閲覧するにあたっての注意事項
・このブログは連続スペースを除去せずに表示してください
・このブログはしび文(句読点ナシ)で作成されています
・このブログに記載されているイベント等は架空のものです
・ですから人物等も架空のものです(一部は実在します)
・希に誤字が混じる場合がありますが内容に問題はありません
・地球環境に配慮し再生テキストが15%以上含まれています
・過って多量に読んだ場合はすぐに忘却し医師に相談すること
・体質によって読後にアレルギー反応を起こす場合があります
・2週間継続閲覧しても愉快でない場合は即中止してください
・どのような表記表現もすべて好意的に解釈してください
・12歳以下の児童の閲覧には保護者の判断をお願いします
・コメントやトラックバックを無断で消去する場合があります
・ブログ内は私有地につきネタバレ・誤報の責は負いません
・ブログは生ものですので開示後は速やかにお読みください
・室内を明るくして モニターから離れてお読みください
・室温は夏期は26度に冬期は18度に設定すると快適です
・ブログ内容の複製配布商業使用は常識の範囲内で許可します

2006年07月31日

編集会議 118

(しびる)>ういーっす コーヒーくれ
(のりこ)>あ おはようございます きょうは来所予定じゃなかっ
      たですよね なあんてことは言いませんよ
(しびる)>だろうな ふう コーヒーまだかよ
(のりこ)>コーヒーっす きょうは珍しく夕立が降らなかったです
      からね 高温のまま夜間に突入って感じですか
(しびる)>ブログさ なにあれ? そうめんのカビ?
(のりこ)>あー いやあんましそうめんのカビについての問い合わ
      せが多いもので その度にお答えするのはめんどうなの
      で右サイドバーに入れ込みました 一助となればとか
(しびる)>問い合わせってなんだよ まあいいけど カビたものま
      で食っちまういやしい行動を全世界に発信するのもなあ
(のりこ)>『もったいない』ですよ 食べられるのに
(しびる)>あれな そゆこと言うと喜ぶと思ってるんだろうけどさ
      自国の言葉が世界に認知されて感激するほどウブな文化
      じゃないだろ もう既にさ なんかそういう方法論でう
      れしそうにはしゃいでるのみると だから発○途上国な
      んだよアンタの国は とか思うのは うがった意見かね
(のりこ)>うがった意見でしょ 何様だ?とか言われますよ とい
      うのを差引きしましても ならあなたのお国に『もった
      いない』という概念はないの? とは思いますね
(しびる)>だろ なにか? 彼女の国ではまだ食えるのに捨てちゃ
      ったり 旅行に出掛けるのにテレビ付けっぱなしとかす
      るわけ? そりゃもったいないだろ って概念はないの
      か? そこんところの検証はどうなのよ
(のりこ)>んー おそらくそういう話じゃないんでしょうけどね
(しびる)>だと思うけどな まあいいや あとなんかあるか
(のりこ)>えーっと そうそう しびさんの命令で録画してる『水
      どう』最新版ですけど 先週の分を録画してなかったん
      ですよ 気が付いたら2時くらいになってまして
(しびる)>そうなのか なんか見てて飛んだ気がしなかったけど?
(のりこ)>ええ 先週はどうやら放送してなかったみたいです
(しびる)>ふうん そゆときは時間変更は覚悟して帯録画にしてお
      くのな 余裕があるなら1時間ほど増やしてさ
(のりこ)>ですからそういう設定にしておきました どうもアニメ
      特撮みたいに色で気が付くってことがないもので
(しびる)>先週くらいは『ジャングルリベンジ』とかで 水どう漬
      けの毎日だったからなあ そういやきのうのメントレに
      大泉が出演してたな なんか元気君時代のV流したりさ
(のりこ)>見ました ブレイブ繋がりか知りませんけど 最近やた
      ら大泉洋さんお露出が増えてますよね 『した』の食わ
      ず嫌い王とか そもそもDVDの売れ行きがすごいとか
(しびる)>らしいな 集計の方法のなんやかんやでオリコンの上位
      には入りにくいらしいけど 実際にはトップじゃねーの
      ってことらしいな もうすっかりメジャーだねえ
(のりこ)>マニアとしては痛し痒しですか(笑)
(しびる)>別に(笑) そゆのにこだわるほどどうってこともない
      んだけど まあ 売れればいいじゃん けっこうだな
(のりこ)>ですけどね あと ウチの事務所の個人情報が漏洩しま
      したってお詫びの手紙が来てました あのラ○○○アで
      注目されてた弥○○○のソフトの会社ですけど
(しびる)>ウチもきてた なんかバージョンアップの連絡用に作成
      した名簿が名簿屋を通じてどこぞの業者に使用されたと
      か それって社員が売り飛ばしたんだろ
(のりこ)>そゆことじゃないでしょうかね ことの経緯は細かに書
      いてなかったですけど フリーダイヤルに聞けば教えて
      もらえるんでしょうか 別に知りたくないですが
(しびる)>なんかゆるいよなあ 最近はなんでもさあ 住所氏名社
      名くらいのことでメクジラ立てるのもなんだが あんま
      しいいかげんにやってるとどんどこ規制が厳しくなるぞ
(のりこ)>まあそうですよねえ みんな学校でそゆこと学習しなか
      ったんでしょうか これもゆとり教育の弊害?
(しびる)>まだあいつら社会人になってないって(笑) まあいい
      あとなんかあるか てきとうに埋めちまおう
(のりこ)>えーっと なんかあるかな 『ホリック』のEDが替わ
      ったとか アレってエアギターとかいうんですよね
(しびる)>ナントカってサラリーマンのオッサンが世界大会で優勝
      したとかってアレだわな ちょい古い情報だけど
(のりこ)>あとそうですねえ あんましなにもないですからねえ
(しびる)>あいかわらずつまんねー暮らしだな のりこは どこか
      バイトにでも行かせるか? ドジってネタ仕込んでこい
(のりこ)>なんですかそれ 事務所のヨタ話のためになんで私が労
      働しなきゃいけないですか それもドジッ娘決定ですし
(しびる)>ドジッ娘ってのは20歳までだろ ニキビが吹き出物と
      呼ばれるように ただのどんくさいオバサンだわな
(のりこ)>むっ えーっと グーで殴ってもいいのかなあ こゆと
      きって? 正当防衛? 民間人による現行犯逮捕?
(しびる)>ホントのことじゃん とにかく次回までに履歴書を用意
      しておけな 3×4の証明写真と んじゃ解散
(のりこ)>ぜーったい用意しませんから(ぷんすか)
posted by 篠原しびる at 23:49| シンガポール ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 編集会議 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年07月28日

連作20 妙連作02 やればやるとき

+++++++++++++++++++++++++++++++
 種別 連作系第20期 妙連作02
 題名 『 やればやるとき 』
 初出 ニフティサーブ/FJAMEA/18番会議室
    1996年10月19日01時33分
 注釈 行頭スペース+30W
+++++++++++++++++++++++++++++++
SUBJ:【妙連作】02 やればやるとき

 Sibi-Tem V.4.1

 優れてること不思議なこと 深遠な道理 妙連作 #02(A群)
 



          『 やればやるとき 』


                        作:しびる





  人間はどんな環境にも慣れてしまえるものだ 息をする暇もない
 ほど忙しければ 逆に体調も崩さず睡眠不足も問題なかったりする
 多分に精神的なものだから そこはそれ 勢いで解決するなんて方
 法もある 自覚してなくても していても状況は変化しない
  ならば正反対の作用もある 状況が緩慢になると 気分だけじゃ
 なく展開そのものがダレてしまう 反射的な対応に実力が発揮され
 る真理なら 余裕のある展開はすべてが裏目 なにをしても成功し
 ない気分が蔓延して これじゃダメだと思いつつダレる
  だからこそ気分を仕切り直す つまり展開や状況や環境を仕切り
 直す 気を抜けば埋没してしまう業界だから はいそうですか仕方
 がないですねって甘えでは渡っていけない と考える けれど

 『支度はできましたか ゆみりさん もしかして起きてますよね』
 『ああああああっと 起きてるけどさあ ふああああ』
  確か朝早くに目が覚めて ベッドに座り込んで1時間ぐらいぼん
 やりしていた なにも考えずにぼんやり それから二度寝して起き
 たのは内藤さんの声 おそらくPルティア時間で午前9時くらい
 『起きているのなら起きてくださいよ ロビーで待っていますから
 重役の方々もみなさんお揃いです 急いでくださいね』
 『ふああ そんなに急かさなくても 一日は長いんだからねえ』
  船の中では連邦標準時で生活するけれど 惑星上ではそうもいか
 ない Pルティアは29時間14分で自転している 大雑把に換算
 すれば2割増 実際に長い一日は緩慢だから散漫である
 『予定は予定です 長ければ長いなりに お願いしますよ』
 『はいはい すぐに行くから 適当に繋いでおいてね よいしょ』
  ベッドから起き上がって背伸び ルティア星系に滞在して既に3
 カ月 連邦標準時に換算すれば何日になるのだろう 最初の頃には
 鮨詰めだった予定も この最近になって仕事のない日が続く
 『おはようございまーす あどーも社長さん 御無沙汰です』
 『おはようじゃないだろうが 9時に集合を掛けていたはずだな』
 『すみません 私の手違いで連絡が ゆみりさん 失礼しました』
  ロビーには株式会社ZAP企画の重役さん達が勢揃い 地球にい
 るときにはほとんど見掛けない人達だけど Pルティアに本社事務
 所が移転してからは頻繁に遭遇する それでも全員が滞在している
 わけではなく 銀河各地域からわざわざやってくるらしい
 『内藤さんが謝らなくても いやあ なんだか最近ダレてまして』
 『締めて掛からんといかんな スクールの頃の苦労を忘れてしまっ
 ては ゆみり アイドルたるものは普段の生活も芸の一部だと』
 『社長の訓話は続いているけれど それじゃ 行きましょうか』
  社長さんの隣りで長い足を組んでいる女性 常務取締役の彼女は
 社長さんの奥さんである 社長さんより歳上だと聞いているけれど
 とてもそんなふうに見えないのは銀河の七不思議
 『アキコさんも一緒なのかあ えへへへ 内藤さんと3人で回ろう
 よ 社長さんと同じ組だと神経が持たないもん ねえ』
 『そうね 決めちゃいましょう ラクスネス こっちに来なさい』
 『なんだ俺は仲間外れか 事務所の社長と看板タレントが仲良くし
 ちゃいかんのか 今日はみっちり説教してやろうと思って』
  社長さんは業界随一の切れ者で その直感と洞察力と経営センス
 では銀河で太刀打ちできるものはいない けれど奥さんには頭が上
 がらない 理由はわかるようなわからないような
 『陰気な話はしないの ゆみりちゃん この子が今日のキャディを
 務めるラクスネス君 FA社の試作品だけど賢いのよ』
 『試作品ってことはアンドロイド ふうん なんか皮膚感が人間そ
 っくり スタントに使ってるのとは違うよね 凄いなあ』
  内藤さんは他の重役さん達と歓談中だ 見れば関連子会社の社長
 さんなんかもいる もしかすればただのゴルフコンペではないのか
 も知れない ああ 今日のイベントはZAP主催のゴルフコンペだ
 『でしょ この子ひとりでアリゾナ級の巡洋艦を仕切れるのよ 美
 形で切れ者 数十年前の社長を彷彿とさせるじゃない あははは』
 『頼むから壊すなよ ゆみりに出稼ぎさせてるから借りられたんだ
 からな そうだゆみり あとでこいつに歌を教えてやってくれ』
 『ふああ なんですかそりゃあ むう なんでもいいけれど』
  社長の命令なら業務命令だ 働く女性としては否応もない あた
 しは子供じゃないから アイドルとしての存在が自分の努力だけで
 成立しているとは思わない 仕事を選ぶ状況でもないわけだし
 『先週からトレースを始めたGモデル あれを女性型のドロイドに
 移植する計画があるんですよ つまりゆみりさんの複製ですね』
 『ふうん モニターだけじゃなかったのか なら内藤さんの複製も
 創ってもらわなきゃ きゃはは 仕事をしないんじゃないかなあ』
  どの仕事がどの所属なのか 説明されても覚えているわけもなく
 どの施設でも同じようなことの繰り返し それにしてもこのラクス
 ネス君があたしのモノマネをする 美男子だけど少し不気味
 『ですからね ゆみりさん 大会の打ち上げ宴会には ゆみりさん
 のステージと彼等の競演をこなしてもらいます 夜にはFA社や連
 邦軍の関係者の方々も来られます これがプロットです』
 『基本動作は 振り付けのミッキーさんに仕込んでもらってるから
 それにこの子は賢いもの 細かい癖までリハ1回で覚えるわよ』
  最近は納涼ゆみりショーも怠けている 思えば久方振りのステー
 ジだ 内藤さんに進行表を渡されて 少しワクワクしているのは正
 直なところ なんか引っ掛かると言えばラクスネス君のことだ
 『あたしのステージは毎回変化するもんね ついてくる自信がある
 のなら頑張りたまえ わっはっは ああっとしかしもしかして』

  そこまで喋って気が付いた あたしの動きを完全にトレースでき
 るアンドロイド 彼は男性型だけど実際には女性型が準備されてい
 る それにコンペに参加する関連子会社の社長さん なにかがどこ
 かで繋がりそうな予感 役員勢揃いも大仰過ぎるではないか
  さらには助演の不明確なメイキング映画 地球圏で溜め込んだ仕
 事 銀河の最果てに幽閉されたあたし なにか色々ありそうな予感
 だけど 内藤さんに質問しようとして辞めにした どちらにしても
 目の前の仕事を片すだけなのだろう
  どんどん意欲的に仕事する それがこの倦怠感からの唯一の脱出
 方法であると思うのであった








             》 しびる 《
+++++++++++++++++++++++++++++++
(のりこ)>銀河アイドルゆみりちゃんシリーズですね って まだ
      あったんですねえ 前回で終わりだと思ってましたが
(しびる)>みたいだな のりこが断言するからそうかなと思ったけ
      ど よく考えればこれがあったわな
(のりこ)>なんかちょっと新展開の香りがしますけど これってド
      ロイド関係で拡げるつもりでした?
(しびる)>おそらくそうだろうなあ ノートが残ってねーからわか
      んないけど いかにゆみりが仕事をしないかを描写する
      企画だし 代替物の発現は最短で最強の解決方法だな
(のりこ)>なるほど でもならこの先はあんまし拡がらないですよ
      ね ドロイドゆみりちゃんが活躍するなら
(しびる)>ってことは葛藤があるわな 対決もあるだろうし なん
      かちょいリリカルな展開とか期待できそうじゃん?
(のりこ)>あんましウツな展開はどうですかね
(しびる)>ウツとか言うな
posted by 篠原しびる at 23:32| シンガポール ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | 連作系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

連作20 妙連作01 あれはあれ

+++++++++++++++++++++++++++++++
 種別 連作系第20期 妙連作01
 題名 『 あれはあれ 』
 初出 ニフティサーブ/FJAMEA/18番会議室
    1996年10月17日00時44分
 注釈 行頭スペース+30W
+++++++++++++++++++++++++++++++
SUBJ:【妙連作】01 あれはあれ

 Sibi-Tem V.4.1

 優れてること不思議なこと 深遠な道理 妙連作 #01(B群)
 



           『 あれはあれ 』


                        作:しびる





  小学校に入学したのは1年生のとき 今が5年生だから5年前の
 ことだ 学年各々に先生が代わって今年で5人目の先生になる 男
 の先生が4人続いて 今年は女の先生 蝦名先生が5の3の担任
  けれども公文の先生はずっと女の先生 僕が公文を始めたのは幼
 稚園の年長組のとき だから小学校よりも長い付合いだったりする
 公文の算数と国語は同じ先生で 鵜飼先生は少し前まで白鳥先生で
 結婚した相手は英語の鵜飼先生だ 公文の先生は鵜飼先生がふたり
 面倒だけど 僕は英語はやっていないから関係ない

 『早く食べちゃいなさい 進級テストは5時半からでしょ』
 『うん どうせダメだから急がなくても同じだと思う いたっ!』
  学校から帰ってきてオヤツの時間 夕食は遅くなるから食べない
 とお腹が持たない よく噛んで食べろとか急いで食べろとか お母
 さんに文句を言うと耳を引っ張られる 誰の勉強だと思ってるのか
 『情けないこと言わないで頑張りなさい どうせどうせって世の中
 渡っていけないわよ はいこれ 白鳥先生にお手紙 それと鞄』
 『白鳥先生じゃないのに このイモの潰した奴 あんまり美味しく
 ない 晩ご飯はイモだったらイモだらけ イモ人間になる』
  親戚から送ってきたらしくって このところ食べるものはサツマ
 イモばかり それとコーヒー牛乳で終わり 超簡単なオヤツである
 『鵜飼先生じゃわからないでしょ たっちゃんに鵜飼先生って渡し
 ても英語の鵜飼先生に渡すでしょうに 日頃の行いね ほら早く』
 『結婚してるんだから同じだと思うよ 同じ家に帰るんだから』
 『同じでも違うの あのご夫婦は特に いいから! 急ぎなさい』
  自分で喋っておいて急に怒ったりする お母さんはエプロンを外
 して冷蔵庫にぶら下がっている鏡を睨んでいる 僕は食べ続けるつ
 もりもないから鞄を持って立ち上がる 公文の教室には車で行く
 『それでは急ぎましょうかねえ 運転手さんも急ぐように』
 『バカなことを言ってると怒るわよ 準備ができたなら急ぐ急ぐ』
  さっきから怒ってばかりなのに これ以上もっと怒ったらどうな
 るのか 確かめるのは危険だから今度にしよう とにかく車庫へ
 『お母さんさあ 蝦名先生ってPTAの人達と喧嘩してるの』
 『なにそれ 先生がなにか仰ってたわけ 喧嘩って知らないわよ』
  勝手口から家をでて 庭を横切って車庫に入る 車庫にはお父さ
 んの車とお母さんの車 それにお父さんのバイクが入っている 公
 文に行くのはいつもお父さんの車 お父さんの車は3ナンバーだ
 『なんか終わりの会の時間に言ってたもん もしかしたら少し泣い
 てたかもしれない 鬼の目に涙って吉岡君が言ってた』
 『蝦名先生が泣くわけないでしょ あんなに気の強い先生なのに』
  車庫はリモコンでドアが開く まだ誰にも話してないけれど リ
 モコンの上ボタンでテレビの4チャンネルが映る 逆もやってみた
 らOKだった 世の中にはまだまだ不思議なことが隠されている
 『教育委員会に言うのは卑怯だって 直接話して欲しいって』
 『ふうん お母さんはPTAの役員じゃないから そんなことを仰
 ってたの みえちゃんのお母さんに聞いてみなきゃいけないわね』
 『みえぴーはおばさんに話してないかもしれないよ あの家は家族
 の会話が少ないって みえぴーの作文に書いてあったよね』
  エンジンが動き始めるとカーナビが使える お喋りモードにする
 とお母さんが車をぶつけるから危ない 車庫に入っているときはた
 まにキッチンのところに車が停まっていたりする 今日は前の道路
 に停まっていることになっていた これも世界の不思議だと思う
 『たっちゃんは変な作文を書かないでよ 全部文集になって家族の
 人が読むんだから みえちゃんのお母さんは役員でしょ だから』
 『なんで教育委員会に言うのが卑怯なの 怖がって誰も質問しなか
 ったけど あんな先生は初めて見たなあ 吉岡君がアレの日だって
 言ってたけど アレってなに なんか怒る日のことなの』
 『そんなの知らないわよ 吉岡君は少し問題ね あの子は勉強がで
 きるでしょ あっ また違法駐車 通れないじゃないの もう』
  家の前の路地を抜けて公園の南側を進む 薄暗い道路にはたくさ
 んの車が停まっている セダンはなんとか通れるけれど 大型のR
 Vは道を塞いでしまうのだ この車はたまに停まっている
 『急げば回れって奴だよね ピコマートの方から行くと5時半には
 間に合わないと思う お母さんさあ きっと運命だよ』
 『少しくらい遅れても受けさせてもらえるでしょ 運命は努力でど
 うにかするものなの ほら あの車は鈴木さんの車でしょ』
  鈴木さんはみえぴーの家のことだ みえぴーは英語と国語と算数
 をやっている 進級テストは進度に合わせてあるから 今日受ける
 のは5年では僕だけだ お母さんは少し誤解している
 『みえぴーは進級テストじゃないから急がなくてもいいからゆっく
 りなんだと思うよ それにみえぴーは自転車のときも多いし』
 『遊ばないで帰ってくれば自転車で行けるのよ 毎回お母さんが送
 迎するのは変でしょ 少し考えなきゃいけないわね たっちゃん』
  お母さんはなんかイライラしている 夜道は危ないから車で送り
 迎えするって 確かお母さんの車を買うときの理由だったのに 実
 際にはお父さんの車だし 日によって意見が違うのはダメだと思う
 『僕が誘拐されてもいいならいいけどさ お菓子を買ってあげよう
 って言われるとついてくかもしれないし 超危ないよねえ』
 『バカなことを言ってると 本当に融解されるかもしれないわよ』
  お母さんは怖い顔をして僕を睨む もし僕が誘拐されても身の代
 金はだしてくれないかもしれない 家のローンとかで大変らしいの
 に 車を買い換えたりはするのだ 送り迎えは当然だと思う
 『どうして怒るのかなあ もしかして お母さんもアレの日なの』
 『な なんてことを そんなことは言っちゃいけません!』

  お母さんは少し顔を赤くして もしかすればエッチな言葉だった
 のだろうか 前にも確かこんなことがあったような 夜にでもお父
 さんに聞いてみるのが正解だろうと思う
  ちなみに公文の教室に到着したのは6時すぎだった けれども進
 級テストは受けなくちゃいけなくて 関係ないけれどみえぴーは欠
 席だった なんか怪我をして病院に行ったらしい







             》 しびる 《
+++++++++++++++++++++++++++++++
(のりこ)>これを初回にシリーズ化しましたっけ?
(しびる)>えーっと たしかもう1本くらい描いたんじゃねーかな
      このケガをしたって娘っ子 それが1人称か?
(のりこ)>まま追々判明するでしょうけど さて やたら詰め込み
      ましたね 細かい設定に小ネタに どうですかこれ
(しびる)>調子よかったのかなあ(笑) 最初から決めてたのは『
      アレの日』ネタだけでさ あとは仕上げながら
(のりこ)>5年生ならこんなレベルですかね 女子とはあきらかに
      知識レベルが違うのは仕方ないですけど
(しびる)>もうちょいませてるわな 男子でも
(のりこ)>あと 車庫のリモコンとテレビのネタ あんなのはどこ
      から拾ってきますかねえ やっぱありものですか?
(しびる)>どうだかねえ そゆのは忘れちゃったし
posted by 篠原しびる at 01:00| シンガポール ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 連作系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年07月26日

編集会議 117

(しびる)>ういーっす 編集会議するぞい
(のりこ)>あ おはようございます ざばーっと夕立が降ると気持
      ちいいですねえ 気温もすーっと下がりますし
(しびる)>だわな 昼過ぎに1回降って その湿気が上昇してまた
      夕方に降る このところ2段構えなのは温暖化が原因か
(のりこ)>どうでしょうかねえ さて ところで本日はお休みです
      か ひぐらしがなく頃に御出所はいいんですけど
(しびる)>たしかにもうヒグラシが鳴いてるなあ ヒグラシはカタ
      カナで 鳴くはめんどうだから漢字にしろ
(のりこ)>それもそうですね なんか変換にクセがついちゃってて
(しびる)>できるかぎり文章から漢字は除去するべきなんだけどな
      漢字業界に足をツッコミながら言うのもアレだけど
(のりこ)>あんまし抜くとわけがわからなくなりますけど 新聞基
      準でしたっけ? 当用漢字以外は使わないんですよね
(しびる)>いろいろ基準はあるんだけど ウチのシビテンも最新は
      そのあたりが基準だわな それでも2000字くらいか
(のりこ)>さて 調べたことはないですから コーヒー飲みます?
(しびる)>くれ ところでさ 編集会議なんだけど ブログで流し
      てるウチの作品のバックナンバー 第18シーズンのあ
      とは第19シーズンの『丗連作』だろ
(のりこ)>あー これってなんて読むんですか? なんとなく『さ
      んじゅうれんさく』と仮称してましたけど
(しびる)>丗と書いて30と読むのは古い当て字だわな これは正
      しくは『せいれんさく』と読む 丗は世界の世の異字体
(のりこ)>なるほど 30本目からの逆算でしたから 30連作か
      と思ってましたけど って30連作でしょ?
(しびる)>そうなんだけどさ で 呼び名はいいんだけど あのシ
      ーズンは時期いろいろでバラバラ集めてるからさ
(のりこ)>ですね 丗連作23は『9満夜3・4』ですもん
(しびる)>閑休も3本入ってるし あんましこの時期に発表する意
      味もなかろうと思うんだわ でさ 『9満夜2』を掲載
      してからでもいいんじゃないかと思うけど どうよ?
(のりこ)>異議なしですね それでいいんじゃないですか
(しびる)>んじゃ決定でいいか 次回は連作第20シーズン『妙連
      作』から始めることとする しかしまだ20シーズンか
(のりこ)>半分は超えてますからね もうちょいです ちなみにこ
      こまででキッチリ289本です
(しびる)>始めたからには終わらせなきゃならんし ったくめんど
      うなこった ビールに切り替えるかな 食うものと
(のりこ)>はあい でもー そのわりには放置された仕事が多いで
      すよね ウチの場合は ビールっす 焼きそばにします
(しびる)>だからこそ終わらせる可能性のあるものはがんばらにゃ
(のりこ)>がんばらにゃー ですか(笑) たまにしびさんの語尾
      ってかわいらしいですけど どこかの方言ですか?
(しびる)>なまってないだろ? なんかヘンか?
(のりこ)>ほとんど標準語ですけど と言いたいところですが ち
      ょっと怪しいんじゃないですか でもそれはしびさんの
      味ということでいいんじゃないですかね にゃー
(しびる)>むっ まあいいや ところで今回の転送分は届いてるか
      たしか10冊くらいは送ったと思うけど
(のりこ)>えーっと 届いてますよ もう書架には収まらないです
      から平積みしてますけど どうしましょうかねえ
(しびる)>また増設するか よか分別して6畳間に収納しちゃえ
(のりこ)>それがいいんですけどね いったいウチにコミックスっ
      て何冊あるんだろ しびさんがこどものときからのもあ
      るんでしょ? ウチはコミックスを処分するってことは
      ないですし 1000なんてかわいいものじゃないです
      よね あの魔窟の6畳間を見ると どうしましょ?
(しびる)>あんまし気にするな とにかく目先のことだけな
(のりこ)>んじゃまそれ式で 何冊かチェックしましたけど それ
      はまんが枠を立ち上げるんですよね 焼きそばっす
(しびる)>別にこだわらなくてもいいと思うけどな なに読んだ?
(のりこ)>えーっと 吾妻さんのウツの日記とか バスタードと
      か 沈没関係の競作とか その辺ですね
(しびる)>じるじるじる 牛肉入りの塩焼きそばか うまいじゃん
(のりこ)>ありがとうございます 焼きそば用の塩ダレってあるん
      ですよね ホントは豚肉の方が美味しいんですけど
(しびる)>なんでも美味しいけどな 吾妻の日記って クスリと麺
      類ばかり食ってるのな 見てるテレビはバラエティばか
      りだし あとは文字の本とまんがの評 やっぱしダメオ
      トナのくらしの基準ってこの辺りなのかなあと思う
(のりこ)>細部の嗜好は違ってても この辺りが基準ですか
(しびる)>神経やられてないからクスリは飲んでないし いちおう
      どこかに出勤して仕事はしてるし まあ違うんだけど
(のりこ)>私も読んでてしびさんのニオイがしました(笑)
(しびる)>似てるなんていうと畏れ多いけどな(笑) ビールくれ
(のりこ)>そういや吾妻さんって断酒会に入ってらっしゃるんです
      よね クスリはよくてお酒はダメなんですかね
(しびる)>クスリって 治療薬だろうに なに勘違いしてるんだ?
      そういや知り合いのじーさんが断酒会に入ってるけどさ
      なにしてるのか聞いても なにもせずにただ集まるだけ
      だっていってたな ホントはなにをしてるんだか
(のりこ)>あれですよ 大きなホールの舞台にマイクを持った愛想
      のいいおじさまが立ってて 煽り演説をしてみんなで叫
      ぶんですよ 『おさけー! だいきらいー!』とか
(しびる)>なんか新興宗教かマルチのニオイがするな それ
(のりこ)>似たようなものじゃないんですか? 自己啓発セミナー
      とかそういう類のものでしょ どうせ洗脳系でしょうし
(しびる)>違うだろ 洗脳じゃなくて自助努力じゃないのか のり
      こはなんか基本的なところで社会の仕組みを誤解してる
(のりこ)>んー ですかね
(しびる)>まあいいや んじゃ一旦終了してまた深夜にやるぞい
(のりこ)>はあい でもそゆときってぜったい夜に集合ってないん
      ですよね とにかくはあいと返事はしておきますけど
(しびる)>ならそれでいいじゃん
posted by 篠原しびる at 20:09| シンガポール ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 編集会議 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

連作18 冠連作15 病み上がりの青空

+++++++++++++++++++++++++++++++
 種別 連作系第18期 冠連作15
 題名 『 病み上がりの青空 』
 初出 ニフティサーブ/FJAMEA/18番会議室
    1996年10月15日23時45分
 注釈 行頭スペース+30W
+++++++++++++++++++++++++++++++
SUBJ:【冠連作】15 病み上がりの青空

 Sibi-Tem V.4.1

 リカちゃんに王位継承権 リカの冠だね 冠連作 #15(B群)
 



         『 病み上がりの青空 』


                        作:しびる





  食事は3食 あたりまえだけど朝食に昼食 それに文字通りの夕
 食 もしかすればオヤツか午後食と呼ぶ方が適当な時間に夕食 午
 後5時に食事をしろだなんて 必然的に自主的な夜食を採る
  それ以外はなにをするか 午前中は用途を知らされていない点滴
 看護婦に聞いたって 毒じゃないからおほほほ なんて 客商売っ
 て基本を忘れたかのような説明だけ 午後イチで問診 それ以外は
 なにもない 仕方がないから屋上に散歩 みんなそうしてる

 『あ 神崎さんもきてたんですか 今日はまた天気がいいですね』
 『そうだろ 花見の時期も終わったからな 天気もいいぞ』
  病院は4階建て 数字の縁起がどうだかなんて あまり気にせず
 に4階は4階 そしてその上が屋上になる エアコンの室外機とシ
 ーツの海 フェンス越しに佇む男性は神崎氏 慢性腎不全だ
 『パジャマでうろうろしてるのが勿体ないですよ そうそう さっ
 き奥さんが来てましたよ 一緒の人は息子さんですか』
 『娘しかいないからな そりゃきっと下の娘の亭主だな 自分ひと
 りじゃ見舞いにもこれねー奴だから きっと そうだろうな』
  比較的郊外で 屋上に登れば周囲を見渡せる ふたり並んでタバ
 コを吹かし 神崎氏は時代劇俳優のような容貌だ 確か65歳か少
 しくらい 中堅繊維メーカーの会長か相談役 気さくな人物である
 『行かなくてもいいのですか いえ ここだって話しはしませんで
 したけど 奥さんは知ってるような感じでした 散歩でしょって』
 『栗本君は気を回しすぎるな そんな性格じゃ胃袋がなくなるぞ』
  別に胃潰瘍で入院したわけじゃない バイクで転倒して頚椎を強
 打 上から数えて2個目と3個目の間の軟骨を痛めたらしい 当然
 のことながらコルセットは必需品 食事その他の規制はない
 『気を使うと言えば 302の大部屋 なんか組関係の若い衆が入
 ってきたらしいですね 看護婦のミキちゃんが話してました』
 『救急指定だろ 担ぎ込まれる人間にロクな奴はいねーな 堅気に
 暮らしていれば事故も怪我も病気もない 違うか 栗本君』
 『そうかもしれないですね でも組関係はちょっと』
  歯に衣を着せずに喋る人だ どんなことでも基本的に一刀両断し
 てしまう 永年培ってきたであろう独自の価値観 仲良くしてくれ
 るのが嬉しい こんな性格の人とは相性が良いのだ
 『どいつもこいつも入院患者だ あの手の奴等は寝床の周りで悪さ
 はしない それをやっちまうと暮らしていけないからな』
 『そんなものですか どこかで役に立ちそうな知識ですね あの救
 急車 この病院に来るのかなあ あ 行っちゃいましたか』
  遠くからサイレンが響く 入院して発見したのだが 患者が運ば
 れてくるのは夜間の方が圧倒的に多い 特に午後の2時や3時なん
 てのは非常に希で ピークはやはり午後8時前後
 『4区の方角だな すると患者は交通事故 頭ぶつけて危ない状態
 だろう MRIを置いているのは坂下診療所が近い』
 『来週行くんですよ CTでは頭部の検査は難しいらしいですね』
  MRIの話をしたのは一昨日だったか もう神崎氏は噛み砕いて
 自分の情報にしてしまっている 老人の部類に入ろうかって年齢な
 のに どうしてこんなに精力的なのか 看護婦の受けがいいわけだ
 『栗本君が退院すると寂しいぞ どうせ学生だろ なんなら院長に
 話をつけてやってもいい 病気になるのは治療よりも簡単だ』
 『変なこと言わないでくださいよ 卒業できなくなるじゃないです
 か 聞きましたよ 神崎さんも来月退院だって やだなあ』
  神崎氏は院長の旧友らしい 退院の情報も看護婦のミキ嬢から聞
 いたもの 寂しいと言われれば嬉しいが そのために病気にされる
 のは勘弁して欲しい そもそも故意に罹病する病名はなんだ
 『病欠なら休校扱いだろ 診断書の内容なんざ 俺が退院だってか
 それは間違いだな もう長くねーから 次は白木の箱だぜ』
 『そんなに元気そうなのに 不治の病って感じには見えませんよ』
 『あら 405の問題児が揃って隠れタバコね 先生に報告かな』
  入院患者に元気そうって形容も変だが 神崎氏は目を細めて鼻煙
 賑やかな声に振り返れば純白の制服 誰かと思えばミキ嬢だ
 『おう ミキちゃんも休憩時間か ああ 栗本君に面会時間だな』
 『えへへへ 栗本君ってばスカした顔して凄いのよ 神崎さんにも
 今度見せてあげるわね ねえ栗本くーん 元気がないじゃない』
  看護婦のくせにこの軽さはなぜだ 実際に関係がないわけじゃな
 いが そんなことは公言するものではない すぐに話題を替える
 『神崎さんが来月退院だって ミキちゃんが話してよな』
 『うん 内科の吉原先生が話してたわよ 良かったじゃない 神崎
 さんは晴れて退院 栗本君は退院させないから 覚悟してね』
  3人並んで喫煙タイム この時間には院長の御回診が大名行列だ
 から おそらく屋上の人間は増えないだろう それにしても快晴
 『意見が一致したな 栗本君の退院は延期だぞ しかし俺も退院は
 無理だな 自分の体なら あんな若僧よりも詳しい 持って半年』
 『あはははは 神崎さんは見掛けは怖いけれどロマンチストよね』
 『ひどい看護婦だよなあ 来月なら一緒に退院ですね』
  抜けるような青空 爽やかな風 どんなに深刻な話題も無効にし
 てしまう陽気に看護婦の馬鹿笑いが響く 下界からは街の喧噪 こ
 の空間にはこの時間が流れる どんなことも偶然の必然だろう
 『退院するときに宝の隠し場所を教えてやろう もう時効になった
 金だからな 俺の遊ぶ金にするつもりだったが 病気には勝てん』
 『弱気なんだか強気なんだか 神崎さんの冗談は難しくて』
 『案外真剣じゃないの 神崎さんってほら 凄く悪い事をしてそう
 な感じに見えるもん あはははは 褒めてるのよ ねえ』

  そう言ってミキ嬢は再び馬鹿笑い 基本的に失礼とかなんだとか
 は考えない性格らしい 神崎氏も楽しそうに目を細めて それはそ
 れなりに収まった会話 別になんだって構わないけれども
  暑くもなく寒くもなく とても快適な5月の陽気 色々な人が色
 々なことを考えながら 色々な場所で色々なことをしているこの瞬
 間に なんともまあ暢気な気持ちに浸っているのであった







             》 しびる 《
+++++++++++++++++++++++++++++++
(のりこ)>さて神崎氏が登場しましたね なぜかやたら多いウチの
      病院関連作品の中で かなり設定のまとまった諸作品の
      1本目です 設定だけなら『9満夜』にも?
(しびる)>たしか使ってるよな 入院ものは基本的にスキだし
(のりこ)>ちょっと浮世離れしますしね キャラ設定に共通のフィ
      ールドがあるのも組みやすいですか
(しびる)>まあそんなところかな 学校や職場は年齢や目的意識が
      似かよりすぎてバラエティに乏しいし 偶然の密室は状
      況の影響が強すぎる これくらいがちょうどいいよな
(のりこ)>なるほど ふたり以上登場するならそうですかね
(しびる)>また病院もの描くかなあ
posted by 篠原しびる at 01:40| シンガポール ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 連作系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

連作18 冠連作14 どんどん

+++++++++++++++++++++++++++++++
 種別 連作系第18期 冠連作14
 題名 『 どんどん 』
 初出 ニフティサーブ/FJAMEA/18番会議室
    1996年10月10日02時08分
 注釈 行頭スペース+30W
+++++++++++++++++++++++++++++++
SUBJ:【冠連作】14 どんどん

 Sibi-Tem V.4.1

 リカちゃんに王位継承権 リカの冠だね 冠連作 #14(A群)
 



           『 どんどん 』


                        作:しびる





  旦那は次男坊で 既にお兄さんが実家の家業を継いでいる ご両
 親は彼が高校生のときに揃って他界され 親戚付き合いも頻繁じゃ
 ないらしい しかしお兄さんとは仲が良くて その辺は少し安心
  だから特に苗字や家業や家系が云々なこともなく 問題があると
 すればあたしの方だ 両親は予感していたものの 正式に話すとな
 れば別問題 かなりのすったもんだが発生して 結局のところ我を
 徹しきるカタチになってしまった ほぼ勘当状態である
  そんなこともあり 籍は入れたけれど式や披露宴は割愛 写真だ
 け撮って関係者に配布した ふたり揃って入り婿に入り嫁 それで
 も生活に変化はなく 苗字は彼の姓に合わせてしまった

 『こんにちわです あのお 誰もおられないのでしょうか』
 『おねちゃ つうかあれえたあよおおお 早く入ろうよおお』
  玄関のところでカワイイ声がする 確認するまでもなくチビッコ
 達の正体は知っている そう言えば今日は土曜日 学校は休みだ
 『はいはいはい 今行きますよ 遠慮しないで入ってきなさいね』
 『きゃあああああ さいかおねちゃ こんにちわであります』
  それほど広くないけれど キッチンから玄関に向かったところで
 元気な少年と衝突した クリクリ眼に軟らかい猫毛 甥っ子である
 『こら せいや君! さいかお姉ちゃん 御無沙汰しております』
 『いやいや あやみちゃんの堅い挨拶は清々しいわねえ はい』
  今月のいつだか あやみちゃんとせいや君が遊びに来るって連絡
 を受けていた しかしまあこの姉弟は好対象 色々な意味でご両親
 の遺伝だろう 姉やふみやさんが見え隠れする性格だもの
 『ふんむふんむ せいやはおねちゃと電車できました 切符を買っ
 て自動ドアのところに入れて電車に乗って ふんむふんむ』
 『せいや君は興奮状態なのです 少し落ち着きが足りませんね』
  このふたりはどこへ行くのも一緒だ シッカリ姉さんに大騒ぎの
 弟 あやみちゃんは小学5年生 せいや君は再来年が小学校
 『男の子は元気があってよろしい まあ 入りなさい』
 『それではお邪魔します せいや君は勝手に入っちゃいましたね』
 『ひゃああ おねちゃ 大きなテレビだああああ 見る見る!』
  結婚しても変わらない生活 以前から旦那は入り浸りだったわけ
 だし ふたりとも仕事は忙しくなる一方で 主婦業なんてとても追
 い付かない 人間の努力には限界があると実感しなくもない
 『大きいでしょ せいや君 ゲームも山のようにあるわよ』
 『わああ ゲームだらけだああ! おねちゃ やってもいいの』
  ふたりをリビングに通してあたしはキッチンへ 冷蔵庫からペッ
 トボトルを取りだしてグラスを用意する 我が家はアルコールか烏
 龍茶だから ジュースは専用に準備していたものだ
 『それでもせいや君はあやみちゃんに尋ねるのよね あたしならお
 姉ちゃんには尋ねなかったと思うわよ はい お菓子もあるわよ』
 『あ すみません ほらせいや君 さいかお姉ちゃんに聞かなきゃ
 いけないでしょ あははは せいや君は小さい子ですから』
  せいや君は既にゲームを始めている あやみちゃんはポニーテー
 ルを揺らせて深々とお辞儀 かわいらしくって抱き締めたいくらい
 あたしだってこれくらいの子供がいてもおかしくない年齢
 『そんな話じゃないって うふふん あやみちゃん達が仲良しって
 話ね なんかふたりを見てると 心のどこかがほっとするわ』
 『さいかお姉ちゃんは もしかして何か心配事があるのですか も
 しそうならあたしに話してください 誰かに話すと楽になります』
  そんなつもりはなかったのに 小学生の姪っ子に心配されてしま
 うあたしは問題だ それにしてもあやみちゃんの洞察力は類まれで
 ある ちなみにあたしの悩み事なんてたいしたものじゃない
 『まあねえ オトナになると色々あるから 幸せなこともたくさん
 仕方のないことも ううん 少しあるかな でも仕方ないわね』
 『そうですね 生きていると色々ありますよね あたしも昔色々悩
 みました でも考え方を変えるとすぐに楽になりました』
  あやみちゃんの昔 確かに10歳少しでも色々あるだろう しか
 し人生に悩むなんてことはあったりするのか あやみちゃんの場合
 言葉だけの会話ではないだろう 大人以上に気の回る娘だから も
 しかすれば必要のない心配事まで抱えている可能性がある
 『ふうん 解決したのなら良かったわね あまり考えすぎちゃダメ
 悩んで解決することって少ないもの 考えないのがいちばんね』
 『そんなものでしょうか あたしもさいかお姉ちゃんのように考え
 られれば ああ 考えないのがいいのですね 難しいですよ』
  あやみちゃんに見つめられて苦笑 地方証券に上場しようかって
 企業の役員で 30歳も過ぎている おまけに主婦のあたしだから
 今更悩んで落ち込む余裕はない 秘訣は悩まないことだ
 『たくさんいろんなことをやりなさい 考える前に行動する あや
 みちゃんには どんな可能性も広がっているの すごいじゃない』
 『あやみねちゃ お腹が空いた』
  心底そう思う チビッコ達の将来は無限に広がっている 小さな
 ことに心を痛めていないで そんなことは歳を食ってからでもでき
 るのだ あたしはせいや君を膝に抱いて 単語の選択に苦慮する
 『さいかお姉ちゃんと話していると なんだか 自分が凄い人みた
 いな気持ちになります せいや君 ほいさ お菓子を食べなさい』
 『あやみちゃんはね あたしが小学生だったときよりも ずーっと
 シッカリしてるもの あ せいや君もね どんどん頑張りなさい』
  遂に我慢できなくなってせいや君を抱き締める あたしもやはり
 子供が欲しい 旦那と相談しなきゃと密かに考える
 『さいかおねちゃは ママと同じ臭いがするです』
 『ううううううん そりゃまあ 同じメーカーのを使ってるから』
 『あたしも同じですよ すぐ実験台にされるのです』

  人差指を立ててニッコリ微笑む表情は姉にそっくり きっと多才
 で情緒豊かな女性に成長するだろう 既にその片鱗を漂わせて あ
 たしなんかよりも数倍は立派なオトナになる
  チビッコ達に囲まれて たまの休日に生活を見つめ直す なんと
 も有意義で満ち足りた時間 普段はあまりにも忙しいから 夫婦一
 緒の時間も少なかったりするのに どこかで人生を仕切り直さなき
 ゃと そんな気持ちも沸き上がってくるのであった






             》 しびる 《
+++++++++++++++++++++++++++++++
(のりこ)>もでらーとです 1人称はさいかちゃん もうさいかさ
      んと呼ばなきゃいけない年齢でしょうか あと あやみ
      ちゃんと大興奮のせいやくん この子たちはセットで
(しびる)>また仕切りなおしだってさ(苦笑)
(のりこ)>さいかちゃんは結局おじさん夫婦の籍に入っちゃったん
      ですよね 会社の相続とかその辺の対策でしょうけど
(しびる)>まあな 最終的にはさいかの実家に戻るわけなんだけど
      こっちで拡げてみるのもおもしろかったかもな
(のりこ)>でもこの先の展開は既に決まってたんですよね それを
      踏まえての仕切りなおし発言でしょ ネタ振りというか
(しびる)>人生にタラレバなしだからな そりゃ仕方ないんだけど
      なんなら育児の手が離れてから復帰させるとか
(のりこ)>そんなつもりないでしょ?
(しびる)>ないけどさ 言ってみただけ
posted by 篠原しびる at 01:38| シンガポール ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 連作系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

連作18 冠連作13 しめのにて

+++++++++++++++++++++++++++++++
 種別 連作系第18期 冠連作13
 題名 『 しめのにて 』
 初出 ニフティサーブ/FJAMEA/18番会議室
    1996年10月09日22時02分
 注釈 行頭スペース+30W
+++++++++++++++++++++++++++++++
SUBJ:【冠連作】13 しめのにて

 Sibi-Tem V.4.1

 リカちゃんに王位継承権 リカの冠だね 冠連作 #13(B群)
 



          『 しめのにて 』


                        作:しびる





  家の近所の空き地なら 掌程度でも黄色い花の支配領域だ すべ
 ての植物を駆逐して猛威をふるう セイタカアワダチソウは究極の
 雑草であり ヨモギやタンポポですら適う相手ではない 何者より
 も先んじて背丈を伸ばし 奪った日光で種子を育む 名前の通りの
 花序は泡立つように 黄色い花々は全天を望み拡散の野望
  しかしそのような存在でも 山野に侵入するのは困難らしい 意
 味的には抗生物質に蹂躙された人体に悪性新生物の如く 多年草や
 樹木の生い茂るサンクチュアリは粗野な生存競争 彼等は適化され
 た環境に蔓延る最後の植物なのかもしれない

 『この辺りがいいんじゃないかな 古墳だって聞いた覚えがある』
 『そう言われると なんだか少し盛り上がってるわね』
  もしかすれば誰かが手入れをしているのか 広がる草原は明らか
 に周囲とは一線を画す 林道からこの場所まで雑草と低木が疎らに
 それほど熱心ではない意図を感じる それも計算の内か
 『市内なら 辺り一面セイタカアワダチソウだろうな』
 『アレルゲンじゃなきゃ構わないわよ 鼻に悪い花 ゴロがいい』
 『杉林じゃなし 見たところイネ科の植物もない 安全だな』
  乗り気じゃない会話 あたしの前にジャケットを抱えて佇む男性
 周囲は蒸し返す樹木の香り 森林浴よりは生木で燻製状態
 『古墳なら国有地なのかしら 表示はなかったようね』
 『こまめに立て看板もないだろう 不法投棄なら林道の入口付近が
 メッカだな 世界中すべての土地は誰かの所有物 まったく』
  周囲を見渡しながらゆっくりと歩く まるで白昼夢のような快晴
 足元を濡らすのは雨の痕跡か 湿った空気は植物には楽園だろう
 『都市生活者には欠落している概念よね 街中じゃ猫の額を争って
 いるのに 自然保護なんて自分勝手な理屈かしら』
 『どちらも勝手だろ 強制力の有無だな 問題になるとすれば』
  そのまま進んで盛り上がりの頂上 名も知らぬ植物の群生 原生
 林の直中に 故意に広げられた陽射しの世界 その中央に直立し天
 を望む 雲のない完全なる青色 そして深呼吸
 『さてと 最も近い民家からも数キロ 場所としては適当よね』
 『そうだろうな どんな犯罪も可能な条件 気兼ねなくやってくれ
 たまえ この時期は供給不足だから 非常に期待している』
  この男性との行動はこれで2回目 前回は確か4カ月前 頻度と
 してはこれが限界 詳しくはわからないが 余生時間かツキか体力
 か どれかを消耗している予感がある 太く短くで苦笑する
 『さてねえ 気紛れな現象だから 知ってると思うけれど』
 『少しは研究も進んでいるらしい 現場レベルでは心霊現象だが』
 『時間がもったいないから始めるわ あまり期待しないことね』
  そう話して一瞥する 男性の名前は知らない 彼にしてもあたし
 の偽名以外は知らないだろう 彼の背後の世界も知らない あたし
 の内側に広がる世界も知らないだろう 現世に必要なのは結果だけ
 理由や原因にたいした意味はない つまり商取引なら結果論
 『仕事だからね これで女房と子供を養っている』
 『ふうん まあ 妻帯者に見えなくもないか』
  呼吸と脈を整える 異界法則に合致するのは精神を排除した身体
 機能のみ 死後の世界は死体でなければ垣間見えなく 夢を見るの
 も限りなく臨死な状況 場所が古墳であるのは洒落っ気だろう
  別に特別な儀式があるわけでなく 呪文を唱えたり印を結ぶ必要
 もない 薬物を使う人間がいると聞いたことがあるけれど あたし
 の場合はただ場所があればいい 室内では狭すぎる 人目に付くの
 は何かと厄介だ ましてや 同じ場所は二度と使えない
 『少し離れてて 思ったよりも大きな円が描けるわ そうね この
 広場すべてが含まれるんじゃないかな 死にたくないでしょ』
 『前回で懲りているから 車内に避難していよう では後程』
  普段から他人の名前を聞く習慣がないのだが 慣れてしまえば問
 題なく暮らせる 男性は軽く一礼してきびすを返す どうせ彼との
 取引も長くは続かないだろう どだい堅気の仕事じゃない
  人の気配が消えたことを確認して 一気に気持ちを傾ける 自分
 が生物であることを忘れてしまうような境地まで 精神世界の果て
 に存在する扉 宗教では無我の境地や悟りの世界と表現するが 実
 際には完全なる狂気 精神を持ち込めば瞬時に感化される
  数秒か数分か 周囲の風景から現実感が失われ あたしを中心に
 モノトーンの境界線が広がる それと同時に異界の住人達が徘徊し
 始める この世界が珍しいのだろう そして目当てが現われた
 『きたわね あなたに恨みはないけれど 覚悟してちょうだい』
  形状を説明するなら鳥類に似ているか ぶよぶよした巨体はトレ
 ーラーくらいはあるだろう ゆっくりと移動しながら周囲の生物達
 を食べてゆく おそらくはこの世界の最終消費者 意味的には王族
  小さな生物達はあたしに気付きもせず しかし巨大王はそうでは
 なかった あたしの存在を何故だか察知して 同じく捕獲して食べ
 ようとした瞬間 モノクロ世界は凝縮して閉じられた
 『ふう 長く続ける仕事じゃないわね その辺りに落ちてるわよ』
 『完全に焼け野原 探すのは楽でいい これはまた巨大な』
  巨大王が浮かんでいた辺りに コブシ程度のガラス隗 探せば微
 小な粒も発見できる 周囲は凝縮の瞬間に焼き払われた
 『3000カラットはあるみたいね 暫く遊んで暮らせるわ』
 『正確には2845C 純度はファイブ9の上物 1Cが2万換算
 として しかしこれだけ巨大だと別の引き合いがある』
 『どこかの教派の御本尊でしょ ま 好きにしてちょうだい』

  じきにこの場所も黄色い花の支配領域になる 単年草の優位性は
 成長速度と拡散能力 焼き払われた更地なら 数年間はセイタカア
 ワダチソウの生い茂る草原 しかしそれも永遠ではない
  特にこの場所は 空間が潜在的に持つバランスを崩されているか
 ら おそらくは10年も待たずに消えてなくなる まるで最初から
 存在しなかったかのように 何故だか そうなるのだ







             》 しびる 《
+++++++++++++++++++++++++++++++
(のりこ)>異界ものですか この設定はいつだったかの 物書きさ
      んが女子高生ふたりとウナギ屋さんでどうとかって あ
      れの設定に似てますよね シリーズものですか?
(しびる)>いや 設定は『羽音』から取ったけど これはこれでス
      タンドアローン それ以外にもこの設定で描いてるのが
      いくつかある シリーズといやそうとも解釈できるけど
(のりこ)>まあしかし この世界の薄皮1枚向こうには別の生物た
      ちの世界が拡がってて それを凝縮するとダイヤモンド
      ですか ヘンな設定ですね
(しびる)>まあヘンだわな 3000カラットって 1カラットが
      たしかコンマ2グラムだろ なら600グラムか
(のりこ)>こぶし大くらいですかね 世界最大級ですよ 作中では
      1Cで2万とか言ってますけど 1200万じゃ安いで
      しょ? 軽く億は超えますね ものすごいですよ
(しびる)>でもさ こゆことが常として行われてるなら あんまし
      相場も高くないんじゃねーの そこも含めてだわな
(のりこ)>んー
posted by 篠原しびる at 01:37| シンガポール ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 連作系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

連作18 冠連作12 ないとめあ・ないと13

+++++++++++++++++++++++++++++++
 種別 連作系第18期 冠連作12
 題名 『 ないとめあ・ないと13 』
 初出 ニフティサーブ/FJAMEA/18番会議室
    1996年10月03日02時58分
 注釈 行頭スペース+30W
+++++++++++++++++++++++++++++++
SUBJ:【冠連作】12 ないとめあ・ないと13

 Sibi-Tem V.4.1

 リカちゃんに王位継承権 リカの冠だね 冠連作 #12(A群)
 



        『 ないとめあ・ないと13 』


                        作:しびる





  よく考えてみると 夜の夢ってのは珍しかったりする これまで
 見た夢をすべて覚えているわけではないけれど あたしはどうにも
 闇に対する恐怖心が薄くて 夢のすべてが悪夢じゃなくても 印象
 深い夢は悪夢であるから その辺りが原因ではないかと考える
  対人関係の夢が多くて 状況で攻めるファンタジーなのは少ない
 その分類からならば非常に珍しい すべて身内みたいな登場人物達
 これでは対人関係とは分類できないだろう 設定は完全にファンタ
 ジーで やはり悪夢だ なおかつ夜 のはずだったのに

 『なんか フィラ あの辺り また変な怪物が現われるのかな』
  数分だったか数時間だったか あたしが呆然と佇む間にも時間は
 流れ 急変した状況に伸び切った脳味噌が突如として回復した
 『ビデンス中尉が回復したようね 早速ランタルシアの召喚を始め
 たらしいわ ななよ 休憩は終了 顕現ポイントへ向かうわよ』
 『はあ 回復したのは良かったけれど また騒動か うわっ』
  街中のすべてが瓦礫と化して ぼんやりとしていたあたしは休憩
 中だったのか 確かランタルシアってのは向こうの世界の飛行機の
 こと あれが現われて穏やかな話題じゃないだろう 途端に浮遊感
 『カリン界がサンクレストの瘴界に満たされる それだけは避けな
 くちゃね さてと ビデンス中尉はいるか すぐに報告だ』
 『御側に控えております 姫様 ご無事でなによりでございました
 ロドゲルシアの召喚完了まで 数分の予定でございます』
 『ビデンスの方が危なかったのにさ フィラってば優しい家来の人
 には感謝しなくちゃいけないよ 凄く偉そうだもん』
  中尉って階級がどれくらいの偉さか知らないけれど それにした
 って死にかけた方がご機嫌を伺うのは如何程か 感謝の気持ちが足
 りないのは人望を損なう恐れがある 上の人間ほど必要な気持ちだ
 『馬鹿を申すでない小娘 フィランサス姫様は臣下5千万の内親王
 であらされる さらには7界の盟主たるお立場を考えれば』
 『リギダ 無駄口を申す暇があれば サンクレストの侵攻状況を報
 告せよ 召喚終了と共に掃討に移る ニレ城との連絡は無理か』
  リギダの神出鬼没は毎度のことだが かなり上空まで舞い上がっ
 たところで全員集合状態 なんだかこんな状況にも少し慣れて 知
 り合いに囲まれているのは一安心 生命の危険は孕んでいるけれど
 『どうやら交戦状態にあるようです ルス・ニ・レ城は現在ハムラ
 侯爵が布陣されております ヴァレス進軍との報告が転移間際に』
 『V界との戦線には そうであったな エンシス中将のラミュウム
 艦隊が壊滅 やはり直接指揮を執るべきであったか』
  フィラとその仲間たちは業務連絡の応酬 あたしを操るのが面倒
 なのか フィラは頭の上で膨れたり動いたり 黒スーツの男女と頭
 にカエルを乗せたパジャマでスタジャン 地上は怪しく緑色に光り
 目前には前の世界で見た乗り物の一部が現われている 順番に慣ら
 されてなければ とても納得できる光景じゃない
 『ここで会議しててもさ フィラ 向こうの世界に戻れる方法って
 あるわけ こっちはこの有り様だし どうしたものかなあ』
 『そうね カリン界とランタルシア いえロドゲルシアの相性がよ
 ければ 戻れないこともないと思うわよ 無理でもどこかの世界を
 迂回すれば 和平を結んでいる世界もあるから』
  和平のところで引っ掛かる フィラ達の話す和平にはあまり恒常
 性がないらしいではないか あたしにしても住んでいる世界は壊滅
 状態 こうなればフィラと一蓮托生か 気が進まないのは本心だ
 『カリン界は御諦めになって 姫姉様 すぐさまスツーヌ界にでも
 退避なさるのが得策かと ス界は7界でも最深部 サンクレストの
 機動力では追ってはこれませんわ ス界に城を築かれては』
 『カリン界はルスツーヌ信仰の聖地であろう 手土産にはカリン界
 への波動孔を充てる 掃討せねばならんだろうな ビデンス中尉』
 『はっ 御意に ロドゲルシアの召喚が終了いたします』
  カリン界ってのはこの世界のことだろうに 諦めるとか手土産に
 するとか とても失礼な気がするのは やはりこの場ではあたしだ
 けなのだろう 非常にカッコイイ容貌のビデンスが恭しく頭を下げ
 説明を聞くまでもなく 目前には巨大なロドナントカ
 『それじゃ ななよ この世界を綺麗に掃除して 一旦向こうへ戻
 るわよ とにかく城を築いて布陣する それが先決ね』
 『なにが先決だかしらないけれど フィラの言う通りにするよ』
  あたし達は空中に浮かんでいる ロドナントカも巨大な姿で浮か
 んでいる 遥か上空には新たな光 おそらくはリギダかビデンスの
 乗り物もやってくるのだろう 掃討するってことは吹き飛ばすのか
 焼き尽くすのか どちらにしても荒仕事には違いない
 『操る感覚は掴んでるわね 波動に関しては任せてくれればいいか
 ら よしっ 高度はこのまま維持して下界を眺めて』
 『はあ 自分の目より明るく見えるね ほああ これはまた惨状だ
 なあ あっちにあるのがさっきの怪物の残りかな 生きてるね』
  ロドナントカが金色に輝き フィラが喋っている途中で視界が変
 化した あたし達は既に操縦席 乗り物との一体感は慣れたから問
 題ない 問題があるとすれば街の様子だ ビジネス街の方には緑色
 のグニョグニョが蠢いている かなり巨大だけど今更である
 『姫様 リシアにて先行いたします 母体の始末は御任せを』
 『武功を焦るな ビデンス中尉には背後にて援護を命ずる リギダ
 はス界への座標を探査せよ ななよ 荒っぽくいくわよ』
 『荒っぽくないときってないじゃないさ はいはい』

  頭の上でカエル姫が姿勢を変える あたしは自然と両腕を延ばし
 それに合わせて乗り物の腕も伸びる すると思った通り指先から閃
 光が迸る たぶん焼き尽くす方の計画だろう 少しげんなり
  閃光はまっすぐ延びて緑の怪物へ さっき自分の体でやったとき
 の数万倍の輝きだ ビデンスを後詰めにした気持ちがなんとなく理
 解できる フィラの好きそうな作業だもの こんなことを部下にや
 らせるような姫様じゃない そんな気がするのであった







             》 しびる 《
+++++++++++++++++++++++++++++++
(のりこ)>ないない13です さて なにやら仕切りなおし感の強
      いこの回ですけども やっぱし仕切りなおしですか
(しびる)>仕切りなおしだな 作中でキャラが仕切りなおすという
      ひじょーにウチの作品にありがちな展開だな
(のりこ)>私達も度々やらされました(笑) さてじゃあ整理する
      わよ なんてめーてるが言い始めると ああまたしびさ
      んサイドで展開が把握しきれなくなってきたんだなあと
(しびる)>よくわかってるじゃん 読者諸氏に対してもその方が親
      切なんだ てことは必要な設定ってことだよな?
(のりこ)>私に訊かれましても(笑)
posted by 篠原しびる at 01:36| シンガポール ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 連作系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

連作18 冠連作11 すぐそこにある世界

+++++++++++++++++++++++++++++++
 種別 連作系第18期 冠連作11
 題名 『 すぐそこにある世界 』
 初出 ニフティサーブ/FJAMEA/18番会議室
    1996年10月02日17時58分
 注釈 行頭スペース+30W
+++++++++++++++++++++++++++++++
SUBJ:【冠連作】11 すぐそこにある世界

 Sibi-Tem V.4.1

 リカちゃんに王位継承権 リカの冠だね 冠連作 #11(B群)
 



         『 すぐそこにある世界 』


                        作:しびる





  例えば笑顔だけで暮らしてみる できれば楽しいことだけを考え
 てみる 性善説で他人と対峙し 素直に地動説を受け入れる 自分
 が世界の中心だとは思わず 様々な関係式の構成員だと常に考える
  誰がどう考えていても真意は測れない ならば深追いするのは無
 意味だし失礼だ 微笑んでいる人は楽しい人だと単純に片す それ
 が幸せな生活の源だと気が付けば楽になる
  丸い地球上で世界の果ては自分の背中 最も遠くの他人でも 所
 詮は自分の背中よりは近くにいる 排他的にならず 手を伸ばせば
 自分の背中にでも触れるのだ その辺りの意識転換が重要

 『ごめんなさい なかなか仕事が抜けられなくて 待ったでしょ』
 『いや 30分ぐらいかな 5分前にきて25分待っただけ』
  テーブルには湯気のたちのぼるコーヒー あたしは隣りの空席に
 紙袋を置き そのついでに隣りの灰皿を確認 誰も座ってないのに
 一箱分くらいの吸い殻 これはきっと1時間は待っていたかな
 『どうにも忙しくって あ コーヒーね うんホットで 今日は仕
 事は休みだっけ あたしも後藤君みたいに平日に休みたいな』
 『有給でも取れば休めるだろうに 土日が休みなら結構じゃない』
 『ええっと これが話してた奴ね シンプルテキストだから』
  場所は地下街の喫茶店 水曜日の午前中 あと5分程度で正午に
 なる 約束は11時30分だったけれど 誰にだって都合がある
 『原稿の方を見せてもらおうか FDは編集に使う それで 今回
 は期待の新作だって聞いたけれど いつものとは違うわけ』
 『そう 病院ばかり書いててもおもしろくないから 今回は男女の
 ドロドロした恋愛関係を それはもう緻密に描写して』
  話している相手はよれよれスーツの男性 不精髭をはやして獣の
 ような目をしている 仕事といえば漫画家さんだ あたしはその原
 作原稿を書いていたりする もう長くて 5年の付き合い
 『なにそれ 同じじゃないの 連載の方は昨日ファックスで受け取
 ったから ゆきえさんじゃなきゃダメなんだよね 今更だけど』
 『でらっくす春風の増刊号のネタって話してたでしょ だからそれ
 に使えないかなって 幼馴染みがばったり再会 黄金葎かな』
  大手新聞社系の出版社の別部門 名目上は完全に独立した出版社
 だけれども たまに市の監査委員会で有害図書に指定されるような
 雑誌ばかりだから 同じビルの一角だとは公言できないらしい
 『ゆきえさんの原作は 最近少しリリカル傾向だよね なにか心配
 事でもあるんじゃないかと 違ってるのならいいけれど』
 『やっぱりわかりますかね でも昨日辺りから抜けてきました 波
 があるんですよ どうにも人付き合いが苦手でして いやいや』
 『自覚があるのなら大丈夫 とも言えないけれど さてねえ』
  後藤君は確か30代半ばくらい あたしは30代前半 看護婦を
 やりながら漫画の原作を書く毎日 仕事は基本的に不規則で スト
 レスと疲労は既に10数年 それでも精神の安定期ではない
 『丁寧に優しくばかりしてると たまに混乱しちゃって 不意に悪
 態なんかが混じるんですよ 悪口を言う気はないのに 変でしょ』
 『誰だって ま そんなものじゃないかな 上手にコントロールで
 きるには どうだろう 宗教や薬じゃないからね』
  コーヒーがやってきた ウエイトレスから見ればどんな感じだろ
 うか 仕事の話って姿でもない 後藤君は表情も変えずに淡々と喋
 るタイプだから 遠目に見れば金融業者と顧客って感じか
 『宗教や薬ですか あはは たまに走りそうになりますよ 僅かの
 不安定って 大きな悩みよりも質が悪いから それで どうかな』
 『濡れ場が少ないけれど いいんじゃないかな こちらは情緒に訴
 えるような仕事じゃないからねえ 深く考えないことだよ』
 『普段は深く考えないんだけどなあ 修正箇所はファックスくださ
 い どんなふうにも書き換えますから』
  あたしがそう話したところで後藤くんと視線が合う 今だって別
 にファックスで済む内容だ 時間を遣り繰りして待ち合わせるよう
 なこともないのに あたしはきっと病院関係者以外と話をしたかっ
 ただけかもしれない 後藤君は鋭いから気付いたらしい
 『なるほど 今晩暇なら 編集の人間との飲み会があるんだけども
 ゆきえさんを紹介しようか 本格的にやるのもいいよ この際』
 『趣味の範疇が楽だけど どうしようかなあ うううん』
  友人の紹介で後藤君と知り合い 色々あってこんなアルバイトを
 しているが 正式に出版社を通しているわけじゃなく 原稿料も後
 藤君から振り込まれるだけ とても食べられる仕事じゃない
 『ただの飲み会でもいいじゃない 馬鹿話して騒ぐだけでも 精神
 衛生には必要だろうね 毎日飲むのは問題だけど さてね』
 『はあ 深刻な顔をして 後藤君の話はどこか空気が抜けていて』
  後藤君との距離は難しい 5年経っても掴み所がなく 馴れ合っ
 た関係なのにどこかよそよそしい そう思えば時に親身で あたし
 の周囲には珍しいタイプだ 会話の中に斑に丁寧語を混ぜて喋る
 『偉く見せようなんて考えてないからね 抜けているのは仕方がな
 いかな 悩みたければ悩むのもいいけれど その前に仕事』
 『そんなものですかねえ なんだかわからないです いやいや』
  今更だから恋愛感情を混ぜるような関係でもない それにどうに
 も色恋沙汰って心境でもない それらの意味では安定期 実際には
 落ち着いている歳ではないのだけれど まこと仕方がない
 『こんなところかな 少し膨らませる部分がありそうだけど ゆき
 えさんの書く筋は 基本的にツボを押さえてるから』
 『その内容みたいに暮らせればいいんですが あは それじゃ戻っ
 て調整してみます あ 原稿じゃなくて飲み会の方を』
 『うん それがいいね 場所はファックスしておこう じゃ』

  持参した紙袋から封筒を取りだし 受け取った後藤君は原稿とF
 Dをしまい込む あいかわらず無表情で 笑っているのか怒ってい
 るのか判別し難い 今はたぶん機嫌がいいのだろう
  あたしは冷め始めたコーヒーをすすり 後藤君の観察に余念がな
 かった もしかすればこんな感じが楽な生活の秘訣だろうか もし
 そうならば今夜の飲み会は有意義なものになりそうである








             》 しびる 《
+++++++++++++++++++++++++++++++
(のりこ)>なんかよくわかんない関係ですね
(しびる)>そうか? マンガ家と原作者だろ この当時はプリント
      原稿とフロッピーを手渡ししてるけど やっぱ直の打ち
      合わせは必要だろうし いま描いてもこんなふうだわな
(のりこ)>そこんところはいいんですけど いや 恋愛感情はそん
      なにないみたいですし なにが盛り上がってるのかなと
(しびる)>質問の意味がよくわからんが? しかしこういうキャラ
      って看護婦 最近は看護士か とにかくナースが多いよ
      な ナースが欲求不満って構図はどこからくるんだか
(のりこ)>知りませんよそんなの でもナースって名称はどうなん
      でしょ? スッチーがフライトアテンダント ならナー
      スもなにかに置換されてるんじゃないですか
(しびる)>保母も看護婦もスッチーもいなくなってよう 残されて
      るのはメガネの女教師ぐらいなのか この惑星には
(のりこ)>まあジェンダー系は仕方ないですよ そんなにどうとも
      思ってない女の子がほとんどなんですけどね どうとも
      思わない子が100人いたって 思う子が1人いるのに
      勝てないです だって どうとも思ってないんですもん
(しびる)>あたりまえのことをダラダラ喋るな
posted by 篠原しびる at 01:34| シンガポール ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 連作系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年07月25日

連作18 冠連作10 社会人の資格って

+++++++++++++++++++++++++++++++
 種別 連作系第18期 冠連作10
 題名 『 社会人の資格って 』
 初出 ニフティサーブ/FJAMEA/18番会議室
    1996年09月27日00時33分
 注釈 行頭スペース+30W
+++++++++++++++++++++++++++++++
SUBJ:【冠連作】10 社会人の資格って

 Sibi-Tem V.4.1

 リカちゃんに王位継承権 リカの冠だね 冠連作 #10(B群)
 



         『 社会人の資格って 』


                        作:しびる





  誰とも衝突せずに暮らすのは不可能だ こちらが気付かないこと
 でも腹を立てる人はいるわけだし 孤島で隠遁暮らしなんて屁理屈
 だもの 実際には仕事をして親戚や近所と付き合って バカの振り
 をするのなら覚悟を決めればいいけれど やっぱりそうもできない
 でしょ それなりの自負やプライドを持って なおかつ衝突を回避
 する バランス感覚じゃ無理 相手のあることだから
  だから必然的に衝突する 世界の果てに住んでいる赤の他人なら
 なにがどうあれ無視すればいい 相手がこちら嫌ってても そんな
 ことは勝手に思わせておけば世界の果てだ 問題なのは周囲の人間
 仲良し関係が維持できるに越したことはない でも利害や好き嫌い
 は個人的かつ譲れない代物 ずっと子供でいられれば 悩みなんか
 ないのになあと考える毎日 強気で攻めるだけが方法じゃない

 『あ おかえんなさい すぐに夕食の準備をするから』
 『おかえんなさいじゃない お前なあ 鈴木さんの奥さんになにを
 言ったんだ 階段で挨拶したら睨まれたぞ 仲良くしろよな』
  帰ってくるなり奥様を睨み付ける 仲良くしろよってのは旦那に
 こそ言わなきゃならないこと 謂れのない説教 すぐに言い返す
 『そんなの知らないわよ 家庭の事情で怒ってたんじゃないの な
 んでもあたしの責任にするなんてのは かなり問題 夫婦の危機』
 『機嫌が悪いからって他所様の旦那を睨んだりしないだろ お前に
 原因があるのは明らかだ 非常に問題 社会生活の危機だぜ』
  鈴木さんの奥さんは気分屋さんだから 腹の虫の具合で他人様を
 睨むこともあるかもしれない それに旦那が原因かもしれないし
 『どっちにしても どっちでもいいじゃない 怒ってるのなら怒っ
 てるんでしょ そんなの考えても意味ないわね さあ夕食』
 『お前ってさ 全部ソレ式で解決してるのか 一家の主婦がそれじ
 ゃいかんぞ きちんと近所付き合いをしてくれよな』
 『適当にやってるわよ それに あまり馴れ合わない主義だもん』
  旦那は炊飯器を跨ぎながら冷蔵庫の角を曲がる あたしは後ろを
 歩き 手渡されるスーツやネクタイを回収する役目 先の発言では
 あたしが社交で旦那が労働とでも分類する意見か それは変だ
 『馴れ合うとかじゃなくて あるだろ 嫌いな相手でも天気の話題
 を微笑みながらとか 生意気な子供を褒めるとか いろいろ』
 『自分はやらないくせに そんなのは死ぬまで続かないって 途中
 で破綻するようなことは最初からやんないの 正論だよね』
  キッチンに到着して旦那はTシャツとトランクス あたしは旦那
 の社会的外装を抱えて大変だ 食卓を囲むのに裸同然のスタイルだ
 もの 社交辞令を諭すのに こんなに相応しくない姿もないだろう
 『オトナは いや社会人は 死ぬまで他人と上手に付き合うもんだ
 できない奴は社会的に認められないぞ こちらが正論だな』
 『そんな正論は屁理屈 はいビール それと肴はピリ辛鶏唐 コン
 ビニ食材に若干の愛情を混入した優れもの 美味しいわよ』
  社会的に認められなくても あたしは旦那と暮らせれば幸せなの
 に 御近所とか親戚とか そんなのに配慮しなくても生きてゆける
 楽しいことだけを考えて 死ぬまで楽しければ満足だ
 『美味しいな それで 本当に鈴木さんの奥さんとは揉めてないん
 だろうな 鈴木さんは支店の主任だから困るぞ 本当に』
 『ううううん 揉めてるわけじゃないんだけど なんてのかな 誤
 解と擦れ違いを修正する余裕がなかった感じかな 喧嘩じゃない』
 『それを揉めてるって言うんだ 辞めてくれよな まったくさあ』
  適当に挨拶して 正直なところ何故怒っているのか理解できない
 のだ なにか誤解があるのはおそらく しかし判明しないのなら解
 決の方法がない 直接聞くわけにもいかないし 困ったものだ
 『なんか気分が乗らないけれど 謝った方がいいのかな』
 『なるべく低姿勢に謝ってくれ 言い訳せずに全部謝るのが正解だ
 どうせお前が失礼なことを言ったんだろう 容易に想像できる』
  旦那が真顔で言うから あたしの心臓は少しドキドキ もしかす
 れば取り返しのつかないようなことしてしまったのか まったく思
 い当たらないのが更に不安 そんなに重大なことなのか
 『なにも失礼なことなんて うううん あたしってば覚えていない
 のに なんか急に不安になってきた どうしよう ねえねえ』
 『小心者なら慎重に暮らせよな 仕方ない 今度支店に行ったとき
 に 俺が鈴木さんに謝ってやろう 女房がバカなことを申したそう
 でって 俺まで恥をかかなきゃならない 気を付けろよ』
 『ごめんなさい なんだか凄く反省してる ホントごめんなさい』
  旦那の姿が大きく見える あたしが考えもしなかった社会的論理
 それにあたしでは解決できない社会的騒動 どうしてこんなふうに
 なるのだろう とても情けなくて 悲しくなるくらいだ
 『反省したのなら ふむ 死ぬまで社交辞令を忘れないことだな』
 『あたしってばそんなふうにはできないって できないから部屋の
 中だけで暮らす もう外出しない ダメな女だもん』
 『できるだろ バカに見えるくらいにニコニコしてろ それだけで
 万事解決するじゃないか 俺なんかそれが仕事だな できるぞ』
  バカに見えるように暮らす それが社会人としての生き方なのか
 果たしてそんなことが可能か 不機嫌なときも悲しいときも ニコ
 ニコとバカみたいに笑って歩く なら鈴木さんの奥さんは社会人と
 しては失格じゃないのか 論理に矛盾がある なんか変だ
 『納得していない顔だな なにを考えてるか想像できるぞ』
 『やっぱりあたしにはできない 死ぬまで謝ってもらうことになる
 と思う 離婚するのは死んでも嫌だし 凄く困ってるの』
 『困るのは俺の方だ 嫌なら努力しろ ダメな女だな まったく』

  旦那は情けない顔をして肩を落とす それ以上に情けないのはあ
 たしの方だ OLの頃には考えなくても良かったこと 確かに職場
 の云々はいくらもあったけれど そんなのは無視しても自然に消え
 てしまったのに それに仕事なんて辞めれば終わり 転職すれば新
 しい環境だもの なんだか非常に窮屈な暮らし
  努力なんて方法がわからない 自分の心を騙して暮らす そんな
 ことがいつまで続くのか できなければ社会人として失格 どうし
 てこんなに不安な気持ちなのだろう なんともはや まったく







             》 しびる 《
+++++++++++++++++++++++++++++++
(のりこ)>また直接的なタイトルですね なんか最近 事務所でこ
      んなふうな話題があったような? デジャヴ?
(しびる)>社会人であることに資格もなにもないんだけどな そう
      だって言えばそうだし そうじゃないと他人から評価さ
      れればそれも仕方ないし 資格がなきゃ社会人じゃない
      何者になるのか 人でなしも人であるように
(のりこ)>まあそうですよね 人間関係がうまく構築できればそれ
      に越したことはないでしょうけど ダメでも仕方ないで
      すよね 実際にダメな人ってたまにいますし(苦笑)
(しびる)>のりこも他人のことえらそうに言えないけどな
(のりこ)>まあそうなんですけどね
(しびる)>あら 簡単に認めやがるのな
posted by 篠原しびる at 00:11| シンガポール ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 連作系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

連作18 冠連作09 腹筋を鍛えろ

+++++++++++++++++++++++++++++++
 種別 連作系第18期 冠連作09
 題名 『 腹筋を鍛えろ 』
 初出 ニフティサーブ/FJAMEA/18番会議室
    1996年09月21日01時58分
 注釈 行頭スペース+30W
+++++++++++++++++++++++++++++++
SUBJ:【冠連作】09 腹筋を鍛えろ

 Sibi-Tem V.4.1

 リカちゃんに王位継承権 リカの冠だね 冠連作 #09(A群)
 



          『 腹筋を鍛えろ 』


                        作:しびる





  連休を潰して馬鹿騒ぎの研修会 超豪華リゾートホテルでの常軌
 を逸した大豪遊 幹部以外は参加費を徴収されたらしいけれど そ
 れもたかがしれた金額 ウチの名目は研修会 ホテル側も社員研修
 会で福利厚生費 握って仕切ってトントントン 総費用はかなりの
 ものだったろうに ほぼ全額をホテル側いや白鳥御大が引っ被って
 のドンブリ決算 好意には甘えろってのが基本姿勢らしい
  それだけでも倫理観を疑うずうずうしさなのに やるに事欠いて
 補助金の申請だもの 研修会はサークルの公式行事だから かなり
 巧妙に申請すれば 認可されて最大65%の補助金が振り込まれる
  ウチの学園は異常に裕福な台所事情で 加えて強大な団体ほど独
 立採算で運営したがる傾向にある 弱小団体は支配下に置かれて申
 請どころか経理自体を掌握されている だから本当はサークルに対
 する補助金は余っているのだ この事実を知る者は少ない

 『少なくはないわよ サークルの経理担当者なら みんな知ってる
 んじゃないかしら 話しても仕方がないから黙ってるのよ』
 『ああっと そうなの それじゃどうして申請しないわけ かなち
 ゃんが書いてるのは申請書類だよね あ 早朝練習いんざジム』
  研修会が終了してリムジンバスで撤収 火曜日には早速書類の作
 成 どこから集めてきたのか かなちゃんは大量の領収書をテーブ
 ルに並べる 場所は学食 時間か昼食時ときたもんだ
 『体力強化に合宿所のジムを借り切って早朝練習 まみこも参加し
 たでしょうに 総裁が練習日程を忘れるだなんて やれやれ』
 『やれやれじゃないって あたりまえのように違反行為じゃないの
 大袈裟は構わないと思うけど 嘘はダメ バレたら大変だもん』
  かなちゃんはミルミルパック120CCだけの昼食 あたしは豪
 勢にとはいかないけれど唐揚げセットB5 唐揚げセットの基本は
 唐揚げで Aはご飯と味噌汁とお新香 Bはお新香抜き Cは味噌
 汁抜き 数字はご飯の盛り方 3が基本で数字なりに増減 どうも
 この学園はアルファベットと数字の組み合わせが好きらしい
 『バレるわけないじゃない ぜーんぶ白鳥御大のお墨付よ バラす
 自信のある人間は 湖畔15キロ界隈には存在しないわね』
 『いやだってさあ 監査委員会だかなんだかしんないけど ウチの
 構成員の誰かに 月曜日の朝は何をしてましたかねえ なんて』
  唐揚げを速攻で食べてしまい Bシリーズなら残りはご飯と味噌
 汁だけ 水分はお茶で飲み放題だから ここは奮発してAにするか
 そうじゃなきゃ Cプラスお茶の組み合わせが正解だったか
 『まみこ そこに座りなさい RRTの結束力について話しておく
 必要があるわね キャベツにソースを掛ければオカズになるわよ』
 『ふあ どうしてあたしの考えてることが まあいいや』
  かなちゃんは矢庭に説教顔 それにしてもどうしてオカズ劣勢状
 態に気が付いたのか ソース攻撃も考えなくはなかったけれど あ
 たしは据え置きソースが嫌いなのだ 衛生じゃなくて味の問題で
 『いい機会だから言っておくけれど 彼女達の演劇にかける気持ち
 は本物よ あんなに真摯な少女達を見て その内の誰かが 月曜日
 の朝は二日酔いで寝てました えへへへなんて言うと思うわけ』
 『わかったから怒んないでよ 別に疑ってるわけじゃないけどさ』
  そう返事をしながら走馬灯が草原をかけめぐる ピンク色のウサ
 ギスーツや盛大な隠し芸大会 カラオケ大会に豪華賞品のビンゴゲ
 ーム 確かにみんな真剣だったけれど 話題は少し違うぞ
 『ふむ だからだいじょーぶ 納得しないならRRTの歌をこの場
 で斉唱させるところね 女の子の結束は会計監査よりも強いの』
 『そんなもんかなあ でも肝心な部分で眉唾な感じが いやいや』
  かなちゃんはミルミルパックを飲み終えて 眉唾のところで握り
 潰す どうもさっきから変だと思ったら かなちゃんはきっとお腹
 が空いているのではないかと気が付いた なぜミルミルパックか
 『あとでこの書類すべてにハンコを押すのよ 今日中に片して学生
 課に提出するから そのつもりで素早く行動を なによ』
 『いやさ 眉毛の間にシワができてる 珍しく不機嫌なかなちゃん
 お小使いが底を突いたのなら あたしがおじさんにお願いするよ』
  かなちゃんのオデコに手を延ばす せっかくの美人なのに 怒っ
 ていては勿体ないと正直に考える それに少し悲しくなるのも
 『そんなこと いや ごめんなさい 怒ってないわよ 別にね』
 『ならいいんだけど もしかしてさ みんなに黙って研修会の費用
 を立て替えてくれたんじゃないかと 思ったもんだからさ うん』
  そう考えれば辻褄が合うではないか 不正を働いても学園から補
 助金をせしめる計画 領収書の山 ミルミルパックの昼食 今更な
 がらの精神論 それらすべてが説明可能 かなちゃんは副総裁だし
 『ふうん まみこの気遣いは嬉しいけれど そうじゃないわよ』
  かなちゃんは眉毛の間を指で擦って あとは何事もなかったかの
 ように書類の整理 あたしは文句を言わずにキャベツを食べること
 にした 世の中にはミルミルパックで昼食を済ませる人もいるのだ
 『隠さなくてもいいのに そうかあ あたしってば少し考え方を変
 えなくちゃいけないかな 総裁にできること 自覚って奴かな』
 『そう考えるなら構わないけれど まあ 好きに努力しなさい』
 『あ まみこ総裁に副総裁 研修会はご苦労さまでしたっ』
  突如として華やかになる空気 振り返れば宮内ゆうきちゃん 隣
 りでもじもじは白鳥ありさちゃん ひょんなことで幹部が集会状態
 いや野田ひさよちゃんが抜けているが 別に来なくても構わない
 『うん ああ 宮内さんに白鳥さん あなた達もご苦労さんだった
 わね 研修会の段取りすべてが合格点 今も総裁と話してたのよ』
 『ええっ はいっ ありがとうございます まみこ総裁と副総裁に
 お褒め頂けるなんて 企画部全員に報告いたしますっ やたっ』
  かなちゃんは毎度の仕切りで 答えるゆうきちゃんは小さなピー
 スサインをありさちゃんと交換している なんとも微笑ましい光景
 だなあと思う あたしもなにか気の効いたことを言うべきか
 『そうだあね 楽しい研修会で良かったと思うよ 事件も事故もな
 く全員無事 飲んで食べてリゾート気分 いやはや あはははは』
 『あ そうそう まみこ総裁のお言葉で大切な用事を思いだしまし
 た これ 副総裁にご依頼頂いたメンバーズカードです どうぞ』
  ありさちゃんが恭しく取りだし ゆうきちゃんがかなちゃんに手
 渡す 依頼したメンバーズカードってのはなんだ
 『ふあ メンバーズカード かなちゃんってばなんのメンバー』
 『これは あ すみません あたしが説明してもいいでしょうか』
  かなちゃんは肩を窄めて目をクリクリ これはなにか隠し事をし
 ているときの表情だ 素早く奪取してカードを眺める
 『すわんふぃっとねすくらぶ スワンってのは 白鳥さんだよね』
 『あたしのお父さんが経営しているエステジムです 副総裁さんが
 入会されたいと仰るので とにかくカードを持ってきました』
 『別にいいじゃない さてさて仕事 ふたりともご苦労さま』

  なにかすべてが見えてしまった お小遣いが云々じゃなくて か
 なちゃんの抱える問題は 飲んで食べて露天風呂の怠惰な3日間に
 原因がある 誰だってあんなふうに過ごせば 余分なお肉が増えた
 りもするだろう あたしなんか気にもしないが フィットネスクラ
 ブに通いたくなる気持ちもわからなくはない
  もしかして 捏造したジム使用料が転嫁される仕組なのか そう
 だとすれば少し問題 注意しようと思ってカード裏返す ついでに
 名前を確認すれば 記されているのは団体名でRRT かなちゃん
 ってば やっぱり凄いなあと感心したりするのであった ふむ








             》 しびる 《
+++++++++++++++++++++++++++++++
(のりこ)>RRTです なにやら学園内のサークル関係のネタが徐
      々に膨らんできました 肥大化の端緒ですか
(しびる)>なんかいろいろ考えるとさあ 別にサークルネタはおと
      しまえ付けなくてもいいんじゃないのかなあとか?
(のりこ)>それはダメでしょ それがメインじゃないですか
(しびる)>女子高生がさ なんか楽しそうにしてるだけでもいいん
      じゃないのかなあ 地球を守るとか そゆことが使命っ
      てわけじゃないんだし そもそもまみこなんざ ぐだぐ
      だ暮らしてただけの怠け者キャラじゃん
(のりこ)>それもいまとなっては跳躍のための前屈と解釈できます
      し てかそうじゃなきゃこのお話自体に意味がー
(しびる)>わかってるって 言ってみただけ
posted by 篠原しびる at 00:09| シンガポール ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 連作系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

連作18 冠連作08 勿体ないお化け

+++++++++++++++++++++++++++++++
 種別 連作系第18期 冠連作08
 題名 『 勿体ないお化け 』
 初出 ニフティサーブ/FJAMEA/18番会議室
    1996年09月17日00時38分
 注釈 行頭スペース+30W
+++++++++++++++++++++++++++++++
SUBJ:【冠連作】08 勿体ないお化け

 Sibi-Tem V.4.1

 リカちゃんに王位継承権 リカの冠だね 冠連作 #08(B群)
 



          『 勿体ないお化け 』


                        作:しびる





  外科医か金庫破りなんて言うけれど とにかくこのぽちゃぽちゃ
 した掌はどうだろう 怪我の跡もなくササクレなんか当然のこと皆
 無で タコやマメがないから子供の手のようで 爪は綺麗に切り揃
 えて白身が全体の3割 血管も浮きでていないから 自分の手と比
 べるのが嫌になるような 職業はと問われれば文筆業
  ソファーをベッド代わりにして寝転がる男 無駄な肉のない引き
 締まった体躯 適当に伸ばした髪はナチュラルウエーブで 眩しそ
 うに細める瞳に照明が反射している あたしはしゃがみ込んでそれ
 を眺めて 我慢できなくなって指を口に含む

 『発達の段階に口唇期というのがありますが 実のところ 幼児期
 の精神的進化は エロチシズムの進化と 常に同期して』
 『にゃにほひってひるのか むは 知らないけれど 我慢できない
 から休憩の邪魔をするね この愛苦しい姿 がああああ』
  暇な女だと即決されればそれまでだけど あたしってばさっきか
 らずっと眺めていた さっきからってのは既に2時間ほど 彼はゴ
 ロゴロとなにをするじゃなし あたしは眉を寄せて見ているだけ
 『むん 興奮している女性を冷静に観察するのは おもしろいね』
 『すかした男だああ がるる 首筋にキスマークを付けてやる』
  そのまま彼の上に乗っかって 軟らかい首筋に唇をつける 男の
 くせに良い香り 見れば楽しそうに目を細め それでもまだ下半身
 の方は反応がないようだ 更に悔しくなって唇を重ねる
 『んんんっ やんやん あたしだけ興奮してバカみたいじゃない』
 『そうですねえ もう少し色々楽しませてくだされば いずれ』
  彼の唇とあたしの唇 その間に唾液を伸ばして かわいく拗ねて
 みてもおもしろがるだけ あたしは妙な衝動に自分の顎を彼の肩に
 乗せ ほほを擦り寄せて甘えてみる 何故か猫になったような気分
 『にゃあ かわいがってくれないと にゃんにゃん にゃあだあ』
 『かわいらしいじゃないですか その頬の感触はとてもいいですよ
 満たされない欲求を そういった方向に向けるのは正攻法です』
  頭を撫でられて新鮮な快感が背筋を走る 調子に乗って頬擦りを
 続けて また我慢できなくなって彼の耳を舌の先で転がす
 『ふうみゅ してくんなきゃやあだあ あたしってば かわいくな
 いのかなあ なあなあ はあやあくう 殺しちゃうぞ』
  彼の頭を抱き締めて胸の谷間で窒息させてみる 死ぬのが嫌なら
 愛撫を開始しなければならない究極の選択 堅くなった乳頭を 彼
 の鼻の頭で刺激する なんだかもう我慢できない状態になる
 『ゴロゴロ寝てるだけなんておもしろくないもん あたしがこんな
 にお願いしてるのにさあ どうしてしてくんないのか あらら』
 『脅迫めいたお願いですね ふう 死ぬわけにはいきませんから』
  ぶうぶう文句を言いながら 片手で彼の下半身を確認してみたり
 する 表情はヘンテコな笑顔のままなのに 身体の変化はとても顕
 著である あたしは嬉しい表情を隠したりしないから素直なもの
 『むふふん なにやら急に準備ができたようですねえ それならそ
 うとひとこと言ってくれれば よいしょっと それなりの対応が』
 『なにかとても楽しそうでいいですね 結構なことです』
  小難しく喋るのは常だから そんなことにはお構いなしに体位の
 変化 これだけ興奮してしまうと 頭の中を勿体ないお化けが横切
 ったりする まずは焦らしたことへのお仕置きだ
 『今日は全部あたしが上だからねえ 悪い子は上に乗る権利はあり
 ません お願いしてもそれは決まったことなのです むあ ひゃか
 らにゃひをひってほりゃめれすかりゃね むんむん』
 『権利がないのなら仕方がないですか それでは我慢しましょう』
  口に含んで喋ってみたりする 彼の体臭を凝縮したような不思議
 な風味 舌と鼻腔をくすぐるこの感触 僅かに感じる彼の鼓動 正
 直なところ なにがお仕置きだかわからない行為ではある
 『ひょうひて むは ここで終わらせないように気を付けねば』
 『感触でわかるのですか その辺りの表現は新鮮ですね ううん』
  終わるときの感触なら簡単に判別できる まだそんな予感は微塵
 もないけれど そこはそれ このまま続けてもあたしの楽しみが少
 ないではないか あたしばかりがじらされているように感じる
 『面倒だからこのままでしようね ふふふん なんかいいでしょ』
 『好きなようにすればいいですよ 文句を言う権利はありません』
  あたしはスカートをはいたまま ごろりと上を向いてショーツを
 脱ぎ捨てる このまま外出しても誰にも怪しまれない姿 そして彼
 の胸に両手を突いて 見当だけで狙いを定める
 『ふみゅっ うんうんうんうんっ これはこれは うんうんうん』
 『スカートで隠れた感じが淫靡です なかなか凝った演出ですね』
 『もうっ うるさいにゃあ ごちゃごちゃ言わないのっ はああ』
  意味もなく悔しいから 両手を胸に添えたままで距離を保ち 唇
 は重ねないのだ 静かにしていればみちみちと粘液の摩擦音 上下
 運動にスカートが膨れたり萎んだり 既にもうなんだか
 『にゃんにゃんにゃん くううっ ごめんなさい 最後はやっぱり
 替わってね いや もう少しかな んんっ やっぱりだめっ』
 『仕方がないですねえ 意地を張ることはないですよ よいしょ』
  それはもう自分のリズムだけど またもや勿体ないお化けが脳裏
 を横切る このまま自分だけで頑張るのは勿体ない 最後は是非と
 も彼のリズムで苛めてもらいたい そんな衝動にぞくぞくする
 『うひゃあ なんか安心な場所かな やん えへへへへ』
 『結局は自分の思うようにですか 観察しがいのある性格ですね』
  彼のリズムはやはりあたしとは違って 思いもよらない緩急に対
 処できなくて凄まじい 彼はあいかわらずヘンテコな笑顔 あたし
 はどうしようもなく唇を噛み締める 
 『なんでもいいけど むううううんっ もうだめっ 合わせてっ』

  最後にちらりと勿体ないお化けが見えたけれど それよりも強い
 電流が背筋を一気に掛け登る こんなところで我慢するのは不可能
 だから ここは仕方なしに電流に従う それに合わせるようにお願
 いしたから 彼だって器用に同期させてくれたりする
  悪寒のような電流が数秒間続き あたしは徐々に普通に戻り始め
 る 彼はまだ摩擦音を立てているけれど それだってすぐに終わる
 のが常 スカートをはいたまましたのは失敗か 汚しちゃったから
 履き変えなくちゃいけないと 違う勿体ないお化けが考えていた








             》 しびる 《
+++++++++++++++++++++++++++++++
(のりこ)>なに描いてますかねえ
(しびる)>なにがもったいないオバケかねえ 意味不明だなあ
(のりこ)>ご自分の作品でしょうに(苦笑)
posted by 篠原しびる at 00:08| シンガポール ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 連作系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年07月23日

すきま かんじだいすき 07

(しびる)>ういーっす 漢字枠やるぞい
(のりこ)>ぱらぱぱっぱっぱー しびさんとのびちゃんはレベルが
      上がった というわけで1級上りました 5級ですよ?
(しびる)>順調だな まあ最初はこんなふうなんだろうけど と思
      ってたが ちょいペースが速いみたいだな
(のりこ)>ですね でもほら真剣にやってますし? なによりもき
      ちんと課題を提出する それが大事とのココロです
(しびる)>教室に通ってるんだから当然だわな トイメンで課題を
      仕上げて 提出しないって選択肢はないってこと
(のりこ)>そうなんですけどね さて月に1級昇級ってペースはい
      つまで続くんでしょ こうなればそうじゃなくなったと
      きのモチベーションの保ち方が心配になってきますよ
(しびる)>モチベーションな ともかく年会費と月謝は払ってるわ
      けだし 資金が流れてるウチは大丈夫だろ 問題なのは
      更新時の瞬間だな それだけ乗り切れれば大丈夫
(のりこ)>なら来年の3月4月ですね そんときまでに某の結果が
      でてればいいんですけど 準初段とか その辺の
(しびる)>まあ鍛錬と精進しかねーわな 月1なら年内に準初段の
      予定だけど そろそろさすがに鈍るだろ 昇級も
(のりこ)>んじゃま 頑張ってそうなるように努力するってことで
      さて今回の課題のおさらいですけど 6月の課題です
(しびる)>こうやって紹介するのが月遅れってのは どうにもやぼ
      ったくて仕方ないけどな まずまずの評価じゃん?
(のりこ)>ですかね 『山』は○1個 『高』は7画目が修正され
      てます 6画目より伸ばさなきゃあとは思ってたんです
      けど なかなかうまくいかないものです
(しびる)>ぐいと内側に思い切って差し込めてるけどな もうちょ
      い勢いが足りなかったってところか
(のりこ)>『水』は○2個 2画と3角の位置関係もばっちし あ
      とは払いの部分ですかね 成功率5割ってところですし
(しびる)>『長』の払いはうまくいってるけどな なにより全体の
      バランスがいい でも1画と3・4・5画との間隔は均
      等じゃなきゃいかん 間隔は重要な要因だしな
(のりこ)>いままではあんまし気にしてないというか それにこだ
      わる余裕がなかったですしね ようやくって感じですか
(しびる)>細かいことにはこだわっていかなきゃいかんのだが
(のりこ)>とにかく基本と細部ですよ それからバランスですね
(しびる)>見栄えはバランスが肝心なんだけど そればかりにとら
      われちゃいかんと思う まずパーツの完成度を上げる
(のりこ)>同感ですね ですから最近新聞とかに載ってる小学生く
      ん達の作品を見る目が違ってきましたよ 以前ならぼん
      やり『バランスの悪い字だなあ』とか思ってましたけど
      最近は『おっ この払いはちょっといいぞ』とか『思い
      切って縦線が伸ばせてるなあとか』パーツのうまさに感
      動したりして なかなかに奥の深いものです
(しびる)>文字は誰だって書くんだ 筆文字だって小学生くらいで
      全員がやってる 生活の基本と言い切ってもいいくらい
      あたりまえのものだけど 文字はやっぱし奥が深い ホ
      ントとんでもないくらい深い その表層のちょっとを覗
      いただけなのに これだけ視点が違うものかと驚く
(のりこ)>ですね まだ楷書の薄っぺらいところをやってるだけで
      すもんね 書体なんて山のようにあるのに
(しびる)>そゆこった だからそういう視点を見失わないように努
      力すれば ままモチベーションは高いところで維持でき
      ると思ってる そんなに心配するな どうにかなる
(のりこ)>ごもっともです なんかちょっとメタな話で締めちゃい
      ますけど 画像は6月の課題『山高水長』です 6級か
      ら昇級して5級になってます ってことでkanji004.jpg
posted by 篠原しびる at 02:38| シンガポール ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | すきま かんじだいすき | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年07月22日

すきま あにめだいすき 41

(しびる)>ういーっす んじゃアニメ枠やるか
(のりこ)>ありゃ? あ おはようございます なんかいろいろお
      忙しいようなお話でしたけど その辺は大丈夫ですか?
(しびる)>うんまあ 思ったより軽かってな じゃまあ経過観察っ
      てことで様子見だ そんなこたあいいんだ アニメな
(のりこ)>それはまあなによりってことで でわでわ 最初はやっ
      ぱしこれですか『N・H・Kにようこそ!』
(しびる)>まだ1本しか見てねーけど あれだな NHK陰謀説を
      かなり細かく設定してきたな コミックスの方じゃさら
      っと流してるけど どっちが配慮してるんだか
(のりこ)>主人公のキョンくん じゃなくて佐藤くん 近所をうろ
      うろしちゃって ひきこもりじゃないですよね
(しびる)>いや ひきこもりだって近所をうろうろするだろ普通?
      トリだからって24時間飛んでるわけじゃないように
(のりこ)>そゆものなんですか? あまり詳しくないもので
(しびる)>んー まああんましひきこもりの知り合いなんていない
      だろうけど 知り合いのひきこもりがいやまあまったく
      佐藤と同じタイプでさ 思わずコミックスを読むの中断
      して半年放置したくらい でも実際には岬も山崎もいな
      いんだ どうするんだろう リアルの彼らは
(のりこ)>とにかくアルバイトでも始めて ニートを経てフリータ
      に昇格するのが社会復帰の道ですよね この佐藤くんは
      幻覚とか幻聴があるみたいですけど ココロの病気?
(しびる)>さあな 都合のいいときだけ電波のせいにするから思い
      込みの類じゃねーの? とにかく五体満足で若いくせに
      働いてないヤツは認められないから この作品群は基本
      的なところで大っキライなんだ ココロの病気なら治療
      しろ 他人が嫌いなら内職でもしろ 稼がないなら粗食
      で節制しろ できねーこと数えるんじゃなくて できる
      こと見付けて1円でも家計に貢献しろ まったく
(のりこ)>そゆことができないんですよ きっと てか作品の内容
      の話をしないと(苦笑) ひきこもり話じゃなくて
(しびる)>だわな EDはオーケンか やな歌だな
(のりこ)>あばばば 踊るよ 赤ちゃん 人間っ おぎゃー(笑)
(しびる)>もうコミックス読んでるからアニメは見なくていいんじ
      ゃないかなあ 岬が壊れてくのとか見てても愉快汁が脳
      にに分泌されないのよ 別にエロでもないし
(のりこ)>そうですねえ 結局は岬ちゃんも社会不適合者でしたっ
      てのは よく観察してれば最初から伏線があったんです
      けど やっぱし展開としてきつかったですか
(しびる)>別にぃ 類は友を呼ぶんだ そんなもんさ んじゃ次
(のりこ)>あらら ぶつっと切って次ですか んじゃ『恋する天使
      アンジェリーク』 なんか大風呂敷のOPですけど
(しびる)>セイント聖矢みたいな感じなのか? んじゃ終了扱いで
(のりこ)>まだ5分も見てないのに(笑) アンジェは終了扱いと
      次はコミックスも押さえてる『となグラ!』
(しびる)>パンツ見える系のオッパイ深夜アニメ OP5秒でパン
      ツ全開 こんなくだらない作品もないくらいくだらない
      作品だわな まーったく意味ねーし あと大原さやか
(のりこ)>ホントくだらない作品ですよね コミックスは妙な歪み
      方をしていたデッサンが アニメ版ではスッキリと普通
      の絵柄に しかしあれですね この制服の色遣いは宇宙
      士官学校のノリですよ もしくは道路誘導員さんか
(しびる)>そういう色だわな あと大原さやか
(のりこ)>それは継続扱いってことですか あーはいはい しかし
      こんなアニメを深夜に見せられて感想を言えだなんての
      は 美国じゃ100万ドル訴訟級のセクハラ事件ですよ
      そこんとこも考えて対処されますように
(しびる)>しかと心得た そしてここにもハチマキ女 世界は記号
      でできてるんだなあ んじゃ次行こうか 次な
(のりこ)>えーっと『RAY』ですね BJですか
(しびる)>RAYってのはX−RAYのことだわなペケ線 邪眼系
      の設定をこういうふうに使うのもおもしろいか
(のりこ)>ホムンクルスとか いろいろ皆さん考えてますよね で
      もなんか興味が湧かないのはなぜなんでしょ? 違うも
      のが見えるってのはネタ的にそこそこなんですけどねえ
(しびる)>しかしこの看護婦たちは何者だ? それとさ レイの白
      衣はやっぱし黒色じゃないとダメじゃん?
(のりこ)>黒い白衣って ハーバート西先生ですね なんかヘンな
      ノリのアニメですけど どうしますかこれ?
(しびる)>もう1本だけ見て決めよう 経過観察扱いってことで
(のりこ)>ういっす RAYは経過観察あと1本と んじゃ次は
(しびる)>今回はこのくらいにしておこう あしたも早いから帰っ
      て寝るわ んじゃまたあしたな
(のりこ)>了解っす んじゃお疲れさまです
posted by 篠原しびる at 01:28| シンガポール ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | すきま あにめだいすき | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年07月20日

編集会議 116

(しびる)>ういーっす ちょいトラブってな しばらく落ちるやも
      しれん うまくいけばなにも問題ないかもしれん
(のりこ)>あ おはようございます なんですかトラブルって?
(しびる)>んなこたあ ここで説明するわけにはいかん
(のりこ)>はあ なんだか知りませんけど 落ちるってどれくらい
      の期間になるんですか? 10日くらい?
(しびる)>いや なにもなければあしたもくるからな 伏線だけ張
      っておこうかって感じかな んじゃな
(のりこ)>もうお帰りですか
(しびる)>あと4時間弱で起床時間なんだわ
(のりこ)>それはまた んじゃとっととお帰りになって寝てくださ
      い 別にお忙しいなら何日でも落ちてくださっても
(しびる)>そうもいかんだろうけどな いろいろ関係者の方々も読
      んでくださってるからちょうどいいやと思って
(のりこ)>んじゃまお疲れさまです
(しびる)>じゃあな
posted by 篠原しびる at 23:46| シンガポール ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 編集会議 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年07月19日

編集会議 115

(しびる)>ういーっす 雨が降るよなあ 雨期だから仕方ねーけど
(のりこ)>あ おはようございます お久しぶりですけど やっぱ
      し連休はお忙しいですか 飲物はビールにします?
(しびる)>レンキュウ? お母さん レンキュウってなに?
(のりこ)>うわちゃ 地雷踏んじゃった
(しびる)>そゆこった バカちんが カレンダーの数字が赤いから
      ってふらふら遊びやがってよう 他人の3倍はたらくも
      のが あすの勝者になるのな 仕事しろ仕事を
(のりこ)>あーはいはい 御説ごもっともです しかし雨ばかりで
      すよねえ 向いの中村さんに行くのもタイヘンな感じで
      すし ってことで食材の補充ができてないです
(しびる)>おまけになまくら話か まあいいや なんかその辺のも
      の食わせろ 年賀状であてたそうめんとか残ってるだろ
(のりこ)>そんなのもうないですよ 50束って しびさんは5回
      で食べ切っちゃったじゃないですか 食べ過ぎっす
(しびる)>のりこも一緒に食ってたじゃねーか なんだよもう
(のりこ)>私は1束分くらいしか食べないですよ? あんまし大量
      に食べるのはどうですか こゆことは普段から言わない
      ようにしてますけど マジで体のこととかも考えないと
(しびる)>うるせーな お前はお母さんかよ なんか食うもの用意
      できたのか? 喋る余裕があるなら手を動かせよ
(のりこ)>動かしてますよ しびさんは料理なんかしないからわか
      んないでしょうけど 喋ってたって料理くらいできます
(しびる)>ふん まあいいや なにを食わせてくれるんだ?
(のりこ)>焼きビーフンですよ 豚肉ならストックがありましたし
(しびる)>なら先にビールくれ あとつまむもの たしか冷凍の枝
      豆とかあっただろ それでいいや
(のりこ)>ビールっす 枝豆を解かしてる間に焼きビーフンができ
      ますよ とか言ってるうちにできました じゃじゃーん
(しびる)>さて食うか んぐんぐんぐ ぷはー ビールうめー
(のりこ)>ウチはしびさんの指定でア○ヒのスー○ード○イを買っ
      てますけど 他の銘柄は飲まないんですか?
(しびる)>じるじるじる 美味いなこれ ビールならなんでもいい
      と言いたいところだけど まあドライかな 基本は
(のりこ)>のどごしがいいですもんね ところで冒頭のレンキュウ
      話はいいとして やっぱ仕事でしたか この毎日は
(しびる)>まあな なんかやたら忙しくてさ あんまし儲かってな
      いんだけど ちょい効率が悪いのやもしれんな
(のりこ)>お仕事が忙しいのはけっこうですけど てきとうに休息
      も取ってもらわないと きょうの午前中も仕事?
(しびる)>うん ビールなくなったぞ 朝から書類仕事が溜まって
      たからさ 昼は業者が来るってんで 午後は書道教室だ
      ろ ようやくこの時間から休日か まあ因果な商売だ
(のりこ)>ふうん なんかしびさんってオトナの人って感じですよ
      ね たまにうわーって感じにならないですか
(しびる)>なんだそりゃ(笑) オトナって感じにはなってないか
      なあ まま近所付き合いや家族サービスとか仕事とか社
      会奉仕とか それなりにはこなしてるけどさ 時間がで
      きりゃアニメ見てマンガ読んで オトナかねえ
(のりこ)>趣味の部分は個人の勝手じゃないですか ビールっす
(しびる)>まあそうなんだけど うわーって感じにはならないな
(のりこ)>私はこうして毎日お気楽に過ごさせてもらってますけど
      OLやってたときにはうわーってなることも多かったで
      すよ? 作中ではかなりお気楽に描かれてますけど
(しびる)>んー 仕事は他人を管理する方だしなあ それ以外のこ
      とは自分がそう選択してやってることだし イヤならど
      れもこれも辞めればいいんだわ 生活ってそゆもんだ
(のりこ)>ふうん そんなふうに考える方法もありますか
(しびる)>てかそう考えるしか生きていけないだろ さて腹も膨れ
      たし ちょい放置してたからいろいろ片そう
(のりこ)>はあい アニメの今期新作もかなり揃いましたし
(しびる)>漢字枠もやらなきゃな んじゃまた夜中に集合ってこと
      で 一旦解散 さてさて
(のりこ)>ういっす
posted by 篠原しびる at 18:44| シンガポール ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 編集会議 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年07月14日

連作18 冠連作07 いたいけな

+++++++++++++++++++++++++++++++
 種別 連作系第18期 冠連作07
 題名 『 いたいけな 』
 初出 ニフティサーブ/FJAMEA/18番会議室
    1996年09月12日21時48分
 注釈 行頭スペース+30W
+++++++++++++++++++++++++++++++
SUBJ:【冠連作】07 いたいけな

 Sibi-Tem V.4.1

 リカちゃんに王位継承権 リカの冠だね 冠連作 #07(B群)
 



          『 いたいけな 』


                        作:しびる





  年が明けてから3月くらいまでは なんだか道路も工事中ばかり
 で 去年同じ所を掘り返していたと思うのに 掘削機の派手な音が
 行く手を遮る 別に遠回りしなくても 工事現場のすぐ脇には小道
 が仮設されているのに あたしってば大きな音が苦手だから 通り
 を変えて歩いたりする 自分でも臆病だなと少し思う 少しだけ
  別に過密な予定じゃないから 時間をかけて用事を済ませる 日
 中に片さなきゃいけないことは極僅かで 掃除と洗濯と買い物くら
 い 銀行と郵便局は商店街の中にあるから 歩く範囲もたかが知れ
 ている 子供がいなければ主婦業も楽なものだったりする

 『ただいま お腹が空いたから先に食事 と思ったけれど風呂』
 『あ おかえりなさい お風呂はまだ入れてないの 先に夕食にし
 てくれると嬉しいな あら たっちゃんってば どうしたの』
  あたしは時間の概念が曖昧な方だから 何事につけてもなんとな
 く 外が薄暗くなれば彼が帰ってくる 朝は目覚まし時計で起きる
 けれど それ以外は何時になったらどうするって事はない
 『どうしたのって どうもしてないじゃないか どうかしたのか』
 『ううん 今なんとなく妙な感じがしたから ごめんなさい』
  彼はそれ以上聴こうとはしない あたしは少し普通の人と違うら
 しくって 仕方ないけれど理解してくれる人は少ない
 『ふうん それで夕食はなにかな 甘酸っぱい香りがするねえ』
 『豚肉が安かったから 酢豚にしたの 少しカタクリ粉が多かった
 けれど たっちゃんなら怒らないくらいの仕上がりだと思う』
 『ははん 俺なら怒らないくらいの仕上がり それはそれは』
  靴を脱いで玄関に佇む姿を見て 自然に体が動いて抱きついてし
 まう 色々な香りの中から体臭を探す そして胸一杯に吸い込んで
 みたりする それと同時に苦い感情が流れてくる
 『やっぱり たっちゃんってば何かあったんだ ちょっとだけ嫌な
 気分が残ってるもん 聞いてもいい話なら聞かせてほしいな』
 『みちこに隠し事は無理か いや たいしたことじゃない』
  もっと強く抱き締めてみる でもスーツの上からでは内容までは
 わからない 仕事をしていると嫌なこともあるかなと寂しくなる
 『そうかもしれないけれど うんっ たっちゃんがそう言うなら』
 『そういうわけだ いつまでもこうしているのも楽しいが なんな
 ら夕食にしないか 酢豚だろ いい塩梅の仕上がりのさ』
  あたしの体の神経が 彼に向かって傾いてしまったので すぐに
 は離れられなくてしがみついて歩く 今日は少し揺れが大きい
 『みちこはデレデレモードだな お前こそ何かあったのか』
 『ううん 今日はそういう感じの日なの アレが近いのかな』
  どんなことでも感覚的で 世の中はそんなことじゃ生きていけな
 いことも知っている この感じは子供の頃気がついてからずっとだ
  もしもこの人と出逢っていなかったら どんなふうに暮らしてい
 ただろう 考えても意味はないけれど 幸せな感じに浸れるから
 『なんかね 朝からふわふわしてるの 周りの人達みんなが少し苛
 々してるからかな よくわかんないけれど たっちゃんもそう』
 『天気のせいだろ 曇りの日はこんなもんだ どうかな』
  ダイニングテーブルに向い合って座る 本当は隣に座りたいけれ
 ど 並んで座ると変らしいから あたしも我慢しなくちゃいけない
 『あたしはね みんなが苛々していると悲しいな たっちゃんは』
 『ああ 俺は他人の気持ちはわからないからな なんとも』
 『あたしが苛々してると悲しいでしょ 悲しくないかな』
  小学生の頃だったか とても仲が良かった友達に言われたことが
 ある あたしの話していることは意味がなくて 聞いていると頭が
 変になりそうだって 凄くショックで それから怖くなった
 『みちこは優しいからな 花や動物の気持ちもわかるだろ 俺なら
 みちこみたいには生きていけないな 悲しかったら俺に話せよ』
 『うんっ たっちゃんも優しいと思うよ 全部話してるから心配し
 なくてもいい わーってならないのは たっちゃんのお蔭だもん』
  高校生になった頃 あたしは自分でもわかるくらいに変だったの
 だ 誰もあたしのことを理解してくれなかったから あたしの頭は
 毎日一杯になっていた このままだといずれ死んじゃうと思ってた
 『凄くネバネバしてるぞ 料理するときは分量を計る癖をつけた方
 がいいな 味つけは満点だが このバランスは不思議だな』
 『次は頑張ってみる 読める本と読めない本があるから 和食の本
 を書いた人は読めるように書いてくれてるんだけど 中華はね』
  色々と批評はするけれど 彼が喜んで食べてくれているのはすぐ
 にわかる 心の底からあたしを包み込んでくれる人 こんな人は世
 界中に彼しかいない あたしの唯一の理解者は目の前の主人
 『そうだな 無理をしないで頑張ってみるのがいいぞ 頑張るのは
 とてもいいことだ みちこの思うように頑張ってみろ』
 『そっか たっちゃんは頑張ったけどダメだったことがあったみた
 い せっかく頑張ったのにね なんか かわいそうだと思う』
  一緒にいる時間が重なると どんどん深いことまでわかってくる
 彼はとても残念だったのに それを隠している気持ちが悲しくなる
 あたしは急に涙が溢れて 酢豚を食べながら涙が止まらない
 『みちこが泣く必要はないぞ 俺は自分で解決したからな』
 『でもね でもたっちゃんがかわいそう あたしってばなにも助け
 てあげられない ごめんなさい あたしはなにもできないから』
 『なにもしなくていいよ 仕事をしていれば色々なことがあるな』
  彼の心の中の残念が小さく硬く縮んでゆく 彼もいつからかあた
 しのこんな心に合わせられるようになって そんなに無理をしてく
 れなくてもいいのにと思う あたしはダメな奥さんだ
 『ごめんなさい あたしってば勝手に悲しんで むにゅう』
 『ふむ そんなところがカワイイからな 別に構わないぞ ふむ』

  ぼろぼろ泣いているあたしに 彼は最大級の笑顔 こんなにダメ
 な奥さんだっても 理解して慰めてかわいがってくれる どうして
 そこまで優しいのか いくら注意してもわからない
  とにかく急いで夕食を食べて もっと急いで後片付けをして 彼
 と一緒にお風呂に入ろう 今日こそは優しさの正体を調べようって
 計画なのだ 先にお風呂を入れておかなかったのは あたしにして
 は非常に計画的だと少し思ったりする 少しだけね








             》 しびる 《
+++++++++++++++++++++++++++++++
(のりこ)>不思議なお話です どちらでもいいんでしょうけど こ
      の彼女はセンシティブなのか それとも異能者なのか
(しびる)>どちらでもいいけどな 他人のココロを感じることがで
      きるってこともあるだろうさ そういう人間が生活を確
      立するにはどういう条件が必要なのか 何度かそういう
      のを検証したことがあるけど これもその種類のひとつ
(のりこ)>いまのこの夫婦生活もおもしろいですけど タイヘンだ
      った頃の学生生活なんかを描いてみるのもおもしろいか
      もしれないですね 作中でちょっと触れられてますが
(しびる)>まあな でもとてもおもしろいものにはならないと思う
      ぞ こういうタイプが社会とズレると もうとんでもな
      く悲劇的な展開しか用意できないし ある種の興味はな
      いこともないけどな って どこかで描いたかな
(のりこ)>ありましたっけ? なんかよく覚えてないですけど で
      もまあ どんな人であれ自分の理解者と暮らすのが最も
      幸せなことですし そうか それがテーマですか
(しびる)>そんな高尚なもんじゃねーけどな(苦笑)
posted by 篠原しびる at 22:52| シンガポール ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 連作系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

連作18 冠連作06 プリティキューブ 7

+++++++++++++++++++++++++++++++
 種別 連作系第18期 冠連作06
 題名 『 プリティキューブ 7 』
 初出 ニフティサーブ/FJAMEA/18番会議室
    1996年09月12日00時14分
 注釈 行頭スペース+30W
+++++++++++++++++++++++++++++++
(のりこ)>PQ7です 今回のサブタイは『眠っている犬は起こす
      な』 デリシャスのミカちゃんがイヌスーツで営業して
      たり とか思ってたら 最終的にはみんなイヌスーツで
      しみじみと語り合ったりと 停滞してるのやどうやら
(しびる)>パス扱いだからなにも喋らないって
(のりこ)>キャラ数だけはどんどん増えてくんですけどねえ それ
      に比例して展開が停滞してゆくのはウチの悪いクセだっ
      たりします その典型のような作品ですか
(しびる)>かもな
posted by 篠原しびる at 22:49| シンガポール ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 連作系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

連作18 冠連作05 ゴメンで済めば楽なもの

+++++++++++++++++++++++++++++++
 種別 連作系第18期 冠連作05
 題名 『 ゴメンで済めば楽なもの 』
 初出 ニフティサーブ/FJAMEA/18番会議室
    1996年09月09日00時45分
 注釈 行頭スペース+30W
+++++++++++++++++++++++++++++++
SUBJ:【冠連作】05 ゴメンで済めば楽なもの

 Sibi-Tem V.4.1

 リカちゃんに王位継承権 リカの冠だね 冠連作 #05(A群)
 



        『 ゴメンで済めば楽なもの 』


                        作:しびる





  優しい気持ちについて考えていた 優しいってどんな感じだろう
 周りを見渡すと優しいオトナの人はたくさんいる スーパーに買い
 物に行っても レストランに食事に行っても 働いている人はみん
 な優しい ニコニコ微笑んで丁寧な言葉 お願いすれば嫌がらない
 で 近所の人だって優しい しかしそれは優しい態度だ つい最近
 だけどその事に気が付いて 優しい気持ちがわからなくなった
  歳上の人には優しくだなんて失礼で でも自分より小さい子には
 優しくするのがあたりまえ 考え始めると あたしの優しいは態度
 だけで 心の底から優しくだなんて 考えるほどにできなくなって
 そしてその反動で悪い態度になってしまう 態度だけでも優しかっ
 た自分が 心も態度も悪い人間になる あたしはもう悪い人間だ

 『どうした あやみ パパの手料理は口に合わんか これでも学生
 の頃は毎日自炊を ああ 自炊ってのは自分で食事を作ってだな』
 『自炊なら知ってますよ ご飯は パパのご飯はおいしいです』
  なにかぼんやりとしていて なにを考えていたのかも覚えていな
 かった 気が付くとパパがあたしの顔を覗き込んで 少し驚きなが
 ら 聞いていなかった質問を想像して答える
 『ふむ こうして父娘水入らずで食事ってのは珍しいよな と長閑
 に話したいところだが あやみ なにか悩んでいるだろ ふむ』
 『別に 心も体も至って健康ですよ 悩むほど暇じゃないですね』
  パパは中学校の先生だったりするから 女の子同士のママよりも
 たまに指摘が鋭かったりする でもあたしもバカじゃないから 少
 しでも驚いた振りなんか見せずに返事したりする 嫌な性格だ
 『それにですね もし悩んでいたって自分で解決できる年齢です』
 『やっぱり悩み事があるんだな まあいい 話したくないものは無
 理強いしないさ ママだって友達にだって相談すればそれでいい』
  しまったと思った 隠そうとして喋りすぎてバレてしまう パパ
 は唇をゆがめて肩を窄める パパとは不穏な関係に陥りたくないの
 に パパの話し方ではあたしがパパを拒否しているようになる
 『でもな パパだから解決できる問題もあるぞ なんたってあやみ
 のパパだからな 人生の経験値も パワーだって凄いんだがな』
 『うん それは知ってます でもあやみの あたしの問題は自分で
 解決しなきゃいけないと思います そうじゃないとダメです』
 『まあな とにかく食べろ ふむ あやみの意志は強いからな』
  ママは友達の経営する音楽事務所へ 最近はかなり本格的に音楽
 の仕事を再開して それでも仕事にせいやを連れて行ったりできる
 自由な立場らしい パパのパワーは凄いけれどママも凄い人だ
 『それは それはどうかなって思います あたしは凄く悪い心の人
 間ですから だからもっと自分で考えなきゃ 良くならないです』
 『悪い心の人間か なにを考えてるか知らんが そんなに簡単に決
 められる問題じゃ ないと思うぞ 良い部分や悪い部分 だな』
  あたしはもう小学校の4年生で どんなことだって理解できるし
 考えられる なにが悪くてなにが良いことなのか わかっているの
 ならできるはずだ つまりできないあたしは悪い人間なのだ
 『あたしは全部悪い人間です 親切な振りをして笑ったり 言葉だ
 けで人と話したり 本当のあたしは優しくないです だから』
 『だからじゃないだろ そんなのが悪い事なのか 本心と態度が違
 うのは なにもあやみだけじゃないぞ みんなとは言わんがな』
  それだって知っている パパがそんなふうに話すだろうってこと
 もわかっていた それでも他の人は優しさを隠している 心の底の
 底には凄く優しい気持ちが潜んでいて それがあたしを責めるのだ
 『そうじゃないです だって 例えば今のパパはあたしに優しくし
 なくても損をしないのに それでも優しくしてくれますね あたし
 にはその優しさがないのです 心の底から悪い人間です』
  話しながら悲しくなってきた パパの優しさが 嘘の優しさのあ
 たしを責める 世界中のどんな悪い人にも潜んでいる優しさが こ
 のあたしにだけは潜んでいないのだ 死んでしまいたいと少し思う
 『あたしはきっと脳味噌のどこかが足りなくて こんな人間は生き
 ていない方がいいんじゃないかと思います ごめんなさい』
 『バカなことを言うんじゃない ふむ よしよし』
  どんどん涙が流れて落ちる 席を立ったパパがあたしの隣へ パ
 パのお腹に顔を押し付けると もっとどんどん涙が止まらない こ
 んなに情けないことで泣いててはいけないのに 涙は止まらない
 『最後まで全部泣いてしまうのがいいぞ あやみは変に強いからな
 子供は悩みなんか溜めなくてもいい ふむ 泣いたり笑ったりだ』
  パパの理屈は幼稚で簡単で けれども素直に頭の中に入ってくる
 ママとはどんなことでも話せる でもパパには格好悪い姿を見せた
 くないから だからその反動は凄いパワーになる 止まらない涙
 『あやみが悲しいのは それはあやみの優しい気持ちが泣いている
 からだ 悪い人間は泣かない 泣いてるあやみは優しいと思うぞ』
 『ううん 優しいのかな なにか よくわからないです』
  パパのお腹に顔を埋めたまま 凄く気分が楽になってきたのでじ
 っとしている パパのお腹はゆっくりと動いていて さっき食べた
 パスタが移動しているのを想像する こんな感じも悪くない
 『わからなくてもいいだろう 本当を言うとだな 優しい気持ちの
 正体はパパにも謎なんだな 機会があればママにも聞いてみろ』
 『うん でももういいです ママは筋の通らない話は聞いてくれま
 せんから こんな話は パパじゃないとダメだと思います』
  もっと強く押し付けて 臭いを覚えてから座り直す パパはなに
 か曖昧な笑顔で あたしもどんな顔をすればいいのかわからない
 『ふむ あいかわらず変に勢いのあるママだからな あやみは知ら
 ないだろうが 昔からあんな感じだったぞ いいけどな』
 『昔のママですか なんとなく想像できるかな 少しだけ』

  別になにも解決していないけれど 少しだけ気持ちが軽くなった
 感じがする 優しくないことを悩むのは それは本当は優しいから
 だなんて そんなのは聞くまでもなく知っている でも知っている
 のと納得するのは違うから 今のあたしは少し納得しているのだ
  昔のママのこと 昔のパパのこと お爺ちゃんやお婆ちゃん み
 んなおんなじように考えたのだろうか それとも最初から優しくて
 やっぱりあたしだけ脳味噌が足りないのかもしれない






             》 しびる 《
+++++++++++++++++++++++++++++++
(のりこ)>もでらーとです あやみちゃん いきなし哲学ですね
(しびる)>これであやみは4年生か 思考のレベルはまあちょい高
      めで許容範囲だと思うけど 父親との関係はしくじった
      かな 父親の腹のニオイのクダリは5年生だわな
(のりこ)>えー 小学4年生でこれだけ考えますか普通? 少なく
      とも私が小学生だった頃は いまと比べれば昆虫程度の
      感性しかなかったですよ なにが善悪だなんてこと
(しびる)>自分で昆虫とか言うな(苦笑) それはのりこであって
      あやみじゃねーだろうが 自分のアイデンティティとか
      10歳になれば考えるだろ普通? 発達科学的にも
(のりこ)>えー 自分が何者で私ってばなにしてるんだろ?とか始
      めて考えたのって社会人になってからですよ
(しびる)>のりこはダメすぎ てか遅くても中高生の頃までにそゆ
      の考えないか? 宇宙の不思議とか 死後の世界とかさ
      個人によって思考の方向はいろいろだろうけど
(のりこ)>あー そういえば相撲の舞の海関が現役の頃 いまいち
      ばん怖いものはなにかって質問に 真顔で『四次元』と
      か答えてたの覚えてますよ すごく共感しました
(しびる)>そういう特殊な大人の意見はこのさい脇に置いておこう
      よ てかのりこも同じ種類か なんだかなあ
(のりこ)>いつ引き込まれるかわからない謎の四次元ですよ 寝て
      るときかもしれないし 船なんか乗ってたら魔のトライ
      アングルに吸い込まれたり 自然発火現象とかー
(しびる)>カンベンしてくれ もう(とほほ)
posted by 篠原しびる at 01:06| シンガポール ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 連作系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年07月12日

連作18 冠連作04 デュランタ・ライム 7

+++++++++++++++++++++++++++++++
 種別 連作系第18期 冠連作04
 題名 『 デュランタ・ライム 7 』
 初出 ニフティサーブ/FJAMEA/18番会議室
    1996年09月07日01時41分
 注釈 行頭スペース+30W
+++++++++++++++++++++++++++++++
SUBJ:【冠連作】04 デュランタ・ライム 7

 Sibi-Tem V.4.1

 リカちゃんに王位継承権 リカの冠だね 冠連作 #04(A群)
 



        『 デュランタ・ライム 7 』


                        作:しびる





  気が付くと受話器を握っていた どうにも心配な店の様子に そ
 う言えば既に2回も同じ電話を掛けたと苦笑する 頭がグルグルし
 て体が重い 8度程度の発熱で身動きがとれないとは 少し歳かな
 と情けなくなる もしかすれば風邪でなく大病の兆候か
  4時半に娘が帰ってきて空腹を訴える 仕方なしに体を動かせば
 染み付いた柵が勝手に弾み車をまわす 立ち上がって車のキーを探
 そうとした刹那 それまでにない強烈な眩暈 そのまま床に崩れて
 こめかみを押さえる もしかすれば脳内出血かその類
  娘のことや夫のこと 実家に暮らす年老いた両親のこと 様々な
 想念が瞬時に胸を締めつけ 死への恐怖が凝縮されたとき 背後か
 ら娘が興奮した声で叫んだものだ おかあさん 地震だって

 『なに まだ閉めてないの 7時には閉店でしょ 売上と経費のグ
 ラフなんて話しても あああ まだクラクラする』
 『おやまあ女将さん 今日は病欠だって聞いてましたがねえ おう
 みきちゃんも来たか 貸したゲームはクリアしたかのう』
  薄暗い石畳に愛車ボルボを停車して 見れば煌々と明りが点って
 いる 既に午後7時2分 これ以上は有効採算ラインを下回る や
 はり夫に任せきりは間違いの元 バイトの給料は誰が払うのか
 『きみえお姉ちゃん こんにちわ パパなにか晩ご飯 あ 若林の
 おばちゃん こんにちわ パパお腹が空いたから晩ご飯だってば』
 『あららん みきちゃーん お母さんと来たの はいこんにちわ』
 『みえちゃんこそ ブティックの方は閉めちゃったわけ それより
 も地震 てんちょーさん なにも割れたりしてないでしょうね』
  その心配と娘の夕食だ カウンターの端ではアルバイトの総元締
 めが暢気に夕食を食べている まだ客もいるのに その客はあたし
 の古くからの友人で若林みえこ女史 近所でブティックを経営
 『風邪で寝てるんでしょうに お客さんがいるのに閉めろだなんて
 ね それに地震なんてたいして揺れてない みきは宿題をしたか』
 『今日はヘンな宿題だけだもん やんなくても同じだって』
 『かよちゃんの具合はどう 無理しない方がいいわよ ごめんなさ
 いね あたしってば長居しちゃって すぐに帰るから』
  みえこさんは1歳上で商店街婦人会の副会長 夫が不用意に発言
 するから遠回しに嫌味 こんなに怖い人を怒らせれば大変だ すぐ
 に笑ってフォローする 加えて暢気に食事する姿が気に掛かる
 『そんなの気にしないで みえちゃんは特別待遇だもん きみえち
 ゃんは夕食を食べてるわけ ほら みきになにか食べさせてよ』
 『あ 女将さん お先に頂いておりやす デュランタのランチは夜
 に食べてもランチですねえ あはははは みきちゃんも食べるか』
 『うん パパ みきはきみえお姉ちゃんと一緒に食べるよ』
  客がいなければ叱り飛ばすところではあるけれど その辺も計算
 に入れて馬鹿笑いするアルバイト嬢 娘が懐いているのは何故か
 『地震の被害がなければ一安心 こっちでは揺れてないわけ 通り
 一本しか離れてないのに ふう まだ体が怠いわ 変な話ね』
 『お前が風邪を引くなんて変な話 じゃないか 震源が浅かったの
 かもしれない デュランタ直下型地震じゃなくてよかった』
 『ウチの旦那を待たしてもらってるのよ 店まで編集者が来ててね
 どうせ逃げてくるならここだけだから 仕事をすればいいのに』
  あたしが風邪で仕事をしていないことに15%ぐらい話題を絡ま
 せて まったく以て扱いづらい みえこさんの御主人は作家先生で
 ウチの夫と同級生 旦那同士は妙に仲が良くて その延長にいる
 『みのるちゃんはどこに行ったんだろうね 家に帰るような口振り
 だったけれど あ それとこれ みえちゃんがお前にって』
 『なにこれ マイコン制御のホロスコープ ピーナッツでもでてく
 るわけ きみえちゃん みきに野菜も食べさせてね 高そうね』
  夫が唇を歪めながら冊子を手渡す 見ればパンフレットの類 み
 えこさんの表情が一変したところを考えれば きっと彼女にも美味
 しい話なのだろうと推測する 悪いけれど少しの興味も湧かない
 『あはん 高くないわよ 店長さんに説明しておいたから レンタ
 ルにすれば全額経費で処理できるでしょ これからは占術戦術』
 『うまいっ さすが奥さん セールスに長けておられる みきちゃ
 んは御姉様のキャベツを食うべし 明日のためにその1だな』
 『みきは菜食主義だから大丈夫だもん だから明日食べる ああ』
  ぼさぼさのソバージュに怪しい丸眼鏡 たまに白衣を着て商店街
 を歩いていることがある そんなアルバイト嬢のことはとにかくと
 して 確かにみえこさんのセールスは筋金入り どうしたものかと
 その時 自動ドアが開いて人影が現われた 客なら長引くだろうか
 『あ みのるちゃん 奥さんがお待ちかねだよって どうしたの』
 『どうしたもこうしたも 7時過ぎてるんじゃないの ひどい地震
 だったからさ 家が壊れてやしないかって心配になってね』
  現われたのはみえこさんの御主人 なにか線の細い印象の人物で
 数年前に入院していたことがあったと記憶している 文筆業の人は
 感受性が強そうだから あの地震は家が壊れるほど揺れていない
 『双竜社の高橋さんが来てるわよ もう3時間ぐらいになるんじゃ
 ない モメるならどこか他所でやってよ たいして揺れてないわ』
 『みきの家では揺れました ママは地震で転びました どしーん』
 『ターミナルの方じゃ凄かったけどな 事故も起きてたらしいよ』
  全員がカウンターに座って 御近所仲がいいことは歓迎すべきこ
 とではあるけれど こと自営業にとってこの状況が最も危険な兆候
 採算ラインを設定して切れるものは切り捨てる つまり割り切る
 『きみえちゃんは上がってちょうだいね 手当てもなしに拘束しち
 ゃ悪いから てんちょーさん 看板を片してね みきは食べたの』
 『ああ あたしならいいっすよ 帰って寝るだけだし それにター
 ミナルが事故じゃ急いでも無駄 地磁気にやられたかな』
 『リカちゃん人形の首が落ちたって そうそう ここのアルバイト
 の男の子が偶然一緒で あさみちゃんもいたけどね デートかな』

  どうにかまとめて解散に持ち込んで閉店する しかし話題はウチ
 の従業員に広がった これでは長期戦も覚悟しなければならないだ
 ろう アルバイトのきみえは給料を払わずに済むとして みえこさ
 んは見たところアイスコーヒーが一杯 みのるさんに至っては注文
 するかどうかも怪しい感じか なのに煌々と照明は輝き エアコン
 は低く絞っても停止するわけにはいかないだろう
  元凶はなまくら主人 もっと話題を操作して 客の回転率を向上
 させる努力をするべきだ ビジネスは人柄ではなく やはり効率と
 弛まぬ努力 その辺のところを説教したくても 他人さんがいる限
 りは愛想笑いするほか仕方がないのであった なんとも頭が痛い







             》 しびる 《
+++++++++++++++++++++++++++++++
(のりこ)>DL7です これでいちおうの終了だったわけですよね
(しびる)>オリジナル版はこれで終了だな ポシブルさんとこの再
      掲載版ではラストにDL8が1本おまけ
(のりこ)>そっちの方は終連作で紹介できますかね ってゆーのは
      いいんですけど なんですかこのアナグラム系の名前の
      氾濫は? 判別するのにかなり苦労しますよ
(しびる)>アナグラムって 女性キャラの名前か
(のりこ)>アルバイトの彼女は『きみえ』ちゃんで マスターの娘
      さんは『みき』ちゃんで 近所のブティックの奥さんは
      『みえこ』さんですよね なんでまたこんなふうに?
(しびる)>この回は最大で5人が応酬で会話するだろ それも4人
      は女性キャラだし なら きみえとみえこが決定してた
      時点で さらにややこしくしてやろうと思って ふたり
      の間を取ってみきに決めた
(のりこ)>なぜややこしくする必要が?
(しびる)>名前で判別させるのは負けだと思ったし ややこしくて
      も語尾や話題できっちり勝負しなきゃいかんなあとか
(のりこ)>負けも勝ちもないでしょうに 名前も補助的に使ってさ
      らに読みやすくするのが全体的な勝ちだと思いますよ?
(しびる)>いや そゆのは負けだな
(のりこ)>どうでもいいですけどね
posted by 篠原しびる at 02:21| シンガポール ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 連作系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

広告


この広告は60日以上更新がないブログに表示がされております。

以下のいずれかの方法で非表示にすることが可能です。

・記事の投稿、編集をおこなう
・マイブログの【設定】 > 【広告設定】 より、「60日間更新が無い場合」 の 「広告を表示しない」にチェックを入れて保存する。


×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。