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2006年08月31日

連作21 謹連作12 こちらがわ

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 種別 連作系第21期 謹連作12
 題名 『 こちらがわ 』
 初出 ニフティサーブ/FJAMEA/18番会議室
    1996年12月25日17時04分
 注釈 行頭スペース+30W
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SUBJ:【謹連作】12 こちらがわ

 Sibi-Tem V.4.1

 あくまでも謙虚に 謹んで書きましょう 謹連作 #12(B群)
 



          『 こちらがわ 』


                        作:しびる





  ジャージ姿の若者が カラコロとトイレサンダルを鳴らしながら
 駆け抜ける その若者の後ろからスクーター おそらく知り合いだ
 ったのだろう 掛け声は聞こえなかったが なにかを合図にふたり
 は手を打ち鳴らし 先の交差点を左右に分かれた
  大学の城下町には特殊な空気が流れる コンビニエンスな環境は
 短期滞在の周期に合わせて 安価な不精な簡易な生活 所帯の維持
 を二の次に考える環境は しかし実際には学生だけに適したもので
 もない ある種の状況におかれた人間にも やはり快適なのである

 『危ないから気を付けろ 車が来ないか 見てから渡らなきゃな』
 『うん みぎみてひだりみてみぎみてわたるの はやくいこっ』
  土曜日の午後5時 アパートから近所の弁当屋へ まだ夕暮れに
 は遠く午後の空気 娘とふたり狭い歩道を歩く 生温い風が吹く
 『急がなくてもいい 弁当はなくならない もう我慢できないか』
 『べつにいっ あんまりおなかすいてないもん』
  幼稚園から戻ってきてなにか食べていた オヤツで腹を膨らませ
 るのも構わないが とにかく夕食は平らげさせる そのうち身につ
 くだろうと考える 躾けとはそんなものだろう おそらくは
 『とーさんはあるくのおそいよ はやくいこっ はやくう』
 『ならどうして急ぐ こらこら 先に行っちゃいかん さりなっ』
  俺が結んだポニーテールを揺らし こざっぱりした服は実家の姉
 が選んだもの 娘のさりなは親馬鹿でもかわいい 元気で利発でと
 にかく俺の娘だ 女の子は男親に似る それでなにも問題ない
 『てをつながなくてもだいじょーぶだよ むこうでまってるねっ』
 『ばかっ さーりなっ 危ないから走るんじゃない こら』
  ジャージの若者が曲がった方向 一方通行が交わる交差点を横断
 し更に右に進む 少し歩けば小さな弁当屋 狭苦しい街並みに若者
 の姿が溢れ こんな道路にも車やバイクの往来が絶えない
  腕を大きく振って繋ぐ手を解き 娘は振り返りもせず駆けてゆく
 慌てて襟首を捕まえようとしたが 寸でで間に合わなかった
 『ひとりで渡るんじゃない さりなっ そこで待ってなさい』
  交差点の手前でブルブルと首を左右に振り 確認するのもおざな
 りだ カタチは覚えても物事の原理原則を知らない 妙な予感に駆
 けだした瞬間 娘の姿に黒い影が重なった 同時に金切り音が響く
 『さりなーっ わああああっ さりなーっ』
  一方通行道路を右側から 不法駐車の車両に隠れ 街の喧噪はエ
 ンジン音をかき消していた 速度をあげて交差点に侵入したのは赤
 いクーペ 横断を始めた娘が佇んでいたその場所に 運転席の女性
 の横顔が凍りついていた 世界中の音が消え すべての色を失った
 『なっ なんてこと さっさりな』
  身体中の感覚が変になる 赤い車に向かって突撃し 邪魔なボン
 ネットを踏み付けた 運転席のドアの開く音 娘の姿を夢中に探す
 どす黒い感覚が胸の底から沸き上がる 吐き気を覚えるような怒り
 噛み締める奥歯が軋んでいる そしてボンネットの上に座り込んだ
 『いいやああああん とーさとーさん うわああああん』
 『やだやだっ あたしったらあたしったら どうしよう やだっ』
 『さりなっ 大丈夫かっ 邪魔だ退け さりな』
  音のない瞬間に娘の泣き声が突如響く 青ざめた顔の女性が運転
 席から現れ 娘の泣き声はその姿の向こうから ちまちまと周囲を
 見回す女性を突き飛ばし 慌てて娘に駆け寄った
 『さりな 大丈夫か どこか怪我してるのか 痛いところはどこだ
 泣いてちゃわからんだろ いや怒ってるんじゃない なんだお前』
 『すす すみません なにか急に見えなくて こんなつもりでは』
  娘は泣いているが直感で理解した 大声で泣く子供は大丈夫であ
 る 本当に心配しなければならないのは泣かない子供 ぐったりし
 ている場合は一大事 あとは傷口の確認と問診だ 背後からの女性
 の声に睨み付けてしまった 彼女よりも娘に対して不用心だったか
 『もういいから行け どこも怪我はしていない 気を付けろよ』
 『ごめんなさい 急に飛びだしてきたから いえあたしが悪いんで
 す ふう よかった ごめんなさいねお嬢ちゃん はああ』
  娘を抱き上げて強く抱き締める 娘は俺の命だ 驚いた反動で甘
 えているだけ 抱き締めればわかる これは甘えているときの甘酸
 っぱい臭い 女性に頭を撫でれれそうになり遠ざけ 途端に彼女は
 その場に座り込んだ もしかしてどこか怪我をしているのか
 『おいおい どうかしたのか 怪我したのか』
 『とーさんもうおろして どこもいたくないからだいじょうぶ』
  どうしたものか眺めていた 怪我をしているようではないが こ
 ちらも娘を抱いて声を掛けるくらい 女性は見たところ大学生だろ
 うか この界隈で若い女性なら女子大生 長い髪を顔に垂らしてぺ
 たりと座り込んでいる ずり降りた娘が女性に歩み寄る
 『いたいの どっかけがしたの とーさん ねえねえ』
 『あ ああ きつく言って悪かったな さりなが いや娘の方が悪
 い こいつが飛びだしたからだ 怪我をしてるなら病院へ行こう』
 『あは あはは 大丈夫です さりなちゃんね 怪我してないって
 わかったら力が抜けちゃって よかった ふにゃ ふええええん』
  笑ったり泣いたり忙しい性格だ 娘をしっかと抱き締めて大声で
 泣いている 確かに悪いのは娘の方だ すぐには驚きと怒りで混乱
 していたが 怒鳴ったりしたのは悪かったと思う
 『あんたも怪我はなしか なら引き分けで解決にしようや さりな
 もこれに懲りて飛びだしたりはしないだろうしな しないよな』
 『うん しないとおもう みぎみてひだりみてみぎみてだよ』
 『あはは さりなちゃんは偉いわね それじゃどうも』

  ニッコリと微笑んで娘と握手 そして何度も頭を下げて走り去っ
 た 結局名前もなにも聞かなかったが 別にどうだって構わないこ
 とだ ある日の夕方のちょっとした事件 そのうち忘れてしまうよ
 うな些細な出来事 生死の境目が日常に潜んでいようとも 無事に
 生きていれば腹も減る 目指すは弁当屋だ








             》 しびる 《
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(のりこ)>あああああ 心臓に悪いですよ すっかり内容なんか忘
      れてましたから もう こゆのはいけませんねえ
(しびる)>忘れてたとはどういう了見だ バカちんが
(のりこ)>あーでもよかった さりなちゃん もしどうかしてたら
      どうしようかと思いました この運転してた彼女の気持
      ちがすごくよくわかりますよ あ それが狙い?
(しびる)>決まってるじゃん それ以外にこの話になにがあるよ?
(のりこ)>いやあ さすがですねえ ってあんまししびさんをほめ
      るとまた叱られますけど さすがですよ これは
(しびる)>はからずもバカちん従業員でまた実験ができたってこと
      か 緊張と緩和 その実験が企画のメインだし
(のりこ)>んー しびさんの作品の場合 なんてことない日常の描
      写は危険ですからねえ 殺人とか異界の生物とか ほと
      んどはそのまま普通の日常ですし 油断できないです
(しびる)>油断するなよ 事務所のスタッフのくせに
posted by 篠原しびる at 23:51| シンガポール ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | 連作系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

連作21 謹連作11 果報は寝て待て

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 種別 連作系第21期 謹連作11
 題名 『 果報は寝て待て 』
 初出 ニフティサーブ/FJAMEA/18番会議室
    1996年12月17日01時40分
 注釈 行頭スペース+30W
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SUBJ:【謹連作】11 果報は寝て待て

 Sibi-Tem V.4.1

 あくまでも謙虚に 謹んで書きましょう 謹連作 #11(B群)
 



          『 果報は寝て待て 』


                        作:しびる





  朝晩の定時連絡が途絶えて まったく姿を現さなくなって3日間
 なにかのトラブルで海の底にでも沈んだのかと思い始めた頃 アポ
 もなしに事務所を訪れた 深夜25時 まだ宵の口である
  消化器系を患っていそうな青白い顔 眼鏡の奥にはドス黒い隈が
 妙にぎらつく瞳を際立たせる 大理石の壁を背景に佇むのは真黒の
 スーツに長身の男性 ブリーフケースを抱えタバコに火を点けた

 『多重人格なのに ははっ 全員が同じ性格 しかし別人格』
 『いつ入れ替わったのかわからないじゃない 精神科医の言葉なん
 か信じるべきじゃないわ あれも客商売でしょ つまりビジネス』
  そう話しながら挙動に注意する 明らかに尋常ではない眼差しは
 狂気よりも別のなにか 先程から瞬きをしていない
 『クルクルと入れ替わる その度に記憶がなくなり 今こうして喋
 る自分も さて 別の誰かの裏番組かも ははっはははっ』
 『裏番組 面白いじゃない どこでそんな気の効いた言い回しを覚
 えてきたのかしら あなたのボキャブラリーに存在しない単語ね』
 『あなたってのが誰だか 実は あんたのことも覚えちゃいない』
  この業界も長いから 相手の筋肉の緊張で間合いが取れる そう
 と悟られないように腰に手を延ばし 決着は瞬間の差だ
 『ただ覚えていることといえば ごっ がふあっ』
  額に着弾 そしてそのまま頭部右半分と右目を吹き飛ばす 躊躇
 せずに胸部中央に2発 真紅の鮮血が大理石の壁に弧を描く ブリ
 ーフケースの陰に握るルガーレプリカが 発砲されずに床に転がる
 『ごぐあっ がっがががっ ひひゅるるるる』
 『なるほど 3発じゃ殺せるのも3人なのね 全部で何人かしら』
  溜息をつきながらデスクを回り込む 床で蠢く姿には まだ幾許
 かの生命の痕跡 細身のサーベルを抜きながら少しうんざり 生臭
 い染は床の絨毯を汚し続けている そこでドアが開いた
 『これはっ 夜警はどこにいるかっ 貴様らあ何をしていた』
 『いいところに来たわね そら これで首を刎ねちゃいなさい』
  巨体のわりに俊敏な動きをする 現われたのは役職ならば常務取
 締役 ごつい声で叫びながら 警備担当者は殺されてしまうかもし
 れない 投げたサーベルを受け取り 返事もせずに一閃両断
 『すんません こいつは先に始末しておくべきでした 様子がおか
 しいってなあ気付いていましたが 部屋付きは誰だっ馬鹿野郎』
 『いいのよ あたしが通したんだもの それよりも部屋が汚れちゃ
 ったわね 明日の朝一までに綺麗になるかしら できるわね』
  どかどかと常夜の若い衆が現われる 端から常務に殴り飛ばされ
 て この調子では更に床が汚れることになる そんなことよりも先
 決問題 とうとうウチの社員にまで刺客が潜入 方法は不明だ
 『できない奴あ今言え すぐにやるんだ馬鹿野郎 社長 タジマは
 薬でも病気でもない様子で なんてえか その別人のような』
 『いい勘してるわね 自分でも別人だって言ってたわよ』
  転がった首を跨いで血の染を踏まないように しゃがみ込む常務
 の肩に手を乗せバランスを取る 命ずれば血の海に自分の体で橋を
 造るだろうけれど そんなのは趣味じゃなし 死体を一瞥する
 『似てるのなら洗脳かしら あなたなら そうね現場で見たことも
 あるでしょ 本当に死なないのよね すぐに調べなさい』
 『ゾンビ野郎の噂ですか あっしは信じちゃいませんが なるほど
 首を刎ねれば死ぬってのも ではさっそく ヤマダを呼んでこい』
  蛇の道って呼び方は好きじゃない それでもこの業界ならではの
 情報網もある 特に利害だけの突出した世界であるから それだけ
 に甘ったるい迷信は存在しない あるのは現実だけだ
 『ゾンビだろうとなんだろうと 対立する組織をすべて洗いなさい
 彼の数日間の行動は把握してるの 確か奥さんがいたわね』
 『こいつがいなくなった日から行方不明です 部屋には夕食の準備
 がそのままで 立ち回りそうな場所は調べてるんですが 来たか』
 『今帰りました 社長 御無沙汰しております』
  現われたのは小柄な男性 先代からの情報担当で 苗字以外はす
 べて不明 死体を眺めて表情も変えず 慇懃に頭を下げながら懐に
 手をやる 間に割って入る常務の仕草は無意識の行動だろう
 『これを それとこれも すべてSKGの参加者です』
 『SKGってのは確か宗教法人よね 修羅顕現教なら高橋の伯父様
 の所有じゃなかったかしら どうなっているの 説明なさい』
  神道系の宗教法人 伯父の所有する企業の税金対策と 最近では
 羨むほどの収益も上げていると聞いている 一族の中でも高橋筋と
 は確執は少ない ましてや対立などは有り得ないことだ
 『ヤマダあ 押さえてねえ話は命縮めるぞ タジマが写ってるよう
 だがSKGとは繋がらんだろ 社長 別件で調べていますが』
 『SKGの実権は 既に高橋家にはありません 教祖キヤマを筆頭
 に幹部の独走が目立ちます 高橋氏では押さえられないで がっ』
  どうも短気でいけない 常務は不義理非礼にはことのほか敏感で
 分を弁えない発言に間髪を入れない鉄拳 おそらく50は過ぎてい
 るであろう肉体に100キロ超の拳だ そのまま血の海に倒れ込み
 更に常務の蹴りが入る 止めないと殺してしまうだろう
 『辞めなさい 噂なら聞いているけれど それほどとは思わなかっ
 たわね 確かにあそこの教祖連中は怪しいわ どうするつもり』
 『すんません 社長から伯父貴殿に通してもらえませんでしょうか
 話がつけばすぐにでも そこのお前 ヤマダを診てやれ』
  争い事は避けたいが 大義名分があれば伯父にも義理を欠くこと
 はないだろう 伯父が手を焼く相手なら 成敗するに吝かではない
 うまくすればSKGの利益享受 なら早い方がいい
 『そうね今夜中に片してしまいましょう 寝込みを襲ってやっちゃ
 いなさい 少々荒事でも構わないわ 宗教法人が幸いね』
 『わかりました 幹部に召集を掛けろや では社長 朝までに』

  大きな体を小さく屈めて 常務は恭しく頭を下げる まことに清
 々しい態度は幹部の鑑 あたしは常務の頬に手を添えて 激励すれ
 ば地獄にでも攻め入るだろう こんなに頼もしい部下もない
  とにかく朝一には執務室も綺麗になって 修羅顕現教の教祖一味
 の首も並ぶだろう 相手が怪しいゾンビの元締めでも 始末する方
 法がわかっているなら簡単なこと あたしは吉報を待って少し眠る
 としよう 果報は寝て待てとか言ったりもするらしい







             》 しびる 《
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(のりこ)>いやあ ヤクザやさんに怪しい宗教法人にゾンビですか
      こんだけのネタをコンパクトに収めましたねえ
(しびる)>前半をもうちょい説明すべきだったな そうと理解して
      読み返せば問題ないけど 初回じゃ冒頭部分の読解率は
      半分もないと見たが? いまさら仕方ないけど
(のりこ)>ですねえ 組長さんと刺客とかいう男性とのやりとりは
      もうちょい説明が入らないとややこしいですか
(しびる)>そのくせ後半は説明が多いな まあそういう企画だし仕
      方ないけど あとルガーは彼女に持たせるべきだったか
(のりこ)>ルガー?
(しびる)>ルガーP08 けっこう好きなデザインなんだけど 尺
      取り虫のところが弱くてなあ 仕方ないからレプリカだ
      けど それじゃまったく味がないんだわ とほほ
(のりこ)>なにがなにやらまったく理解できません?
(しびる)>仕方ないばっかし言ってるなあ
posted by 篠原しびる at 23:50| シンガポール ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | 連作系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

連作21 謹連作10 ないとめあ・ないと14

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 種別 連作系第21期 謹連作10
 題名 『 ないとめあ・ないと14 』
 初出 ニフティサーブ/FJAMEA/18番会議室
    1996年12月15日00時45分
 注釈 行頭スペース+30W
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SUBJ:【謹連作】10 ないとめあ・ないと14

 Sibi-Tem V.4.1

 あくまでも謙虚に 謹んで書きましょう 謹連作 #10(A群)
 



        『 ないとめあ・ないと14 』


                        作:しびる





  悪夢だと思っていた状況が もしかすれば現実かと感じ始めた途
 端に その現実が跡形もなく破壊されてしまったのだ こうなれば
 悪夢も現実もあったものじゃない どちらにしても仕方がないのが
 正直なところ この期に及んで なにをどうしろって言うのか
  とにかく緑色の巨大怪物に蹂躙された街を さらにあたしの操る
 金色の巨大な乗り物が焼き尽くす もしも人間が住んでいる街だっ
 たと思うとするならば あたしの意識は一瞬にしておかしくなって
 しまうだろうから 精神の安全のためには やはり悪夢だと納得す
 る他ないだろうと感じていた おそらく無意識に それとなく

 『直ちに波動孔を設営する ビデンス中尉 ス界への巡邏を命ずる
 うぬがリシアにて 先駆けの武功を果すがよかろう』
 『はっ 御意に スツーヌ界へ姫様の威光をば布告いたします』
 『リシアでは役不足ですわ 姫姉様 ここはリギダめのパルメルシ
 アにて ス界程度の布陣 瞬時にて殲滅いたしましょう』
  慣れたとは言え妙な視界だ 鳥のようにも獣のようにも見える赤
 銅色の飛行物体はビデンス それよりも少し大きくてウロコのよう
 なものが多い銀色がリギダの乗り物 見えていると感じているの中
 間ぐらい 確かに見ているけれど 知らないことまで感じられる
 『リギダには波動孔の具現を命ずる ス軍の殲滅が目的ではない』
 『友好関係って言ってたのに どうしてみんなこんなに好戦的なん
 だろうね ビデンスも あまり無茶しちゃダメだと思うよ』
 『姫様ななよ様の御意のままに 先遣の命を完遂いたしましょう』
  なにか言い回しは慇懃だけど あたしやフィラの言うことには背
 かないだろうから 粗暴な問題児はリギダである 隙があればフィ
 ラの命を狙うような性格だから おとなしくしているのが不思議だ
 『それじゃななよ リギダが送信してくる座標 そうね 引っ張ら
 れるように感じる方向 そちらに向かって気持ちを傾けて』
 『引っ張られる感じ ふむ あっちかな 気持ち気持ち おあ!』
  フィラの説明は方法だけだから いつでも結果に驚かされること
 になる 今だって気分を傾けた瞬間 額の部分から鳥肌の立つよう
 な気持ちの悪い感触 視界は青色 頭上のフィラは落ち着かない
 『少し我慢してね ランタルシア それもロドゲルシアが通過でき
 る波動孔を設営するには やはり少し時間が掛かるのよね』
 『なんでもいいけど むうん 気持ち悪いよ オデコの皮膚の下に
 小さな虫が這い回るような どうにかなんないかな むむむん』
  青紫色の夜空にスカイブルーの閃光が延びる おそらくあたし達
 の乗り物の頭部から迸る光の束は まるで夜空の壁に滴るように波
 紋を描く 波動って呼び方の意味もなにも とにかく不快 と眉を
 しかめたところで視界を過る影 銀色の巨体に青い照り返し
 『姫姉様 このリギダに後詰めはあまりの仕打ち ビデンス 先駆
 けは頂くぞ 武功を競りたければ続くがよい おほほほ』
 『リギダ! 度重なる背反 もはや許さぬぞ! 戻らねば撃つ』
 『やっぱり我慢できなかったか こうなるんじゃないかって思って
 たんだよね 本当に撃ち落としちゃうの フィラ』
  馬鹿笑いしながら天地無用の飛び方だ 巨大な翼を変に捩曲げて
 波紋の中心に向かって突撃を掛ける フィラは撃ち落とすなんて言
 っているけれど もう間に合わないのはあたしにもわかる
 『リギダは造反分子ってわけね これも予定通りよ ビデンス中尉
 急ぎ追跡せよ 逆らうようならば重火器の使用も許可する』
  リギダの乗り物は閃光の彼方に飲み込まれてしまった フィラに
 命ぜられたビデンスもあとに続く とにかく予定通りらしい 先走
 るリギダを合法的に抹殺する計画か それとも向こうの世界とやら
 でリギダが暴れるのが計画なのか どちらにしても物騒だ
 『フィラさあ こんなときにあれだけど フィラって毎日こんな暮
 らしをしているわけ お姫様なのに 荒んでるじゃない』
 『全軍の統帥権はあたしが握ってるわけだもの それは王女って立
 場が基本でしょ ななよの意見には矛盾があるわね さてと』
  フィラはあたしの頭の上でお腹を膨らませている カエルの姿で
 喋れるのが不思議だけど 不思議なんて今更 だから姫様が謀略と
 殺戮の日々だからって考えても意味はないのかもしれない
 『行くわよ ななよ この世界の処遇は後程考えるとして とにか
 くスツーヌ界に布陣するわ サンクレストの関与できない世界ね』
 『フジンって布陣でしょ 仲良くしてる世界じゃないの ああっと
 説明してくれなくてもわかるよ 飛べばいいのよね はいはい』
  会話じゃない部分も理解できる フィラの考えの流れ 理屈は説
 明してくれなきゃわからないけれど 感覚的なことは同化してしま
 ったような いつからか自然に もうどちらが飛んでいるのか
 『抜けた途端に流されるわよ 深層意識のななよを連れてきたこと
 のない世界だから まあ ビデンス中尉がいるでしょうけれど』
 『深層意識のあたし なんだかなあ っと おああああっ!』
  この乗り物の視界はどうにもいけない 注意する部分が拡大され
 ながら周囲すべてを眺めている スカイブルーの閃光の波紋に向か
 って急上昇し そのまま一気に突っ切った先には 気分の悪くなり
 そうな斑のトンネル 広がって伸びて縮む不気味な光景
 『そろそろ抜けるわ おそらく外苑から3割程度の空間 2期まで
 の下等種族がうようよ飛び回っているはずよ』
 『これはまた フィラのお城に似てるかな いやそうでもないか』
  流されるのは本当だ ロドナントカの状況は自分の皮膚のように
 感じられる 凄まじい力で左に流される 周囲は淡いピンク色 彼
 方に向かって濃いオレンジ色に変化 無数に浮かぶのは妙な物体
 『スツーヌ界の最も強大な王国 あれはその雑兵達よ ほとんど理
 性のない2期種族 すぐに察知して襲ってくるでしょうね』
 『あれが生物 なんかやだな フィラはあんなのと仲がいいわけ』

  見渡す限り浮かんでいる あたし達の乗り物でも体育館程度の大
 きさなのに 兵隊だとかいう生物はその数倍はあろうかって巨大さ
 フィラの魚城くらいの生物もいる なんでもありだろうけれど こ
 んなのと友好関係にあるフィラの帝国も偉いものだ 敵は敵でさっ
 きの調子だし なにか途方もない規模の展開である
  それが襲ってくるらしい 理性がないのなら話し合いも無理だろ
 う 考えただけでもうんざり 騒動はこりごりだ






             》 しびる 《
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(のりこ)>ないない14です カリン界編からスツーヌ界編へ な
      にがなにやらの世界観はいまさらですけど この辺りか
      らイメージが暴走するんですよね
(しびる)>暴走するというか そもそもちょっとカリン界編が地に
      足をつけすぎてたのな もうちょい荒唐無稽じゃないと
(のりこ)>充分にムチャクチャでしたけどね
(しびる)>いやいや 深夜の路地に街灯が明滅とか そんなのはこ
      のシリーズじゃなくてもどこでもできる そう考えてい
      きなし超巨大生物に破壊させたんだが
(のりこ)>それもそうですけどね メリハリって言葉もありますし
(しびる)>せっかく夢話なんだもん いろいろハメ外さなきゃ
(のりこ)>まあねえ んー
posted by 篠原しびる at 23:49| シンガポール ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | 連作系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

連作21 謹連作09 もんざい

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 種別 連作系第21期 謹連作09
 題名 『 もんざい 』
 初出 ニフティサーブ/FJAMEA/18番会議室
    1996年12月11日11時30分
 注釈 行頭スペース+30W
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SUBJ:【謹連作】09 もんざい

 Sibi-Tem V.4.1

 あくまでも謙虚に 謹んで書きましょう 謹連作 #09(B群)
 



           『 もんざい 』


                        作:しびる





  誰が提案したのかは説明しなくても決まっている クラスでなに
 かを提案するのはひとりだけ 大事なのは決まったことを誰がやる
 のか みんなの意見はその事についてだ やらなきゃいけないこと
 は提案のときに決まっている 変だけどそうなのだ
  今回決まったのは学級新聞 作るのは週に一回で6個の班が順番
 に作る 内容は勝手に決めていいけれど 責任者は班の生活委員に
 押し付けられた 図書委員じゃないのも理由は簡単 提案した人が
 図書委員だからだ ちなみに僕は美化委員だったりする

 『たつや ちょっと来てみろよ そんなのいいって 早くしろよ』
 『よくないよ 壊れたのがバレたらどうすんのさ』
  教務課の先生にカートリッジをもらって それを差し込んでコピ
 ーする カートリッジには枚数表示がついていて 差し込まないと
 コピーできない仕組み クラスのはピンク色 先生達のは金属だ
 『最初から壊れてましたって言えよ それよりも早く来いって』
 『図書委員は吉岡君なのにさ 自分で言い訳すればいいのに』
  輪転機はいつでも故障中だから どんなプリントも全部コピーだ
 それでコピー機まで壊れてしまうだなんて とにかくピーピー鳴っ
 ている音だけでもどうにかしなくちゃいけない と思うのに
 『もう職員会議が始まってる時間じゃないかな 立ち聞きしちゃい
 けないよ そんなのは しちゃいけないことだってば』
 『賢そうなことを言うよな たつやって まあいいから来てみろ』
  今日は金曜日で 学級新聞の発行も金曜日だ 朝の学級会で配る
 ことになっているから 昨日の夜に吉岡君から電話が掛かった 朝
 早くから人数分のコピー すぐに終わるって話がこの時間
 『なんか揉めてるみたいだぞ 蝦名先生の名前が多いな また問題
 を起こしたんじゃないか たつや 生徒として責任があるだろ』
 『そんなの知らない 聞かない方がいいよ 僕は聞かないからね』
  印刷室は校長室と職員室の間にある この3個の部屋は窓際のド
 アで繋がっていて ドアに近付けば職員室の話を聞くことができる
 今はちょうど朝の職員会議の時間で 本当なら教室で先生が来るの
 を待っている時間だ クラスによってやることは色々 読書会とか
 『なら中継してやるよ 司会は教頭先生だ ああっと蝦名先生が発
 言してる 組合の人間が業者テストに賛成はおかしいって ほう』
 『聞きたくないって言ってるのに どこが壊れたのかなあ』
  吉岡君は意味がわかるのか 隣りの部屋を中継しながら変な笑い
 方をしている 聞いているのを喜んでいるように見えるとイヤだか
 ら 仕組のわからないコピー機を覗き込んでみる なんか辛い
 『たつやにはわかんねーだろ 文部省のオタッシで業者テストは禁
 止なんだぜ でも秘密でやってる学校が多いんだよな』
 『なにそれ 業者テストってなに 秘密でやってるの どうして』
  たまに思うけれど 人間には2種類いると思う 僕のよく知らな
 い世界を知っている人間と 僕みたいな人間 大人とか子供とか関
 係なしに 知っている人間はみんな同じ感じがする なぜだろう
 『あの声は2の2の片桐先生だな サツキ会と職員組合を混同する
 なって 蝦名先生はどちらも入ってないもんな おおっ叫んでる』
  中継してもらわなくても聞こえる 蝦名先生の声はよく通る 内
 容まではわからないけれど 凄い声で怒鳴っている 生徒を叱ると
 きとは少し違う声 なぜか心臓がドキドキする 少し怖いのかも
 『吉岡君 もう教室に戻ろう こんなの聞いてちゃいけないよ』
 『ああん 別にビビんなくてもいいじゃん それにさ たつや 片
 桐先生って言えば蝦名先生とつきあってたんだぜ 興味あるだろ』
  先生同志がつきあっている 吉岡君は面白そうに話すが まるで
 本当のことには聞こえない つきあってたってことは 今はつきあ
 ってなくて 前はつきあってたってことだ 前っていつのことだ
 『サツキ会の違う学校の先生と片桐先生がデキちゃって 蝦名先生
 は捨てられたんだな 捨てたんじゃないかって話もあるけど』
 『そんな話はどこで聞くの みんなも知ってるのかな』
 『たつやはさ 構わなねーけど 子供だよな いいんじゃないか』
  大人がいやらしいことをするのは理解できる ドラマやマンガで
 も見ることがある どんなふうにするのかも知っているけれど そ
 れを僕の周りの大人もしている 先生とか近所の人とか親戚の人と
 か それがどうも本当のこととは思えない ウチの親もそうだ
 『今度は職員室の禁煙問題 なんか今日はイライラしてるなあ 気
 を付けて暮らさなきゃいけないぞ さてと証拠を隠滅して戻ろう』
 『それがいいよ なんかこんなことって悪い事だもん』
  吉岡君は唇をへの字に歪めて コピー機はまだピーピー鳴ってい
 るけれど なんなら電源を切れば音は止められる 毎朝職員会議は
 やっている でもこんなふうだとは知らなかった イヤな感じだ
 『証拠隠滅ってどうするの 教務課の先生は使っていたのを知って
 いるよ 前から壊れてたって信じてもらえないと思う』
 『俺達の言うことを疑ったりしないぜ ごめんなさい壊してしまい
 ましたって説明してから たつやの責任じゃない説明をしろよ』
  吉岡君はコピー用紙を束ねて めんどくさそうにコピー機を眺め
 る そもそも吉岡君が変な紙を入れたから壊れたのに ボタンを押
 した僕の責任だってのはズルイと思う ズルイとは言えないけれど
 『そんなのできないよ もう正直に謝ろうよ それがいいって』
 『たつやなあ そんなのでこれから先も生きていくのかあ バカ正
 直ってのはバカだろ お前の勝手に俺まで巻き込むなよ 頼むぜ』
 『あら あなたたち こんなところで何をしてるの』
  吉岡君が肩を窄めたところでドアが開いた 僕達も驚いたけれど
 入ってきた蝦名先生も驚いたらしい 僕は急にどう答えたものか喋
 れなくなった でも吉岡君は咄嗟に返事をした
 『あ 先生 おはようございます 先生達の会議が始まる前にコピ
 ーをしちゃおうと思って たつや 急ごうぜ 怒られるぞ』
 『そうなの でももう自主会の時間になってるわよ 教室に戻って
 コピーは休み時間にしなさい 配るのは終わりの会でいいでしょ』
 『そうしようよ 吉岡君 あとでいいと思うよ そうします』

  吉岡君の返事は完璧だった 会議が始まる前に済ませるつもりな
 ら 会議のことを聞いていなかったのと今来たところだって説明に
 なる それにコピー機は触っていないことにもなるから 僕達が壊
 したことにはならない 会議がもめているのを知っているから 終
 わりの会で配りなさいって先生が言うのも決まっていたはずだ
  どうしてこんなふうにできるのだろう 咄嗟に凄いことができる
 人とできない人 僕はできない方の人間だ 吉岡君の説明が完璧だ
 ったのも2時間目ぐらいになってわかったくらいだもん
  でも良く考えれば 吉岡君は文字の写っているコピー用紙を持っ
 ていたけれど それはコピーをもうしたって証拠にはならないのだ
 ろうか 先生はそれを知っていて それでも黙っていたのかもしれ
 ない そんなふうにも考えた あとで怒られなきゃいいけれど







             》 しびる 《
+++++++++++++++++++++++++++++++
(のりこ)>たっちゃんシリーズです お子ちゃまなたっちゃんもプ
      リティですが なまいきな吉岡くんもまたよしです
(しびる)>のりこはそっちでいくのか 特に禁止はしないけどなあ
      その世界の果てには魔王ふうこが住んでるぞ
(のりこ)>ダメですって 名前をだしちゃ 危ない危ない(苦笑)
(しびる)>小学生は便利だけど なんかつまらんな
(のりこ)>そうですか? 私はけっこうこのシリーズが好きですけ
      ど つまり主人公の心象を完全に鳥瞰するって楽しみ方
      でしょ スレた同級生たちの中で たっちゃんが一生懸
      命いろいろ考えるところを楽しむと そゆことですね
(しびる)>まあそんな感じだわな たつやコドモだもんなあ
(のりこ)>なんかカタカナで書くと携帯電話の会社みたいですね
(しびる)>なにが? あー コドモか やっぱひらがなかな
(のりこ)>そもそも『子』に『共』をつけるのはどうだって批判が
      ありますよね なら『子たち』だろとか
(しびる)>肝心なのは精神であって文字表現じゃないんだけどな
(のりこ)>表現がココロだって意見の人もいるんですよ
posted by 篠原しびる at 23:48| シンガポール ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | 連作系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

連作21 謹連作08 いかにとやせん

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 種別 連作系第21期 謹連作08
 題名 『 いかにとやせん 』
 初出 ニフティサーブ/FJAMEA/18番会議室
    1996年12月06日00時04分
 注釈 行頭スペース+30W
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SUBJ:【謹連作】08 いかにとやせん

 Sibi-Tem V.4.1

 あくまでも謙虚に 謹んで書きましょう 謹連作 #08(B群)
 



         『 いかにとやせん 』


                        作:しびる





  この歳になって考えれば いわゆる学校と呼ばれる施設に通って
 いた頃は 年齢こそ限定されていたものの あらゆる種類の人間が
 同じプログラムで行動していたわけだ 生活環境や嗜好や思想など
 凡そ社会人になれば同居できそうにない様々なベクトル
  オトナになるってことは自分の生活を確立すること つまり簡単
 に説明すれば住み分けすること 仕事も趣味も住環境も 快適に暮
 らそうと考える集団の適応拡散だから 結局のところオトナになっ
 てしまえば 周囲に似たような人間がゴロゴロすることになる
  これは確かに快適なことだが 男女関係だってソレ式 快適が過
 ぎると同性ばかりの交友関係 そうじゃなくても今更の異性ばかり
 がゴロゴロする ここはひとつ 努力が必要か

 『いや だから河崎君 河崎君なら気に入るタイプだと思うのよ』
 『別にタイプなんてないんだけどね なんか乗り気じゃないなあ』
  いつもセンスを疑うのだが もしかすればこれが最適な選択じゃ
 ないかと思い込んでみる 待ち合せ場所に指定されたのは非常に混
 雑している夕暮れ時のファミレス 大声じゃなきゃ会話も困難だ
 『乗ってもらわなきゃねえ 彼女の方は乗り気なのに』
 『なんで乗り気かなあ 妙な説明で煽ってないだろうね それにさ
 どうしてまあこんな騒がしいところで あ なんかトラブルだな』
  たいした店でもないのに待ち時間が15分 ようやく案内されて
 更にオーダーまで10分 それから凡そ5分以上 もう30分以上
 待たされている計算だ おまけにどこかで女性の叫び声
 『お腹が空くとイライラするでしょ それにあの人 堅気には見え
 ないわね 面倒な人を怒らせたじゃない かわいそうな店長さん』
 『粗筋を作っちゃうのなあ こっちも空腹だけど ああ騒がしい』
  混雑した店内をウエイトレスが駆け抜ける 近所でイベントがあ
 ったわけでもないのに ただの土曜日にこの喧噪は日常的なのだろ
 うか それにしてもあまりの騒がしさに本来の目的を忘れそうだ
 『ところで 約束は18時じゃなかったかな 基本的に構わないけ
 れど あたりまえのように遅刻だよね 連絡もないようだし』
 『それは大間違いよ河崎君 連絡もなしに遅刻したのは河崎君ね』
  大声で話すのも面倒になってきた 重要な単語のみ語気を強めて
 それでも通じるのなら文法もなにもない しかしどうやら意思の疎
 通は怪しい類 待ち合せの二元論なら場所と時間だろう
 『なにそれ 遅れてないじゃないか それとも聞き間違いを』
 『まあまあそんなにムキにならなくても どこにいるかな えっと
 あんなとこにいるわ ともちゃーん おーい ともちゃーん』
  会わせたい女の子がいるらしい 目の前にいるのは女の子は女の
 子でも遊び友達 性別が女性なだけで 分類ならば同性と大差ない
 『なんだよ 先に来てるのなら同じ席にすればいいものを たまに
 意味不明なことをするから だいいちさっきの遅刻問題も あっ』
 『理解できたでしょ この娘がともちゃん 浅野ともこちゃん』
 『こんちわ いらっしゃいませかな ふう なんか混んじゃって』
  すべて理解できた 大声で名前を呼ばれて現われたのは 若草色
 のエプロンとピンクのフリフリミニスカート 三角巾を模した小さ
 な帽子 どう見てもウエイトレス 実際にウエイトレスだろう
 『あ どーも河崎です ここで働いてたのですか なるほど』
 『なに 説明してなかったの 普段はこんなに混んでないのよね』
 『ともちゃーん どう 思ったよりもいい男でしょ あたしの持ち
 札の中で いちばんいいのを連れてきたのよね 感謝しなさい』
  なにかミもフタもない説明だ 褒められれば嬉しいが 友人を扱
 うのに持ち札はないだろう それにあいかわらず意図の読めないセ
 ッティング 状況は理解できたが これが最適と考えたのか
 『あははは ごめんなさい この娘ってばいつもこの調子で って
 河崎さんも御存知ですね ところでひさちゃん オーダーしたの』
 『かなり前にね もう来ないんじゃないかって思うけど』
 『そうかあ 誰とでもこの調子なんだなあ ある意味で貴重かも』
  とにかく 浅野ともこちゃんはカワイイ女の子である 愛敬のあ
 る笑顔に知的な眼差し それになにか この沸き上がってくる衝動
 の意味はなんだろう 一目惚れとかじゃない 少し違う
 『ともちゃんのコネで先に作ってもらえないの 河崎君もほら お
 腹が空いてるって 怒って帰っちゃうかもよ もったいない』
 『そんなことしないって それよりも浅野さん 今日は何時に終わ
 るのですか 仕事が終わってから場所を替えて会いませんか』
 『そんなの簡単 厨房はアルバイト君ばかりだもの あたしに逆ら
 うコなんていないわよ 河崎さん ゆっくりしてってくださいね』
  テーブルのレシートをさっと確認して 浅野ともこちゃんは人差
 指を左右に振る 話からすれば社員さんか ウエイトレスの制服を
 まるでコスプレのように着こなしているのが余裕の表れだ
 『それじゃお願いね それでどう ともちゃんってカワイイでしょ
 それに河崎君は制服に弱いと記憶してたけれど いいでしょ』
 『そうだねえ 提案をやんわり無視したのが気になるけれど カワ
 イイのは認める 制服についても否定しないよ 事実だもの』
  喧噪は収まることを知らず増加するばかり 浅野ともこちゃんの
 後ろ姿を見送ったついでに 視界の端に見えるのは先程の女性 ど
 うやら店長らしき男性の胸ぐらを掴み 今にも殴り掛かりそうな様
 子 なにがあったのか知らないが 怒っている人もいたりする
 『ふたりとも 凄くお似合いだと思うの 人と成りを見てもらうな
 ら 働いている姿がいちばんでしょ 次は河崎君の職場ね』
 『いいけど イメージに偏りがあると思うよ 頭の中に変な世界が
 広がってるんじゃないの ふたりで会社に来るわけ ううん』

  出逢いのキッカケなんて なんだって構わないとは思う 子供の
 頃よりも機動力は増加しても 行動範囲が狭まったりするオトナの
 暮らしだから 街角で偶然の恋の芽生えは期待できない だからこ
 んな設定も選り好みはしていられない 選んでる場合じゃない
  それにしても騒がしい場所 なんだって構わない気分を増長させ
 る作戦なら それはたいした洞察力だと思うけれど さてその辺の
 ところはいかがなものか とにかく空腹なのである







             》 しびる 《
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(のりこ)>で 今度は友人に連れられてのいわゆるお見合い話 な
      んかこゆのが続いてツライやらなにやら複雑です(笑)
(しびる)>たまたまだろ なんも他意はない 友人の紹介で異性に
      逢うって設定をやっておかなきゃと思っただけ
(のりこ)>まあそういうお話なんでしょうけど しかしあれですね
      普通に話せないほどにぎやかなファミレスって設定 ほ
      かにもけっこうありますよね こゆの好きですか
(しびる)>キライじゃねーわな 静かなところでぼそぼそ喋るより
      なんかやけくそ感が本音を引きだすだろ?
(のりこ)>そういう作用はありそうですね どこぞのカントクさん
      は台風を使ったり 叫ぶと本音がでますよね
(しびる)>ふむ それになにより景気がいいじゃん
(のりこ)>にぎやかなのはいいですね
posted by 篠原しびる at 23:46| シンガポール ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | 連作系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

連作21 謹連作07 プリティキューブ 8

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 種別 連作系第21期 謹連作07
 題名 『 プリティキューブ 8 』
 初出 ニフティサーブ/FJAMEA/18番会議室
    1996年12月06日00時04分
 注釈 行頭スペース+30W
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(のりこ)>PQ8ですね
(しびる)>PQシリーズはパス扱いでよろしく
(のりこ)>まあいいんですけど 今回のサブタイトルは『基本は内
      職でしょう』 デビューいきなしの全国ツアー巡業まで
      あと3週間というのが時間設定 それを控えてのサイン
      色紙をやっつけながらのネタ話 登場人物は主人公のち
      さとちゃん あとは前田一家 奥さんのはるかさんと息
      子のしんじくん はいないのか あとデリシャスのミカ
      嬢ちゃんの相方のよしきくん こんなところですか
(しびる)>説明しても意味ないって 端折れ そんなもん
(のりこ)>こういう設定のときってだいたい昔話ですよね 設定の
      おさらいというか インターミッションというのか
(しびる)>どうでもいいじゃん
posted by 篠原しびる at 23:45| シンガポール ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | 連作系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

連作21 謹連作06 不可抗力かあ

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 種別 連作系第21期 謹連作06
 題名 『 不可抗力かあ 』
 初出 ニフティサーブ/FJAMEA/18番会議室
    1996年12月04日02時55分
 注釈 行頭スペース+30W
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SUBJ:【謹連作】06 不可抗力かあ

 Sibi-Tem V.4.1

 あくまでも謙虚に 謹んで書きましょう 謹連作 #06(B群)
 



          『 不可抗力かあ 』


                        作:しびる





  規則正しい生活を しかしまあ日によって予定の違いがあるから
 やらなきゃいけないことを消化する生活 食事は三度それも間食は
 抜きで 就寝時間はバラバラでも起床時間は決まっているとか 購
 入する週刊誌の量 毎週見るドラマの数 平均通話時間 トイレの
 回数なんかもだいたいのところ決まってくる そんな生活
  それらを決定するのは就業時間や賃金の額だ 遅刻しないために
 は起床時間も規則正しく 所持金で行動範囲も決まる オトナにな
 れば自然と規則正しい そうじゃない暮らしは不可能なのだ 仕事
 を辞めてしまうって選択もあるにはあるけれど それを選んじゃう
 のはオトナじゃない だからオトナの生活は規則正しいわけ

 『おはよう なんか怠いなあ 頭も重いし よいしょっと』
  月曜から金曜日まで 毎日きっかり6時30分に目覚まし時計が
 鳴る 曜日を設定できる優れ物 5年前に姪っ子から貰ったのだ
 『飲んで帰ったでしょ 玄関の鍵が掛けてなかったわよ きちんと
 できないなら門限は守りなさい お父さんに報告してもいいの』
 『そうだっけ なんか覚えてないなあ ふわああ 怠い怠い』
  お母さんは主婦の人だが規則正しい あたしがきっかり起きるな
 ら 朝食だってきっかりできている 記憶にある限りお母さんより
 先に起きたことはない 徹夜の場合は除いて それはそうだけど
 『だってさ 付き合いってあるもん かちょーさんが言ってたけど
 飲まずに帰るような人は定年までいないってね だから飲み会』
 『なあに 定年まで働く気でいるの とっとと結婚退職してしまい
 なさい 家事も覚えて もう27歳なのよ 遅いくらいね』
  どんな話も結婚話になってしまう 家族も親戚も御近所も 天気
 の挨拶の次には結婚話 ちなみにまだ26歳だ 手に持って細かく
 振れば20代前半に見える年齢 四捨五入は計算方法から除外
 『もういいって 朝からそんな話は へいへい それにしても朝食
 からスキヤキだなんて そうかあ 昨日はスキヤキだったのか』
 『次の日の冷めたスキヤキがいいって話してたわね ご希望通り』
  前にそんな話をしてたかどうだか お母さんはなにか怒っている
 のか 飲んで帰るのも鍵を掛け忘れるのも 食卓に向かって煎茶を
 すすってみる それともなにか別件が発覚したのだろうか
 『ふああ ならスキヤキ弁当かあ ふうむ なんか怒ってるの』
 『親が叱るような歳じゃないでしょ ひろみちゃんの好きなように
 なさい でも神野の叔母さんにはきちんと謝るのよ きちんとね』
  キッチンの北側の壁には神棚が設置されている ロウソクを立て
 て洗ったお米とコップに水 あたしが食事を始める頃に ちょうど
 お母さんが手を叩く 二回頭を下げて二回叩いて一回頭を下げる
 『謝んなくてもいいよ だってさ 気に入らなければ断ってもいい
 って 脂が固まってるなあ 温めてご飯に掛けよう』
 『お弁当の分は先に分けておきなさい 写真を頂いて御見合いせず
 に断るなんて なんて失礼なことをするのかしら まったく』
  お母さんは手を合わせたまま説教だ 発覚した別件は先日断った
 見合い話 面会まで進めば断りにくくなる 写真を送ってきたのは
 叔母さんの勝手 あたしが謝る筋合いではないと思う
 『お父さんはまだお粥を食べてるの それじゃスキヤキなんか食べ
 てないのねえ 楽しみの少ない食生活 大変だなあ』
 『もう大丈夫だって話なのよ お粥は好きで食べてるんじゃないの
 辞めるとうるさいから ミートボールはお弁当用になさい』
  お母さんの朝の礼拝は続く ここ数年どんどん時間が長くなるよ
 うな気がする 最近ではあたしが朝食を食べ終わるまで続いている
 くらい なにをそんなに拝むことがあるのだろう
 『ミートボール これはまたキッチュなオカズ なんか色が足りな
 いよね どっちも焦茶色 お母さん 野菜か果物はないかな』
 『冷蔵庫の下の扉 聞かなくてもわかるでしょ そんなことでどう
 するの 少しずつでも練習して やらなきゃできないのよ』
  今日はやけに説教ばかり なにを喋っても叱られる 不機嫌の原
 因は知らないけれど 神様になにかを祈るのにイライラしているの
 はダメなのじゃないか と思ったけれど 言うと叱られそうだ
 『へいへい 下の扉はパーシャルじゃあ なんてね ところでお母
 さんは毎日なにをお願いしてるの お金とかじゃないでしょ』
 『どうにもならないことばかりよ 神様にはね ひろみちゃん そ
 んなことはお願いしちゃいけないの 茶化さないようになさい』
 『茶化してないってば 真面目に聞いてるのに レタスかあ』
  レタスとプチトマトを発見 これで少しは華やかなお弁当になる
 お母さんは依然として神棚の前 どうにもならないことをお願いす
 る とてつもなく矛盾した説明ではないか どうでもいいけど
 『どうにもならないことねえ 悪いけど 意味ないよねえ』
 『ひろみちゃん どうにもならないってことは 自分ではどうしよ
 うもないことってことなの お母さん 怒るわよ』
  もう怒っている どうやら礼拝は終了したらしい お母さんは非
 常に御立腹な表情で腰に手を当てている 他人の信仰に文句を言う
 つもりはないけれど あたしの意見はあたしの意見だと思う
 『ごめんなさい 朝から怒らなくてもいいじゃない もう』
 『いいえ ひろみちゃんは自覚が足りないの お母さんが話してい
 ることは お父さんやひろみちゃんのことなのよ まったく』
  朝から難しい話をされても困る お母さんの言わんとしているこ
 とが理解できない どうしてここであたしやお父さんなのだ お母
 さんは溜息をついてコンロ方面 きっとミートボールの回収だ
 『自分のことなんて自分で解決できるでしょ でもお父さんの胃の
 調子や 出掛けてるひろみちゃんの安全は お母さんにはどうにも
 してあげられないじゃない だからお願いしてるのよ』
 『ふうん そっか お母さんは毎日あたし達のことをお願いしてく
 れてたんだ そっかあ 悪いこと言ってごめんなさい』

  お母さんはお弁当箱にミートボールを盛りつける あたしは昨夜
 のスキヤキをご飯に乗せて食べている いつも通りの食卓風景 昔
 からずっとこんな感じ もうしばらくはこんな感じが続くだろう
  でもきっと続いている限りは お母さんの朝のお祈りは長くなる
 ばかりだろう 安全だとか言ってるけれど お願いのメインはあた
 しの縁談に決まっている なんだ情けなくなってくるのは仕方のな
 いところだ こればかりはまったく仕方がない









             》 しびる 《
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(のりこ)>あー耳の痛い話ですねえ なんだかなあ
(しびる)>26で遅すぎるくらいだってよ どうするよ
(のりこ)>どうしたもんですかねえ ウチのお母さんも似たような
      ものですよ 拝まれちゃってるんだろうなあ 神棚だか
      仏壇だかに どうしましょ? しびさんってば
(しびる)>自分のことは自分で始末つけろや 知らねーよ
(のりこ)>自分のことかあ 自分のことなんですかねえ んー
(しびる)>ちなみに この話のメインは見合い話じゃないからな
(のりこ)>それくらいわかってますけどね んー
(しびる)>ならいいけど
posted by 篠原しびる at 23:44| シンガポール ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | 連作系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年08月30日

編集会議 120

(しびる)>ういーっす ちょい涼しくなってきたか コーヒーな
(のりこ)>あ おはようございます まだ日中は百熱地獄ですけど
      ね 朝晩はちょい涼しい日もありますか 盆過ぎてひと
      雨ごとに秋の風 などとも申しますし コーヒーっす
(しびる)>風流なこと言いやがる 百熱地獄か まあいいけど
(のりこ)>ところでやっぱしお忙しいですか そろそろ夏休みも終
      わりますけど
(しびる)>夏休みな 最近じゃ9月初日から新学期って感じじゃね
      ーらしいぞ ウチのバイトの女子高生が最終週の平日は
      入れませんとか言いやがってよう なんだそりゃ
(のりこ)>はあん あれですか 大学みたいに前期後期制とか?
(しびる)>いや 教室にクーラーがあるから暑さ関係ないとか な
      んだよそりゃ そもそも夏休みなんか必要ねえじゃん
(のりこ)>夏休みは先生のお休みでしょ 労働者の権利ですし
(しびる)>そんなもん 盆の3日間でいいじゃん まあいいや世間
      が休んでるときに働かなきゃな さて なにするかな
(のりこ)>なんか毎週のようにコミックスが転送されてきますし
(しびる)>きょうも転送しただろ とにかくどんどこ片してゆかん
      とな 仕事してマンガ読んでアニメ見て ネットで発信
      して休息する オトナって忙しいよなあ(笑)
(のりこ)>そのネットで発信ですけどね なんかこの最近 美暦賞
      関係で素の書き込みをたくさん読みましたよね
(しびる)>そゆことも書いたな どこかで あれはキツイな
(のりこ)>ですよね なんかじわじわ効いてきて この休んでた3
      日くらい 妙な感じになっちゃいまして
(しびる)>妙ってなにさ そもそもお前の書き込みじゃねーじゃん
(のりこ)>しびさんと私は一心同心少女隊ですからして おそらく
      しびさんの方からの影響じゃないかと どうです?
(しびる)>なにが? あのさ 悪いけど昔話をする趣味はないんだ
      わ 後ろ向きにやるのは連作だけにしてくれよな
(のりこ)>別にそゆのも悪いとは思いませんけどね んじゃ 前向
      きの話として しびさんは とゆーかウチはどこを目指
      してるわけですか? いまこの時間はモラトリアム?
(しびる)>なんの猶予だよ あんまし辛気くさい話するなよ
(のりこ)>いや いつかキッチリお話しなきゃいけないと思ってま
      した ウチの目指してる場所ってどこです?
(しびる)>んじゃビールに切り替えるか なんか食うものと
(のりこ)>ビールはすぐですけど 飲んですぐ寝ちゃわないでくだ
      さいよ 速攻なら焼きそばですか 豚ベースの
(しびる)>あ 『浜ちゃんと』にオリラジでてるじゃん おまけに
      風俗デカとかやってるぞ オリラジえらくなったよなあ
(のりこ)>ビールです 毎週オールナイト聞いてるんでしょ なに
      がそんなにおもしろいですかね 若手のイチオシとか?
(しびる)>別にい あいつら完成してるとは思うけど いちおうウ
      チの事務所のイチオシ若手お笑いは○○○ー○○○○ン
      ってことになってるのでヨロシク 焼きそばまだか
(のりこ)>なんか回を追うごとに伏せ字が植えてますよね 反則ワ
      ザを使用しての即席クッキングでじゃじゃじゃじゃーん
(しびる)>うし さてビールと食い物も揃ったところで どかんと
      食って寝るか おなかくちたらねむねむだあ
(のりこ)>違うでしょ(ツッコミ) ウチの事務所の方向性ですよ
(しびる)>いまのままでいいじゃん? なんか問題あるのか?
(のりこ)>いまのままで? テレビとかアニメの感想をネットで流
      して? たまーに新作描いたり過去作品を紹介したり?
(しびる)>そうそう 美味いなこれ
(のりこ)>それでウチの事務所はどこに行けますか?
(しびる)>どこって しばらくはここにいるんじゃねーの?
(のりこ)>場所じゃなくて これで完成形なんですか 例えばお金
      を稼げる作家さんを目指してるとか とにかく1本でも
      実物の書籍を出版するのが目標だとか せめてブログが
      有名になって某かのメディアに取り上げられるようにな
      りたいとか そゆことですよ 目指すってのは
(しびる)>でもムリじゃん? そもそもなにかを目指さなきゃいけ
      ないのか? こうやってだらだらっていや表現が悪いが
(のりこ)>ひとはすべからく上昇志向でしょ 基本ですよ
(しびる)>実際には沈まないようにバタ足するだけでもかなりの努
      力だぜ ほぼすべての人間はそうやって暮らしてるのな
(のりこ)>しびさんはご自分が凡百の人間だと決めちゃってるんで
      すか 私はそうは思いませんよ じゃなきゃ私がこうや
      ってここに存在してる意味がなくなるじゃないですか
(しびる)>いやだからさ けっこうなペースを維持してもう10年
      もやってるじゃん? バタ足10年 凡百じゃないわな
(のりこ)>だからっ! しびさんはもっとばりばりやればすごいん
      ですよ 世間をあっと言わせるようなすごい人なんです
(しびる)>あのさあ これってブログに載せる収録なのな そゆこ
      とを人様が見聞きするところで叫ぶなよな 思ってくれ
      るのはありがたいなと思うけど 恥も知れ オトナだし
(のりこ)>だってですね こんなところでうだうだやってちゃいけ
      ないんですよ なにかどかんとやりましょうよ
(しびる)>本業の方もカラダ壊す寸前までぎりぎりなのな それで
      このペースを維持するだけでもホント タイヘンなのよ
(のりこ)>それも知ってます それを押して言ってるんじゃないで
      すか なんなら文書の方に専念してくださるとか
(しびる)>バカ言うない 本業と同じだけ稼げる保証があるならさ
      いやもしそうだとしてもそれはない 不可能 ムリ
(のりこ)>あーもったいない せっかく才能があるのに
(しびる)>才能なんてないって 1000本以上描いてようやくわ
      かったのは あんましすごいものは描けないってこと
(のりこ)>そんなことないと思いますよ 最低でも私はしびさんの
      作品が好きですもん そりゃいろいろありますけど そ
      ゆのを全部ひっくるめてしびさんの世界観が好きですし
(しびる)>あはは こんな夜中になにを言うかな そゆのを聞くと
      逆にへこむってこともあるんだぞ 気にしろよな
(のりこ)>とにかく もう100行も近いんであんまし繰り言は言
      いませんけど がんばりましょう できるかぎり最大限
(しびる)>そのつもりだけどな なんかビールが美味くねえなあ
(のりこ)>もう なんて覇気のないセリフ どかーんとですよ
(しびる)>なんだかなあ
posted by 篠原しびる at 01:09| シンガポール ☁| Comment(0) | TrackBack(1) | 編集会議 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年08月25日

連作21 謹連作05 急いでいるのです

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 種別 連作系第21期 謹連作05
 題名 『 急いでいるのです 』
 初出 ニフティサーブ/FJAMEA/18番会議室
    1996年12月03日01時19分
 注釈 行頭スペース+30W
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SUBJ:【謹連作】05 急いでいるのです

 Sibi-Tem V.4.1

 あくまでも謙虚に 謹んで書きましょう 謹連作 #05(B群)
 



         『 急いでいるのです 』


                        作:しびる





  気が付くと周囲には既に夜が迫っていた 建物は輪郭だけを残し
 て切り絵のように 路地の向こうの街灯が僅かに明滅しながら輝い
 ている 見上げると赤紫の空に真紅の巻層雲 横切る黒い影は音も
 なく飛び交うコウモリの姿 街が夜に没する寸前 なにも考えずに
 路地を歩いていた ただある日の夕方のこと
  妙に静かな空気はどこから漂うのか 遥か彼方から喧噪も聞こえ
 ず 少し涼しくなった爽やかな風 生活の気配を感じさせない不思
 議な空間は 確かにこの時間この場所に存在したのだ

  いつも歩いている通りから少し逸れて 大きな工場を塀伝いに迂
 回する 両側を工場の壁と塀に囲まれ まるで隠し通路のような路
 地 真っ直ぐに延びる道は 遠く突き当たりで折れ曲がる
 『すみません 通してもらえますか 急いでいます』
  まったく気配がなかった 不意の声は背後から 心臓が止まりそ
 うな程驚いて 振り返る間もなく誰かがすり抜ける
 『あ いやいや ごめんなさい』
 『急いでますので それじゃ』
  女性だ 声の感じからなら高校生くらいか すり抜けた瞬間に花
 のような香り 長い髪がさらりと揺れて その女性は軽く会釈して
 駆けて行く 薄暗い背景に白い服がにじんで見える 表情は確認で
 きなかった もしかすれば故意に見せなかったのか
  徐々に離れてゆく女性の姿 なにをそんなに急ぐのか 声の調子
 に緊迫感はなかったが かなり急いだ様子で駆け続けている こん
 な場所で不安にかられたか それとも本当に急用か しかし
  少し遅れて妙な事実に気が付く どこへ急ぐにも不適切な道 途
 中で曲折する過程は あらゆる目的地に対して迂回路でしかない事
 実 女性の言動は最初からすべて矛盾している どこへ急ぐのか
  遠く街灯 それ以外は歩むにつれて照度を失う 街灯に向かって
 駆けて行く女性も 白い染から黒い影と変化する 長い髪をリズミ
 カルに揺らし 蜃気楼か幻覚のような姿に妙な胸騒ぎ そしてそれ
 は瞬間に現実のものとなった 半ば確信していた異変だった

  白い服の女性は 路上から消失した 隠れる場所はない

  赤銅色の壁と白亜色の塀に囲まれたアスファルト道路 街灯に向
 かって直線距離は100メートル程度か 街灯のすぐ先で右に折れ
 曲がり 更に二度折れ曲がり通りへと合流する 途中に門扉や脇道
 もなく なにかの誤差で発生した空間なのか 標識もなにもない
  人がひとり隠れる場所はない なによりも注視していた 右足を
 上げて左足を地面に下ろす 再び左足を上げて右足を下ろす 女性
 の体はその度に上下し 脇をすり抜けてから何十回目かの上昇の後
 女性は余韻も残さず消えたのだ まったく瞬間 見間違いではない
  あまりに完全な消失 それがあたりまえであるかのような 驚き
 よりも別の次元の予定調和 感じていたのは更なる予感 もしかす
 れば自分も消えてしまうのではないか このまま進めば白い服の女
 性のようにある瞬間に消えてしまうのではないか 忽然と余韻も残
 さず それでも歩みは止められなかった 彼女のように急いではい
 なかったが 後戻りは不可能な気がしていた

  そして白い服の女性が消失した地点 直線のほぼ中間

  空は赤紫から限りなく闇へ 街灯の明りだけが足元へと伸びる場
 所 当然のごとく周囲は同じ造り 壁と塀とアスファルトと空 そ
 れだけの単純な空間 何度か歩いたこの路地に 人知を越えた何か
 があるはずもなく 自然と立ち止まって空を見上げる
  飛び交っているのはコウモリの影 星の見えない空はそれでも静
 寂であり 白い服の女性は最初から存在していなかったのではない
 かと考え始めたとき 世界を支配する街灯がゆっくり瞬いた
 『すみません 通してもらえますか 急いでいます』
  不意の声は背後から 心臓が握り潰されるような衝撃 今度こそ
 は誰もいなかった 先程の女性の声だ 躊躇して振り返るキッカケ
 を失った 吐息が感じられるほどの間近な距離 すぐ背後に彼女が
 立っている 街灯が数度瞬き 彼女の声が続いた
 『急いでいるのです もう時間がないのです』
  心のどこかの部分が激しく悲鳴を上げている 振り返るべきでな
 いことを直感する 先を急ぐこの女性は おそらく普通でないなに
 かだ 僅かに聞こえる衣擦れや 肩を上下させているだろう荒い息
 遣いも 確かに存在している彼女の気配 振り返るべきではないの
 に 心の悲鳴が絶叫に変化する 全身に悪寒が走る
 『なぜ 急いでいるのですか その どうしてここに』
 『急いでいるのです でも もうダメになりました』
  街灯が激しく明滅する 狂ったように反転する世界 女性の声は
 やにわにトーンを下げ 最後には恨めしげな声が聞き取れないくら
 いの低音で響く 振り返れば彼女の形相が確認できるのであろうが
 振り返らなくとも 何故かわかるような気がしていた

  白い服を着ているであろう女性の気配は 背後から消失した

  この場所になにがあるのか 何故急いでいるのか 周囲は完全に
 夜の世界 長い髪に白い服 耳に残る彼女の声 もはや誰もいない
 路地に街灯の僅かな瞬き どの部分が幻想で どの部分が現実だっ
 たのか 心が麻痺し思考が定まらない しかし彼女は確かに存在し
 ていた なにかがダメになり彼女は消えたのだ

  ふと振り返る 薄暗い路地を白い服の女性が駆けてくる 長い髪
 を上下に揺らして 闇に滲む彼女の姿 なにもない真っ白な顔面に
 真っ赤なルージュだけが街灯を照り返していた
  彼女が何者かは知らないが ただ最初の台詞だけは知っている

 『急いでいるのです』

  きっとそう言うに違いない








             》 しびる 《
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(のりこ)>シンプルな構成ですね なにもない路地で女性が追い掛
      けてくる 追い越してスッと消える 最後には走ってく
      る姿を正面から捉えて それが異界のものだと知る
(しびる)>うん 場面設定やらなんやら実体験を描写しただけだか
      ら いろいろ語ってもすごいシンプルだよな
(のりこ)>実体験?
(しびる)>ラストの落とし方はちょっとそれっぽすぎたかな でも
      絡んじゃうとそれ以降も延ばさなきゃいけないし こゆ
      のはどこで切るかがキモだわな 難しいや
(のりこ)>いやだから 実体験なんですか?
(しびる)>リズムをつけるのに ポイントの行を分離したのはどう
      かねえ いかにもって感じかな(苦笑) この当時はこ
      ゆのがかっこいいと思ってたんだわ いやはや
(のりこ)>あのー だからー
(しびる)>なんて感じで引っぱるのな こゆときは
(のりこ)>私もコメントしなくていいから楽だったりして(笑)
posted by 篠原しびる at 23:17| シンガポール ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 連作系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

すきま まんがだいすき 37

(しびる)>ういーっす 暑いよなあ どうにかならんか
(のりこ)>あ おはようございます 残暑ですよねえ 地域によっ
      ては床上浸水くらい雨が降ってるのに 降りませんから
(しびる)>降らないよなあ まあいいや なんかやるぞい
(のりこ)>なんかって えーっと コミックス枠で立ち上がってま
      すけど やたら溜まってるコミックスを片しますか
(しびる)>んじゃそれで なにからやるかなあ 最近チェックした
      ものといや溜めてた『いぬかみっ!』とか
(のりこ)>あー アニメじゃないですか そもそもあんなモロ直球
      の深夜アニメ ばかばかしいったらありませんよ
(しびる)>やっぱ80年代テイストには弱いからねえ これはもう
      DNAに書き込まれてるのかねえ それに深夜アニメた
      ってパンツ見えない系だし 健全なもんだ
(のりこ)>ばかばかしいです んじゃコミックスで まずはこれ『
      はやて×ブレード1−5』 林家志弦さん? 初出?
(しびる)>初出じゃねーだろ コミックス版の『おねてぃ』を描い
      てただろうが 扱ってる作家の名前くらい覚えろよ
(のりこ)>とは言われましてもね ざっと100人さんくらいの名
      前なんか 全部作品とあわせて覚えるなんてムリですよ
(しびる)>なにもムリこにじゃねーだろ 絵柄や内容に興味を持っ
      て金払って買った作品なんだし まあいいや それは
(のりこ)>それはそうと既刊5巻を一気買いですね 連載は電撃で
      すか ウチがいままで放置してたのが不思議なくらいの
      グレードですけど なんかどこかで見たような絵ですね
(しびる)>んー 似てるといや 渡辺多恵子かな タッチとかキャ
      ラの設定とか 特にメンタルなところへの踏み込み方と
      かはそっくりだな 剣技ものは『風光る』 剣での傷跡
      は『聖14グラフィティ』で使ってたし 彼女のところ
      でアシでもやってたんじゃねーのかな
(のりこ)>なるほど そういや『風光る』って途中まで追い掛けて
      辞めちゃいましたね 既刊揃えましょうか?
(しびる)>いや 渡辺作品は『はじめ』で完結でいいと思うし
(のりこ)>しかしキャラを作り込んでますよねえ おねてぃのとき
      にはありものでしたからそれほどどうかと思ってました
      けど 生徒会ものというジャンルはこの国にすっかり確
      立されたようで いかにもアニメ化されそうな
(しびる)>秋の改編には間に合わないか この林家って画力はある
      し上品で上質な作風だわな ままこれからもてきとうに
      追い掛けてゆこう ってことで次いけ
(のりこ)>ういっす んじゃ次は これまた生徒会ものの『仕切る
      の?春日部さん1−2』 竹内元紀さんは初出ですね
(しびる)>いいギャグだなあ 完全にシモネタだけど
(のりこ)>このセンスは古賀先生に通じる感じですか
(しびる)>んー 古賀のエロキャラはもうちょい上品か(笑)
(のりこ)>しかしまあこれだけ細かくネタを詰めるのってタイヘン
      ですよね コマすべてで何個かやってるじゃないですか
      こゆのって長く続かないと思うんですよ やっぱし
(しびる)>ギャグ系は早く消耗するっていうからな 捨てコマに額
      縁ネタを描いてるようじゃタイヘンだわな あんまし絵
      柄自体には力を入れてないようだけど
(のりこ)>でもカバーイラストとか この感じは完全に『あずまん
      が大王』を意識してますよね ホントはあずまさんみた
      いなマンガを描きたいのにと見ましたが?
(しびる)>理想と方向性は別もんだからな なかなかうまくいかん
      わな でもまあこれはこれでおもしろいからいいじゃん
(のりこ)>そうなんですけどね んじゃ次は 矢上さんの『ヒッカ
      ツ!3』 最終巻です 意外と早く終わりましたか
(しびる)>まあな あんまし引っ張れるようなネタでもなかったけ
      ど 同人区ネタは思ったほどおもしろくならなかったし
      これがうまくいけばバリエーションで数巻は延びたんじ
      ゃないかな まあ3巻はてきとうな分量だろ
(のりこ)>ラストが地球の復活を否定して終了とは思いませんでし
      た たしかにながらで終わらせるには大故障時代を終了
      させるべきではないんでしょうけど しかしきっぱし
(しびる)>矢上作品だしな このネタのラストとしては満点だよな
      毎度キレイに終わるんだこれが すごいなと思う
(のりこ)>しびさんはえらく評価しますよね 矢上さん
(しびる)>うん 絵柄はストライクから外れてたんだけど いまは
      この絵にも慣れちゃって心地いいな なによりもココロ
      がいいんだ 設定の人間性というかな そんな感じ
(のりこ)>わかる気がします んじゃ過去作品とかも揃えますか?
(しびる)>いや 『コスモス荘』以降ってことでいいわ
(のりこ)>しびさんのその割り切りもどうですか(笑)
(しびる)>キリがないからさ こゆのはそこそこにしておかないと
      もうホント収納がやばいんだわ って理由でどうだ?
(のりこ)>ごもっともです はい んじゃ次はどれかなあ
(しびる)>眠くなってきたからこれやろう カネヒラの『deR』
(のりこ)>このひとは事務所での扱いは不可にしませんか?
(しびる)>あのさ これは全部ネタだし 毎回手を替え品を替えて
      1本仕上げるってのはウチも同じじゃん シンパを感じ
      こそすれ嫌悪するってこたあないだろ マジな話
(のりこ)>しびさん式で言えばココロがダメなんですよ 人間性が
(しびる)>そゆのはいいんだ 例えばさ『NHK』を読んでるより
      カネヒラの方がきついんだわ NHKはものを作るふり
      だけど カネヒラはものを作る苦しみだろ
(のりこ)>そゆ側面から見れないので 嫌悪感だけです
(しびる)>いいや 趣味嗜好はそれぞれだし んじゃ終了で
(のりこ)>ういっす 眠くなりましたか
(しびる)>もう限界 帰って寝るわ
(のりこ)>お疲れさまです
posted by 篠原しびる at 02:14| シンガポール ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | すきま まんがだいすき | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年08月23日

連作21 謹連作04 運動の時間

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 種別 連作系第21期 謹連作04
 題名 『 運動の時間 』
 初出 ニフティサーブ/FJAMEA/18番会議室
    1996年11月27日23時07分
 注釈 行頭スペース+30W
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SUBJ:【謹連作】04 運動の時間

 Sibi-Tem V.4.1

 あくまでも謙虚に 謹んで書きましょう 謹連作 #04(A群)
 



           『 運動の時間 』


                        作:しびる





  ペットは飼い主に似るらしい ペットと言えば人間じゃないから
 つまり考え方や生活のリズムの違う別の生き物だってこと それを
 飼っている人間が強制的に同じ暮らしをさせるのだから よく考え
 れば似ていて当然 飼い主の生活以外を知らないわけで ましてや
 産まれたときから一緒にいるのなら これはもう親子とか兄弟のよ
 うな関係と言えなくもない ある意味では家族である
  そんなことを考えるのは 理由はもう説明するまでもない ウチ
 のペットが生きている証拠なのだ これだけハッキリした証拠があ
 るのなら 学会に論文を発表してもバカにされないはずだ 人間と
 同居する動物の性格の類似について 性格についてはそれでいいと
 しても 顔まで似てくるのはどうしたものだろう

 『おねえちゃん 散歩の時間だ おねえちゃん いないのか』
 『なあに ううううん もう5時ですか はいはい』
  テンションの高い声がドアの向こうから響く 5時と言っても午
 前5時 仕方はなくとも眠いものは眠い 弟は常に元気全開だ
 『おねえちゃん 早くしないとさ さゆりちゃんに負けるよ』
 『まだ大丈夫ですよ そんなに急がなくても すぐ着替えますね』
  今日は土曜日だから 凡そ大概の教育施設は閉鎖されている あ
 たしの通う中学校も弟の通う小学校も 平たく説明するなら休みの
 日 週休3日の学校はまだ少ない なのに早朝から起こされた
 『おねえちゃんさ あ まだ着替えてない 先に行ってるぞ』
 『あまり音を立てると パパやママが起きちゃいますよ それにせ
 いや君 まだ顔を洗ってませんね ほらほら 衿も曲がってます』
  シルクのパジャマを脱いでショーツだけ せっかちな弟がドアを
 開けて眉を寄せる そのまま走り去りそうな姿を捕まえて 弟のパ
 ーツを入念にチェックする あたしは弟の母親みたいなものだ
 『があっ そんなのいいから おねえちゃん 急ぐのだ急ぐのだ』
 『はいはい 急ぎましょうね ふああああ なんか眠いなあ』
  学校に行くわけじゃないからブラはつけず タンクトップに上下
 のスウェエット ナイキの帽子をかぶって準備完了 弟もまったく
 同じ格好 なんでもあたしと同じじゃないと気が済まないらしい
 『おねえちゃんさ 俺も眼鏡を掛けたいな どうするんだ』
 『せいや君は目がいいですからね こんなのに憧れなくてもいいで
 すよ ほら 気を付けて あら ここのキズ どうしたのですか』
 『なんでもない もう血も止まってる 急がないと負けるぞ』
  2階の物置を挟んで あたしの部屋と弟の部屋 弟は小学3年な
 のにひとり部屋 あたしが3年の頃はマンションで暮らしていたか
 ら弟と一緒だったのに まあ構わないけれど そんなもの
 『がうばうばうばうばう ばうがうがうがう ばう ふんふん』
 『静かにしろマイケル 暴れるな わああっ』
 『なにをしてるのですか ふう 気持ちのいい天気ですね うん』
  階段を降りて玄関から庭へ回る 庭で暴れているのは我が家の飼
 い犬 種類の不明な超大型犬 弟に飛びついて顔を舐めまわしてい
 るが 弟以外の人間には尻尾すら振らないおとなしい犬だ
 『おねえちゃん マイケルを退けてくれええ 食べられるぞお』
 『あははん 楽しそうに見えますよ 運動してから朝ご飯にしまし
 ょうね 今せいや君を食べると朝ご飯が美味しくないですよ』
  パパは中学を退職して教育委員会で働いている ママは不定期に
 スタジオと家の往復 だからふたりとも朝には弱い 夜遅くに車の
 音はタクシーだろうから きっとママもまだ寝ていると思う
 『ばかマイケル 舐めるなって言ってるのに おねえちゃん』
 『バカって言っちゃダメですよ それじゃ行きましょう あ おは
 ようございます あたしが直接頂きます ごくろうさまです』
  弟とじゃれている犬を引き剥がし 庭から玄関に家の前の道路へ
 と抜ける 出逢ったのは新聞配達の人 あたしは挨拶して新聞を受
 け取る おじさんは笑顔だけど声は聞いたことがない
 『おじさん さゆりちゃん来てなかった え ふうん』
 『なんて仰ってましたか まだだと思いますよ よいしょっと』
  新聞配達のおじさんは年齢不祥 スーパーカブじゃなくてベスパ
 なのは拘りだろうか 親しげに話し掛ける弟になにやら耳打ち 弟
 は思わぬ人と親しかったりする いつものことだが
 『今日は見てないって どうかしたのかな 変だよなあ』
 『色々事情もあるのでしょうね 毎日朝早くから散歩するのも大変
 でしょうから そうじゃない人もいるみたいですが ここにも』
  弟と並んで歩く 爽やかな朝の空気 マイケルが家にやってきて
 から続く日課 平日は帰宅してから 休日には早朝に犬の散歩 大
 抵はふたり一緒に そうじゃないときはどちらかが連れて歩く
 『おねえちゃんは夜に勉強してるのだな そうすると眼鏡が掛けら
 れるのか そうなら俺には無理だな 夜は寝るもんな』
 『色々ですよ せいや君はせいや君の生き方があるでしょ 頑張る
 ときには頑張って 眠いときには眠ればいいです わかりますか』
  あたしは上着のポケットに手を突っ込んで 弟もあたしのポケッ
 トに手を入れる ポケットの中で手を繋いでいるのは 弟が小さか
 った頃の名残である 手を握っていれば危なくない
 『おねえちゃんの前の眼鏡をくれ あれを掛ければ勉強ができそう
 な気がする ねえおねえちゃんさ あ さゆりちゃんだ』
 『おう ちびっこども 今日は早いじゃねーか 仲良しだな』
 『おはようございます でも負けてしまいました お先にどうぞ』
  さゆりさんはダンディーなおじさまである 弟の話ではどこかの
 建設会社の社長さんらしいが あたしは別な筋から組事務所の方だ
 と聞いている 強面だが悪い人じゃない それで充分だ
 『おう 遅れそうだから車を使っちまった バブルスの運動にはな
 らんが負けるわけにはいかねーからな よう マイケル号』
 『さゆりちゃんはズルするもんな まあいいや バブルスが先だ』
  バブルスはさゆりさんの飼い犬である マイケルに負けない大型
 犬で 顔はさゆりさんと同じで怖いけれど 非常に愛想のいい犬
 『負けは負けだからな よし 降りてこいバブルス こっちだ』
 『あはは どうしてこんなのが好きなのでしょうね ウチのマイケ
 ルも連れてこないと吠えるんですよ まったく 困ります』
 『俺にはわかるけどな おねえちゃんさ スリルだぜ』

  近所の公園までは500メートルくらいの距離 砂場とブランコ
 とコンクリート製の山と滑り台 昼間は子供達やお母さん達が遊ん
 でいるから とても犬を連れては入れない 別に砂場に糞をさせた
 りはしないのに 大型犬は見た目で敬遠される
  マイケルもバブルスも滑り台のファンで 仕方がないから公園へ
 連れてくる さゆりさんとは去年からの知り合い たまに勝ったり
 負けたり色々なのだ こんな感じも悪くないと思っている
  それにしても来年は中学の3年 いつまでこんなふうにしていら
 れるかと考えると 少し寂しい気もする 仕方ないけれど






             》 しびる 《
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(のりこ)>もでらーとです あやみちゃんが1人称だと安定します
(しびる)>マイケルはもう既に成犬か あれからどれくらい経った
      設定だったかなあ まあいいか これはこれで
(のりこ)>姉弟仲良しですよねえ 同じカッコしてポケットの中で
      手を繋いでるところとか お姉ちゃんと弟ってこんなふ
      うなんでしょうか 私は経験がないもので
(しびる)>まあいろいろだろうけど 仲がよければ異性よりは親密
      になるんじゃないの 姉妹とか兄弟は同類嫌悪みたいな
      ことがどうしてもあるし 兄妹はネタ的に不可だけど
(のりこ)>まあねえ(苦笑) なんにつけ仲良しなのはいいことで
      す 特にトシが離れてますからね かわいいかな
(しびる)>このヤクザのオヤジ これっきりなのはもったいなかっ
      たかね 当時はあんまし使えるふうじゃなかったけど
(のりこ)>微妙なところですね
posted by 篠原しびる at 18:19| シンガポール ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 連作系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

連作21 謹連作03 閑話休題 8

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 種別 連作系第21期 謹連作03
 題名 『 閑話休題 8 』
 初出 ニフティサーブ/FJAMEA/18番会議室
    1996年11月26日01時50分
 注釈 行頭スペース+30W
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(しびる)>かんきゅーはパス扱いでよろしく
(のりこ)>もうほとんど最近の描写なんですけどね ダメですか?
(しびる)>めんどうだから全スルーでいいじゃん なんかいろいろ
      障るところとかもあるし そゆの配慮するの手間だし
(のりこ)>結局はめんどうなんですね
(しびる)>そうなんだけど 別にいいじゃん?
posted by 篠原しびる at 18:17| シンガポール ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 連作系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

連作21 謹連作02 のびる機械

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 種別 連作系第21期 謹連作02
 題名 『 のびる機械 』
 初出 ニフティサーブ/FJAMEA/18番会議室
    1996年11月22日01時42分
 注釈 行頭スペース+30W
+++++++++++++++++++++++++++++++
SUBJ:【謹連作】02 のびる機械

 Sibi-Tem V.4.1

 あくまでも謙虚に 謹んで書きましょう 謹連作 #02(B群)
 



          『 のびる機械 』


                        作:しびる





  8時間は必ず眠る 寝るんじゃなくて眠る 横になって体力回復
 なんていい加減な方法じゃなくて それはもう熟睡するのだ 眠る
 に勝る娯楽は存在しない 休日だってただ眠る 熟睡に爆睡だ
  それでも眠ってばかりじゃ暮らせない 大学を卒業してから10
 年近く 社会的立場は下の中と言ったところ 多大なノルマと若干
 の管理責任 どんなに頑張っても8時間の睡眠時間を確保するのが
 精一杯 寸暇を惜しんで眠る それでも眠い毎日が続く

 『もしもし もしもし』
  体の方は瞬時に反応したが それに意識が追い付かなかった す
 ぐには状況が把握できず どこにいるのか なにをしているのか
 『もしもし お休みのところすみません お時間よろしいですか』
 『ああん あ なんでしょうか いや 眠っちゃったか』
  まるで解凍されるように周囲が定まる 営業の途中に喫茶店で仮
 眠 午後4時の定時帰社までには時間がある キャバクラのような
 隔離されたボックス席 薄暗い空間は他言無用の排他主義なのに
 『すみませんね かなりお疲れの様子 ごくろうさまです』
 『なに どちらさまでしたか ああっと 失念しておりまして』
  こんなところで取引相手でもなかろうが 馬鹿丁寧な口調に目が
 覚めた どこかで見たことのあるような営業スマイル 手狭な席に
 向かい合って座る姿 必死になって脳裏の顧客名簿をめくる
 『いえ お初にお目に掛かります わたくしタカハシと申します』
 『タカハシさん ですか はあ 名刺を切らせておりまして』
  日常の業務からなら治外法権 仕事を持ち込まないのが暗黙の了
 解であるこの場所に 咄嗟の判断で自己紹介は控えた 観察すれば
 五十路くらいの男性で 過剰な笑みに宗教の臭いがする
 『極東パラダイム研究社 ですか どのような用件でしょう』
 『怪しい者ではございません 少しお時間 よろしいですか』
  名刺に記されているのは怪しげな社名 営業2課のタカハシ氏に
 役職はなく 詳細に観察すれば見たこともない市外局番 こうなれ
 ば住所も怪しいものだろう なぜ苗字だけ それもカタカナで
 『すみませんが それほど暇でもありませんので 勧誘かセールス
 の類でしたらばお断りします なにも必要ではありません』
 『そんなに時間は取らせませんよ それに なにも必要とはされて
 いない そんなことはないと思いますよ ええ わかります』
  こちらも生業がセールスだ 話術の勘所は心得ている タカハシ
 氏の口調が少しくだけてきた頃合い どうせ拒絶しても引き下がら
 ないだろう 午睡を断念して中座するのが最良の策だ
 『ご用件がそれだけでしたら 失礼します どうも』
 『まあそう言わずに いいものがあるんですよ 少しだけ 御覧に
 なりませんか お時間は取らせませんよ さあさ座って はい』
  これでもかとばかりに満面の笑み 引き止めるのに相手の体に触
 れようとしない 宗教勧誘ではなくプロのセールスだ このような
 場所を選んで営業活動 それほどの自信に少し興味が湧いた
 『いいでしょう いいものとやらを見せていただきましょうか』
 『そうこなくては なるほどやはり同業者の方ですか お疲れのよ
 うですね 毎日ごくろうさまです お見せしたいのはこちらです』
  瞬時にして馴れ合い しかし意味的には双方の距離が定まっただ
 けで接近したわけではない それを指摘しての同業者の見切りだろ
 うが そんなことはもうどうでもいい 問題の商品はテーブルの上
 に恭しく置かれた 見ればストップウォッチかクッキングタイマー
 のような体裁 これをどう捌く 興味は深まるばかり
 『時計ですか いや タイマーのようなものですね それで』
 『まあ そのようなものです お休みの際にセットして頂くと ぐ
 っすりと熟睡することができます なかなかに便利なものですよ』
  それを世間では目覚まし時計と言う その言葉が喉元まで沸き上
 がる 手法だと理解していても引き込まれる 見掛け通りの年期の
 入りようはかなりの手足れだ 最初は下げるほど効果的な原則
 『それは便利ですね しかし家にもあります この腕に巻かれてい
 るものも同じような仕事をしてくれます たまに狂いますがね』
 『どれどれ ああ このメーカーのは精度が甘いですから いや失
 礼 デザインはよろしいですな 当社の製品には劣りますがね』
  こちらが押すと僅かに引く あからさまな挑発は儀礼として そ
 ろそろ本題を聞かせて欲しいものだ ただのタイマーを如何にして
 魔法の道具に仕立て上げる 買うとすれば講釈に対する報酬だ
 『いくらお休みになっても疲れが取れない 余暇はすべて睡眠時間
 に充てたい 途端に熟睡してすぐに活動する よろしいですなあ』
 『まあ理想ですね 疲れるほどに寝つけないものです 起き上がっ
 ても疲れを引きずる それで これが解決方法なのですか』
 『御明察 さすがに冴えてらっしゃる』
  なるほどこの場所を選んだ理由が見えてきた この講釈に必要な
 場面設定 偶然は巧妙に仕組まれた必然である原則 店員以外は半
 眠りの空間 どんなことでも商売にするセールス魂は基本だろう
 『例えば布団にお入りになって朝までが8時間 しかし8時間は眠
 っておられない レム睡眠とノンレム睡眠は御存知ですか 少し科
 学的な話になりますがね 実験では半分も眠っておられない』
 『少し聞いたことがありますね 浅い眠りがどうとか』
  なにが科学的な話か 初老の男性が冗談ぎりぎりの睡眠談義 ど
 こまでが計算の内だか怪しくなってくる そう考えて苦笑した す
 べてが計算に決まっているではないか 相手は辣腕セールスである
 『そこでこの商品です 8時間で半分なら4時間 12時間も眠れ
 ば6時間は眠ったことになりますな 実質睡眠が6時間 この意味
 は身に染みて御存知でしょう 昼寝は夜寝に勝ります』
 『ははは いやすみません できれば苦労しませんよ こうして昼
 寝を もとい 休憩しているのも1時間がいいところです』
  まるでガマの油売りだ 意味のない数字の羅列 鞭撻調子は巧み
 でも 聞くだけ時間の無駄だったかもしれない 旧態依然の売り口
 上なら 午睡を邪魔された分だけ腹が立つってものだろう
 『その1時間を どうです 2時間にしてみませんか その気にな
 れば3時間にも4時間にも あまり長時間はお勧めしませんが』
 『ちょっと待ってくださいよ 途端に話が見えなくなりました お
 たくの商品で時間が延びると そんなふうに解釈しましたが』
 『御明察 さすがに冴えてらっしゃる』
  言うに事欠いて超常現象である 水晶エネルギーにパワーの腕輪
 仏像や絵画や札の類 かなり深部では宗教団体と繋がる流れ この
 てのセールスは二流と位置付ける かなり下品な業界だ
 『まことに失礼ですが 興味がありませんね 急ぎますので』
 『お疑いですか しかし効用は本物ですよ お休みの際にセットし
 て頂く 2時間に合わせれば睡眠時間が2時間増えます はい』
  ばかばかしい 説明の裏はすぐにわかる 体感時間の増加など実
 際に計測のしようがないではないか 増えたのだと言われればそれ
 まで 素人になら言葉巧みに売り付けられようが
 『2時間増えると言われましても はは 困りましたね』
 『まあすぐには納得されませんでしょうな それでも実際に増加し
 ます 実はわたくしも原理までは存じません 不思議ですな』
  実際に増えるのなら増えた時間はどこに増える 一日が26時間
 になれば世界中が26時間だ ちなみにこれまで24時間でなかっ
 た日はない 誰も使ったことのない機械なのか
 『それは無責任ですね 実証されないものは信じるわけにもいかな
 いでしょう 起きているときには使えないんでしょ やはり』
 『ええ 睡眠中にのみ機能します わたくしも愛用しておりますが
 使い始めると手放せません 睡眠に勝る娯楽はありませんから』
  そう話しながら目を細める こんなにばかばかしい説明なのにど
 こか惹かれる こちらの意思が通じたのか タカハシ氏は胸ポケッ
 トから札入れのようなものを取りだした 手に持つのは免許証か
 『ここまでお見せした方もないのですが どうしてもお疑いでした
 ら どうです これで信用していただけますでしょうか』
 『これがなにか 免許証ですね 写真にお名前に これはまた』
  写真は確かに目の前のタカハシ氏だ 氏名は名刺とは違って漢字
 4文字 住所はかなり離れた場所のもので それがどうしたかって
 類の免許証だ しかし生年月日を見て驚いた
 『とても25歳には見えませんね なにかの間違いですか ははは
 それともこの機械の使いすぎで いやいや これは参ったなあ』
 『御明察 さすがに冴えてらっしゃる どうですか あなたも』

  迂濶にも感心してしまった こうなれば降参である ここまで揃
 えられては納得する他ないだろう 老け顔を利用しての巧みなセー
 ルス 手法はまさに芸術とも言えるだろう 購入するのは賛美の証
 し 支払う金額よりも得るものは多かったと思う
  ちなみにタイマーは鞄の中でゴロゴロするばかり どうせ二束三
 文のバッタものだろうから ようは商品ではないのである 効用な
 んてものは最初からあってないようなもの 誰も信じて買いはしな
 いだろう 時間が延びるなんて ばかばかしい








             》 しびる 《
+++++++++++++++++++++++++++++++
(のりこ)>いや タイトルを見たときちょっとドキッとました で
      もこゆことってありますよね 『痺れる』とかも当用漢
      字じゃないですから テレビや新聞では『しびれる』っ
      て書くじゃないですか 一瞬しびさん? とかって
(しびる)>まあな このハンドルも長いからさあ リアル本名と同
      じくらいかそれ以上使ってるもんな
(のりこ)>そゆもんですよね で 内容ですけど こゆのはやっぱ
      しオチまで組んではじめるんですよね?
(しびる)>ながらで落とすのは別だけど まま普通はざっと全体を
      仮組みして ネームとかぼやーっとあたりを付けて あ
      とはやっぱし一気描きかな 時間もなかったし
(のりこ)>きちんとショートショートらしい体裁ですね 今回のは
(しびる)>結局は オチがきちんと見付かれば成功 そうじゃなき
      ゃめんどうなのでながらで落とすって感じかね
(のりこ)>んじゃ最初のネタ組みの段階が勝負ですか
(しびる)>仕上げながらの変更もあるしなあ ままいろいろ
posted by 篠原しびる at 08:22| シンガポール ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 連作系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年08月22日

連作21 謹連作01 足跡 1

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 種別 連作系第21期 謹連作01
 題名 『 足跡 1 』
 初出 ニフティサーブ/FJAMEA/18番会議室
    1996年11月17日00時40分
 注釈 行頭スペース+30W
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SUBJ:【謹連作】01 足跡 1

 Sibi-Tem V.4.1

 あくまでも謙虚に 謹んで書きましょう 謹連作 #01(B群)
 



           『 足跡 1 』


                        作:しびる





  校舎は全部で7棟もある 最も古いのが新館 以降建設順に2号
 館から7号館まで それらすべては通路で連結されていて 区切り
 の曖昧な部分もあるくらい複雑な構成 マンチェスター邸宅を彷彿
 とさせる節操のなさは それはそれなりに理由があるらしい
  受験者数の増加を考慮しての校舎移転計画 旧来の教室数では収
 容不可能な強気の募集 移転予定地に遺跡が発見された時点で頓挫
 させれば良かったものの 発行した建設校債は4割が株式投資に泡
 と消え 用地買収を割愛するならば 同じ敷地に建蔽率ぎりぎりの
 複雑怪奇な校舎群 それでも生徒は集まるものだ

 『あ 北野君 いいところで逢ったわ お昼まだでしょ』
 『そりゃま3講目が終わったところですから 今ごろ出勤ですか』
  4号館から2号館を経由して6号館へ 6号館の東端にある購買
 部まで週刊誌を買うために 背後からの声は教務課の岡崎嬢だった
 『そんなにだらしなくないって 残業がてらに泊まったもの 出勤
 したのは昨日の朝だわ んなことはとにかく お昼を奢ろうか』
 『またなにか厄介ごとなら 急いでますので僕はこれで わあ』
  教務課にいるのは学園の職員であって教職員ではない だから岡
 崎嬢は治外法権 教師でもなく生徒でもない 学園内を闊歩できる
 一般人 訳あって知人だけど 近くにいるとロクなことがない
 『北野くーん お昼ご飯を食べさせてあげようって言ってるだけじ
 ゃない なによ あたしと食べるのが厄介ごとだって言うわけ』
 『くっ苦しいですよ わかりました わかりましたから げほっ』
  会話もなにもあったものじゃない 言いたいことを言って羽交い
 締め そのまま片腕を瞬時に喉元に決められる 周囲の目も気にせ
 ずやりたい放題なのだ 2号館廊下は往来も多い
 『よしよし 北野君 とにかく学食で話をしようね デートだわ』
 『いつになくハイですねえ まだ4講目があるのになあ』
  出逢ったのが不運だったのだ 岡崎嬢には授業時間など関係ない
 かわいらしい顔でニコニコ微笑んで いつ仕事をしているのか知ら
 ないが 高校生を拉致してなにを画策するつもりか
  腕を絡めて逆戻り 4号館の西側に5号館 そのまま北上して最
 果ての新館に第2食堂 広大な食堂の中央に連行された
 『それでどうかしたのですか なにか話したいことがあるのなら』
 『北野君も遠慮せずに食べなよ ここはどかーんとあんなお姉さん
 の奢りだからね 若い子はたくさん食べなきゃ うんうん』
  岡崎嬢の前には盛り合わせヤキソバの大皿が置かれている それ
 を小皿に取り分けて 烏龍茶の缶を目を細めながら飲んでいる ち
 なみに彼女のフルネームは岡崎あんな 年齢不祥の自称18歳だ
 『しかしまあ聞きたいのなら 北野君がそんなに聞きたがっている
 のなら話してあげなくもないか これを見るべし それとこれ』
 『なんですか あーあ ヤキソバがこぼれてますよ こっこれは』
 『ふむ 昨日の夜だけど前学長と飲んでいてね 貰ったのよ』
  美人が台無しの大食い女 ヤキソバを頬張りながら黄色く変色し
 た紙の束 受け取った紙片には簡単な地図と短文が記されていた
 『ううううん 本物ですか それに岡崎さん 昨夜は学校に泊まっ
 たって言ってませんでしたか 冗談じゃないでしょうね』
 『やん北野君 あんなって呼んでくれなきゃ もちろん本物よ』
  この学園の学長は世襲制である 前学長は現職学長の父親で 会
 ったことはないが80近い爺さんらしい そんなことはとにかくと
 して 紙片に記されているのは学園の俯瞰図 しかし少し変だ
 『校医の石原ちゃんと3人でね 最後の方は爺様の愚痴話になっち
 ゃったけど そんときに貰ったのよん 血が騒ぐでしょ』
 『旧館伝説ですね 前学長筋から来ましたか さて真偽の程はね』
  学園の校舎は全部で7棟 最も高層な3号館が地上5階 各々の
 校舎が各階で複雑に連結されている 校舎の号数は建設順ではなく
 重複建設期に命名された 改築や取り壊しなどの便宜上の仮称だ
 『これで旧館論争にケリがつくわね 懸賞金は8対2で分配すると
 して どうかしら これから検証に出掛けるってのは』
 『4講目が始まっちゃいましたね 漢文の高橋先生 赤点付けるの
 に容赦がないからなあ 卒業できるかなあ はあああ とほほ』
  旧館伝説に旧館論争だ 新入生は必ず一度は迷子になる迷宮学園
 建築基準や消防法を無視した乱雑な校舎群は 近年徐々に改善され
 つつあるが それでも関係者千数百人を飲み込んで増改築は続いて
 いる 新館と旧館だった当時の資料は今はもう残されていない
 『高橋先生の授業なの なら大丈夫よ どうにかしてあげるから』
 『どうにかですか なんでも構いませんが 結局ひとりで食べちゃ
 いましたね 岡崎さんはいつもこの調子だもの なんだかねえ』
 『あんなって呼んでくれないのね お腹が膨れたらば出発と』
  まったくもってやりたい放題 岡崎嬢は山盛りヤキソバをひとり
 で平らげて 欠席した授業をどうにかできるものか しかし中央執
 行委員会直属広報課新聞部の部長として 放置できない問題である
 『この資料からなら 5号館になりますね 新館とのL字構造も妥
 当なところだし でもこれは2号館改装時の見取り図ですね』
 『タイムスタンプは40年前でしょ 今までの資料の中ではいっち
 ばん古いじゃない 北野君 これで決まりね でしょ』
  それはもう諸説紛々 実のところ学園はこの場所に存在していた
 私立高校を吸収して拡大 再移転が頓挫で増改築 いろいろのごた
 ごたで資料は紛失 校史作成のために懸賞金が提案されたのだ
 『さてねえ 問題は物的証拠 最近の主流は旧館は元から存在しな
 かったって説ですからね 論理武装だけじゃ勝てませんよ』
 『わかってるわよん だから北野君を探してたんじゃないの』

  新館の1階の西側半分を占領した第2食堂 キャパ200名ほど
 の広い空間に疎らな人影 昼食前の4講目の最中に それでも食事
 をしている学園生が数人 みんな進級を諦めているのか
  4人掛けのテーブルに向かい合って 岡崎嬢に手を握られる な
 ににつけ金銭が絡むならば 主題がどうあれ厄介ごとにならざるを
 得ないわけだ できれば机上の理論で終始したいところではあるが
 どうやらそうもいかないらしい 彼女には弱味も握られている







             》 しびる 《
+++++++++++++++++++++++++++++++
(のりこ)>えーっと 当時はこりゃまためんどうなシリーズが始ま
      ったなあと思ってたんですが しかしそれっきり続編が
      描かれるじゃなし もしかしてこれってネタ話ですか?
(しびる)>てか 決まってるじゃん シリーズものの初回にしちゃ
      ネタバラシをしすぎてるだろ? 資料の失われた旧館の
      所在を巡る論争 現在の主流は旧館など元からなかった
      って説だってクダリ こんなのラストの大ネタじゃん
(のりこ)>邪○台国が元ネタですか ○弥呼伝説ですね この彼女
      のキャラ設定はスバラシイ完成度ですし ホントのシリ
      ーズとしても充分やってけるんじゃないですかね
(しびる)>えー こんなめんどうなのやだなあ
(のりこ)>うわあ 代表取締役以下重役3人でお詫びの記者会見を
      開かなきゃいけない級の問題発言ですよ
(しびる)>そりゃ困ったなあ ウチはほら2人法人だし?
(のりこ)>遺憾のイを表明いたします ぱしーぱしーぱしー
(しびる)>なにそれ?
(のりこ)>カメラのシャッター音です ぱしーぱしーぱしー
(しびる)>新聞社を呼んだのは誰だ! ぱしーぱしーぱしー 君た
      ち失礼じゃないか! ぱしーぱしーぱしー
(のりこ)>って具合に糾弾されますよ マスメディアの名の下に
(しびる)>んじゃ前言撤回 諸般の事情により継続不可能とー
(のりこ)>意味は同じですよね(笑)
posted by 篠原しびる at 02:08| シンガポール ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 連作系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年08月21日

美暦賞系08 まだら

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 種別 美しい暦文学賞応募作品 美暦賞08
 題名 『 まだら 』
 初出 ニフティサーブ/FJAMEA/18番会議室
    1995年11月11日02時55分
 注釈 行頭スペース+30W
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SUBJ:【美暦賞】 まだら

 Sibi-Tem V.4.1 (s+30)

 第8回美暦賞応募作品




            『 まだら 』


                        作:しびる





  ほんの些細なことだ 背後に根深い嫌悪感があるからこその対立
 これでも昔は子供であった 愛情や理想で暮らせる時期が過ぎ 残
 ったのは奸知と蹄念 そしてすべてを包み込む倦怠感 怠さ
  横腹に社名を記した営業車 午後に突然眩暈が襲った 市内の右
 肩を舐めまわすように山林が食い込む その山中に車を停めた
  人生にやるべきことがあるならば 午睡の分だけ長生きすればい
 い 眩暈は睡魔に変化し エンジンを止めて少し眠った 最後に見
 たのは緑の多い紅葉であった

  隠していた嘘が暴露される夢 夢だと知りつつも出口の見付から
 ない白い部屋 それを鳥瞰している自分 更に背後から眺める自分
 多重に交錯した視点は 否定されながら変化する
  キッカケは単調な呼び声 最初に認識されたのは やはり倦怠感
 であった 目蓋を開いても闇 どこまでが夢か
 『おおい 起きろよおおおお 怠けてるんじゃないぞおおお』
  女性の声 そして窓を叩く音 既に周囲は闇の世界 車を停めた
 のは午後3時頃だったか エンジンを止めているので時間がわから
 ない そして声は続く
 『起きてよおおお 困ってるんだからねえええ わあ』
  暗くてなにも判別できない とにかくエンジンを始動する それ
 に驚いたのか 女性は小さな叫び声を上げる
 『誰ですか 起こしていただいたのは あ 起こしていただいたの
 は嬉しいのですが』
 『いやいや礼には及びませんですよ 因果応報 違うな お互い様
 ですね こちらも助かりましたってところです』
  声は助手席の窓から 思い頭を瞬間に移動させる 上半身だけ捻
 って窓を開ける 車内灯に照らされたのは若い女性 20代前半か
 『ああ なにかお困りなのですか こんな時間に若い女性が よろ
 しければどうぞ 麓までなら送りますよ』
  話しながら違和感 山中と言っても麓までは5キロ足らず 小高
 い山頂には展望台 この場所は中間地点 ヒマラヤの遭難者でもな
 く 人混みの迷子でもないだろう 困った女性が佇むには最も不似
 合いな場所 安易に話し掛けたのは失敗か
 『それは嬉しいですね 非常に困っていたのですよ いやあ こん
 な所に置いてかれましてね 後少しで凍死するところでした』
 『まあ 乗りなさい 失礼でなければ理由を聞かせてもらえますか
 こんな場所で なんとも まあ構わないのですが』
  寝起きの混乱に会釈したが ドアを閉めたところで嫌悪感が増大
 する 見ず知らずの女性を乗せて 雰囲気を保ちながら夜道を走る
 こんなにストレスもないだろう
 『夜景を見たところまでは良かったんですがねえ 勝手にしろって
 降ろされまして 歩いていると車があるじゃないですか そんな感
 じでここに座っているんですよ ええ』
 『喧嘩ですか こんな所で女性を放りだすなんて 酷い話ですね』
  話しながら苦笑する 腹を立てて世界の果てに放置する 普段自
 分が空想している妄想だ イメージの中なら妻を殺害したこともあ
 る たいして酷い話だとも思わない
 『あははは まあこんなものですよ それよりも お仕事の最中で
 すか お休みのところを起こしちゃって 怒ってらっしゃいます』
 『いや怠けてたのですよ 最近疲れてましてね 午後に眠ったと思
 えばこの時間 職場放棄もいいところです』
  やや語気を強める 自分の状況を少し露呈させて躊躇させる そ
 の間合いに隔壁を構築する 故意に会話を中断させる大人の手段だ
 なにか下心を邪推されることを恐れての拒絶 この車内は本来独占
 されるべきスペースである
  少しの空白にも車は山道を下る 街灯すらない真黒の一本道 ヘ
 ッドライトにガードレールが流れる
 『こんなに道が続いてたんですね 登ってきたときは騒いでいたの
 で感じませんでしたが 歩いていれば朝ですね』
 『展望台は既に閉鎖されているでしょう 他の車は朝まで通らない
 と思いますよ それにこんな道では うわっ』
  一瞬の出来事であった 展望台が早々に閉鎖されるのは暴走族対
 策だ この女性のような訪問者達が諸悪の根源 少し皮肉を込めて
 返事をした直後 一瞬に視線が絡んだ
 『な なんですか いきなりどうしちゃったんです 大きな声を』
 『チクショウなんてこった いや失礼 どうもなにか動物を轢いて
 しまったようです 少し停めます 乗っていてください』
  直後にブレーキを踏んでいた 確かにあれは動物であった おそ
 らくは猫か狸の類 フロントバンパーへの衝撃と乗り越えた感触が
 生々しくハンドルに残留していた
  自分ひとりなら走り去ったかもしれない 動物への感情移入は更
 なる事故を誘発する 俗に言われる動物憑き ドライバーの鉄則
 『少し様子を見てきます 失礼』
  サイドブレーキを引いてドアを開ける 車の外は想像以上に気温
 が低い 身震いしたところでイライラする 彼女の対応は事故に気
 付いていなかった証しではないか 停車する義務はなかった
  車内灯に彼女の姿 その明りで車を調べる しかし車の前部にま
 では光が到達しない しゃがみ込み覗き込んだ途端 閃光が煌めく
 『ヘッドライトは点灯した方が あ 眩しかったですか』
 『いえ そうではないですが できればフォグランプの方を』
  閃光に視界が奪われる 過度の照度差はすべての輪郭を消滅させ
 る その懸念を簡単に踏みにじる 嫌悪感が一気に増大する
  疲労の原因は妻との軋轢 愛情は覚えていないほどの過去の遺物
 理解は嫌悪感の裏付け捜査でしかない 細部まで予測される機微は
 相手の思惑を土足で踏みにじる どんな行動も言動も殺意を催しこ
 そすれ 愛情には変換されない
  子供がいなければ 世界の果てに放置してやるものを そうもで
 きずに悶々と暮らす すべての感情は疲労に昇華する
 『どうですかあ やっぱりなにか轢いちゃいました 秋ですからね
 山の動物も活発ですよねえ』
 『いや 痕跡はないですね もしかすれば気のせいかもしれません
 そんな錯覚も 不思議なことではないでしょう』
  確かに痕跡はなかった かなりの衝撃は感じていたのに 車のど
 の部分にも破損はおろか血痕すら付着していない 面倒なので嘘を
 ついたが 自分でも錯覚のような気がしていた
 『あたしは感じませんでしたよ 道路の起伏じゃないですかあ』
  彼女は窓から叫んでいる それほどの興味もないのであろう 車
 が動物を轢き殺したところで 自分の運転でなければ他人事だ
  子供が猫を飼いたいと言いだしたときも 最初はまったくの他人
 事であった 子供は母親の所有物である なにをしようが妻の責任
 だ しかしマンションの管理は妻だけの責任ではない 泥沼の言い
 争いは些細な原因から始まり 最後には倦怠感が幕を引いた
  すべてを包む倦怠感は 今も脳裏に重くのしかかる
 『あははは 死体がなければ殺人事件じゃないですよ あ 不謹慎
 でしたね ごめんなさい 調子に乗っちゃって』
 『いや そのとおりですよ 現場を確認しましょう 気のせいなら
 安心して眠れます はは 殺人事件でなければいいのですが』
  長年染み付いた営業スマイル どんな精神状態でも即座に笑顔が
 固定される 奥歯に力を入れて振り返る イライラは極限に達して
 いた それでも無難に会釈する
  道路は急激なカーブだ 車は曲がり切ったところで停車している
 動物を轢いたのはここから見えない場所 すぐに答えたことを後悔
 する 見えなければなかったことでも済まされたのに
  日中の業務にあわせての薄着 その背中を寒風が吹きつける 確
 認したところでどうなるものか 彼女から見えないのなら事実を伝
 えることもない どちらにしても隠蔽される死体なら 寒気の分だ
 け無駄が発生する そしてその無駄は確かに存在していた
  ヘッドライトの残像が徐々に消滅する 車内から漏れる明りが背
 後に消える それに従い青い光が見えてくる 真黒だった空に月が
 浮かんでいた 月明かりにその物体が浮き上がる
  その無駄な物体は猫であった いや猫であったものだ 斑色の猫
 から黒い液体が飛散している おそらくは血液 それに内蔵が混じ
 る 四肢は踊っているように螺子曲がっていた 明らかに轢き殺さ
 れた姿 やはり確認するべきではなかった
 『やっぱり轢いたのですね』
 『わあ 驚かさないでくださいよ そうですね かわいそうなこと
 をしました 事故とは言え なんとも』
  ドアの開閉は聞き取れなかった しかし背後から女性の声 振り
 返る瞬間を逸して 死体を眺めて答える 隠しようのない事実が足
 元に展開していた
 『埋葬してやるべきでしょうか それとも』
 『散歩だと思ってたのです 車に乗って凄くはしゃいでいました』
  女性は構わずにつぶやく 瞬間僅かの違和感を感じた それでも
 振り返るタイミングではない 彼女はなにを話しているのか
 『夜になれば楽しい気分になります だから追い掛けたのに』
 『なにをいったい なんの話をして うわああああああああああ』
  彼女の声が泣き声に変化した あまりの異変に振り返った なに
 をこの場所で泣くことがあろうか これ以上の迷惑は困る そして
 目の前にいたのは踊る猫であった あまりの光景に叫び声を上げる
  人間の背丈ほどの猫 しかし猫の頭部は無残に潰れていた 踊っ
 ているように見えた腕も ひしゃげて不可能な方向に曲がる そし
 て腹部からは照り光る臓物がヌラヌラと蠢いていた
 『信頼していました 本当の家族だとおもっていました どんなこ
 とがあってもイッションニルノダトオモッテイタノニニイイイイ』
  身の毛が総立ち走った 理解不能 気が狂いそうに足がもつれる
 どこから人間の声がするのか 後半は既に人間ではなかった 月明
 かりに異常な光景 息が切れ動悸は限界を突破する 逃げることだ
 けが神経細胞に命令を下す それ以外は考えられなかった
  走り車に到着する ドアを開けてアクセルを踏む タイヤが軋む
 音にバックミラーを一瞥した その姿はカーブの中央に佇んでいた
  反射神経だけで山道を走り続ける いつまで経っても動悸は治ま
 らなかった 街の明りが見えた頃 噛み締めた唇から鮮血が流れて
 いることに気が付いた しかしまったく痛みは感じていなかった

  その夜のことは結局誰にも話さなかった 話したところで仕方が
 ないことは 既に大人なら知っていることである 寝惚けていたな
 らそれも良かろう わざわざ確認することもない
  しかしその夜以来 妻を放置する空想は辞めてしまった 嫌悪感
 は解決しようもないが 言い争うことにさえ倦怠感を感じるように
 なった 更に加速する倦怠感 もう対処方法は残されていないのだ
 ろう なにがあってもただ受け止める 結局猫も飼うことになった
 のも どうしようもない倦怠感の結果である

  猫には表情など存在しないが たまに飼い猫が笑っているように
 見えることがある 斑色だけでも反対すればよかった







             》 しびる 《
+++++++++++++++++++++++++++++++
(のりこ)>えーっと 美暦賞はこの回が最後で再開されてないです
      よね? ってウチが描いてないってことはそうなんでし
      ょうけど しかし立派なのは皆勤賞だということです
(しびる)>まあな やっぱメインで描いてるって自負もあったしさ
      なにより大賞を取らなきゃって部分も過分にあったし
(のりこ)>ウチはあんましコンペって参加しないですから こゆの
      はとても貴重な体験でしたよね って総括してますけど
(しびる)>まあな それよりもさ その前後に素で書き込んでるの
      とか読むの その作業がツライよな もうこれで終了だ
      からいいけど そもそもこの企画はさあ
(のりこ)>ご自分がおはじめになったのでは?
(しびる)>そーだけどさー まあいいや なんか発表して締めろ
(のりこ)>しかしその前に 今回のお題は『夜』でした でわでわ
      最終第8回は6名さん参加の2位です 2位かビリっこ
(しびる)>いろいろ仕方ないよなあ んー
posted by 篠原しびる at 03:06| シンガポール ☁| Comment(0) | TrackBack(1) | 美暦賞系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

美暦賞系07 いもりのまどろみの

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 種別 美しい暦文学賞応募作品 美暦賞07
 題名 『 いもりのまどろみの 』
 初出 ニフティサーブ/FJAMEA/18番会議室
    1995年09月12日01時33分
 注釈 行頭スペース+30W
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SUBJ:【美暦賞】いもりのまどろみの

 Sibi Temperate V.4.1 (space+30words)

 第7回美暦賞応募作品




         『 いもりのまどろみの 』


                        作:しびる





  過度のエアコン使用は身体機能に有害な影響をもたらす 体温調
 節は自分の認識以上にデリケートな仕事である 外気温は平均で4
 0度以上は変動するが 体温は上下5度も変化すれば生命の危機だ
  実際のところ 季節の変化にあまり逆らわず 必要最小限の環境
 操作が心地良かったりするものだ 禁欲的に暮す 故意に忍耐する
 のが本当の贅沢であろう

 『妙にムラムラするのには それなりの理由があるんだぜ 下半身
 だけ温めるだろ 血行が良くなるんだな』
 『お風呂に入っても駄目なときがあるじゃない 設定に興奮してる
 だけじゃないの 剥けたわよ』
  他にいくらも部屋はあるが トイレと風呂 それに調理以外なら
 すべてがこの部屋で済んでしまう 俺なんか最初のトイレ以外はあ
 まりしないから ここだけで生きていける
 『ミカンな 指が黄色くなるまでミカン それほど美味くもないの
 に馬鹿みたいに食べる オレンジ色に秘密があるのだろうか』
 『ビタミンが足りなくなる季節だもん 本能じゃないの』
 『本能なあ そう言えば 本能で暮す我が息子はどこにいるんだ』
  目の前にいるのは妻 家族3人で後は息子だ 幼稚園の年長組で
 まだまだ理性よりも本能が勝る年齢だ
 『あなたみたいに無気力じゃないもの どこかで遊んでるんじゃな
 いかしら 仕事しなくていいの 締め切り過ぎてるんでしょ』
 『俺も本能でミカン食べるもん 仕事なんて本能の次な なんか心
 地良くって書く気がしないのは何故だろう』
  ふたり向かい合って座る 妻は俺の背後のテレビを眺める 俺の
 前には食べかけのミカンにタバコと灰皿 それに湯呑みと雑誌 ま
 こと心地良い 特に足元が気持ち良い
  平日の午後 8帖間の真ん中に座る 数カ月前までは卓袱台のあ
 った場所 今では卓袱台の呼び名が変化している いわく櫓炬燵
 『こいつがいけないんだな この炬燵って奴は 危険な電磁波で人
 体を冒しているんだ これで仕事すれば寿命が縮まる』
 『自分の部屋でやんなさいよ 暖房すれば下半身だけでも助かるじ
 ゃない あたしは保険金と下半身で充分よ はい 次のミカン』
  新聞社系のビジネス雑誌にコラムを書いている 気楽な在宅勤務
 それ以外にも散発的な仕事 足りない分は遺産で補充 死ぬまで生
 きていけるのは誰でも同じだな
 『エアコンって嫌いだな 暑ければ暑い 寒ければ寒い 死なない
 程度に抵抗するのが醍醐味だ 悪口を言ったが炬燵はいいぞ』
 『まあ好きなようにしてあげるけれど 掃除が大変なのよ 何故か
 亭主は毎日家にいるしね あははは 無職なのかしら』
  11月の末 数日前に初雪が降った 既に庭は銀世界 勢い出不
 精になるのも仕方がない それに加えて炬燵の快楽
 『働ける季節ってのは限られてるよな 春と秋の2回だけ 春にな
 るまで休載ということで だから無職で正解』
 『やっと涼しくなったのに 夏場は暑いって大騒ぎ 死なない程度
 の抵抗には程遠いんじゃないの 炬燵だって口実ね』
 『夏のことなんて忘れたな 今は冬と戦ってるんだ 男の戦う姿は
 このように壮絶だ 鬼気迫る戦いである ほら』
  そう言って肩まで炬燵布団にくるまる 毎日続く男の戦い これ
 に惚れなければ女とは言えないだろう
 『扇風機の前で同じ台詞を聞いたわよ スイカ食べてたあたしもあ
 なたのことは言えないけどね なんて変化のない生活』
 『いやいや 今年の冬は普段とは違うかもしれんぞ 実のところ夏
 の間に仕組んだことがあるんだ』
  肩までくるまったのが敗因か 炬燵の魔力に引き寄せられて そ
 のままゴロリと横になる 話しながら妻の太股に足を伸ばす
 『そのまま寝ちゃ駄目よ 夕食までは起きててね なにを仕組んだ
 の もしかして製薬会社の株でも買ったとか』
 『確かに冬場には強いけどな そうじゃなくてもっと画期的なこと
 ドラマチックなヒューマンなサスペンスな計画だな』
 『なにそれ 途端に嘘臭くなったわね もうミカンは食べないの』
  足の先で妻の太股をまさぐる それでも妻の口調は変化しないの
 だ 炬燵の中は公然の秘密地帯 治外法権である意味無法地帯だ
 『もういらない それよりも玄関の掃除でもした方がいいんじゃな
 いのか ふあああ』
 『寝ないでよ 食料調達の大役が残ってるんだから 玄関なら午前
 中に掃除したわよ それがスリルとサスペンスに関係してるの』
 『そうそう スリルはあんまり関係ないけどな この夏は暑かった
 から 我が息子の暴君振りも凄まじかったわけだ ふむ』
  終日在宅の父親 夏休みの間なら息子の暮らしと大差ない 昼間
 からブラブラしているのは 既に近所では馴れ合いだ
 『あの子に関係してるわけ 保母さんに手をつけたとかなら即離婚
 よ 言わなくてもわかってるだろうけどね それ以外は想像できな
 いわ 寝ちゃう前に説明してよね』
 『ふむ ふむふむ カエルにトカゲにトンボに もっといるぞ各種
 の魚類 それに足の長いバッタにカマキリに カタツムリはどうだ
 かわからんな ふあああ 投げたときに潰れたかもしれん』
  どうも意識が混沌とする なんという快楽だ 男の戦いはかくも
 壮絶な誘惑との対決 ミカンを喰ってテレビを眺める女には理解で
 きんだろう 妻の声が遠くから聞こえる
 『寝惚けてるのね イモリがサスペンスで玄関の掃除 あたしが買
 い物に行くから構わないわよ 夕食まで寝てなさい もう』
 『ふむ この夏はどれだけの生き物を救出したことか どれか1匹
 ぐらいは恩返しに来るぞ ふむふむ イモリ女とか ははは』
 『イモリは来ないんじゃないの そもそもあたし達が結婚したのは
 あたしがあなたにイモリの』

  その辺りまでは聞こえていたが 後はなんだかわからなくなって
 しまった 炬燵の誘惑は凄まじく 眠りの淵へ落ちてゆく
  下半身が温められたせいかはわからないが なんだか淫靡な夢を
 見ていた 濡れたような長い黒髪 微笑む美人の腹が赤かったこと
 だけが印象に残っていた





             》 しびる 《
+++++++++++++++++++++++++++++++
(のりこ)>はい 美暦賞参加作品の7本目です もうここいちばん
      は諦めましたか(笑) ただのウチの作品ですし
(しびる)>今回のお題は『夏の思い出』 直球は通用しないからか
      なり絡めてで 基本はほのぼの いくぜ底力 うらー
(のりこ)>特徴がないと弱いんじゃないですか まあいいですけど
      てか よくないんですけど で この第7回は4名さん
      参加のビリっこです ビリっこが定位置ですね
(しびる)>はあ いろいろ仕方ないよなあ
posted by 篠原しびる at 03:05| シンガポール ☁| Comment(0) | TrackBack(1) | 美暦賞系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

美暦賞系06 おいしいじゃん

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 種別 美しい暦文学賞応募作品 美暦賞06
 題名 『 おいしいじゃん 』
 初出 ニフティサーブ/FJAMEA/18番会議室
    1995年07月13日01時44分
 注釈 行頭スペース+30W
+++++++++++++++++++++++++++++++
SUBJ:【美暦賞】おいしいじゃん

 Sibi Temperate V.4.1 (space+30words)

 第6回美暦賞応募作品




         『 おいしいじゃん 』


                        作:しびる





  熱帯雨林の夜は 思っていたよりも熱帯夜ではなかった 日中は
 あれ程の高温だったにも関わらず 日没と同時に涼しげな風が辺り
 に漂う なにかこう世界が転換するような予感だ
  実際 夜間の生態系は昼間のそれとは一変するわけだから あな
 がち予感も的外れではない

 『いつも思うんだが 険悪な状態になったときには 逆に問題が多
 いよな これ微調整な』
 『馬鹿 放り投げないでよ 馬鹿と心中は御免ね』
  夜間の移動はすこぶる危険だ 生体走査の結果では2メートル以
 上の生物は確認されなかったが 探検隊の鉄則 夜は大人しくして
 いろってのが常識だ
 『馬鹿って言うなよな ライセンス収得数は俺の方が2個多いんだ
 ぜ それで知能を測るわけじゃないが ほい これもだ』
 『投げるなって言ってるでしょ 連鎖反応で半径5キロのクレータ
 ーができるわよ だから馬鹿って言ってるのよ 馬鹿』
 『ロックしてあるからな 象が踏んでも大丈夫だ 仲良くしようぜ
 それも仕事だし わははははは』

  気温や気候 それに地殻変動 大気組成や有毒物質 事前の調査
 は無人の観測機でおこなえる その時点で必要なら大規模な適化作
 業も実施できる 有望な鉱物資源があるなら環境を無視することも
 しばしば 放置される惑星も数多い
  そんな中で 使用に供する段階までの手順が最も煩雑なのがリゾ
 ート系の惑星だ 反応弾で掃討してから採掘プラントを建設するわ
 けでもなく かと言ってそのまま居住できる惑星は少ない
  人工的に自然を残す作業は 新たに自然を構築する作業の数万倍
 の投資を必要とする 俺達の仕事はその初期段階

 『機動調査部は軍からの天下りが多いのよ 民間企業と言っても連
 邦軍と癒着なしでは仕事にならないでしょ これはリコールね』
 『よく研究してるよな 男女ペアなら仕事もはかどるってもんだぜ
 男同士で何カ月ってのは 考えるだけで鳥肌が立つ』
  作業するのはいつもキッチンユニット どの時代でも食卓っての
 は集いの場である テーブルの上には疑反応弾の弾頭
 『あちらさんは本職だもん 人間の性衝動だって作戦行動の一部な
 んでしょ 今日の夕食当番はあなたよ』

  彼女はこの任務の唯一のパートナー 軍の方式に従って夫婦また
 は交際中の男女が選抜された
  俺達が勤務するのは業界最大手のリゾート開発企業である 今回
 はアクリノール星系の第4惑星バリンの事前調査 この報告の如何
 によっては年間数千億の事業が発動する 重大な任務だ

 『リアクターの調子が悪いんだな こんなのを使うはめになったら
 大問題だが 夕食は少し趣向を変えたぞ』
 『創作料理なら食べないわよ 脱ユニット協会の会員だかなんだか
 知らないけれど 衛生面や栄養価を考えれば』
  俺は親睦団体である汎銀河脱キッチンユニット協会の会員だ 会
 の信条は手作り料理の復古にある 会員数は3千万人余り 軍や企
 業や政権を超越した団体なのだ ちなみにこの場合のユニットはユ
 ニットスペースではなくて合成器を指す
 『つれないなあ まあ食べてみろって 会の信条である現地調達が
 今回のメインテーマだな』
 『なら尚更ね あたしはキッチンユニットを使うから』
  弾頭をバラバラと床に落とす 片付いたテーブルに料理を並べる
 食材は昼間の調査の折に調達したものだ 無論だが検疫は施してあ
 るので人体には無害だ
 『極地でなくて良かったよな 赤道近辺は食材の宝庫 シェフとし
 ては嬉しい限りだ 軟体生物を基調にアレンジしてみた』
 『ひょっとしてコンペルを煮込んだの よくまああんな物を食べる
 気になるわね ホント馬鹿ねえ』
 『馬鹿って言うなよな こっちのはノウメンを地中海風に調理して
 みた オリーブオイルは純正品だぜ』
  コンペルは調査船の外壁に張りつく体長10センチほどの軟体生
 物だ バリンには数千種類のコンペルがいるが これの正式名称は
 知らない ノウメンは三生類動物ムーアの第二期の俗名だ ムーア
 は植物性から動物性へと変化する珍しい生物で 第二期の名称はラ
 テン語のミドルネームから由来しているらしい
  命名は連邦の学者がおこなっているので 詳しくは知らない
 『無害だからって美味しいとは限らないじゃない なにか基本的な
 ところで誤解してるんじゃないの まあ任務に忠実だとも言えるけ
 れど』
 『食えるって判明すれば 観光の目玉になるかもしれんからな 無
 下に殺戮するだけが手段じゃないだろう 食ってみよう』
  最初にコンペルの皿に手を延ばす 緑色と赤色の斑模様 なにか
 生理的に拒否反応を催すが グルメの基本は冒険にある
 『どう 色だけ見れば毒物の権化みたいだけど 美味しいなら付き
 合うわよ』
 『なんて言うのかな 二日酔いの朝にシャンプーでうがいをした感
 じか 好んで食べる奴もいるだろう 俺は駄目だな』
 『なにそれ 見たままの感想ね 残さず食べなきゃ協会から追放さ
 れるわよ そっちのも食べてみて』
  コンペルは不可だ 続いてノウメンの皿に手を延ばす ノウメン
 は植物と動物の中間生物だから 栄養満点 難点は鱗粉のように輝
 く紫色の外皮だけだ
 『なんだか少し後悔しているぞ しかし研究者の端くれとして食べ
 ないわけにもいかないよなあ』
 『嫌なら辞めれば 協会には黙っていてあげるわよ その代わり明
 日の運転手はあなたよ あら 食べるのね』
  ホークで突き刺してノウメンの欠片を口に放り込む オリーブオ
 イルの香りに続いてなにか不思議な風味が広がる 苦いと甘いの中
 間 鼻腔をくすぐる酸味 ドロリとした感触が舌に絡みつく 咀嚼
 するごとに変化する風味 なんと表現したものか
 『やっぱり駄目でしょ 運転手は決まりね』
 『これはまた なんと言ったものか 騙されたと思って食べてみろ
 こんなに旨いものは いやはや 食ったことがない なんだか凄い
 ぞ これは凄い』
  とても興奮してきた これが果たして食べ物か すべての味覚が
 混在し相互に干渉する様はまさに芸術品だ 香りも申し分なく 舌
 触りさえ感涙を誘う このような感覚が宇宙に実在するなんて
 『なに興奮してるのよ 悪夢のようなノウメンの密生を見たあとで
 しょ 思いださないの あたしの脳裏には焼きついてるわよ』
 『おうおうおう 丘一面のノウメン畑 天国のような眺めじゃない
 か これを食わないのは そうだ馬鹿だな』
 『ちゃんと検疫したんでしょうね 未知の物質じゃないかしら』

  無人探査機による調査は数年前に終了していた 生態系について
 もウィルスレベルまで調査されていた 実際のところ気密スーツな
 しで闊歩しているのだから レベル10での安全は保証されている
  俺達の任務は いわゆる住み心地の調査 リゾート用なら蚊の一
 匹でも問題となる 居住環境の最適化は星系破壊より困難だ
  そんなことはとにかく

 『悪いけれど調べるわよ これも仕事だからね』
 『わははは なんだって構うものか 仕事をするならすればいい』
  とても気分がいい 旨い食事はそれだけで快楽だ 催興奮性物質
 やその類のものではない 嬉しいから興奮している
 『成分表は問題ないわね 微生物の類でもなさそうだし どうして
 興奮してるのかしら 妙ね』
 『どうして食わんのだ こんなに旨いものを 俺が残さず食べてや
 ろう わははははは なんだか楽しいじゃないか』
  非常に楽しい 彼女はなにか喋っているが そんなことは構うも
 のか 食わないなら食ってやろう
 『辞めなさいよ 理由はわからないけど危険よ 自覚してないの』
 『なにが危険なものか こんなに旨いものをだな わははははは』
 『だからそれが変なのよ 危ないじゃない 弾頭が転がっているの
 がわからないの』
  そう言えば床には擬反応弾の弾頭が転がっている 眺めていると
 撃ちたくなってきた 輝く閃光 今の気分には相応しいではないか
 『よーし 派手に花火を打ち上げてやろう わはははは』
 『馬鹿 なに馬鹿なことを言ってるのよ 辞めなさいって』
  俺は銃を抱えて飛びだした 閃光を見れば彼女の気分も変わるだ
 ろう ノウメン畑の上で輝く閃光 味覚を表現するにはこれしか手
 段がない

  バリンの夜は非常に明るい 5個の月が上空に輝く 昼間降り注
 ぐ光量に比例して月の輝きも凄まじいのだ 地球上なら昼間ぐらい
 の明るさか
  俺はノウメン畑を見下ろしていた どこで付着したのかコンペル
 が額に張りつく しかしなんだって構うものか なんならコンペル
 にも見せてやろう 彼女が間もなく追いついた

 『はあはあ どうしてそんな速度で走れるのよ やっぱりなにかの
 物質ね お願いだから帰りましょう 精密検査をするからね』
 『なにを言うか これからが見物じゃないか わははははははは』
  眼下には無数のノウメンが一面に広がる 地面から伸びた蛇の頭
 のような姿 なんて素晴らしい眺めだろう
 『お願いだから帰りましょう ね』
 『この感覚を共感してもらいたいだけだな 輝く閃光 そよぐノウ
 メンの海 まるで天国のような眺めだぜ わおう』
 『あたしがお願いしてるのに それでも聞いてくれないの 失敗す
 れば辺り一帯が消えてなくなるのよ それでも』
 『わはははは ノウメン様がついてるじゃないか 死んだって極楽
 行きだぜ 構わない構わない わははははは』
  ノウメン様 なんて適確な表現だろう 彼女はどうして悲しむの
 か 快楽は生死を超越したものだ 俺は引き金に力を込めた
 『正気に戻ってよ もう お願いだから』
 『わはははははははは わはははははは は んぐ』
  擬反応弾を発射する寸前 彼女が俺に飛びついた 最後に覚えて
 いるのは 彼女の唇の感触だった 辺りを閃光が包み込む

  なんだか気分が悪かった まるで二日酔いのような気分 頭も痛
 いし吐き気もする
 『やっと起きたわね どこまで覚えてるのかしら』
 『どこまでってなんだよ 昨日は酒でも飲んだかな よく覚えてい
 ないのだが 何かあったのか』
 『まあ構わないけれどね ふん』
  昨日のことってのはなんだろう どうも記憶が曖昧だ 食事をし
 ていたところまでは覚えているのだが なにか恥ずかしいことでも
 したのか
 『ノウメン畑はクレーターになるし あなたは意識不明で動かない
 し 今日の運転手はあなたがやりなさい 当然ね』
 『ノウメン畑がどうしたのだ なんだか要領を得ないな それはと
 にかくなにか流動食をくれよ 昼食は作るからさ 朝食は頼むぜ』
  なにも食べる気がしない 食べないわけにもいかないので 食事
 は流動食がいいだろう
 『昼食もあたしが作るわよ どうしても料理がしたいなら』
  ベッドの脇に座った彼女が微笑む 調理担当は当番制だ それに
 彼女が作るのはキッチンユニットが作ったものだ 料理はなんたっ
 て手作りに限る
 『脱ユニット協会の会員としてはだな』
 『あはははん シャンプーでうがいをしてからね あははははは』

  なにを話しているのか知らないが 黙って彼女を抱き寄せた 唇
 を重ねながら なんだか重大なことを忘れているような気がしてい
 た まあなんだって構わないけれど
  今日も食材探しをするとしようか なんたって手料理だ ふむ







             》 しびる 《
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(のりこ)>さてさて美暦賞系も6本目です 今回のお題は『キス』
      内容はこれまたまんまのストレート勝負ですね
(しびる)>いや 当時得意科目だった宇宙ネタで勝負して キスで
      目覚める故事も絡めてみた どかんといくぞいってさ
(のりこ)>チカラ入ってますよねえ でもねえ
(しびる)>一気に場面を設定して これでもかってスピード上げて
      さ ラストはほのぼので締めてあるし
(のりこ)>でもですねえ まあいいや んじゃこの第6回は4名さ
      ん参加のビリっこです つまり4位です
(しびる)>いろいろ仕方ないよなあ とほほ うー
posted by 篠原しびる at 03:04| シンガポール ☁| Comment(0) | TrackBack(3) | 美暦賞系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

美暦賞系05 泣いている人がいる

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 種別 美しい暦文学賞応募作品 美暦賞05
 題名 『 泣いている人がいる 』
 初出 ニフティサーブ/FJAMEA/18番会議室
    1995年05月30日00時02分
 注釈 行頭スペース+30W
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SUBJ:【美暦賞】 泣いている人がいる

 Sibi Temperate V.4.1 (space+30words)

 第5回美暦賞応募作品




         『 泣いている人がいる 』


                        作:しびる





  近所の定食屋から戻ると 午後一の仕事は分厚い封筒だった う
 んざりしながら開封すると 書類の奥から1枚のディスクが現れた
 早速端末にぶち込みタバコに火を点ける
  一瞬吐き気をもよおしたのは昼に食ったフライが原因だろう

  都市伝説 簡単に説明すれば噂 出所の判明しない流言飛語の類
 他愛のない冗談や政権を揺るがすデマゴーグ 多くは怪談や卑猥な
 儲け話 長期間蔓延するものもあれば一笑に附されるものも多い
  最初は企画のひとつでしかなかった 俺が所属する雑誌は季節発
 刊の情報誌 大抵は風俗関係がメインなのだが たまに色の変わっ
 た特集も組む 都市伝説を持ちだしたのは俺だった
  初期の企画では奇怪な噂の実地検証を 似非霊能力者を使って馬
 鹿騒ぎにまとめようとするものだった 今眺めているのはその資料
 である

 『あら珍しい 坂口さんが仕事してるなんて なーに?』
  眩暈がしそうな香水のかおり 職場唯一の女性がモニターを覗き
 込む
 『学生に調べさせたんだ マルチ商法の主犯探しのようなものだ』
 『ふーん 社会派記者に転向したのね まあ頑張ってね』
  画面に表示されているのは点と線 点の下には短文 これは噂の
 流布チャートなのだ 彼女は興味を持たなかったのだろう すぐに
 立ち去った

  暇な大学生を数十人集めて金を握らせた 周囲で広がっている噂
 の遡及調査のためだ 出発点のサンプル数は100 ジャンルは主
 に怪談物に絞り 出所の判明したものは他の調査に回させた
  噂は常に変化している 中継点に語彙力の豊富な者が混じればす
 ぐに変貌する 細々と繋がる流れが同一人物を介していることも多
 い 意味合いからすればその人物が源流だとも説明できるが 大抵
 の場合は優秀なアレンジャーであり 更に伝聞だったりするのが常
 なのだ
  画面を50人も遡れば 大半の噂は出所が判明していた これは
 意外だったのだが殆どの噂は雑誌が源流であった その一部には俺
 の関わった企画もある また映画の粗筋であったり漫画の描写であ
 ったりもした 酷いものになると古典落語の落ちだったりもしてい
 た これらが全体の90%を占めていた
  それらは検証するまでもないだろう 今回の企画の意図から外れ
 るのだ 俺の書いた嘘話なんて経費を使って調べるまでもない
  しかしそれ以外の10%は興味をそそられるものであった いわ
 ゆる怪談 10人ほどで実際の目撃証言に至っているものもある
 これなら使えるかもしれない 俺はその証言にマークを付けた 更
 に遡る
  100人を越えても継続している短文が4つ そのひとつは俺も
 聞いたことがある 有名な怪談話でTV媒体で取り上げられたこと
 もある それは結局出所が判明しないまま調査が中断していた
  残ったのは3つ 内ふたつは150人近くになって目撃証言に至
 っていた 前出のひとつを含めて3サンプルが企画合致に有力だろ
 う 問題は最後のひとつだ

  出発点のサンプルを眺めたとき 果たしてこれが怪談なのかと疑
 問に感じた あまりにも無意味でそれでいて具体的な単語で構成さ
 れていた いわく『家の中で泣いている人がいる』これが出発点
  噂文の構成は因果を含めるのが基本なのだ 何々をすればどうか
 なる どこどこでは何々をしなければならない たまに怪談的なも
 のでも 描写だけで完結しているものもある それにしても表現が
 奇怪だったり単語自体が不気味だったりするものだ それは噂文の
 宿命であり また流布の原動力になるのだ
  しかしこのサンプルは違っていた まるで小学生の作文のように
 ありきたりな表現 なにかしらの因果や教訓的なものも含んでいな
 い 何故これが噂として成立するのか
  ナンバー89と記された噂は20人ばかし遡っても変化していな
 かった あいかわらずの淡白な短文 しかし21人目で劇的な変化
 を見せた いわく『家の中でようちゃんが泣いている』
  備考を見ればこの人物から3名に対して噂が流布している たぶ
 ん『ようちゃん』の部分がこの人物から欠落したのだろう 伝聞文
 化では頻繁に発生する現象だ この人物から5人は同じ表現
  そして26人目で更なる変化 実際の流布では遡るほどに原表現
 に近くなるのだが このチャートを見れば妙な誤解が発生する 出
 発点が最終形態なのだ そして変化は微小なもの いわく『家の中
 でしょうちゃんが泣いている』あいかわらず意味不明
  それから数人毎に人名部分だけが変化していた そうちゃんやり
 ゅうちゃん まあちゃんやたあちゃん 変化の痕跡を追ってゆくう
 ちにある共通点が浮かんできた 第2音が伸びる それは60人目
 ではっきりとした
  いわく『家の中でかあちゃんが泣いている』なにかノスタルジッ
 クな表現になってきた これが怪談なのだろうか 調査担当者はな
 にに着目して追跡したのか そうは考えながらも俺自身が画面から
 目を離せなかった なにかある なぜ母親は泣いているのか
  それから数人は同じ表現 5人ほどでかあちゃんがママに変化し
 ている 見れば性別が変化しているのだ これから数人は女性が続
 いている 一般名詞は中継者の性別によって変化することがある
  そしてたいした変化を見せずに100人を越えた 変化は101
 人目で現れた いわく『遺影の中で母が泣いている』ここまでは怪
 談の体裁を保っていたのだろう 遺影は普通無表情か微笑んでいる
 ものだ それが泣いているのは異常な状態だ かなり原型に近くな
 ったのではないだろうか
  そして3人遡ったところで更なる変化 いわく『遺影の中で母が
 泣いていた』現在形が過去形に変化しているのだ あるいは過去完
 了形だろうか とにかく現在はそうではなくて ある時点までは母
 親は泣いていたのだ 限られた状況のみの発現は怪談の基本である

  それから20人ばかしは変化していない 数多くの中継者達はど
 んな考えで噂を伝えたのか 俺がこの短文を聞けばどうするだろう
 か 意味のない単語の羅列 まるで誰かへの伝言のような内容
  おそらくひとりが伝えたのは数人から数十人 ネズミ算なら全国
 へ流布するには数日で充分だろう しかし日付のデータではこの時
 点で1年と2カ月 一笑に附された枝を回避して この流れは旅し
 てきたのか 俺が聞けば誰かに伝えるか さていかほどか

  そして更に遡る 150人を越えたところで日付の表示は2年前
 いわく文頭に『この話は必ず誰かに伝えてください‥‥』後半部分
 は変化していない この152人目までは発信者の意思が通じてい
 たのだろう 本来ならば文頭が消滅したところで消え去る流れだっ
 たのだろう これ以降は偶然の産物か
  更に遡ったが同じ表現だった 人数は既に200名に達している
 なにがこれほどの威力を発揮したのか 遺影の中で泣く母親 誰が
 誰に宛てたメッセージなのだろう
  そして210人目で流れは途切れた 画面の表示はここまでであ
 った 以前は空白である そこには調査担当者の後記が記されてい
 た いわく『これ以前は中継者が死亡していました 近親者の証言
 ではK市の友人から聞いたそうです 以上』
  200名以上の人間が追跡できただけでも奇跡的なことであろう
 大半の噂は途中で追跡者の推論に置換されている それは俺も納得
 できることであるが 実際の発信者に行き当たっている事例は全体
 の1割強である ここまでの追跡だけでも学術的な価値があるほど
 だ しかし発信者を知りたい気持ちは更に強かった

  俺の出身はK市だ そのどこかから誰かに宛てたメッセージは流
 れ続けている 噂は拡散しながら流布してゆく この流れは210
 名の間を伝えられたが これ以外の枝はどこまで続いているのか
 形を変えながら内容すらも変貌しながら 誰かのメッセージは流布
 してゆく 気の遠くなるような時間と人間の間を 誰かの意思が広
 がってゆく
  誰が誰になんのために 遺影の中で泣く母親 なにか大切なメッ
 セージ なんのために いったい誰が

  俺はイスの上で体を伸ばした 他人の伝言を追跡するうちに 俺
 もなにか郷愁感に苛まれていた
 『あら 坂口さんたら まだ仕事してたの?』
 『いや 今終わったところだ』
  先程の彼女が再び現れた 返事をしながら俺は噂について考えて
 いた 彼女にも伝えよう 誰かの意思が誰かに伝わるまで
 『あのさ これは絶対誰かに伝えて欲しいのだが 遺影の中で母さ
 んが泣いているそうだ』
 『あはは それそれ あたしが話したかったのもそれなのよ』
 『なんだ聞いたことがあるのか それじゃ‥‥』
  俺が口篭もった隙に彼女が続ける
 『同じじゃないのよ 不思議なことに誰かさん宛かは決まっている
 の‥‥なんでも坂口さんに伝えるまで終わらないそうよ そう言え
 ば坂口さんも坂口さんよね ふーっしぎぃ あはははは』
  そう言いながら彼女は馬鹿笑いしていた

  なんだ俺宛のメッセージだったのか 今度の休みには墓参りでも
 するか 母さんが泣いているらしいからな




             》 しびる 《
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(のりこ)>で 美暦賞系の5本目です あとここいちばんの別位相
      ものですね でもないか なに系でしょこれは?
(しびる)>あのさ ひとの仕事をムリに分類するな
(のりこ)>それもそうですね ところで やたらチカラが入ってま
      すねえ なにかこう普段の作品にもない勢いが?
(しびる)>わかるかね?
(のりこ)>それはもう とんでもなく長いお付き合いですからして
(しびる)>やっぱしさ ここで一発どかんと大賞を狙ってゆこうと
      そう考えてもおかしくはないよな 物書きとしてさ
(のりこ)>普通の御意見ですね すごくよくわかります
(しびる)>お題は『伝言』 もう超ど真ん中のネタをすごく練り込
      んでどかんとかました意欲作だ どかんばりばり
(のりこ)>あー でも後半ちょっと息切れしましたか
(しびる)>わかるかね?
(のりこ)>それはもう とんでもなく長いお付き合いですからして
(しびる)>たまの1本じゃないしさ 毎日描いてる中で どかんば
      りばりでやると息切れするわな しおしおのぱー
(のりこ)>それも問題ですけど で この第5回は5名さん参加の
      3位です 結果はどかんじゃなくてしおしおのぱー
(しびる)>いろいろ仕方ないよなあ
posted by 篠原しびる at 03:03| シンガポール ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 美暦賞系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

美暦賞系04 人生設計

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 種別 美しい暦文学賞応募作品 美暦賞04
 題名 『 人生設計 』
 初出 ニフティサーブ/FJAMEA/18番会議室
    1995年03月21日00時50分
 注釈 行頭スペース+30W
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SUBJ:【美暦賞】人生設計

 Sibi Temperate V.3.0 (space+30words)

 第4回美暦賞応募作品




           『 人生設計 』


                        作:しびる





  時空間航法が発明されて25年 開発当初の混乱は想像を絶する
 ものであったが 終身刑を含めた法整備の結果 すべての時空機能
 は国家機関の独占するものとなった
  天災や広域に渡る事件事故の警報 長期的な景気動向 その他公
 共の利益福祉に関する予想は まるで天気予報のように家庭端末に
 提供されていた 当然だが天気予報も完全に予測される なんたっ
 て実際に見てくるんだから正確なのだ
  時空間航法とは平たく説明すればタイムマシンだ 時間を移動で
 きる装置の総称である
  タイムマシンといっても古典SFに登場するような船の形ではな
 く 人口200万人の街をすっぽりと取り込んだ巨大な施設群なの
 だ 燃料施設 加速装置 各種の制御装置や作業員の居住エリア等
 時間を移動するには これだけのエネルギーを必要とする 当然だ
 が移動するのは人間である 機械設備は送りだすだけ だから未来
 にしか移動できない 同じ施設がなければ帰ってこれないのだ
  これだけが現在まで残存している唯一のタイムパラドクスである

 『あなた ご帰還早々にアレだけど 監理局から御手紙よん』
 『ああ? 休暇願が受理されたのかな』
  俺が家に帰ると女房が手紙を差しだす 俺の仕事は時空局の主任
 調査員 タイムマシンの搭乗者である
 『週に2日も休んでるのに あんまり休んじゃローンが払えないわ
  よん 頑張って働いてくれなきゃ』
 『何度説明しても理解できないようだな 週に30日も働いてるん
  だぞ ローンがなけりゃこんな仕事なんか辞めてやる』
 『なに言ってるのよ 一週間は7日間よ あはははは』
  女房は俺の肩を叩いて馬鹿笑いしている 美人だが賢い女とは言
 えないだろう
  タイムマシンの搭乗者と言えば 選りすぐりのエリートのように
 感じるだろうが 実際には高収入のみが保証されたダーティーワー
 クなのだ 理性のある人間なら誰も希望する類の仕事ではない 俺
 だってやりたくはない
  時間移動は国家機密レベルのシステムであるが 搭乗者はなにも
 しない 数年先の未来へ一定期間出張して 書類を受け取って帰還
 する 至って閑職 だらだらと年を食うだけの仕事である 高収入
 も当然であろう
 『それで御手紙はなーに? 休みが取れるんならバカンスね』
 『お前がそんなだからローンが減らな お!』
  俺は手紙を開いて絶句した 手紙の差出人は時空監理局 事務的
 に記された文章は簡単な説明で締められていた
 『なによ? どれどれ あららららら あなた死んじゃうの?』
 『か 簡単に言うなよな 来月の13日だ ううむ』
  時空関連の情報は公共の利益福祉に供するものだが 唯一個人レ
 ベルでのサービスが実施されている それがこの手紙だ 事前に受
 け取り拒否の手続きもできる しかし俺は手続きしていない
  曰く『死亡告知サービス』 未来の死亡届から逆算して 死亡確
 定時の30日前に送付される これだって立派な公共福祉であろう
 有意義な余生を送れるってものだ
 『ふーん どうやって死ぬの? 労災認定を受けられるような死に
  方かしら?』
 『緊迫感が足りないぞ! 俺は死ぬんだぞ!』
 『誰だって死ぬのよ なら少しでも意味のある死に方をしてほしい
  わん 残されるあたしのことも考えて』
 『 病死だな 風邪をこじらせて肺炎で絶命だ わかっているの
  にこじらせるってのも不思議だな 』
  死亡告知は拒否さえしなければ誰にだって送付される 死亡原因
 が判明していれば回避できると考えそうだが 死亡原因が明記され
 ているわけだから どんなにあがいても回避は不可能である 政府
 の巨大コンピューターが無限シュミレーションした結果なのだから
 俺は来月の13日に確実に死亡するのだろう
 『つまらない死に方ね まあ病死なら保険金だけでも受け取れるわ
  ね 告知以降は増額できないのよね?』
 『お前なぁ 』
  俺は頭を抱えてソファーに座り込んだ なにも考えられない 俺
 は30日後に死亡するのだ

  その夜 一週間ぶりに女房を抱いた 出張が終わればいつだって
 そうするのだが 今夜は違う なんたって死亡告知が届いたのだ
 『あなたって元気よね 仕事を始めてからは毎晩だもの とても病
  気で死ぬとは思えないわん』
 『毎晩って そうか お前にとっちゃ毎晩なんだな? 何度も説
  明するが俺は一週間ぶりに帰ってきたんだぜ? 理解できないと
  思うが 』
  女房は上気した顔で俺を見つめる 確かに美人だが俺の言葉を理
 解しているかは疑問が残る まさに亭主元気で留守が良い
 『なんだって構わないわん 死んじゃうのが仕方ないなら 夜のお
  勤めぐらいは頑張ってちょーだい うふふん』
 『前から疑問なんだが なんだって俺となんか結婚したんだ? お
  前くらいの美人なら男なんてヨリドリミドリ 』
 『うふふん 愛してるからに決まってるじゃない さてさてそうと
  決まれば第2ラウンドね? 頑張ってもらいましょう あはは』
  笑いながら女房は俺の上にのしかかる 金のためかSEXのため
 か この女なら両方かもしれない 俺は抵抗せずに身を任せる
  女房のするに任せて 俺はぼんやり考えていた そして女房に質
 問する
 『俺が30日後に死ぬのは構わないのか? うまくすれば保険金だ
  けじゃなくて労災保証も支払われる お前はそれで遊んで暮らせ
  るだろう あがいても仕方がないが それで納得できるのか?』
 『仕方がないじゃん んぐっ 納得するしかねぇ さてさて』
  女房は俺の上で腰を降り始める 俺は快感に浸りながら決意して
 いた 女房が納得しているのなら仕方がない いや好都合だろう
  方法がないわけではない 誰だって死ぬ それだけ押さえれば充
 分なのだ 俺は黙って目を閉じた

 『お帰りなさい 毎日のお勤めご苦労さまん』
  俺が家に帰ると女房が微笑む 彼女には10時間程の別れであっ
 たのだろう 毎日ご苦労って表現には語弊があるが 説明しても無
 駄である 女房には理解できない
 『ああ 毎日大変だ うむ』
  俺はカバンを手渡しネクタイを解く 俺にとっては久しぶりの我
 が家だ なんだか懐かしい
 『今日手続きしてきたぞ 特例で労災認定が受けられることにな
  った 俺の死後はかなりの金額が払われるだろう』
 『あら 嬉しいわん でも就職してからそんなに経ってないでしょ
  う? 金額も体したことはないんじゃないの?』
  女房は俺の首に抱きつく 早速催促しているのだろう 金とSE
 Xのことしか考えていないのだろうな 俺はため息をついて答える
 『それもぬかりない 先に風呂だ それからな 』
 『まあなんだって構わないわよん うふふん』
  俺は首に巻きつく女房を引きずって風呂へ向かった

  俺が死ねばかなりの金額が支払われる 就労期間も完全だ 俺は
 定年退職まで働くのだ 退職金だって支払われる
  女房は何日で気付くだろうな 俺は30日間で30年間を過ごす
 方法は簡単だ 仕事をすればいい それだけ 定年を越えるまで働
 き続ければいいのだ その間はこの時間では歳をとらない

  俺はほくそ笑んだ 人生設計は完璧なのだ 定年まで馬鹿みたい
 に働いて 気が向けば若い女房のところに帰ればいい 理想的な人
 生だ 問題なんてなにもない 完ぺきな人生だ ただ問題があると
 すれば 
  俺は定年退職後は風邪で死ぬんだったな それだって構わないぞ
 そんな先の話は後で考えればいいんだからな

  気が付くと女房が風呂場を覗いていた さてさてそれでは と
 久しぶりに女房を抱いてやるかな 




             》 しびる 《
+++++++++++++++++++++++++++++++
(のりこ)>さてさて美暦賞系の4本目です また別位相系のお話で
      すね ここいちばんで別位相って感じですか?(笑)
(しびる)>そりゃ ここいちばんだもん(笑) で 今回のお題は
      『かぜ』だわな なにがかぜなのかなあ んー
(のりこ)>ご自分がお描きになったのでしょうに? 知りませんよ
(しびる)>あのさあ なんかこの枠なんだけど 評価の低い昔の作
      品をこうやって世間様にさらすってのは すごくストレ
      スが溜まるよな やっててちっとも楽しくないや
(のりこ)>あー ご自分がおはじめになったのでしょうに?
(しびる)>ならのりこに相談なしに辞めちゃってもいいのかよ
(のりこ)>そうはいきません故 そこんとこ合議制でよろしくです
(しびる)>んじゃ聞け泣き言を くらえ怒濤の恨み節 うらー
(のりこ)>なんだかなあ(苦笑) ってことで第4回は6名さん参
      加の2位です 前回に比べれば健闘してます
(しびる)>いろいろ仕方ないよなあ
posted by 篠原しびる at 03:01| シンガポール ☁| Comment(1) | TrackBack(1) | 美暦賞系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

美暦賞系03 交差点

+++++++++++++++++++++++++++++++
 種別 美しい暦文学賞応募作品 美暦賞03
 題名 『 交差点 』
 初出 ニフティサーブ/FJAMEA/18番会議室
    1995年02月02日00時04分
 注釈 行頭スペース+35W
+++++++++++++++++++++++++++++++
 第3回美暦賞応募作品

 Sibi Temperate V.2.2 (space+35words)


             『 交差点 』


                       作:しびる (JAE02166)




  初夏の夕暮れ 街灯が点灯する間際 すべてのものの輪郭が曖昧になる時間
 幹線道路から少し離れた交差点に一台の車が音もなく侵入した 目撃者は皆無
 監視システムも導入されていない交差点の出来事だった

  俺はその時刻 非番の身体を持て余し街を這回していた 趣味もなければ女
 もいない俺には 仕事のない時間は予定などなかったのだ
  その交差点に俺が通りかかったのは 事故の発生から数分後であった 現場
 の状況も生々しく ひしゃげた車からは黒煙が立ち上っていた 交差点の中央
 に設置されたハロゲン灯が流れるオイルを照り返していた 俺は考える前に事
 故車に駆け寄る 半ば開いたドアをこじ開けると 車内には誰もいなかった
  車は大破いている 事故当時の推定時速は120以上 とても生きていられ
 る衝撃ではない しかし搭乗者は失踪していた 現場検証も終り 一辺倒の捜
 査が実施されると 事故は迷宮入りしてしまった この交差点での同種の事故
 はこれで18件目である

  公安警察に所属する俺は今年の春から交通局に配属されていた 勤務態度が
 悪いわけではないが 上司との人間関係を円滑に構築するのが苦手なのだ 新
 システムにて管理される交通局は いわゆる閑職であったのだ 俺は左遷させ
 られたのかもしれない
  すべての交通手段には事故が付きまとう 交通手段は事故の確率の寡多によ
 ってランク付けされる 自動車による移動はその中でも最高の事故率である
 政府の対策委員会によって監視システムが導入されたのは15年前 すべての
 道路を機械的に監視することにより 交通事故を激減させる試みは ほぼ達成
 されたかのように報じられていた 俺達の仕事が事故処理と書類整理のみにな
 る日は間近のように感じられていた
  しかし実際には事故の調査は皆無とはならなかった 事故の発生の一部始終
 を記録している監視システムは小さな路地にまで設置されていた 中央政府か
 らの指示による設置 各行政地区による監視 普く監視の目は網羅しているは
 ずであったが やはり空白地帯は存在していた
  人家の疎らな山間部にまで いや逆に言えば過疎地区ほど濃密な予算が組ま
 れる 問題は雑多な市街地であった 各行政地区の狭間に空白が生まれるのだ
 報告書レベルでは網羅されている場所 事故はそんな所にほど多発する だが
 監視システムは作動しているのだ 事故の発生は上層部へ報告される前に闇に
 消える
  起ってはならない事故が年間に数千件発生する まさにトワイライトゾーン
 逢魔が時である 真剣に調査する者 事故を申告する者 誰も存在してはなら
 ない事故である 政府による監視システムは治安維持のために存在していた

  19件目の事故が発生した 現場は同じく件の交差点 時刻も同じく黄昏時
 目撃者はいなかった 事故の通報は発生の1時間後 俺達が到着したときには
 既に事故車は撤去されていた 事故車両の調査は俺達の仕事である しかし空
 白地帯に発生した事故は道路管理局によって処理される 疑問はあったのだが
 仕方のないことだと説明されていた
  やはり事故車の搭乗者は不明であった 数日して送付された報告書には簡単
 な言葉が記されていた つまり事故は発生していない 当然のことながら被害
 者加害者の存在しない事件は事件ではない 搭乗者が存在していないのだから
 事故は発生しなかったのだろう 俺は納得する以外に仕方がなかったのだ

  23件目の事故が発生した頃にも監視システムの導入はなされなかった 本
 来ならば第1級の警戒地点に指定されるべき場所である しかし書類上では既
 に設置されているのだ 今更の指定は誰かの怠慢を告発する結果となる
  交差点には監視システムが設置されているはずなのだ 設置されたのは13
 年前 それ以降事故の発生は報告されていない すこぶる安全な交差点なので
 ある

  俺には説明できない疑問が累積していった 誰が事故に逢おうと 誰が傷つ
 こうと そんなことは他人事であった 事故は個人の責任だ 加害者は当然の
 ことながら被害者だって個人的なことである ただ件の交差点の事故車に搭乗
 していた者達はどこに消えたのか 連れ去られたのなら納得しよう 政府の陰
 謀なら理解できないことではない そんな事件は世の中には幾らでも存在して
 いる しかし俺はこの目で見たのだ 18件目の事故には俺も現場にいた 状
 況からなら事故の発生の数分後だ 辺りには誰もいなかった 道路管理局も到
 着していなかった 俺が第1発見者であるはずだった
  俺がこじ開けたドアの中には誰もいなかった 運転していたはずの人間はそ
 の場所にはいなかった

  単調な作業が毎日繰り返された 監視システムは一定の間隔で事故の発生を
 告げる 俺達は機械の指示どおりに現場へ向う ケガ人は救急局の担当である
 し 現場の整理は道路管理局の担当なのだ 俺達の仕事は監視システムの記録
 を当事者の加入する保険会社に送付することだけである いたって閑職 単調
 な作業だ そんな毎日がただ過ぎていった
  その間も件の交差点での事故は発生し続けていた どれも決まって同時刻
 つまり黄昏時 目撃者は存在せず また搭乗者も存在していなかった
  俺は疑問を抱くことをやめていた 無駄な思考は所詮無駄な思考なのだ 俺
 がなにを考えようとも状況は変らない 疲れるだけだ 俺は強大な権力に立ち
 向かうタイプでなければ探偵でもない 不思議な事件は不思議なままでも差し
 支えない 俺の生活には影響を及ぼさない 給料をもらえればそれだけで良い

  俺は非番の身体を持て余していた いつもと同じく街を這回してマンション
 に帰る そのまま眠りに就くつもりであったが その日の俺は胸騒ぎがしてい
 た 無気力な普段の生活とは違って身体の奥から突き上げる衝動が存在してい
 た
  ベッドから起き上がった俺は部屋を後にした マンションの裏の駐車場から
 車を引きだす エンジンを始動させて俺は考えていた 低音を響かせて車は少
 し上昇する 反重力炉を3000まで上げて道路に飛びだす 目的地は件の交
 差点であった

  既に日は沈み 空は紅色から闇へと変化する間際であった 時刻は丁度この
 くらいだろう 俺は妙に楽しい気分であった なにかが起りそうな予感 単調
 な人生のアクセントになりそうな予感 気がつくと鼻歌を歌っていた
  混雑する街の中心部を抜けて市街地にでる 帰宅する人々の脇をすり抜ける
 巨大な工場の角を曲がり細い路地を抜ける あと1キロ程走れば隣の行政地区
 になろうかという場所に交差点は存在していた
  交差点の周囲は閑散としていた 少し脇に逸れると住宅が密集している し
 かし交差点の辺りだけは民家が存在していない 工場と倉庫の狭間に幹線道路
 と平行して道路は走る 誰も通行しない だが整備された交差点 まさに街の
 中の空白であった

  俺は道路を南へ走る 白い路面は闇に染まる 俺はライトを点けずに交差点
 を目指す 黙視できるギリギリの照度 アクセルを踏み一気に加速する 反重
 力炉は低くうなる 交差点に侵入したとき俺の視界には不可解な光景が映しだ
 された
  時間はゆっくりと流れた すべてがスローモーションで動いていた 俺の身
 体の反応も鈍かった ただ思考のみが加速していた
  目の前には女が立っていた 髪の長い女が微笑んでいた 交差点に侵入する
 までは女はいなかった 遅い時間の流れの中 女の微笑みと俺の思考は普段ど
 おりの時間の中にいた 女の表情が変化したとき 俺は女の後ろに立つ人影を
 確認した
  人影は瞬く間に増加した その数は数十人はいるだろうか どれもすべてケ
 ガをしていた いやケガなどと生易しいものではなかった 腕のない者や血を
 流す者 顔面が確認できない者もいた それらは皆 女の後ろから俺を見つめ
 ていた

  俺は咄嗟にブレキーを踏んだ 不快な加重が身体を襲う 車は傾きながら交
 差点を斜めに滑る 緊急緩衝装置が作動して 車は交差点の角に減り込む

  車が完全に停車したとき 俺は深い溜め息をついた 既に夕空は闇に変って
 いた 蹴り開けたドアから外にでた俺の頭上でハロゲン灯が瞬きをした 俺は
 どうやら生きているらしい 気がつくとこめかみから血が滴り落ちた 車は大
 破している 生きているのが不思議なくらいだ

  翌日 俺は公安警察を解雇された 理由は説明されたが納得のいくものでは
 なかった たぶん昨夜の事故が原因だろうが まあ 仕方のないことかもしれ
 ない 仕事を探さなくてはならないだろうと考えていた
  とにかくは休日だ 明日からは暫く休日が続く 仕事がないのだから当然の
 結果であろう





             》JAE02166 しびる《
+++++++++++++++++++++++++++++++
(のりこ)>はいさて美暦賞の3本目です いわゆる異界ものですか
(しびる)>そう分類するかね 今回のお題は『やすみ』か
(のりこ)>ラストで失職して休日が続く だから休みですか これ
      もまた強引ですねえ てかお題関係ないですし(苦笑)
(しびる)>深読みすればどうにでもなるだろうが そこんとこは読
      み手の方でどうにかするもんだ
(のりこ)>またそゆことを仰りますか まあいいですけど さて第
      3回は4名さん参加のダントツのビリです うひょー
(しびる)>いろいろ仕方ないよなあ とほほ
posted by 篠原しびる at 03:00| シンガポール ☁| Comment(0) | TrackBack(2) | 美暦賞系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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