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2006年06月29日

連作17 青連作12 もでらーと

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 種別 連作系第17期 青連作12
 題名 『 もでらーと 』
 初出 ニフティサーブ/FJAMEA/18番会議室
    1996年08月09日02時31分
 注釈 行頭スペース+30W
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SUBJ:【青連作】12 もでらーと

 Sibi-Tem V.4.1

 今期連作の基本色は青色に決まりました 青連作 #12(A群)
 



           『 もでらーと 』


                        作:しびる





  全国的に不動産価格が下落しているのに なにがどう間違えたの
 かウチの近所はこの数年で約3倍の上昇 テレビや新聞媒体で紹介
 されたくらいの全国随一 実勢価格はそれ以上のウワサで 原因と
 言えば新軌道本線のメガステーションの建設計画 それに加えて某
 大学の分校誘致 さらには不動産取引規制の部分的解除 数個の円
 がすべて重なった一点が つまりこの近所である理由
  原因がそうなら結果も当然のこと 固定資産税の評価額は常に後
 手後手だからして 勝ち逃げするには早期の転売 8年前にローン
 で買ったマンションを言値で転売 建て売りの一軒家を買って借金
 も返済 まだ手元に現金が残る凄まじい勢いだった
  そして結果の結果 結局のところ我が家は引っ越したわけで 公
 的機間や自然環境に文化施設 申し分のないマイホームは実家から
 距離がある 子供が小学生にもなるのに恥ずかしいけれど あたし
 はこの歳になって両親から独立した気分に浸っていた

 『あはははは ごめんなさいね こら! せいや! 紙に描かなき
 ゃいけないでしょ お姉ちゃんに遊んでもらいなさい もう』
 『せいや君はあやみちゃんの真似っこ小猿だね 言ってもダメじゃ
 ないかな お姉ちゃんの真似じゃないと収まらないのよねえ』
  久し振りの実家 最近始めたアルバイトのついでにアポを取って
 薮入り 旦那は教育委員会の研修会で外泊 子供達を連れてこの家
 を訪れるのも数カ月振りだ 妹にも予定を知らせて合流の大騒ぎ
 『それで お爺ちゃんはどうしたわけ 旦那は置いてきたから逃げ
 ることなんかないのに なにかこう 歳を取ってますます頑固ね』
 『OB会なんて創ってるらしいわ 会長さんや相談役さんを集めて
 ゴルフコンペに出掛けちゃってるのよ はい あやみちゃん』
 『おばあちゃんの趣味からすると そうですね あたしはこれで続
 けるのが正解だと思いますよ ヒントは食べるものです』
  あたしはソファーに寝そべって息子の足を掴んでいた この子は
 人が多いと馬鹿騒ぎする性格だ それに比べて娘のおとなしいこと
 どちらもかわいいけれど 楽に育てるなら娘が良いと考える毎日
 『あやみちゃんは何を描いてるわけ なるほど お絵描きしり取り
 ね お姉ちゃんの話してた絵の才能かあ 芸術家肌よねえ』
 『ふむ ほらほら せいや来るべし それはもうあたしの娘だから
 して 芸術で食べていけるなら老後の心配はないわね ふむふむ』
 『さいかちゃんはきちんと食べてるの 外食ばかりしてちゃダメよ
 毎日お料理の練習もしないと 結婚してからじゃ遅いのよ』
  母は娘の祖母であるが 最近急激にお婆ちゃんらしくなった 緊
 張感の喪失は老化を促進する ならば原因は妹にある 今回の緊急
 ミーティングはその辺りが重要な議題 つまり家族の問題だ
 『ママがその話を切りだすか なるほどねえ それで 彼氏とは話
 がついたわけ 初産は30までがいいと思うわよ 堅くなるから』
 『話って なんかそんな気分じゃなくて 会社が大変なときだから
 結婚なんて正直考えてられないかな ま 黒崎君は乗り気だけど』
 『さいかお姉ちゃんの結婚式には あたしも呼んでくださいね』
 『いくいく せいやもお姉ちゃんと一緒に行くのだ 行くのだ!』
  会議に子供達を連れてきたのは失敗だったか 息子は異常なほど
 の興奮状態 こんなお祭り男 将来が少し心配ではある
 『せいや! テーブルの上に乗っちゃダメだろうに もう あやみ
 せいやを押さえてなさい もう少し歳を食ってたら献血させるのに
 あはははは この子を連れてると謝って暮らさなきゃいけないわ』
 『あなたも同じだったわよ 血は争えないから諦めなさい』
  息子の馬鹿騒ぎなどは些末なことだ それよりも妹の一大事 叔
 父の会社に就職したのはいいが 会社の役員に祭り上げられて 結
 婚もままならないようでは問題である それが話のポイント
 『子供はかわいいから欲しいけれど あたしに子育てなんかできる
 のかな 普通の奥さんも自信がないし どうかなって思う』
 『そんなら仕事を辞めなさい さいかの努力は方向が違うの 人生
 の最終目標は幸せになることでしょ どこが幸せなのよ』
  叔父夫婦は子供がいないから きっとこのまま彼女は社長に就任
 するだろう 企業の代表の責任はあたしにも理解できる おそらく
 この数年 いや数カ月が妹の人生の分岐点 今が決断の時だろう
 『そうね あいかママの言うとおり 機会だから話すけれども 実
 はふじこさんとも話してたのよ 決めちゃいなさい みんながそれ
 を望んでるの 黒崎さんは良い人らしいわね 優しくって』
 『はああ ママやお姉ちゃんみたいにね 子供が大きくなってから
 仕事を再開するなんてのは どうかな あたしには無理かもね』
 『さいかお姉ちゃんの赤ちゃんなら あたしが手伝いに行きますよ
 だから仕事をしていても大丈夫だと思います ねえ ママ』
  娘の発言の根拠は弟のことだろう 我が娘ながら健気なことを言
 うものだと感心する 確かにあたしが音楽の仕事を再開できたのは
 やんちゃな弟の面倒を 娘が見てくれたからって理由もある
 『あやみちゃんは優しいのよね なにか優しくされると あたしっ
 てばどうしてこんな性格だろうって きっとバカなのよ たぶん』
 『叔父さん達に理解があるなら問題ないわね だってまあ入り婿に
 入り嫁で会社も安泰でしょうし 結婚すればいいじゃない ほら』
  状況が揃い 周囲すべてから望まれているのに 変なところで決
 断力に欠ける 幸せに二の足を踏む臆病さ 努力するならこの方向
 だろうに この辺りは昔から少しも変わっていないようだ
 『うん もう少し考えてみる 社長や女将さんとも話をして いち
 ばん良い方法を考えてみるから 今はもう頭が一杯で』
 『それもいいけど ママ その黒崎君をウチに呼ぼう 彼氏の方を
 焚きつけないと決まらないわ セッティングはあたしがするから』
 『そうね それじゃお願い どこかで夕食を食べるカタチでいいと
 思うわ この子達も連れてきて賑やかに ねえ せいや君』
 『たべるたべる せいやもお姉ちゃんと食べるのだ! なああ!』

  それまで押え付けられていた息子が大暴れ おばあちゃんに誘わ
 れたのが嬉しくって仕方ないらしい 鼻息も荒くテーブルに仁王立
 ち こんなのを連れてまともな話ができるものか しかし子供達を
 連れて賑やかなのも効果があるやもしれない
  とにかく妹の結婚話をまとめなければならない この世にふたり
 の姉妹だからして なにがなんでも幸せになってもらう 結婚せず
 してなにが女の幸せか それがあたしの人生の教訓である 子供が
 暴れようが旦那が出張ばかりだろうが ひとりじゃなにも始まらな
 いと思うのであった うんうん







             》 しびる 《
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(のりこ)>もでらーとです てか もでらーとなんですが(笑)
(しびる)>せいや いいよなあ やっぱお祭り男じゃなきゃ
(のりこ)>せいやくんはちょっと興奮しすぎ どこからクールヴィ
      ズに変化しちゃったんでしょうねえ 不思議です
(しびる)>あやみは絵がうまいって設定だったのな 後にはせいや
      を器用貧乏ってカタチにするけど いろいろだなあ
(のりこ)>なにやらしびさんが他人事のように(笑) んでもこの
      3世代が揃うとなかなかにおもしろいですね あいかマ
      マが小さかった頃のことも私達は知ってるわけで そゆ
      のがさらっと触れられてると小気味よいですよね
(しびる)>ってことをわざわざ他人に言われると興醒めだけどな
(のりこ)>またそういうことを言う あと あいかママは結婚が女
      の幸せのすべてだって断言してますけど これはちょい
      極論ですか ある意味の真理だとは思いますけど
(しびる)>『ちょい』の『極論』や『ある意味』の『真理』なんて
      ものは存在せんのだ 表現には気を付けろな
(のりこ)>あーはいはい でもこのあとかなりたいへんなことが起
      きるんですよねえ 人生は簡単にいかないですねえ っ
      てしびさんが決めて進めてるだけですけど
(しびる)>悪いかよ
(のりこ)>悪くないですよ あたりまえじゃないですか
posted by 篠原しびる at 23:57| シンガポール ☁| Comment(2) | TrackBack(0) | 連作系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

連作17 青連作11 群青色の闇に

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 種別 連作系第17期 青連作11
 題名 『 群青色の闇に 』
 初出 ニフティサーブ/FJAMEA/18番会議室
    1996年08月05日01時42分
 注釈 行頭スペース+30W
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SUBJ:【青連作】11 群青色の闇に

 Sibi-Tem V.4.1

 今期連作の基本色は青色に決まりました 青連作 #11(B群)
 



          『 群青色の闇に 』


                        作:しびる





  おそらくは心の病気だと思う 普段はとても落ち着いているのに
 ふとした拍子に心のネガポジが反転する 痛いとか悲しいとか そ
 んなのに関してはなにも感じない 世の中のどんなことだって現象
 に過ぎないことは知っている だからキッカケは因果じゃない
  光と影に支配された夏の校庭や すべてを覆い隠す一面の雪景色
 路地の彼方を横切る猫の後ろ姿 子供の笑い声や雨上がりのアスフ
 ァルト 何気ない瞬間にすべてが裏返る 意味のない絶望感 思考
 が停止し なにを見ても価値が見いだせなくなる
  もしかすればそれが本当の世界で 楽しく誰かと話したり 周囲
 のすべてと調和する感覚は 水面に煌めく虹色の油膜のようなもの
 その下には数千メートルの深海が黒々と横たわり 極限の水圧が迷
 い込んだ塵芥すら押し潰す 対流すら許されない暗黒の世界 それ
 が現象界の真実で あたしは水面を漂う深海魚なのだと思う

 『どうしたの 連絡をくれないからまだ帰ってないのかと おや』
 『なんでもないから 少し 静かにしてて お願い』
  どれくらいの時間だろう 聞き覚えのある声に気が付くと あた
 しは冷蔵庫を背にして座り込んでいた 唇が乾燥して動かせない
 『明かりもつけないでさ なに また全部がダメになったわけ』
  背中から脊髄を経て後頭部へ 上半身が完全に痺れて身動きもと
 れない あたしはずっと目を見開いていたのか すぐには目蓋も閉
 じられなかった 最初に返事をして 続く言葉はなにも浮かばない
 『瞳孔が開いてるよ 仕方ないなあ ベッドに連れてくか』
  感情まで痺れて 聞こえる音節の意味も理解できない 酷い睡魔
 のような泥酔のような 意識しないと呼吸すら困難な状態 このま
 ま放置されていれば おそらくきっと息絶える それがどうしたか
 『ほら ごみ箱を眺めてても解決しないって だいじょーぶ だい
 じょーぶ りかこの思うほど悪い事ばかりじゃないからね』
 『ああああああ さわ 触らないで お願いだから 静かにして』
  呼吸のリズムが思いだせない 息を吸って激しくせき込む 全身
 の皮膚の神経が瞬時に蘇り 自分の衣擦れだけで皮膚が泡立つ ま
 してや他人の接触など それよりも放置して欲しい 息が止まる
 『そうもいかないなあ 本当に頭がキレても知らないよ 無理にで
 も運んじゃってから話をしよう りかこは軽いから楽でいいや』
 『やだ 構わないで 触らないで なにもしないで あああああ』
  簡単に抱えあげられて 水平面の変化に吐き気を催す 関節が軋
 み動くことを拒否している まったくダメなのを無理にこじ開ける
 まるで駄々っ子のように体を捩り シャックリに似た嗚咽を洩らす
 『あんあんあん さわら触らないで やだっ やなのに』
 『はいはい 横になれば落ち着くからね 前触れがないからなあ』
  頭がクラクラして思考がまとまらない 天井や壁が目の前を過り
 そのまま抱えられてリビングの方へ 馴染みの体臭 しかしそれも
 恐怖にも似た嫌悪感 頭の中には小さな無数の光る点や円
 『ほいさっと そのまま横になって落ち着くまで寝てるように そ
 れで会社には行ったわけだろ まさかずっとごみ箱を眺めてたの』
 『あんぐううう なにも なにも考えられない なにも あああ』
 『姿からすれば 出社寸前か帰宅直後か 困ったもんだなあ』
  ベッドに転がされて照明が回転する なにか質問をされているら
 しいが 言葉も頭も定まらずに 再び世界の終わりがやってくる
 『で でてって 全部ダメになって死ぬから 死ぬの』
 『今日は死ぬのかあ 喋ると加速がつくから黙ってる方がいいね』
  死ぬまで生きているだけだ ただ時間を潰しているだけの生命な
 らば すべての幸福の裏打ちは暗黒世界 真っ暗な深海からたまに
 浮かび そしてすぐに沈み込んでゆく 暗黒はドアの向こうに広が
 っている この部屋にも潜んでいる 人々はすべて暗黒世界
 『そうやってだね りかこが魚みたいな目で寝転がっているのを見
 ると ひじょーに愛おしい気持ちになるのが不思議だねえ』
 『聞きたくない聞きたくない みんな死んじゃうから みんな』
  絶望感が悲しみへと変化する 嫌悪感が哀れみへと変化する こ
 の世界すべてはいずれ崩壊し消え去る なのにどうして人々は生き
 てゆくのか 生は無意味で 精神は尚更に意味がない
 『死なないってば それはまあいずれ死ぬだろうけど 生まれてく
 る子供もいるわけだし 悩む類じゃないよね ほらほら』
  聞き覚えのある声が 徐々に誰の声だか判別できるようになって
 いつの間にか抱き締められて涙を流していた あたしは あたしは
 きっと悲しいのだろう なぜ悲しいのか すべては消え去る過程で
 しかないのに 感情には意味がないのに 涙にも意味はないのに
 『みんな楽しそうに 子供だって大人だって すぐに死んでしまう
 のに みんな気味が悪いくらいに楽しそうに どうして』
 『楽しいからじゃないの あんまり死ぬことなんて考えてないしね
 普通は考えないと思うよ りかこだって普段は考えないだろうに』
  考えていないときの自分 気味が悪いくらいに楽しいときの自分
 どうして楽しい気分でいられたのか 周囲には暗い死の世界が広が
 っているのに 底の知れない悲しさ この時間も死への過程だ
 『まあとにかく 泣くのはいい傾向だね 悲しいと思えればすぐに
 醒めるよ あっちの世界に行ったきりじゃ 悲しくないもの』
 『凄く寂しいの みんなは寂しくないのかな もっと強く抱き締め
 てくれないと あたしはすぐに消えてしまうから もっと強く』
  ベッドの上で抱き締められて あたしはどうにかこの世界に固定
 されている 自分の部屋 優しい笑顔 こんなに脆く儚い世界 深
 度数千メートルの極めて上層部 陽の当たる世界に漂う
 『はいはい 言うとおりにしようじゃないの あまり深く考えない
 方がいいね かわいいからいいけれど 危険だからね』
 『うん 気を付けるから もっと強く抱き締めて お願い』

  水面ではなくて 闇に支配された暗黒の深海でもなく あたしの
 周囲には僅か到達する微かな光 どこまでも曖昧な群青色の闇が広
 がっている 浮かび上がらず沈み込まず どちらとも移動せずに強
 く抱き締められる この世界は生か死か 判断できずに漂い続ける
  反転してしまったあたしの心は 意味も理由も見いだせずに お
 そらくなにかのキッカケで再び反転する その繰り返し 心の病気
 だと思えればそれまで しかしどちらが真実の世界なのか






             》 しびる 《
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(のりこ)>なんと言いますかその いろいろたいへんそうですね
(しびる)>あのさ ホントはこの世界はなにかの間違いで こうし
      て光に溢れて人々の思考が秩序を持って維持されてる世
      界ってのはさ すごく希なことで危ういものだとか思わ
      ないか? すべてのほとんどは無の暗黒なのに
(のりこ)>まったく思いません故 こうあるのが普通ですべてです
(しびる)>永遠と思われるくらい広く長く深い暗黒が周囲に拡がる
      のを知ってしまって それでも精神を正常に保っていら
      れるか? 例えばこの部屋の周囲を右手に包丁を持った
      無表情なやつらが幾重にも取り囲んでるのを知って そ
      れでもお前はのんきに昼寝をしてられるのか?
(のりこ)>そんなことないですもん ない話は意味ないです
(しびる)>いますぐに確認できないからって どうしてない話だと
      断言できる? 知ってしまった人間をココロの病だと断
      言できる? 確認できないなら可能性は同じだろ
(のりこ)>だって そんなことないって決まってるじゃないですか
(しびる)>話にならないな
(のりこ)>それはこっちのセリフです
posted by 篠原しびる at 23:54| シンガポール ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 連作系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

連作17 青連作10 プリティキューブ 6

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 種別 連作系第17期 青連作10
 題名 『 プリティキューブ 6 』
 初出 ニフティサーブ/FJAMEA/18番会議室
    1996年07月30日03時00分
 注釈 行頭スペース+30W
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(のりこ)>PQ6です サブタイトルは『初版プレスが5万枚』
(しびる)>このシリーズはパス扱いでヨロシク
(のりこ)>まあいいですけど ちさとちゃんと犬飼くんの確執が佳
      境ですよね これはまあ 後ほどの馴れ合いへの布石と
      いうか こういうチーム構成の基本ですよね
(しびる)>パス扱いなのでコメントしません
(のりこ)>描写にパンツ君を使うのも 平行して私達の連載が続い
      てましたから とてもこなれてて いい感じですね
(しびる)>だからコメントしないって
(のりこ)>それと今回で気付きましたけど この連載ってリアル時
      間軸で進めてたんですね なんともはや
(しびる)>・・・
posted by 篠原しびる at 23:53| シンガポール ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 連作系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

連作17 青連作09 ないとめあ・ないと12

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 種別 連作系第17期 青連作09
 題名 『 ないとめあ・ないと12 』
 初出 ニフティサーブ/FJAMEA/18番会議室
    1996年07月24日19時16分
 注釈 行頭スペース+30W
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SUBJ:【青連作】09 ないとめあ・ないと12

 Sibi-Tem V.4.1

 今期連作の基本色は青色に決まりました 青連作 #09(A群)
 



        『 ないとめあ・ないと12 』


                        作:しびる





  数千数万の稲妻が 暗黒の夜空から地上へと突き刺さる あたし
 の頭上を彼方へと延びた触手が 徐々に降下し始める あまりに巨
 大な触手は しかし本体の規模からすれば毛髪程度 それでも衝撃
 波のみで街を破壊し さらに地上へと接近しつつあった
  都市の中心部分は 天空から出現した異界の生物によって蹂躙さ
 れていた 渦巻く黒雲から半身を露出させ 既に生物の頭部は融解
 しつつあった 稲妻が煌めく反転世界で 爬虫類に似た生物の巨大
 な目玉がビル群を薙ぎ倒す そしてゆっくりと広がる光球 すべて
 を飲み込んで破壊の領域が都市を飲み込んでゆく
  あたしのこの目で とても現実だとは思えない光景を やはり他
 人の意識を覗き込むような違和感 少しの衝撃も体には感じず 素
 早く変化を続ける視点はかなりの上空で もはや数百万の都市は光
 球の中で 違和感の原因はこの静寂だと気が付いた
  静かな とても静かな世界の終焉 光球の中心部に爬虫類の体躯
 が蠢き 遂にはドロリと輪郭を失った あたしの視点は急降下する

 『ななよ 手遅れかもしれないけれど カリン界への孔を閉じてし
 まうわ これだけの胞子を蒔かれれば もう意味はないけれど』
 『ちょ ちょっと待ってよ フィラってば逃げた方がいいんじゃな
 いの あんなところに降りるなんて 死んじゃうってば』
  接近すれば凄まじい惨状 元の形状が判別できないコンクリート
 片が 爆発的速度で飛散している なぜか静寂の中で この現象の
 意味はわからないけれど とにかく危険を肌で感じていた
 『危険は そうね それほど考えなくてもいいわ サンクレストの
 使い魔程度 王族の敵ではないわね 見てなさい』
  まったく当たり前のように あたしの体はフィラによって操られ
 ている 確かに危険は考えなくてもよさそうだ 既に拡大する光球
 の中にいるのに あたしの体には僅かの風も感じない
 『フィラの話は理解できる でもね なんか混乱しちゃって あた
 しが眠ってからどれくらいになるのかな 朝なら起きなきゃ』
 『ははん まだ夢だなんて言いたいのね でもななよの思考は筒抜
 けだから 覚悟しなさい すべて現実で対処すべきこと』
  あたしはパジャマにスタジャンを羽織り 頭にはやはりカエル姫
 が鎮座している 周囲にはオレンジ色の爆風が広がり それも寸是
 のところで進路を変える 夢だろうがなんだろうが 立て続けの状
 況に頭の中が飽和状態 感情のシワが伸びるような気がする
 『どうしてこんなふうにって そんなふうに思うよ ふあああ』
 『まあいいわ ななよは黙って見てなさい 私にはフィランサス帝
 国の王女として やつらを掃討する義務があるの さて行くわよ』
  どうしてフィラは冷静なのか この様子ではフィラの生活は落ち
 着く暇もなさそうだ 延々と続く戦闘や破壊殺戮 どこかで気を抜
 くなんてことは やはりないのだろう 大帝国の姫として
  あたしは気が抜けてしまった 頭の中が麻痺して まったくすべ
 てをフィラのするに任せている 聞こえるのはフィラの声だけ あ
 たしの体はゆっくりと右手を伸ばし 人差指と中指を前方へと向け
 る 左手をそれに添えて その瞬間 周囲は大音響に包まれた
 『わああああああ フィラああああああ 耳がつぶれるうううう』
 『心を乱さないように 結界を解いただけ 中心部に波動を打つわ
 既に2期のコロニーまで作っている 急いで始末しなきゃ』
  そう言い終わらないうちに衝撃 あたしの指の延長に 実体は見
 えないけれど歪みが発生する 延びる先が中心部だろうか それに
 してもの大音響 爆発音と叫び声のようなもの あの生物か 歪み
 はどんどん大きくなり そして目の前に空洞が延びる
 『ロドゲルシアがあればね 波動機間を使えないから 分解しても
 厄介な胞子が残る 召喚の方策を考えるべきね リギダはいるか』
 『はっ 姫姉様の御側に控えておりますわ なんなりと御命令を』
  あたしは振り返って いや実はフィラが振り返って 右側斜め後
 方に黒い染 それが瞬く間にリギダの黒ずくめの姿に変わる あい
 かわらず慇懃無礼な口調 油断すればきっと危ない そんな感じだ
 『ふむ ビデンス中尉は回復しているか サンクレストの転移波動
 を利用する 同期すればランタルシアの召喚も可能であろう』
 『ほう なんたる御明察 フィランサス姫様の御波動力を以てすれ
 ば 最大規模のロドゲルシアをも召喚できましょう ビデンスは未
 だ意識も回復せず おほほほ ヴェーユ族とて不死身では』
  まっすぐに延びた空洞は遂に街の中心部へ 伸ばす右手に不思議
 な手応え なにか突き当たったような感覚 イメージとして距離感
 がそのくらい これはきっとフィラが使用する情報だろう
 『リギダにはビデンス中尉の回復を命ずる 単体への反魂程度なら
 ば王族の傍系にも容易かろう すぐに孔を閉じる 続きは後だ』
 『おほほほほほほ 手遅れやもしれませんとこ では御意に』
  ふたりがなにを話しているのか そんなことはとにかく目の前の
 光景は更に変化する 右手からの歪みが光の玉へと模様を替え す
 ぐさま彼方へと飛び去ってゆく 背後からはリギダの気配が消えて
 そしてあたし達は地上に降り立った 上空へ退避ではないのかな
 『なんかあまり悲しくないのが不思議だけど みんな死んじゃった
 のかな あたしってば本当は 凄く冷たい人間だったみたい』
 『その発言は ななよ 夢じゃないって認めている事になるわね』
  爆風はさっきの攻撃から徐々に収まり 地上に降り立つ頃には沈
 静化していた 妙に青みを増す夜空 街の中心部方向からはオレン
 ジ色の光が降り注いでいる 地面にはコンクリート片と青色の粘液
 空が青いのか地表を覆う粘液が青いのか どちらにも見える
 『もう よくわからなくなってきたかな だってほら こんな風景
 を現実だって思えるわけないでしょ こんなの まったく』
 『どの世界を現実だと思うか それが問題ね 私は7界すべてを現
 実として把握しているわ ななよには理解できないでしょうけど』

  再び体の自由が戻ってきた フィラはカエル姫に収まって頭の上
 この期に及んでなにが現実だろうか 巧妙に構築された夢ならばこ
 そ 設定の詳細が不気味なくらいに現実味を帯びることもあるやも
 しれない しかし大きな設定はどうだ その辺りの視点の移動
  恐怖か悲しみか 欲望か焦燥感か 状況の大前提が定まらずに絶
 えず変化する 誰かの画策した現実であっても もしや未だに夢の
 中であったとしても 光景に意味が見いだせないので混乱する あ
 たしはその事にようやく気が付いた あたしの思考に唯一欠如して
 いたもの 簡単な疑問である なぜどうしてか それが問題







             》 しびる 《
+++++++++++++++++++++++++++++++
(のりこ)>ないない12です 大都市がすごいことになってます
(しびる)>こういうのを描写するときって精神速度がかなり加速し
      てるから なかなか描写をそれに併せるのがタイヘンだ
      ったりするのな 勢い乗ると筆が滑るから
(のりこ)>ものすごい勢いで仕上げてらっしゃるときってあります
      よね 読むより早いんじゃないかってくらいの
(しびる)>ふむ そんな勢いで仕上げるとほら 以前にやった『斬
      奸』みたいにさ 単位とか増やしすぎちゃってえらいこ
      とになるのな でも抑えると勢いを殺すし
(のりこ)>勢いで仕上げて あとで推敲すればいいのに?
(しびる)>仕上げたら寝なきゃ せっかく仕上げたんだもん
(のりこ)>はあまあ えーっと あと フィラちゃんはこの話です
      んごいエネルギーでものすごいことをやってるじゃない
      ですか 都市規模の怪獣を退治したり なのにこのちょ
      っと前には人体サイズレベルの目玉のオバケに苦労して
      たじゃないですか? 整合性がおかしいですよ
(しびる)>えーっとさ 今回の爬虫類型のなには波動の規模では前
      出の目玉より低いのな あっちの基準では質量はそれほ
      ど意味がないってこと 逆に濃縮してる方が強敵だな
(のりこ)>なあるほど だから質量本位のカリン界は簡単に蹂躙さ
      れちゃって なのにフィラちゃんは簡単に退治すると
(しびる)>世界によってものごとの本質が違う それがこの7界の
      設定の基本になってる そこんとこも念頭に置けよな
(のりこ)>今頃そんなことを言われましても
posted by 篠原しびる at 23:51| シンガポール ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 連作系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

連作17 青連作08 やまいこうこう

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 種別 連作系第17期 青連作08
 題名 『 やまいこうこう 』
 初出 ニフティサーブ/FJAMEA/18番会議室
    1996年07月22日00時02分
 注釈 行頭スペース+30W
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SUBJ:【青連作】08 やまいこうこう

 Sibi-Tem V.4.1

 今期連作の基本色は青色に決まりました 青連作 #08(B群)
 



         『 やまいこうこう 』


                        作:しびる





  胸がキュンとするなんて 歌謡曲かマンガの台詞 君に胸キュン
 だなんて幼稚な文句 大人が使う言葉じゃないだろう 大人はもっ
 と論理的で 感情すらも言葉で表現するものだ 判別できない衝動
 が あたしの胸に沸き上がる 大人の台詞はこうでなければね
  それがどうだろう 説明できる言葉は知っている 瞬間の感情は
 かわいいと欲しいと食べたいが極限まで煮詰まって あと微量の殺
 意 分析するのは比較的簡単だけど そんなのじゃなくて キュン
 としたのだ 狭心症の発作かと思うくらい 音を立てて この感覚
 を普通は一言で表現する 切ない どうして切るって漢字を使うの
 か 切るからか切れないからか それとも切らないからか

 『あっ くっ苦しい 高橋君 あたし死んじゃいそう もうダメ』
 『ああん どうしたの いきなりそんな重い話をされてもなあ』
  ふたりで食事をしていた 高橋君は会社の同僚で 中背中肉の世
 間並みの男性だ 歳は同じで中ぐらいにユニーク 毎日のように夕
 食を一緒に食べるけれど 別に正式に交際しているわけではない
 『苦しいわりにはニヤニヤしてるじゃない 伝染る病気ならイヤだ
 なあ 店員に電話させようか もしかして持病なの』
 『むうん 今ね 高橋君を見てると胸がキュンとしたの そのぽち
 ゃぽちゃした頬と耳を見ながら なにかこう胸が締めつけられて』
  まだ心臓がドキドキしている すべて正直な話だ 不器用にホー
 クを操りパスタを食べ続ける高橋君 その姿を見ていた瞬間 あた
 しの胸の中に発作にも似た衝撃が走った この感覚はまったく
 『なにそれ バカにしてるなら少し怒るよ 多くは怒らないけどね
 水城さんの暴言は今に始まったことじゃないし まったくさあ』
 『高橋君ってば いつものは暴言じゃなくて助言 誤解してるな』
  どんどん気分が良くなってくる この嬉しいような楽しいような
 気分はどうしたことか 普段は高橋君の失敗や鈍いところをネタに
 食事をしているのに 今は高橋君といるだけで気分が高揚する
 『もういいよ なにか知らないけど どうせ難癖を付けて最後には
 バカにするんだからなあ 慣れちゃったから構わないけどね』
  高橋君はぶっきらぼうにつぶやき 上目使いにあたしを見つめる
 その瞬間だ さっきと同じキュンが胸を襲う たまらなくてコブシ
 をあてがい ようやくあたしは自分の気持ちに気付いた
 『かわいい 食べちゃいたいくらいに高橋君がかわいいの 今まで
 こんな気持ちになったことないのに あたしってば どうして』
 『はあ なんか急な告白だなあ そのために誘ったわけ』
  気付いてしまえば展開が早い 別に嫌いだったわけじゃなかった
 けれど この感情はついさっきまでとは明らかに異質 確かに高橋
 君を誘ったのはあたし しかしそれは友人の延長の日常作業
 『そうじゃないってば そのむにむにの顔を頭ごと抱き締めて 窒
 息させて殺してしまいたいような 違うの 殺害計画じゃなくて』
 『殺害計画 どうして殺されなきゃいけないわけ 落ち着いてゆっ
 くりと話すのがいいね なにが楽しいのかなあ あ どうも』
  愛らしくってかわいらしくって そして今度は格好良く見えてく
 る パスタを食べ終えて運ばれてきたコーヒー 店員に会釈する高
 橋君は さりげなくて思慮深くて 思い込みだって事は冷静なあた
 しにはわかっているのに 流されたいような 白けたいような
 『うん ごめんなさい えへへ 急に照れちゃうじゃない』
 『やっぱり病気かな 水城さんのそんな表情は見たことがないもの
 いつもそんなふうにしてれば もっとかわいいのにね』
  かわいいと言われて心臓がドキドキする 別にキッカケなんかな
 かったのに ふとした仕草に突然 今までの人生すべてがこの気持
 ちのための助走だったような そして急に悲しくなる 涙を流す
 『ううん あたしってばかわいくないから ぐすん どうしてこん
 な性格なんだろうって あああああん 凄くイヤだなあ』
 『あっと 悪いけれどタバコ吸うね 水城さんはかわいいと思うよ
 性格は悪いよねえ でも根は悪人じゃないとは思うんだよね』
  どんな言葉もいい方向へ解釈できる 醒めた自分が遠くで笑って
 いるのに 高橋君へ傾く気持ちに流されてしまう 体全体がムズム
 ズするような衝動 限りなく性欲に近い欲求 もう我慢できない
 『たまにかわいらしく笑ったりねえ そもそもが美人なんだからさ
 あまり人の悪口ばかり言わないで 水城さんは あ どうしたの』
 『なにかねえ ダメなの 高橋君の隣りじゃなきゃ いいでしょ』
  向かい合って座っていたけれど 我慢できなくなって隣りに座る
 席を替えるのに許可もなにもなくて 座った途端に高橋君の頬に手
 を延ばす そしてついでに頬を伸ばす 軟らかいこの感触
 『はにふるほ ひたひらにゃい ひゃめへって があ 水城さん』
 『なんて愛苦しいのかしら こんなのを今まで放置してたなんてね
 高橋君 今日から いや今から高橋君はあたしのモノね 他の女に
 奪られないように唾をつけておこう んんんんっ』
  とぼけた表情に優しい瞳 少し困ったように見えるのが それが
 またいい 慌てて宣言して唇を奪う 他の客が見てようが構うもの
 か 高橋君はあたしの独占するところで あたしのモノだ
 『んんんって 水城さんは勝手なことばかり言って 僕の気持ちな
 んて考えてないでしょ 悪い冗談だよね もういいけれど』
 『冗談じゃないってば あたしってば今すぐ入籍して 高橋君の子
 供を産んでもいいような気分なのに 高橋君の気持ちって あ』
 『そういうこと 今更気付くのは鈍いと思うよ はあああ』

  狭心症の発作のように 突如襲った胸キュン状態 それまで少し
 の兆候もなかったのに 日常を一気に崩す巨大な力か どんなにて
 れてれ暮らしていても ある日突然に症状が現れる
  他の同僚の悪口を言ったり 馬鹿な冗談で馬鹿笑いしたり 少し
 気分が浮かないときにぼんやりしたり 自覚症状は存在していたの
 かもしれない まるで当然のように日常の中の彼の姿 こんなのに
 気を付けろと言われても 無理な話じゃないかと思う






             》 しびる 《
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(のりこ)>うひゃあ(笑) これはまたベリースゥイートなお話で
(しびる)>たまにこういうのを描きたくなる衝動はどこからくるん
      だろうなあ ならせっかくだし思いっきりリビドーな展
      開もおもしろいかなと てな感じの企画だったと思う
(のりこ)>こういうのっていきなしくるんですかね いままでネコ
      の着ぐるみを着たガミガミ上司だと思ってたのがいきな
      しかわいく見えたり? 愛らしく思ったり?
(しびる)>ちっとも役にたたねえどんくさくて頭の悪い部下だと思
      ってたのがいきなしキュートでプリティなガールに思え
      たり? 守ってやらなきゃと母性本能を発揮したり?
(のりこ)>あー この展開で応酬するのはちょっと・・・
(しびる)>ダメだなあ こういうときに日頃の鬱憤を発散しておか
      ないと 上司だって遠慮してちゃいかんなあ
(のりこ)>でもこのあとすごい怒られるでしょ?
(しびる)>決まってるじゃん(きっぱし)
posted by 篠原しびる at 23:50| シンガポール ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 連作系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

連作17 青連作07 デュランタ・ライム 5

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 種別 連作系第17期 青連作07
 題名 『 デュランタ・ライム 5 』
 初出 ニフティサーブ/FJAMEA/18番会議室
    1996年07月17日14時21分
 注釈 行頭スペース+30W
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SUBJ:【青連作】07 デュランタ・ライム 5

 Sibi-Tem V.4.1

 今期連作の基本色は青色に決まりました 青連作 #07(A群)
 



        『 デュランタ・ライム 5 』


                        作:しびる





  新軌道本線が全延線をR2規格に敷き替えたのが4年前 あたし
 が大学の一回生になった年である あれから4年 学士過程を終了
 して修士に進み この夏には23歳 卒業すれば20代半ば
  コストと騒音は軽減されたが 通学の足は不意の太陽黒点にダイ
 ヤを狂わせる 第2リニアシステムは電磁波攻撃に脆い 少しの知
 識があれば大規模なテロリズムも可能 あたしなら鞄の中身だけで
 数日の列車を混乱させられる自信がある でもやらない だっても
 う大人だから 無駄なことは実行しても無駄だ まこと常識
  そんな知識ばかり煮詰める学部の専門学科 将来のビジョンが怪
 しくなる毎日に それでもどうにか実社会との接点 研究室で時間
 を潰し このアーケードを歩くのも既に3年余り 天蓋の終わりか
 ら石畳が始まり 目的地は鬱蒼と繁る植物の領域か

 『ういーっす 暑いねまったく 店長の情報はぜーんぶでたらめ』
 『あ おはようございます 今日は早いんですね きみえさん』
  ゼミの教授の個室で昼食を食べ ひと眠りする予定がそうもいか
 ず 中途半端な睡魔が残留する疲労感 それを更に肥大させるのは
 店長との対面だ 無駄な散財ほど怠いものはない
 『なに きみえちゃんは4枠流しに絞ったの 保険を掛けなきゃい
 けないよ それにしても早いね お昼は食べたのかい』
 『流すもなにも 4の2で3番人気 3日分の食費を突っ込んでど
 うしてくれんの あら 今日は女将さんは来てないわけ』
 『はい 今日は具合がお悪いそうです なにか飲みます』
  3時10分前 喫茶デュランタのカウンター席に突っ伏す 店長
 はスポーツ新聞を降り立たんで眺めている 他には誰も客はいなく
 て 明るく元気なのはアルバイトのあさみちゃんだけか
 『ふむ 今日のあさみちゃんは なにか雰囲気が違うな まあいい
 グレープフルーツジュースを貰おう ガムシロップ抜きで』
 『ババアが病気で女の子に囲まれた職場 さすがにきみえちゃんだ
 ねえ あまり勘がいいと幸せに暮らせないよ あははははは』
 『店長さんっ 変なことを言わないでくださいよ イヤですっ』
  店長が握っている秘密はあさみちゃんに対して真 ならば店長を
 尋問するのが常套手段 午後の気怠い空気に あさみちゃんをネタ
 にだらけるのも良かろう とにかくまだ10分あるわけだ
 『女将さんは病欠か 珍しいこともあるもんだなあ それはそうと
 店長さあ 直感で思いだしたけど 昨日仕入れたいいネタがある』
 『なにそれ きみえちゃんの情報なら買うよ よく当たるからね』
  あさみちゃんが運んできたグラスを眺める 消えてなくなった食
 費を浮かすには ここはひとつ短時間で高収入のネタの売買 こん
 なときのために普段からの情報収集には余念がない 生活の方便
 『パーラーマーキュリーのデータ君 ウチの学生が解読した極秘パ
 スワードが1本でどうかな あと7区のバカラバーの入場券も入手
 している こっちは1本半になるけど 誰か行かないかな』
 『極秘パスワードの方は買おうじゃない でも1本は高いなあ 7
 なら即金で払うよ バカラの方は誰かに当たってみよう』
  マーキュリーは大学の近所のパチンコ屋だ あたしの愛弟子に解
 析をさせていたのは 出玉情報端末データ君のメンテナンス用コマ
 ンド これを使えば当日の出玉だけでなく 経営者サイドでの絞り
 率まで公開できる 解析に4週間 7千では少し安いだろう
 『ふむ なら夕食込みの85で手を打とう これがメンテ用に改竄
 した会員カード 3日間しか使えないから その辺は気を付けて』
 『いつも悪いねえ バカラはアベちゃんが欲しがると思うよ 昼前
 に来てたのに 明日話しておこう アベちゃんなら2本で売れる』
  懐からカードを取りだし 右手の人差指と中指で挟み込んで投げ
 飛ばす 店長は左手で受け取りシゲシゲ眺める 本当は無期限使用
 にも改竄できるが 違法であるのと商売の関係上のリミッターだ
 『ふうん 不動産なんて青色吐息だろうにねえ 収入に合わせて暮
 らしを制御できなきゃ キツイんじゃないかなあ 構わないけど』
 『アベちゃんのところは妙な勢いがあるからね 悪い事でもしてる
 んじゃないの きみえちゃんが絡んでたりして 犯罪はダメだよ』
  失礼な話だ あたしは寸でのところで合法的な活動をやっている
 のに 偽造カードだって本来ならば客に公開すべきものだし 内部
 で悪い事をしてる場所に入場するチケットだって それだけならば
 違法でもなんでもない と思っていたところで公衆電話がなる
 『はい 喫茶デュランタです あ おはようございます お体の具
 合は ええ おられますが はい 替わりましょうか はい』
 『なに 俺に電話 ばばあからか おとなしく寝てればいいのに』
 『あさみちゃんの表情が違うな あれだろう 男でもできたか』
  店長はカウンターを回り込んで公衆電話に応対 女将さんは何故
 か公衆電話に掛けてくる そんなことはとにかく この隙に直接尋
 問をしようじゃないか あたしの直感はまず外れない はずだ
 『やだなあ きみえさんには隠せませんもん 今日はですね 梅原
 さんに夕食を奢ってもらうんです デートかどうかは怪しいです』
 『梅原 あいつおとなしそうな顔をして ふうん あさみちゃんに
 手を付けるか まあしかし そんなに悪い男でもないからなあ』
  梅原はここのアルバイトだ どんな暮らしをしているのか知らな
 いが 妙に早朝から仕事をしている変な男だ 早朝組は男がふたり
 で交代勤務 あいつらの血圧や血糖値は早朝から高いのだろう
 『まあいいか あさみちゃんは独り暮らしだからな 変なヒモがつ
 くよりはいいかもしれん それはそうと 家に電話してるかい』
 『昨日しました お母さんは風邪をひいたって 少し心配です』
  あさみちゃんは高校中退でアルバイト店員 そのまま通学してい
 れば 今年はもしかすれば女子大生になっていたか なにか家庭で
 もめたらしいけれど それ以上の詮索は意味がなく 問題はすべて
 今の暮らしと将来についてだ なかなかシッカリした若者である
 『ふむ 帰れとは言わないけど 顔ぐらい見せるのも孝行だな』
 『はい この頃なんとなく そんなふうに考えるようになってきま
 した あたしってば頭が悪くって そんなのも遅いんです』
 『ばばあ夜には来るってさ おや3時 あさみちゃん もう上がっ
 てくれればいいからね このあとデートでしょうに いいよねえ』
  店長は頭を掻きながら悪態を吐くが それなりに仲の良い夫婦で
 あることは誰もが知っている 3時と言えばあさみちゃんの仕事も
 終わりだ 店長はそんなに深くは知らないらしい
 『ふううん あさみちゃんもご苦労さんだな 楽しむがよろしか』
 『きみえちゃんもそろそろ着替えてよ 3時からは仕事の時間だか
 らね さてと アイスコーヒーを仕込んでおくとするか』

  3時から7時までの4時間労働 ここでのアルバイトも3年と少
 し 気が付けばいちばんの古株になってしまっていた 生活費の捻
 出もあるが どうやら暇潰しの意味合いが大きい感じか
  空調機の効いた店内で雑談 こんなので給料を貰えるのだから楽
 なものだ 3時になれば近所の暇なオヤジたちが集まってくる そ
 んなのを相手に馬鹿笑いに馬鹿話 まこと結構な仕事である







             》 しびる 《
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(のりこ)>DL5です ふうちゃん改めきみえちゃん登場です
(しびる)>たしかにふうこキャラだよなあ こういう達観したふう
      なキャラは使い勝手がよくてさ 最近じゃムリして使わ
      ないようにしてるけど この当時は節操がないよな
(のりこ)>ふうちゃんがでてくるとデタラメになりますからねえ
(しびる)>簡単に言うとそゆこった メタ科学にメタセリフ 何様
      だお前は?って思うよな ふうこは永久追放で正解
(のりこ)>ですよねえ ふうちゃんはどうせどこかで はっ!?
(しびる)>いやいや なにがなんでも登場させる気はねーから
(のりこ)>ですよねえ 危うくパンドラの箱を開けちゃったのかと
      思いましたよ いや 地獄のカマのフタですか(苦笑)
(しびる)>自分は魔王だとか公言してるからな あのバカ
(のりこ)>もうこれくらいにしておきましょう
(しびる)>だわな
posted by 篠原しびる at 23:48| シンガポール ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 連作系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

連作17 青連作06 りりしずむで

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 種別 連作系第17期 青連作06
 題名 『 りりしずむで 』
 初出 ニフティサーブ/FJAMEA/18番会議室
    1996年07月13日01時54分
 注釈 行頭スペース+30W
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SUBJ:【青連作】06 りりしずむで

 Sibi-Tem V.4.1

 今期連作の基本色は青色に決まりました 青連作 #06(B群)
 



          『 りりしずむで 』


                        作:しびる





  昔からの知人で 異性だけども恋愛感情はなくて まあどうして
 もってなら関係を持たなくはないけれど 今のところ予定も計画も
 ないから 悩みを共感できない異性であるが故に 友人とも呼べな
 い妙な関係 30を手前にして気が付くと 何故かこんな異性の知
 人ばかりで構築された交友関係 事の良し悪しは別問題で
  とにかく食事するのも酒を飲むのも 遊びにいくのだって女の子
 と一緒が楽しいだろう 性的な衝動を除外して考えるならば ファ
 ンシーな部分以外の波長が男よりは好ましい 疲れているのかもし
 れないし 昔と比べれば歳も取ったかもしれない

 『それがさ 先週の金曜日 高校のときのクラス会だったわけ 非
 常にまめなクラス会でねえ 年に2回は開催される』
 『冠だけで ただの飲み会じゃないの これ 今月回収した分ね』
  殺伐とした居酒屋 洒落た場所じゃなくて こんなヤサグレた雰
 囲気が好ましい 目の前にはビール瓶と得体の知れない焼き魚
 『担任は毎回来るんだな 今は教師じゃないけど 出席者は元同級
 生だけだし体裁はクラス会だろ 女の子も来る奇特さが感涙もの』
 『仲が良いのね たまにあるのよ 波長の合う集団が あたしの取
 り分は3割5分で 残りは16万2千500 これが決算書ね』
  前の席に座るのは古くからの友人 今回の位置付けとしては仕事
 仲間 仕事の内容は人身売買 とは言っても法に触れるわけじゃな
 し パック旅行とねるとんとテレクラを合わせたようなもの
 『諸経費差っ引いて16万余りかあ あまり美味しい仕事じゃない
 なあ でさ いつも御決まりの馬鹿騒ぎ これが相当なものでね』
 『飲んで騒ぐ歳じゃないでしょうに これ以上は無理ね ウチの旅
 行社を通してるのよ 半分は頂かなきゃ割りが合わないわ』
  札束を目で数えてポケットに突っ込む 座っているのも面倒な気
 分 本当は金なんかどちらでもよくて なにかをしていなくては気
 が狂いそうな焦燥感のみ すべては空虚でなにもない
 『親のスネをかじる奴に騒ぐ資格はないよなあ 自分の金の使い途
 だもん そんなのはよくて あるじゃない サイモン的な同窓会』
 『はあ 女の子と仲良くなったの 他所では無気力じゃないのね』
  テーブルに頬を付けて世界は横転する そのままタバコに火を点
 けて 彼女の方を眺めてみる 首の筋が切れそうな無理な姿勢
 『えへへへへ あの頃はこんなふうに話せなかったね なんてさあ
 この顔で台詞を吐くわけだ 中の下くらいの女の子相手にね』
 『ちょっと待ちなさい この皿がカラでしょ 店員ならすぐに片し
 なさい アンタなんて名前なの 吉岡さんね 覚えたわよ』
  通りすがりの女子店員の背中を掴む 店員を脅かしてどんな得が
 あるのか知らないが 構うと煩いので黙って聞いていた 美人が凄
 むと迫力がある 店員吉岡君は10代後半かそれくらい
 『よおし ここに座りなさい 店員のくせに茶髪でうろうろしちゃ
 って あたしが働く女性の心構えを教えてあげようじゃないの』
 『放してください 困ります 仕事がありますから やめて』
 『いい臭いだなあ この香りはぷれじゃーず・おーで・ぱひゅーむ
 安いくせに好きなんだよなあ 女子高生らしくって ふんがあ』
  話しながら飽きてしまった 店員をからかっても仕方がない そ
 れは彼女も同じだったらしく すぐに店員は解放された もう二度
 とこの席に接近することはないだろう どちらでもいいが
 『それがさ 調子よく話に乗ってくるからね 脈があるのかなあっ
 て思ってたらば どんどん話が臭くなる 困ったもんだねえ』
 『ふうん 宗教かマルチか英会話か保険ね どうせ独り暮らしの真
 面目な女の子でしょ やだっ それってあたしのことじゃないの』
 『はははははあああってね 真面目じゃないでしょうに えーっと
 2番目の奴かな マルチもマルチ それはもうどマルチな話』
  その夜の記憶が脳裏に蘇る しかしそれもすぐに文章へと変換さ
 れ 必要な項目だけが箇条書き 物事をイメージとしてストックで
 きない そうしなければ必要な記憶も消えてしまう
 『どマルチって 商品を購入して返品して会員を紹介して利益が連
 鎖反応で大爆発だあ な感じじゃないわけ ねずみ講とか』
 『そうそう 極初期の奴ね ピラミッドを作ってすぐに破綻する類
 の 小学生が考えても論理の矛盾を指摘できるような 会員系ね』
  過去に関係したことがないわけじゃないから 話題すべてが無責
 任で塗り潰される 世の中には2種類の人間しか存在せず 特にこ
 れに関しては個人の責任 泣くも笑うも個人の勝手だ
 『馬鹿な学生が始めるのよね 最初の数人は車が買えるじゃない』
 『法人で営業してる人間を知ってるよ それがさ 彼女の話しを聞
 けばそこの会員なわけだ 失笑とはこれいかに いやいや』
  座り直してビールを飲む 急に姿勢を戻して軽い貧血 近頃どう
 にも血液が足りない 飲めば忘れるの繰り返し 長生きは無理だ
 『波長が合うのよ 同じ臭いがしたんじゃないの それで 加入す
 るって口実で関係を迫ったとか まったく鬼畜よねえ どうなの』
 『うん それがさ 聞いてれば楽しそうに話すわけ このシステム
 がどんなに素晴らしくって画期的かって そうだな1時間ぐらい』
 『あはははは やりたいパワーは凄いじゃない 馬鹿話を1時間も
 我慢したのね あたしなら5分で殴り倒してるわ びしっばきっ』
  楽しそうに笑う彼女の表情も興味深いが いま話しているのはそ
 の事じゃない 再び無気力が襲って姿勢を崩す 首を後ろに倒して
 天井を眺める なにか煤けて不潔な天井である
 『そうじゃない 少し感心したわけ 目的は間違っていても 人間
 は理想を持って努力するべきなんだなあって 偉いもんだ』
 『お安い感心ねえ 偉いと思うなら一緒にやればいいじゃないの』
 『それとこれは別だろうに バカの仲間は あはは 嫌だなあ』

  肩が凝っていたのに気付いた この姿勢はツボを刺激して気持ち
 が良い イスの背のところの突起が抜群の配置だ 更なるツボを探
 して背中を移動させる 背中も首筋も凝りが酷いのだ
  彼女はタバコを挟んだ手でグラスを握る 店内のどこかを睨んで
 ビールを煽り もう既に違うことを考えている様子だ ふたりで飲
 んでいてもこんな感じ 永い付合いだからどうでもいい
  この怠惰な雰囲気は至福の時間 誰と飲んでいても同じようにな
 るのだから つまり飲んでいれば至福の時間 人生の醍醐味だとは
 思わないが 生きてゆくならこんな調子でいいだろう






             》 しびる 《
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(のりこ)>飲み会シリーズですね 特にシリーズじゃないですけど
(しびる)>飲み屋に男女を置いて特にテーマも決めずにだらだら会
      話させるだけ なにも考えてないよなあ んー
(のりこ)>どこにも入れられなかった小ネタの消化とか
(しびる)>それが正解かねえ 店員をつかまえて恐喝するシーンと
      か好きな表現もあるんだが まあいいや 次いこ
(のりこ)>吉岡さんね 名前覚えたわよ あはは
posted by 篠原しびる at 23:46| シンガポール ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 連作系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年06月27日

編集会議 112

(しびる)>ういーっす なにかあるか?
(のりこ)>あ おはようございます なにかって きょうは来所予
      定ってことでしたので いろいろ準備してたのですが
(しびる)>そりゃ悪いな 名刺が切れてたんで作ってたのな
(のりこ)>名刺なんて自分で作るんですか? 業者さんに発注した
      方が仕上がりもキレイで結局は安いですよ
(しびる)>普段はそうしてるんだけど 急に必要になったのと ち
      ょい毛色の違ったところに撒かなきゃいけなくなったん
      でな 専用の用紙を買ってきてプリンターで仕上げた
(のりこ)>専用の用紙ってミシン目の入ってる? あれってエッジ
      が気持ちよくないですよね 専用ソフトを使うとラクで
      すけど やっぱ写真とか入れるんですか?
(しびる)>いや剥がすタイプのな ミシン目がないからエッジは問
      題ない 専用ソフトを落としたはいいんだけど クラッ
      シック環境のみでUSB接続じゃダメなのな 仕方ねー
      から寸法あわせてちまちま作業 で時間が掛かった
(のりこ)>なるほど そりゃまお疲れさまです なんか食べます?
(しびる)>いや あしたも早いってか もう2時間ほどで起床時間
      なんだけど ちょっとでも寝るわ なにもないか?
(のりこ)>なにもって なにもないですよ あーそういえばさっき
      考えてたんですけど『ミイラ取りがミイラになる』って
      ことわざがあるじゃないですか
(しびる)>なんだそりゃ それがどうした
(のりこ)>相手側に取り込まれちゃうとかって意味で使いますけど
      故事成語の基本なことわざ業界にしちゃ なんともハイ
      カラな表現じゃないですか? ミイラですよ
(しびる)>まあな ミイラと聞けば古代エジプトなんかを連想する
      な それがハイカラと表現するに相応しいかどうか
(のりこ)>ほとんどは古代中国のなんとやらってのが基本でしょ?
      それがなんでまたミイラなんでしょ 例えば『即神仏取
      りが即神仏になる』とか あると思うんですよ
(しびる)>んー ミイラってのは実は死体を乾燥させたミイラじゃ
      なくて もっと違うものの名前なんじゃないか
(のりこ)>ミイラはミイラでしょ そもそも何語なんでしょ?
(しびる)>変換すると『木乃伊』なんて漢字もでてくるな
(のりこ)>花の名前かなにかでしょうか むう それとも見ると石
      になっちゃうゴーゴンみたいな妖怪とか?
(しびる)>そんなところじゃねーのか ふわああ もういいだろ
(のりこ)>あーすみません お忙しいのつまんないことに付き合わ
      せちゃって すぐに帰って寝てください
(しびる)>ホントつまんないな そんなにヒマなら仕事でもしろ
(のりこ)>それはまた前向きに んじゃお疲れさまです
(しびる)>なんだかなあ まあいいや んじゃまたあしたな
(のりこ)>ういっす
posted by 篠原しびる at 03:22| シンガポール ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 編集会議 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年06月23日

連作17 青連作05 ひじちょうもく

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 種別 連作系第17期 青連作05
 題名 『 ひじちょうもく 』
 初出 ニフティサーブ/FJAMEA/18番会議室
    1996年07月10日11時42分
 注釈 行頭スペース+30W
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SUBJ:【青連作】05 ひじちょうもく

 Sibi-Tem V.4.1

 今期連作の基本色は青色に決まりました 青連作 #05(A群)
 



          『 ひじちょうもく 』


                        作:しびる





  変な宿題 普通の宿題は内容が決まっている 算数の宿題なら計
 算ノートに練習問題の答えを書きなさいとか 漢字ノートに漢字の
 書き取りを2ページ書きなさいとか 社会の白地図に山脈の名前と
 色を塗りなさいとか 普通はやることが決まっている
  でも変な宿題 あたし達のクラスの斉藤先生が変だから 宿題も
 変なのだと思う それはみんなが言っているし あたしも言わない
 けれどそうだと思う 大切なのは悪い先生と変な先生の区別 斉藤
 先生は変な先生だけど悪い先生じゃない 悪い先生は生徒の人の話
 を聞いてくれなかったり すぐに怒ったり 家庭訪問で悪い事ばか
 り言う先生だ その事については斉藤先生はOKだと思う
  だから変な宿題 だいたい宿題ノートからして変だ みんなのノ
 ートぜんぶに先生の手書きの文字 あたしの宿題ノートにも書いて
 ある 葉っぱ模様の四角の中に書いてあるのは 変な宿題 そのま
 まじゃないかと思う みんなもそんなふうに言っていた

 『きいいやあああああ あやみねちゃ あやみねちゃも遊ぶのだ』
 『なに せいや君はひとりで遊びなさい お姉ちゃんは宿題がある
 からね ほいさ ママが呼んでますね せいや君を呼んでますよ』
  学校から帰ってくるのを待っているのかな せいや君はあたしの
 弟だ いつでも玄関のところに座っていて 甘えるのならママに甘
 えればいいのに あたしはせいや君の母親じゃない
 『あやみねちゃと遊ぶ せやはグデコンラバダを持ってきてだな』
 『はあ せいや君の言っていることは理解できませんねえ オヤツ
 を食べるのなら一緒でも構いませんよ 静かにしていればね』
  せいや君は2歳と少しだから まだ少し喋るのがうまくない 特
 に興奮しているときはむちゃくちゃだ 伝えたい気持ちはわかるけ
 れど 落ち着いて静かに喋る 2歳だってできると思う
 『仕方がないかなっと はいはい それじゃせいや君 キッチンで
 オヤツを食べようね ママが用意してくれてるはずだから』
 『あやみねちゃ抱っこ あやみねちゃあやみねちゃ 抱っこだな』
 『ひとりで歩きなさいね 使わない足は退化しますよ ううん』
  宿題ノートを広げて机に向かっていた 家に帰ればまず宿題を済
 ませる やることはやらないと気持ちが悪い でもそれもせいや君
 のワガママには勝てない ウルサイから無視して宿題はできない
 『やだやだやだ あやみねちゃ せや あやみねちゃに抱っこ』
 『はいはい その目で見られると弱いですね せいや君の甘えん坊
 さんはパパに似たに違いないですよ うんしょっと 重いなあ』
  叫んでおいて最後には甘え声 パパはあんなにごっつくて中学校
 の先生だけど パパの正体を知っているのはウチの家族だけだ せ
 いや君はパパが遺伝していると思う あたしとママにも責任はある
 『ママ せいや君がうるさくって宿題ができませんね ここはひと
 つオヤツをあげて静かにしてもらいますよ ママは仕事ですか』
 『ふむん お姉ちゃんの邪魔をしちゃいかんな ほいさ せいや来
 るべし これは仕事のようなものかな オヤツは冷蔵庫の中』
  キッチンにママがいた ママは珍しく眼鏡なんか掛けて なにか
 書き物の最中だ でもそんなことにはお構いなしに せいや君は保
 護者に渡す あたしは首をこきこき冷蔵庫の中を調査
 『シャケの焼き身は違うでしょうから もしかしてこの型に入った
 黄色い液体がオヤツでしょうか ううん まだ液体ですね』
 『あ 蒸さなきゃいけなかったわね 急いで蒸すから少し待ちなさ
 い せいやを見ててよ なんか忘れっぽいなあ この頃』
  冷蔵庫にはプリンになろうって感じの型と液 せいや君とあたし
 はイスに座って待つしかない こんなことなら宿題をしていればよ
 かった 時間の無駄とは言わないけれど 少しもったいないと思う
 『ママはなにの仕事ですか また通信教育の採点ですか』
 『ううん 今日はバリスチュじゃないわねえ 昔の知合いに頼まれ
 ちゃって アルバムに使う曲らしいわよ あやみの宿題は』
 『あやみねちゃ せやおひざ抱っこ ママあやみねちゃのおひざ』
  ママの仕事は主婦の人だけど たまにバリバリスチューデントの
 赤ペン先生をやってたりする その仕事はおばあちゃんの関係らし
 いけれど なんか あたしの周りは先生ばかりだと思うときがある
 でも いまテーブルの上に置いてある紙には手書きの文字
 『あたしの宿題は変な宿題だけです 変な宿題は考えるのが大変で
 すよ なにをやってもいいけれど教科の内容はダメですから』
 『あはははは 斉藤先生は変な先生だもんね 毎日の宿題が夏休み
 の宿題なら それってつまり 毎日が夏休みじゃないの すげー』
  ママは鼻歌を歌いながら 湯気の立ち始めた蒸し器の中にプリン
 の容器を入れる ママは昔歌手だったから 鼻歌だって変なコブシ
 が効いている 斉藤先生はパパの大学の頃の友達だ
 『凄くないですよ でもですね 前回描いたマンガがウイークリー
 マンモス大賞に選ばれましたから しばらくマンガを描きます』
 『いいんじゃない あやみの絵は綺麗だから 篠原画伯のところに
 売り飛ばそうと思ってたけど 漫画家さんも面白いじゃない』
  変な宿題はナンデモアリだ 自分の考えが入っていれば 嘘小説
 だって工作だってマンガだって 先生の採点はいい加減じゃないか
 ら だから斉藤先生は悪い先生じゃないのだ
 『漫画家さんは大変な仕事ですもの あたしは会社のOLの人にな
 って さいかお姉ちゃんのように偉くなるのが計画です』
 『さいかねえ 女の子があんなに苦労するのもどうかしらねえ 主
 婦の人はいいよ あやみ 手に職をつけて主婦になるのがいいんじ
 ゃないの 生活は安定するし 時間もあるじゃない ほいできた』

  ママに話すと気分を悪くするかもしれないけれど あたしの理想
 はさいかお姉ちゃんである あんなに凄い人はあまりいないと思う
 どんなことでも努力の人だし 才能もあって凄く知的だ カッコイ
 イスーツを着て優しく微笑む その上仕事もバリバリこなす
  あたしも大学まで頑張って勉強して その後は会社に就職して偉
 くなるのだ とにかく頑張らなくてはならない そのためには斉藤
 先生の変な宿題は役に立つのか なんとなく先生の考えは理解でき
 るけど この頃少しそう考えたりもする
  とにかくぜったいに偉くなる それがあたしの野望なのである






             》 しびる 《
+++++++++++++++++++++++++++++++
(のりこ)>もでらーとです あやみちゃんが1人称デビューですか
(しびる)>せいやが2歳ってことは あやみは9歳で3年生だわな
      もう1人称は充分に任せられるだろ 遅いくらいだ
(のりこ)>しっかりしてますよねえ えーっと ひじちょうもくっ
      てのは飛耳長目 観察が鋭く早いこと あやみちゃんの
      ことですか そのままっちゃそのままのタイトルですね
(しびる)>こういう順目のタイトルは逆説で使うのが常識 でもこ
      のばやいは周囲のオトナのこと 説明するとクドイけど
(のりこ)>はあ 斉藤先生とか? あいかママもですか
(しびる)>その辺はいいじゃん せいやのはしゃぎっぷりとか そ
      ゆのに着眼して曖昧なコメントで締めようよ
(のりこ)>あやみおねちゃ! ですもんねえ あのクールなせいや
      少年が 散歩前の飼い犬くんのようなはしゃぎっぷりで
      オシッコ漏らしちゃいそうなくらい興奮してますね
(しびる)>女の子がそういうコメントをしないように
(のりこ)>女の子 ですわねえ(笑)
posted by 篠原しびる at 23:43| シンガポール ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 連作系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

すきま あにめだいすき 39

(しびる)>ういーっす アニメ枠やるぞい
(のりこ)>あ おはようございます そろそろ今シーズンも終了で
      すね 既に終了したのやら ラストの大ネタを展開して
      るのやら まだウチでは1本もチェックしてないのやら
(しびる)>最後のは問題だな まあいいや 順番に片すか
(のりこ)>えーっと ウチのレギュラーで終了は『蛙男劇場』です
      けど これって『ザ・フロッグマンショー』と呼ぶのが
      正式なんでしょうか Rには『カエル』と書いてますが
(しびる)>どっちでもいいじゃん しかしなんだな もうちょいで
      1本終了って扱いになりそうだった作品だけど 気が付
      きゃ今シーズンお気に入りトップ3に入ってるもんな
(のりこ)>おもしろかったですねえ WEBの方は結局チェックし
      てませんけど 鷹の爪もコフィーちゃんも なかなかに
      きちんとネタが展開されてて いい作品ですよ これ
(しびる)>ふむ そこな 毎回導入はベタなありものなんだけどさ
      オチの部分で視聴者の寛容に頼らず展開するじゃん こ
      ゆのって空気ができちゃうと『いつものキャラがドタバ
      タだけでいいじゃん』って感じにゆるくなるだろ
(のりこ)>そゆのありますね しびさんがよく言うところの『謎が
      ない』とか『不思議がない』って感じですか
(しびる)>ちょっと違うがそのとおりな それって基本中の基本な
      んだけど なかなか空気に頼らないってもはタイヘンだ
      し できてる作品って少ないと思う 筋で追い掛けるの
      はままごまかしも利くけど 特にギャグはタイヘンだな
(のりこ)>んじゃいっときますか たーかーのーつーめー
(しびる)>ふむ たーかーのーつーめー
(のりこ)>えーっと あとレギュラーで終了はまだないですね ラ
      ス1なのは『ガーゴイル』と『ブラックラグーン』です
(しびる)>ガーゴイルは次回最終回か 近所にデパートができるっ
      てのがラストの大ネタなのな 毎度ゆるいこった
(のりこ)>ママさんって前から喋らないひとでしたっけ? そうい
      やあんましセリフはなかったような? そういうネタな
      らまったく気付きませんでした いやはや
(しびる)>あのさ 例えば母親役の浅野るりはオシリスや商店街の
      メンバーとかぶってるしメイドのひとりもそうな
(のりこ)>あー そうなんですか なんかキャラの多い作品だなあ
      とは思ってましたけど なるほどなるほど あんまし主
      要なキャラの人は喋るとややこしいからってのを逆手に
      取ったネタですね
(しびる)>それが理由でもないだろうけどさ あと『ブララグ』も
      最終回か 個人的にラストの大ネタはメイド話でもよか
      ったなあと思うけど 某大国を巻き込んでってのはある
      種の基本だよな リミット有りのチキチキレースだし
(のりこ)>やっぱしラストはモノホンのテロリストですか
(しびる)>おばちゃんところみたいに商売じゃないヤツな しかし
      ロックのポジションはいまだに怪しいなあ
(のりこ)>途中何話かとばしてるでしょ その中にロック覚醒編み
      たいなのがあるんじゃないですか?
(しびる)>でもさ うしろから頭殴られて拉致られてるぞ それに
      そもそも うがーとか叫んでヤケになればどうにかなる
      って業界じゃないだろ 技量とか場数ってのは
(のりこ)>そこんところもラストにはどうにかなりますよ
(しびる)>その部分はどうでもいいや あ 『ザ・サード』が生で
      やってるな いつも丁寧な作画だな もう見ないけど
(のりこ)>この前枠に新番組が始まってますね えーっと『デモン
      ベイン』 ロボット大暴れって感じですか
(しびる)>まだ1本もチェックしてないなあ まあそのうち あと
      新番組なら なんかの後枠に押井のが始まってるだろ
(のりこ)>押井さんの なら『風人物語』ですね アニメ企画大賞
      とやらは謎の大会ですけど その受賞作品だとか
(しびる)>なんかどこかで聞いたなあ んー しかしこのキャラ造
      形はどうよ 大丈夫か 1話最後まで見られるか
(のりこ)>かわいらしいじゃないですか ああ でもちょっとキツ
      イかな ネコちゃんが空飛んでますし 手足尖ってるし
(しびる)>どこを見ればいいのかなあ いや否定してるわけじゃな
      いんだけど 萌えアニメの見過ぎなのかなあ んー こ
      のグレイみたいな造形は どうしたものかねえ
(のりこ)>宇宙人みたいってのは酷評ですね あえてこのスタイル
      でしょ セリフなんか かなり練り込んでありますよ
(しびる)>あえて見なきゃいけない理由もないし とにかく数話だ
      け様子を見る 継続審議扱いってことでヨロシク
(のりこ)>ういっす けーいーぞーくーしーんーぎーっと
(しびる)>メモしてるのか ひらがなで
(のりこ)>いえ別に 伸ばして言ってみただけです んじゃあとは
      なぜかレギュラーで見てる『ひまわりっ!』とか?
(しびる)>特にコメントもないなあ 毎週見てるけど
(のりこ)>んじゃこれもレギュラーの『ホリック』とか?
(しびる)>だーいきらいなボク19さーい ってことで毎週きちん
      と見てるなあ あいかわらず説教臭い話ばかりなんだけ
      ど 紫陽花の話はちょっと趣味だったかな
(のりこ)>あー あの少女が死体遺棄されてた話 私は指輪シリー
      ズが好きですよ なんか身近にリアルで あとキツネの
      親子のしりとり話とか 故事由来のネタっぽくていいじ
      ゃないですか あと占い師の話とか
(しびる)>占いが会話のトリックってクダリな あれは陳腐だった
      あゆことするから全体のレベルを下げるんだよな
(のりこ)>そうですかね よくわかんないですけど あとはー
(しびる)>もういいだろ そろそろ締めるぞい
(のりこ)>おや 早く寝て早起きして テレビで観戦ですか?
(しびる)>サッカーか? まさか その時間にはもう仕事してる
(のりこ)>それはまたタイヘンですね んじゃ以上ってことで
(しびる)>おう またな
posted by 篠原しびる at 01:25| シンガポール ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | すきま あにめだいすき | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

連作17 青連作04 とじてひらいて

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 種別 連作系第17期 青連作04
 題名 『 とじてひらいて 』
 初出 ニフティサーブ/FJAMEA/18番会議室
    1996年07月08日02時50分
 注釈 行頭スペース+30W
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SUBJ:【青連作】04 とじてひらいて

 Sibi-Tem V.4.1

 今期連作の基本色は青色に決まりました 青連作 #04(B群)
 



          『 とじてひらいて 』


                        作:しびる





  雨期にはまだ少し早い なのにこの数日間は毎日が雨 記録的豪
 雨じゃなくてダラダラと降り続ける けれども雨は嫌いじゃないか
 ら そんなに滅入ることなく普通に暮らす
  どちらにしても社会生活に於ては 降雨で中止になることは少な
 いから 滅入ったところで普通の暮らしか 空調の整った室内なら
 雨だろうが猛暑だろうが関係ないわけで 例えば出勤途中に降って
 いて夜まで屋外を見なければ その日の気分は雨ベース
  そう考えると面白い 公園で目を閉じてグルグルと回転 さてど
 の風景が目前に広がるか 傘をさしてやるぶんには そんなに間抜
 けな感じにもならないと思う 間抜けでも別にいいけれど

 『やけに楽しそうじゃないか 水分過多で喜ぶのは爬虫類以下の生
 物だな 高等な生物は体内の水循環が完成されてるからな』
 『あたしだって濡れるのは嫌だよ 傘に長靴は文明の利器ってね』
  雨が嫌なら部屋にいればいいのに 夕食の買い物についてきて文
 句を言う まったく急いでいないから スーパーへと向かう前 い
 つものように公園へ立ち寄る 青い傘と青い長靴 雨天の必需品
 『ここのところ雨ばかりだろ 気分までベタベタになる』
 『ゆうくんはお風呂大好き人間なのに 同じ水分を差別するのは良
 くないよ この雨だって いつかお風呂のお湯になるかもね』
 『水と湯は違うだろう 魚を食って腹を温めれば焼き魚になるか』
  ゆうくんは婚約者だ 堅く言えば結婚を前提にした交際 エンゲ
 ージリングを買ったわけではないけれど そんなことは今更 言わ
 ずものがなって感じで世の中は成り立っている と思う
 『なんか変な説明 でもいいや とにかく少し黙っててね』
 『こうしてだな 雨の中を付き合ってやるのに 黙れって言うか』
  ゆうくんは藤棚の下のベンチに腰掛けている 黒い傘をさしてタ
 バコをくわえて 言葉は悪いけれど基本的に優しい
 『ゆうくんの声で方向がわかっちゃうもん 直射日光のない雨の日
 はスリル満点 こうしてね 予想とのギャップを楽しむの』
 『お前の説明の方が変だぞ そんな変な趣味の人間はだな 世界中
 に5人ぐらいしかいないんじゃないか あと4人を探すか』
  静かにしてって言っているのに ゆうくんは一向に黙る気配がな
 い いつも思うけれどよく喋る あたしもお喋りだけど それ以上
 じゃないかと思う とにかく黙ってもらわないと回転できない
 『あたしの日課を邪魔するなんて ゆうくんは意地悪な人だと思う
 頼んでないのについてきてさ なんなら一緒にやろうよ』
 『毎日やってるのか もしかしてなにか宗教関係か ひとりのとき
 でも回ってるのな 観客がいないと恥ずかしいだろ 見ててやる』
  目を閉じて頭の中の地図が混乱するまで回転する やってみると
 これが難しい 人間の空間認識能力は思ったよりも優れているから
 予想を的中させるつもりで臨めば大抵は成功する それにそうじゃ
 なくても 一瞬にして思った通りだとすり替えたりもする
 『観客なんて要らないってば 既に義務感にまで昇華された趣味だ
 もん 三半規管を弄るから常用性があるのかな 楽しいよ』
 『趣味が義務になるのが昇華なのか お前は仕事してても楽しいだ
 ろ いいよなあ 褒めてやるからひとりでやれな』
  滑り台のところと葉が茂る木のところ それにゆうくんの座る藤
 棚のところと砂場のところ 中間を取るなら茶色マンションの壁の
 ところと壊れた牛乳工場の門のところ たまに細かくバスケットボ
 ールのゴールのところとか どこを向いているか予想してみる 慣
 れれば目を閉じるだけで頭の中の地図が消える あたしは上級者だ
 『うん 楽しくないことなんてあまりないかな みんな良い人だし
 病気してないし それにゆうくんがいるもん 邪魔するけど』
 『死んだばあちゃんが言ってたな 結婚するなら苦労してない娘に
 しろって 良し悪しだと思ってたが そんなものかな』
  ゆうくんは突如しみじみモードに突入してしまった しかしこれ
 は絶好のチャンスである 黙ってるってことが少ない人物だからし
 て この機会を逃せば次は100万年後だろう
 『ふうん 良い心掛けだと思うよ 故人の供養の基本は思いだして
 あげることだもん ゆうくんは優しいお孫さんだね よしっ』
  少し強くなった雨の中 青い傘をまっすぐ持って静かに目を閉じ
 る 雨の効果は光源だけじゃなくて 近所を走る車の騒音や子供達
 の声を消してくれたりするところにも利点がある なによりも大切
 にしたいのはこの瞬間 強烈な残像は自由な予想の妨げになる
 『雨の日に 草葉の陰か 韻を踏むのは趣味じゃないがなあ』
 『しーっ ゆっくり回るから お願い 静かにしててね あとでい
 くらでも遊んであげる 静かに静かに』
  慌ててゆうくんを制止する これからが正念場 頭の中の地図を
 故意に混乱させながら それを助長するように自分の体も回転させ
 る イメージとしては逆回転 儀式ばるのが楽しいと思う
 『えっとそれじゃあ今日の予想 なにか非常に落ち着いた感じがす
 るので そうねえ 木のところか ううんそうじゃない』
  あたしの願いを聞き入れてか ゆうくんはコメントも加えずに静
 かな傍観者 普段なら黙って予想を考えるけど ここはひとつ同時
 体験してもらいたいから 予想を声のカタチにしてみる
 『今日はゆうくんの気配が強いから やっぱり藤棚の方向かな そ
 れで決まりにしよう さてとどうかなっと あ』
 『夕食は肉が食いたいな 生肉を食って風呂に入って風呂しゃぶ』

  ゆっくり視界が開けると そこにはゆうくんの顔があった 真面
 目な表情でさっきの話の続き 馬鹿なことを真面目に話すと知らな
 い人には誤解される そんなことよりもゆうくんの顔だ
  せっかくギャップを楽しもうとしてたのに これではどこを向い
 ていても同じである あたしが目を閉じて喋っている間 ゆうくん
 は目の前であたしを眺めていたのか
  そう考えると少し面白い ある意味ではこれもギャップだからし
 て ゆうくんの心憎い配慮だと思えば それはそれでそれなりに愉
 快なのであった 少し間抜けだけど 間抜けでもいいや






             》 しびる 《
+++++++++++++++++++++++++++++++
(のりこ)>えーっと いつだったかのぼんように 雨の中で謎の親
      子が同じことを楽しそうにしてたのを書いたことがある
      んですが あれれ? デジャヴ? なぜなぜ?
(しびる)>ネタじゃなかったのかよ 安っぽいことで茶を濁しやが
      るなあと思ってたんだが 忘れてたのか?
(のりこ)>忘れるもなにも 今回読み返すまでまったく忘れてまし
      たよ でも見たのはホントですし 不思議ですねえ
(しびる)>忘れるなバカちんが ダメアシスタントだな
(のりこ)>すみません でもー このお話はなんかのんきでスキで
      す 雨の中でぐるぐるは私の属性ではないですけど
(しびる)>基本はそこじゃないんだけどな
(のりこ)>それも理解してますよ 彼氏のお婆ちゃんが言ってた『
      結婚するなら苦労してない娘にしなさい』の部分でしょ
(しびる)>んー まあ いいけどな
posted by 篠原しびる at 01:23| シンガポール ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 連作系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年06月21日

すきま かんじだいすき 06

(しびる)>ういーっす んじゃま漢字枠をやるか
(のりこ)>ぱぱらぱっぱっぱー しびる氏とのりこちゃんはレベル
      が上がった というわけで1級上りました 6級です
(しびる)>まずまずのペースだな とにかくこの調子で年内に準初
      段を狙おう かなり精進しないと月に1級は難しいぞ
(のりこ)>ですね さて5月の課題『麦畑草笛』ですが 私個人的
      には畑の火偏はお気に入りです でも草はキライ
(しびる)>修正入ってるもんな 口頭添削じゃ1画目に対して2画
      3角の場所が悪いってことだな もうちょい左に揃えな
      きゃイカンということ それと日の部分がデカイのと
(のりこ)>麦の最終画の払いはツネピョンになってるのに これで
      2個丸もらえたのは謎です なかなかスラヒューになら
      ないんですよねえ 下まで持ってきてぐっと堪えて1・
      2・3ですーっと抜く できれば苦労しないですよ
(しびる)>今回はこの抜きがこの1カ所だけだったしな 笛の竹冠
      はうまくいったけど 由とのバランスで1個丸か
(のりこ)>お手本どおり書いてるつもりなのに できあがって見比
      べるとまったくの別物 このギャップはいつになったら
      埋まるんだろうなと途方もない気分になりますよ(泣)
(しびる)>なかなかタイヘンだわな ところでさ ビビリ線の話を
      した次の教室で やっぱしそのことについて指摘された
(のりこ)>でも もうちょいのびのび書きなさいとは言われないん
      ですよね 私達は子供じゃないですから
(しびる)>そゆことだよな のびのび書くなんてことは やろうと
      思えば造作もないし 基本は理論と技術の照合だわな
(のりこ)>そうなんでしょうけどね のびちゃんのびのび
(しびる)>さて まあどんどん精進するってことで締めておくか
(のりこ)>ういっす んじゃ今回の画像は5月の課題『麦畑草笛』
      7級から昇級して6級になってます ってことでkanji003.jpg
posted by 篠原しびる at 19:32| シンガポール ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | すきま かんじだいすき | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年06月20日

連作17 青連作03 ないとめあ・ないと11

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 種別 連作系第17期 青連作03
 題名 『 ないとめあ・ないと11 』
 初出 ニフティサーブ/FJAMEA/18番会議室
    1996年07月07日01時02分
 注釈 行頭スペース+30W
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SUBJ:【青連作】03 ないとめあ・ないと11

 Sibi-Tem V.4.1

 今期連作の基本色は青色に決まりました 青連作 #03(A群)
 



        『 ないとめあ・ないと11 』


                        作:しびる





  もはや悪夢の根源は露呈していた 理由はわからないが フィラ
 ンサス姫はある時点のあたしの意識が成長したもの あたしはこの
 世界の常識に歩調を合わせたが 彼女は断頭姫のまま自意識だけを
 孤高の領域へと確立してしまったのだろう 表裏なんて分類には意
 味がない 存在するのは分岐点と以降の環境だけだ
  街灯を背にして陰陽の世界を眺める ビデンスもリギダも本来な
 ら殺戮の対象 昆虫を従えてフィラの世界こそ悪夢ではないか そ
 う考えて眩暈が襲う 悪夢に順応して暮らす彼女か 10年の時を
 経過して再び悪夢の渦中に佇むあたしか どちらが哀れみと癒しを
 受けなければならないのだろう 目覚める気配は存在しない
  パジャマにスタジャンを羽織って路地に立つ カッターナイフと
 は比べ物にならない殺傷能力を持つ長剣を握る なにかの拍子に蘇
 りそうな不気味な予感 大義名分やプライドを持たず やはり自分
 だけがこの状況に不相応であった いったい誰の夢の中なのか

 『この小娘が原因でもなさそうですわ サンクレストの転移マーカ
 ーがカリン界への道を発見したのやもしれません さて』
 『ふむ 今回の転移はパルメルシアの波動機間によるものではなか
 ろう しかしリギダの処罰は別個に下す 思い上がるでない』
  フィラの声はあたしの頭の中に響く なのにリギダにも聞こえて
 いるらしい あたしはテレパシーと音声を区別しているが 彼女達
 の世界ではそれほどの違いはないのだろう もう違和感には慣れた
 『ふああ もうやだ こんなことが続くのなら頭が変になりそう』
 『ななよが原因でも 気に病むことはないじゃない こんな世界な
 ら そうね帝都を築くのに数カ月も必要じゃないわよ フィランサ
 ス帝国も援助を惜しまないわ 遠慮しなくてもいいから』
  そう話しながらビデンスに視線を移す フィラやリギダは気にし
 ていない様子だけど 本当にビデンスは死んでしまったのか それ
 も気になるが もっと気になるのはフィラの発言だ
 『ああっと サンクなんとかって敵が侵入してくるんでしょ それ
 で結果として自分の帝都を築くなら すると途中経過はやっぱり』
 『姫姉様も察知されてましょうが 早々にビデンスを連れて退避す
 るのが得策かと おやまあ 後手に回るが脱兎の謂れ とか』
  あたしの質問を遮りリギダが立ち上がる 視線はあたしの頭上に
 向けられ そして途中から遥か上空に移動してゆく あいかわらず
 真意のつかめない笑顔 さっき目玉の怪物を串刺しにした長剣を片
 手で振って空中に消し去る あたしは頭上のフィラに合わせて振り
 返る また怪物でも現れたのか 恐怖よりも脱力感
 『ビデンス中尉ならばロドゲルシアの召喚も可能やもしれん 生身
 であれば若干不利であろうか リギダ ひとまず撤退する』
 『すべて姫姉様の御意に リギダめが不本意ながらビデンスを移送
 いたしましょう 小娘 御身の護衛 ぬかるではないぞ ではっ』
 『なにを言ってるんだかなあ 今度はなにが あああっ』
  自分だってそれほど違わない年齢だろうに リギダは偉そうに言
 い放つとビデンスのスーツを掴む すこぶる美形の男女がふたりだ
 が 状況としては路上のゴミを拾うのに近い仕草 そして驚いたこ
 とに高く跳躍 そのまま黒髪を翻して夜空に消えた
  しかしそんなことはたいしたことではなかった 先程までいた世
 界では大抵現実離れした光景を見てきたのだが 今まさに展開して
 いる光景はそれらを超絶して余りあるもの これはなんだ
 『なんだこれは フィラ これもその敵の怪物なの うわあああ』
 『かなり急性な侵攻らしいわね 私達も退避しましょう おそらく
 この地区は最優先で掃討されるわ ななよ 北に向かって』
  フィラはこんな光景も見慣れているのだろう しかしあたしは返
 答どころか呼吸すらも忘れてしまいそうな気分だ まるで稚拙な合
 成写真のように 見慣れた家並みの遥か上空に存在していた
  普段なら薄黄色く霞んだ夜空 しかし今や夜空の3割程度は有り
 得ない光源に支配されていた 完全な闇にネガポジが反転した生物
 の頭部 爬虫類かなにかのような生物は闇を引き裂き虚空から垂れ
 下がる 想像もできない巨大さ 彼方に見えるビル群がマッチの軸
 のように情けなく 頭部から延びる無数の触手の一本で この街す
 べてが更地にできそうな感じ こんな巨大なものは見たことがない
 『あああ あんなに こんな大きなものって いや いやああ』
 『シッカリしなさい あんなのは虚仮威しよ 大きいだけでほとん
 どが粘液の使い魔 こんな街は5分と持たないでしょうけど』
  この世界とは相反する物質なのか 地上近くまで垂れる頭部から
 激しい落雷が四散している それに呼応するかのように地上に半円
 形の光球が閃いて消える 音も聞こえない彼方 巨大さの証しか
 『ど どうすんのさ フィラ みんな殺されちゃうじゃない なに
 か打つ手はないの 逃げるってどこに パパやママも死んじゃう』
 『仕方がないわね それほど待たずに自己崩壊するわよ やつの骸
 を温床にして サンクレストの侵攻には時間が掛かるわ』
 『街が破壊されて そんなの待ってられない どうにかしなきゃ』
  無表情な爬虫類の顔面が まるで苦痛を感じているかのように歪
 み始める 触手がスローモーションのように地上に延び そしてこ
 れまで最大規模の光球が広がる あの中にどれだけの人間が存在し
 ていたか 爬虫類の目玉がゆっくりと地上に向け落下を始める
 『ななよ また体を借りるわよ 心中しても楽しくないでしょ も
 う飛行の感覚には慣れたわね やつの目的はここだから』
 『あああああ なんだか こんなのって』

  あたしが返事するまでもなく フィラは勝手に体を乗っ取る 長
 剣の先を左手の平に当てて 貫くと思えば寸前で消えてゆく 完全
 に消滅したところで大きく跳躍 そのまま勢いをつけて高度を増す
  気配を感じて見上げれば あたしのまだ上空を 巨大な触手が凄
 まじい速度で北へと延びる なにも衝撃は感じなかったが 地上の
 家並みは一瞬引き寄せられて その後は完全に破壊されて吹き飛ば
 される あの中にあたしの家もあった 両親や隣人や友人やその他
 の人々 意識が麻痺して悲しみも感じなかった
  ただあたしは夜空を飛んでいる 無数の触手と光球 突如発現し
 た世界の最期 夢だとすれば 趣味が悪すぎる






             》 しびる 《
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(のりこ)>ないない11です このシリーズも2桁ですか
(しびる)>こうやってどんどん後戻りできない深みへと進んでゆく
      んだよなあ 巨大生物はいいんだけどさ どうするよ
(のりこ)>知りませんよ(苦笑) しかしまあ このネガポジ反転
      の巨大生物は気味が悪いですね 脳裏にビジョンが浮か
      びますよ どこで見たイメージでしたっけねえ
(しびる)>この当時はオリジナルだと思ってたんだけど なんか元
      ネタがあったっけ? 覚えがないけどな
(のりこ)>いや 思いつきで話してます すみません
(しびる)>ならまあいいんだけど
posted by 篠原しびる at 00:35| シンガポール ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 連作系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

連作17 青連作02 閑話休題 6

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 種別 連作系第17期 青連作02
 題名 『 閑話休題 6 』
 初出 ニフティサーブ/FJAMEA/18番会議室
    1996年06月30日03時07分
 注釈 行頭スペース+30W
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(しびる)>んじゃ閑休はパス扱いで
(のりこ)>もうパスにする必要もなさそうですけど? しかしかな
      りバリューがありますね マックスで170行くらい?
(しびる)>この前後ってさ なんかちょい時間が空いてるよな 挟
      み込んでるのはなんだ? 中村だけじゃないよな
(のりこ)>えー ちょっとまってくださいね 調べます
(のりこ)>調べました 直前は青連作01ですね その前は『しび
      通信』なんていうよくわからないものがいろいろと
(しびる)>なにそれ?(笑)
(のりこ)>しかしあれですよ この頃からしびさんと暦さんは仲良
      しですねえ こまめにフォローしてくださってます
(しびる)>20年来の付き合いだしな てかこの企画に他所様のお
      名前を登場させるな
(のりこ)>すみません
posted by 篠原しびる at 00:34| シンガポール ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 連作系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

連作17 青連作01 青い時間に この場所に

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 種別 連作系第17期 青連作01
 題名 『 青い時間に この場所に 』
 初出 ニフティサーブ/FJAMEA/18番会議室
    1996年06月28日00時06分
 注釈 行頭スペース+30W
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SUBJ:【青連作】01 青い時間に この場所に

 Sibi-Tem V.4.1

 今期連作の基本色は青色に決まりました 青連作 #01(短編)
 



        『 青い時間に この場所に 』


                        作:しびる





  太陽光は七色の光で 大気中の塵やゴミに乱反射して青空は輝い
 ている 青色は意気地がないから 地上に到達する前に挫けるのだ
 しかし波長の長い赤色も 斜めに刺さる距離では挫けてしまう だ
 から夕焼けは赤く輝く どろんと鈍く光る太陽 終焉の予感
  けれども夜明け前 世界は何故か青色に支配される 疑うなら普
 段よりも早起きしてみるがいい 夜明け前の世界は青色の静かな王
 国 夕刻が終焉ならば 夜明け前は黄泉の国 死後の世界
  つまり青色は彼岸の色 流転する事象の枠外に広がる色彩 すべ
 てを包み込み 更には飲み込む混沌の色 非活性無生物 これから
 始まるべき予感をも孕まず どうにも不思議な静寂の海底

 『早朝のジョギングじゃなし 犬の散歩でもないようだし 新聞配
 達や仕事の類でもないらしい 残るは犯罪絡みかな』
 『どれも違います でも たいした理由じゃないです』
  早朝それも午前4時 この季節にはまだ夜明け前 空には妙な色
 の青空が広がり 涼しい空気 他には誰もいない路地にふたり
 『今日で3回目だね こんな時間に徘徊するタイプにも見えない』
 『タイプなんかないです ただこうしているんです この場所に』
  路地に面した公園の入口 金属性の車止めに鎖が張り巡らされて
 いる その中央に腰掛けながら 眺めるのは誰もいない公園 今日
 で何回目か 何故かのその辺りには思考が及ばない
 『ふうん ただこうしているか なるほど この場所にだね』
  気が付くとふたりだった あたしはなんとなくこの場所に座って
 いる 少し物悲しく 少し心地良い気分 誰とも話したくないのに
 それでも嫌じゃない声 どこかで聞いたような 始めてのような
 『ここに座って公園を眺めていると なにか大切なことが思いだせ
 るような そんな気がするのです 忘れている大切なことを』
 『それで 今日はなにか思いだせそうかな そろそろ陽が昇るね』
  以前にもこんなふうに考えていた 確かそれほど昔のことじゃな
 かった 昨日かもしれないし一昨日かもしれない どちらにしても
 この時間 夜明け前 薄暮と呼ぶには薄暗い時間だった
 『どうでしょう とても大切なことだと思うのです 悲しいことか
 もしれません 楽しい記憶のようにも思えます どうでしょう』
 『楽しいことならいいね 胸が弾むような そんな楽しいこと』
  話しているのは誰だろう 振り返れば確認できるのに そんなふ
 うにするのも億劫な気がして 鎖に腰掛けて公園を眺める
 『そうですね おそらくは ええ そんなにたいしたことじゃない
 と思います 凄く大切なことって 大抵はそんなものですから』
 『たいしたことじゃないかな なのに待ってるんだね 今日で3回
 目 タカを括るわりに熱心じゃないか 素直がいいと思うよ』
  結局はたいしたことじゃなかったりする いつだってそうだから
 今日もそうかもしれない 大切過ぎることは 裏返って必要じゃな
 くなる あまり好きだと嫌いになる 楽しいことは悲しくなる
 『もう少し待ってみます もしかすればわかるかもしれません あ
 と少しのところで思いだせるような気もしますから』
 『なるほど しかし もしかすればもう知っていることかもしれな
 いよ とうに思いだしているけれど ただ認めたくないだけかもし
 れないじゃないか さっきも話したけど 素直がいいと思うよ』
 『そんな なにも なにも知りません なにも知らないのです』
  急に声が嫌になる あたしはなにも知らないのに こんなに素直
 に待っているのに どうしてあたしの嫌なことを言うのだろう
 『知らないわけはないじゃないか この場所に こうして 座って
 いるんだろう 知らない者が座っている場所じゃない』
 『あたしは なにも なにも知りません ただこの場所に』
  振り返れない 全身の神経が警報を発している 声は優しいのに
 徐々に増してゆく威圧感 すぐ背後のような 世界の彼方からのよ
 うな あたしの頭の中に響く声 あたしはなにも知らないのだ
 『さあ すぐに陽が昇る もうすぐ朝がやってくる すっかりすべ
 て思いだしたのだろう 本当は前から知っていて 知らない振りを
 して座っている この場所は君のいる場所じゃない』
 『いえ ここであと少し 陽が昇るまでいれば思いだせます』
  やはりとても大切なこと 背後の声には聞き覚えがある 前にも
 確か同じ問答 限りなく闇に近い青色の世界 ほとんどなにも見え
 ない公園を眺めながら あたしは大切なことを思いだせなくて
 『今日で3回目 そろそろ終わりにしようじゃないか 知っている
 ことを知らないと言い張っても ほら 繰り返しになる』
 『どうして あたしはこうして座っているだけなのに 誰にも迷惑
 を掛けずに 公園を眺めて座っているだけなのに』
  悲しいのに涙は流れなかった どうして放置してくれないのだろ
 う 責め立てられて悲しくなる 優しくして欲しいわけじゃなくて
 ただ構わないでいて欲しいだけなのに あたしはひとりで考えてい
 たい ずっとこの場所に座っていたい なのにどうして
 『公園の入口は そう 公園への入口だからね 君はこの場所にい
 るべきじゃない 入口は解放するべきだと思うよ』
 『この公園には ああ 誰も入っちゃいけないと そうです この
 公園には誰も入っちゃいけないのです だからあたしは』
  忘れていた記憶 本当は最初から知っていたこと どちらなのか
 わからないけれども ただ鮮明に思いだしたのは この公園には誰
 も侵入してはいけない決まり だからあたしは座っている
 『ほら 本当は知っていたんだ すぐにこの場所を解放してくれな
 いと すぐに すぐに陽が昇る もう あまり時間がない』
 『誰も入っちゃいけないのです この公園には誰も入ることは許さ
 れません あたしがこの場所を守っているのです ですから』

  もう既に青色が確認できる 闇の気配は希薄になり あたしの意
 識も徐々に薄れてゆく どんな理由だったか忘れてしまったけれど
 あたしはこの場所にずっと座っているのだ 誰も入ることが許され
 ない公園 その入口をこうして守り続けている
  青は白に同化し そしてやがて朝が訪れる 背後の気配もいずれ
 消え失せるだろう あたしも同じように消えるはずだ

  いつからか いつまでか さっきは3回目だと聞いたが 彼らは
 いつも3回目だと言うばかり そんなはずもなく しかしあたしに
 も確信はなかった どちらにしても もう 消える






             》 しびる 《
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(のりこ)>さて連作の第17シーズン 青連作の1本目ですが シ
      ーズンタイトルのもなってる『青』を持ってきましたね
      これは異世界ものと解釈してもいいんでしょうか
(しびる)>まだ17期 先は長いねえ 最新で31期だったっけ?
(のりこ)>いや34期です 終連作ですね 終わってないですけど
(しびる)>これで何本目だ?
(のりこ)>ちょっとハンパな260本目ってところです
(しびる)>そろそろ半分くらいか
(のりこ)>あと17シーズンで中身が15本くらいとすれば まあ
      ちょうど半分くらいですか 実際には丗連作とかありま
      すし 終連作は20本超えてますから 半分弱ですね
(しびる)>まだ半分か なんか途方もない作業だなしかし
(のりこ)>予定では去年の年内に終了してたんですけど 6ヶ月も
      超過して半分しか片せてないんですよね いやはや
(しびる)>こうやってだらだらコメント書いてるからだけどな コ
      ピペでやっつけりゃ半日も掛かりゃしねえのに
(のりこ)>でもこれは最低限の誠意ですし? 仕方ないですよ
(しびる)>ったくさあ まさにリサイクルテキスト研究所だよなあ
(のりこ)>ですねえ
posted by 篠原しびる at 00:32| シンガポール ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 連作系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年06月18日

連作16 趣連作15 昼下がりの夜想曲

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 種別 連作系第16期 趣連作15
 題名 『 昼下がりの夜想曲 』
 初出 ニフティサーブ/FJAMEA/18番会議室
    1996年06月25日01時30分
 注釈 行頭スペース+30W
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SUBJ:【趣連作】15 昼下がりの夜想曲

 Sibi-Tem V.4.1

 面白みや味わいよりも考えや意見の方で 趣連作 #15(短編)
 



         『 昼下がりの夜想曲 』


                        作:しびる





  結婚すると苗字が変わる 民法の改正とかで変えない人もいるら
 しい それに旦那と同じ苗字だったからどちらにしても変わらない
 人もいるだろう 世の中は広いからそんなに珍しくもないかも
  カタカナで呼べばアイデンティティ 自分を自分たらしめている
 もの それに拘る人に苗字を変えない人が多い あたしの意見では
 変わった方が面白いと考える ペンネームや自称云々などではなく
 近所の人が普通に呼ぶのだから面白いのだ それまでの自分じゃな
 い名前で呼ばれる なにくわぬ顔で返事したりして
  その延長 誰だって結局は死んでしまう その後の話 特に嫁姑
 で苦労した人は当然のように語る 死後は本当の両親が眠る墓に入
 れて欲しいとか でも土台無理な話 両親だって他人同士だからし
 て 結局は自分だけの理屈 大人の意見じゃないと思う

 『せいやは煩いですよ オッパイを飲んで紙オムツも替えてもらっ
 て抱っこしてもらってるのに きっとイジワルなのですねえ』
 『ははん そんなのみんなおんなじ あやみも煩いの煩くないのっ
 てねえ ママもイジワルじゃないかと考えたな 凄く最初の頃は』
  出産に合わせて薮入り 上の子供のときは1カ月だったけれども
 今回は旦那の出張が絡むので3カ月 下の子供を寝かしつけて午後
 『あやみはですね あんなに意味もなく泣きません せいやは生ま
 れてからずーっと泣いてばかり 変な赤ちゃんかもしれないです』
 『あれで普通だってのに 赤ちゃんは泣くの そんなことは宇宙の
 常識 あやみも泣いてたし 弟だって泣くのが筋ね ふんふん』
 『おじいちゃんも せいやは泣いてばかりだって言ってましたね』
  確かに夜泣きは凄い 頑固に泣き止まないこともしばしば しか
 しそんなことは異常でもなんでもなく あたしの睡眠時間がすべて
 を受け止めている間は それはもう宇宙の常識で日常茶飯事だ
 『おじいちゃんだってママのパパだもんね んなことは百も承知之
 助で喋ってるのよ 泣く子は育つ ふあああ 昼寝たーいむ』
 『ママまで寝ちゃえばあやみは独りぼっちになりますね せっかく
 の連休なのに さいかお姉ちゃんのうちに行けば良かったですよ』
 『ふあああ あやみはさいかと仲が良いわね 遊びに行くってもね
 本社の近くに越したでしょうに 迎えに来てもらうのは禁止』
  娘は妹と仲が良い それは別に構わないし むしろ歓迎すべきこ
 となのだけど 問題と言えば妹の方か どうも不安定な精神状態に
 子守をさせるのは気が退ける ある意味扱いづらい娘だ
 『そんなことはお願いしません さいかお姉ちゃんは忙しい人です
 からね あやみはママが寝ちゃうと寂しいって話をしてます』
 『面倒なことを言う娘じゃああ あはははは どれどれ 小生意気
 な小学生を抱っこしてやろうかね ほいさ こっちに来るべし』
  誰に似たのか冗舌な娘 しかし自分の娘だから機微なんて手に取
 れる 冗談めかして話していても赤ちゃん返りできない年齢 もう
 少し幼ければ弟を叩いて大泣きできるものを 妙な自覚が彼女を縛
 る あたしは母親だからして かわいいくらいに理解できるのだ
 『ふむ せいやはあやみの弟だもんね だけどもだね 別にあやみ
 は我慢ばかりすることもないと ママは思うわけだな ふむ』
 『ううん ちっちゃい子はかばって優しくしてあげるのが当たり前
 のことだと思いますよ あやみは優しいお姉さんになるのです』
  娘の意見は正論だ 本当なら反対の言葉で注意する毎日になるの
 が世の習いだろうに 同じくらい歳の離れた妹に あたしはどうだ
 ったかと考え込みそうになる 彼女の意見は正直な言葉で けれど
 も自分の心に対してははちきれんばかりの嘘 かなり巧妙な嘘だ
 『ふうん 少し髪の毛が伸びすぎたかな おばあちゃんにカットし
 てもらうか 嫌ならフレンズでカットしてもらおうか ママはあや
 みを抱っこしたまま昼寝すれば幸せだあああ 寝技攻撃の体勢』
 『きゃあああああ くすぐったいですよ あやみはこのまま髪を伸
 ばす計画ですね ママみたいなのは似合わない顔の形だから』
  娘を膝に抱えて臭いを嗅ぐ 少し酸っぱいような甘い香り 癖の
 ない栗毛の猫毛 ポニーテールのシッポも延びて 前髪は目に掛か
 る寸前だ そのまま強く抱き締めて寝転がる 絞め殺さずに育てて
 これたのが不思議なくらい愛らしい 娘のためになら死ねると思う
 『それは構わないけど でも前髪は切らないといけないね 目に入
 ると結膜炎になるかもしれない 面倒ならママが切るとするかね』
 『それならフレンズさんでカットしてもらいますよ ママのカット
 は危ないですね それに切った髪の毛で部屋が汚れます』
 『まったく配慮な娘だねえ ママより偉くなるのは禁止だかんねえ
 あははははは 細かいことは気にしなくてもいいって』
  横になると睡魔が襲う 2時間毎に泣く息子の相手だ なのに妊
 娠前には戻らない体重 もしかすれば中年太りかもしれない 崩れ
 ゆく体型は人生の重要度では10位以下 40歳にもならないのに
 『むううん でもママより偉くなるのは難しいですよ あやみはさ
 いかお姉ちゃんに聞きました ママは実は凄い人だったのですね』
 『ああん ママはただの主婦の人だってば さいかになにを聞いた
 のか知らないけどね パパの奥さんで あやみとせいやのママ』
  突如として蒸し返される昔話 妹はどんなふうに話したか どち
 らにしても騒いでいただけの過ぎ去りし日常 今はこうして娘を抱
 いて微睡む 全身に充満する快感と充足感 既に会話も怪しい
 『CDも聞きましたよ 最初はママじゃないみたいでしたけど や
 っぱりママの声でドキドキしました あやみは凄く自慢です』
 『うひゃあ あははは ママは凄く恥ずかしいじゃない 友達に話
 すのは禁止 しかしてっちゃんのパパやるりちゃんのママも同じ穴
 のムジナだったりして 世間は狭いわねえ ぐうううう』
 『ママは寝ちゃうのですかあ 歌って欲しいのになあ むううん』

  ややこしい話になってきたので嘘寝で対処 胸の谷間に娘の顔を
 押し付けて 非常に良い気分で深呼吸 食べたくなる衝動をどうに
 か抑え 仕方なしに小さくつぶやく ベースの曲は静かなノクター
 ンだから 元に戻せばまるで子守唄のようだ
  強烈な睡魔に意識が薄れる それでも心の隅に残るメロディーは
 少し鼻歌のようになって囁くように 静かな午後 気怠い土曜日の
 昼下がり いつの間にか娘も寝息を立てていた






             》 しびる 《
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(のりこ)>もでらーとです 今回1人称はおそらくこれが最後のあ
      いかママ 彼女はこの先1人称から外れます
(しびる)>あやみの自意識が確立したからな もしあいかが主導権
      を握るなら なにかよほどの事件を客観的に観察しなき
      ゃいけなくなったときだろうけど でもそれは実は1人
      称の振りしたト書きだし どっちにしてもあやみたちの
      時代だわな さいかはもうちょい使うけど
(のりこ)>母親と娘の関係はしびさんのお気に入りですね?
(しびる)>うん 特に娘がこのくらいの年齢がベストかな ただも
      うバカみたいに溺愛できるじゃん? ましてやあやみみ
      たいな気遣いがあった日にゃ 食べたくなる衝動を抑え
      るのがタイヘンだわな(笑)
(のりこ)>でも父娘では成立しないんですね
(しびる)>そうだなあ そこんとこオヤジはかわいそうだな 父親
      と息子はまったく別の次元の関係だし
(のりこ)>世の中のパパさん みんながんばれ
(しびる)>もっと言ってやれ(笑)
posted by 篠原しびる at 00:42| シンガポール ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 連作系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

連作16 趣連作14 デュランタ・ライム 4

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 種別 連作系第16期 趣連作14
 題名 『 デュランタ・ライム 4 』
 初出 ニフティサーブ/FJAMEA/18番会議室
    1996年06月22日01時22分
 注釈 行頭スペース+30W
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SUBJ:【趣連作】14 デュランタ・ライム 4

 Sibi-Tem V.4.1

 面白みや味わいよりも考えや意見の方で 趣連作 #14(短編)
 



        『 デュランタ・ライム 4 』


                        作:しびる





  その喫茶店を見付けたのは偶然だった それほど苦労せずに合格
 した大学は家からも遠く 下宿に決めた安アパートは反対方向 ア
 ーケードを徘徊して生活物資を調達するものの この喫茶店まで足
 を延ばしたことはなかった 身近な世界で充足する あまり活動的
 ではない性格も それはそれなりに快適な生活を維持できる
  最初に目にしたのは薄緑色の空間 アーケードが終わり石畳に街
 路樹が続く その風景の中で一際爽やかに生い茂る植物 隣りの無
 粋なビルに比べ なんと素敵な眺めだろう 薄緑の葉は大小の鉢植
 えから無秩序に拡がり その中にロココ調の看板が控えめに揺れて
 いた 店名が植物の名だと知ったのは通い始めて数カ月してから

 『いらっしゃいませ ご注文はお決まりですか どうぞ』
 『どうもありがとう そうですねえ 今日はカプチーノにします』
  特に時間は決めていないけれど 大抵は午後の1時過ぎくらいに
 訪れる 学食で昼食を食べて午後の講義がない曜日 だから火曜日
 と水曜日と金曜日 いつもの席に入口を背にして座る
 『はい カプチーノですね オーダー通します カプチーノひとつ
 お願いします 少々お待ち下さい すぐにお持ちします』
  アルバイトの女の子はいつも同じ あたしよりは若く見えるけれ
 ど もしかすれば同じ大学かもしれない とにかく愛想が良い
 『カプチーノひとつね あさみちゃんさあ お昼を食べちゃって』
 『はーい それをお持ちしてから頂きます お隣は2時ですよね』
  昨日から読みかけの文庫本を広げる 彼女の名前はあさみちゃん
 それは前から知っている 他の常連の人達がそう呼んでいるから
 『そうそう めろん証券さんの第3会議室ね あとでいいからさ』
 『はい どうぞ 店長さんもまだですよね お先です』
  あさみちゃんは微笑みながらカプチーノをテーブルに置く 綺麗
 な白い指にマニキュアを塗らない白い爪 よく見ればとても薄化粧
 慣れた物腰と純朴さがミスマッチの妙味 女子大生ではないかも
 『いいのいいの あとで店屋物を取るから 遠慮せずにジャムもバ
 ターもたくさん塗りなよ そうだ サラダを造ってあげよう』
 『いいのですか それじゃご厚意に甘えます すみません』
  店長さんとあさみちゃんの会話を聞きながらカップを半周させる
 他には誰もお客さんはいなくて あたしの存在に配慮しない会話が
 逆に嬉しかったりする なにか常連客扱いみたいで それでいて馴
 れ合わない関係が小気味良い この喫茶店は秘密の空間だ
 『サラダくらいで喜んでくれるならさ はん 安いもんだね』
 『あたしってば物臭な暮らしですから 野菜が足りないと思うんで
 すよ 安いだなんてそんな とても嬉しいです はい』
 『若いのに自炊か 意地張らないで気楽にするのがいいと思うよ』
  カウンターの向こうから聞こえる会話 あたしに聞かせるつもり
 がないから 基本設定は不明のまま それでも判読できるのは彼女
 がひとりで暮らしていること それも学生の下宿とかではないらし
 く 誰かとの確執 こんなに素直そうなのに 誰にでも色々な事情
 『お母さんとは電話で話すんですよ でもお父さんとは ええ』
 『ま 構わないけどね あさみちゃんなら大丈夫かな さてさて』
  店長さんはコードレスフォンを肩で挟んで新聞を広げる 基本的
 に彼女の生活を詮索しない主義らしい あたしだって無粋な覗き見
 趣味があるわけではなく ただの客とただの店員さんの関係
  猫舌なので熱いカップを放置して数分 店長さんの電話が終わっ
 た頃にカップを持ち上げた あたしはシュガーレスな趣味であるか
 ら そのままクチまで運んで午後の楽しみ 凄く静かな時間
 『おやあ あさみちゃん それは誰のネクタイなわけ なに あさ
 みちゃんが縫ってあげてるの ばばあにやらせればいいのに』
 『あ これですか これは梅原さんのネクタイです 少し綻びてま
 したから 構わないんです 奥さんはお忙しい方ですから』
  店長さんは白髪混じりのナイスミドルな男性 そんなに歳でもな
 さそうだけど なにか喫茶店の店長を絵に描いたような風貌 しか
 したまに言葉が乱れる 会話からすればババアは店長の奥さん 少
 しのところで完璧じゃないのは 見た感じよりも若いのだろう
 『ふうん あさみちゃんって梅原君と付き合ってるのか なるほど
 午前中のアベちゃん情報は彼のことであったか ほうほう』
 『いえその 梅原さんとはですね その 付き合ってるとかそんな
 のではなくてですね あやや 困ったなあ 違うんですよ』
 『隠さなくてもいいじゃない 別に構わないよ 梅原君はそれなり
 に真面目な若者だし お似合いだと思うな あ 今日のデートね』
  なにか浮ついた話題だ 梅原君は午前中にたまに見る男の子のこ
 とだろう 商店街や大学でも見かけたことがある おそらくあたし
 と同じ大学の学生 そうか彼女は彼と付き合っているのか
 『どうしてそんなことまで知って いえ なんでもないです』
 『なるほどねえ 梅原君も妙に機嫌が良かったなあと 若い君達は
 いいねえ まあ好きにしなさい 基本的に構わないからね』
 『はあ 本当にそんなのじゃないんですよ うううううん ええ』
  店長さんはタバコを吹かして新聞に視線を戻す あさみちゃんは
 少し赤くなってなにか作業を続けている 少し微笑ましい光景 彼
 女のそんな仕草を見ていると どうやらあたしなどよりも少し若い
 ひょっとすれば17歳か18歳くらい 20歳は過ぎていない
 『それじゃあ あさみちゃん 食べちゃったら めろん証券の配達
 をお願いね アイスコーヒーが7つだから 領収書とね』
 『はい お隣は正面玄関から入るんですよね あ いらっしゃいま
 せ 今日は遅いんですね いつものでいいですか』

  あたしがカプチーノを飲み終えたと同時 入口のベルがカラコロ
 と気持ち良く鳴った あさみちゃんは瞬時に反応して 会話からす
 ればおそらくは常連客 あたしはゆっくりと文庫本をしまい込む
  そんなに長居するつもりもなく 次の客が来たのなら今日は帰ろ
 う 天気も良いからぶらぶら歩いて 夕食の買い物も済ませて 午
 後の授業がなければ暇なものだ とても長閑な5月の下旬 午後の
 気怠い空気に機嫌が良かった こんな毎日 それもまたよし






             》 しびる 《
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(のりこ)>DL4です 今回の1人称は謎の女性客ですが
(しびる)>謎ってこともないだろ ちょっと展開のクッションが欲
      しかったのと あさみの外枠をもうちょい固めておこう
      って企画だったと思う 閑話休題っぽいかな
(のりこ)>でも展開してますよね 梅原くんとあさみちゃんのデー
      トが曝露されましたし 店長さんの描写も深まりました
(しびる)>なにも動かないってことはないからな
posted by 篠原しびる at 00:41| シンガポール ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 連作系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年06月16日

編集会議 111

(しびる)>ういーっす もうホタルが飛んでるな 夏かねえ
(のりこ)>あ おはようございます ホタルですか
(しびる)>ホタルなんかどうでもいいんだけどさ 最近ようやく時
      間ができたから『マザー3』をやってるのな
(のりこ)>いきなし飛ばしますね まあいいですけど ようやくプ
      レイしてますか 長いこと放置してましたねえ
(しびる)>まとめてやりたかったしな でも忙しい合間にむらむら
      きて始めちゃったし それがさ 毎度のことなんだけど
      まったく予備知識なしに始めてるからさ 序盤はいきな
      し子供ふたりで始まると思ったから オヤジの名前なん
      かついで程度に決めたのな 脇役と思ったからさ
(のりこ)>あー そういや序盤はパパさん大活躍ですもんね でも
      こゆの描いてネタバレって叱られないですかね
(しびる)>大丈夫だろ 今時マザー3の序盤をプレイしてる人間な
      んかいないだろうし もしなんならメルマガの注意事項
      をブログに移植するのもいいかもしれないけどな
(のりこ)>それおもしろいですね てか移植しなきゃいけないです
      よ それは前から問題だと思ってたんです
(しびる)>うそつけ いま聞いて気付いたくせに んじゃその問題
      意識ののりこの仕事な これを上げるまでに移植しろよ
(のりこ)>そんなのムリですよ 年内に片すってことで
(しびる)>遅すぎ じゃなきゃネタバレするなって苦情のコメント
      が毎日500本もお前のところに送られてくるぞ
(のりこ)>それはイヤですねえ んじゃコメント・トラバ通知サー
      ビスをオフにしてしまいましょう クサイものにはフタ
      をするのが賢いオトナの暮らし方ですよ
(しびる)>読者のコメントをクサイものなんて言うな バカちんが
(のりこ)>またそゆことを仰る なんか私が無神経な発言をしたみ
      たいになるじゃないですか ひどいですね
(しびる)>って論旨をすり替えられた被害者 の方にまわる得意の
      テクニックだな のりこのそゆところがダメなのな
(のりこ)>なんて まるで私がテクニックを駆使したように読者さ
      んに捉えられるようなしびさんの常套句ですね
(しびる)>と まるで毎回うまく言いくるめられてる弱者を装うの
      りこの慣用句だな いいかげんにしないと信用失うぜ?
(のりこ)>などと・・・もう辞めましょう キリないです
(しびる)>なんだせっかくおもしろくなってきたのに でさ オヤ
      ジの名前なんかてきとうでいいと思うじゃん? どうせ
      たまに電話掛けてきて『そろそろ休憩した方がいいと思
      うぞ のりこ セーブします はい・いいえ』的な扱い
      と普通は思うわな それがなんだあの活躍の仕方は
(のりこ)>パパさん大活躍ですもんね これはもしかしてこのまま
      パパさん大活躍って作品なのかと思うくらい
(しびる)>子供ふたりが主人公だろ? マザーってのは頼りないガ
      キを操作して世界を救うのが醍醐味じゃん? 辛酸舐め
      尽くした妻子持ちの中年オヤジが 近所のオヤジや犬を
      連れてモンスターと戦うなんて おもしろすぎるだろ
(のりこ)>いい味ですよねえ(笑) でもこのままではマザーテイ
      ストじゃないですから そのうち坊ちゃんふたりの物語
      に移行しますよ ところでパパさんの名前って?
(しびる)>『カーツたいさ』 なーんもひねってないのな
(のりこ)>素晴らしくもつまらなくもないですね でも中年おじさ
      んのイヤな雰囲気は微妙に漂ってきますよ
(しびる)>しかしなあ 序盤だってのに嫁さん死んじゃうし ちょ
      っとぼんやりしてたけど いい女だったのにさ
(のりこ)>暴れるパパさんの気持ちはよく表現できてますね
(しびる)>ホントはこういうシリアスな空気はマザーっぽくないん
      だけど 殺さず殺されずってのはゲーム性とは相反する
      のかね ちょっと残念な気もする 2はどうだったかな
(のりこ)>マザー2ですか どの媒体でしたっけね たしかプレイ
      したと思うんですけど スーファミでしたっけ?
(しびる)>覚えてないなあ まあいいや どうせ今回も最後までプ
      レイできるかどうかわからないし てきとうにな
(のりこ)>1個終わらせるのはかなり詰めてやらなきゃいけないで
      すからね オトナの人には難しいかもしれません
(しびる)>アニメなら25分 コミックスでも30分は必要ないの
      に それくらいのセンテンスにわけられないものかね
(のりこ)>細かいですね RPGではちょっとムリなんじゃないで
      すか? 落ちゲーとかシューティングとかならまあ
(しびる)>かといって『どうぶつの森』みたく自由度がありすぎる
      のもアレだし やっぱしゲームには向かないのかね
(のりこ)>しびさんが? それともオトナの人全般が?
(しびる)>どちらでもいいけど んじゃきょうはアニメを数本片し
      て寝るか って横見で何本か片しちゃったけど
(のりこ)>『蛙男劇場』は次回で終了ですね それと 先日Rに焼
      く前にチェックしようってことで『ああっ女神さまっ』
      を7本まとめて見ました もうカンベンしてください
(しびる)>固めて見るとキツイよな なんでこんなイチャイチャし
      てるのをぼんやり見てるのか人生に疑問を感じるし
(のりこ)>ですよね せっかくですから中古でコミックスをまとめ
      買いして爆死するのもおもしろいのかな? なのかな?
(しびる)>もういい 藤島とCLAMPは避けて通るのが人生の得
      策 今回はそのアニメ化両方チェックしてるし これ以
      上深みを覗かない方がいいと思う これ業務命令な
(のりこ)>業務命令ですか なら仕方ないですねえ あと ひぐら
      しの第3ユニット第3話がえらいことになってます
(しびる)>主人公が殺人ネタはラストの大オチだと思ってたのにさ
      こうも簡単に殺しちゃうか これで2クールかよ
(のりこ)>もう辞めましょうよ こんなアニメをチェックしてても
      なにも得るものなんてないのかな? なのかな?
(しびる)>その語尾は辞めろ さて んじゃてきとうに行も埋まっ
      たので締めておくか そろそろ100行超えたか?
(のりこ)>もうちょいですね あとなんか1ネタあれば超えるんじ
      ゃないでしょうか なんかないですか
(しびる)>もうなにもないなあ んじゃ最近集中して読み込んでる
      西島大介のコミックスについて語るかね
(のりこ)>うわあ いきなし大ネタを持ってきましたね そんなの
      あと数行じゃムリでしょ せめて『エマ』最終巻とか
(しびる)>エマはなんか煮え切らないラストだったし あれが作者
      の思うハッピーエンドなのか まあいいけど
(のりこ)>んじゃ100行超えました ごくろうさまです
(しびる)>うい んじゃまたあしたな
posted by 篠原しびる at 01:29| シンガポール ☁| Comment(3) | TrackBack(0) | 編集会議 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年06月15日

連作16 趣連作13 研修会初日

+++++++++++++++++++++++++++++++
 種別 連作系第16期 趣連作13
 題名 『 研修会初日 』
 初出 ニフティサーブ/FJAMEA/18番会議室
    1996年06月21日00時22分
 注釈 行頭スペース+30W
+++++++++++++++++++++++++++++++
SUBJ:【趣連作】13 研修会初日

 Sibi-Tem V.4.1

 面白みや味わいよりも考えや意見の方で 趣連作 #13(短編)
 



           『 研修会初日 』


                        作:しびる





  妙に平穏な数日間 ここのところ変な誘いもなく ただ登校して
 下校するだけの普通な生活 眠い日には遅刻して 怠い日には早退
 する 本来の自分のリズムを取り戻せそうな予感 スクールライフ
 はこうでなければとひとり頷く 誰にも拘束されず自由に
  そして更に数日が経過し その手紙は金曜日の放課後にロッカー
 の中で鎮座していた どこかで見たような封筒 中身の便箋もどこ
 かで見たような しかし差出人どころか宛名さえも記されていない
 よもや間違いではないだろうけど 不躾な行為に少しムッとする
  内容は日時と場所の指定 明日の午前7時に正門前 恋文にも果
 し状にも不向きな時間 こんな早朝から誰が何を画策するのか 今
 回はまったく予想もつかず なによりも明日は休みなのであった

 『えーっと みなさん注目してください そこの人達 静かに』
  指定の時間から正確に12時間後 つまり土曜日の午後7時 あ
 たしは豪勢な食事の前に座っていた なぜ燃えないのか不思議な紙
 の鍋がグツグツ それに刺身とテンプラとビールじゃなくて烏龍茶
 『それでは 研修会初日の締めと致しまして 総裁からのお話がご
 ざいます えーっと総裁 よろしくおねがいします 拍手!』
 『があ お話もなにも ああーっと 困ったなあ どうも』
  正門前で待っていたのは高級リムジンバス 寝ぼけていたあたし
 は有無を言わせず拉致され 4時間に渡るカラオケ大会の末に到着
 したのは巨大なリゾートホテル おまけに温泉 それも露天風呂だ
 『ああーっと まだ状況を把握していませんがあ みなさん 部員
 の自覚を持ってですね あまり騒ぎすぎないように よろしく』
 『ありがとうございました 拍手! 続きまして副総裁からの訓話
 がございます そことそことそこ 静かにしてください どうぞ』
  見たような手紙だと思えば なんのことはない宮内ゆうきちゃん
 の常套手段ではないか 研修会だかなんだか知らないが 総勢30
 名以上が高級リゾートホテル おまけに温泉 それも露天風呂だ
 『今回の研修の目的は 第一にRRTメンバー間の親睦を深めるこ
 とにありますが まずみなさんに考えていただきたいのは 現場に
 臨み自分が為すべきことを自覚する そのことにあります』
  宴会場はやたらと広く 斑模様の浴衣を着た女子高生がコの字に
 陣取り 下座の方には仲居さんらしき人達が数名鎮座している あ
 たしは連座の上手の中央に座らされ マイクを持って意味不明の訓
 話を続けているのは副総裁のかなちゃんだ 馬鹿騒ぎは毎度のこと
 『つまり大切なのは円滑な情報伝達 総裁以下幹部のみなさんの指
 示に従い 事故のない活動を目指して努力してください 以上!』
 『ありがとうございました それでは乾杯の音頭は総裁にお願いい
 たします あ どうぞ いえ マイクは持っていますので』
 『ふああ それでは乾杯! とにかくお疲れさま なんだかなあ』
  演劇部としての活動は毎日やっているらしい あたしはたまにし
 か呼ばれないから面識も少ないけれど かなちゃんは事実上の責任
 者のような立場らしい あいかわらずあたしはバカ殿様扱いで 上
 座に座らされてはいるものの なんだかなあは正直なところだ
 『これはどうも 総裁は練習に来てくださらないから どうぞ で
 すからね 士気を高めるためには総裁の威光を以てですね』
 『確か現場監督のひさよちゃんだよね あたしの威光なんてあるの
 かなあ みんなで楽しくやればいいと思うよ 気楽にね むん』
  みんな基本は浴衣だけど このひさよちゃんを始め数名は例のウ
 サギスーツがアンダーウエアである おそらくは引き続く演芸かな
 にかの下準備だろうけど それよりも気に掛かるのは妙な香り
 『あららん 名前を覚えてくださったんですね あはっ 舞台監督
 の野田ひさよです 凄く嬉しい気分で一杯の気分ですよおお』
 『むむん かなちゃん 宴会だって高校生なのに お酒なんかいけ
 ないよ 法律や倫理がどうよりも写真週刊誌に知られたら大変だ』
  妙に盛り上がっている娘達がいると思えば どうやら一部ではア
 ルコールが回り始めているようだ あたしなんかは飲酒にメクジラ
 じゃないけれど スキャンダルに敏感な情勢じゃなかったのか
 『許可はしてないわよ まみこが飲むのなら止めるけどね それ以
 外はあまり禁止しないのよ マスコミなら大丈夫じゃないかしら』
 『それなら大丈夫ですよ あたしのお父さんのホテルですから 部
 外に漏れる心配はありませんもの 絶対に大丈夫です』
  既にひさよちゃんは退席して向こうで馬鹿笑い その代わりにあ
 たしの前に座っているのは白鳥ありさちゃん かわいらしくニコニ
 コ微笑んで そう言えばホテルの名前はレイクサイド・スワン 窓
 からの眺望は水面に映る対岸の夜景 若しくは漁火か
 『ふうん ありさちゃんちのホテルなのか なら余計に馬鹿騒ぎは
 いけないね 悪い友達が大挙して大騒ぎじゃ ありさちゃんの立場
 もないと思うよ かなちゃんさあ その辺を考慮しなくちゃ』
 『きゃは そんなの構いませんよ あたしってばこんな性格ですも
 ん サークルのみんなが合宿って説明すると お父さんは大喜びで
 した 遠慮しないでくださいね あとで挨拶に来ると思います』
 『そうね まみこに行かせるわ その方がいいでしょう』
  こんな馬鹿騒ぎで喜ぶ親御さんも奇特な存在だ 責任者としてご
 挨拶くらいは仕方がないだろうけど それまでに修羅場になってい
 ないことを望むばかり とにかく食事 すべてその後
 『ええっと 宴もたけなわでありますが この辺りで各班による研
 修成果の発表に移りたいと思います 最初はSEチーム 拍手!』
 『ほら まみこ 審査委員長なんだから バカみたいに食べてちゃ
 ダメじゃない 真面目に審査して 採点はこの札ね』
 『があ さっきからなんにも食べてないのにさ いい加減にして欲
 しいなあ 言っても無駄だろうけど ふあああああ』

  入れ替わり立ち替わり挨拶に訪れる その度に烏竜茶を注がれて
 愛想笑い すこぶる豪勢な食事にもロクに手も着けられず 本腰を
 入れて食べようとしたところで次ぎなるイベント 研修結果なんて
 説明ではあるけれど おそらくは隠し芸大会であろうことは容易に
 想像できる あいかわらずの馬鹿騒ぎは既に定番だ
  宴会場の照明が薄暗くなり あたしの食膳はどこかに持ち去られ
 た その代わりに手渡されたのは11本の札 0から10まで記さ
 れた採点札は 隠し芸大会の審査委員長の証しらしい なにを採点
 するのか知らないけれど そんなことはたいして重要なことじゃな
 いと思うのであった 予定ではあと2日 月曜日は祭日だ







             》 しびる 《
+++++++++++++++++++++++++++++++
(のりこ)>RRTですね あいかわらずなにやってるんだかって状
      態ですけど 未成年者の飲酒は問題ですねえ
(しびる)>イカンよな でも飲んでるとは描いてないし ようだと
      か禁止はしてないとか まま表現はぼかしてるからさ
(のりこ)>そこんとこはきちんとしないといけませんし あと こ
      の話はどこへ行くんだろうと思いますけど その起点に
      なるはずだったんじゃないですか
(しびる)>そんなつもりじゃなかったなあ まあなんとなく 女子
      高生の宴会風景を描こうかなとか それくらい
(のりこ)>ふうん
posted by 篠原しびる at 00:10| シンガポール ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 連作系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

連作16 趣連作12 夕食には鯛を食べやう

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 種別 連作系第16期 趣連作12
 題名 『 夕食には鯛を食べやう 』
 初出 ニフティサーブ/FJAMEA/18番会議室
    1996年06月19日02時36分
 注釈 行頭スペース+30W
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SUBJ:【趣連作】12 夕食には鯛を食べやう

 Sibi-Tem V.4.1

 面白みや味わいよりも考えや意見の方で 趣連作 #12(短編)
 



        『 夕食には鯛を食べやう 』


                        作:しびる





  遊ばずにまっすぐ帰る 誰とも時間の都合がつかなくて 飲み会
 も麻雀大会も開催されず ひとりでパチンコをするくらいなら家に
 帰る心持ち 家族の仲は良好で 微々たる問題は日常の誤差
  駅から表通りを歩いて路地に入る 並木道に石畳 通行できる車
 両は居住者に限定されているのに 夕焼けの街に煌々とヘッドライ
 トが爆走してくる それも大型の高級外車 逆Y字のエンブレムが
 通り過ぎたところで 黒ガラスの向こうの搭乗者が確認できた
  この歳になれば親類縁者が活動を開始する 交際相手は既に用意
 してあるのに 籍を入れるまでは変更も可能な理屈 今回もそのて
 の騒ぎではないかとゲンナリ意気消沈 暗い顔で帰宅した

 『おかーさん そこでさっき高橋のおばさんを見たわよ また見合
 い話でしょ ちゃんと断ってくれなきゃ困るのになあ』
 『あら ようこちゃん 早かったじゃないの おかえりなさい』
  玄関で不満のフを表わす 結婚を前提に交際している男性がいる
 と公言しているのに 伯母の行動はあまりにも失礼ではないのか
 『おかえりじゃないってば あたしが話しているのは ふあ なん
 か磯の香りがするじゃない というより生臭いなあ どうしたの』
 『ちょうどいいところに帰ってきたわね すぐに着替えてらっしゃ
 い 夕食の準備を手伝ってもらうわ 高橋のおばさんのお土産ね』
 『はあん おばさんの用事はお見合いじゃなかったのか ふうん』
  ぶうぶう苦情を言いながらキッチンへ 途端に鼻を突く潮の香り
 テーブルの上には大きな発砲スチロール製の箱 どうやらこの中に
 生臭い物体が入っているらしい お土産ってなんだろう
 『面倒なのは嫌だなあ とにかく着替えてくるか 嫌なお土産』
  更に苦情を言おうかと思ったが 話が薮蛇方向へ逸れそうな気も
 したので割愛 素直に従うのが平和な暮らしの基本である お母さ
 んは割烹着で仁王立ちだし 家事を怠けるのは減点が大きい
  とにかく速攻でスエットに着替える その上からエプロンだけ羽
 織り キッチンに戻るまで約5分 機敏な動作でヤル気をアピール
 『おまちどうさま なんかすっかり主婦の自覚でしょ あたしって
 ばいつでも結婚できる状態にあるわけ だからおばさんにも』
 『その話はいいから さて 自覚があるのなら結構よ 今晩は少し
 気を入れて頑張ってもらわなきゃいけないわね 怪我するから』
 『ケガ なにそれ 危ないことなら嫌だな 噛む魚とか わああ』
  お母さんに促されて発砲スチロールの箱をシンクに運ぶ 冗談で
 そんなふうに話したのに 中でなにやら暴れる音 生きた魚なんて
 冗談じゃない 開封する前に既に逃げ腰 今回はさすがにパスだ
 『ああっと ダメ 生きた魚ならあたしはダメ ごめんなさい』
 『そうもいかないわよ 今日はどうしても ようこちゃんに魚料理
 をマスターしてもらわなきゃ 慣れれば簡単よ 御料理の基本がす
 べて含まれているから とても勉強になるはず さ 頑張ってね』
 『だって生きてるもん 箱の中でバタバタってさ こんなの殺して
 料理するわけ 他のことはなんでもするけど これはダメ』
  お母さんは躊躇せずに箱をひっくり返す するとシンクの中に暴
 れる魚 生臭い臭いがパッと広がって 飛び散る飛沫が顔にかかる
 なにか根元的な嫌悪感 食べるのは構わないけど殺すのは勘弁だ
 『意気地がないわね スーパーで買ってきた魚は喜んで食べるでし
 ょうに お母さんが締めるから ようこちゃんが捌きなさい』
 『締めるの捌くのって ふげええええええええ こっちを睨んでる
 じゃない わあああああ 魚の血って赤いや ひゃああああ』
  非常に見慣れたカタチの魚 おそらくは鯛じゃないだろうか お
 母さんは出刃包丁で鯛の頭を殴り 横顔の後ろとシッポの付根に切
 れ目 シンクに流れる真紅の液体だ 魚の血液が赤い衝撃の事実
 『知ってるでしょ 真鯛ね 高橋のおじさんが釣ってこられたの』
 『わざわざベンツに乗って自慢しに来たわけね お蔭であたしって
 ば大迷惑 どちらにしても嫌な親戚だなあ まだ生きてるの』
  ダラダラと血が流れ 辛そうにも苦しそうにも見えない淡白な表
 情 動かなくなったところを見ると絶命したのか 血溜まりに横た
 わる鯛の体躯 真鯛と説明されても他に鯛の種類があるのか
 『大丈夫 もう暴れないと思うわよ それじゃあようこちゃんに捌
 いてもらいましょうか はい これがウロコ取り器ね』
 『はあ これでウロコを取るのか 前からなにに使うものだろうっ
 て思ってたのね 世の中には知らない方が良い事もあるのだなと』
 『片手を添えて左右に動かすの 背ビレには気を付けなさい』
  あたしがなにを言ってもお母さんは聞いていない 手渡された金
 色の櫛みたいな器具 世界の秘密は解明されてゆくけれど あたし
 の目前には派手に飛び散るウロコ達 嫌な感触だ
 『もっとゆっくりと そうそう 飛ばないように手を添えて お腹
 のところまで綺麗に取りなさい 取れたら水洗いしてまな板の上』
 『むうん 手順なんか予想もできないよ 普通の主婦は魚なんか殺
 さないんじゃないかな 切り身を買ってきて 焼くとか煮るとか』
  これは正直な意見だ 一匹まるまるの魚を目前にして さて刺身
 にしましょうなんて主婦がいるのか 賢く家事をこなすのならスー
 パーで買うべきだ 旦那には釣りをさせない なんなら魚類は宗教
 上の理由で食さない家庭とか そんな噂を流すのもいい
 『文句を言わないの できることを省略するのと できないからや
 らないのと それは同じじゃないわよ まず頭を落とすのよ』
 『頭を落とす ひいいいやあああ 頭ってどこからどこまで 顔と
 胴体とシッポじゃない 魚の顔 嫌な表現だなあ 顔だって』
 『顔でもいいわ エラがあるでしょ それに沿ってくの字の反対に
 そうそう 少し力を入れて中骨を切るの ぐいっと強く』
  嫌悪感は限界を超えて それでもこの感触はどうだろう 三角形
 の刃物をあてがう部位 クの字がなにを意味するのか聞く暇もなく
 『やあああああああって あらら おかーさんってば 堅くって包
 丁が入らない ぐいっと力を入れてもダメだわこりゃ』
 『もう少し背ビレのところよ ここ ここに刃を当ててぐいっと』
 『やだなあ おわ この突き当たるのは真ん中の骨かな これも力
 任せに切ってしまおう ぶじゅぶじゅぶじゅって感じがなんとも』
  お母さんに指定された場所から一気に切断を試みる ウロコの形
 状が変化している箇所 気持ち良く中頃まで一気に そして硬い骨
 も体重を掛けて切断 お腹のところに差し掛かって事態は一変した
 『こ これは なにか緑色の液体が なぜ なぜ魚の体内から緑色
 の液体が おかーさんってば ほらほら 変な魚じゃないの』
 『先に内蔵を取っておいても良かったかしらね 緑色はニガダマだ
 から素早く水洗いをして ほおっておくと苦い味がつくのよ』
 『はあ にがだま ときめくような専門用語 急いで水洗いかあ』
  悪夢のような解体作業にも少し慣れてきた 混乱のうちに切断さ
 れた頭部がシンクに転がり 洗い方の予測も付かないので胴体の方
 も同じく転がす 水道水を勢いよく流し わからないままに液体の
 除去作業 見れば断面に内蔵のようなもの おそらく内蔵だろう
 『そのままでいいから腹ビレのところを切って そう そしてその
 まま内蔵を引っ張るの 背ビレは刺さるから気を付けてね』
 『ううわああ これはまたゲロゲロ状態 生物の時間の解剖実験を
 彷彿させるような でも思ったよりは淡白な内蔵よね ふうん』
 『御託はいいから綺麗に洗って ここから先は刺身包丁を使うの』
  すべて指示通り シンクに内蔵を放置したまま胴体部分をまな板
 に乗せる どうも転がった頭部の視線が気になるけれど それにつ
 いて感想を述べると叱咤されそうなのでこれも割愛
 『サシミボウチョウ これはまた職人さん堅気だよね おかーさん
 ってばなんでも持ってるのね 凄いなと思う それでどうするの』
 『ようこちゃんも名前だけなら聞いたことがあるでしょ 魚を三枚
 に下ろすのよ 背ビレに沿って包丁を入れなさい 丁寧にね』
 『背ビレに沿う なんかイメージが湧かないなあ まずはお手本』
  要求される技術がどんどん高度になる 説明だけでは予測が追い
 付かないから ここはひとつお母さんの模範演技だ 3枚におろす
 のだから最低でも同じ工程が2回はあるだろう と考える
 『それもそうね よく見てなさい 左手を沿えて包丁を入れるのよ
 骨の感触を探しながら真ん中まですーっと こんな感じ』
 『ほうほうほう 見れば簡単そうだけどどうかな あたしもやって
 みる こんな感じでと は いかないなあ 反対側も同じなの』
 『骨に身が付いてるわね もったいないから丁寧にやりなさい』
  非常に難しい 背ビレに水平に包丁を移動させて 真ん中の骨か
 ら延びている骨に合わせて分離する 感覚的には把握しているけれ
 ど 実際にできるかどうかは技術的な問題だ お腹側もやってみて
 どうにか分離 もしかすれば2枚におろした状態か
 『ふんふんふんと こんな感じ 少しお肉は残ったけれどね 裏側
 も同じでいいのよね 思ったよりも簡単な作業じゃない 楽勝ね』
 『刃物を持って騒がないの 遊んでないで続けなさい 最後までき
 ちんとやり遂げる ようこちゃんにはそれが必要ね ほら』
  手順は同じ するするすると骨を分離して 意外と簡単に三枚お
 ろしができてしまった あたしには潜在的な料理の能力が備わって
 いるのだ 暴れる鯛を三枚おろし 独身にして主婦のプロ状態
 『いやいやいや 立派にやり遂げたじゃない こうしてまな板の上
 に切り身の鯛が乗ってるわけだし さっきまで暴れてたのにね』
 『夕食にはお刺身の予定よ これはまだお刺身じゃないわ さてと
 あとは腹骨を取って皮を剥く 最後に小骨を抜いて切り分けるの』
 『ふうん でもそんなのは内蔵ドロドロに比べれば たいしたこと
 じゃないもんね どんどんやろう お腹の骨 アバラボネかな』
  肋骨らしき部分には白いぶよぶよ これはきっとコレステロール
 内蔵にも大量に付着していたところを見ると おそらく死亡原因は
 肥満による動脈硬化か内蔵疾患 心臓病も考えられる でも本当は
 他殺だったりするのだ あたしは死体遺棄の共犯 更には食べてし
 まうのだから恐ろしい そんなことを考えながら作業を続ける
 『この骨にもお肉が付いたけど ま 仕方がないとして 皮の剥き
 方がわからない どうするの こんな感じかな あ 切れた』
 『そうやって少しずつ身が減っていくのよね はいはい 皮を下に
 して尾の方から潜り込ませるの 包丁じゃなくて身の方を動かせて
 ね ゆっくりと慎重に そうそう ゆっくりやりなさい』
  そろそろ本当に面倒になってきた 勢いをつけて一気に引き剥が
 す 身の身が50%と皮の身が50% 半分も残れば成功であろう
 『あはははは これはまた豪勢な感じになったかな いやいや』
 『もういいから骨を抜きなさい こんなに無駄の多い料理もないわ
 ね こんな調子で家計は維持できません それは確かね』
 『皮も焼いて食べればいいと思うよ 足りない分は精神力で補う』
  これはあたしの持論だ どんなことだって最後にはヤル気だと思
 う 努力する心持ちには吝かじゃないから 非常に希なケースに於
 ては精神力による補填も可能だと思う 要は解釈次第か
 『ようこちゃんに言われなくてもそうするつもり とにかくお刺身
 を仕上げるように そろそろお父さんが帰ってくるわ』
 『ふうん 今日は早いんだね なら褒めてもらうとしよう』

  青磁の皿に綺麗に並べる ものの10分前には発砲スチロールの
 箱の中で暴れていた鯛だ それが今や10切れほどの刺身になって
 いる これがすべてあたしの手によるものかと思うと少しにまにま
 凄いじゃない 自分で自分を褒めてやろう
  それにしても夕食に鯛の刺身 どう考えても こんなものスーパ
 ーで買ってくるのが手っ取り早い しかしあたしの場合 料理がで
 きないからやらないのじゃなくて 合理性としてやらないだけであ
 る その辺の違いは大きいと思うのであった





             》 しびる 《
+++++++++++++++++++++++++++++++
(のりこ)>ようこちゃんのお料理シリーズですね タイですか
(しびる)>鯛じゃなくてタイだよな 動植物で漢字を使ってもいい
      のは あわせても20種類くらいだろ
(のりこ)>まずちょっと気になったのが『不満のフ』 これはどこ
      かで使った『遺憾のイ ごめんのゴ』の亜種ですね
(しびる)>ふむ 感情を表すときは頭文字を使用する美しき我が国
      の文化 ってことで
(のりこ)>あと 3枚に卸すときには刺身包丁じゃなくて出刃包丁
      じゃないですか 皮むきあたりからでしょ 刺身包丁は
(しびる)>よく読んでるな まあ基本はそうだわな これはようこ
      の母親のオリジナル なんなら全編文化包丁でも可能な
      作業だし 卸すときは薄刃の方がラクだって流派もある
(のりこ)>その気になればどうにでもなりますけどね あと身の付
      いちゃった皮の利用方法も考えたいところですね
(しびる)>塩でもふって焼けばいいじゃん
posted by 篠原しびる at 00:06| シンガポール ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 連作系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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