)>あとあのモビルスーツ 電池を引っこ抜いて動かないの
      な 設計上の盲点とかそんなレベルじゃないだろ
(のりこ)>まあ 電源を切られるとどうこうってのは エヴァ以来
      の伝統ですし そこは基本に忠実ってことで?
(しびる)>かもな あとは『となグラ』とか 前回の水泳大会はお
      約束として 今回の新任教師がライバルってのもお約束
(のりこ)>こっちも基本に忠実ですよね こんなオッパイアニメに
      なんの感想もないですけど まあいいでしょ
(しびる)>こゆのをぼやーっと見てるのもラクでいいじゃん 評価
      がどうこうってレベルじゃねーけど あー『つよきす』
      が始まったな ちゃんと25分遅れか
(のりこ)>最近では野球延長って珍しいですよね 野球人気が落ち
      ちゃって 時間延長しなくなったのはいいことなのかわ
      るいことなのか アニオタさんは喜んでますよね
(しびる)>いいことに決まってるじゃん たまーにU局で延長する
      と逆に慌てるよな 生でチェックする分にゃ関係ないが
(のりこ)>ですね しかし深夜にアニメを持ってくるって同居の仕
      方があったとは ついぞ10年前じゃ考えられなかった
      方法ですよね これはこの国の文化に大影響ですよ
(しびる)>まあな オッパイアニメやパンツアニメやグロアニメが
      普通に地上波で流せるんだもんな こゆものは太くなっ
      たネットの回線で流布してゆくものだと思ってたが
(のりこ)>こんなアニメが流れてるなんて 一般の人はそんなに知
      らないですよ テレビ欄にはナゾの4文字が記されるだ
      け それが若手お笑いさんのバラエティか 売りだし中
      のアイドルグループのおふざけ番組かなんて 録画でも
      して確認しなきゃわかんないですもん
(しびる)>そゆこった 街の端っこに風俗街があるよりも もっと
      簡単にそれでいて完璧な隔絶 よく考えたもんだ
(のりこ)>ですね まあこの国の売り物はアニメやコミックスだっ
      たりするわけですし 基幹産業を支えるって意味でも大
      切なことです って某党の総裁候補の人が言ってました
(しびる)>深夜アニメについては言及してなかっただろうが(笑)
(のりこ)>言ったも同然です(笑)
(しびる)>まあいいけど
posted by 篠原しびる at 02:11| シンガポール ☁| Comment(1) | TrackBack(0) | すきま あにめだいすき | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年09月12日

すきま てれびだいすき 33

(しびる)>ういーっす 涼しいよな もう秋か
(のりこ)>あ おはようございます 秋ですかね 昼間はまだ真夏
      ですけど そういやきょうの空はやたら高くてー
(しびる)>いや 天気の話はいいんだけどさ きのう『松本人志の
      すべらない話5』がやってたな キー局じゃ半年前に流
      してたのに この扱いの低さはどうよ? 問題だろ
(のりこ)>はあ たしか来週だかに『6』が放送されますから そ
      のための在庫調整じゃないですか そんなものですよ
(しびる)>ふむ まあたしかに『4』はちょっとできが悪かったし
      しかし松本はどうもガキのフリートークネタを再利用す
      るよな 今回のサウナネタとか 前回の携帯ネタとか
(のりこ)>フリートーク仕事ばかりの方ですからね なかなかにそ
      のへんは仕方ないんじゃないですか そもそも全仕事を
      押さえる視聴者なんてのは レアの部類に入るでしょう
      し ほら 紳助さんだってそゆこと多いでしょ?
(しびる)>お笑いをチェックしてるヤツなら ままダウンタウンの
      仕事は全部押さえるものだろ? 松本が神様だって感じ
      られない感性じゃ なにも始まらないし意味ないわな
(のりこ)>断言しますねえ でもまあそうかな いまの若手さんと
      いうのはつまりダウンタウンチルドレンですもんね
(しびる)>そゆこった バラエティ番組のバカ騒ぎのフォーマット
      は歴代の大御所が順に作り上げて 基本構造は『ひょう
      きん族』なんだと思うけど 笑いの感性の部分ではダウ
      ンタウン前後にゃ完璧な境界線があると思う
(のりこ)>紳助竜介さんがデビュー当時のダウンタウンを見て解散
      を決めたって逸話は既に神話ですもんね
(しびる)>まああれは多分にリップサービスもあると思うけど 状
      況的にはそうだったんだろうな ってことで今回の『す
      べらない話』だけど やっぱ ほっしゃんとジュニアか
(のりこ)>私はケンコバさんを評価してますけど ほっしゃんさん
      はとにかく ジュニアさんは困ると松本さん話って感じ
      じゃないですか 絡められると笑わなきゃいけないとい
      う空気で あれはいただけないですかね
(しびる)>きついな ジュニアのタクシーネタなんて最高だったじ
      ゃん あとやっぱ河本か 身内ネタの河本 って評価が
      固定する前に流れを変えてきたのはいい感じだし
(のりこ)>徳井さんは初登場ですか なんかちょっと構成が弱い感
      じですよね そもそもちょっとフリートークの弱げな感
      じの人ですから ピースの綾部くんって知ってました?
(しびる)>どこかネタ番組で見たかなあ 今回は背番号ネタと風呂
      のドアネタの2本か 事前の人物評が定まってないと作
      り込みの部分が目立って損だよな 次回はあるかね
(のりこ)>若手くん達もどんどんがんばらないと
(しびる)>まあな あと宮川は安定してるよな けっこう実力があ
      るし ホント言うとちょっと評価してるんだわ
(のりこ)>それに関しては同感ですね 活舌もいいし
(しびる)>ふむ あ『ブラバラ』に浅草キッドがでてるな なんか
      最近ちょい見るけど 番宣かなにかか? なんだっけ?
(のりこ)>えーっと なにかありましたっけ ままレギュラーでそ
      こいらにでててもおかしくないコンビですけどね
(しびる)>だわな ホントなら爆笑の場所には彼らがいてもおかし
      くないというか 実力なら問題なく浅草キッドだろ
(のりこ)>軍団系ですしね でもやっぱしちょっと毒がキツイとい
      うか一般的じゃないというか ややアングラですし
(しびる)>そんなこたあねーだろ 師匠は世界のキタノなのによう
      あんなアングラなオッサンが評価されてるのに
(のりこ)>そう考えると爆笑問題の田中くんの意味って大きいです
      よね 彼が一般化の触媒ってわけでしょ?
(しびる)>なるほどそうか まあいいやそのへんは しかしなんだ
      な この番組のいいかげんに作ってますってスタンスは
      鼻につくよな ちっちゃいテレビじゃ見ずらいだろうし
(のりこ)>画面中に額縁作ってコーナーにちっちゃく出演者とコメ
      ントでしょ 30V以下のテレビじゃ見れないですね
(しびる)>あーそういやきのうの『おしゃれイズム』に満里奈でて
      たな あいつMC降りてゲストになってやんの
(のりこ)>若奥様ですもんねえ ちなみに来週のゲストは翔さまで
      す このところちょっと露出の多い翔さまはなに系だろ
(しびる)>相川翔ってどの番組でも同じだよな なんかDVDあた
      りの告知か? 記憶にないってのは問題なんだろうけど
(のりこ)>映画だったかな んー 隣りの『クイズファクトリー』
      にあびる優ちゃんがでてますね あとケンコバさんに江
      川先生だし あびる優ちゃん謹慎解けたんですね
(しびる)>らしいな この数日やたら見るし そもそもどっちでも
      いいようなもんだけど ベッキーの枠とかが減らなきゃ
      いいのになあと思う がんばれベッキー うらー
(のりこ)>しびさんは好きですもんねえ ベッキーちゃん(笑)
(しびる)>ふむ んじゃベッキー話で落ちたから締めるか
(のりこ)>なにも落ちてないのに(笑) んじゃ終了ということで
posted by 篠原しびる at 00:55| シンガポール ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | すきま てれびだいすき | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年09月11日

連作22 涼連作06 創痍工夫でやってみよう

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 種別 連作系第22期 涼連作06
 題名 『 創痍工夫でやってみよう 』
 初出 ニフティサーブ/FJAMEA/18番会議室
    1997年01月18日02時14分
 注釈 行頭スペース+30W
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SUBJ:【涼連作】06 創痍工夫でやってみよう

 Sibi-Tem V.4.1

 飄々と涼しげな でも無責任じゃなくて 涼連作 #06(B群)
 



       『 創痍工夫でやってみよう 』


                        作:しびる





  自分が不器用なのは知っている なにかこう イライラするほど
 にままならない 器用な人には きっとこのもどかしさは理解でき
 ないと思う 理想のカタチは頭の中にあるのに どうしてもそれを
 再現できないもどかしさ なんて理不尽な でも現実なのだ
  それでもやらなきゃいけないことは仕方がない 家事が単純労働
 だなんて誰の意見だ 洗濯機だけで洗濯はできないし 掃除機だけ
 では掃除は終わらない こんな煩雑な作業に偉そうな名前をつけて
 たいして役に立たない電化製品 なんか話が逸れちゃったかな
  とにかくその惨事は起こったのだ 日常に潜む危険 人生至る所
 に凄惨な蟻 そうじゃないそうじゃない なんでもいいや

 『どうしたんだ なんか顔色が悪いな 気分でも悪いのか』
 『あのね よーちゃん 悪いけどあたし はあ ごめんなさい』
  頭がクラクラして真っ直ぐに歩けない 床が凄く遠くに見えるの
 は きっと意識が遠のき始めているからだ 危ない状態かも
 『あのねあのね はんはん ほらこれ なんかドクドクって』
 『どうして泣く なにがいったい おあっ なんだお前どうした』
  最初に感じたのは背筋を走る悪寒 そしてすぐに鈍痛 遅れてや
 ってきたのは熱い感じ 左手の中指の先が焼けるように痛い 慌て
 て手を引くと既にドクドクと血が流れていた
 『あたしね あのねあのね よーちゃんってば ふええええん』
 『切ったのか あーっとなんだ 根本の方を押さえてろ 絆創膏だ
 な 大丈夫だから泣くんじゃない 泣くな いや そうじゃない』
  よーちゃんの意見で買った食卓 テーブルの中央にコンロが内蔵
 されていて 鉄板焼や鍋物に便利な仕組み しかしその実は掃除の
 難所 特に枠組みは取り外し不可 ステンレスは鋭利な刃物だ
 『テーブルの真ん中の 横にスッと指を動かしたらね スパッて』
 『ああいい 説明を聞くと尻がムズムズする 辞めてくれ』
  心臓がドキドキする 吐き気を催すような不安 よーちゃんに手
 当てしてもらっているのに なぜかかなり遠くから見ているような
 気がする 何十枚も抑え込んだティシュが鮮血に染まる
 『指取れちゃうのかなあ 病院で縫ってもらわなきゃダメかな そ
 んなのやだなあ ふえええええん ひゃらにゃああ』
 『情けない声だすなよ 取れないと思うぞ それに縫ってもらうよ
 うな深さでもない だいたいお前 女は血を見るのは大丈夫だろ』
  それどころじゃないから反論しないけれど 女だろうが男だろう
 が指を切って血が流れれば大変なことだ だいいちあたしは病院が
 キライだもの 不安の大半は麻酔の注射だったりする ふげえ
 『れもねえ こんななっちゃって ふはふは りゃもん』
 『あーなんか情けないな 涙鼻水でグシャグシャじゃないか』
  よーちゃんに左手を預ける ティシュのかたまりから徐々に発掘
 される指 もう傷口が透けて見えているのに 情けなくもなるって
 ものだ 痛いのと怖いのとなんだかんだでグシャグシャである
 『病院は必要ないとしても 不潔だよな 絆創膏を貼る前に消毒し
 ておこうか そうだな 水で洗うのは 怖くてできないか』
 『やだっやだっ 染みる薬もやだっ ああああああん 痛いよう』
  なにかもうなにもかもがイヤだ 怖いのもイヤだし痛いのもイヤ
 だ 全部なくなってしまうのなら それはもうどんなことでもする
 のに でも病院はイヤ ジレンマかパラドクスだか知らないけれど
 『うるさい 指動かすと血がでるぞ 絆創膏取ってくるから泣くん
 じゃない 泣いたって治らない 自分のミスだろ まったく』
 『やだやだっ むうううん 抱き締めてくれたら我慢するっ』
  甘える権利があると思う あたしのミスだとしても 家事をする
 のはよーちゃんのためでもある それによーちゃんが買ったテーブ
 ルが原因だもの 当然の権利だ 少しは我慢もできる
 『こんなときになにを まあいいか 理解できなくもない』
 『ふやああああん あたしってばこんなにかわいそうなんだもん』
  左手を庇いながらよーちゃんに抱きつく もう既にあたしの生活
 の一部になってしまっている臭い あたしはソファーに座ってよー
 ちゃんのお腹に顔を埋める 痛みが和らぐ気がするではないか
 『もういいか 現実逃避じゃ解決しないぞ お前がいいのなら仕方
 がないが 俺だって心配なのも考えろ だから な』
 『うん ごめんなさい なんで謝んのかわかんないけど むう』
  小さくコックリと頷く できるだけかわいらしい仕草にするのが
 ポイントだと思う かわいらしいと愛されると痛みが和らぐ三段論
 法 それにごめんなさいは本音 ごめんなさいに理由はない
 『ほら絆創膏 この程度の怪我な 血だけは派手だがたいして切れ
 ていない 念のために3枚ほど貼っておいてやる 喜べ』
 『わーい なのかなあ あまり締めつけると血行不良で壊死するん
 じゃないの それもやだなあ なんか指先に心臓があるみたい』
  指先がドキドキ まだ血は流れている 不安は少し減ったけれど
 痛いのはあまり減っていない よーちゃんはあたしの言葉なんか聞
 かずに絆創膏を貼りつける 更に絆創膏を取りだして 巻きつける
 のかと思いきや そうじゃなくてなにかの作業を始める
 『で よーちゃんはなにしてるわけ 黄色のところは触っちゃダメ
 なんだよ 触らないように観音開きになってるのにさ』
 『観音開きって お前 イヤな表現だな 重ねて貼るやつにはガー
 ゼの部分は必要ないだろ これを取ってテープだけにする』
  プラスチックみたいな紙が一部重なって観音開き 絆創膏の構造
 はどれでも同じ よーちゃんは黄色い布地を爪で剥がす どうして
 こんなに器用なのか あたしなんか考えもしないことなのに
 『よしっ これだけ厳重に巻いとけば大丈夫だろう 風呂に入ると
 きには手を挙げるようにな 洗い物くらいなら俺に任せろ』
 『ふうん お風呂で万歳 家事は分担 そりゃいいなあ』

  これから暫く炊事は押し付けよう やってくれるならなんだって
 構わない この調子で甘えまくって なんたってあたしは怪我人な
 のだ テーブル掃除なんか当分やらなくてもいいだろう
  そもそもよーちゃんは器用だもの その気になればなんだってで
 きるくせに 切っちゃったのは悲しい事実 でも考えようによって
 は使える展開だったりして 不器用なあたしってば よーちゃんの
 使い方だけは器用なのであった あはは






             》 しびる 《
+++++++++++++++++++++++++++++++
(のりこ)>指をケガしたって話だけで1本仕上げましたか
(しびる)>おう ケガする話を描いておこうって企画だったし
(のりこ)>しかしあれです ケガの話はオシリがむずむずするもの
      ですねえ 家具のステンレス部品は危険ですし
(しびる)>んー いまなら製造物責任ナントカ法でリコールものだ
      な しかしあれだ こどもが5人くらい指飛ばすまで問
      題は表面化しなくてだな 対処後手後手でえらいことに
(のりこ)>ありありの話ですよね 結局代表取締役以下3名で頭下
      げなきゃくなるのに 賠償金も増えるし 製品の回収と
      か経費はすごいことになって やもすれば倒産なんてー
(しびる)>とかって話はまったく関係ないからあんま拡げるな
(のりこ)>ういっす
posted by 篠原しびる at 00:02| シンガポール ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 連作系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年09月10日

連作22 涼連作05 ないとめあ・ないと15

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 種別 連作系第22期 涼連作05
 題名 『 ないとめあ・ないと15 』
 初出 ニフティサーブ/FJAMEA/18番会議室
    1997年01月16日01時57分
 注釈 行頭スペース+30W
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SUBJ:【涼連作】05 ないとめあ・ないと15

 Sibi-Tem V.4.1

 飄々と涼しげな でも無責任じゃなくて 涼連作 #05(A群)
 



        『 ないとめあ・ないと15 』


                        作:しびる





  淡く輝く薄いモヤ 遠くなるほどに明るく輝くのは きっと彼方
 に巨大な光源があるのだろう いつかテレビで見た銀河系の中心部
 周囲すべてに光が溢れ 赤からオレンジ 黄色から白へ 見渡して
 も果てしない世界 天地無用 地面なんかどこにも見えない
  背景だけなら幻想的 まるで臨死体験のようだとは敢えて考えな
 いとしても この感じは悪くない 暖色系は脳味噌に優しくて 今
 あたしがいるのは 翼を生やした大仰な乗り物の中だってことを忘
 れてしまいそうな夢心地 そう考えて苦笑 実際にはとてもそんな
 光景ではなかった やはりまだまだ悪夢の続き

 『ビデンス中尉 聞こえるか 現状の報告だ』
 『お待ちしておりました 変位マーカーの侵食が激しいらしく確定
 はできませんが おそらくクレメンチ公国の外苑部ではないかと』
  視界の右端に端正な顔立ちの男性 どうやらこの世界でもビデン
 スは人間のまま 豹頭もそれなりだけど やはりこちらがカッコイ
 イと思う 本物のビデンスはどちらなのか ふとそう考える
 『そんなことよりもさ フィラ あんな巨大なのが生物だって リ
 ギダが先にやってきて暴れてるんでしょ あたし達も襲われない』
 『たぶん大丈夫 数万体に総攻撃を掛けられれば少し危ないけれど
 この程度の雑兵なら 7界最強のロドゲルシアの敵ではないわ』
 『公爵様の支配領域に侵入するものは直ちに排除する 武装を解き
 自害するチャンスを与えてやろう 刃向かうのならば消滅せよ』
  どこかからか声が響く 変に荘厳な台詞は意味不明だ 排除する
 から自殺しろってのは 初対面の相手にどんなつもりか 抵抗すれ
 ば消滅しろってのも 文法の能受がムチャクチャじゃないか
 『貴様らのごとき遊離兵に用はない こちらにあらせられるはフィ
 ランサス帝国の内親王 フィランサス姫宮様である ク公爵に謁見
 を許可すると伝えよ 即時対応なき場合には完全なる破壊に』
 『下がれビデンス中尉 貴様が現空域の頭か 命が惜しくば即刻退
 避するがいい クレメンチ公国は我が帝国の支配下に入る』
 『誇り高き我等騎兵隊を侮辱するものは 何人たりとも許されない
 であろう お前達は自ら消滅するチャンスを失った』
  ここぞとばかりにビデンスが捲し立てる 姫様の付き人としては
 模範的な態度だろうが 勝手に他人の庭に入り込んで 挨拶させて
 やろうとは高飛車も度が過ぎる 周囲の巨大生物達から不気味な気
 配 なにやら徐々に数が増えているようにも見えるじゃないか
 『邪魔だてするのなら止むを得んな ビデンス中尉 リギダの追跡
 は後回しだ こ奴等を先に始末する 急ぎ後詰めに就け』
 『なんでそうやって事を荒立てるの もっと話し合って平和に解決
 しなきゃ そっちの兵隊の人も 責任者の人を連れてきなさい』
 『既に時は逸した 我等公国騎兵隊は不言実行を旨とする』
  まったくどれくらいの数だろう 見渡す限りクラクラするような
 大きさの生物達で埋め尽くされている よく観察すれば金属質の体
 に綺麗なペインティング 頂上部分に申し訳程度に載っているのが
 頭か バランスの崩れた巨大な雪だるま 騎兵は馬に乗った兵隊の
 ことじゃないのか もしかして 体の部分は馬なのだろうか
 『つまりなにを言っても無駄ってことよね ななよ 見ていれば納
 得するでしょうけど 哀れむような敵でもないわ ビデンス中尉』
 『はっ 御側に待機しております 敵陣の総数は約1万 公爵親衛
 隊は含まれておりません リギダ様は先程ク城に到達されました』
  リギダのことだから どうせ高笑いしながら敵を蹴散らして 同
 盟国って説明はどうなってしまったのか どうにもフィラ達の言葉
 には真実味が足りない それともこれが真実なのか なんだか
 『簡単にやっつけられる相手なら 別に危なくもないんでしょ だ
 ったらあたしは戦わないよ フィラ お願いだから平和に解決を』
 『ななよの頼みでも聞けないわ 敵対するものを完全に撃破するの
 が王女としての使命 そうやって生きてきたもの これからもそう
 するしかないの 常に拡大しなければ 現状の維持は無理ね』
  ある意味で頭の上のカエル姫もかわいそうな暮らし それはそれ
 としても なにがなんでも武力衝突は回避しなければ 敵の奇襲か
 ら逃れて同盟国で大量殺戮なんて なにをやっているのかわからな
 いではないか あたしの責任で 必ずこの場は収めようと思う
 『姫様 いかが致しましょう 前後の数百体が特攻部隊だと思われ
 ます 装甲に支障のある質量ではありませんが』
 『なら構わないじゃない クレメンチさんだか知らないけど その
 人に会えば話もできるでしょ フィラ ねえビデンスも』
 『クレメンチ公爵なんて こんな辺境の領主と話をしても始まらな
 いわよ スツーヌ王国の属国に過ぎないわ そもそも おや』
  フィラの意識は粗方は伝わってくる なにを察知したのかフィラ
 の注意が遥か前方へ 視界にはなにも現われていないけれど 全身
 の皮膚が僅かに鳥肌立つ感じ なにかが来る そう直感した
 『姫様 どうやらク公が謁見に参じた模様です 波動は検知されま
 せん 未知の転位原理が存在するのでありましょうか』
 『王家の波動に類したものだ サンクレストの勢力が及ばぬもこれ
 が理由 太古には同一のものであったと 馬鹿げた伝説もあるが』
 『これはこれは フィランサス姫様 ご尊顔を拝しまして恭悦至極
 と申したいところですが なにやらお困りのご様子で』
  目の前の騎兵隊の一部が歪んで消える 現われたのは真っ赤な雪
 だるま 周囲の生物の数倍はある 慇懃無礼と真紅の姿 なにかに
 似ていると思えばリギダではないか しかし視界に広がる顔は男性
 であった なかなかの美男子 額には真紅の宝石が輝いている
 『あなたがクレメンチさんでしょ 部下の人達に話してよ あたし
 達は争うために来たんじゃないの とにかく話し合って それで』
 『侍従は少し黙っていろ 如何様な用件でお越しくださいましたか
 このような田舎に姫様をお招きできるとは まずは宮殿へ』

  あたしの視界はロドナントカの操作画面だから 実際に見ている
 ものに重なって 誰かの操縦席や情報なんかが映っている 今見て
 いるクレメンチ公爵の顔は たぶん真っ赤な雪だるまの操縦席の映
 像だろう 隣りにはビデンスの顔 同じ種類の映像だ
  そう考えてわかった カラフルな巨大生物の大群 その直中に真
 紅の巨大な雪だるま 少しぼかして眺めるならば それらすべてで
 クレメンチ公爵の肖像画 淡い輝きを背景にして とてつもなく巨
 大な胸像が微笑んでいる なんとも不気味な光景だ








             》 しびる 《
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(のりこ)>ないない15です どんどん荒唐無稽なお話になってき
      ました それが本筋だと仰るんでしょうが
(しびる)>仰るつもりだ こゆのをどんどこ描くために始めたシリ
      ーズだったわけだし いいじゃん 巨大生物が整列して
      巨大な肖像画を描く戦闘配列 こゆのがいいんだわ
(のりこ)>まあいいですけど 閉じられるサイズのフロシキを拡げ
      ないと って結局は放置プレイなわけですが
(しびる)>女の子がプレイとか言うな
(のりこ)>あーはいはい
posted by 篠原しびる at 23:08| シンガポール ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 連作系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

連作22 涼連作04 みえる

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 種別 連作系第22期 涼連作04
 題名 『 みえる 』
 初出 ニフティサーブ/FJAMEA/18番会議室
    1997年01月14日02時18分
 注釈 行頭スペース+30W
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SUBJ:【涼連作】04 みえる

 Sibi-Tem V.4.1

 飄々と涼しげな でも無責任じゃなくて 涼連作 #04(B群)
 



            『 みえる 』


                        作:しびる





  確かにキッカケはあったはず しかしそれを覚えていない かな
 り幼かった頃だから 今から考えれば3歳か4歳くらい 現象を判
 断できる限界の年齢だと思う 実際に 既に恐怖の対象だった
  我が子が特殊な存在であることを認めたくなかった両親は まる
 で呪詛のような言葉であたしの説明を押し込めた 普通でないこと
 は即ち劣ること あたしの価値観は劣等感によって形成された 誰
 にも話せずに ただ毎日を怯えて暮らしていた

 『偶然だったのよね 高校2年のクラス編成で一緒になったのよ』
 『ふうん 類が友を呼ぶってやつかな 知らないけど』
  助手席でシートベルトを締めずに足を組む 完全に信用している
 から もしも事故で死ぬのならそれもいいかもしれない あたしの
 すべてを理解するお人好し 頭の良い人間は普通にも暮らせる
 『慣れてても ほら どうしても視線が流れちゃうわけ 全校集会
 の途中だったかな あたしと彼女だけ同じところを見てたの』
 『そんなのって わかるんだね どんなふうに見えるの』
  赤銅色の石畳 左右には青銅色のガス灯を模した街灯が並んでい
 る 曲線で構成された道路 シートから僅かな振動が伝わってくる
 『そうねえ 昔の方がハッキリ見えたかな 何故かあまり覚えてな
 いけれど 小学生の低学年くらいまでは人間と同じに見えてたの』
 『不思議な感覚だな 物理法則は関係なしだろ どの辺りに折り合
 いをつければ精神を安定させられるんだろ ましてや子供が』
  すぐに話題は底にまで到達する いつでもこうだ まるでどんな
 ことでも御存知と言わんばかり 表面的な事件には感心が薄いらし
 い ストレートに隠していた心を突き刺す話法なのだ
 『それはもう怖かったわよ その場のすべての人が楽しんでいる瞬
 間でも あたしには人混みの間を徘徊する姿が見えるんだもん』
 『見えるのか 子供には酷だね 襲ってきたりはしないわけだろ』
  自分以外の人には見えないなにか 明らかに実在する人間ではな
 いなにか 街角や教室の隅に 明るい陽射しの下でも夜の闇の中に
 も 田園風景の直中に小川のせせらぎの上に ただ蠢くものや誰氏
 かの背後に寄り添うもの それらは人間に類したなにかだ
 『あたしに気付いて近寄ってくるものもいるわよ でもほとんどは
 ただその場所にいるの 視線が合うことは少ないわね』
 『ふうん 思ってたのとはイメージが違うかな まあ違って当然だ
 ろうけどさ 表情とかはわかるわけ 泣いてるとか怒ってるとか』
  左手だけでハンドルを握り 運転席の彼は目を細める 尋ねてい
 るのも儀礼だろう あたしが特殊な人間であることなど意にも介さ
 ず おそらくまったく違うことを考えている そんなタイプだ
 『ものによって違うかな たぶん時間が経つに連れてぼやけちゃう
 みたいね ずっと同じ場所にいたのも 2年くらいで消えちゃった
 もん ポストの隣りでね 毎日少しずつ輪郭がぼやけるの』
 『ははん 気味が悪いけれど なにか観察日記みたいだね そうか
 頑張っても2年くらいしかダメなのか 個人差もあるだろうけど』
  実際には凄まじい恐怖であった 小学生の高学年の頃 ある日突
 然現れたそれは 通学路の途中に佇んでいた 昼も夜も虚ろな表情
 で 眺めながら歩くそれはまるで放置された死体だ 徐々に崩れて
 いく表情は最後には影になった 声もなくただ影がある
 『でもね 凄くたまに違ったものになっちゃうのもいるのよ 怪物
 みたいな姿になって 怖いから近付かないけれど みなちゃんに言
 わせると 元から違ったなにかだったらしいわ なにかしら』
 『そんなのが当たり前のようにいるわけね 例えば さっきからで
 もいたりするの 数は少ないのかな おっと 危ない』
  なにか予感がしていた 隣りの彼もそうだったらしい 車は急制
 動で停車し その前をゴムボールが過る 続いて子供 ボールの出
 現まで気が付かなければ おそらく子供は潰されていた
 『今は助かっても あの子供 そんなに長くはダメだろうな』
 『なーるほど そういうのが見えるの 人によっていろいろと見え
 るものが違うのね あたしにはあの子の後ろに女の人が見えるわ』
  幼稚園児くらいか 驚いた表情の男の子は すぐにボールを追い
 かけて路地の奥に 追い掛けるように焦点の定まらない目をした女
 性 狂っていると瞬間に感じた 言い換えれば既に人間ではない
 『関連しているのかもしれない しかし まったく関係ないかもし
 れない その辺はわかんないね どうせ他人事だもの』
 『まあそうでしょうけど あたしがそんなふうに見えたときには遠
 慮せずに言って欲しいわね 光なの それとも色かしら』
  普段はあまりこんな話はしない 彼はいつでも醒めていて どん
 なことにも興味がなさそうなのは達観しているからだ 日常の軋轢
 は見通せない未来に起因する 見えるのなら眉ひとつ動かない
 『説明できない 見えるよりも感じるに近い 見なければわからな
 いけれど ほら 悪人は見ればわかる そんな感じだね』
  少し先の街路樹の下 かなり輪郭のハッキリしたものや 影にま
 でぼやけてしまったもの 数体のなにかが佇んでいる 快晴の陽射
 しに掻き消されることもなく 虚ろな表情は虚空を見つめる
 『今の木の下 何人かいたわよ もしかすれば因縁があるのかもし
 れないわね でもたぶん ただあの場所にいるだけなのよね』
 『いるのなら仕方がないかな きっと なにかあるんだろ』
  それだけ 非常に淡白な感想 興味本意で質問する相手も 最後
 には気味悪がって敬遠する 彼にはそれがない そうなのならそう
 なのだろう それ以上は仕方がないと決着する まこと心地良い
 『仕方がないのかあ そうよね 見えるんだもん 仕方がないわ』
 『いいんじゃない それはそれで それよりも急ごう』

  類が友を呼ぶは真実 たまに見える人と出逢う 大半の人々には
 見えないなにか 街中の至る所に佇むなにかを 見て見ぬ振りする
 人々は確実に存在する もしかすればかなりの人数か
  それがなにかを詮索しても仕方がない おそらくは人間であった
 であろう痕跡を残し 彼等は虚ろな表情でただ佇む なにかを訴え
 るわけでもなく ただその場所に 彼等は佇んでいる






             》 しびる 《
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(のりこ)>いわゆる異界ものになるのかな それともこのテのは見
      える系とかに分類した方がいいのかもしれませんね
(しびる)>そうかもな あと今回読み返してみると なんかト書き
      の人称がちょっと判読しにくいか 悪いクセだなあ
(のりこ)>あー そんな感じですね 中盤くらいまで1人称が助手
      席の彼女だってわかんないですか 運転してるのが男性
      ってのもちょっとわからないですし それと 類が友を
      呼ぶ彼女のお友達の話は拡がらないまま終わりですか
(しびる)>それは捨てネームだし
(のりこ)>ならまあいいですけど しかしなんですか こゆのが見
      えると 人生まったく別のものになりますよね
(しびる)>だろうな そゆのをヘッダでやっつけてあるんだけど
(のりこ)>それでは幼児のときの話が解説してありますけど 本文
      では高学年くらいで云々って なんか時差がないですか
(しびる)>浮遊突発型は昔から 完全固定型が高学年のとき初見っ
      てこと わかりにくいか?
(のりこ)>んー まあ
posted by 篠原しびる at 23:06| シンガポール ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 連作系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

連作22 涼連作03 をごめく

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 種別 連作系第22期 涼連作03
 題名 『 をごめく 』
 初出 ニフティサーブ/FJAMEA/18番会議室
    1997年01月09日03時13分
 注釈 行頭スペース+30W
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SUBJ:【涼連作】03 をごめく

 Sibi-Tem V.4.1

 飄々と涼しげな でも無責任じゃなくて 涼連作 #03(B群)
 



           『 をごめく 』


                        作:しびる





  帰り道に道端に段ボール箱 通りすぎようとすると音がする な
 にか中から引っ掻く音 もしやと思って開いてみれば 中身はやは
 り子猫だった まだ目も満足に開いていない子猫 箱の底にあるの
 は封筒だ きっと言い訳と子猫の名前なんかが書いてあるのだろう
  あたしはしゃがんで子猫の頭を撫でる 封筒を手に取って開こう
 かと思ったけれど辞めにした 死んでしまうかもしれない状況に小
 さな命を曝す理由なんて どんな事情であれ言い訳だ 無責任なら
 無責任を貫き通す それが責任だと思うから あたしは再び段ボー
 ル箱を閉じた ウチはマンションだもの 猫は飼えないから次の通
 行人に託すのだ 責任はとてもシビアで辛いものだと思う

 『ただいま 今日は早かったのね 遅番じゃなかったっけ』
 『おかえんなさい それは明日のシフト 今日は早上がりなわけ』
  マンションの同居人 大学時代のルームメイトが そのまま社会
 人になっても続いている 気が合うのか無頓着だからか
 『そっか そうそうポストにおてまみ あたし宛のDMと さっち
 ゃんには怪しい請求書 はいっこれ 至急開封くださいってね』
 『請求書ねえ ああ ありがと どこの請求書だろ 開けて見ても
 いいかなって あははははは 自分の郵便物に遠慮したりしてね』
  スーツをハンガーに掛けてウオークインクローゼットへ ふたり
 で家賃を払うなら少し贅沢に 収納空間が問題になるのは過去の経
 験で学習済み 女にとって衣服の収納は得に深刻な問題だもの
 『破滅しないでね なんか食べようかなあ うんしょっと さっち
 ゃんがいなくなっちゃうと家賃が払えないもん なにかあるかな』
 『ゆりがうるさいからさあ なんだこりゃ こんなの買ったかな』
  冷蔵庫を開ける いつも食べ物はあまり入っていない 扉側の大
 半はさっちゃんが買い込んだ天然素材の化粧品 いつ飲んだのか忘
 れてしまったグレープジュースのペットボトル よく考えればレト
 ルトカレーは冷蔵庫に入れなくても腐らないはずだ
 『お金の使い道を知らぬものは亡びるべし これなーに アンプル
 みたいなものが冷やしてあるけれど 変なのは辞めてよね』
 『ああ それは明日まで冷蔵庫に入れておくもの 気にしなくてい
 いからね それよりも見てよ ゆりは知らないよね こんなの』
  共同生活に妥協点は難しい 完全に同化するか それともまった
 く干渉しないか ウチの場合は希なケース さっちゃんとは義姉妹
 の契約を結んでいる 精神的に同化 そして生活は不干渉である
 『さっちゃんの名前でしょ あたしは知らないもん 変なのばっか
 り買ってるから なになに 通販の振込用紙じゃない』
  さっちゃんは看護婦で 同時に買い物魔でもある 収納空間云々
 は彼女の買い込んだ物品に原因がある 社会人が自分の収入で買う
 のだから それはもう自己責任 しかしあたしにも責任はある
 『特選旨いものセットB ワインと海鮮紀行の5月頒布会 ゆりは
 食べた覚えがないでしょ ボジョレーヌーボとスズキだって』
 『なにそれ 頒布会なら月ものじゃないの この前のジャケットな
 らさっきのあれだけど 食べ物は知らない 鈴木さんも知らない』
  さっちゃんの物はお下がりで使う 年齢からしてもあたしが妹で
 どうせ使いきれないものなら捨てるには惜しい 交友関係とか信条
 は勝手にすればいい 精神的な同化はもっと深い次元で 生活の不
 干渉は曖昧な部分で この辺の機微はまさに姉妹同然だと思う
 『スズキが鈴木さんか なるほど たくさん注文してるからって適
 当に請求してるんじゃないかな 苦情を言ってやろう まったく』
 『よく考えた方がいいんじゃない 実は食べてましたってことにな
 ると それにね ここに並んでるニャンコスリッパって』
  購入品明細からキッチンの方へ視線を移す あっちとこっちを向
 いているスリッパには猫の耳 おそらくあれがニャンコスリッパと
 呼ばれるものだろう さっきの子猫の姿が脳裏を過る
 『それは買った オペレーターの女性に説明したのを覚えてるもん
 しかーしワインと海鮮紀行は知らないなあ ふむ まあいいか』
 『あらあら もう よくなっちゃったのね さっちゃんのそんなと
 ころが好きなのよん 今日はなにを借りてきたの ホラーかな』
  さっちゃんは熱しやすく冷めやすい だから買ったものを忘れた
 りするのだ こいつはすげえぜなんて叫びながら注文 到着した頃
 には白けている ちなみにさっちゃんは週3回ビデオを借りてくる
 『スプラッターじゃないかな ほいさ 缶ビールもある』
 『うへえ 空きっ腹にビール なんか食べるものってなかったかな
 素麺を湯がこうか 確か麺つゆは買ってあったと思うんだけど』
  少し部屋が散らかってきた 卓袱台の下からコンビニ袋は缶ビー
 ル まだ早い時間だったから 普段なら公設市場に立ち寄って買い
 物をするのだけれど 今日は子猫のことで頭が一杯で それでも素
 麺の買い置きくらいはあったりする 薬味のネギや生姜は諦めよう
 『ゆり 素麺は辞めた方がいいと思う どうしても食べたいのなら
 仕方ないけれど あとで怒られるくらいなら忠告するよ』
 『なにを言ってるんだか もう決めたもん あたしの体が素麺に向
 かって なんだか凄く やだ 我慢できなくなってきた』
  氷は作ってあったから なにやら素麺が無性に食べたくなってき
 た 全身を襲う悪寒のような衝動 我慢できなくなって立ち上がる
 すぐにでも湯掻いて食べようと思う さっちゃんは食べないらしい
 から今日は2把だけ 無茶に暴食しない主義なのだ
 『ならまあ食べるがいいさ あたしはビデオでも見るとするかね』
 『分けてあげないわよ もしかすれば海鮮紀行も さっちゃんひと
 りで食べちゃった可能性があるでしょ ズルイ娘にはあげない』
  あたしはキッチンで素麺を湯がく 部屋の方からは賑やかな叫び
 声 ホラーじゃなくてスプラッター なにが楽しくてそんなのを借
 りてくるのか すぐに湯で上がってザルに揚げる それでもつゆは
 ふたり分 ひとりで食べたりしないのだ なんでも言うだけ
 『本当に素麺を食べるのな ゆり 画面は見ないように あっ』
 『本当に食べるわよ お腹が空いてるもん なにが ああっ』

  さっちゃんは画面を遮ったが しかし寸でのところで間に合わな
 かった 画面一杯にミミズのような生物が蠢いている 真ん中で暴
 れている人間は食べられているのか 途端に食欲が失せてしまった
 こんなのを見ながら素麺が食べられるものか 無神経にも程がある
  あたしがゲンナリしているのを一瞥して さっちゃんは肩を窄め
 て両手を広げる そして意に介さない表情で素麺を食べ始めた こ
 んな性格にももう慣れたけれど やっぱり少し変だと思う









             》 しびる 《
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(のりこ)>この映画知ってますよ 高圧電線かなにかが事故で地中
      にすごい電圧を掛けちゃって それが原因で養殖ミミズ
      あの感じだと釣りエサのゴカイだと思うんですけど そ
      れが大挙して人々を襲うって内容ですよね タイトルの
      原題は『ワーム』とかじゃなかったかなあ とにかく最
      低の映画ですよ ゾンビ級のひどさですね
(しびる)>そんなにひどくもないけどな かなり古い作品だし
(のりこ)>たしかにそんなのを見ながらそうめんはアウトでしょ?
(しびる)>んー まあ普通はそうかもな それはそれ これはこれ
      って感じで暮らすとあんまし関係ないんだけど
(のりこ)>しびさんはそゆの気にしないでしょ エグイのとか
(しびる)>あんまし気にならないなあ たぶん強いんじゃなくてさ
      そういう感性が欠如してるんだ だからナンデモあり
(のりこ)>あと 架空請求詐欺とか先取りですね
(しびる)>これは詐欺なのかなあ 違うんじゃないか
(のりこ)>通販依存症とかも
(しびる)>んー それほどの話じゃねーし
posted by 篠原しびる at 23:05| シンガポール ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 連作系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

連作22 涼連作02 不得要領

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 種別 連作系第22期 涼連作02
 題名 『 不得要領 』
 初出 ニフティサーブ/FJAMEA/18番会議室
    1997年01月08日02時48分
 注釈 行頭スペース+30W
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SUBJ:【涼連作】02 不得要領

 Sibi-Tem V.4.1

 飄々と涼しげな でも無責任じゃなくて 涼連作 #02(B群)
 



           『 不得要領 』


                        作:しびる





  鏡に映る自分の顔を見ながら この顔がどんなふうに大人の顔に
 なるのだろうかって 考えていた頃をふと思い返す 小心者だった
 から このまま子供の顔の状態では きっと誰にも相手にされない
 だろうなんて心配したり そもそも自分が大人になること自体が想
 像の範疇をまったく逸脱していた 意味もなく凄く不安だった
  今だって頭の中は子供のままだ ケース毎の挨拶を一通り覚えて
 アドリブにもそれなりの自信ができて しかし基本的な思考順序に
 どんな変化があったというのか 不安じゃなくなっただけで 自分
 が大人になったことに対して 狡猾さと肉体の老化以外に なにか
 これだってものは感じられずにいる いずれ子供老人になる

 『おとうさん おとうさんなら直せるでしょ 動かないのよね』
 『なに なにこれ おうおう るみかはお手伝いか』
  土曜日の午後 テレビを見ながら缶ビールを飲んでいた 不意に
 目の前に影が過り 振り返ると同じ顔が並んでいた 娘と妻だ
 『お手伝いは嬉しいけれど おとうさん るみかが落としちゃった
 のよね 直してくれないと晩ご飯がなくなるの 困るでしょ』
 『るみかのせーじゃないもん 落としたのはおかあさんなんだよ』
  すぐにはなんだか理解できなかったが 目の前に揺れているのは
 ハンドミキサーだ 同じ柄の大小のエプロン どちらの言葉が正し
 いのか 同じくらいに疑わしい仲良し母娘 年齢差は僅か21年
 『動かないなら壊れたんだろ 誰が壊したのか知らないけどだ な
 んでも大事に扱うように 買い換えるまで 手で混ぜろよ』
 『直してよ 今使いたいのに 男の人は電気に詳しいものでしょ』
 『でもおとうさんは無理じゃないかって おかあさんが言ってた』
  ふたり並んでどんなつもりか なにか協同して画策しているよう
 でもなし テーブルの上に無造作にミキサー その向こうで腰に手
 を当てる母娘 なにかこう 妙な違和感 些細なことを失念してい
 るような そんな気がして手を延ばす どんなことだったか
 『無理じゃないでしょ ハサミを持ってこようか るみか 水屋の
 棚にハサミがあるから それと接着剤も一緒に持ってきてね』
 『るみか ハサミもボンドもいらないぞ わかったわかった とに
 かく分解する 直るか直らないかは 中身を見ないとわからない』
  電気製品を修理するのにハサミと接着剤 もう少し掛け離れたア
 イテムなら小馬鹿にできるものを 使わないのと質問されれば返答
 に躊躇するような 素早く反応する娘を呼び止めたが フォローす
 るためには承諾するほかない いつもの展開だ 珍しくもない
 『おとうさんが直すの すごーい おかあさん できるのかな』
 『決まってるじゃない おとうさんはなんでもできる人なのよ』
  母娘は顔を見合わせて パースのおかしいシンメトリー 小皺が
 増えれば歳を取ったなんて すべてを無効にするような午後の空気
 仕方なく溜息をつき 生温い缶ビールを飲み干してみたりする
 『ミキサーでなにを作るんだ ケーキでも焼くのか るみかはなに
 を手伝っている 晩飯のオカズだろ 米の飯に合うものにしろな』
 『サラダなの マヨネーズを作るんだよ ね おかあさん』
  料理なんてまったくわからないから ハンドミキサーで想像する
 のはケーキくらいだ 毎日のようにサラダなら食っているが いつ
 もはチューブに入った出来合いもの それじゃダメなのか
 『そういうわけね アシスタントにるみかを置いてくから るみか
 直ったら持ってくるのよ おとうさん お願いね』
 『まかせて るみかの想像では 10分くらいでできると思うな』
  非常に面倒だ 瞳をキラキラさせて娘が立っている 妻の後ろ姿
 を見送りながら脱力感が全身を襲う このところ家に帰る度に感じ
 る妙な違和感 原因は情熱の欠如ではないかと なにかの瞬間に感
 じたりする 少し違うような気もするが 考える気にもならない
 『それじゃバラすか こんなのはだな るみか バカみたいに簡単
 な仕組だからな すぐに直るか それとも買い換えるかだ』
 『直せないこともあるの なーんだ ちょっと凄くないかな』
  手を延ばしミキサーを掴む 左右に振ってみればカラコロと破片
 の転がる音 なにかが破損してどうにかなっている テレビ台の引
 戸を開けてドライバーセットとラジオペンチを取りだす 娘はテー
 ブルに両肘をつき 唇の動きは歌っているかのようだ
 『持ってろ 順番に渡すからな なくすと直らないぞ 大きいネジ
 はカバーのネジだ 覚えたか 忘れないように言ってみろ』
 『おおきいねじーはかばのねじーだ かばのねじー 変なの』
  ミキサーの腹側にネジが3本 娘に手渡してカバーを引き剥がす
 途端にかき混ぜ部分が飛びだした 外して洗える仕組だったらしい
 転がる音はそれを外すボタンだったようだ 内部にはプリント基盤
 とモーターだけ 眺めただけでは何がなんだか 暫し見つめる
 『モーターのコイルが切れてるんならお手上げか 調べようもない
 な とにかくボタンを取り付けて ふむ 動くかもしれん』
 『おとうさん おおきいねじーはかばのねじーだよ はいっこれ』
  開いてみたが それでどうにかなるじゃなし 転がっていたボタ
 ンを無理にはめ込んで カバーを閉じてネジを締める かき混ぜ部
 分は差し込むだけだ もしかすれば動くかもしれない
 『直ったの まだ10分になってないのに おとうさん 凄いっ』
 『さてなあ どうだかわからん 通電してみるか おうっ』
  コードを掴んでコンセントに差し込む すぐに焦げ臭い白煙がミ
 キサーから漂う 慌ててコードを引き抜き なにか致命的な事態に
 なったことを直感した もう直らないだろう 諦めるのが賢明だ
 『ダメだな 買い換えるしかないだろ 無駄だったな』
 『なーんだ 直らないのか おかーさん やっぱり直らないって』

  点けっぱなしのテレビからコミカルなCMソング 娘はテレビの
 方を一瞥して そのままキッチンに向かって駆けてゆく どうでも
 いいのだが 修理できないことを予想していたかのように 娘は慌
 ててキッチンに消えた 楽しそうな笑い声が響いてくる
  いつからか心のヒダが伸びてしまって なにかを感じなくてはい
 けない瞬間が生活から減ってゆく 考え方は子供のままなのに 倦
 怠感だけ100歳の老人だ もう既に子供老人 若返ることもなけ
 れば これ以上歳を取ることもないのだろう







             》 しびる 《
+++++++++++++++++++++++++++++++
(のりこ)>なんかイヤなお話ですねえ なにがどうイヤなのか説明
      しろと言われてもよくわからないですが
(しびる)>まあこの感じはどう言うんだい 倦怠感じゃねーな も
      うちょっとふさわしい単語があろうに なんだ
(のりこ)>諦念? それも違うかなあ ある意味ひじょうにメロウ
      な精神状態が描かれてるわけですし そゆのは虚無な境
      地とは別物ですよね やっぱし倦怠感が近いかな
(しびる)>なんでもいいんだけど とにかくこういうオヤジを描こ
      うという企画だったから そのへんはうまくいってる
(のりこ)>ふうん ハンドミキサーはなにかのシンボルとか?
(しびる)>いや別に アイテムは現場で決めただけだから
posted by 篠原しびる at 00:17| シンガポール ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 連作系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年09月07日

連作22 涼連作01 うろ

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 種別 連作系第22期 涼連作01
 題名 『 うろ 』
 初出 ニフティサーブ/FJAMEA/18番会議室
    1997年01月05日01時32分
 注釈 行頭スペース+30W
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SUBJ:【涼連作】01 うろ

 Sibi-Tem V.4.1

 飄々と涼しげな でも無責任じゃなくて 涼連作 #01(B群)
 



            『 うろ 』


                        作:しびる





  バスや鉄道を利用すればどれくらいの距離か 街の中心部から郊
 外に向かって走り 緩やかな傾斜を15分程度昇る 徐々に路幅が
 狭くなり やがて車線は一方通行 徐行しながら路地を曲がり続け
 て 行き着いた先は狭い駐車場 戻るときにはどうするのか
  なにか非常に恐縮したナビゲーター 少し飲んでいるのも手伝っ
 て 素面なら躊躇するような路地を抜けてきたが 車体のどこかを
 擦るんじゃないかと内心ドキドキ 鼻歌混じりは虚勢である
  手狭な広場に不法駐車して ドアを開ければ涼しい夜風 なるほ
 どかなりの標高か まるで避暑地だねと話しそうになり 少し失礼
 かなと鼻白んだ 言葉を途中で飲み込む癖は生まれつきだ

 『ごめんね 狩野君 こんなところまで お茶でも飲んでってね』
 『女の子を乗せて走るのは楽しいもの じゃ ご馳走になろうか』
  おそらく同窓会じゃなかったと思う クラスも学年もばらばらで
 誰がどんな基準で召集したのか とにかく妙な宴会だった 大半は
 知人だが久し振りな顔ぶれ 気が合った女性がナビゲーターだ
 『少し散らかってるんだけど あははっ 狩野君ならいいや あっ
 ごめんなさい 良い意味で言ったのよ 少し酔ったのかな』
 『オレんちなんか凄いもん なんか知らない奴とか寝てるしねえ』
  下心なら勇ましいが 実のところは人恋しかっただけなのだ 帰
 る電車がないなんて話を聞いたから 送ろうじゃないかって故意に
 スケベったらしく進言してみた なにが誠意だか不明ではある
 『ええっ 知らない人が勝手に寝てるの ふうん なんか変なの』
 『連れの知り合いなんだろうけどさ あきこちゃんには説明できな
 い世界だな 他人のプライバシーなんて考えてない連ればかり』
  駐車場と思しき広場から あきこ嬢は山手に向かって歩いてゆく
 背中を丸めてあとに続き さっと周囲を見渡した 民家に混じって
 斜めに建っている二階建て おそらくあれがアパートだろう
 『あの建物かい 第3さつき荘 なかなかに年期の入った』
 『そうよ とにかく安いのよね 内装は改装したばかりだから綺麗
 なの 外見がボロだから安いんだって 不動産屋さんの受け売り』
  そう言うのならそうなのだろうけども まるで若者の内臓を移植
 した老人のようなものだって 話しそうになり言葉を飲み込んだ
 『ここから上がってね 一応アパートの駐車場だから 大家さんは
 停めてもいいって話だけど あたしはほら 車に乗らないから』
 『えっ ああ なら安心だけど 駐車場付きなんだねえ』
  広場の脇の茂みの切れ目 雑草の隙間に道が延びている そのま
 ま数メートルで波トタン張りの小さな小屋 街灯の明りでは見渡せ
 る限界 おそらく小屋の向こうにアパートの入口があるのだろう
 『あきこちゃんは歯科医の看護婦だったよね 言っちゃ失礼だけど
 給料高いんじゃないの 駐車場があるなら車を買えばいいのに』
 『高いわよ あたしは資格を持ってるもん でも貯金するの 貯ま
 ったらぱーっと旅行しちゃうから 通勤は電車で充分ね』
  給料が高いのは宴会の最初の頃に聞いていた 確認した話を更に
 質問する常套手段 親密な関係には用いることのできない卑怯な話
 法だ 必要なら車も買うだろう 元から意味のない質問だ
 『この2階 1階は物騒でしょ 暗いから階段に気を付けてね』
 『女の子は2階がいいのかあ そりゃまあそうかな なるほどね』
  ハンドバックに手を突っ込んで あきこ嬢は鍵を取りだした 第
 3さつき荘の203号室 間近で見ればかなりの老朽アパートだが
 確かに手入れは行き届いている感じ 建物全体がサッパリしている
 『はいどうぞ 散らかってるけど 気にしないでね』
 『あどうも それじゃお邪魔するけど なに 凄く綺麗じゃない』
  ドアを開けてそのまま奥へ 玄関の照明はキッチンを突っ切った
 部屋に入らなければ点けられないらしい 最初に目に入ったのはた
 くさんの靴 入ってすぐが通路兼キッチン どこもかしこも散らか
 っているところなどないではないか まあ こんなものだろう
 『朝寝坊しちゃって 掃除する時間がなかったの やだっ あはは
 見なかったことにしてね 狩野君はコーヒーがいいわよね』
 『はああ 女の子の部屋かあ なにか感慨深いなあ お構いなく』
  奥の部屋に通されて 座った隣りに靴下が落ちていた あきこ嬢
 は慌てて掴んで隠してしまったが この程度で散らかっているのか
 謙遜なのか本心なのか 見せるための装飾でないことは確かだ
 『男の人が来るのって初めてなのよねえ なんか緊張したりして』
 『コーヒーなら抜き抜きで ふうん 彼氏とか 来ないわけ』
  男がいないのも聞いていた しかし以前に付き合っていたかどう
 かは聞いていない 今回の質問は約半分に意味がある キッチンに
 揺れる後ろ姿を眺めながら 眩暈を伴う既視感に襲われた
 『彼氏 そんなのいないもの 狩野君もさっきの話では彼女なんて
 いないでしょ 女の子ってダメなのよね そんな感じって』
 『御明察 ってほどでもないか 男ヤモメにウジが湧く ははん』
  実際には迷惑になる関係もない 部屋は汚いが他人が足を踏み入
 れる世界ではない 自堕落に他人を巻き込むには 潔癖症に勝る忍
 耐力が欠如しているのだ 人恋しさに自嘲する なにを今更
 『はいどうぞっ インスタントだけど ブラックでいいのよね』
 『抜き抜きってのは砂糖水のことなんだよね なんて冗談 それは
 もう喜んで頂きましょう 女の子の部屋でお茶 いやコーヒーか』
  部屋に男を招いて まったく警戒もせずに微笑んでいる こちら
 だってたいした下心も持たずに 邪心がなければ臭いでわかるのか
 お互い様だとしても 無気力に笑ってしまう自分が腑甲斐ない
 『狩野君って 昔から変わらないわよね 実はあたしね』
 『変われないだけ ふう 飲んだら帰るよ 長居しちゃ悪い』

  あきこ嬢がなにを続けようとしたのか 彼女に言葉を飲み込まさ
 せて こちらも言いたいことは飲み込んでしまう どうにかすれば
 どうにかなる状況なんて まったく鼻白んで意気消沈だ
  とにかく気になるのは広場からの脱出方法 一方通行で細い路地
 を抜けてきた果てから さてどうやって後戻りするのか よもやバ
 ックで抜けられまいし まるでウナギ取りの罠のようだと そう思
 って苦笑した 避暑地でウナギ取り 優雅なんだかどうだか






             》 しびる 《
+++++++++++++++++++++++++++++++
(のりこ)>さて連作も第22シーズン 涼連作がはじまりましたが
      その最初の1本がこれですか なんですかこれ?
(しびる)>あー なんですかって こゆのじゃん? 送り狼になり
      そこねる話を描こうかなあって企画な そのまんま
(のりこ)>そのまんまですね 送り狼ってどんな感じなのかなあと
      思ってましたけど そうか この展開で食べちゃうと送
      り狼になるんですね なるほどなるほど
(しびる)>女の子が『食っちゃう』なんて言うな
(のりこ)>それ以外だと下品な表現でしょ さすがに(苦笑)
(しびる)>そゆことを言う自体が下品だ むう
(のりこ)>なんか変な幻想持ってません?
posted by 篠原しびる at 23:57| シンガポール ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 連作系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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