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2006年03月23日

編集会議 102

(しびる)>ういーっす 飲み会やるぞい 車まわせ
(のりこ)>あ おはようございます なんすかいきなし 飲み会?
(しびる)>おう んじゃ地下の駐車場で5分後集合な
(のりこ)>ちょっと待ってくださいよ まだ部屋着ですし顔もなお
      さなきゃいけないし 長丁場ならニャンコ先生のご飯と
      水も用意しなきゃいけませんし そもそもー あー

     【17分後/マンション地下2階駐車場にて】

(のりこ)>ふう ぎりぎりセーフ
(しびる)>どっぷり遅刻じゃん それで顔を治したのか?
(のりこ)>治したんじゃなくて直したんです お化粧をしなおした
      ってこと そもそも5分後なんて言われましてもですね
      女の子はそんなに刹那に行動できないわけですよ
(しびる)>うるせーな んじゃ現場へ向かえ うわ ぶつけてるな
(のりこ)>あーそこ いつだったか縁石に乗り上げて
(しびる)>高価な車がボロボロじゃん 気を付けて運転しろ

   【らさに10分後/居酒屋・カリョウビンガ茶屋にて】

(しびる)>さあて どんどこ飲むかね 店員つかまえて注文しろ
(のりこ)>ういっす しかしまあひさしぶりの飲み会ですね 去年
      の夏以来ですか たまには慰労してもらわないと
(しびる)>誰を? のりこをか? お前なんざ慰める労なんてなに
      もねーじゃん バカ言うんじゃないよ まず生大な
(のりこ)>そんな言い方ってないですよ なんでもぽんぽん思うこ
      とを言葉にすればいいってものでは あーそこの店員く
      ん 注文するから そもそも放置するってのはどうなの
(しびる)>まず生ビールの特大ジョッキな あとなんか食うもの
(のりこ)>私は中ジョッキね それとー なに食べようかな メニ
      ューいっぱいでよりどりみどりちゃん えーっと まず
      はピリ辛鶏唐と揚げダシ豆腐 うん 全部一個ずつでね
      しびさんはどうします?
(しびる)>しかしお前は呆れるくらい毎回同じものを注文するよな
      追加でナマコ酢とカニ味噌 ビール大速攻でな
(のりこ)>あー? 毎回メニューを見て選んでます故 なんか勘違
      いしてませんか で? 宴会の描写はいいんですけど
(しびる)>なにさ 今回は飲み会なんだから宴会描写で問題ねーだ
      ろうが よしきたビール んぐんぐんぐ ぷはー
(のりこ)>あいかわらず乾杯もなしに一気飲みだし でもしびさん
      とこうやって飲みにくるのってホント久しぶりですよね
(しびる)>まあな リアル飲み会はそこそここなしてるんだが 若
      いの連れて飲み歩くとあんまし飲めないからさ たまに
      バカ飲みしたいときもあるじゃん んぐんぐ うめー
(のりこ)>ふうん 上に立つ人はたいへんですね 私なんか同等の
      飲み会しか行きませんから よくて合コンで奢りとか
(しびる)>合コンなんてやってるのか ところであずさとは仲良く
      してるのか? AUの連中ってどうしてるんだ最近は
(のりこ)>めーてるはあいかわらずですよ 下のお嬢ちゃんがまだ
      小さいですしね たまに逢いますけど ほとんどメール
      かな れいこさんとかもあいかわらずですよ
(しびる)>あいかわらずってのは表現としてどうよ まあ あいか
      わらずなんだろうけどさ ウチが設定をいじらなきゃ世
      界はそれほど劇的に変化しねーわな どうしたもんかね
(のりこ)>どうしたもんかねえ はウチの活動でしょ? 今期の目
      標は『仕切りなおす』でしたけど そこんとことか
(しびる)>ふむ この唐揚げ辛いな なんか海鮮系のモノを注文し
      ろ 例の書道企画な あれ来週からに決まったから
(のりこ)>ういっす 店員くーん 春のお刺身盛合せをお願いねー
      来週って来週の水曜日ですか テキストきましたっけ?
(しびる)>いや テキストはR子先生のところに送られてくる仕組
      みらしい 先日話しててさ んじゃ来週からってことで
(のりこ)>いよいよですねえ それはまあ それでいいとしまして
      あと順番に 例えばロト6企画はどうなってます?
(しびる)>最近は定番とQPで1枠買ってるんだわ それがたまに
      5等に当たって購入代金回収ってくらいかな
(のりこ)>QP? マヨネーズですか
(しびる)>クイックピック 機械選択式購入な まあこれは長丁場
      でいくからさ この数年のうちに3等くらいがくればさ
(のりこ)>んじゃジャンボ系もダメダメですか 直近なら緑とか
(しびる)>グリーンジャンボか あれっていつが抽選だったかなあ
      まだ調べてないけど んぐんぐんぐ 醤油くれ
(のりこ)>ういっす これってなんのサカナでしょ?
(しびる)>ハマチじゃなくてカンパチかな のりこは青サカナにア
      レルギーってないんだろ いい設定だよなあ
(のりこ)>しびさんもサカナ系のアレルギーってないじゃないです
      か 花粉だって設定をいじっちゃえばいいのに
(しびる)>リアル生活はそうもいかんのよ まあビールにアレルギ
      ー反応するまでは生きていけるからさ 仕方ねーや
(のりこ)>仕方ないですけどね そもそもしびさんはムリしすぎで
      すから 長生きにはそのところ改善してゆかないと
(しびる)>ムリも仕方ねーな 長生きよりもいまの生活をどうにか
      しなきゃさ 仕事はできる限りする たまに限界を超え
      るくらいする ムリムチャ上等 そゆもんだ
(のりこ)>かなり稼いでらっしゃるように推測しますけど まだ足
      りませんかねえ とにかく死なないでくださいよ
(しびる)>努力する まだいろいろやり残してることもあるし し
      かしこっちでの作業時間が確保できないのは問題かな
(のりこ)>大問題ですよ もうコミックスやアニメってとんでもな
      い量が溜まってますし どうしますかね
(しびる)>どうするかねえ んぐんぐ ういー 生大注文しろ
(のりこ)>了解っす 店員くーん 生ビールを大ジョッキと中ジョ
      ッキで あと春の塩焼きそば特盛りもお願いねー
(しびる)>応急処置として馬謖切りしかないだろうけど 恒久的に
      は体制の再構築かな それは追々考えるわ
(のりこ)>メルマガも長いこと発行してませんしね まあ事務所の
      活動を伝えるのはどんなカタチでもいいとは思いますけ
      ど 打ち切るならそれなりのケジメも必要ですか
(しびる)>キレイなこと言うよな のりこはさ 建前はそうなんだ
      ろうけど フェードアウトでもいいじゃん?
(のりこ)>キレイ事って どっちにしてもケジメつけないなら同じ
      じゃないですか きみののーぞみはフェードアウト
(しびる)>中島御大か そういや 夜会って18周年とか言ってた
      けど まだそんなのか? たしか中学の頃オールナイト
      ニッポンで もうかなり回数重ねてるようなことを話し
      てたように記憶してるんだけど なんか覚え違いかな
(のりこ)>懐かしいですねえ 月曜日の1部ですよね みゆき姉さ
      んのあとは小暮閣下でしたよ いい時代でした
(しびる)>昔話なんかするなよ 年寄り臭いなあ 倒れるときは前
      のめりで 振り返っちゃうと折り返しだぞ それくれ
(のりこ)>これですか 同世代なんですから昔話もいいじゃないで
      すか そもそもネタを振ったのはしびさんでしょ
(しびる)>時代考証の話だろ 昔話とは別もんだ しかし最近じゃ
      金曜2部とかしか聴かないもんな 八嶋だっけ?
(のりこ)>さあ ラジオはFMしか聴きませんから そもそも人生
      にそれほどラジオを聴くことってあります? たまーに
      カーステで聴くくらいじゃないですか んくんく
(しびる)>そりゃ人それぞれライフスタイルがあるだろ まあいい
      大ジョッキ追加な 焼きそばこねーな 再注文か?
(のりこ)>そゆことするとふたつくるんじゃないですか あれです
      よ 登録画面を不用意に更新すると重複登録されますか
      らして 焼きそばを削除して済めばいいですけど
(しびる)>あいつは生身の人間だろうが(苦笑) そゆのは臨機応
      変りー最後の一葉で対処するんじゃないのか
(のりこ)>臨機はOヘンリーの枕詞ですからねえ んー そろそろ
      ネタ話濃度が濃くなってきましたか そうなればですね
      私はチューハイに切り替えようかな
(しびる)>人間はだな ビール飲んでればそれで大丈夫なのよ
(のりこ)>極論ですねえ 店員くーん 塩焼きそば特盛りはまだな
      の? あと大ジョッキお代わりと チューハイカルピス
(しびる)>気持ち悪いもの飲むなあ ところでのりこは男っ気はな
      いのか そろそろ設定上でもどうにかしてやろうか?
(のりこ)>なにをいきなし(苦笑) そゆのは設定でどうこうして
      もらうものじゃないですよ まあないこともないんです
      けど 友達以上なんたら未満ってところですか
(しびる)>なんたら未満か のりこは恋愛関係には幸薄そうなキャ
      ラだからなあ 強気で攻めないと そゆことはさ
(のりこ)>自力でどうにかします故 しびさんはどうなんですか?
(しびる)>しかし今期もそうこうしてるうちに3月下旬だぜ
(のりこ)>ロコツに話題を替えられますし しかし年月の経過の早
      いこと 強制引っ越しが11月の末でしたのに
(しびる)>あれは驚いたよな あしたにはブログ閉鎖って そゆこ
      とは早く言えってんだ それからどうもメルマガの発行
      が億劫でさ メルマのサイトなんか行きたくもねーし
(のりこ)>告知は11月の頭にはされてたんですけどね あとで調
      べると再三メールでも告知されてたみたいですし
(しびる)>まあな でも結果だしな おうビールがきた んぐんぐ
      んぐ ういー んじゃなにかネタ大会でもやるか
(のりこ)>はあ ネタ大会ですか あんましテンションも上ってな
      いですけど またウソ企画大会でもやりますか
(しびる)>よしそれいけ 第1回チキチキウソ企画大会ーっ
(のりこ)>なにでやるかなあ んじゃメジャーなところで ハリポ
      タDVD企画『学園イチのお騒がせ男がDVDになって
      帰ってきたーっ』って感じで タイトル回転させます
(しびる)>感じなのか(笑)
(のりこ)>『大人気ライトノベル ハリポタシリーズが初のドラマ
      化 伝説の第1話が満を持してのDVD発売 主人公の
      針山ポタ太(通称ハリポタ)が友人ケンジのために一肌
      脱いだ!? アスカの気を引くためにポタ太が企画した
      美女だらけの水泳大会で大騒ぎ! 社会現象にもなった
      ちょっとエッチなドタバタ学園ラブコメディ 初回出荷
      特典はアクションフィギュア・平泳ぎアスカたん』
(しびる)>ツッコミどころ満載だなあ ドタバタ学園ラブコメディ
(のりこ)>第1話タイトルは『ハリポタとケンちゃんのキモチ』
(しびる)>それは『賢者の石』から取ってるわな キモチなのか?
(のりこ)>意志と書いてルビ振ってキモチと読ませます あと『映
      像化は不可能と言われていた女子高生500人による一
      斉オッパイぽろりシーンも 最新3DCGでリアルに再
      現!? DVD版はハイビジョン画質で水しぶきも消え
      てる?』って煽りはCFの深夜バージョンに入れます
(しびる)>きちんと組んでるねえ んじゃ2話目もいこうか
(のりこ)>ういっす 『またもや学園イチのお騒がせ男が帰ってき
      た!? アスカの誘いにも乗り気じゃないケンジにホモ
      疑惑が急浮上? 友人の汚名払拭にポタ太がまたもや一
      肌脱いだ!? ケンジをその気にさせるためにポタ太が
      企画した美女だらけの運動会で大騒ぎ! ドラマ中のセ
      リフが流行語大賞にも選ばれた ちょっとエッチなドタ
      バタ学園ラブコメディ 初回出荷特典はアクションフィ
      ギュア・ブルマdeアスカたん』
(しびる)>いいねえ 流行語大賞も定番だよなあ タイトルは?
(のりこ)>第2話タイトルは『ハリポタとアスカたんの憂鬱』
(しびる)>そうきたか なるほど 大ジョッキ追加な
(のりこ)>店員くーん これとこれ追加ね あとドラマCD企画と
      かも平行して『オープニングアニメの声優陣によるアニ
      メバージョンハリポタシリーズも大人気!』
(しびる)>OPはアニメなのか よし さててきとうに行も埋まっ
      たし てきとうに締めておくか
(のりこ)>ういっす

posted by 篠原しびる at 04:37| シンガポール ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 編集会議 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年03月22日

連作13 叢連作09 こうか

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 種別 連作系第13期 叢連作09
 題名 『 こうか 』
 初出 ニフティサーブ/FJAMEA/18番会議室
    1996年03月08日00時05分
 注釈 行頭スペース+30W
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SUBJ:【叢連作】09 こうか

 Sibi-Tem V.4.1 (s+30)

 挿話の総和が叢話たるか そうはいかず 叢連作 #09(短編)
 



           『 こうか 』


                        作:しびる





  大都市間を結ぶ幹線道路 予算の都合か高速道路でも有料道路で
 もない まあ通行人がいるような場所でもないから 意味的には車
 両専用道路と大差ない ひらけた場所のわりには民家も疎らで 制
 限速度以上で通行する車両が夜間も途切れることなく爆走している
  発見したのも通行中であった ロケハンで物色していたわけでは
 ないが 使えそうな場所を探す目は既に習性である 別の仕事で移
 動中 内部の構造まで予測するには類まれな直感が必要だ 更に建
 物の管理状況や権限者 実際に使用に供することができるのは 全
 体の1割程度がいいところ ダメなら不法侵入の手段もあるが

 『操業はしてないんでしょ 管理者は不動産屋かしら どうなの』
 『どうやら重複しているようですな この社名 それと不動産屋』
  濃紺のコートを着込み 長い黒髪とサングラス 首から下げたシ
 ネマスコープ 手に持つ露出計に小さな緑色の発光ダイオード 赤
 い唇が開閉するたびに周囲のシワを際立たせる
 『それは面倒ね 不動産屋の許可だけ取れば構わないんじゃないの
 本社が倒産していないなら そうね タイアップの方法もあるわ』
 『食材部門から撤退しているようですよ 協賛させるには ウチの
 得意先を納得させなければなりませんな かぶる業種もあります』
 『ふうん 詳しいじゃない ま 調べてからね』
  そろそろ闇夜が迫る頃 目前には背の低い外壁が彼方まで続いて
 いる 建物自体は幹線道路に面しているが 玄関は裏側に位置して
 いる 車の施錠をリモコンで確認し空を見上げた
 『そうですな 単独でスチール撮影をすればよかったのでしょうが
 そのなんです 直感が呼ぶわけで 見ていただくのが早いかと』
 『いいのよ 現場を疎かにしないのが信条だもの 女性監督はフッ
 トワークが軽いってね キネマ放談9月号だったかしら』
  コートを翻してタバコを取りだす 彼女は辣腕の女性映画監督で
 ある 確認レベルのロケハンに監督を同行するのは当然だが 今回
 のように交渉以前の物件に連れてくるのは稀有である それには理
 由があった 直感は言い訳でしかない
 『鍵なんかは手配してないでしょ ここから入れるわ この感じね
 良い場所を見付けるじゃないの 内部も期待できそうね』
 『機材は搬出済みらしいですから かなり広く使えると思いますよ
 外観からなら天井も高いですな クレーンまでは無理でしょうか』
  無人の守衛所が門扉に隣接している 目的の物件は冷凍食品の加
 工工場 操業停止から凡そ14年 部品などの腐敗が最適な頃合い
 である ちなみに15年以上経過すれば 消防法と税法の都合で撤
 去される場合が多い ほぼ限界の物件ではある
 『なるほどね かなり荒廃しているわ この荒んだ感じが視覚的に
 インパク知の99ってところかしら 1号工場に2号工場ね』
 『オフィスはこちら 2号工場の方にありますな 待機場所として
 活用できるかどうか しかし 少し暗くなってきましたか』
 『ふん それが狙い目なのでしょう 期待してるわよ 非常にね』
  地平線に張りつく夕日が最期の時を静かに迎えた瞬間 肩肘を抱
 えたシルエットが煙を吐く 最初から御見通し さて概要は予測で
 きるとしても 詳細な内容まではどうだか
 『察しがよろしいですな 調査中に気になるウワサを聞いたもので
 実地検証ならカントクと御一緒が楽しいかと ただのウワサです』
 『それはそれは いいじゃない でも電源は死んでるかしら』
  搬出用タラップを迂回して階段を登る 工場のドアは屈強な金属
 製の引戸 呪詛めいた文字は手書きの注意書き 数回の開閉で平均
 的労働者の給与数週間分のロスが発生するらしい ある意味では呪
 詛と解釈しても構わないか
 『懐中電灯では足りませんか おう これはまさに結界のような』
 『ふふん ダメよ すぐに閉めなきゃ 今月の報酬が消えてなくな
 るらしいじゃない 本物の結界じゃないの 工員達にとってはね』
  ドアを引き開けるとビニール製の遮断幕 室内の温度を保つため
 か その幕にも開放厳禁の文字 経費節減も極まれりだ
 『資料では輸入食材の海外加工による閉鎖とか 現在じゃ部門ごと
 辞めちまってるらしいですが ウワサはそうじゃなかった と』
 『なんか妙な臭いね どうやらタバコは揉み消すのが賢明らしいわ
 で 昔の工員はなんて言ってたのよ ソースは元工員でしょうに』
 『そこ 足元に気を付けてくださいよ いや それがねえ』
  湿気た空気が淀んでいる 化学薬品のような腐敗しつつある生物
 のような なんとも陰気な香りが漂う 懐中電灯では彼方まで照ら
 すことができない距離 機材が搬出されているのは資料通り
 『数年前までは 浮浪者が住み着いたり 暴走族によるレイプ事件
 なんかも発生してたんですがね それはもう賑やかな様子で』
 『この感じじゃ5年は効かないわね かなり初期の話でしょうに』
  それは事実だろう 不法侵入者で賑やかだったのは最初の数年で
 はなかろうか 照らす床には風化した足跡が多数 しかしこれは相
 当な年代物 なによりも勘でわかる この淀みは5年では効かない
 『へっ 怪しい話ですから それがプッツリと静かになった よく
 ある話でさ お決まりの怪談話 死んだ工員が徘徊する類の』
 『くだらない 本物だって売れないわよ 教祖や転生が流行の昨今
 だもの 本物の幽霊ぐらいじゃ猫も見ないわ で 裏はなによ』
  工場の中心線に沿うように柱が並ぶ スプレーで殴り書きの英文
 モドキにスペルミス 他の漢字は言うに及ばず 社会的不満と性欲
 を混同する馬鹿さ加減に吐き気を催す 愚者の古墳だ
 『操業停止は大規模な汚染でさ 折り良く暴露された政界汚職に埋
 もれましたがね グループ企業の強み 膨大な退職金で全員の口を
 塞いだって仕組らしいですな 時効になるには早すぎる』
 『半減期が1万年じゃ洒落にならないわよ 仕方がないから巨大化
 するか そうでなければ超能力ねえ ふふん くだらない』
 『はなはだ察しの良いことで へっ リサイクルマークの94 プ
 ルトニュウムは大切な資源ですか が そうじゃないのがミソ』
  天井には不気味なダクトが縦横無尽 あまり利口な設計ではない
 なにか施設を持て余していた印象 多弁な元工員に教えられた場所
 はどの辺りか 確か目印はピラミット型のダクト その真下
 『含め過ぎよ 少し飽きてきたわ 本を手直しすれば使えない場所
 でなし 深夜に予定があるのね できれば間に合わせたいわ』
 『本物じゃ連れてきませんな イメージで勝負が業界の鉄則 それ
 を提供しようって言うんでさ 誉められこそすれ叱られはしない』
  懐中電灯を振り回し ようやくピラミットを発見した ここから
 20メートル程度の距離か 更に異臭が濃く漂う
 『ウワサが半分に実話が半分 あの三角の下 増設工事のコンクリ
 ートが奇遇にも汚染された工員だけを埋めちまった あの部分には
 地階への階段があったそうですな これがウワサの部分』
 『やけに矛盾した内容じゃないの 現実ならとにかく 虚構に設定
 するなら矛盾は頂けないわ それで 実話の部分は』
  ゆっくりと歩く 目的は床にある 実際のところは実話半分にウ
 ワサ半分だろうが もしかすればすべてが実話 そうだとしても世
 界の明日にはなんら影響を与えない くだらない事件である
 『ありました ここいら一帯が階段の跡ですな かろうじてコンク
 リートの痕跡が確認できる たくさんの楕円形 これですな』
 『それで 小さな丸や大きな丸 並んでいるのもあるわね 黒い染
 のようだけど 講釈を聞かなきゃダメなようね なによ これは』
  床には多数の染が散らばっている 等間隔に並んだ数センチ程度
 の染や 歪んだ鍋のようなカタチの染 どれも真新しく つい先日
 出来上がったような色をしている どれもどす黒い
 『なるほどねえ これは聞いたとおりだ なんのカタチに見えます
 かね 見る人には不気味な続きが見えるそうでさ へっ』
 『カタチねえ なにかこれは そうね ドックで撮影するじゃない
 断層映像ってあれね あはははは なに この上に指や頭や上半身
 が見えるわけ 生き埋めになった人達が 面白いじゃない』
  想像すれば不気味だろう 誰が考えた怪談か知らないが 設定も
 状況も素人とは思えないほど巧妙で完成されている 見せたかった
 のはこのイメージ なかなか使えそうな素材だと思うのだが
 『次回作には使えそうね 配給も喜ぶんじゃないの あ』
 『そうでしょう CGなんかを駆使しまして おお』

  目的を果たしてきびすをかえした 工場の中は完全な闇 出口は
 どの辺りだったかと懐中電灯を振り回した 天井や壁やダクトが闇
 に浮かび上がる そして最後に床を照らしたのだ そしてふたりは
 言葉を失った なんとも異様な光景が広がっていたからだ

  床一面に並ぶ青白い顔 すべての瞳が明りを照り返していた








             》 しびる 《
+++++++++++++++++++++++++++++++
(のりこ)>えーっと 質問やツッコミはいろいろあるんですが ま
      ずとにかく なんですかこれ? 映画のロケハン?
(しびる)>うんまあ 昔ロケハンでこういう物件を調べたことがあ
      ってさ いつか使えないかと思ってたんだけど
(のりこ)>人生に廃工場を下見するってことがありますか よもや
      映画やテレビのお仕事ではないでしょうし しびさんは
      もしかして不動産屋さん? じゃないかなあとか?
(しびる)>そゆのはいいの しかしなあ モルタルのベタ塗りに人
      体の断層映像ってネタは どうかね わかりづらいか?
(のりこ)>モルタルって あーコンクリート どうですかねえ も
      うちょいていねいに描写した方が? 判読度45%?
(しびる)>キツイなあ 90%以上はないとネタじゃないよな
(のりこ)>それとー 最後はしびさんのお気に入り『あ』 これは
      もうちょいあとの発現かと思ってましたが(苦笑)
(しびる)>しび事務所名物『あ』締め(苦笑) ところで あ
(のりこ)>なんですか急にヘンな声を あ

posted by 篠原しびる at 09:34| シンガポール ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 連作系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

連作13 叢連作08 ないとめあ・ないと 4

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 種別 連作系第13期 叢連作08
 題名 『 ないとめあ・ないと 4 』
 初出 ニフティサーブ/FJAMEA/18番会議室
    1996年03月06日14時07分
 注釈 行頭スペース+30W
+++++++++++++++++++++++++++++++
SUBJ:【叢連作】08 ないとめあ・ないと 4

 Sibi-Tem V.4.1 (s+30)

 挿話の総和が叢話たるか そうはいかず 叢連作 #08(短編)
 



        『 ないとめあ・ないと 4 』


                        作:しびる





  夢の中だから当然ではあるけれど それにしてもこの距離感の喪
 失はどうしたものだろう 巨大な物体が彼方の空と樹海を背景にぶ
 ら下がる 思わず息を飲むような遠近感の撹乱 雲のない青い空は
 どこまでも澄んで拡がり 地平線まで続く暗緑色の海に何者かの影
 が滲んでいる 死角から照り付ける陽差しが事象すべてを隈取る
  時折の烈風に噎返るような樹木の香り それに混じる焦げた臭い
 可聴範囲ぎりぎりの重低音が響いている
  真黒の甲冑に青と緑を照り返し 豹頭ビデンスが先導を務めて歩
 いてゆく あたしはパジャマにローブを纏い 背後には極彩色の甲
 冑娘が続く 気温のわりに湿度は低く これほどに高所でなければ
 状況を楽しむ余裕もあっただろうに ちなみに頭の上にはカエル姫

 『ひええええ フィラ もしかしてあの逆立ちしている場所まで登
 るわけ あたしも行かなくちゃいけないの やだなあ』
 『夜更かしするからいけないのよ あたしの代わりにロドゲルシア
 に乗ってもらうわ ビデンス少尉 中心核探査の報告はまだか』
  細い通路が壁際に延びている 少しずつ歩くにつれて妙な感覚が
 体の重心を変化させる なにか眩暈にも似たイメージ よく見れば
 通路自体も螺子曲り 最後には逆転して頭上に続いている
 『デルフィニュームの断頭室周辺が中心核です サンクレストの使
 者は疑7期の処理を施されていたらしく 処刑と同時に拡散融合を
 開始した模様です 姫様 単独であたられるのは危険かと』
 『ふん 馬鹿王の企てそうなことだ 検閲官を処刑せよ 心配は要
 らぬ 波動だけでも一国を滅ぼせよう でも操縦はななよだわ』
  フィラの会話は判別しやすい 偉そうに話せば家臣に対してだし
 急に崩れればあたしに対してだ しかし内容の理解となると途端に
 怪しくなる あいかわらず処刑話ばかり どうにかならないものか
 『また処刑だなんて 殺すのはダメだって言ってるのに そのうち
 部下の人がいなくなるよ みんな殺して和平もないじゃない』
 『おほほほほ 小娘 この崇高な世界をカリン界と同等に考えるで
 はない まあ下等ならば仕方のない思考かしら あら 姫姉様 御
 免あそばせ ほほほほほ』
  背後から急に黄色い声が響く リギダは高飛車な言動に相応しい
 豪華な装い 人を下等扱いするだけの容貌は兼ね備えているが な
 にか寸でのところで下品さが混じる 非常に微量だがフィラとは違
 う フィラはカエル姫だけれど高貴なのだ 違いはなんだろう
 『ななよ この世界に発生すれば 大抵の場合は7度死ぬのよ 肉
 体が滅んでも記憶を保ったまま転生するわけ だから死ぬのはたい
 したことじゃない ななよの世界とは違うのね』
 『ふうん でも痛かったり苦しかったり 悔しかったり悲しかった
 り 楽しいわけじゃないでしょうに なんかヘンだと思うな』
  7の数字 そう言えばビデンスも7ナントカって話していた な
 るほど使者の処刑と転生に関した騒動が起こっているわけだ 説明
 の足りない分は想像で補うほかない どうにも不親切な夢だと思う
 『お待ちしておりました 姫様 磁場の波動が乱れております 姫
 様の波動のみでは少々困難かと思われます どうか換兵をば』
 『要らぬ 私がこの手で殲滅してやろう ロドゲルシアを召喚だ』
  通路の中腹に少し広い場所がある その部分だけ豪華に飾ってる
 のはなにか意味があるのだろう 白を基調に金と紫をあしらった紋
 章が壁に輝く 3本足の鳥 いやこれは竜の類かもしれない
  この場所からだと ぶら下がる物体の下部3割程度の場所 フィ
 ラと話しているのは現場の担当者だろうか またもや初老の人間だ
 『姫姉様 私めも後衛に就きますわ フロックス パルメルシアも
 降ろしてちょうだい 修理は済ませてくれたかしら』
 『もしかして この大きいのがロドなんとかって乗物なの 乱れて
 るらしいじゃない 危ないなら辞めよう 夢でも死ぬのは嫌だな』
  話しながら論理展開の無理を感じていた 夢である 夢なら死ぬ
 ことはないわけで 死ぬのなら現実だ しかし1万歩譲って現実だ
 としても この世界では死ぬことにたいした意味はないらしい 問
 題になるのは 現実であった場合のあたしの生命の危機についてだ
 けれど それは数万の可能性のひとつに過ぎない おそらくは
 『大丈夫よ ななよの意識に介入して操作するから ななよは指示
 通りに座ってればいいの フロックス中尉 急ぎ召喚しろ 時間が
 ない ビデンス少尉も続け』
 『はっ 御意に リシアにて後衛に就きます それでは』
  フィラの指示は絶対の権限を持つ あたしは関係ないはずなのに
 場の空気に流されてしまう なにか従わないと処刑されるような錯
 覚に陥るけれど 頭上で偉そうなのはカエル姫であたしの分身だ
  リギダは既に姿を消していた 彼女は魔法が使えるから瞬間移動
 で乗り込んだのだろう ビデンスは答えてすぐに肩肘をつく あた
 しは仕方がないのでその場に佇んでいた どうすればいいのか
 『姫姉様 お先に参りますわよ おほほ 武功は頂きましょうか』
 『おひょう これまた凄いね あんなのに乗るわけ ひえええ』
  空気を震わせてリギダの声が響き渡る 一瞬影が過ったと思うと
 陽差しを照り返して巨大な物体が眼下に落下してゆく 今いる場所
 が乗物の一部だとすれば凄まじい大きさだろうけれど それにして
 もリギダの乗り物も異常に巨大なのだ
  羽を広げた銀色の鳥のようなものが 暗緑色の樹海に音もなく降
 下している 高校の体育館よりも大きそうな鳥なのに 点になって
 も落下中だ どれくらいの高度か想像もつかない 眺めていると進
 路を変えた 今は水平に遠ざかっている
 『リギダの身勝手は目に余るな ななよ 急ぐわよ 意識を解放し
 て任せてちょうだい 無理に拒絶すると廃人になるわ』
 『そんなこと言われても あ 心の準備ってものが うわわわわ』
  目前にぶら下がる物体が変色する それまでは壁と同じ白色だっ
 たのに 徐々に黄みを帯びて金色に変化する 輝く黄金色になった
 ところで動き始めた まったく音もなく翼を閉じた鳥がゆっくり降
 下する 大きさはリギダのものよりもひとまわり大きい
 『なんか気分が悪い 妙な感じが うへえ ああああああ』
  周囲が金色に変化する 金色の光に包まれているのだ それと同
 時に浮揚感 三半規管が悲鳴を上げるような変な感覚 風景やビデ
 ンスの姿も輝きに見えなくなる そして瞬間に光は消えた
 『ふう 吐いちゃうかと思ったわよ おや ここがロドナントカの
 中なの フィラは まだ頭の上にいるわね なんか狭いかな』
 『考えて弄らないようにね 送り込むイメージで体が動くのに合わ
 せればいいから すぐに視界も開けるわ 驚かないようにね』
  薄暗い場所に座っていた すぐに頭の上を確認した もしもフィ
 ラを押し潰しなんかしたら大事である どうなるのかわからないと
 ころが恐ろしい 夢だから覚めるだろうけれど それでもだ
 『ふあ 納得するしかないのかな それにしても おお これは』

  突如として視界が開けた 最初に見えたのは青い空 画面とかじ
 ゃなくてあたしの目で見ている 肉眼ですべてを認識しているのだ
 とても不思議な感じ 乗物の中に座っているのに 目だけが外に露
 出しているように見える 体の感覚はそのまま 頭上のカエル姫も
 感覚だけは存在している どんな仕組なのか
  そして空から視界が変化する 先程までいた場所が拡大され 続
 いてどんどん遠ざかる ごちゃごちゃ起伏に富んだ外壁が流れてゆ
 き 最後にはとうとう全体を確認できる距離にまで離れた
  青い空に浮かぶ巨大な建造物 城のようにも島のようにも見える
 けれど 最も似ているのは魚のカタチだ どれくらいの大きさか目
 測できないけれど この感じでは小さな街ぐらいはあるだろうか
  こんなものがどうして浮かぶのか そんなことよりも現状を把握
 する方が重要であった あたしは落下しているのだから







             》 しびる 《
+++++++++++++++++++++++++++++++
(のりこ)>ないない4です この時期の特徴なんですけど シリー
      ズ化するとヘッダとフッタが肥大化しますよね
(しびる)>シリーズ化って FCのことだろ つまり
(のりこ)>他もそうですよ まなみさんとこのシリーズとか そも
      そも描きたいことがたくさんあるからシリーズ化するん
      でしょ? なのに本文で触れずに無駄遣いなんて
(しびる)>描きたいことが多いからだろうに その日に描いちゃわ
      ないと収まらないリビドーってもんがあるじゃん それ
      は翌日ではもう遅いのよ その日に描いちゃわないと
(のりこ)>なにがそれほどしびさんを駆り立ててましたかね
(しびる)>なにかねえ 夫婦げんかや子供の成長 宇宙船や銀河ア
      イドル ゾンビに魔物に異空間 そゆのがもう頭から溢
      れて死にそうだったのよ 不思議な時代だったね
(のりこ)>いまはもうそれほど溢れませんか
(しびる)>ふっ さて次いこうか

posted by 篠原しびる at 09:33| シンガポール ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 連作系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年03月21日

連作13 叢連作07 なかぞら

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 種別 連作系第13期 叢連作07
 題名 『 なかぞら 』
 初出 ニフティサーブ/FJAMEA/18番会議室
    1996年03月04日23時15分
 注釈 行頭スペース+30W
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SUBJ:【叢連作】07 なかぞら

 Sibi-Tem V.4.1 (s+30)

 挿話の総和が叢話たるか そうはいかず 叢連作 #07(短編)
 



           『 なかぞら 』


                        作:しびる





  地方へ行くほどに治安は悪くなる 確かに星系毎の自治機構は存
 在しているわけで 特に連邦軍の駐留する星系は比較的安全だと言
 える しかしそれも星系内での話だ 外宇宙になるとまさに無法地
 帯 よほどの重要空間か交戦地域でない限り 連邦軍の護衛なんか
 は考えられない ビジネスとしての海賊業も成立しているほどだ
  そんな事情もあって 星系間の定期便なんてものは成立し難いも
 のがある お決まりコースほど狙われやすい存在はない 高速のチ
 ャーター機か不定期の武装バス 人の流れが文明を決める だから
 宇宙は平均的に発展しない 偏りが更に偏りを生む

 『あのさ 内藤さん 仕事中に悪いけれど これもマネージャーの
 仕事の一部だってことで我慢して聞いて欲しいな 構わないよね』
 『なんですか ゆみりさん なんでも聞きますよ仕事ですからね』
  ルティア星系の第2惑星プランティルティア あたしが所属する
 株式会社ZAP企画のPルティア事務所 しかし現在はこの事務所
 が本社事務所である 要するに社長が定住している営業所が本社で
 あるらしい 法人は個人の所有物ではないが 別に構わないだろう
 『業務命令なら従うよ あたしだって働く女性だからね でもさあ
 あたしの仕事はアイドルだよね 今日の仕事はなんだろう むう』
 『なんだって やはり説明している間に寝ていましたね 詳細なレ
 ジュメも目を通していないのですか 人の話は聞くものですよ』
  Pルティアは快適な惑星だ なんでも大手のリゾート惑星開発企
 業が とてつもない資金を投じて整備したらしい しかし戦闘の激
 化が航路を奪ってしまった 今では連邦軍と現地法人に売却されて
 いる 銀河にはこんな惑星が無数に存在するらしい
 『あの人って 技術関係じゃなくて広報の人でしょ それなら説明
 するのが本職でしょうに プレゼンだって芸だと思うよ』
 『また屁理屈ですか それならゆみりさんも聞くのが仕事の一部で
 しょ 楽しそうに聞くのも芸じゃないですか』
 『ふうむ さすがマネージメントの鬼 うまく言い返すよねえ』
  話しているのはこの2日間の仕事についてだ Pルティアに到着
 した翌日からさっそく仕事 それが昨日で今日が2日目 確か映画
 の話なんかも聞いていたように思うが そんな気配は微塵もない
 『なら その部分は陳謝しよう ごめんなさい今度から人の話は聞
 きますね でさ あたしってば何をしてるんだろう 教えてよお』
 『本当に反省してるんですか まあいいですよ 社長からも再度説
 明するように言われてますから でも調子に乗ってマスコミなんか
 に話さないでくださいよ 軍事機密ですから確実に逮捕されます』
 『ふあ やっぱりそうなのかあ そうだと思ってたんだよね』
  連邦軍の施設で撮影だった しかし撮影と言ってもすこぶる妙な
 のだ 長ったらしい文章を朗読させられたり あたしの限界3オク
 ターブの発声練習なんか あとはクロマキーの前で何時間もダンス
 『早合点ですよ 管轄は連邦軍ではなくてフィレアームス社ですね
 ウチとFA社の間にはC3種の契約が結ばれています SSV関係
 のCF あれからの付合いですよ 全部ゆみりさんの仕事です』
 『SSVってなんだっけ ああ アクリノールかどこかで撮影した
 CFだよね 歯医者ロボットの暴走で大変な被害が起こったとか』
  確かあれは大騒ぎであった その会社とまだ関係があったとは驚
 きである しかしCF収録のためにこんな辺鄙な惑星に缶詰なのは
 納得できない CFなんかあたしがいなくても撮れるじゃないか
 『ゆみりさんの責任ですよ しかしそれはいいとしまして ゆみり
 さんの心配は地球文化圏での人気でしょ あちらでの仕事は400
 日間分をストックしてあります 多忙なのはそのためでした』
 『ふうん 簡単に説明してくれないと理解できないけれど つまり
 この企画のために仕事を溜めていたわけ 忙しかったわけだ』
 『ですから 気にせずに働いてください 予定では200日少しで
 終了する手筈です 最終的な照合は地球にて行います ええ』
  話だけ聞いていると 200日間ぶっ通しで仕事になりそうな予
 感がする 今日みたいなことを200日 毎日レッスンだけをして
 る生活 もしかすれば死んでしまうかもしれない とても危険だ
 『まあねえ あの社長さんのことだから 凄い企画なんだろうけれ
 ど だ 地球で展開する以上に効果的な営業もないとおもうよ 事
 務所の方針に反対するつもりはないけどね 内藤さんはどう思う』
  話しているのは事務所ビルの一室 その実は高級リゾートホテル
 だ 地球上でこんな自社ビルを建てるとなると Pルティアまるご
 と買えてしまうような価値観の相違 地球の自社ビルも巨大ではあ
 るが それでもこのホテルの半分位の規模
 『内容を理解してないからですよ ふう 簡単に説明するとですね
 軍関係のすべてのシステム 携帯端末から方面司令部の汎公証人ま
 で いわゆるオーバーオペレーションシステム そのマスコットに
 ゆみりさんが抜擢されたわけです 軍関係には絶大な人気ですから
 確かに事務所の営業努力もありますがね』
 『簡単には聞こえないけど はあ システムのマスコットになら各
 社協賛で ほら チューブライナーの案内画面とか』
  アイドル暦も長いと それはもう各種の仕事を経験したりするも
 のである 普段は内藤さんの運転で移動しているが 世間にはあた
 しの複製が氾濫している 出掛けても気分が悪くなるのを承知して
 いるから その点ではこの惑星は幾分かましである
 『そんなのには比べられませんよ 軍関係なら全銀河が対象ですか
 らね FA社の製品に標準装備ともなれば ゆみりさん どこかの
 星系がまるごと買えますねえ 本社移転も当然です』
 『凄いねえ でもお金じゃないもん ライブが恋しいよ 近所の飲
 み屋さんで歌おうかなとも思うね 納涼ゆみりショー いやいや』
  本当にそんな気分だ いくら巨大な企画であろうとも 汗を流し
 て歌って踊る あの感覚がなければ意味がない 昔は社長さんも理
 解してくれていたのに 少し寂しい気分なのは正直なところ
 『ゆみりさんは 変なところで貧乏性ですね さて その辺のとこ
 ろも考慮されているようですよ 19時から仕事です 関係者を集
 めて模擬ライブの撮影があります 準備してください』
 『おうおう そうこなくっちゃ やはり納涼ゆみりショーだよねえ
 あははははは 日銭を稼ぐ社長さんも貧乏性だよ なら準備ね』
 『メイキング映画にするらしいですね 頑張って働いてください』

  映画には全編新曲と聞いていたけれど 溜め込んだ仕事のどの部
 分までセールスされているのか知らないのだ だから今日はなんで
 もアリで演ろうと考える 観客が関係者ならプログラムはゆみりお
 任せモードが最適だと思う あたしが楽しければ みんなも楽しい
 はずである それに関しては絶対の自信があるのだ
  それにしてもの納涼ゆみりショー 地球のツアーでも使えそうな
 ネーミングだ 社長に提案してもいいかもしれない






             》 しびる 《
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(のりこ)>宇宙アイドルゆみりちゃんシリーズですね いわゆるガ
      ストリュウム世紀が時代背景ですし 連邦軍とかSSV
      なんて単語も当然でてきます いま気付きましたけども
      もしかしてこのシリーズはFCシリーズの補完作業だっ
      たとか? FCにもゆみりちゃんの名前がでてますよね
(しびる)>いや 特に設定してたわけじゃないけど ネタリンクは
      ちょっとおもしろいかなあとか その程度かな
(のりこ)>ふうん とにかくこの先 ゆみりちゃんシリーズは停滞
      しちゃうんですよね ゆみりちゃんてば10年間もPル
      ティアに缶詰めになったままで さてどうしますか
(しびる)>どうするってさ どうしたもんかね
(のりこ)>このまま放置するのか続編を描くのか そゆことなんで
      すけど まま続編はムリですよね んじゃ放置ですか
(しびる)>なら尋くなよ

posted by 篠原しびる at 01:31| シンガポール ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 連作系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年03月17日

連作13 叢連作06 ないとめあ・ないと 3

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 種別 連作系第13期 叢連作06
 題名 『 ないとめあ・ないと 3 』
 初出 ニフティサーブ/FJAMEA/18番会議室
    1996年03月03日21時42分
 注釈 行頭スペース+30W
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SUBJ:【叢連作】06 ないとめあ・ないと 3

 Sibi-Tem V.4.1 (s+30)

 挿話の総和が叢話たるか そうはいかず 叢連作 #06(短編)
 



        『 ないとめあ・ないと 3 』


                        作:しびる





  頬にぶつかり流れてゆく風 僅かに漂う樹木の香り 冷たい大理
 石に素足の感覚 オデコの少し上に半月形の王冠 見た目よりも軽
 い不思議な色のローブ そしてなによりも頭上に蠢く小動物の感触
  イメージが凝固しての夢ならば 触感のイメージも夢の構成要因
 に成り得るだろう 現実味溢れる感覚ではあるが 現実味溢れる設
 定や関係もある 夢とはこんなものなのかと 考えている夢を見て
 いる夢 多重構成は常套手段で 方法論はホラー映画や怪談話と大
 差ないのかもしれない 夢は概してそんなものだから
  しかし頭の上のカエル姫は どうも現実のような気がしてならな
 い それも夢のレトリックかもしれないが さてどうだか

 『サンクレストの使者のようです 姫様 仮想転移マーカーと同期
 している疑いがあります リギダ様が帰艦なさいました』
 『ふん リギダめ 独断専行に失策か 弁解の余地はない すぐに
 でも更迭してやろう ビデンス少尉 射出ポットに向かう』
 『へいへい 向かうってのはあたしが歩いていくってことだよね』
  フィラがカエルでこの調子だから あたしがカエルなら今頃どう
 なっていることやら とにかく偉そうに命令を続ける リギダって
 のは確か従姉妹だった 仕方がないので豹人間ビデンスの後を歩く
 『ねえ フィラ 人間じゃない人もいるよね あたりまえのように
 話しているけれど みんなマスクでもかぶってるの それともやっ
 ぱり ヒョウとかライオンの人なの 魔法とかその辺で』
 『ななよ様 ヒョウではありません 我が一族は代々王家に従いた
 る由緒ある家系 歴史に名を残す賢者ビデンスと申せば 太古のハ
 メラウス大戦に於ける奇跡の逆転勝利をばもたらせしめた』
 『もう良い 貴様の講釈など聞くまでもない ななよ あまりヒョ
 ウだとかライオンだとか言わない方がいいわよ みんなすぐ怒るか
 らねえ ななよの世界の哺乳類が すべてこちらの知的生命なの』
  なにが逆鱗に触れたのか知らないけれど ビデンスは猛然と抗議
 をしている ヒョウがヒョウで悪いなら いったいなんと呼べばい
 いのだ こっちの世界が基本なら ヒョウはヒョウでプライドを持
 てばいい どうも微妙なところでなにか違和感が残る 
 『排除に手間取っているようです あ 転移湾曲です この反応は
 リギダ様のものと推測されます 謁見の議をお申出のようですが』
  ビデンスが話している間にも 進行方向の少し離れたところに例
 の水紋が広がる リギダって人が瞬間移動してくるらしい またど
 こかで爆発音がしている 非常に忙しい夢だ
 『これはこれはフィランサス姫様 御機嫌麗しく存じ上げます 姫
 様の御前に侍りしこのリギダめが おや これはまた』
  水紋が僅かに輝き その中央から暖色を基調とした派手な甲冑が
 現れた 赤や黄色やピンクの乱舞 聞こえてきた声も負けずに派手
 だ 水紋が収まるとスパーモデルが出現した なんとまあ美人だ
 『これはどうしたことですの お姉様の頭の上から なにやら高貴
 な波動が感じられますわ これはもしかして 好機到来って状況か
 しら なら そっ首貰ったああああ 覚悟おおおおお』
  にっこり微笑んで勝手に喋り続ける なにに気付いたのか切れ長
 の目を細め 腰の長剣に手を掛けた みなぎる殺気 この女の子は
 なにを考えているのか 凄い勢いで突進してくる
 『わああああ フィラ 殺されるよおお やめてええええ』
 『大丈夫だと思うわよ リギダの波動剣ぐらいじゃたいした威力も
 ないもの 無駄よ 失策の言訳にしては芸がないわね』
  派手な甲冑娘は目の前で跳躍 瞬間姿が消えたと思ったが 直後
 にこれまた派手な光線が炸裂 それと同時に両脇の壁が崩れた 更
 にあたしの周囲の床がドーナツ型に陥没する 痛くもなんともない
 が非常に驚いたのは確かだ
 『あら あらあら 完全にぺテールになったわけでもないのね 王
 位継承権第1位の座が手に入ると思ったのに おほほ 冗談ですの
 よ 本気でお姉様を殺害するなんて おほほほほほほほ』
 『リギダ 転移マーカーの回収に失敗したようね サンクレストの
 馬鹿王が調子に乗って利用してるようだわ どう責任を取るつもり
 か聞かせてもらいましょう 処刑しても構わないのよ』
 『どうしてこの世界の人達はこんなふうなのかなあ あんまり殺す
 だの殺される もっと穏やかに暮らせないものかな ううん』
  引き続き爆発音 今度はかなり大きめで 繋目もなく延びる大理
 石の床が目に見えて振動する ビデンスはフィラとリギダのやり取
 りには関心も示さず歩き始める それが合図になり移動再開
 『おほほほほ それよそれ サンクレストの強襲部隊が現れたのよ
 ね お姉様のロドゲルシアを貸してもらえないかしら 返り討ちに
 して ついでに魔都を陥落させてご覧にいれますわ』
 『リギダには謹慎を申しつける 以後許可なく行動すれば レグナ
 リ公爵の娘とて遠慮はしないからな ビデンス少尉 中心核はどこ
 だ ロドゲルシアはそちらに回す』
  どんな関係か いまいち理解できないところがあるけれど リギ
 ダはフィラに一喝されて肩を窄める それにしてもあたしの存在は
 無視されているように感じるのだが なんか変だ
 『ねえ 和平交渉はどうなるの あたしってばフィラの運搬係を続
 けるわけ どうにかならないかな 夢を見てるのはあたしなのに』
 『ほう この小娘は知性があるのね ぺテールなのかと思ってたわ
 もしかすればカリン界の人格なの 姫姉様も酔狂ですこと』
 『ふん 出過ぎた物言いだ リギダ 射出ポットまでの道を開け』
  フィラの偉そうな態度はいいとして カリン界ってのはなんだろ
 う 知性があると言われれば少しはあるが これだけ高飛車に言い
 放たれると怒りも沸いてこないものだ なんか卑屈な立場である
  リギダはあたしよりも少し背が高い かと思えばゴテゴテ装飾の
 ブーツで上げ底しているようだ その両足を僅かに開いて仁王立ち
 リギダは妙な印を結んでニヤリと微笑んだ するといつもの水紋が
 波打ち始める 人によって魔法の方法は違うらしい
 『姫姉様ったら 高度な波動はお使いになられないようで 不祥リ
 ギダめの扉でしたら ささお通りくださいませ おほほほほ』
 『姫様 ラミュウム艦隊より苦戦との報告であります カンナ師団
 を以て援軍に充てられたしとの進言でございますが』
 『ふむ 捨て置け 甥を庇いての進言であろう エンシス中将には
 いらぬ援軍だと伝えおけ 正1時間 僅かに遅れても処刑せよ』
 『なんかこのビロビロは気味が悪いのよね フィラさあ 部下の人
 は簡単に殺すもんじゃないとおもうよ おお 凄い眺め』
  水紋をくぐるのは生理的に受け付けないものがある それでも夢
 の進行のためには仕方がない 頭に乗せたカエル姫が落ちてしまわ
 ないように 少しかがんで向こう側へ そして視界が開けた
 『ビデンス少尉 ロドゲルシアの調整は終了しているのか ななよ
 は危ないから覗き込まないの 下の海は肉食生物の巣窟よ』
 『下の海って 森じゃないの うひゃあ 物凄い光景だわ』

  これが夢なら人知を超絶した想像力だ 射出ポットとやらは空中
 に存在していた いや空中ではなくて床が上にあるだけだ 半透明
 の床は愛想程度に伸びていて 遥か頭上に人影が逆さに見える ど
 うして逆さに立っていられるのか不思議だ そしてその天井から巨
 大な物体がぶら下がっている なにか翼を閉じた鳥のような
  足元には群青色の森が広がる どれくらいの距離に浮かんでいる
 のか目測できないが 僅かに移動しているのはどちらであろう 海
 というより樹海じゃないか ちなみにあたしは高い所が好きではな
 い もしかすればここから飛ぶのか それは勘弁だと思う






             》 しびる 《
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(のりこ)>ないない3です そっ首もらったあああ! で 周囲の
      壁が崩壊して床がドーナツ状に陥没すると 好きですね
(しびる)>好きだよな こゆのは使い道がないじゃん? 『姫姉さ
      まもお甘いようで』なんてセリフ そゆことで
(のりこ)>まあいいですけど ところでよく読むと人物の相関もデ
      タラメじゃないんですね 臣下の人たちの相関もてきと
      うに経過が描かれてて これって設定したんですか?
(しびる)>まあそれなりに あんまし真剣にやってないけど
(のりこ)>それと 例のロドゲルシアとかって乗物 あれなんかは
      いかにもですけど やっぱ画像化も念頭に置いて?
(しびる)>いやあ それはぜんぜん そもそもさ そんなに真剣に
      描いてないから このシリーズは ネタものだし
(のりこ)>そゆこと言っちゃダメでしょ(苦笑)

posted by 篠原しびる at 22:39| シンガポール ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 連作系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年03月13日

編集会議 101

(しびる)>ういーっす 寒いのに花粉が飛ぶのな ったくよう
(のりこ)>あ おはようございます あれれ? 編集会議の101
      ですか? 前回の会議は使わないですか?
(しびる)>ふん あんな辛気くさいテキスト 無編集で世間に晒せ
      るかい てか編集するくらいなら全文消去な
(のりこ)>はあまあ 100行以上は なんやかんや話しましたの
      に 内容的にもひじょうに有意義だったと思いますよ?
(しびる)>もういい んじゃコーヒーくれ しかしなんだな まだ
      雪も溶けきってねーのにスギ花粉最盛期状態じゃん?
(のりこ)>まだ雪が残ってますか なんかすごいところですね
(しびる)>ふむ 軒下なんかにはまだどっちゃりあるぞい 夏まで
      残るんじゃーかとか毎年思うけどな 溶けるんだこれが
(のりこ)>そりゃ溶けますよね コーヒーっす 忙しいですか
(しびる)>忙しいな 今期はいろいろやってるからなあ って決算
      済んで2期またいでるか あたりまえだけど設備投資は
      金使うからさ 労力と出費でダブル疲労だわ(苦笑)
(のりこ)>なんかよくわかんないですけど 体をこわさないように
      ムリしてくださいね たまに限界承知でムチャするでし
      ょ しびさんは ご飯は3食 夜は寝るように
(しびる)>それがなかなか難しいのな 食事は基本的に2食で1麺
      はぎりぎり守ってるけど 睡眠は限りなく短いな
(のりこ)>なぜ寝ませんかね どうやったって睡眠時間くらい捻出
      できるでしょうに 寝るのキライですか? もしかして
(しびる)>キライじゃねーけどなあ あしたにもこの世界が終わる
      ってときに『この人生はどうでしたか?』って訊かれり
      ゃ『いやあ ずっと眠かったなあ』って答えるな
(のりこ)>あしたにもこの世界が終わるってときに誰が質問します
      かね しびさん好きですよね そのフレーズ
(しびる)>うん 昔誰の作品だかで『世界の終わりに料理の名前を
      規定数だけ連呼したやつが救済される』って内容があっ
      て それがずっと意識の底に残ってるのな
(のりこ)>ふうん そりゃまたしびさんの好きそうな設定ですけど
      なにがそのキーワードかってのは最期までわからないで
      すよね おまけに回数の制限アリだってことなら
(しびる)>奇跡的なことだよなあ 『この番組おもしろいよなあ』
      とかが回数無制限って条件なら この国だけでも100
      0万人は助かるのに そゆとこぼんやりと考えたりする
(のりこ)>ヘンな空想ですね(笑) あれですよ 背伸びしながら
      『イナバウアー』&回数無制限なら3000万人いきま
      すよ 『ワンハンドビールマンスピン』を13回とかな
      ら10万人がいいところかな いやけっこう多いかも?
(しびる)>なにげに時事ネタを挟むねえ 腕上げたじゃん
(のりこ)>褒められてしまいました(笑) んじゃまこんなことで
      時間を取っちゃ悪いのでとっとと帰ってください
(しびる)>うい そうする きょうは珍しく仕事も早く切り上げた
      し なにも持って帰ってないし 早く寝るかな
(のりこ)>それがいいですよ アニメやコミックスのストックはす
      さまじいものがありますけど それはまた後日で
(しびる)>送り際にそゆこと言うなよ(笑)

posted by 篠原しびる at 22:26| シンガポール 🌁| Comment(0) | TrackBack(0) | 編集会議 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年03月09日

連作12 逸連作15 みつめて みつめられて

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 種別 連作系第12期 逸連作15
 題名 『 みつめて みつめられて 』
 初出 ニフティサーブ/FJAMEA/18番会議室
    1996年02月24日02時28分
 注釈 行頭スペース+30W
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SUBJ:【逸連作】15 みつめて みつめられて

 Sibi-Tem V.4.1 (s+30)

 逸した記憶にも時間は流れ いつからか 逸連作 #15(短編)




        『 みつめて みつめられて 』


                        作:しびる





  いつの頃からか覚えていないけれど 気が付いたときにはやり方
 を覚えていた どんなときにもすぐには返事をしない 最初の言葉
 では判断できないから 肝心なのは表情をつくらないこと
  微笑み返せば失笑を誘う 睨み返せば傷つけられる 相手の瞳を
 凝視しながら 黙っていれば時が過ぎる 迎合しなければ衝突もし
 ない 独り言なら5分も続かない 我慢する方法は幾通りもある
  理解されることは陥落に等しい 警戒心を見抜かれてはならない
 猜疑心を悟られてはならない 現さない心は誰にも見えないのだか
 ら 静かに暮らす秘訣は ただ凡庸と無抵抗 単純な作業だと思う

 『どうも 昼過ぎには毎日ここにいるね あ 続けて』
  午後にはいつも図書館にいる 毎週提出する課題と読書のために
 声にならない喧噪と曖昧な照明に包まれて 不意の声は背後から
 『どの講義だったかな 真面目に出席していないのがいけなかった
 んだろうね 探すのに時間が掛かったよ 隣りにいいかな』
  声の主は見知らぬ男性 眼鏡の縁を物陰にして見つめる 読みか
 けの本は背表紙にして伏せた 真意を推測するには情報が足りない
 『怪しい者だから心配して結構だよ あはは 冗談 名前だけは知
 っていたりする 文学部英文学科2回生の桐島ゆうこちゃん 間違
 っていなければ少し微笑んでもらえないかな』
 『どのような用件でしょう すみません どちらさまでしたか』
  ただの冷やかしなら無視で対処できる しかしあたしの名前を知
 っている なにかの勧誘なら丁寧に断るのが最善 風貌だけなら普
 通の学生だが 宗教や思想や商法 どれも学生層が温床である
 『おそらくは初対面だと思うけれど 経済学部商学科2回生 学籍
 番号までは必要ないか 和泉 ワイズミのイズミね これが名刺』
 『それで 和泉さんがどのようなご用件でしょうか 名刺は持ち合
 わせておりませんので すみません 失礼します』
  短い髪に太い眉 和泉と名乗る男は目を細めて微笑む 本に乗せ
 られた名刺には肩書きが記されていた いわく和泉出版代表取締役
 やはり勧誘の類 最大限に穏便に席を立つ それで納得するだろう
 『つれないね 礼を尽くしてるんだから 話ぐらいは聞くもんだよ
 まだ用件の問い合わせには答えていない それは君の質問だ』
 『でしたら撤回します お話しくださらなくて結構です なにも必
 要ありませんし ご迷惑をかけた記憶もありません』
  どうにも調子が狂う おどけて話していたかと思うと 次には真
 顔になって論旨をずらす 用件を尋ねるのは社交辞令 言質を取っ
 たつもりなら会話自体が意味を失う 笑顔の真意はなにか
 『ふうん 迷惑についてはあとで話そう 必要ならあるんじゃない
 かな その目は幕府転覆を画策している目だね いや 冗談』
 『なにか勧誘でしたらお断りします からかっておられるなら 急
 ぎますので 他の方を探してください これはお返しします』
  本を抱えて名刺を差し戻す これ以上あたしの時間に関わられる
 のは迷惑だ 遊び相手なら暇な人間を探せばいい 勧誘なら取り付
 く島も与えていないはずだ どちらにしても継続の理由がない
 『ああ 肩書きなら気にしてもらわなくていいよ この場所での僕
 はただの学生なわけだしね 同じように君もただの学生だ それが
 必要の部分 迷惑についてはこれを見てもらおうか まあ座って』
  手を掴まれて心臓が止まる 他人に体を触れられる不快感 その
 動揺に隙が生まれた 崩れるようにイスに座り 広げられた書類に
 向かって項垂れる まさに失策 急いで対処方法を模索する
 『失敗するリスクよりは孤独を選ぶ だけど馬鹿じゃないから閉じ
 篭もったりもしない 大勢の中で平凡を装って しかし誰とも迎合
 しない 壁は縮めても消すことはない 究極の孤独だね』
 『な なにを言っているの なにも聞きたくありません そんな』
  この男はなにを話しているのか すべてを見透かしたようにあた
 しを見つめる 動悸が激しくなって言葉が選べない どうしてこん
 な所で責められるのか 非常に不快で嫌悪感が警鐘を鳴り響かせる
 『ほう 図星だね 最初見たときに感じたんだよ 同類嫌悪って言
 うのかな 少し違う 類が友を呼ぶが正解だね』
 『なにを言っておられるのか その とても迷惑です 初対面の相
 手にそんなことを あの とにかく迷惑です あたし帰ります』
  初対面なのはあたしの方であって この男性にとってはあたしは
 初対面ではないらしい その理屈も本来なら間違っているのに 二
 重の困惑が論理を捩曲げる 言葉に心が追い付かない
 『動揺してるみたいだね 既に君の美学からは逸脱してるようだけ
 ど 美学じゃなきゃ理想の私かな 本にはしないけど ここに書い
 てある 程度の差や方法論は違うけどね 基本的に僕も君と同じ』
  落ち着かなくてはならない こんな手段も聞き覚えがある 動揺
 を誘い納得させて懐柔する それに心を覗かれたのではなく あり
 きたりな精神分析を並べただけかもしれない マニュアルは無限だ
 『それで ご用件はどのようなことなのでしょう あなたと同じ性
 格だからといって それにどのような意味があるのですか』
 『うん 僕の目的はふたつ ひとつめは達成したからOK ふたつ
 めは成行次第だから まあいいや 悪かったね 時間を取らせて』
  とにかく聞くだけ聞いて対処しようと考えたのに 和泉という男
 性は優しく微笑む そして立ち上がって頭を下げた なにか非常に
 拍子抜けで 途端に緊張が緩んでしまった なにがどうなっている
 のか またしても言葉に心が追い付かなくなる
 『その なにかお話があったのでは いえその 別段聞きたいわけ
 ではないのですが なんだかとても えっと もういいのですか』
 『ふうん ようやく笑顔だね その顔を見れば今日の目的はすべて
 達成かな 微笑むと美人じゃないかって思ってたんだよね』
 『いえ あの そんなこと やだ あたしってばどうしちゃったん
 だろう とにかく迷惑です 凄く迷惑ですから帰ります ええ』
  気丈に言い返そうとしても笑顔に阻まれる 論理を組み立てよう
 としても自分の言葉が壊してしまう 危ないと誰かが叫んでいるの
 に こんな自分は自分じゃないのに 紅潮してゆく頬に拍車が掛か
 り 判別できない感情が湧いてくる
 『うんうんうんうん 良い感じになってきたね 怒って帰るならそ
 れも方法かな でも手遅れだよ 加速度的に崩壊していく なによ
 りも似合っているから わかるんだよねえ』
 『なにが似合ってるのですか なにがわかるのですか すべてわか
 るのなら あたしの今の気持ちだってわかるはずですよ 自分でも
 わからないのに そんなのは嘘です なんだか わかんない』
  整理してから話さなければいけないのに 無防備に言葉を発して
 しまう 自分でも理解できない感情 教えて欲しいのは本音なのだ
 最後の方は声にもならなくて まるで子供みたいに下を向いて
  そしてしばらくの沈黙 頭は冷めるどころか更に加熱して とて
 も楽しそうな声だけが耳に心地良く響く もう喧噪は聞こえていな
 かった 静かな穏やかな瞬間に 何故か涙が流れた
 『寂しかったんだよ ずっとひとりでね 誰かに理解してもらいた
 くて 理解してくれる人をずっと待ってたんだよ』
 『うん そうだと そうだったと思う なんか泣いちゃって ごめ
 んなさい どうしても涙が止まらなくて ごめんなさい』

  頭の中が白くなって 自分の膝は見えているのに涙が止まらなく
 て 悲しいはずではないのに 嫌なわけでもないのに ぼろぼろと
 涙が落ちて染になってゆく あたしはどうしたのだろう
  ずっと泣いて顔を上げる するとそこには笑顔があった 優しい
 笑顔をみつめていると また涙が流れてきた 理由はわからないけ
 れど みつめられていると ずっと涙は止まらないような気がして
 いた 凄く悔しいけれど仕方がないのだ






             》 しびる 《
++++++++++++再掲載版コメント+++++++++++
(のりこ)>女の子が座ってるところに男の子が声をかける そうい
      う設定ってたまにありますよね でも これってちょっ
      と違うような気がしますけど なんでしょうね
(しびる)>んー まー 制作ノートが残ってないからさ なにを企
      画してたのかいまいち不明なんだけど んー
(のりこ)>んじゃま謎の作品ですか とかいうと意味深ですが
(しびる)>なにかキャッチの類なじゃくて この状況はなにかねえ
      時間にして数分で 頑なな彼女がぽろぽろ泣いちゃって
      るもんな そこを強力に推してるじゃなし
(のりこ)>ならまあいいじゃないですか 謎ってことで
++++++++++++再々掲載版コメント++++++++++
(のりこ)>ふう ようやく再掲載の再掲載も終了ですか
(しびる)>まあな リサイクル率100%企画ってこたあ 地球に
      優しいってことだな 終了を惜しむべきか?
(のりこ)>デジタルはダビングで劣化しませんからね 何回繰り返
      しても品質に変化はないわけですけど 確実に読者の皆
      さんの評価は劣化してゆくわけですよ ホントに
(しびる)>それもそうだわな んじゃ反省するってことで
(のりこ)>うい でわ反省するということで

posted by 篠原しびる at 23:14| シンガポール ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 連作系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

連作12 逸連作14 剣と魔法とコンビニ昼食

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 種別 連作系第12期 逸連作14
 題名 『 剣と魔法とコンビニ昼食 』
 初出 ニフティサーブ/FJAMEA/18番会議室
    1996年02月22日00時05分
 注釈 行頭スペース+30W
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SUBJ:【逸連作】14 剣と魔法とコンビニ昼食

 Sibi-Tem V.4.1 (s+30)

 逸した記憶にも時間は流れ いつからか 逸連作 #14(短編)




       『 剣と魔法とコンビニ昼食 』


                        作:しびる





  ぼんやりと窓の外を眺める 天気もいいから開け放って 生暖か
 い風に髪を揺らせてみたりする 昼寝から目覚めてまだ脳血管に酸
 素が供給されていない 寝起きはいつでもこんな調子だ
  ならば寝ている間はどうなっているのかと ふと疑問に感じたり
 もする もしかすれば睡眠じゃなくて仮死状態 目覚めたのは奇跡
 だったりして それにしてはのんびりした心地だ なんともはや

 『起きてたのか 2講目の終わりに来たんだがな 寝てる姿に興奮
 もしたが 反応がないのも面白くないんで ほら 昼飯だ』
 『ふうん 知らなかったな 寝てても構わなかったのに 目が覚め
 ると挿入されてるのも面白いかもしれない ふああ まあいいや』
  頭の中になにかが詰まった感じ 目蓋も重くて耳鳴りもする 毎
 度のことなので不快でもないけれど なにかもやもや
 『それじゃ俺が面白くないだろうが ダッチワイフと変わらないだ
 ろう 飯は炊いてあるよな オカズだけ買ってきたぞ 早く座れ』
  自分の女を捕まえてダッチワイフ扱いだ 部屋の中央のテーブル
 にコンビニ食材を並べて 炊飯ジャーを覗き込む男 彼氏というか
 保護者というべきか 食べさせてもらうならあたしはペットと同じ
 『昨日の夜にセットしておいたからね マイクロこんぴーたーが正
 常なら炊けてると思うよ たまに機嫌が悪かったりするけどね』
 『機械は機嫌なんか持ち合わせていないぞ お前が悪いんだ 今日
 は炊けているからそれでいい 飯炊き女の称号を与えてやろう』
  パジャマのままで頭を掻きむしり 欠伸をしながらテーブルに向
 かう 飯炊き女の称号か 思いがけずレベルアップの宣誓である
 『わああい 飯炊き女だってさ あはははは なんか気怠い感動が
 身体中に染み渡るよ いいやねえ 新妻の称号までには遠いけど』
 『何事も順序が必要だ 義理の母親と戦うにはHPが足りないだろ
 う 特に足りないのは知力だな 賢さの種を与えよう』
  パック入りの鶏の唐揚げ 名前はピリ辛鶏唐 あたしは手を使わ
 ずに口だけ開く 与えられた食べ物だけで生きてみよう
 『ぱぱらぱっぱっぱあ 賢さが2増加しました あははは 魔道師
 まりえの知力は15だよ 黒魔法カッパのおどりが使えるね』
 『30回噛んで飲み込め それにだな お前の職業は遊び人だ 黒
 魔法なんて高度な呪術が使えるわけないな 偽証罪は重罰である』
  黒魔法カッパのおどりは 敵グループすべてに有効な電撃系の魔
 法である しかし荷物の中にキュウリがなければ使えない やり方
 は次の通り まず立ち上がってキュウリをくわえる 次ぎに手を
 『静かに食べろ 食事中に踊らんでもいい お前は遊び人だと言っ
 てるだろうが だいいち俺に攻撃を加えるのか 背任行為は資格の
 剥奪だな 以後黒魔法カッパのおどりは禁じ手とする 早く座れ』
 『じゃあさあ 白魔法いたいけなポーズは構わないよね パーティ
 ーの士気もあがるよ あたしの奪い合いで喧嘩になるかもしんない
 けど 今のところはふたりだけだしね 構わないんじゃないかな』
  白魔法いたいけなポーズはセクシーダンスだ 使えるのは女性キ
 ャラの僧侶か勇者 パーティーに男性キャラが多いと両刃の剣にな
 る 強力な魔法は取り扱いに細心の注意が必要であろう
 『必要ない 食事中にバタバタするのは悪い癖だ 更に賢さの種を
 投与する必要がありそうだな どうにも知能が足りん』
 『唐揚げばっかりじゃ嫌だもん そっちの春巻きを食べるよ それ
 とご飯ね なんでも順番らしいからねえ お茶を入れようか』
  立ち上がってキッチンへ向かおうと思った けれど途中で頓挫し
 てしまった 突如として襲った倦怠感が歩行能力を奪う あたしは
 くらくらと彼の膝の上に座る もしかすればなにかの魔法攻撃か
 『ちゃんとしろ 茶を入れるんじゃなかったのか それに一日中パ
 ジャマで過ごすつもりか もっと強力な防具に着替えろ ほら』
 『うひゃああ 犯されるよおお あはははは 脱いじゃったついで
 にね しようか パーティーの親睦を深める意味からもねえ』
  すぐに下着だけの姿になる そのまま床に転がされて放置プレイ
 状態 状況で攻めるのは上級者の用いる手段である さすがにチー
 ムリーダーたる勇者 ただ者ではないと少し感心したりする
 『食事中は食事に専念しろ 馬鹿者 そんな姿で攻撃されればひと
 たまりもないぞ モンスターのエサになるな 早くしろ』
 『ふあああ 宿屋の中では攻撃されないルールだよ もしもそんな
 ことなら宿屋組合で問題になるね おうおう 宿屋のオヤジがモン
 スターか うひょおお いつになくハードな設定だあ があ』
 『いい加減にしろ 裸で騒ぐんじゃない ほら 春巻きだ』
  ごろごろ転がって春巻きを食べる 確かにこのマンションの管理
 人はバケモノ顔だが 彼がモンスターかどうかは推測の域を脱し得
 ない 詳細な調査が必要だとは思う
 『でもね 最後のボスキャラが義母さんだってのは凄いよね あま
 りハードなのはダメなんじゃないかな 戦うときに迷いが沸くよ』
 『ふむ 卒業までは時間があるからな おそらくは戦闘中にイベン
 トが隠されているのだろう 迎合して大団円 その線じゃないか』
  あたしは独り娘で自称旧家のお嬢様だ 父親は会社を経営してい
 て 結婚するなら婿養子 彼も独り息子だから衝突は必至 現時点
 で反対しているのは彼の母親だけである 彼の父親の方はかなり以
 前から可能性については覚悟していたらしい 普通なら逆だろうに
 『まあ迷惑を掛けるよねえ あたしなんかのどこがいいんだか 無
 理して結婚話を進める必要もないよ 双方不倫でもいいじゃない』
 『馬鹿者 子供が操作するかもしれんのにだな キャラ同士が不倫
 じゃPTAから不買運動が起こるぞ 少しは考えろ』
  子供に見せなきゃいいだろうに それに世間のRPGでも宿屋の
 部分はおざなりな処理でごまかされている 厳密に描写すればかな
 りきわどいことも発生しているのじゃないか 状況が熾烈なほど夜
 に興奮するってもんだ だから子供が主人公なのが多いのだろうか
 『なるほどねえ それじゃあさあ 子供が学校に行っている時間に
 するってのはどうだろう あはははは 今なんかそうだよねえ』
 『悪いが俺も学校だ お前は勝手にひとりでやってろ また夕方に
 来るからな 遊び人の修業は怠らんように ふむ』

  せっかくその気になってきたのに プイとつれなく立ち上がる彼
 子供が見ない時間なら問題ないだろうに 据え膳を食べないのは変
 化した放置プレイかもしれない やはり勇者はただ者じゃない
  それにしても遊び人の修行 努力しないから遊び人じゃないのか
 よく考えれば据え膳を食べていないのはあたしだった 仕方がない
 ので座り直して昼食を食べる 窓からの風が気持ち良いね





             》 しびる 《
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(のりこ)>なんですかねえ(苦笑)
(しびる)>RPGをネタに会話でやっつけようって企画だったんだ
      けど まさにそのとおりの内容になった ある意味成功
(のりこ)>成功してますかね しかし パーティが宿屋で微妙とか
      意味不明な魔法系攻撃のネタはおもしろいですよ
(しびる)>そのへんは飲み会でのバカ話だわな 飲むとネタ話ばっ
      かしのウチの宴会もどうかと思うが 仕方ないわな
(のりこ)>実のない会話ばかりですからねえ ダメ人間ですよ
(しびる)>上司つかまえてダメ人間指定か ひどい部下だな
(のりこ)>私のことですよ んじゃまお詫びとして黒魔法カッパの
      おどりでも まず立ち上がってキュウリをくわえる
(しびる)>やらんでもいい
(のりこ)>あのクダリ ト書きに突っ込む彼氏のセリフの構成はち
      ょっといいですよね 小手先の描写バンザイ
(しびる)>それは褒めてるんだろうな
(のりこ)>もちろんっす(笑)

posted by 篠原しびる at 00:42| シンガポール ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 連作系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年03月08日

連作12 逸連作13 あちらがわに

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 種別 連作系第12期 逸連作13
 題名 『 あちらがわに 』
 初出 ニフティサーブ/FJAMEA/18番会議室
    1996年02月21日04時26分
 注釈 行頭スペース+30W
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SUBJ:【逸連作】13 あちらがわに

 Sibi-Tem V.4.1 (s+30)

 逸した記憶にも時間は流れ いつからか 逸連作 #13(短編)




          『 あちらがわに 』


                        作:しびる





  第一報は得意先へと向かう路上で受けた 営業用に支給される携
 帯電話 配置転換の初っ端に鳴り響いた連絡は我が家からの転送で
 あったのだ 受付嬢が丁寧にも転送してくれたらしい しかし内容
 はまったく以て意味不明であった
  声の主は妻であろう 判別できたのはそれだけ なにか非常に興
 奮していて 早口にまくし立てて電話は切れた すぐに掛け直した
 が繋がらない なにが起こっているというのか 不安だけが残る
  電話を受けたのは午後5時半 残業を切り上げて6時には退社し
 た 自宅に到着したのは7時45分であった

 『なにか事件か あんな電話じゃわからんだろうが どうした』
  ドアを開けるなり叫ぶ バス停からは走って帰ってきた 乗物の
 速度は仕方がない 努力する部分は自分の足だけだろう とにかく
 『誰もいないのか いったいなにが起こって があ みなよがあ』
 『たいしたことはないのよ あたしも驚いたけれどねえ』
  リビングから女房が現れた あれだけ緊迫した電話をよこしなが
 ら澄ました顔で立っている しかし問題はそんなことじゃない
 『なんだなんだどうしたんだ みなよ 大丈夫なのか 医者だ 病
 院には連れていったのか 説明しろ 原因はなんだ』
 『転んだの だからね 怒らないで欲しいな ごめんなさい』
  上目使いで頬を膨らませている 途端に勢い込んだ自分を反省し
 た 詰問するつもりではないのだ ただ娘の頭部の白い包帯に狼狽
 しただけである 電話の用件はこれだったのか
 『転んだか ああああ それで医者にはみせたんだろうな 頭のど
 の部分だ 痛むのか 寝てなくていいのか 見せてみろ みなよ』
 『縫うほどの怪我でもなかったのよ ほら 頭って大袈裟になるじ
 ゃない 少し切れただけよ パパさんは心配性ねえ あはははは』
 『もう痛くないよ 傷跡は残らないってさ ごめんなさい』
  娘はしおらしく謝ったりしている 女房は自分を棚に上げて馬鹿
 笑いしているが 謝るならコイツだろう 娘は小学5年生なのにこ
 の中では最も落ち着いている 誰に似たのか
 『謝ることもないだろう そうか もう痛くないのか しかし気を
 付けなくちゃいかんな どこで転んだんだ それとメシな』
 『先にお風呂に入ってね みなちゃんは入っちゃダメよ 化膿する
 から入浴は厳禁ね お医者さんが言ってたでしょ それとお薬ね』
 『ふあああい 面倒だけど仕方がないよね カバン持つね』
  騒動も一段落で日常に戻る 娘は風呂に入れないそうだが もし
 かすれば一緒に入る風呂の終止符になるキッカケか そんな予感に
 舌打ちした 小学5年は知人の娘達の中では最長記録だ
 『おう すまんな しかしどこで転んだ ママが電話なら学校じゃ
 ないな 危ない場所があるなら自治会で議題にするぞ どこだ』
 『ふむん 場所はマンションの入口の所だけど 誰も悪くないから
 議題にしなくていいよ 逆にパパが笑われるかもしれないから』
  娘は俺の前を歩く 身長は既に俺の肩ぐらいだ 俺だってそんな
 に低い方じゃないから この調子ならかなり大きくなるのだろう
 『カワイイ娘が怪我をして その上に笑われるのか それはあまり
 頂けんな 自治会は構わんとして どうして転んだ イジメじゃな
 いだろうな もしそうなら血の雨が降るぞ ふむ』
 『ふあ 人間関係には気を使ってるもん それは大丈夫だよ 話す
 とばかばかしいから できれば聞いて欲しくないな はい お風呂
 だよ 今日は背中を流してあげられないね 少し寂しいでしょ』
  カバンを胸に抱いて娘が微笑む この頃は完全に女房のクローン
 人間だ 仕草も若い頃の女房のコピー いや年齢から考えれば非常
 に早熟 しかし体の方は完全に子供である どう捉えたものか
 『聞いて欲しくないなら仕方がないな 着替えはママに持ってくる
 ように言ってくれ おっと 危ないところだった』
 『切ったのはこっち側だから大丈夫だもん 伝言は了解のココロ』
  詳細な経過については女房に聞けばよい 話し終えて娘の頭に手
 を延ばしそうになる 相手が女の子なら髪に手をやる癖 昔女房に
 指摘された記憶が蘇った 色々考えて少し鼻白む
 『脱衣場にスーツを脱がないでよ 何度言えば理解してくれるのか
 しら まったくもう 無頓着アンドだらしないんだから』
 『ふう なんか勢いをつけて帰ってきたからな 頼むぜ 今日が営
 業部の初日なんだからさ 最初が肝心だろ 問題だよな ふうん』
  一気に脱いで風呂に浸かる すぐに女房が現われたのはスーツの
 ためか 慌てて回収しているのがシルエットで判別できる 湿気で
 シワが伸びれば好都合ではないか 愚痴は挨拶のようなものだ
 『だって驚いたのよ みなちゃんが血だらけになって玄関に立って
 るんだもん あなたなんか電話でホアホア返事するだけだし 泣き
 そうになってたのよ 軽くて良かったけど ブリーフはここね』
 『そんなに酷かったのか なんで転んだんだ お前は聞いてるだろ
 うに 誰かに悪さされたんじゃないだろうな』
  怪我は徐々に回復するだろう しかし問題は原因だ 事故でなく
 事件ならば徹底的に対処しなくてはならない もしも加害者がいる
 ならば 穏便に収める自信はない 娘は俺のすべてだ
 『自分で転んだのよ 鏡を持っていたから破片で切れたのね 大丈
 夫 中に残ってたりはしないそうだから 傷も小さいしね』
 『鏡か なんでそんなモノを持って転ぶんだ 誰かに押されたんじ
 ゃないのか みなよが隠しているだけかもしれんぞ ううううん』
  ぬるめの風呂から徐々に加熱する 頭に血が登るのは風呂の温度
 か憤慨か 娘の痛々しい姿が脳裏を占領する 愛情が悲しみと怒り
 に変化する 風呂に浸かっている場合ではないのかもしれない
 『本当に自分で転んだのだと思うわよ 危ないから禁止してたのよ
 ね たぶんこれで懲りたんじゃないかしら』
 『なにが危ないんだ そんな危ない遊びがあるなら自治会で禁止さ
 せるぞ こんな時こそ自治会長の本領を発揮するべきだな』
  マンション住人による自治会組織 俺は本年度の会長職にあるの
 だ ならば些細な危険も見逃せない 自分の娘となれば尚更である
 『みなちゃんの自業自得だから 変なことを提案すれば あなたが
 笑われるんじゃないの 他の子供がやってるのって見たことがない
 もの あははははは みなちゃんのオリジナルね』
  母娘揃って俺が笑い者になる話だ 娘だけのオリジナルってのは
 なんだ 俺は早々に立ち上がる なにかゆっくり浸かっている気分
 じゃない そして素っ裸で脱衣場のドアを開ける
 『ほら こうして歩いてみなさいよ あなたの立派なオチンチンの
 辺りに天井があるでしょ これがみなちゃんの遊びね』
 『ああん 鏡か なるほど床のかわりに天井が見えるな ほうほう
 これなら俺も子供の頃にやったな 面白いんだぞ』
  胸の辺りに手鏡を当てられる 下を向いて歩けば天上を歩く気分
 になる 昔母親に禁止された遊びだ この遊びの醍醐味は建物から
 屋外にでるときにある 空に落ちる あの感覚は不思議であった
 『なによ あなたからの遺伝なわけね とにかく危ないから禁止し
 てたの 5年生にもなって変に子供な部分があるんだから』
 『ふむむ 俺は中学生の頃にハマってたな 一族としては進歩して
 るんじゃないか そんなふうに思うぞ』

  原因がわかればそれでいいのだ 娘の怪我が見えないところでな
 によりだった カワイイ顔に傷でも付けば それこそ大問題の大騒
 動になるところ 外見がすべてだとは思わないが すべて揃ってい
 るのが親としての理想でもある なにせ娘のためだ
  それにしてもマンションの入口が事故現場らしいが すると娘は
 空に向かって踏み込めたのか 俺は結局怖くてダメだったが その
 辺のところを聞いておかなくてはならないだろう もし成功してい
 たなら一族の飛躍だ 誉めてやらなくてはならない ふむ






             》 しびる 《
+++++++++++++++++++++++++++++++
(のりこ)>鏡遊びですね 私もやりましたよ と みなちゃんシリ
      ーズですね あの娘っ子がもう5年生ですよ んー
(しびる)>昔よくやったなあ こう胸のところに大きめの鏡を持っ
      てさ 作中にもあるけど屋外に踏みだすのが醍醐味でさ
(のりこ)>そうですね やたら怖いんですよ 建物の軒のところか
      ら空になるでしょ うひゃあとか声がでちゃいますよ
(しびる)>ふむ 小学校の低学年くらいでやったかな
(のりこ)>私は高学年くらいまでやってました あれは危ないから
      ってお母さんに怒られるんですよ 危ないですよね
(しびる)>足元が怪しいし 鏡は割れると危険だからな
(のりこ)>みなちゃんはころんで頭を切りましたか 禁止ですね
(しびる)>禁止だよな 自治会で危険遊技に指定されるな
(のりこ)>指定されますね

posted by 篠原しびる at 01:12| シンガポール ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 連作系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

連作12 逸連作12 最小公倍数/最大公約数

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 種別 連作系第12期 逸連作12
 題名 『 最小公倍数/最大公約数 』
 初出 ニフティサーブ/FJAMEA/18番会議室
    1996年02月18日00時05分
 注釈 行頭スペース+30W
+++++++++++++++++++++++++++++++
SUBJ:【逸連作】12 最小公倍数/最大公約数

 Sibi-Tem V.4.1 (s+30)

 逸した記憶にも時間は流れ いつからか 逸連作 #12(短編)




        『 最小公倍数/最大公約数 』


                        作:しびる





  朝から上司に話をつけて 来月の25日には有給休暇を取れるこ
 とになった 理屈ならば有給休暇も重要な労働者の権利である で
 はあるが簡単には行かないものだ 来月は決算月であるし ウチの
 課が修羅場になるのは毎年の決まりごとなのだ
  そこを捩曲げて獲得した有給休暇 25日は金曜日で土日の休み
 ならば3連休 本当ならあたしもこんな強行軍は好きじゃない し
 かし限られたスケジュールは仕方がない 仕事と友人を比べるつも
 りはないのだが 仕事はこの先何年も毎日のこと 人生一度のチャ
 ンスとは次元が違う と無理矢理納得しているのだが

 『それがね まゆみちゃん 旅行の話だけど』
 『ああ それならね 有給が取れたわよ 大モメだったけどねえ』
  終業間際に電話をもらって 待ち合わせの場所は会社の近くのお
 好み焼き屋 向かい合っているのは友人のふみえちゃん あたしは
 イカとタコとホタテとアサリのシーフードミックス ふみえちゃん
 はピリカラタコタコでチューハイを飲んでいる
 『うんとね そうじゃなくて 凄く話し難いことなんだけど 旅行
 はダメになったの 悪いけれどごめんなさい』
 『ふんが なにそれ ふみえちゃんが持ち掛けた話じゃないの な
 んで ウエディングエステが理由なら納得しないよ』
  ふみえちゃんは婚約中である 相手は7歳上の証券マンらしいが
 実際どんな男なのかは見ていないから評論のしようがない 非常に
 ありきたりだと思うけれど独身最後の旅行 話したとおり持ち掛け
 たのは彼女の方だ 勝手な話にお好み焼きを2分割
 『どうしようもないのよ ごめんなさい 場所がシドニーじゃなき
 ゃ ううん もうどこだってダメなんだけど なんともね』
 『なんかわかんないよ オーストラリアに問題があるわけ 選り好
 みをしないなら変更できるんじゃないかな でも どうしたわけ』
  普段のふみえちゃんはこんなにまわりくどくない どちらかと言
 えば冷酷に誤解されるくらいの単刀直入 それに加えて超論理的な
 現実主義者 含みを持たせて話しているのはこれが始めてだ
 『ううん それがねえ 暮れの旅行がニュージーランドなのよ 同
 じオセアニア方面でしょ あ チューハイのお代わりね』
 『はあ 暮れってのは新婚旅行の話だよね 決まったのかあ それ
 でなに ふみえちゃんは同じ方面は困るわけ 国が違うよ』
 『いや別にねえ あたしとしては同じ国だろうと構わないのよね』
  なにか気になる話し方だ どこか遠くの方に話題のポイントが隠
 されている ふみえちゃんはロクに食べずに飲み続ける 固形物を
 食べなきゃ悪酔いをするだろう あたしはヘラで1割2分5厘を分
 離して押しやる どうせ支払いは誘った方が持つことになるのだ
 『ならいいじゃん ダブルブッキングなら考えなくもないけど あ
 んまり飲まない方がいいよ ふうむ 結婚かあ いいやねえ』
 『良くないのよ 旅行どころか 全部がダメになりそうな気配なの
 とにかくどこにも出掛けない なにもしないでじっとしてる』
  ふみえちゃんは表情を曇らせる 瞳に滲む涙 結婚を控えた女の
 子が どうして新婚旅行の話で泣かなきゃならないのだ あたしは
 咀嚼しながらふみえちゃんを凝視する なにが起こっているのだろ
 う あたしだって披露宴の出席予定者である
 『なにか問題があるの 両家の話は問題なく進展してたわけでしょ
 まあねえ 結婚話ってのは遅々として いきなしダーってなものら
 しいよ あんまり気に病まない方がいいと思うね』
 『なんかね 混乱しちゃって みんなに嫌われてもいいの こんな
 ふうに断れば まゆみちゃんにも愛想尽かされるわ 知ってるの』
  最後の方は消え入りそうに どんな理由だか知らないけれど 確
 かに約束を反古にするのは非常に迷惑 しかし泣いて謝るようなも
 のでもない 理由があるなら聞くまでだ
 『ふむ もし構わないならね 真相のところを聞かせて欲しいと思
 うよ 旅行のことは脇に置いといて 全部がダメってのはねえ』
  興味本意に聞こえなければいいのだが 烏龍茶を飲んでテーブル
 に肘を突く 結納まで交して今更両家の衝突もないだろう すると
 残るは彼氏関係だけだ 心変わりか過去の女性問題か
 『うん それがね 旅行のことを話したの オーストラリアに行く
 って もちろん一緒に行くのは女の子だってことも まゆみちゃん
 が親友なのは前から話してるから でもね ダメなの』
 『はあ 泣いてちゃわからないわよ いやいや 尋問してるわけじ
 ゃないんだけど なんてのかな 助言のしようがないからね』
  ふみえちゃんの婚約者とは面識がない 写真で姿だけなら知って
 いるのだけれど 曖昧に微笑む表情からは その奥の性格までは推
 測できない 悪い人間には見えないけれど いかほどのものか
 『急に機嫌が悪くなっちゃって ぐすん どうしても行くなら婚約
 は破棄だって とにかくダメなの いろんなことがその調子で あ
 たしがすることは全部気に入らないの もうわかんない』
 『なにそれ まるで子供じゃない 相性がどうこう以前の話よね』
  即決しそうになって思い留まった ことが慶事だけに滅多な意見
 は控えるべきだ 口にしたのは最小限度 本当は彼氏のことを罵倒
 したかった 30過ぎた人間の態度とは思えない
 『きちんと話をしてから結婚を決めたんでしょ 結納を済ませたな
 ら もう個人だけの問題じゃないわよ 家族とか親戚とか職場の人
 とか 悪いけど 彼は結婚に乗り気じゃないわけ どうなの』
 『あたしは結婚したいの くすん どうしても彼と結婚したいの』
  障害があるほど燃えあがる愛 通常は環境に対して男女の結束が
 強固になるものだが 過剰な場合は単独でも燃えあがる 好きにな
 れば痘痕も笑窪か 意味合いなら菓子をせがむ子供と同じだ
 『ふうううん 親友だから敢えて言うわよ 結婚してもうまくいか
 ないわよ 破綻するのは目に見えているもん バツイチになるだけ
 もったいないと思うな ふみえちゃんは美人なのに』
 『くすんくすん しないで後悔するくらいなら して後悔する方が
 いいと思う しないときっと一生後悔するから そう思う』
  あたしの場合は旅行だったけれど おそらく色々な場所でたくさ
 んの人に迷惑が及んでいるのだろう 真っ直ぐなベクトルが完全に
 逆方向へより大きく伸びる ふみえちゃんらしいと言えばふみえち
 ゃんらしい しかしそれでは弊害が残るだろう
 『あたしは まあいいけどね そっか そんなに好きなら行くとこ
 ろまで行きなさい でも無茶が過ぎると帰る場所がなくなるわよ』
 『いいの お父さんなんか怒って 結婚するなら勘当らしい どち
 らにしても もう帰るところなんかなくなるから いいの もう』
  膝の上に両手を乗せて ふみえちゃんは下を向いて涙を流す 彼
 への愛の幻覚と 周囲の愛情の残像 自分の涙の意味を理解できな
 くて それでもすべて自分の責任 変化させるも救済するも 彼女
 を確定するのは彼女しかいない なにを言っても無駄なのだ
 『ふみえちゃんには幸せになって欲しいな うん』
 『幸せになる きっと きっと幸せになるから うん ごめんね』

  火を消さずに裏返しもせずに やはりお好み焼きは焦げついてい
 た それでもお腹が空いていたから 無事な部分を剥がして食べる
 なにかパサパサした 少し香ばしい味 不美味いわけじゃない
  どんなふうになっているのか聞いても仕方がないが あたしはふ
 みえちゃんを迎えてあげよう 泣いて帰ってくるのは決まっている
 のだから 例えお父さんやお母さんが許さなくても あたしだけは
 優しく迎えてあげよう
  うまくいけばそれでいいのだけれど そんなふうに考えるのであ
 った 幸せになって欲しいのは それもそうだ






             》 しびる 《
+++++++++++++++++++++++++++++++
(のりこ)>不穏なお話ですね しかーし この主人公の彼女 親身
      になりながらちょっと距離がありますよね 私がこの場
      面なら もうちょっと根ほり葉ほり聞きますよ
(しびる)>『根ほり葉ほり』って表現は久しぶりだなあ 漢字はこ
      れで合ってるのかね 根っ子は掘るけど 葉っぱもか?
(のりこ)>そういう枝葉末節なことはいいんです 原因や状況を把
      握せずに迎えるもなにも この距離感は気持ち悪いです
(しびる)>そういう彼女だから仕方ないじゃん マリッジブルーは
      女性だけに限ったものじゃないだろうし 相手の男だっ
      てそゆところに敏感なのかもしれないじゃん
(のりこ)>そういう類のことなんでしょうか
(しびる)>これはさ そういう心境についての企画だったからして
      解決したり対処したりする話じゃないのな どちらかな
      ら 現象を傍観するための一人称だったりする
(のりこ)>なんか気持ち悪いなあ ならそういうクダリを入れても
      らわないと
(しびる)>フッタのとこに入れてるじゃん 聞いても仕方ないって
      ことは 一時的なブレだってことを感じての感想だろ?
      そもそも犬も食わないような話だぜ こゆのは
(のりこ)>んー 私の生活信条とは反します故
(しびる)>そんなの勝手じゃん

posted by 篠原しびる at 01:11| シンガポール ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 連作系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

連作12 逸連作11 路地裏に夕闇が訪れる頃

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 種別 連作系第12期 逸連作10
 題名 『 路地裏に夕闇が訪れる頃 』
 初出 ニフティサーブ/FJAMEA/18番会議室
    1996年02月16日23時07分
 注釈 行頭スペース+30W
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SUBJ:【逸連作】11 路地裏に夕闇が訪れる頃

 Sibi-Tem V.4.1 (s+30)

 逸した記憶にも時間は流れ いつからか 逸連作 #11(短編)




        『 路地裏に夕闇が訪れる頃 』


                        作:しびる





  ずっと薄曇りで 夕方になっても灰色に赤みが増しただけ それ
 でも夕方は夕方なわけで しばらくすれば夜が訪れる どこに太陽
 があるかもわからない空なのに やはり夜は暗いのだ
  なにか不思議な予感を孕んで広がる空 道路から歩道に踏み込む
 瞬間に 誰かの気配を感じて空を見上げた 季節のわりに白い空に
 は一羽の大きな鳥がゆっくりと旋回していた
  白い空に黒い影 まるで空に開いた穴のように見える ならば移
 動しているのは穴か観察者か 眩暈を感じて視線を地上に戻した

 『どうも 先程お電話を差し上げました あどうも リビングみな
 との みなとと申しますが 担当の方は あのどうも』
 『ああ さっきの電話の方ですね みなとさん みなと商店のみな
 とさんですよね 息子さんでしょ お父さんにソックリだわ』
  仕入伝票には電話番号のみ もう何十年の付合いらしいが 品物
 は宅配だし電話をすれば3日で届く そうなると相手の住所なんて
 のは意味がなくなる よしんば宇宙の果てでも3日の距離だ
 『はあ そうです みなと商店からリビングみなとに変わったので
 して もう5年になります あのお 担当の方は』
 『そうでしたね 営業部の紫崎を呼びます そこに掛けていてくだ
 さいね るみちゃん お茶よ その前にムラさんを呼んできてね』
  セピア色に変色した名刺 確か記憶では20数年前のものらしい
 名刺ケースの最初の方に押し込んであるそれは やはりそれ程には
 役にも立たなかった 名刺の住所の営業所は17年前に全焼してい
 た 何故か電話番号は匿住所 電話帳にも掲載されていない
 『どうも お気遣いなく あのお いつもの電話の方は』
 『るみちゃんですわ おほほほほ 声と年齢が合わないと思ってら
 っしゃるんでしょ あ そんなのは後でいいわよ るみちゃん』
  先に進むほどに狭くなる道路 2車線道路が路地に変わり 一方
 通行に突き当たった場所で右折する すると更に細い路地が延びて
 ゆく 少し手前で車は諦めた 案の定 電柱には各種の塗料が付着
 している これだけ狭い路地にも車が通行するのか
 『どうもどうも みなとさんですか 息子さんですよね お父さん
$B!!$K%=%C%/%j$G$9$J$"!!$I$&$b(B$B1D6HIt$N;g:j$G$9!Y(B
 『あ お忙しいところをすみません みなとです 用件はお電話を
 差し上げました納品の件なのですが なんとも急な話で』
$B!!!!:Y$$O)CO$NFM$-Ev$?$j!!F;O)$r64$`$h$&$K(B$B#2Kg$N4GHD$,7G$2$i$l(B
 ていた 片方には有限会社ときわ商事 向かい側にはときわ技研と
 記されている どちらも錆びにまみれて赤茶けている
 『ええ 伝言の方は承っております そうですなあ みなとさんと
 は もうどれくらいの取り引きになりますかねえ 10年 いや1
 5年ぐらいになりますか』
 『どうでしょう それくらいじゃないですか ウチもその間に名前
 が変わりました 規模は変わりませんが ところでですね』
  電話番号はわかっていたのに それでも連絡を取らずに調べたの
 には理由がある 触りの部分は説明したのだが 要は終結宣言 礼
 節を重んじるにも良し悪しがある
 『いえ 当方もお話ししなければならないと思っていたところでし
 て 実を申しますと かなりの無理がございまして 納品に関して
 ですが まことに勝手な話ではありますが なんとも』
 『はあ ウチもですね 最近では扱う商品の傾向が若干変化いたし
 まして 今日はそのことについてご相談に そうなんですよ』
  旧態依然 まるで田舎の小学校 それも木造校舎の内部のような
 造り すすけてくすんだ壁や柱に無理矢理融合させた端末類 社員
 の制服も園児の遊戯服のようである どうにも時間が流れていない
 『当方で製作していないものに関しては そうですね 少しばかり
 の中間マージンを納得してくだされば それでも直接に仕入れられ
 る方がよろしいかと そんなふうにご推察しますがね』
  紫崎氏は何歳ぐらいか 見れば50代後半 もしかすれば定年間
 際くらいかもしれない 血色の悪い笑顔にギラギラと突き刺さるよ
 うな眼光 相反して声は子供のようだ 非常に違和感
 『そうですか そうですね でしたらば長い間お世話になりました
 が 今期を目処ということで よろしくお願いいたします』
 『いやいや こちらこそ長い間お取り引きくださいまして お父さ
 ん いや社長様にもよろしくお伝えください あ 遠慮なさらず』
  タバコを手に持ち灰皿を探した 吸うつもりはまったくなかった
 のだが 習慣が自然に慣れ親しんだ電気信号を流す この事務所で
 は誰も吸うものはいないのだろう 瞬時に空気を感じた
 『ああ もう失礼いたしますから ええ 用件はそれだけですので
 お茶 ありがとうございました どうも』
 『そうですか るみちゃん 粗品持ってきてよ ああ なるたけ綺
 麗な奴を 在庫が減ってるなら電話して 少しお待ちくださいね』
  紫崎氏は慇懃に頭を下げて席を立つ 丁寧に話してはいるが 取
 り引きを解消する業者に割く時間は無駄だ そんな考えは手に取る
 ように感じられる それはこちらも同じだ
 『もう帰りますから どうぞお構いなく それじゃあ どうも』
 『すぐに持っていきますから 待っててください どこにあるのよ
 見つからないじゃない あたしの責任じゃないでしょ』
  もはや誰もいなくなった事務所にひとりで佇む 少し待とうかと
 も考えたが どうやら粗品が見つからないらしい 最初から貰う必
 要も感じていないので そんなことはどちらでもよかった
 『失礼します どうも』
  奥の方から騒々しい声が聞こえている しかしお構いなしに頭を
 下げてきびすを返す 話が決まれば長居は無用だ 力を込めて引戸
 を開けると 路地には既に夜が訪れていた
 『待ってください ふう これ粗品が見つからなかったから その
 紫崎さんに渡そうと思ってたけど えっと 長い間どうも』
  車に戻ろうと歩き始めた すると途端に背後から声 聞き覚えが
 あるのは いつも電話で聞いていたからだ 名前は確か
 『あ あのお るみちゃ いや るみさんとかいう方ですよね』
 『みなとさんはこんな人だったんですね どうも それじゃ』

  薄暗い路地にドアの明かりを背負い 目鼻立ちまでは確認できな
 かった 結局電話の声の主はどんな女の子だったのか 取り引きが
 なくなるのだから 二度と会うこともないだろう どちらでもいい
 が少し興味もある
  それにしても追い掛けてまで粗品を渡す律儀さ 車まで戻って中
 身を確認すると 粗品はチョコレートであった 甘いものはそれほ
 ど好きじゃないのに まあいいけれど





             》 しびる 《
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(のりこ)>なーんか 不思議な空気ですよね それとなにげにるみ
      ちゃんシリーズですし あと バレンタインですか
(しびる)>あーそうそう たしかバレンタインでなにか描こうって
      企画だったのな 意図しない相手に渡すのってどういう
      状況かなってことで組んだ設定だな こゆのはラストか
      ら組むからちょっと不思議な空気になる
(のりこ)>なるほど でもそういうことじゃなくて ちょいレトロ
      な感じとか 夕方から夜にかけての時間帯とか 取引を
      打ち切るって微妙な状況とか そゆのが相俟って不思議
      な空気ですよね これって ありものですか?
(しびる)>登場人物及び諸団体は架空のものであり 実在するもの
      ではありません ってテロップを入れなきゃいけないか
(のりこ)>そりゃまあそうなんでしょうけど なんか妙にリアルと
      いうか それがしびさんの味なんでしょうけど
(しびる)>こういうのを量産してもいいんだけど ちょっと趣味か
      ら外れるんだよな でもここ一番って感じはある
(のりこ)>例のクリスマス企画 こういう線でいきましょうか
(しびる)>リアルタイムな話題は辞めようぜ ここではさ
posted by 篠原しびる at 01:10| シンガポール ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 連作系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年03月06日

連作12 逸連作10 世界征服の野望

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 種別 連作系第12期 逸連作10
 題名 『 世界征服の野望 』
 初出 ニフティサーブ/FJAMEA/18番会議室
    1996年02月14日17時46分
 注釈 行頭スペース+30W
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SUBJ:【逸連作】10 世界征服の野望

 Sibi-Tem V.4.1 (s+30)

 逸した記憶にも時間は流れ いつからか 逸連作 #10(短編)




          『 世界征服の野望 』


                        作:しびる





  正式にはベレー帽も制服の一部なのだ しかし帽子の色は真紅の
 みである リボンの色は5色からの自由選択だけれど 帽子の色ま
 で変えてしまうと 違った制服に見えてしまうのが制定の理由らし
 い まあそれはそうかもしれない
  実際に地区随一の御嬢様校である我が高校は 周囲にレプリカ制
 服を増産しつつあるのも事実なのだ 相違を際立たせる必要は オ
 リジナルのアイデンティティを確立する意味合いからも重要である
  しかし帽子をかぶる生徒は少なかったりする 冬服には合わせや
 すいが夏服には似合わないのが主な理由らしいけれど それ以外に
 理由があったりもするらしい なにか非常に面倒な話だ

 『おはようございます まみこ総裁 昨日お渡しした資料には目を
 通していただけましたでしょうか おはようございます 副総裁』
  1時間目と2時間目の休み時間 どこかに疎開しようかと考えて
 いたけれど捕獲されてしまった 今日は朝から眠いのだ 面倒な話
 は勘弁して欲しいと心の底から思うのであった
 『あら おはよう 宮内さんが持っているのは追加の資料かしら』
 『ぐう 副総裁ってなんだよ かなちゃんってば 知らないうちに
 妙な役職に収まってるのだな あたしは知らないかんね』
 『主だった5団体の活動内容と 自治会に報告されている収支報告
 書です Bファイルは実際に運用されている資金の流れです』
  あたしの意見なんか誰も聞いていない あたしは机に突っ伏して
 かなちゃんはその脇で足を組んで座り 右の頬に人指し指を当てて
 書類を眺めるている ゆうきちゃんはピンクの鞄から更に書類を取
 りだしている
 『概説は昨日お渡ししたコピーに記したとおりですが どのように
 推測されますか わたくし個人の意見では かなりのコネクション
 がなければ新規参入は困難かと考えますが』
 『そうねえ 手っ取り早いのは まみこを生徒会長にしてしまうこ
 とよねえ あははははは 問題は票の取りまとめね』
 『なにを言ってんだよ ふああああああ そんなの知らないよお』
  このところ毎日がこんなふうだ 普段ならグウグウ寝ているだけ
 で放課後がやってくるのに 毎日ぶあつい資料を渡されて かなち
 ゃんとゆうきちゃんとバカ殿様状態である どうしろというのだ
 『最終的にはそれが目標なのですよ まみこ総裁』
 『そんなことしなくてもだね 勝手に集まって楽しく騒げばいいじ
 ゃないかと思うよ できればあたし抜きで騒いで欲しいけれどね』
 『あははははは それじゃ団体の意義がないじゃない どんな団体
 も最終目的は世界征服じゃないかしら あはははは まみこ総裁』
  確か演劇団体ではなかったのか どんなふうに間違えば演劇する
 人間の集まりが世界を征服するのだ そもそも演劇団体ってのはな
 んだ まだ演劇なんかしてないぞ
 『そんなことに意味があるとは思えないねえ かなちゃんに総裁の
 イスはあげるからね こんなのが好きなら遠慮しなくてもいいよ』
 『あたしは参謀が好きなのよ こんなに健気な宮内さんの瞳を見な
 がら まみこってば解散できるわけ もう始まってるのよ』
 『そうですよ まみこ総裁 それでですね 快く問題が解決したと
 ころで 今後の対策と計画ですね 資料はこちらです』
  完全にバカ殿様扱いだ またもや出現するぶあつい資料 昨日の
 分もロクに読んでないけれど いったいなにが書いてあるというの
 か 試しに眺めてみると 中身は細かい文字と数字であった
 『なんだこれ 考古学サークル マゼンダリバー なにこれ』
 『それはですね 2Aの菱藤ともみが主催する団体です 構成員は
 2年を中心に80名以上 自治会のA種登録のサークルです』
 『まみこも知っているでしょうに 今年前期の自治会役員選挙に出
 馬してたでしょ 菱藤グループの跡取り娘ね 強敵よ』
  その辺の説明は資料にも書いてある 菱藤って名前は知らないけ
 れど それよりも年間の運営資金がものすごい金額だ これはもし
 かすれば誤植だろう そうじゃなきゃ異常だ
 『ふむむん なんか凄いぞ 年間に3千万以上も活動資金があるじ
 ゃないかさ これってのは学校の運営資金だよね』
 『違います その表は公的に提出されている金額ですね まみこ総
 裁 実際にはその数倍以上の金額が動いています まあ金額的には
 中クラスの団体に位置されますか A種登録なら妥当なBSです』
  そんなことが山のように記されている 数倍なら億を越えるじゃ
 ないか どう考えても女子高生の扱う金額ではない なにが起こっ
 ているのだ もしかすれば大変なことに巻き込まれつつあるのか
 『つまり傀儡よね 大きな団体はすべて跡取り娘たちが仕切ってい
 るもの 卒業すればそのまま閨閥に繋がる仕組みね』
 『ふあ ならかなちゃんが適任だよ ウチのパパは中小企業の社長
 だもん そんな巨大なお金は縁がないやね むうむう』
  かなちゃんちのおじさんは なにをする人だったか とにかく常
 軌を逸したお金持ちだから こんなことなら対処できるだろう
 『ですから まみこ総裁 わたくし達は総裁を推すわけです 資金
 力に支配された学園を変革する原動力にと まみこ総裁』
 『ほえほえ そんなのはねえ もっと覇気のある人に頼むものだよ
 別になにも問題はないじゃないかさ 困ってないよ誰も』
  ゆうきちゃんは鼻息も荒く表情を引き締める あたしは理想家で
 もなければ革命家でもない どこに着目して推薦しているのか知ら
 ないけれど 適材適所って概念は持っていないのかしらん
 『いいじゃない 御輿は用意してくれるんだから 上に乗って笑っ
 てればいいのよ さてと それじゃ当面の目標ね 宮内さん』
 『はい 副総裁 こちらの資料を参照してください 自治会の組織
 図の詳細な資料です 校内データベースについては明日までに』
 『ぶう もういいや 好きなように勝手にやっとくれ ふあああ』
  ゆうきちゃんとかなちゃんは凄く楽しそうだ どんなことでも楽
 しい人達が勝手にやれば問題がない あたしはなにも関知しないか
 ら 御輿でもなんでも担げばいいのだ お祭り騒ぎは勘弁である
 『自治会への新規参入が目標ですね 昨日のうちにC種登録の申請
 は済ませておきました 副総裁 ロゴマークの作成は業者に発注い
 たしましょうか 原案はこちらです』
 『ふうん なかなか素敵じゃない まみこ これでいいわよね』
 『なんだって構わないよおおお 好きにしとくれえええええ』

  ゆうきちゃんが手に持つ用紙には 真紅のリボンをデフォルメし
 た図柄が描かれている ピンク色の円からはみだすように翻るリボ
 ン その下にはRRTの文字が輝いている 手書きじゃないようだ
 けれど こんなのを得意とする人もいるのか なんか面倒だ
  この休み時間はここまで 始業のベルに会議は中断され ゆうき
 ちゃんは礼儀正しく頭を下げて退室 あたしの机の上には膨大な書
 類が残された きっと次の休み時間にもやってくるのだろう
  なにを騒ぐのも勝手だけれど この書類だけはどうにかして欲し
 いものだ 凄く邪魔で嵩張るのであった ほえほえ





             》 しびる 《
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(のりこ)>RRTシリーズですね まみこ総裁っ!
(しびる)>最初はさ 拡げるだけ拡げた風呂敷もおもしろいかねっ
      てくらいの企画だったのよ オチをつけるつもりなんか
      さらさらなかったし よほどオチでも発展オチくらいで
      いいんじゃないかと考えてたのな 無責任だけど
(のりこ)>発展オチってのは そして世界征服のためにアメリカへ
      と旅立ったのである 第1部完 新シリーズは新春合併
      号にて堂々のスタート(予定) って感じですか?
(しびる)>まったく違うけどそんな感じだ なのにさ 細かい整合
      性とか考え始めたところからおかしくなったんだよなあ
(のりこ)>整合性ってのは 女の子キャラの増産と相関関係の管理
      ですか あと上位サークルのこととか
(しびる)>ぜんぜんそういうことじゃないけどそんな感じだ どこ
      で使おうかなとかって放置してたネタをかなり突っ込ん
      だし 拡げたネタにそれぞれバリューを付加しちゃうと
      捨てるに捨てられなくなるんだわ 実際のとこ
(のりこ)>わかるような気はします んじゃそろそろ数年越しの続
      編を描きますか 今回ちょうどおさらいもできますし
(しびる)>いずれはな 絶対やらないってわけじゃないけど
(のりこ)>そういうときはないものとして考えるようにしてます
(しびる)>失礼なやつだな(笑)

posted by 篠原しびる at 21:21| シンガポール ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 連作系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

連作12 逸連作09 すべもなしに

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 種別 連作系第12期 逸連作09
 題名 『 すべもなしに 』
 初出 ニフティサーブ/FJAMEA/18番会議室
    1996年02月13日03時37分
 注釈 行頭スペース+30W
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SUBJ:【逸連作】09 すべもなしに

 Sibi-Tem V.4.1 (s+30)

 逸した記憶にも時間は流れ いつからか 逸連作 #09(短編)




          『 すべもなしに 』


                        作:しびる





  3日前突然に理解したのです それ程には悩みもない人生でした
 が 考えることがないわけじゃないですから 適当には衝突や摩擦
 もありました すべてが自分の考えだけでは展開しない世の中です
 もの それくらいのことなら以前から感じていました
  それでなにを理解したのかと言いますと つまりは死期です 自
 分が死んでしまうのだなってことです 方法まではわからないので
 すが 確実に死にます それも最近のことらしいです
  瞬間は凄く不意に訪れたのですが どう説明したものでしょうか
 テレビドラマの出演者の名前を度忘れしてしまって それが夜中に
 トイレに行ったときに湧いてきた感じ そんな感じでした

 『なにこれ なんかくれるのって珍しいな 食べ物なら嬉しいぞ』
 『無理すれば食べれないこともないです でも辞めておいた方が良
 いと思いますよ 食べるのが愛情でしたら仕方がないですね』
  目の前には彼が座っています 実際にはあたしの方が1年だけお
 姉さんなのですが 知らないうちに彼の方が歳上的な存在です
 『食べれないものなら食べるわけないだろうに 愛情のあるなしが
 問題じゃないな 開けるぞ ヘンなものなら返品な』
 『返品は不可です 手に持った人は持って帰って大切にする義務が
 あります 急いで作りましたからポーズはヘンですが 我慢してく
 ださい 肝心なのは気持ちですよ キモチ』
  場所は彼の部屋です 仕事が終わって帰ってくる頃に狙いを定め
 て押し掛けます 今日はあたしの方が先でしたが 合い鍵を作った
 ので問題はありません 時間があったのでご飯も作りました
 『気持ちねえ なんだこれ 写真だな お前の写真なんか貰っても
 仕方がないぞ これだけ毎日本物を眺めてるのにだな』
 『本物を眺められる間はしまっておいてくださいね でもすぐに必
 要になります 仕方がないと言われると悲しくなりますよ むう』
 『なに言ってるのか理解できないぞ まあ普段からヘンだからな』
  彼にあげたのはあたしの写真です 去年彼と旅行に出掛けた折に
 撮影したもので 踊っている最中のように見えますが 実際に踊っ
 ている写真です オデコの髪型がお気に入りなので選びました
 『ヘンの一言で説明されてしまいましたが 写真の方は大切にして
 くださいよ 他の写真は捨ててしまいますからね』
 『なんで わざわざ捨てなくてもいいじゃないか 食後のコーヒー
 な したいようにすればいいが 勿体ないだろうに』
  お気に入りの1枚を残して 写真だけではありません すべての
 ものを処分するつもりです その方が想像力を刺激すると考えたか
 らです 少ない情報には美化と神聖化の作用があります
 『すぐに入れます こうしてですね 一緒に過ごす時間も素敵な記
 憶となって永遠に生き続けることでしょう すごく不思議です』
 『お前さあ 変な宗教でも始めたのか 少しだけヘンだぞ こんな
 にヘンなのに 少しだけってのは問題だよな 今更だけど』
 『宗教じゃないですよ 自覚ですね 非常に優しく穏やかな気分で
 暮らしているのです でも悲しくないと言えば嘘になります』
  インスタントコーヒーをカップに入れます 砂糖とミルクを入れ
 ずに温度の低いお湯で作ります あと何回かと考えると少し涙が流
 れました 気丈に振舞おうと思っていましたが 遂に我慢できなく
 なりました 彼の背中に持たれ掛かります
 『どうした なんか悩みでもあるのか 頬を貸してみろ ふむ 風
 邪ではないようだな 理由は知らんが泣くこともなかろうに』
 『やっぱり仕方がないのです 泣くのはダメなのですけどね 弱い
 のは凄く悔しいです でもこうしているのは嬉しいですよ』
  そのままの姿勢で彼の前に回ります 悲しいのか楽しいのか判別
 できない不思議な気持ち 荒ぶってはいませんから 蹄念の残像の
 ようなものだと思います 膝の上に座って首に腕をまわしました
 『あたしはですねえ どうやら死んでしまうみたいです ですから
 この写真を飾ってくださいね かわいく見える写真を選びました』
 『ふうん 病気なのか 確かにかわいらしい写真だが 本物の方が
 かわいいと思うぞ 病気なら病院で診察を受けろ これは命令だ』
  あたしは病気じゃないのです ただ気が付いてしまっただけなの
 です 予感を凌駕した確信 何故かと問われても答える方法はない
 のですが 過去でも未来でも決まっていることに変化はないのです
 『病院へは行きません 仕事中は仕方がないと思いますが それ以
 外のときは一緒にいると決めました 時間はとても大切なのです』
 『ああ なるほどね なにを突然と思えばそのテの話か 御神託で
 も下ったわけだな いいぞ 最期は看取ってやろう』
  理解してもらえないのは納得の上です 見てない過去の出来事と
 同じように 見れない未来も確認できない出来事なのです ただ事
 実は事実 抵抗も変更もできません
 『思ったよりも静かな気分ですね 悲しいのは未練ではないようで
 す もっと暴れるのじゃないかと思ってました もう大丈夫です』
 『ふうん 抱き締めると不安じゃなくなるのか まあ誰だって死ぬ
 わけだしな そう考えるのも方法だろうさ』
 『少し違いますが そんな感じだと思いますよ』

  テーブルの上に自分の写真を立てて なにか不思議な気分で眺め
 ます 写真を思い付いたのは昨日のことですが 今になってようや
 く理解できました この光景 これが頭に現われたイメージだった
 のです 自分の写真を眺める自分 死への確信ですね

  彼と抱き合っているときの 気の遠くなるような感覚 すうっと
 消え入るような これはきっと予感じゃなくて確信だと思うのです
 よ どうでしょうか






             》 しびる 《
+++++++++++++++++++++++++++++++
(のりこ)>あー どっちですか?
(しびる)>どっちってなに
(のりこ)>だからー 彼女は本当に死んじゃうのに彼氏がそれを信
      じないのか 彼女の思い込みを彼が許容しているのか
(しびる)>どっちでもいいじゃん てか 与える情報はここに描い
      ただけだから 解釈は好きにすればいいじゃん
(のりこ)>そんなー それじゃ納得できませんよ
(しびる)>なら彼女の方に感情移入して読めばいいじゃん 一人称
      を信じるのが文章読解の基本だろ 彼女がそうだってん
      ならそうだろうに 自分の死期がわかるんだろうさ
(のりこ)>なんか納得できないですけど
(しびる)>素直じゃないなあ

posted by 篠原しびる at 21:20| シンガポール ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 連作系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

連作12 逸連作08 たんじぇんと

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 種別 連作系第12期 逸連作08
 題名 『 たんじぇんと 』
 初出 ニフティサーブ/FJAMEA/18番会議室
    1996年02月12日01時27分
 注釈 行頭スペース+30W
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SUBJ:【逸連作】08 たんじぇんと

 Sibi-Tem V.4.1 (s+30)

 逸した記憶にも時間は流れ いつからか 逸連作 #08(短編)




           『 たんじぇんと 』


                        作:しびる





  この10年でかなり比率は変化している 通ぶった素人の中には
 3倍醸造なんて言い捨てる輩もいるらしいけれど 実際には少し違
 うのだ 詳しい話をすれば長くなるが アルコールを加えて醸造す
 る方法は調整であり水増しではない 探せばそのようなメーカーも
 あるだろうが あたしの知る限りでは皆無である
  それでなにの比率かと言えば つまり無印出荷の割合である ウ
 チで醸造した清酒を別ブランドに変えて出荷する 厳密に賞味すれ
 ば違う味の酒も 巨大企業のラベルの下では原料でしかない その
 ような出荷分に対して調整を行うのだ
  しかしウチのブランドでは決してそんなことはしない あくまで
 もビジネスライクな部分のみである プライドがあるからね

 『ただいまあ いやいや 昨日のうちに帰れるかなって思ってたん
 だけどね おやあ なんか賑やかな泣き声がするね』
  大声で叫びながら玄関のドアを開ける 途端に耳に飛び込む乳児
 の泣き声 幼児の泣き声には計算が混じるが この声は本当にただ
 の泣き声だ アに点々をつけて不思議なリズム
 『これじゃ聞こえないよね あやみちゃんがいるなら あたしの里
 帰りなんてのは一番でもないか それもそうだね ふふん』
 『あら さいかちゃん 遅かったじゃないの 悪いけれどコレをリ
 ビングに運んでちょうだいね もう忙しいったらねえ』
  廊下を歩いてキッチンの前 後ろから声を掛けたのはママだ な
 にが忙しいのかわからなくもないけれど 数カ月振りの娘にいきな
 り用事を言いつけるのはどうしたものだ
 『あ ただいま なんか賑やかだよね お義兄さんは来てるの』
 『来るわけ あ 来られるわけないじゃない 先生でしょ 平日は
 学校に行くのが仕事ですもの リビングまで お願いね』
  手渡されたのは分厚い哺乳ビン いや哺乳ビンとも少し違う よ
 く見れば二重になっている ビールジョッキにこんなのがあった
 『はいはい お姉ちゃんに渡せばいいのよね でねママ あたし』
 『話は後よ すぐにお風呂の時間だから 急いでね』
  ママは取り付く島がない きびすを返してバスルームの方へ 忙
 しいと愚痴をこぼしてはいるが ママは凄く楽しそうである あた
 しは仕方がないのでリビングに向かう
 『ただいま おやあ あやみちゃんはオッパイの時間だね お姉ち
 ゃんは少し太ったかな あはは あやみちゃんもオデブさんかな』
 『おかえんなさい 昨日帰ってくるんじゃなかったの あやみはね
 少し食いしん坊過ぎるのよ 飲んで吐く なにしてんだか』
  リビングのソファーにお姉ちゃんとお子様 お子様は生後3カ月
 のあやみちゃんだ 当然だけど性別は女の子で なにかムチムチし
 た健康優良児 オッパイを飲むのを中断して泣いている
 『それがねえ 急な仕事で出張だったの 今日は出先からそのまま
 ね そうそう ウチの社長から出産祝を預かってるよ ふみやさん
 に渡した方がいいかな その方がいいよね』
 『あたしが預かっとくわ ふー君は金銭感覚なんてないのよね あ
 たしもないけど あはははは 不安な生活だわ まだ泣くのかな』
  お姉ちゃんの旦那は中学教師 名前はふみやさん あやみちゃん
 の名前は両親の名前の合成だと思うけれど まだ聞いたことはない
 『よく知らないけどね ドラマなんかではオムツかオッパイだよね
 オッパイは目の前だから うわ また大きくなったんじゃないの』
 『大きいってバストのこと そうねえDカップぐらいになってるん
 じゃないの 妊娠線で血眼状態ね ほら 目玉みたいに見えるよ』
  あたしはスーツ姿のままで向かい側に座る お姉ちゃんは太った
 しかしこのバストの肥大はそれどころじゃない あやみちゃんが食
 いしん坊なのじゃなくて もしかすれば供給過剰が原因だろう
 『ほんとだ ところでさ コレをママから預かったのだけど 哺乳
 ビンじゃないよね オッパイが足りないようには見えないもん』
 『ありがとね 容器が二重になってるでしょ なんかこの構造の方
 が持ちがいいらしいわね 今のところは順番に捨ててるけど 母乳
 が緊急事態な時が来るかもしれないでしょ まだ泣くのかな』
  話している間もあやみちゃんは泣き続ける 哺乳ビンの想像は遠
 くなかった あやみちゃんを抱っこしてみたいが どうにも首の座
 らない乳児は怖くてダメだ そろそろ大丈夫らしいが
 『3カ月でもこんな状態なんだよね お姉ちゃんは育児ノイローゼ
 ってタイプじゃないけどさ 大変だよね なんか不安だなあ やっ
 ぱりあたしは子供なんかいらないや そんな気がするよ』
 『むうん そんなふうに考える日もあるね 確かに』
  お姉ちゃんはあたしの意見に合わせながらもクリクリ眼だ 楽し
 そうに微笑む意見は聞くまでもない あたしだって良し悪しの二面
 性ぐらい想像できる どんなことだって理解と納得の相違なのだ
 『まあねえ 仕方なしって部分はどこにでもあるからね うるさい
 馬鹿娘でもかわいいもんだ あははははは さいかの交友関係につ
 いて 聞いていることがないわけじゃないしねえ よしよし』
 『なにそれ 毎日仕事ばっかりで 噂の立つようなことなんて だ
 いいちに時間がないよ お姉ちゃんみたいに遊んでないからさ』
  事実無根のことなのに お姉ちゃんに言われるとどうにも見透か
 されているようで調子が狂う どんな情報だか知らないけれど
 『まああいいわ さいかはバリバリのキャリアウーマンを目指すが
 良かろうて あやみも叔母さんに似ればいいのにね あはははは』
 『オバサンってのはなんだかなあ 仕方ないけどね』

  お姉ちゃんと赤ちゃんを眺めて微笑む なにか最近なかった穏や
 かな時間 大手の酒造メーカーを営業でまわる忙しい日常には 仕
 事と睡眠以外は用意されていない こんなのもたまにはいいかなと
 少しの自嘲と たくさんの意気込みが胸に沸き上がる
  自分の子供を抱いて微睡むには まだまだあたしには やらなき
 ゃならないことが多すぎるのだ 姪っ子に尊敬されるオバサンにな
 ろう 馬鹿みたいに頑張ってみるのも悪くないと思うのであった






             》 しびる 《
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(のりこ)>もでらーとシリーズです あやみちゃんが生まれました
      ねえ あの不思議っ娘女子大生が生後3ヶ月でオッパイ
      を飲んで泣いてますよ 時間の流れってのは んー
(しびる)>ヘッダの酒の話 あれはあんまし意味なかったな さい
      かの仕事の紹介のつもりだったんだけど 途中で触れな
      かったから フッタで申し訳程度に辻褄あわしたり
(のりこ)>フッタを2分割して上下に割り振ってもいいくらいでし
      たね よりもー オッパイは出産すると大きくなるんで
      すよねえ 友人の血眼なのを見たことがあります
(しびる)>そりゃよかったな お前なんかそんなにデカイとだ ほ
      ぼ確実に妊娠線ですごいことになるぞ 他人事じゃない
(のりこ)>あと マグカップタイプの母乳保存器 あいかちゃんの
      説明だけじゃ あれで保存するとか冷凍するとか ちょ
      っとわかりにくかったですかね
(しびる)>あれは捨てネームだから そもそもすべての単語を拾う
      ほど日常会話は丁寧じゃないじゃん これでいいのさ
(のりこ)>まあそれを言っちゃうと以上終了なんですけど ラスト
      の叔母さんとオバサンのダブルミーニングとか あいか
      わらず細かいところに力を入れてますよね
(しびる)>それは褒めてるのか
(のりこ)>もちろん

posted by 篠原しびる at 21:18| シンガポール ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 連作系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年03月05日

連作12 逸連作07 陸軟風にも

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 種別 連作系第12期 逸連作07
 題名 『 陸軟風にも 』
 初出 ニフティサーブ/FJAMEA/18番会議室
    1996年02月09日00時09分
 注釈 行頭スペース+30W
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SUBJ:【逸連作】07 陸軟風にも

 Sibi-Tem V.4.1 (s+30)

 逸した記憶にも時間は流れ いつからか 逸連作 #07(短編)




           『 陸軟風にも 』


                        作:しびる





  大きなものなら50センチぐらいに成長する だいたいすべての
 海域に生息していて 地域によって名称は異なる また海域による
 体色の変化も顕著であり それが名称の変化に転じたとの学説もあ
 る 名は体を表すの逆だといえるだろう
  一般的にはアイナメ 地域によってはアブラメまたはアブラコと
 呼ばれる 学術的に分類すればカジカ目アイナメ科 概して分ける
 ならカサゴやオコゼ 更にはコチやホウボウなども仲間に入る
  産卵期は9月から11月 暗礁や岩礁などに生息しているのが常
 であり 平坦な場所や珊瑚礁は好まないようだ
  肉は美味で食用に適する 焼身やフライ 刺身にしても美味しい

 『こんな趣味があるのな どうも平日にいないことが多いと思って
 たらば お前って釣りなんかするのな ふうん』
 『趣味が合わないのは知ってるからね 無理して説明したりしない
 の だからゴルフに誘っても行かないわよ どいて』
  アイナメ釣り 本来ならばシーズン明けの秋口に出掛けたいとこ
 ろだけど 別に1年魚を狙うわけじゃなし 車をすっとばして最寄
 りの堤防にやってきた 5月下旬の月曜日の午後
 『なんかウロウロする釣りだな もっと落ち着いてやるもんじゃな
 いの デレクターチェアーかなんかに座ってさ いいけど』
 『ふん ジジイがコイ釣りしてるんじゃないんだから アイナメは
 まめにポイントを替えて釣るのよ 文句あるなら帰りなさいよ』
 『帰れってもさ 俺なんか車がねーじゃん』
  勝手に便乗してきたくせに 先程からうるさいこと そんなに嫌
 なら電車ででも帰ればいいのに 人の趣味に口出しは無用だ
 『それにだな 急の休みなのにさ お前ってば俺にあわせてスケジ
 ュールを変更しようって気持ちにはならないわけ あ 魚の死体』
 『あたしは今日の予定なのよ なんでも自分の都合で変えようって
 心根の方が問題なんじゃないの 嫌なら絶交しようか』
  あんまりうるさいので向き直る グダグダ文句男は4年越しの彼
 双方実家で暮らしているから日曜日は貴重だ あたしだってその辺
 は理解しているし努力もしている だけど平日のことはあたしの勝
 手 だいたいサラリーマンが平日になにをしているのだ
 『そんなことを言ってるんじゃないだろうに 暇なんだよな お前
 は生臭い潮風で気分がいいだろうさ だいたい なんで釣りだよ』
 『なんでって なんだっていいじゃない 決着つけようか だあ』
  右手をグーにして振り上げる 口で言ってもわからない奴は 体
 に叩き込むのが最も効果的である しかし瞬時にして身をかわされ
 た 大きな体のくせして妙に身軽なときがある とてもくやしい
 『すぐに暴力で解決するのな ふむ まあいいや 仕方がないから
 付き合ってやろう だが沈黙すると生命の危機が訪れると覚悟して
 もらおう ふふふふふ 退屈男の恐怖だな』
 『はいはい つまりは寂しいのでしょ あたしも一応は彼女なわけ
 だし 無駄話ぐらいなら付き合ってあげるわよ 嬉しいでしょ』
 『うん 凄く嬉しい』
  素直な返事に無邪気な笑顔だ 計算だかなんだか知らないが あ
 たしの好みのツボを押さえている 納得ずくでやっているなら相当
 出世するだろうが そうじゃなきゃただの子供だ
 『んじゃ無駄話な 夜中にも釣りをしたりするわけ この調子なら
 やってるだろうと思うけれど そこのところはどうだろう』
 『あんまりしないけれど そうね クロダイ釣りに磯なんかなら夜
 明けよね どちらかと言えば早朝かな だけどどうして』
  遊びでスルメイカなんかを釣りに船に乗ることもある それなら
 真夜中だけど たぶん岸での釣りの話だろう まったく真意は伺い
 知れない まあ無駄話だから意味はないのかな
 『いやさ 昼間でも海って気味が悪いよな 夜なら怪談の宝庫だろ
 うに なんか聞かせてくれよおおおお 怖い話をさああああ』
 『はあ よくまあこんな清々しい天気に そんな陰気なことを発想
 できるわね TPOって概念は持ってないわけ ふむ あるわよ』
  この業界は危険がつきもので おそらく芝生の上でゴルフをする
 のに比べれば 数百倍は生命の危険だ それはつまり数百倍の怪談
 を生む素地があるってことにも解釈できる 少し無理があるかな
 『やっぱりあるのな あ クーラーなら俺が持とう お前は怪談に
 専念すればいいから ほう むき海老なんか使うのか 贅沢なもの
 を食うサカナだなあ いやいや続けて』
 『できれば釣りの方に専念したいけど まあいいわ 残ったむき海
 老はピラフにしようと思ったのよねえ 発覚したのなら仕方ないか
 アイナメを食べるのなら同じだと思うけれど どれどれ』
  なにか知らないけど どうやら怪談で引っ張れば付き人として利
 用できそうな様子だ クーラーを受け取ってイス代わりにする 彼
 の方はスーツのままサルのようにしゃがむ まこと従順な態度だ
 『お前の晩飯なんかどちらでもいいんだ それよりもだな 怖い話
 を聞かせてくれよ そうじゃなきゃ俺の休日がかわいそうだ』
 『なによそれ あたしの晩ご飯はあなたの晩ご飯になる予定だった
 のよ ふうん カワイイから話してあげなくもないか ほいさ』
  根掛かりしたので無理に引き上げる 今日の仕掛けはミチイト3
 号にサキイト2号 最悪の場合はヨリモドシから先は切れてしまう
 覚悟だ 少しもったいないけれど効率重視である
 『なんだ 切れてるじゃん 馬鹿みたいに引っ張るからだな いや
 馬鹿じゃない ああああ 謝るから機嫌を損ねないように』
 『いいのよ こんなふうな釣りなんだから うん あれはねえ3年
 ぐらい前の春だったかな 磯釣りに出掛けたのよ スズキ狙いの通
 好みな釣りね あはははは クロダイやイシダイは外道よ』
 『なんで あはははははなんだ なにがおかしいのか理解できない
 まあいいや それでどうしたわけ』
  竿を引っ込めて仕掛けのやり直し 根掛かりは当り前だからブラ
 クリ以下ハリまでのセットは20個ぐらい用意してある 探り釣り
 なら少ないほどだ あははははなのは本末転倒だから
 『渡船屋さんに送ってもらったのが1時ぐらいだったかしら 新月
 に荒れ模様の天気だから 真っ暗ね なにも見えないの あたしと
 友達の宜保ゆうこちゃんね ふたりだけで上陸したわけ』
  宜保ゆうこちゃんは釣り友達だ この界隈で同年代は珍しい 堤
 防や浜での釣りならとにかく 磯釣りとなると女の子の友達は奇跡
 的な巡り合わせである ほとんどが男性でそれ以外はオバサン
 『そんなことをしてたのか 友達と旅行ってのは全部が釣りだった
 わけ お前って変な女だな いやいや それでそれで』
 『ふん 上陸したのはふたりだけど それがね 先客の人はたくさ
 んいたのよ まあ有名な場所だし 少々天気が悪くても当然ね』
  仕掛けが復活したのでその場で投げ込む 今日はなんだか当たり
 が少ない 釣果はゼロ アイナメばかりが雑魚も掛からない
 『磯に上陸ってのはどんな感じだ 磯ってのは砂浜とは違うんだろ
 あそこ辺りなんか磯的なのか イソイソしてるよな』
 『そうね あれじゃ上陸できないけど あんな感じかな あたし達
 が行ったのは小島だけど かなり賑やかなのね 大混雑状態』
  彼が指さすのは少し先の岬 確かに磯になっているけれど あん
 なに断崖絶壁じゃ それこそ取りつく島がない 言い得て妙だ
 『ふうん 賑やかな怪談ってのは面白くないな みんなで見れば怖
 くないだろ それにしても全然釣れないようだな 飯でも食うか』
 『隣でゴチャゴチャうるさいからよ 海老でも食べてなさいよ そ
 れでね そのまま朝までと思ってたら時化てきちゃって 時化って
 のは海が荒れるって意味ね』
  なにも知らない素人に話すのは面倒だ 当たりを探しながら海中
 を想像する 釣りは洗練されたイメージバトルなのだ その辺の妙
 味をどこまで説明できるか ましてや怪談となると更に困難だろう
 『なるほど シケた奴ってのは 荒れた奴って意味か ほうほう』
 『少し違うと思うけど 良かったじゃない 勉強になったわねえ』
  空はどこまでも高くて青い 平日の堤防には数人の釣り人 みん
 なそれぞれに狙いは違うのだろう 馬鹿騒ぎしているのはあたし達
 ぐらい スーツ姿の男を連れて あたしってばなにをしているのか
 なにも釣れないし ブッコミに変えて雑魚釣りでもするか
 『ダメだわ 今日は鬼日ね きっと釣っちゃいけない日なのよ 今
 から考えると あの日もそうだったのかもね』
 『よしよし 片して帰るんだな ならおごってやろう しかしまあ
 全然怪談じゃなかったぞ 怪談に専念しろって言ったのにな』
 『そうね あたし達も最後まで怪談だとは思ってなかったもん お
 ごってくれるなら帰ろっか ダメなときは諦める 仕方なしねえ』
  なにか気分も萎えたので帰り支度 仕掛けをバラしてカーボング
 ラス製の竿を畳む 七三調子に削った先端は別容器に入れ リール
 を外してしまい込む エサのむき海老は晩ご飯を諦めて海中へ投棄
 『ふうん 半分持ってやろう 結局なにが怪談だったんだ』
 『ありがと 近所に美味しいパスタ屋があるから お昼を食べてか
 ら帰ろうね 結局はねえ その磯には誰もいなかったのよ 最初か
 ら だーれもいなかったの それだけ』
 『はああん なんか嫌な話だな そんじゃパスタを食って帰るか』

  ウキと細めのハリスを用意して小アジでも狙えばよかった なら
 晩ご飯にフライでも食べられたのに 小アジを遊びと決めつけたの
 が失敗だったかもしれない 彼が来るならそれが正解だったと今に
 なって思う 後悔先立たずである
  竿鞘を背負って振り返る そろそろ正午に近いから さっきまで
 辺りにいた釣り人たちも きっと昼食を食べに帰ったのだろう

  誰もいない堤防を彼と歩く 天気がいいのは気持ち良いな







             》 しびる 《
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(のりこ)>釣りのお話は珍しいです ほぼこれ1本だけじゃないで
      しょうか その反面 しびさんは小型船舶1級資格なん
      か持って そのうえマイシップでクルージングでしょ?
      趣味は釣りなんじゃないかと推測されるわけですけど?
(しびる)>あのさ 私生活を曝すわけないじゃん? 500本描こ
      うが1000本描こうが それで作者の人物像が浮かぶ
      ようになんかするわけないのよ これ基本な
(のりこ)>はあ まあその辺はいいです でもまあ微に入りグッズ
      の描写とか すごいこなれた講釈ですよね そゆのは長
      いお付き合いですからニオイでわかりますよ
(しびる)>まあな 釣りがどうとかってのはとにかく この女性キ
      ャラはけっこううまく作れたと思う
(のりこ)>それは同感です それと あと今回読み返してはじめて
      気付いたんですけど 深夜の怪談のネタと最後の防波堤
      のシーンはネタリンクだったんですね
(しびる)>なにをいまさら と言いたいけど やっぱしちょっとわ
      かりづらいか? ひねりすぎたかなあ んー
(のりこ)>いや オチネタに気付くと晴天の感想が意味深でいい感
      じですよ 認識率40%くらいってところですかね
(しびる)>85%は必要だよな 難しいもんだねえ

posted by 篠原しびる at 23:11| シンガポール ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 連作系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

連作12 逸連作06 なかりせば

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 種別 連作系第12期 逸連作06
 題名 『 なかりせば 』
 初出 ニフティサーブ/FJAMEA/18番会議室
    1996年02月08日03時58分
 注釈 行頭スペース+30W
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SUBJ:【逸連作】06 なかりせば

 Sibi-Tem V.4.1 (s+30)

 逸した記憶にも時間は流れ いつからか 逸連作 #06(短編)




           『 なかりせば 』


                        作:しびる





  中学生の頃は背が高いとか足が速いとか 高校生になっても声が
 大きいとかただ明るい性格だとか 確かにどれも必要な側面だとは
 思うけれど 評価としては非常にマイナーな趣味であることは仕方
 がない あたりまえだけど双方子供なわけで お互い様と言えばお
 互い様ではある 自ずから子供と大人では必要なものが違うのだ
  それがどこで変化するのか 10年前のあたしならゲロゲロだっ
 たと思う 不細工なわけではないけれど このテのタイプは本来趣
 味じゃなかったはずだ 人生ってのはどう転ぶかわからないもので
 ある 誰氏も気を付けたいことだと思う

 『いるか 土産だ 寝てるなら帰るぞ』
  いつの間に眠ってしまったのか それでも照明を消してベッドに
 潜り込んでいるのだから 眠るまでは意識があったのだろう 目覚
 めた途端に走り始めた そしてすぐに足をぶつけたのだった
 『はいはい 起きてるってば そんなに急いで帰らなくて だあ』
 『こんな時間に賑やかなやつだな とにかく茶を入れろ』
  玄関に無愛想な男が佇む 手に持っているのは妙なカタチの機械
 もしかすればこんなのを食べようというのか それにこんな時間に
 賑やかなのはどちらだ 言いたいことは山程あるが
 『はいはい お茶ね 3時だからお茶かな 午前だけど ふああ』
 『眠そうだな 迷惑なら帰るぞ 帰って食うとしよう』
 『眠くないよ ほいお茶 それとあたしね なにを食べるの』
  その妙な機械を床に置く 男は大義そうにクッションに腰を下ろ
 す あたしは速攻でお茶を入れてテーブルに並べる そして男の膝
 に座る この感触は何週間振りだろう
 『少し待て お前は良い香りだな 先にお前を食ってもいいがな』
 『ふううん どこに行ってたの また仕事だったの あたしを食べ
 るのは後で先に事情聴取だよ 黙って消えるもんなあ』
  ごっつい体にドルビーな声 何日お風呂に入ってないのかって感
 じの体臭に 所々が焦げた服 落ち着いたらお風呂で洗わなくちゃ
 ならないだろう このままじゃ少し嫌だ どうしてもなら仕方がな
 いけれど その辺は成行で対処しよう
 『思ったよりも早く片がついた 何年も帰れない予定だった』
 『そっか でもね死んじゃいそうなときは先に話しといて欲しいな
 あたしだって心の準備とか必要だしね』
  およそ部屋の調度品には似つかわしくない姿 しかしこの部屋の
 居住権は順番からなら彼にあるらしい あたしは新築のマンション
 に越してきたのに まあ先だと言われればそうなのだろう 問題は
 薄っぺらな契約書なんかじゃないらしい
 『危ないから手を退けろ 台の上に固定する 土産だ』
 『こんな面倒なことをしなくても 手で持ってくればいいのに 変
 なところで不精さんだよね ほうほう なんだろこれは 変なの』
  膝の上でニマニマする 本当はお土産なんてどちらでもいいのだ
 この男がいてくれればそれでいい ショーツとTシャツだけで膝の
 上に胡座をかく 耳に感じる息がくすぐったい
 『向こうでは毎日食っていた 少し苦みがあって慣れると美味い』
 『お土産の機械なのかあ ふうん なんか動いてるね わあああ』
  傍らの機械が低く唸る なにか銃のようなテレビのような不思議
 なカタチ どうせ詳しく説明を聞いても理解なんかできない 眺め
 ているテーブルの上に蜃気楼のように影が蠢く そして突然現れた
 『うわあああ なんだこれ こんなのいらないよ わあああああ』
 『気に入らんか ならば後で食うとするか』
  男が機械を操作する すると瞬間に物体は消えた おそらくは鳥
 の種類だろう しかし明らかにこの世界の生物じゃない 悪夢をカ
 タチにすればこんな姿かって感じ こんなのを毎日食べてたのか
 『なにしてたのか聞かないけどね ご飯は毎日食べなきゃいけない
 よ 言ってくれればお弁当を作ったのにさあ ふふん』
 『現地調達が基本だ 殺して食うのが最も効率がいい』
 『そっか それじゃあ仕方がないかな でもあたしはいらないや』
  膝の上でむにゅむにゅ動いてみる 毎日泣きそうなほど寂しかっ
 たのだ どれだけ甘えても多すぎるってことはない いつ帰ってく
 るのかわからない不安 今回だっていつ消えるかわからない
 『お土産ならね ずっといてくれるのが嬉しいよ だってね 毎日
 寂しくってね ふみゅうううう 黙っていなくなるなんて嫌だよ』
  喋りながら涙が流れる どんどん感情が昂ぶって悲しくなる 今
 は凄く嬉しいのにそのぶんだけ不安が募る 分厚い胸板に頭を押し
 付けて 腕を引っ張って抱き締めさせる
 『不確定要素が多い 納得しろ 説明はしない』
 『うん わかってるもん そんなのはね 全部わかってるもん』
  何処から来た誰なのか 何処へ行く誰なのか そんなことは聞い
 ても始まらない ただこの部屋にふたりがいる その前後や裏表は
 考えても仕方がないのだ ポイントはこの瞬間
 『だからね 次の仕事まではここにいればいいよ 律儀に帰んなく
 てもね ずっと暮らしててもいいんだから ね そうしてくれない
 と泣いちゃうもん 寂しいよ』
 『ああ そうするつもりだ この部屋は居心地がいいからな』
  振り返って上目使いに視線を絡ませる 傷だらけの顔に新たな傷
 が増えている 無愛想な表情に潜む優しさ 心の底を知っているの
 はあたしだけだと思う ずっとふたりで暮らせればいいのに
 『えへへへへ 嬉しい そんじゃあお風呂に入れて綺麗に洗うとす
 るかね このまま抱かれちゃかなわないもん ふふん』
 『なんでも好きにしろ それにしても良い香りだ』

  あたしってばにやけちゃって お風呂に入れる決心を固めたのに
 抱き締められて唇を重ねる それだけでなんでも構わない気持ちに
 傾いてゆく どんどん頭がぼやけてしまうけれど やはりここはお
 風呂に入れるべきだ どうにか意識を保たなければ
  不精髭にガサガサの指 どうしてこんなのが好きなんだろう あ
 たしってば変態なのかもしれないけれど もしそうならそれも構わ
 ないと思う 個人の趣味だから余計なお世話だ






             》 しびる 《
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(のりこ)>なに描いてますかねえ でもこれは別位相ものですか
(しびる)>ワイルドな男を部屋で飼う話にしようと思ってはじめた
      企画なんだけど どう設定だけならってことで ちょい
      派手めにした結果がこうさ あー ファンタジー系?
(のりこ)>ファンタジーってこんなのでしたっけ?
(しびる)>違うわな(苦笑)
(のりこ)>でもこういうのもありですかね 異世界に出張するマッ
      チョをお風呂に入れてキレイに洗う モロ致命傷だった
      んじゃないかって古傷とか見ながら これどうしたの?
      とか訊いたりして 一昔前にやたらあったような
(しびる)>やっぱしファンタジーか
(のりこ)>いやあ 違うでしょ

posted by 篠原しびる at 23:11| シンガポール ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 連作系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年03月04日

連作12 逸連作05 早朝の客

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 種別 連作系第12期 逸連作05
 題名 『 早朝の客 』
 初出 ニフティサーブ/FJAMEA/18番会議室
    1996年02月06日23時51分
 注釈 行頭スペース+30W
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SUBJ:【逸連作】05 早朝の客

 Sibi-Tem V.4.1 (s+30)

 逸した記憶にも時間は流れ いつからか 逸連作 #05(短編)




           『 早朝の客 』


                        作:しびる





  目覚まし時計に叩き起こされたのが午前4時45分 47分には
 着替えを終えて薄汚れた軽自動車を運転していた 周囲はまだ闇で
 朝日が昇るまでには1時間程度必要だ ただ僅かに東の空が紫色に
 滲んでいる 夏時間なら既に明るいのだが この季節はこんな感じ
  車も疎らな道路を曝走する 並走するのは大半がタクシーで た
 まに営業車と貨物車が混じる 平日のこんな時間には遊び回る馬鹿
 な若者も走ってはいない だから毎日同じペースで運転する
  駐車場に到着したのは午前4時58分 気味が悪いぐらい毎日同
 じ時間だ ドアを開けてタバコに火を点ける その動作も毎日同じ

 『おはよう 店員君 寒いからさあ 早く開けてくれないかなあ』
 『あ おはようございます 今日は早いんですね 待ってください
 すぐに開けますから それにしても寒いですよねえ』
  駐車場は証券会社のビルと生花市場に挟まれた路地の突き当たり
 タバコを半分吸ってシャッターの前に到着する距離だ 証券会社の
 前には市バスの停留所があって そこに設置されている灰皿に吸い
 殻をねじ込む 人影はバスの客かと思えばウチの客だった
 『寒いよ なんでも今年一番の冷え込みらしいな こんな日に早朝
 出社 悲しきは宮使えだな 店員君も同じか わははははは』
 『気楽なアルバイトですから どうぞ すぐに暖房を入れますよ』
 『おうおう そうしてくれや 寒くってかなわないな』
  合鍵を使ってシャッターを開ける 寒い寒いと文句が多いのはウ
 チの常連客 普段は7時過ぎにやってくるが たまにこんな時間に
 待っていたりする どんな仕事だか聞いたことはない
 『開店は5時半ですから コーヒーだけは無理ですよ それ以外な
 らお聞きしますけれど どうされますか』
 『あいや そうか ドリッパーは店長だったな ならさホットミル
 クでモーニングセットにしてくれよ ジャムバターな』
  水とお絞りを並べて新聞を手渡す 開店準備の間に寝癖頭を直そ
 うと思っていたのに どうやら手で押さえたぐらいでは収まりそう
 もない 返事をしながら蝶ネクタイの位置を調節する
 『はい ホットミルクでモーニング ジャムバターですね』
 『それとさあ ああああ なんだっけ ああーっと まあいいや』
  客は40代半ばか 少し白髪混じりの髪を丁寧に撫で付けてある
 生真面目そうな銀縁眼鏡に色の褪せた紺色のスーツ シワの目立つ
 顔にどす黒い隈 そんな姿をカウンター越しに眺める
 『そうだそうだ店員君さ アレあるかな ほらアレ なんだっけ』
 『タバコですね 置いてませんけれど 角の自販機で買ってきます
 よ レジが開きませんから先にお金を貰えますか』
 『ああ もちろんだな 煙がでればなんでもいいから』
  唇を右側に歪めてピースサイン タバコ程度の簡単な単語が思い
 だせないのか パンを切る手を止めて笑顔で答える 命令されて買
 いに行くなら 微笑んで進言する方が場の空気も重くならない
 『先にセットの方を仕上げますね パンを焼き始めましたから ほ
 おっておくと焦げるかもしれませんし 構いませんよね』
 『そうだな 黒こげのパンを食わされるのも嫌だな 後で構わない
 からな ミルクはぬるいのにしてくれよ 猫舌なんだわ』
  まだパンは焼いていなかったが 客だけ残して外出するわけにも
 いかないので ここは店長が来るまでの時間稼ぎ 時計に目をやれ
 ば5時15分 あと10分もすれば店長か奥さんがやってくる そ
 れまでダラダラと延ばせばいいのだ 理由なんてなんでも構わない
 『それとさ店員君 あああああ なんだっけ 今日はなんだか物忘
 れがひどいな どうも睡眠不足でさ』
 『お疲れの様子ですね そんな日は無理をなされない方が良いと思
 いますよ あ すみません 余計なことですね すみません』
 『謝らなくてもいいな その通りだと思うからさ こんな毎日じゃ
 過労死してしまうわ 店員君も毎日 そうそう あああ なんだ』
  新聞をテーブルに広げて読んでいる 胸の辺りをまさぐるのはタ
 バコを探しているのだろう 持っていないことは瞬間に忘却の彼方
 に消えてしまったのか 会話はすこぶる適当だ
 『労働時間の短縮だってさ 笑うよな 不景気でもノルマは変わら
 ないからさ 仕事は減っても時間は減らないな 無理じゃねーの』
 『どうでしょうねえ 無理矢理でも休まないと それこそ過労死な
 んてことになりますよね みなさん大変らしいですから』
  客との会話は2割がこれだ すべての大人は疲れている 転じて
 過労死か胡散臭い儲け話 中間を取ってギャンブルかゴシップ 世
 間の話題なんて5種類程度しか存在しないのだ
 『それそれ 忙しくってさあ このままじゃ過労死するわ 店員君
 も毎日働くよなあ 学生じゃないんだろう そんな歳じゃないな』
 『ええ まあ いろいろありまして』
  寸前の会話も覚えられないらしい 話しているうちに本当にトー
 ストが焼けてしまった 隠しておけばよかったのだが 寸前のとこ
 ろでトースターが派手に音を立てた 仕方なしにミルクを温める
 『みんないろいろだよな ミルクはぬるいのな 俺なんか若い頃に
 ヘタを打ったからさ 休めないんだぜ 仕方がないよな』
 『ジャムバターですよね なんだかご苦労さまです ええ』
 『さっき説明したぜ パンはジャムバターだな 覚えろよ』
  チッと舌打ちをして新聞をめくる 自分の記憶は棚に上げて 他
 人の再確認を怠慢と即決する 若い頃の失敗も想像できる こんな
 人間が成功するはずもない しかしどちらでも良いことだ
 『どうぞ ホットミルクでモーニングセットです ごゆっくり』
 『待てよ タバコを買ってきてくれよな 財布を渡すからさ 信用
 してるからごまかすなよ 煙がでればなんでもいいや ほら』
  忘れているのかと思ったのに 新聞から視線を外さずに財布を差
 しだす 信用できないならタバコ代だけ渡せばいいものを 面倒な
 ので財布ごと受け取る なにか湿った嫌な財布だ
 『それじゃあ買ってきます すぐに戻りますから』
  本心では断りたかったのだが この種類の客はゴネ始めるときり
 がない ヤクザよりもサラリーマンの方が陰湿な場合がある 限界
 まで要望に応えるのが正解だと 過去の経験で学習している
  ドアを開けながら時計を眺めた 時間は5時23分 タバコの自
 販機までは往復走って約3分 猛烈な勢いで走れば店長が来るまで
 に帰ってこれる 客を残して店を空けると店長が機嫌を損ねる で
 きることなら面倒は起こしたくない だから走った
  体内時計で約1分 自販機まで辿り着いて呼吸を整える 種類は
 問わないと聞いていたからなんでもいいのだろう なににするかと
 考えて財布を開く そしてすぐに走り始めた
  財布の中は空だったのだ 買ってこいと命じて 空の財布を渡す
 良く考えれば常連客だ 店にタバコが置いてないのは知っていたは
 ずだ 尋ねて買ってこさせる計画なら無理がない 目的は悪戯か若
 しくは無銭飲食 最悪の場合は空き巣だって考えられる どちらに
 しても急いで帰らなければならない 中身を確認しなかったのは軽
 率だった もしかすればそれまでの会話も計算か 不安が募る
  自販機から店までは角を2箇所曲がらなければならない 真っ直
 ぐに見渡せない道路なのも問題になる とにかく走って店に戻った
  店の前の道路には店長の外車が停まっていた 状況は最悪である
 『はあはあ す すみません そのですね なんと言うか』
 『あらおはよう なにか買い物でもしてきたの 汗かいちゃって』
  すぐに視線を客席に向ける そして心臓がきゅっと縮んだ 先程
 まで男性が座っていた席には誰もいない その席の横で微笑むのは
 店長の奥さん 最悪の可能性が脳裏を過る 冷汗が背中に流れる
 『ああ あ あのですね その』
 『あたしが声を掛けたのに気が付かないんだもん この席は構わな
 いんでしょ もう片しちゃうわね 旦那は少し遅くなるから』
 『え 声を掛けてくださったんですか あああ そうなんですか』
  奥さんは瞬きをしてモーニングセットのトレーを持ち上げる 車
 が停まっているのは店のすぐ前だ 声を掛けたのなら店のドアを見
 渡せるはず なにか話が食い違う それじゃ客の男性はどこに行っ
 たのか 不自然にならないようにレジに視線を移してみるが まだ
 解錠されていないようだ
 『そうよ こんな時間からお客さんだったのね チケットの方なの
 掃除はまだなようね ラッシュまでに片しちゃいましょうね』
 『ええ 良く知らない方でした チケットは箱に入れておきますか
 ら すぐに掃除をします それも片付けますよ』
  なにも問題が発生していないのなら 代金はチケットだったと言
 えばすべて解決する チケットの予備なら数枚持ち合わせているの
 で問題はない それを箱に入れれば何もなかったことになるだろう
 『それじゃあお願いね あたしも少し連絡なんかがあるから ホン
 ト急な法事にはドタバタしちゃうわ かわいそうにねえ』
 『はあ 法事ですか お葬式かなにかですか 店長さんもそれで』
 『うん 旦那の友人でね まだ42歳なのよ まあ厄年だけどね』
  誰もいなかった店内に置き去られたトレー 普通なら断らずに片
 付ければいいものを 奥さんが尋ねた意味が理解できた ミルクも
 トーストも食べた形跡が全くない しかし時間潰しに注文だけする
 客も多いから それはそれで不可解という程でもないのか
  瞬間嫌な予感が悪寒に変化する なんとも言えない嫌な気分
 『その人はウチにも来られた方ですか もしかして眼鏡の』
 『ええ そうよ 見たことがあるんじゃないかしら 少し痩せ気味
 の 銀縁眼鏡を掛けた人ね なんでも肺ガンらしいわよ』
  予感が確信に変化する 思ったとおり先程の客は彼岸からの訪問
 者であったのだ 愕然として硬直する 身体中の毛穴が鳥肌立って
 自分でも血の気が引いていくのが確認できる こんなことって
 『そそそそそ それはもしかして いや なんていうのかその』
 『嫌なものよねえ 知った人が死んでいくのって 良い人だったの
 に なんだか色々なことが悔やまれるわ 彼女が死ぬなんて』
 『はあ 彼女ですか 女の人なんですか そうですか』
  そこまで聞いて力が抜ける 死んだのは女性らしい 脱力感と同
 時に笑いがこみ上げてくる ここで笑うのも不謹慎だろうから す
 こぶる真面目な顔で難しい表情を作ってみる やはり不可思議なこ
 とは発生しない 世の中は物理法則に支配されているのだ
 『そうよ あなたもタバコには気を付けなさいよ 急いで掃除を始
 めてちょうだい すぐに混雑するわよ お願いね』
 『はい 急いで片付けてしまいます』

  金も払わずに帰ってしまったのは困るのだが 常連客なら明日も
 来るだろう 明日払ってもらえばその時に店長に説明しよう なに
 も今日話して揉める必要もない できることなら面倒は避けたい
  白み始めた空が窓越しに輝いている そろそろ本当に朝がやって
 くる 6時になれば始発で通勤する客が押し寄せて混雑する それ
 までに掃除を終わらせなければならない あまり時間はないのだ






             》 しびる 《
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(のりこ)>さて これがいろいろ拡がったシリーズ『デュランタ』
      の1作目ですね 2週間シリーズでどこかにでてた『早
      朝から働く奇特な2人』の片方の人ですよね この彼は
(しびる)>そうだな まだこの頃はそれほどシリーズ化の予定はな
      かったんだけど なんとなく汎用できるように曖昧な設
      定で仕上げてある このテの作品の常套手段だけど
(のりこ)>いまこうして読むと 店内の様子が見てきたかのように
      浮かんできますよね ほとんど描写されてないのに
(しびる)>いろいろ使ったからなあ このときにはちょい怪談ぽい
      ニオイのするものを描いてみようって企画だったと思う
      それは『2週間』でも 不動産屋のエピソードに受け継
      がせて残してる やっぱ初期設定は影響するよな
(のりこ)>そーゆーものですかね なんか奥さんがちょっと優しい
      ですよね 年齢的にもやや若く感じるような
(しびる)>そのへんはシリーズ化するときに手を入れたからさ 誰
      か全体を締める役割っちゃ女将だろ マスターはその気
      がないって設定で始めたし なら気丈じゃなきゃな
(のりこ)>そうですね

posted by 篠原しびる at 22:26| シンガポール ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 連作系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年03月03日

連作12 逸連作04 飄逸たらんと

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 種別 連作系第12期 逸連作04
 題名 『 飄逸たらんと 』
 初出 ニフティサーブ/FJAMEA/18番会議室
    1996年02月05日00時51分
 注釈 行頭スペース+30W
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SUBJ:【逸連作】04 飄逸たらんと

 Sibi-Tem V.4.1 (s+30)

 逸した記憶にも時間は流れ いつからか 逸連作 #04(短編)




          『 飄逸たらんと 』


                        作:しびる





  ペットを甘やかすのは良くない かと言って虐待するのは論外で
 ある 友人のように付き合うのが最良らしいが 種族の相違は絶対
 的なものであろう そもそも同居することに無理があるのだ 持論
 ではペットの存在自体を否定している それは昔から変わらない
  しかし子供にはそんな意味論も通用しない 彼ら彼女らの行動原
 理には 生命に対する尊厳など存在していないのだ カワイイから
 拘束したい 刹那な衝動が小さな頭脳を凌駕する 言い始めれば聞
 きやしない 論理的な説明は逆に焦燥感を煽るだけだ
  その辺のところは 馬鹿な若者達のレンアイ感情にも通じる部分
 スキもアイシテルも 子犬を抱いた小学生と少しも変わらない 鼻
 で笑ってやろう そんな気分で暮らすこの頃なのであった

 『パパさ どこかに出掛けてもいいよ その方があたしも息抜きに
 なるもんね 1カ月に3日間じゃ寂しいでしょ』
 『いや 気にすることはない みなみは受験勉強に没頭すべきだな
 俺はそれを温かく見守る設定でいこう 邪魔な馬鹿ネコだな』
  なにを考えてか猫が膝の上に乗る 猫は娘と共に訪れるのだ こ
 の猫を飼い始めたのは娘と暮らしていた頃のこと あれから10年
 近くになる 娘も来年の春には高校受験だ
 『馬鹿じゃないって ギルバート君は賢い猫だよ パパにしか懐か
 ないんだもん 実は仲良しなんでしょ ほら 楽しそうだよ』
 『楽しそうもつまらなそうもないだろうに 俺なんか下っ端扱いじ
 ゃないのか それよりも みなみは少し痩せたか 心配だな』
  毎月決まって第2金曜日 昼間の授業を終えてバスでやってくる
 最近は隔週の土曜日が休みだから 金曜の夜から月曜の朝まで 最
 終日には車で学校まで送り届ける それが別れた妻との協議事項な
 のだ 娘の養育権はあの女に奪取されてしまった
 『ほほう スリムになったかな 夜食で最近太ってたから ココア
 ダイエットにチャレンジしてたんだよね さすがパパって感じ』
 『そんなのじゃないな 苦労してるんじゃないかって話だ ママに
 話すと叱られるがな やはり女の細腕には不安を感じる 困ったこ
 とがあるなら秘密でもいいから話すようにな』
  近頃では 元妻のことをママと呼ぶことに違和感を抱かない 娘
 と暮らしていたときには故意にタブーと位置付けていたが 今では
 そんな拘りにも意味がない どちらかと言えば逆だろう
 『ふうん 暮らしていれば困ったこともたくさんあるよ でもパパ
 に相談するような類の悩みじゃないよ 金銭的には問題ないかな』
 『まあな 誰の責任と言えば 俺にも半分近くの責任があるからな
 なにを言うのも無責任の上塗りかもしれん しかしそんなものだ』
  生活力は瞬間最大風力で評価されるのではない 俺の仕事は収入
 こそ多いが たぶんに不安定なものだ 家裁の評決は妥当なもので
 あろう 妻に養育権を譲渡したのは正解 納得はしていないが
 『それにねえ こんな暮らしも面白いと思うよ 3人で暮らした記
 憶はないけどね 最低でもあたしは幸せだもん だからいいの』
 『そうだな ふむ それもそうかもしれん この馬鹿ネコも同じ意
 見だろうさ こいつはどんどん太っていくようだが』
 『きゃははは ギルバート君は人間ならお爺さんだよ みよこさー
 ん ワシのご飯はまだかのお ってね 食べたのを忘れるんだよ』
  娘の笑顔に欠伸をする猫の顔 双方を眺めて感慨に耽ける 幼い
 娘が抱えていた子猫 それが今ではお爺さんと呼ばれる 時間の流
 れは各々に異なるのだ 俺もいつしかジジイになる
 『まだボケる歳でもないだろう なにか急に親しみが湧くな なん
 なら馬鹿ネコだけでも引き取って暮らすか こいつは俺の可処分資
 産に分類できるんだぞ 文句は言われんだろう』
 『別に構わないと思うよ ギルバート君も喜ぶだろうし ママは部
 屋が汚れるってウルサイもん 月曜日も面倒じゃなくていいよね』
  月曜日には娘を送る そのついでに妻のマンションの近くまで猫
 を連れていくのだ ネコは勝手に部屋まで戻る 面倒と言えば面倒
 な作業だ 割愛できるならそれに越したことはない
 『じゃあ決まりだな あれだけの距離なら 向こうまで自力で帰る
 こともないだろう なによりも懐いているらしいからな』
 『それならさ ギルバート君の世話ってことでね 4週目も来れる
 ようにママに話してみるよ 怒られるかもしれないけど あたしの
 意見はあたしの意見だよね パパの意見はどうかな』
  娘が18歳になれば すべての事柄は娘の意思で決定する約束で
 ある しかしそれまでは過去に定めた決定に従う それが双方の妥
 協点であり おそらくは最も有効な大人の手段であろう
 『どうだろうな ママが納得すれば問題はないだろう しかしダメ
 なら 俺もダメとしか言ってやれんな この期に及んで争うつもり
 はない ましてやネコが理由じゃな 希望は別問題だ』
 『ふうん でもね説得してみるよ 普段はみなみのしたいようにし
 なさいって話してるもん どんどん接近すればさ また仲良くなる
 こともあるかも いや とにかく話してみるよ』
  娘はさっと表情を堅くする 復縁に関することは 娘の考えでは
 最大のタブーなのだろう 可能性を微塵も感じない俺には空気のよ
 うな概念だが そんな表情に胸が疼く
 『無理強いすることはないぞ ママの気持ちは大切にせんとな 俺
 は男だし みなみにはパパとママがいる 順番ではママが一番寂し
 いわけだな みなみが守ってやるしかないだろう』
 『そうだね パパの意見は正しいと思う あたしもそんなふうに思
 うよ ギルバート君も同じように考えてるだろうね』

  俺の膝の上で猫が寝返りを打つ 俺に妻に娘に猫 誰が一番弱い
 のか その見極めができずに猫を撫でる おそらく最も強いのは猫
 だろう それから先の順位は曖昧だ 意見は各々違うはずだ
  ただカワイイから拘束する それだけでは展開しない世の中だか
 ら せめて猫だけでも抱いて暮らそうか しかし中学生の娘にでき
 ることができないのだから やはり俺が一番弱いのかもしれない
  それは昔から変わっていないのだ




             》 しびる 《
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(のりこ)>みなみちゃんシリーズですね 『ゆきんこのひ』で娘さ
      んといっしょだったパパさんが いまはひとりで暮らし
      てますか かなりいろいろあったようで
(しびる)>シンプルな流れだろ よほどのことがなきゃ親権は母親
      が強い 特にこどもが女の子ならな ましてや父親の収
      入が不安定なら決定的じゃん いろいろの隙もない
(のりこ)>まあ法的なことはそうなんでしょうけど そうじゃなく
      てココロの問題ですよ ややこしい関係の中でもみなみ
      ちゃんはいい娘に育ってますよね
(しびる)>こどもの非行は つまり家庭環境に問題があるって言う
      けどな 要は環境じゃなくてさ 家族の人間性の問題だ
      と思うんだわ 父親が仕事で不在でも 母親がひとりで
      育てても そこに善良な精神がありゃ こどもはきちん
      と育つと思うのよ それを環境というならあれだけど
(のりこ)>それも含めて環境でしょうけどね でもやっぱし父娘の
      関係は難しいですか 今回はわりとうまく行ってるみた
      いですけど?
(しびる)>難しいなあ 手持ちぶさただからネコとか用意したけど
(のりこ)>それは読んでてわかりました それ用のネコだなあって
(しびる)>わかるよな やっぱし

posted by 篠原しびる at 23:51| シンガポール ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 連作系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

連作12 逸連作03 はなにとどめし

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 種別 連作系第12期 逸連作03
 題名 『 はなにとどめし 』
 初出 ニフティサーブ/FJAMEA/18番会議室
    1996年02月03日01時00分
 注釈 行頭スペース+30W
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SUBJ:【逸連作】03 はなにとどめし

 Sibi-Tem V.4.1 (s+30)

 逸した記憶にも時間は流れ いつからか 逸連作 #03(短編)




         『 はなにとどめし 』


                        作:しびる





  すごくありふれたカタチの花 菊の種類にはこんなのが多い ど
 れも似たり寄ったりで 興味のない人には判別は困難だと思う 違
 うと言えばどれもまったく違うのだが 微妙な差異は辺境の趣味の
 独り善がりなのかもしれない しかしそれでも構わないのだ
  まだ珍しい種類だから 最初に出逢った途端に驚いた ベニディ
 オアークトチス 属の異なるベニジュームとアークトチスを交配さ
 せた属間雑種 講釈はとにかく綺麗な花だ オレンジ色の花弁が放
 射状に日差しを浴びる 確か去年も咲いていた

 『ごめんなさい 先約を忘れていたわ また今度ね』
  歯科医院の角を曲がり酒屋の前を歩く 目的地は小さな書店 少
 し先にオレンジ色の花々が見え始めたとき 不意に隣りの彼女が立
 ち止まった 2歩進んであたしも立ち止まる
 『ふあ どうしたの ともみちゃん 先約ってなにさ どうせすぐ
 に用事なんか終わるよ それからじゃいけないの』
 『ごめんなさい あたしは帰るから うん ごめんなさい』
  さっきまで元気だったのに さらさらの長い髪を垂らして俯いて
 いる よく見れば下唇を噛み締めて なにがどうしたというのだ
 『あやや どこか痛いの 気分が悪いなら救急車を呼ぼうか すご
 く顔色が悪いみたい えとえと どうしたらいいんだこんな時は』
 『ううん 病気じゃないから ごめんね ごめんね』
  病気じゃないらしいが それにしてもただごとではなさそうに見
 える 心配になって肩を抱くと ともみちゃんは小さく震えている
 ここはとにかくどこかで休憩するのが正解であろう
 『ともみちゃんさ 事情はなんであれ少し休もう ラナンキュラス
 まで戻ろうね なんか悩みがあるならあたしが聞くよ ほらね』
 『うん でもね ありがとう あたしってばこんなところで泣いち
 ゃって ごめんなさい ちさとちゃん こんなのじゃダメなのに』
 『まあまあ 詳しくは落ち着いて聞こう 話してくれるならね』
  来た道を戻る 歯科医の西隣が喫茶ラナンキュラス 学校の帰り
 に利用することもある ともみちゃんを引っ張って喫茶店まで移動
  ドアを引くとカウベルがカラコロと鳴った
 『おじさん こーしーを2個ね むむん まあ楽にしよう』
 『ごめんなさい ここはあたしがおごるね 少し落ち着いたから』
  壁際の指定席に座る 後ろの席に鞄を放り投げて 少し大きめの
 声でオーダーしてみる どうせ他には誰もいないのだ
 『謝らなくていいよ 教科書なんていつでも買えるもん それより
 もどうしたのさ いやいや無理にはいいんだけどね 誰だって人に
 は言えないような都合のひとつやふたつ』
 『花が咲いてたから だからね あたしってば ごめんなさい』
 『ふあ 花が咲いてたって ああ ベニディオアークトチスだね』
  あの瞬間の光景 道路に車に塀に青い空 花と言えば少し先のオ
 レンジ色だけ あたしの頭の中も偶然にオレンジ色の花だった
 『花が咲いてたから それがどうかしたわけ 綺麗な花だよ この
 街ではアレぐらいじゃないかな 花はキク科に限るね で』
 『ダメなの あの花の前は歩けないの 名前なんか知らないけれど
 ごめんなさい 少し死ぬから 急ぐなら先に帰ってね』
  なんとも要領を得ない ともみちゃんの表情から察するに 手の
 込んだ冗談でもなさそうだ それにまたしても涙目攻撃 なにか悩
 みはあるのだろうけど 報告するつもりもないらしい
 『まあいいや あたしも午後からは暇だしね 生き返るまで付き合
 ってあげるよ 悲しいなら泣くのもいいよ 誰もいないからさ』
 『うん 死ぬ前に少し泣くね ちさとちゃん ぐすんぐすん』
  壁にもたれてうなだれる ともみちゃんは大粒の涙を流して泣い
 ている 普段は気丈でこんな姿は非常に珍しい 軽いノリが信条の
 はずなのに 崩した表情は演技ではないだろう
 『ともみちゃんが泣くもんな 頭を撫でてあげよう どんどん泣く
 がいいね でもさ 花は悪くないよ その部分だけは納得できない
 な 花粉症なら仕方がないけどね よしよし』
 『そんなのじゃね うっく そんなのじゃないもん うわああん』
  涙と鼻水でグチャグチャの顔 ハンカチで拭いてあげて抱き寄せ
 る これだけ泣いてしまうと 当分は社会復帰できないだろう 長
 期戦を覚悟して 様子を窺うマスターを視線で牽制する
 『はいはい そんなのじゃないね ほら ちーんってするね ふむ
 もしかしてさ 想像で話すけれど ふぁらお君と喧嘩したのじゃな
 いのかね 男関係だと推測するよ』
 『ああああああん うっく うっく うわああああああん』
 『むう やっぱりそうか どっちが悪いのか知らないけど 喧嘩は
 良くないよ 泣くぐらいなら仲直りだね もひとつちーん』
  どうやら図星だ ふぁらお君はともみちゃんの彼氏である 良い
 意味でのツタンカーメン だからふぁらお君 本名は知らない
 『もうね 会わないようにしようって ひっく 他にね 好きな人
 ができたからって わあああん どうしたらいいかわかんないよ』
 『おう おやまあ そんな悪い男だったのか 知らない間にそんな
 ふうになってたんだね よしよし でもなあ 知らなかったなあ』
  最近あまり見ないと思ったら そんな展開になっていたのか 浮
 気なんかしそうなタイプには見えなかったが いきなりそんな宣言
 をされれば さぞかし大きなショックだったろう
  さっきまで少しもそんな素振りを見せなかったのに やはりとも
 みちゃんは気丈な女の子である 無理しなくてもいいのに
 『あたしもね ちーん あたしも悔しいから殴って別れたの でも
 ね やっぱりね うっく 忘れられないから うわあああああん』
 『ふむふむ そんなものだろうね 殴ってやったのは正解だと思う
 よ 忘れられないか それは仕方がないかな まあ泣きよし』
  他に彼女ができたなら 復縁を望むのは無理だろう 対処方法と
 しては経過観察のみ 時が過ぎても忘れるものではないが 人間は
 泣いてばかりじゃ暮らせない 総量は同じで濃度が薄まるぐらい
 『忘れられるわけないもん 部屋とか学校とか ぐすん 一緒に出
 掛けた場所なんて 服だって季節だって 夕方も夜も どんなこと
 だって忘れるわけないよ ちさとちゃん ちさとちゃんてば』
 『うんうん いっぱい泣くのがいいよ よしよし』

  あたしが暢気に愛でていた花 少し珍しくて綺麗な花 名前と性
 質を知っていたから感情移入していたけれど 実際に知っていたの
 は咲いている現象だけ 実にそれだけのことなのだ
  誰がどんなふうに想っているか 誰の気持ちがどんなふうなのか
 きっと最後まで知らずに終わる数多の感情 それはつまり花の気持
 ちなのかもしれない
  ともみちゃんの頭を撫でながら そんなふうに考えていた





             》 しびる 《
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(のりこ)>ファラオくんですか よい意味でのツタンカーメン?
(しびる)>エキゾチックな目鼻立ちの男性なのであろう 腕を胸の
      上で交差して目を開いたまま睡眠をとると怖いよな
(のりこ)>それはかなり怖いですね てか本文とはまったく関係な
      いですし 結局花のことはどうなったのやら?
(しびる)>そりゃなんかあったんだろ 訊かぬが花 言わぬが花
(のりこ)>あー そーゆーことですか でもなんかちょっとくらい
      は触れておいてもらわないと わけわかんないですよ
(しびる)>別にいいじゃん 他人のことなんか1%も理解できるも
      んじゃなし 花を愛でる者がいりゃ花に涙する者もいる
(のりこ)>それはそうなんですけどね んじゃ今回の企画意図は?
(しびる)>よくわかんないけどタイヘンなんだなあって他人の気持
      ちをおもんばかるお話を描こうって企画 だったと思う
(のりこ)>そのまんまですねえ
(しびる)>なら成功してるんじゃん

posted by 篠原しびる at 23:50| シンガポール ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 連作系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

連作12 逸連作02 パパシート ママシート

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 種別 連作系第12期 逸連作02
 題名 『 パパシート ママシート 』
 初出 ニフティサーブ/FJAMEA/18番会議室
    1996年02月01日02時54分
 注釈 行頭スペース+30W
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SUBJ:【逸連作】02 パパシート ママシート

 Sibi-Tem V.4.1 (s+30)

 逸した記憶にも時間は流れ いつからか 逸連作 #02(短編)




        『 パパシート ママシート 』


                        作:しびる





  会社までは私電を乗り継いで1時間と35分の距離 マイホーム
 はマンションで 一戸建てなら2時間超でも我慢するが 買ったと
 は言え基本的に仮の宿 毎日3時間10分を浪費する情熱に値する
 ものか その辺が考慮すべきポイントだろう
  そもそもウチの会社は部品メーカーだから 通勤に奨励している
 ぐらいなのだ 社員に対する低金利ローンも制度として存在してい
 る 利用しないテもないだろう

 『みなよだって欲しいよな ママに公文まで送ってもらったりもで
 きるぞ 週末のドライブなんか凄いと思うぜ ブルジョアだよな』
 『そんな贅沢 維持費も捻出できないわよ ここのローンだって』
  夕食を終えて娘を膝に乗せる 総皮張りのソファーはテレビの前
 にL字型 俺はテレビに向かって正面 女房は横に座る 今日の議
 題は乗用車の購入についてだ この数年の懸案事項である
 『みなはねえ 凄く大きいのがいいと思う 次にいいのは後ろに物
 が乗せられるのがいい バスもいい プルホアだよねえ きゃは』
 『ブルジョアだ 上流階級のことだな お金持ちって意味だぞ み
 なよもお金持ちがいいよな しかしバスやトラックじゃダメだ』
  金銭的な主導権は女房にある 俺だって贅沢なのは承知の上なの
 だ 双方気持ちは納得した関係で いわば自問自答に等しい行為
 『それは逆じゃないの ウチなんか貧乏になるわよ みなちゃんだ
 ってすぐに大きくなるの 学費だって必然的に増大するわね』
 『ふうむ 毎月の定期預金に学資保険も掛けてるだろうに 俺の試
 算なら月額3万5千にボーナスで10万 無理じゃないな』
  中古車の線も考えたが ここはやはり新車で行きたいところ そ
 れに買い換えの下取り価格を考慮するなら 初期投資は逆に将来的
 なコストダウンにつながる 少し無理をすれば可能な線だ
 『みなは大きくならないよ 小さいまま大人になるから心配しなく
 てもいいと思う それにねえ 勉強もしないと思うな』
 『なんだそれ みなよは大きくならんといかんぞ 勉強も頑張って
 大学ぐらいは卒業しなきゃな みなよの心配することじゃない』
  娘は小学2年生だ 顔は女房に似て美人 頭は俺に似て利発であ
 る 親の贔屓目を差し引いても事実は事実 娘をダシにする方法論
 は双方同じである
 『パパのお小遣いをゼロにしなきゃ無理ね ウチの家計で削れるの
 はそれぐらいじゃないかしら 定期だってこのままじゃ無理よ 大
 学を卒業する頃には結婚資金も考えなきゃ 既に出費だらけねえ』
 『そんなだな 先のことは考えなくてもいいぞ 結婚なんて20年
 ぐらい先の話だろうに 無理に結婚しなくてもだ ふむ ふむ』
  娘が膝の上で足を振る 昔はあんなに赤ん坊だったのに それが
 ここまで成長したのだ 毎日見ているから変化も緩慢だが 子供っ
 てのはすぐに大きくなる 不思議なものだ
 『みなはパパと結婚するの ママはかわいそうだから仲間に入れて
 あげるけど それは仕方がないのです 順番だもん』
 『あっはっは 順番ならママが早いでしょうに 早い者勝ちなのよ
 パパを捕まえたのは10年以上前よ みなちゃんはタマゴねえ』
  徐々に話題が変化する つまりは今回も論破できなかったという
 わけだ まあ家計云々については仕方がない 誰の責任かと言えば
 考えるまでもない すべては収入の問題 なんともはや
 『みなってばタマゴから生まれたのか 前からそんなふうには思っ
 てたかな どこで買ってきたの 中村屋さんかな』
 『パパが作ったのだ ほらパパの趣味は模型だろうに ママがそろ
 そろ子供が欲しいなんて言うからな 赤ん坊の模型は大変だな』
 『あはははは なにを馬鹿なことを みなちゃんを作ったのはママ
 に決まってるじゃない お料理の要領ね この辺りなんか大変』
  女房も隣りに座る ふたりで並んで娘を触る 俺は娘のふくらは
 ぎを 女房は顎からうなじの後れ毛をかきあげる 横になればふた
 りの膝でも余る身長 すぐに色気づいて難しくなる
 『みなは野菜とか模型なのか まあねえ 買ってきたのや拾ってき
 たのじゃなきゃいいと思う パパとママが作ったわけだもん』
 『ふむ 急に核心を突いているのは不思議ではあるが どっちにし
 てもウチの娘だな みなよってばパンツ丸見え ちゃんとしろ』
  今のところはこんなものだ 恥じらいとか計算とか見栄や外聞な
 んて気にもしない 乗用車を我慢するのは この無邪気さを失うた
 めの費用が原因なのだ なんとも複雑で かつ仕方がない
 『あはははは パパは女の子には厳しいのよ ママだって細かいこ
 とで注意されるもの 偉そうなパパよねえ』
 『くすぐったい きゃああ パパは偉いからいいと思う たまにね
 え ごめんなしゃい もう飲みましぇん とか言うんだよお』
 『だらしない女の子はみっともないぞ 家の中は構わないがな 普
 段から練習しとかないと 咄嗟のときにできないぞ』
  娘のスカートを引き下げる 今でこそ母親面をしているが 学生
 の頃の女房もこんな感じであった なにかふにゃふにゃした猫のよ
 うなイメージ 明らかに娘にまで遺伝している
 『まあ父親としては パパの意見は模範的ねえ ママはみなちゃん
 はみなちゃんらしくって構わないと思うわよ これはこれでカワイ
 イし ふううん 料理に戻して食べようかしら こことか』
 『やあだあ うひゃあママに食べられる きゃはははは 晩ご飯は
 みなよのスープです それとみなよの焼いたやつです きゃああ』
 『なら食費が助かるな パパはママを食べるからな みなよとふた
 りで車に乗ろう 妥協点としては有効だろう ふむ』

  娘は膝の上でバタバタ暴れる 女房の腹に顔を押し付けて馬鹿笑
 いしている 食べるのなら女房が先だろう 娘はその後だ
  なにかわだかまりを溜飲して俺も笑う どうにかしなきゃいけな
 いこと 結局どうにもならないこと すべてはなるようにしかなら
 ない世の中なのだ ならば今だけでも楽しければいい ふうむ






             》 しびる 《
+++++++++++++++++++++++++++++++
(のりこ)>みなちゃんシリーズですね あのお嬢ちゃんもようやく
      小学2年生ですか もうこれで最終だったかな?
(しびる)>さあな よく覚えてないけど
(のりこ)>今回はパパさんのマイカー購入計画の巻ですね 途中か
      ら話題がそれて頓挫したみたいですけど それで結局ど
      うなったんでしょうか
(しびる)>さあな 自動車ってのは購入資金はもとより維持費もか
      なり掛かるからさ 燃料費に車検に自賠責や任意保険も
      そのうち修理費やオプション代に駐車場も考えなくちゃ
      いけないし ローン組んだ同額が諸々で必要と計算する
      くらいでちょうどか それ以外の交通手段が確保できる
      なら贅沢以外の何物でもないな ってことでムリだろ
(のりこ)>やっぱし買わなかったのでしょうか んー
(しびる)>さあな そこんとこはこの企画の範疇外だし
(のりこ)>って? 自家用車を買いたいなあって企画じゃなかった
      んですか それ以外なにが描かれてるのやら?
(しびる)>小学校低学年女子と父親の関係を描こうって企画だろ
(のりこ)>そのまんまじゃないですか
(しびる)>なら成功してるってことじゃん 問題あるのかよ
(のりこ)>そう言われればそうなんですけど

posted by 篠原しびる at 23:50| シンガポール ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 連作系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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