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2006年02月28日

連作11 緋連作11 おまじない

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 種別 連作系第11期 緋連作11
 題名 『 おまじない 』
 初出 ニフティサーブ/FJAMEA/18番会議室
    1996年01月20日01時07分
 注釈 行頭スペース+30W
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SUBJ:【緋連作】11 おまじない

 Sibi-Tem V.4.1 (s+30)

 崩壊寸前の赤色巨星のように 膨張して 緋連作 #11(短編)




          『 おまじない 』


                        作:しびる





  ジンクスおまじない 少し変化すれば魔術 それも黒い方の黒魔
 術 白魔術なんて少女趣味じゃなくて 強烈に効くやつ 毒蛇とか
 山羊の生き血とか は気味が悪いから妥協して 薬草とか毒グモな
 んかを使って派手にやる 煙モウモウに鍋グツグツ
  いろいろ考えてみたけれど 黒魔術は物資の調達や手順が煩雑だ
 効果もありそうだが手間もかかる だからおまじない 非常にポー
 タブルでビギナー向けであろう それに白魔術のように博愛主義じ
 ゃないところもダークな魅力だ
  おまじないの基本は因果応報 望む気持ちは世界に波を起こして
 広がる 山もあれば谷もある 賭して臨むが覚悟の必要な所以だ

 『生命の危機はないから 気にしなくても大丈夫 普段どおりに暮
 らしてくれればいい あ それと12時毎に念を送るから なにか
 閃いたらこれに書いておいてちょうだいね じゃあ』
 『待て それで説明したつもりなのか 普通なら怒るぞ』
  完璧に説明したのに 解析力の足りない男だ これだけ用意する
 のに3日間も費やしたというのに 見て理解できないなら聞いても
 理解できないのだろうか なんとも諺な展開である
 『だから それを額に貼って暮らせばいいのよ するとあら不思議
 数日間であたしのことが好きになるの 科学も進歩したものだわ』
 『お前ってバカな そんな女とつきあってる俺も賢いとは言えない
 が キョンシーじゃないんだから なに考えてるんだ バカだな』
  バカバカと失礼なことおびただしい 学力ならあたしの方が遥か
 に上だ 文句を言わずに従うのが愛情であろう
 『剥がせば絶交よ あたしとの楽しい生活は未来永劫消えてなくな
 ると思ってちょうだい 夜にまた来るから お昼の12時にね』
 『もうつきあってるのに好きになるもならないも どうなれば満足
 するんだ その通りにするから剥がしてくれないか』
  簡単に剥がせと言うが この札を造るのにどれだけ苦労したこと
 か 薔薇の花の抽出液を染み込ませた和紙 薔薇もハイブリッドテ
 ィー系じゃなくてポリアンサ系 キメラ種のフロリバンダ系は初心
 者であり 上級者は房咲の薔薇のみを利用する 季節外れなので入
 手は困難を極めた それを簡単に剥がせと言うのか
 『そんな問題じゃないでしょ 安易に交際なんか始めちゃうからさ
 片想いのドロドロとか 告白する過程のドキドキとか 全部が台無
 しじゃない 責任取ってもらうわよ バカはあなたじゃない』
 『それが俺の責任なわけか 気持ちはなんとなく理解できるが そ
 の努力を別の方向に活かすつもりはないのかよ』
  責任は誰にあるのか どちらからとなく交際が始まって 数日を
 経ずに肉体関係まで進展 あっと言う間に昔からの知り合いのよう
 に馴れ合って その関係が既に4年も持続している 考えるまでも
 なく近い将来には夫婦であり 過程に恋は存在しない ただベタベ
 タする愛情だけが横たわる
 『昔から憧れてたもの 想い続ける彼の写真を枕の下に忍ばせたり
 特殊な結び目で小指に赤い糸が絡むの 曜日に合わせてお祈りの方
 法を替えるのよ そんな気持ちなんか理解できないでしょ バカ』
 『よくわからないが 少し譲って片想いだとするよな その彼氏に
 札を貼ったりするのか 好きとか嫌いじゃなくて 根の深い誤解が
 生まれるぞ 読む本を間違えたんじゃないか』
  それでも札を剥がさないのは優しさか まあ剥がそうにも瞬間接
 着剤だから 無理をすれば真皮が見えることになる 優しさには無
 用な流血を防止する働きもあるのか その点だけは評価に値する
 『間違えてないよ 片想いの彼に気持ちが伝わるようにするために
 は 満月が南中する時間に 薔薇の液を浸した札を彼の愛用するも
 のに貼るの するとルナティックエナジーが気持ちを伝達するパワ
 ーに変換される 仕組らしい』
 『彼の愛用するものって 俺の体なわけか 確かに永年愛用してい
 るが 直接貼りに来るなら話した方が早いだろうに』
  その部分については あたしもかなり考えたのだ 本当の片想い
 なら彼の使用するものを入手するだけでも困難な作業であろう し
 かしあたしの周囲には愛用グッズが満載なのだ どれが最適かの選
 別作業は無限の試行錯誤になる可能性がある だから最も有効な物
 品を選んだのだ 結果には満足している
 『それじゃダメなの なんとなくジワジワと滲むように あたしの
 ことが好きになっていくのよ 失敗すればあたしは死ぬわ 凄く危
 険なおまじないなのよね あなたにも覚悟をしてもらわなきゃ』
 『死なないだろう どんな力が死に至らしめるんだ 科学的なとこ
 ろが少しもないように感じるが どこか進歩してるのか』
 『ゴチャゴチャ言ってないで そのまま暮らせばいいの あたしの
 ことが好きなら なんだってできるでしょ もうもう』
  黙って合わせてくれればいいのだ 説明しなくちゃ伝わらないの
 なら 少し愛情が足りないのかもしれない そんな場合にこそ薔薇
 の札が有効なのだ 更に貼ろうと札を取りだす
 『ウルサイから更に追加して貼るよ たくさん貼れば効果も凄いん
 じゃないかな 気持ちを伝えるには あ なにするのよ』
  貼ろうとしたところを奪い取られる そしてあたしの額に薔薇の
 札が揺れる せっかくの苦心の作を無駄にするのは罪悪だ 唇を尖
 らせると逆に微笑まれてしまった
 『ふむ 彼の愛用するものに貼ればいいんだろうに ならお前だよ
 な 俺の体よりは大事にしているつもりだ 科学的だろうに』
 『そんなのって いや その えへへへへへ』

  おまじない 本来の用途は色恋沙汰じゃないだろうが そこは応
 用科学って解釈で構わないと思う なんだって必要に応じて使えば
 いいのだ 無意味で元々 少しでも効果があれば結構だ
  今回の効果の程はいかほどか 予定調和って気もするが そもそ
 もそのような類じゃないかと考えなくもない もしかすればふたり
 揃って効果が中和するのか
  とにかく更なる計画は既にいくらも用意されているのであった







             》 しびる 《
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(のりこ)>まあねえ 個人の趣味はそれぞれですが
(しびる)>のりこはマジナイ系には強いだろ やたらこういうこと
      をしてたそうな感じがするがどうよ?
(のりこ)>そりゃまあ 普通の女子小学生として女子中学生として
      女子高生として? ひとなみにはまあ 瞬間接着剤で人
      の額にお札を貼るようなことはしませんでしたけど
(しびる)>そりゃそうだろ 業務上過失傷害罪だわな
(のりこ)>業務上なんですか やっぱし

posted by 篠原しびる at 21:56| シンガポール ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 連作系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年02月27日

連作11 緋連作10 なあむ みいやあん

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 種別 連作系第11期 緋連作10
 題名 『 なあむ みいやあん 』
 初出 ニフティサーブ/FJAMEA/18番会議室
    1996年01月19日06時36分
 注釈 行頭スペース+30W
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SUBJ:【緋連作】10 なあむ みいやあん

 Sibi-Tem V.4.1 (s+30)

 崩壊寸前の赤色巨星のように 膨張して 緋連作 #10(短編)




         『 なあむ みいやあん 』


                        作:しびる





  仕事を終えて部屋に戻る 5階建てのマンションの2階 エレベ
 ーターを使わずに階段を登る どうせいつでも最上階に止まってい
 るから 確認するだけ時間の無駄だ 構わず駆け上がって部屋まで
  バッグを口にくわえて鍵を探す 左手にはコンビニで買った夕食
 ガチャガチャ回して解錠する そしてドアを開けると視線が合った
 澄んだ瞳に廊下の照明を映して輝く 無表情はいつものことだ

 『ただいまあ ジルちゃんてば元気にしてたかな ご飯だよおん』
 『なあ なあむ なあむ なあなん』
  コンビニの袋を振りながらパンプスを脱ぐ ジルちゃんは缶詰の
 ぶつかる音に敏感だ これはきっと挨拶じゃなくて催促だろう
 『ジルちゃんの食事はみんなと一緒だよ 少し待っててねえ 大き
 な猫ちゃんの晩ご飯も作るからねえ ほいほいほい』
 『むうあん みいやああん なあ なあむ』
  そのまま焦らしてキッチンまで引っ張る ジルちゃんは催促でも
 出迎えてくれるのに 大きい方の猫は姿も見せない スーツ姿のま
 まコンビニ食材で簡単な夕食を作る
 『はあい ジルちゃん晩ご飯だよ あっちでみんなと食べようね』
 『むあん みゃああん』
  ジルちゃんを従えてキッチンからリビングへ リビングのドアを
 開けるとジルちゃんは先に駆けていく よほどお腹が空いていたの
 だろう もしかするとお昼ご飯は貰ってないのかもしれない
 『ただいまあ なんだ起きてたのねえ ジルちゃんにお昼をあげて
 ないでしょ お腹が空いたって怒ってるよ』
 『ああ そうだったかな 俺も昼は食べてないな だから仕方がね
 ーな もうそんな時間か』
  リビングには大きい方の猫がいた ジルちゃんは家猫だけど 大
 きい方の猫は放し飼いだから部屋にいないときもある いても大抵
 は睡眠中だ あまり慣れてないのかもしれない
 『ずっと寝てたの まいいや みんなで晩ご飯を食べよう』
 『そう願いたいな 腹が減って死にそうだ 寝てたわけじゃない』
 『むにゃああん みゅう なあむ』
  あたしと大きい猫が話してると ジルちゃんもなにか一生懸命話
 している 仲間外れにされたと思って苦情を言ってるのだ そんな
 ことするわけがないのに ジルちゃんは少しヤキモチ焼きである
 『今日は何をしてたのか 報告をしなきゃいけないよ 最初はジル
 ちゃんからね 今日一日の報告だよ 面白いことはあったかな』
 『みいやああん むうん なあん なあむ』
  晩ご飯の決まりである みんな揃っての食事のときには その日
 のことを報告しなきゃいけない バラバラの生活だから団欒は貴重
 で大切にするのがあたしの方針である
 『なんか話してるが お前にはわかるのか どうでもいいけどな』
 『ふふん ジルちゃんはですね 何日か前に転がしてた毛糸のかた
 まりを ベッドの裏から発見されたそうですねえ もう見付からな
 いかと諦めていたそうですよ よかったねジルちゃん』
  みんなの生活って普段はだいたい想像で決めている だけど実際
 に聞いてみると案外に面白かったりするのだ 今だってジルちゃん
 は凄く得意そうで 嬉しそうな表情はあたしも嬉しい
 『次はあたしね あたしの今日は大変な一日でした デトロイト支
 店の支店長が粉飾決算をしてまして どうやら穴埋めに売却しなく
 てはならないようですね しばらくは当地での訴訟問題と残務整理
 になります 出張のときはジルちゃんにご飯をあげてくださいね』
 『ふうむ お前の会社のせいで俺の一日も大変だった そのテの情
 報は先に流してくれよな』
  凄く内部の情報だけど 明日には関係筋には流出するだろう 今
 日は既に株価は9ポイントも下がっている 大きい方の猫は部屋で
 株や商品の売買をおこなっている 在宅ディーラーって仕事だ
 『先物の売り残が大きいからな どうにも弱含みで仕事にならんぞ
 シンガポールの鉄鋼市場が好調だがな 今日はそんなところだ』
 『すぐに決算期だから 証券筋から流れると思うよ ジルちゃんの
 話だとそろそろ底値かな あたしもそう思うな ねえジルちゃん』
 『むああん なあむ みいいやああん』
  ジルちゃんの意見は適切だと思う 前年度比で7割の下落 半値
 8掛け2割引 32%が底値の鉄則 大きい方の猫の狙いは古参の
 製鉄会社 最近は粗鉄の輸入が好調である
 『ジルちゃんは 週明けから動くって話してるよ あら ジルちゃ
 んはすぐにこぼしちゃうんだから 丁寧に食べなきゃいけません』
 『みやあん むう』
  喋りながら食べるとこぼしてしまう ジルちゃんは一度のたくさ
 んのことができるタイプではない それは大きい方の猫も同じだ
 『それで どこまで引責するんだ 出張が長引くのは歓迎しないな
 俺も猫も干涸らびて死んでしまうぞ お前が帰ってきたら俺達なん
 か 部屋の隅で堅くなってるかもしれん』
 『みやああん むうあ ふにゅうん』
  それは嫌な想像だ ドアを開けると2匹の猫ちゃんが部屋の隅で
 両足を揃えて転がっている 考えただけで涙が流れる
 『ふうん そんなのは嫌だなあ ならあたしも死んじゃう』
 『おいおい 泣くことはねーだろうに 冗談だろうが 困った奴だ
 な 出張なら猫とふたりで食べればいーんだろう ふむ』
 『なああん みゅん なあむ』

  ジルちゃんは食事を終えて席を立つ あたしは涙でぐしゃぐしゃ
 のまま微笑む 大きい方の猫は不機嫌そうに食べ続けている それ
 でも本当に怒っているわけじゃない 照れてるだけなのだ
  少しすればあたしも食事を終えて その後はみんなで食後のゴロ
 ゴロ なにが楽しいって食後にだらしないのがいちばん楽しい






             》 しびる 《
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(のりこ)>しびさんの得意分野って感じですよね
(しびる)>んー 得意だけどさ あんましいつも描きたいって感じ
      のパターンじゃないよな ホントは『うりいいい』とか
      そゆのが好きなんだわ 別位相系のさ
(のりこ)>あいかわらずひどい趣味ですよねえ でもこの感じ い
      いじゃないですか 会社がどうとかってのはあれですが
(しびる)>そこを外しちゃったらぐだぐだじゃん アルバイト店員
      とそのヒモって設定じゃまったく別の話になるだろうが
(のりこ)>それもそうですけど なんかとうとつってゆーか?
(しびる)>100行しかないんだぜ いきなり彼女の設定から始め
      てちゃ追い付かないって これで過不足なし
(のりこ)>それはそうと キャラの名前がないですよね この最近
(しびる)>短編に名前なんかいらないよな その名前自体に設定上
      の意味があるなら使うけど うるさいだけじゃん
(のりこ)>ふうん

posted by 篠原しびる at 22:41| シンガポール ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 連作系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

連作11 緋連作09 戦う演劇団体(RRT)

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 種別 連作系第11期 緋連作09
 題名 『 戦う演劇団体(RRT) 』
 初出 ニフティサーブ/FJAMEA/18番会議室
    1996年01月18日06時27分
 注釈 行頭スペース+30W
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SUBJ:【緋連作】09 戦う演劇団体(RRT)

 Sibi-Tem V.4.1 (s+30)

 崩壊寸前の赤色巨星のように 膨張して 緋連作 #09(短編)




        『 戦う演劇団体(RRT) 』


                        作:しびる





  暑くもなく寒くもなく 清々しい気候の5月末 気怠い授業がす
 べて終了して放課後 帰宅するも良し 部活に打ち込むのも健康的
 で良かろう それこそ若いのだから頑張って欲しいものだ
  それで あたしはどうするのかと言えば どうもしない 正確に
 はどうにもできないのだ 現場待機で座っているだけ この陽気だ
 から眠気も襲ってくる どうしたもんだろう

 『なにしてんのよ ウチの車に乗せろって言ったのはまみこでしょ
 うが 遅いから返しちゃったわよ おかげで電車下校よ』
 『ふああ そうかそんな話をしてたような でも緊急事態だもんね
 かなちゃんには悪いけどさ 仕方がないんだよ』
  そう言えばそんな話であった うとうとしてたところに背後から
 声が響く かなちゃんちの迎えの車に乗せてもらう話は午前中 今
 座っている用事は5時間目が始まったときに知ったことだ
 『なによそれ 居眠りするために混雑する電車に乗らされるわけ』
 『そんなつもりじゃなかったけどね これを見るがよろしだよ』
  案ずるよりも見るが早しである 机の上の鞄から封書を取りだす
 非常にかわいらしい封筒 その割りには律儀な文字 かなちゃんは
 シゲシゲ眺める おそらく驚愕しているのだろう
 『手紙ね まみこってば誰かに恨みを買うようなタイプには見えな
 いけれど なにかしたの 果し状にしてはファンシーな封筒ね』
 『ちいがあうう どうしてこんな所で決闘しなくちゃいけないのさ
 これは えへへへへへ ラブレターなのであーる 凄いよ』
  昼食を学食で済まして5時間目 物理の時間は実験室だと思って
 いたから遅刻寸前 知っているならかなちゃんも教えてくれればい
 いのに 座って机の中を覗き込んで驚いた
 『凄いって 女子高でラブレターねえ ユリの趣味があったわけね
 確かにまみこは女の子好きするタイプかもしれないわ 好きにすれ
 ばいいじゃない さして珍しいことでもなし それじゃ』
 『じゃあって 帰っちゃうの なんか誤解してるよ 中身も読んで
 くれないとダメだよ ユリってなにかしんないけど』
  どうして女の子から告白されなきゃならないのだ かなちゃんは
 急に不機嫌で きびすを返して帰ろうとする 確かに女の子同士の
 交際は珍しいことではない しかしあたしはそんな趣味じゃない
 『誤解もなにも 性欲が残っていそうな教師もいないし 校外から
 男子がやってくるわけもないだろうし 女の子以外に誰がいるのよ
 誤解のしようもない あらまあ』
 『ふふふふ 驚くだろうと思っていたのだあね そんなわけだから
 待っているんだもん 指定の時間はもうすぐだよ』
  よく知らないけれど確か1年生の女の子 手紙の主は女の子でも
 内容はさにあらず 恋文と分類したものの正確には若干違う
 『変な手紙ね なんか新興宗教の勧誘みたいなことが書いてあるわ
 ふむふむ 騙されてるんじゃなきゃ 少し凄いかな どうだろう』
 『騙してるわけではありません ただ純粋に あ 申し後れました
 1Eの宮内ゆうきです はじめまして まみこ先輩』
  みんな突然現れる クリクリのまなこに緩くカールした髪 宮内
 ゆうきって名前は手紙の主だ そして胸に輝く真紅のリボン
 『なんか ラブレターみたいなのを貰ったけど それが話のリボン
 だよね ほら かなちゃんもしてるよ 別に強制じゃないからね』
 『いえ まみこ先輩とならどこまでも御一緒するつもりですわ 既
 に20名程度が賛同しております これが名簿です まみこ先輩が
 一言命令してくだされば あ これが名刺です』
  ゆうきちゃんは話しながら思い付く癖があるようだ 名簿と名刺
 を手渡されて あたしは足を組み替える かなちゃんはニヤニヤ笑
 っている ゆうきちゃんは真剣なのだろうな
 『あなたが件の宮内さんね まみこを祭り上げて新党結成するのは
 構わないけど それでなにをしようってわけかしら レンタル料は
 高いわよ 子供には払えないかもね』
 『わたくし演劇部に所属しておりますので まみこ先輩が決起なさ
 る折には 新たなる演劇団体を母体にして活動を進めようと』
 『決起なんかしないよ ファンクラブを作る話って聞いたから待っ
 てただけで 真紅のリボンだって好きでしてるだけだもん』
  数種類のリボンの色があるが そう言えば真紅をしてる娘はあま
 り見掛けない なんか派閥やグループとの関連性があるらしいけれ
 ど 現在に至るまで考えたこともなかった
 『あはははは その論理で展開するなら あたしもまみこチームの
 メンバーなわけね 楽しそうじゃない 部活に打ち込めば』
 『面倒なことはやだよ たくさんで一緒に行動するのって苦手だし
 ね 勝手に集まってるのは構わないけどさ そんな感じだよ』
 『はい まみこ先輩がそのように奏されるのなら 今期の活動方針
 は勝手に集まるで展開しますわ それでは明日もこの時間に』
  ニッコリ微笑んで深くお辞儀 ゆうきちゃんはすっと消えた 後
 に残されたのはレッドリボンチームのリーダーと幹部である
 『かなちゃんさあ 明日は車に乗せてくれないかな できれば毎日
 乗せてくれると嬉しい 身の危険を感じなくもないからさあ』
 『想像とは違ってたみたいね あのテの女の子は怖いわよ あはは
 誰と戦うのか知らないけど 頑張ってみれば まみこ先輩』
 『ひえええええ リボンの色を変えようかな 困ったなあ』

  数多の派閥に対抗して あたしってば何と戦うのだろう そもそ
 も演劇団体で戦えるのか 謎が謎を呼び 手に残されたのは名簿と
 名刺とラブレター なにかが始まっていることは確からしい
  こうなれば敵前逃亡しか手段はないだろう とにかくほとぼりが
 冷めるまでは かなちゃんちの送迎車で帰ろう 危ないのは御免な
 のであった









             》 しびる 《
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(のりこ)>とうとう始まってしまいましたわ まみこ先輩っ
(しびる)>この当時にはなあ あれほどめんどうなシリーズになろ
      うとは思ってもみなかったのだよ やれやれ
(のりこ)>宮内ゆうきちゃんだけですね #01の登場は
(しびる)>もうさ キャラが多すぎて追い掛けきれないのよね 再
      三に渡るキャラ総括会議も空振りに終わってるし てか
      それはのりこの仕事じゃないのか?
(のりこ)>まー 今回のこの企画で順次押さえてゆけばいいじゃな
      いですか そもそもそのための企画ですよね
(しびる)>まあな ブログ内検索で関連ファイルをまとめられるの
      は便利でよろしい ウチのライブラリ管理をまったくの
      経費レスで片してしまえるとは 技術革新さまさまだよ
      なあ 全部移植できりゃこっちのファイルは消去か
(のりこ)>さすがにそれは危険じゃないですかね
(しびる)>ウチのHDDが飛んじゃう危険の方が多いんじゃねーの
(のりこ)>それはそうかもしれませんけど

posted by 篠原しびる at 22:39| シンガポール ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 連作系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年02月26日

連作11 緋連作08 シッポまでアンコ

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 種別 連作系第11期 緋連作08
 題名 『 シッポまでアンコ 』
 初出 ニフティサーブ/FJAMEA/18番会議室
    1996年01月12日23時11分
 注釈 行頭スペース+30W
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SUBJ:【緋連作】08 シッポまでアンコ

 Sibi-Tem V.4.1 (s+30)

 崩壊寸前の赤色巨星のように 膨張して 緋連作 #08(短編)




         『 シッポまでアンコ 』


                        作:しびる





  似ているなと思ったのは 真珠のネックレスの紐が切れたときの
 感じ 集めて並べれば解決することなんて考えればわかる しかし
 バラバラと音を立てて床に散る様に慌てふためく 腰を屈めてオロ
 オロ取り繕う あの感覚は本当の自分の露呈だろう
  そしてすぐに鼻白むのだ 一瞬でもドキドキしたのが逆に恥ずか
 しくなる 複数の人間に同時に責め立てられるのにも似ている な
 にか非常に弱い部分を覗き込まれたような 説明するのは難しい

 『なに どうかしたの あーちょっと待って 考えられない』
  思うところあって深夜の訪問 スクーターなら15分の距離 合
 鍵でドアを開けて部屋に侵入 シーツの膨らみを跨いで座る
 『寝ててもいいよ 寝顔を見に来ただけだから もう2時だし 明
 日も仕事でしょ すぐに帰るつもりだもん』
 『なんか用事だろ 暗いな コーヒーでも入れるか それともシャ
 ワーでも浴びた方がいいのかな どうしたわけ』
  お尻の下で動く背中の正体は交際中の彼だ もう長い付合いにな
 る かれこれ5年ぐらい どんな突飛なことにも冷静に対応してく
 れるのが長所だと思う こっちだって納得ずくなのだ
 『うん なんか わああって感じになって だから来たの ひとり
 で考えてると深いところに入っちゃうから 夜はダメね』
 『ふうん まあ考え事するのに夜はダメだろうな なに考えてたの
 か知らないけど いいよ 相談相手が欲しいなら』
  むっくり起き上がって目を擦る 別に聞いてもらいたかったわけ
 ではないが 気分の減速作業 代わりにこちらが寝転がってみる
 『仕事のことだから内容はいいや なんか適当に慰めて欲しいな』
 『適当にねえ そんなことなら辞めればいいよ 無理して働かなく
 ても それを前提に仕事をすれば楽だと思うよ』
 『そんなことでいいのかなあ でも 少し楽になった ありがと』
  本当は凄い窮地 考えなくちゃならない事が多重に交錯して な
 にを選択しても丸くは収まらない だからぼんやりと考える
 『寝惚けてて上手く説明できないけどね ふわあ 基本的に幸福な
 人生を過ごせるタイプだと思うよ だから大丈夫じゃないかな』
 『そうかなあ 幸せに暮らせるのかなあ 予感って毎日変化するも
 ん そんなふうに思えない日もあるよ 今がそう』
  膝の上の髪を弄られる きっと最善の方法で慰めてくれてるのに
 なんとも漠然とした不機嫌は消えずに漂う 対処方法なんて こん
 な姿勢じゃ掴めないのかな
 『心配ないって 自分でも最悪にはならないって考えてるだろ 嫌
 われるタイプじゃないわけだから ふわああ 美人だしね』
 『眠そうだね ごめんね いつもワガママばっかりだもん 寝てち
 ょーだい あたしも泊めてもらうから ほい 寝た寝た』
  膝からお腹へ そして胸に乗り掛かって押し倒す 首に手をまわ
 して頭を撫でる 男のくせに柑橘系の髪の香り 徐々に閉じられる
 目尻に指をはわす ゼロにしたい衝動がこみあげる
 『もう寝た まだ寝てない』
 『ううん 半分ぐらい寝てるかな おいで 抱っこしてあげよう』
  服のままだけど構わない シーツに潜り込んで丸くなる 腋の下
 に頭をつけて 胎児のように両手を握る
 『うんとさ 少しだけ泣いてもいいかな そんなに悲しくないけど
 迷惑にならないように小さな声で泣くから』
 『いいじゃない 大声で泣いても 悲しいから泣くとは限らないわ
 けだし 眠いから 聞いているのも面白いかな』
 『優しいねえ いつも思うけど シッポまでアンコなのは うん』
  パジャマにわざと涙が染み込むように グリグリ顔をこすりつけ
 て 論理は無視で泣き続ける
 『ふわあ ふむふむ そんなに大変なら 全部放り投げて辞めれば
 いいのに 結婚してこんなふうに暮らすのも楽しいと思うよ まあ
 勝ち気だから苦労するんだろうけどね』
 『むう だって誰にも負けたくないよ 女の子だからって諦めたく
 ないもん でも誰も傷つけたくないし 仕方ないのは知ってるよ』
  いつだって投げだせるのは危険な自覚 世界に必要不可欠な人間
 じゃなし あたしが努力してもしなくても すべては自己満足か独
 り善がりでしかない なんのために我慢する
 『優しいのは君だな なんだかその 全部に配慮しながらじゃ 優
 しい気持ちには負担が大きいだろうに 悪くなるのは』
 『もういいや ごめんなさいごめんなさい なにを言ってもらって
 も 今のあたしは納得しないから 凄くワガママだね』
  ずるずる甘える 調子に乗って気分を再加速 どうしてこんなに
 うっとおしい女に付き合ってくれるのか お腹の臭いを嗅いで 両
 手で抱き締める このお腹には端っこまでアンコが詰まっている
 『ふははは こんなふうな女の子が好きなんだから その辺のとこ
 ろは気にしなくてもいいよ 暴れるも良し 泣くも良し』
 『うん でも今日は暴れないね 泣きながら寝ちゃう感じでやって
 みようと思う 好きならご期待に沿えるようにね ごめんなさい』
  低い声がお腹に響く シーツの中で服を脱ぐ 下着だけになって
 パジャマの上着に頭を突っ込む 軟らかい胸板に頬をこすりつける
 別に性行為をしなくても それだけで充分満ち足りた気分になる
 『したいなら構わないよ あたしなんかそれも悪くないかなって考
 えてるけど 眠いならあたしも寝るから』
 『ふむ 眠いから寝よう そうやっててくれれば それで充分』

  少し体を移動して頭だけをお腹に乗せる 太股で片足を挟み シ
 ーツの中で目を閉じる これが世界のすべてならば
  そしてしばらくして眠ってしまった こんな夜が用意されてるな
 ら そんなに拘る必要もないだろうと考えながら




             》 しびる 《
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(のりこ)>よくわかんないですけど いろいろタイヘンですね
(しびる)>みんないろいろあるわな 誰かに助けてもらえる人間は
      結局は自分でどうにかできる人間なんだよな 逆に 自
      分で自分を救えなきゃ 他人にも助けることはできない
      ってこと そういう企画だったかな うろ覚えだけど
(のりこ)>はあ そんなふうには読めませんけど 仰ることは理解
      できます 他力本願は本来自助努力の結果ってことです
      ね あーそうか この彼氏がそういう存在だってこと?
(しびる)>まあそゆこと てか のりこのセリフはあまりにも微に
      入りまとめすぎ もうちょいぼやかすように
(のりこ)>あまり行数使わないようにと思ったんですけど
(しびる)>むしろ長い方がいいんじゃないのか?

posted by 篠原しびる at 22:01| シンガポール ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 連作系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年02月22日

連作11 緋連作07 フェーブルカンパニー27

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 種別 連作系第11期 緋連作07
 題名 『 フェーブルカンパニー27 』
 初出 ニフティサーブ/FJAMEA/18番会議室
    1996年01月12日23時11分
 注釈 行頭スペース+30W
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(のりこ)>FC27です どんどん宇宙船の話じゃなくなってきま
      すよね しかし合成食材ですか なんだかなあ
(しびる)>昔はさ ってフェーブル艦長がさとみと結婚するまでは
      ラマルクとラングルと3人で暮らしてたわけだし
(のりこ)>ありゃ んじゃ先代さんは?
(しびる)>ウラ設定じゃすぐに亡くなったことになってる
(のりこ)>ふうん ならホントにラマルクが食事を作ってたんです
      ね あーでもキッチンユニットで作れるんですよね
(しびる)>ふむ ホントはかなりいろいろな食事が作れるんだ 様
      々な星系の様々な人種や食習慣にあわせて そりゃだっ
      てそうだろ それくらいできて当然だわな この時代に
(のりこ)>そりゃそうですよね んじゃなんで粘土細工ですか?
(しびる)>ラマルクの責任だろうな あいつ無骨な軍人じゃん ホ
      ント無頓着なのな 食えればなんでもいいってタイプ
(のりこ)>なるほど なんてかわいそうなフェーブル少年

posted by 篠原しびる at 22:15| シンガポール ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 連作系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

連作11 緋連作06 毀誉褒貶

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 種別 連作系第11期 緋連作06
 題名 『 毀誉褒貶 』
 初出 ニフティサーブ/FJAMEA/18番会議室
    1996年01月11日00時21分
 注釈 行頭スペース+30W
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SUBJ:【緋連作】06 毀誉褒貶

 Sibi-Tem V.4.1 (s+30)

 崩壊寸前の赤色巨星のように 膨張して 緋連作 #06(短編)




            『 毀誉褒貶 』


                        作:しびる





  静かな夕方 日中は天気が良くて 少し赤みを増してきた空に涼
 しい風が隠れている まだ室内灯を点けるような暗さじゃないから
 窓から差し込む夕日で手元は明るい
  キッチンは南東の角にあり 大きな窓は凄く気分が良い 建物自
 体は築100年じゃきかないような代物だけど 磨かれた柱や壁に
 調和するべく考慮されたシステムキッチンが設置されている
  冬は少し寒いけれど 夏場は涼しくて快適だ 建物内すべてがこ
 の調子で 古色蒼然よりは旧態依然 別に悪いとは思わないもの

 『あ ちょうど良かった 買い忘れをしたものがあるんです 少し
 出掛けてきますので シチューの鍋を見ていてもらえます』
 『うん 急がなくてもいいわよ なんなら誰かに買いに行かせよう
 か この時間なら誰かいると思うわ』
  食事は基本的にあたしが作る 本当は気が向いたときだけで構わ
 ないって約束だったけど なんだって勉強だし なによりもみんな
 が喜んでくれるなら それが幸せだと思う
 『休憩時間に迷惑は掛けられませんもの 自転車ならすぐですから
 ぱーっと走って買ってきます まだ10分ぐらいなら煮えないと思
 います お忙しかったら止めておいてください』
 『私は暇だから さいかちゃんが来てくれてから楽ばっかり 火の
 番ぐらいさせてもらうわよ 気を付けて行ってらっしゃい』
  話しながらエプロンを外す 話している相手はこの家の女将さん
 あたしは住み込み従業員だ 立場的には社員だけど半ば家政婦 し
 かしこんな感じも良いと思う この会社には女性も数名いるけれど
 家事をするのは女将さんとあたしだけだ
 『はあい 車なんか通りませんから 危ないことなんてないですよ
 それに家事って楽しいから あたしの事は気にしないでください』
 『うふふ 結婚すればいい奥さんになると思うわよ』
  キッチンの正式名称は台所だ ガスコンロの上にはフードが備え
 つけられているけれど 天井は遥か上方に黒く煤けている 少し前
 まではカマドでご飯を炊いていたらしい それくらい古い
  あたしはサンダルに履き替えて女将さんに微笑み返す 引戸を開
 けると初夏の夕暮れ 少し体を動かしたかったのも正直なところ
 『うん 年中こんな気候なら過ごしやすいのにね そうだそうだ』
 『ほう 酒造会社の社員の意見とは思えないわね 最優先で酵母の
 ことを考える 油断すればみんな死ぬわ』
  鼻歌でも歌いたいような気候だ 勝手口から屋外へ 背伸びした
 ところで背後から女性の声 諭しているが声は楽しそうだ
 『ももこさんは いつだって酵母のことを考えてるんですか そん
 なふうに見えないときもありますよ 特に非番の前日とか』
 『あたしの恋人は酵母なのよ 植芝君改め酵母君 麹君なら普通な
 のにね 夕食の買い物なら野郎達に行かせるわよ』
 『あはは 女将さんにも同じ事を言われました いいです』
  ももこさんはあたしより10年以上先輩だ 歳だって女将さんと
 変わらないぐらい上なのに この若さはなんだろう ちなみに独身
 で近所のマンションから通っている
 『さいかちゃんは頑張るわ 親戚の娘っ子って聞いてたから どう
 せドラ娘かバカ娘だろうって思ってたのよ あら 誉めてるのよ』
 『なんとなく理解できます お誉めいただいて恐縮ですね』
  ももこさんは言葉を飾らない 誰にだって直球勝負で会話するの
 だ だから誤解されることも多い 怖がったり毛嫌いしてる人も社
 内にはたくさんいる だけどあたしは一番の仲良しだ
 『そうね どんな仕事も結局は人間関係でしょ 頑張るってのは本
 来は意地を通すって意味なのよ その辺を考えるようにね』
 『はあ よくわかりませんが肝に銘じておきます ところで今日は
 遅番ですよね ももこさんも夕食は食べるんですよね』
  働いている人は臨時を含めれば40人ぐらい 社員さんはその中
 の15人 ももこさんはあたしと同じ正社員 24時間を4等分し
 て社員の誰かが必ず管理する仕組 住込み従業員は あたし以外は
 男の人ばかり 寂しいわけじゃないが ももこさんがいれば更に楽
 しい 甘えていると言われればそれまで
 『悪いわね 今夜は酵母君と食事なのよ 帰るからスーパーまでな
 ら送るわよ あ 戻ってくるときが大変か なら自転車ね』
 『うん そうします 気持ちの良い天気だし それじゃ頑張ってく
 ださい いやいや意地は通さなくてもいいですか あははは』
  駐車場と駐輪場は正反対の方向にある ももこさんはくわえタバ
 コで右手をヒラヒラ なにか凄く格好良い女性だ あたしもニッコ
 リ微笑み返し あんなふうに暮らしたいものだ
  見上げれば茜色の空 なにか昔にも見た記憶 少し急いで駐輪場
 へ 若い男性従業員はバイク通勤が多い あたしも車よりはバイク
 の免許でも取ろうかな 愛車ごうごうさいか号に跨る
 『なんだよ こんな時間から散歩か 暇なら一緒に海まで行こうぜ
 俺はバイクだけど さいかはケッターマシーンな』
 『お買い物でサザエさんだもん そんなわけにいかないよ お魚く
 わえて裸足なら考えなくもないけどね あははは』
  ごうごうさいか号のペダルに足を掛ける それと同時にエンジン
 音が響く 誰もいないと思ったのに振り返ると長身の男性
 『中村屋まで行くんだろ 暇だから送迎してやるよ 遠慮せずに乗
 ればいいぜ 楽したって誰も怒りはしないな』
 『昨日から3番連続だったんでしょ そんな危ない運転には乗らな
 いもん 黒崎君だけで海に行けばいいよ 運動にもなるしね』
  実際のところ どんな仕事も体力勝負だ 知恵や勇気は必要だけ
 どそれを支える体力がポイント あたしは学生の頃からスポーツを
 やってないから こんなところで怠けるべきじゃない
 『へいへい 若いくせに律儀なもんだな いい加減なのは若さの特
 権だと思うぞ 若い頃の苦労は買ってまでするな 基本だな』
 『あはははは そんなの知らないよ いい加減で暮らせるなら勝負
 で決めよう ハンデ1分で中村屋までね』
  ニッコリ微笑んでペダルに体重を掛ける どうせ急ぐなら楽しい
 方がいい 楽をするんじゃなくて楽しく苦労する この頃少し加減
 がわかるようになってきた
 『さいか様の命令か ハンデは2分ぐらい必要だろうに』
 『2分は無用ね それじゃあ行くよ 向こうで待ってるからね』

  第5倉庫から精製棟を迂回して道路まで抜ける スーパー中村屋
 までは自転車で2分30秒 この勢いなら楽勝でゴール 黒崎君は
 事故多発人物だからハンデは1分 あまり急かせると危なくて仕方
 がない その辺りは配慮だと思う
  少し涼しくなった風を切る 凄く楽しくなって笑って走る お買
 い物に急いで走ると 財布を忘れてるんじゃないかって不安にもな
 る もしそうだって構わないけど 今はとにかく勝負に専念
  力一杯走らなきゃ そんなふうに考える毎日なのだと思う





             》 しびる 《
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(のりこ)>もでらーとシリーズですね さいかちゃんががんばって
      ます いい感じに世界とかみ合ってますよね
(しびる)>まあな とにかくそれ最優先で組んだ話だし いかにさ
      いかを新しい環境に馴染ませるか それがこの先の基本
      になるからな ちょいムリさせすぎた感もある
(のりこ)>えーっと それは だから病気になったとかってレベル
      の話じゃないですよね いや 理解してますけど
(しびる)>なに言ってるのお前? とにかくこの回に登場したもも
      こ 彼女をもうちょい利用してもよかったかな いまな
      ら完全に数話の短編を組むところだけど この頃はあん
      まし短期の階層は作る気がなかったし
(のりこ)>黒崎くんはありがちな導入ですよね どうせ付き合うん
      だろオーラがぷんぷん漂ってますよ
(しびる)>オーラは臭うものなのか 知らなかったなあ
(のりこ)>だってマンガなんかでは いかにも匂い立つゆらゆらし
      た描写がキャラの背後に漂ってるじゃないですか
(しびる)>んー あれはニオイなのか のりこの感性はすごいなあ
(のりこ)>褒められました

posted by 篠原しびる at 20:50| シンガポール ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 連作系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

連作11 緋連作05 ゆめ

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 種別 連作系第11期 緋連作05
 題名 『 ゆめ 』
 初出 ニフティサーブ/FJAMEA/18番会議室
    1996年01月07日01時29分
 注釈 行頭スペース+30W
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SUBJ:【緋連作】05 ゆめ

 Sibi-Tem V.4.1 (s+30)

 崩壊寸前の赤色巨星のように 膨張して 緋連作 #05(短編)




            『 ゆめ 』


                        作:しびる





  夢であることの自覚 この世界が夢である証拠 妙な遠近感に違
 和感を感じず 細部だけ誇張された風景が広がる 色彩は言葉での
 イメージに直接流れ込み 実際には白黒モノトーンの風景に注目す
 る部分のみが不気味に輝く
  これは夢で そうでなければ白日の狂気だ 自ら確認できないの
 なら映画も夢も等しく虚構 見たものに既視感 若しくは記憶の具
 現化 どちらにしても夢は現実ではない

 『嫌な夢を見た 夜の水面に樹木の先端だけが生えている 数十メ
 ートルの小高い樹木が 湖底から生えているらしい』
  寝苦しかったわけではないが なにか断片的な悪夢の残像 それ
 でも加速をつけて消え去ってゆく 既に言葉にした部分だけが記憶
 の底に残る それ以外は消えてしまった
 『ふうん 神秘的で素敵じゃない 別に嫌な夢じゃないでしょ』
 『いや よくは覚えていないが 気味の悪い夢だった どこかで見
 たことのあるような そんな夢だ』
  ベッドに起き上がり呼吸を整える 気分だけが重く カーテンの
 隙間には爽やかな朝が訪れていた
 『尖ったものは性的な意味を持つ 大抵は男根の象徴ね 欲求不満
 なんて説明じゃ喜ばないかしら 隠し事でもしてるんじゃないの』
 『あれが性的なものか なんとも いや』
  意識の中に現実世界の領域が拡大する 自分の見た夢を語るほど
 滑稽で無意味な行為はない 知性あるものなら自意識の深層を露呈
 すべきではない すぐに馬鹿らしくなり鼻白む
 『ま いいけどね どうするの こんな時間に起きるわけ』
 『そうだな 寝直す気分じゃない 年寄りじみてるが起きるとしよ
 う 付き合う必要はないぞ すぐに出掛ける』
  背を向けて話す女 その背中が小刻みに揺れる 性行為の最中で
 も笑う女 なにが楽しいのか 真意は詮索する気分すら奪い去る
 『そうするわ あなたの快楽はすべてあたしのモノだもの 苦悩で
 も激痛でも お好きなように楽しんでらっしゃい』
 『そんな契約だったな なら寝ていろ 夢を見る以外はすべて許可
 する 違反すれば処分する 廃棄処分だ』
  女の髪を乱暴に握る そのまま背中が反るまで引き寄せる なの
 にこの淫靡な瞳はどうしたものか 繊細な愛情も 二度と消えない
 生傷も この女には性的な快楽でしかない
  先天的な欲求不満 裏返して快楽 更に裏返しても快楽
 『あは 殺して捨てるの それとも友人にお金で抱かせるの 普通
 の主婦に仕立てて連れ歩くのはどうかしら 凄く楽しみ』
  返事もせずにベッドに転がす 自己完結に渦巻く快楽の暗黒 振
 り返らずに部屋を後にした

  夢は断片で 賽の目に切った現実のモザイク絵画 ストーリーは
 陳腐な三題小話 ユングやフロイトに解説させるために用意したも
 のだ 意図があるから意図が読める 無意味を定義すればすべてが
 終わる
  どこで見た夢なのか それだけは覚えていた

 『もう 来てくださらないのかと思っていました なにをしていて
 も悲しくて すみません こんなお話をするつもりでは』
 『続けろ 楽しそうに笑いながら話せ』
  目の前の飲物には手を延ばさず 腕を組んでイスに座る 冷淡に
 言い放ち眺める 趣味の悪い内装に吐き気を覚える
 『お会いできないのなら 死んでしまった方がましだと考えてまし
 た 辛い言葉でさえ幸せな記憶となって だからこそ』
 『もういい 黙れ 眠るから用意しろ』
  気紛れに訪れる部屋 同じ夢を見たのはこの部屋だ ただの確認
 作業 それだけのために用意された女
 『本当に嬉しくって こんなことって起こらないと思っていました
 今でも信じられなくて』
 『黙れと命令している ただ隣りで眠るだけでいい 夢を見ること
 だけを許可する それ以外はなにもするな』
  髪を掴んで引き寄せる 嬉しくても泣く女 隣りに転がして背中
 を眺める 返事をする間合いを与えず すぐに睡魔が襲ってきた
 『見た夢を報告しろ 詳細に楽しそうに話せ』
  女の背中を抱き 稚拙な行為の強要に劣情を感じる 黙って頷く
 気配だけを確認し意識が遠のいた

  ひとり船に乗り 水面の木々を迂回しながら進む 澄んだ湖水は
 真黒なのに見通せて 遥か湖底には太古の街並みが朽ちて広がる
  楽しくもなく悲しくもなく 表現するなら恐怖に似た感情 前後
 の脈絡もなくその場所に浮かび 言葉も発せず眺めていた
  明らかに夢 夢の中の世界に自意識を持ち込む 注意する光景の
 みが青黒く輝き もしかすれば現実なのかと考えていた

  音もなく巨大な魚が現われ そして消えた





             》 しびる 《
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(のりこ)>なんですかこれ?
(しびる)>なにって 夢の話じゃん
(のりこ)>なら夢の話だけでいいじゃないですか 途中の女の人の
      話の部分はなんですか 余分な気がしますけど
(しびる)>その部分も全部が夢なのな 夢ってホント脈絡がないん
      だわ イメージの羅列だと思いきや やたら筋がシッカ
      リしてたり かと思えばすぐ破綻したり 前後のつなが
      りもばらばら これはそういうののバリエーション
(のりこ)>ふうん んじゃデタラメを描いてこれは夢の話ですって
      のもアリですよね それは 反則じゃないですかねえ
(しびる)>だってさ これはそういう企画だもん 夢の話を描こう
      って企画だったし なら夢ってお題でなにを描くよ?
(のりこ)>なにって それは私の仕事じゃないですから
(しびる)>無責任だなー

posted by 篠原しびる at 20:50| シンガポール ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 連作系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

連作11 緋連作04 お昼寝

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 種別 連作系第11期 緋連作04
 題名 『 お昼寝 』
 初出 ニフティサーブ/FJAMEA/18番会議室
    1996年01月05日04時04分
 注釈 行頭スペース+30W
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SUBJ:【緋連作】04 お昼寝

 Sibi-Tem V.4.1 (s+30)

 崩壊寸前の赤色巨星のように 膨張して 緋連作 #04(短編)




           『 お昼寝 』


                        作:しびる





  体内時計なんて言うが 気侭に暮らしてみればすぐにわかる 結
 局は世間様の時間にあわせて寝起きしているだけなのだ
  とどのつまりは食事と睡眠 眠るためには適度の疲労を蓄積する
 疲労するためのエネルギー確保 食事と睡眠の間合いに活動してい
 るのだから タイミングには意味がない
  特に幼児なんてのは顕著な存在だと思う 規則正しい生活を教え
 るなんて 効率を重視しているだけで自然じゃない 基本はつまり
 食事と睡眠 大人だってそうなのだろうが 眠いから眠るじゃ社会
 生活は営めない その辺りに妥協点

 『お昼寝の時間だよ みなちゃん もう眠いんじゃないのかな』
  ぼんやりしてたから 昼食を食べたのは2時を過ぎていた あた
 しはテレビを眺めていたし 娘は機嫌よくお絵描きに熱中していた
  なにか予定があるわけじゃないので長閑な時間が流れる
 『ふうん みなね 眠くないもん』
 『眠そうだよ お布団に入れば眠くなるからね お昼寝をしよう』
  そう言って抱き締める 体がポカポカしているのは眠気の証拠だ
 頃合いからしても眠る時間 昼食を食べて1時間 軸は食事
 『絵を描くの ふうあ みなはお勉強をするの 寝ないもん』
 『ほいさ 欠伸してるよ お昼寝してからお勉強すればいいじゃな
 い ちっちゃい子は寝るのも勉強だよ』
 『むうううん 寝ないもん 眠くないもん やだやだあ』
  絵を描く姿勢のまま膝に座らせる むずがっているのも眠気が原
 因 甲高い声に赤ん坊の記憶が重なる 成長の軌跡はいかほどだ
 『それじゃ お絵描きしながら お布団に入ろうね 寝る勉強とお
 絵描きの勉強が一緒だね みなちゃんは 凄いよね』
 『ふああああむ 眠くないもん みなは一緒のお勉強するもん』
  納得したのかしないのか 詰問せずに抱き上げる お絵描きの道
 具はインクを使わないボード 抱え直すときに側頭部を直撃
 『晩ご飯までにお昼寝お昼寝 もう寝ちゃったかな みなちゃん』
 『寝てないもん みなはねえ ふあ 寝ないよ』
  遊んでいた居間から寝室へ 娘を抱いて足でドアを開ける 娘は
 今月で2歳半 抱いて歩くには少し重いか
 『そうだよね 一緒の勉強をしなきゃいけないもんね でもお布団
 に入るならパジャマに着替えなきゃ はいポーズ じゃまじゃま』
 『はいチーズ じゃまじゃま』
  自分で着替えさせなければならないのに 面倒なので脱がせて着
 せる 泣いてしまえば時間が掛かる どうせ寝るなら機嫌よく寝か
 せるのだ 寝起きのことまでは今は考えない
 『ママも一緒に入る 一緒に入るの ママも』
 『ほいほい 暖かい布団で気持ちがいいねえ みなちゃんの布団は
 凄くラクチン ママなんかすぐに寝ちゃう』
 『寝ないの ママは寝ないのお みなも寝ないもん』
  娘を押し込んで あたしも布団にもぐり込む 右手で娘の布団を
 叩き 左の肘で頭を支える 娘は両足でバタバタ暴れる
 『みなちゃんさあ 目をつむってみようね 寝なくていいから 目
 だけつむってみようよ ほうら ぽよーんと目が重いね』
 『つむる お話しして ママ お話』
  娘から甘酸っぱい体臭が漂う もう普通の食事をする年齢なのに
 体のどこかからかミルクの香り そんなものか それともこの子だ
 けなのか どうやら眠る体勢らしい
 『お話ねえ みなちゃんはなんのお話がいいの とんとん』
 『ウシさんの話 それとクマさんの話』
  眠る前に 娘のリクエストはいつも同じ お話をねだれば時間の
 問題 眠らなければ夕食がきちんと採れない こんなにまわりくど
 いことも儀式ならば仕方がない
 『ウシさんの話ね ウシさんがいました ウシさんが草を食べまし
 た ウシさんが鳴きました ウシさんが歩きました ほいさと』
  意味のない話を ゆっくり時間を掛けて聞かせる すぐに呼吸が
 寝息になる まさに条件反射 話を聞けば寝る仕組だろう
 『みなちゃん 寝ちゃったのかなあ ふうあ それならママは』
  横になったのであたしも欠伸 探せば仕事もあるだろうが 別に
 一緒に寝てしまっても問題はない 気楽な主婦業 どんな仕事でも
 やる気によって決まるものだ
 『むううん ママどこに行くの やあだああ』
 『どこにも行きません ママはみなちゃんとここにいるよ 一緒に
 お話の勉強だもんね はい とんとん とんとん』
  眠りが浅かったのか少し意識が戻ってくる 娘はあたしの二の腕
 を握り 布団を叩くリズムに鼻腔を振動させる どちらにしてもす
 ぐに眠るだろうが ひょっとすれば短時間で起きるかもしれない
 『とんとん とんとん ふあああああ』

  そのまま暗くなるまで眠ってしまった 起きたのは7時頃で 旦
 那はまだ帰ってきていなかった 冷蔵庫の有り合わせで夕食を作り
 娘に食べさせながらあたしも食べた
  8時すぎに旦那が帰ってきて 娘をお風呂に入れて布団を敷き直
 した そのときになって気付いたのだけど あたしが寝ている間に
 娘はお絵描きをしていたらしい
  レバーを引いて絵を消しながら なにか忘れたことがあるような
 気がしていた でも忘れているなら重要なことじゃないのだろう





             》 しびる 《
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(のりこ)>このお話なんですけど すごくたまに なにかの拍子に
      思いだすんですよ なんでしょうね 事件もないのに
(しびる)>さあな 個人の思い入れまでは関知しないし
(のりこ)>ところでこれってみなちゃんシリーズですよね たしか
      みなちゃんをお風呂に入れるのとか 数本ありましたよ
(しびる)>んー みなってのは みなみだな そう言えば
(のりこ)>あと ウシのお話いいですねえ 素人のお母さんがやっ
      つけで考えたお話ってぞくぞくするくらい興味がありま
      すよ(笑) どこでこういうのを見付けてきますかね
(しびる)>素人さんって言い方は慇懃だな まあいいけど
(のりこ)>しびさんってば こういうのばかり描けば安定したファ
      ンの方が固定するのに ヘンなのばかり描くからー
(しびる)>これもホントはすごくヘンな話なんだぞ
(のりこ)>普通じゃないですか

posted by 篠原しびる at 20:49| シンガポール ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 連作系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

連作11 緋連作03 分岐点

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 種別 連作系第11期 緋連作03
 題名 『 分岐点 』
 初出 ニフティサーブ/FJAMEA/18番会議室
    1996年01月03日03時56分
 注釈 行頭スペース+30W
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SUBJ:【緋連作】03 分岐点

 Sibi-Tem V.4.1 (s+30)

 崩壊寸前の赤色巨星のように 膨張して 緋連作 #03(短編)




           『 分岐点 』


                        作:しびる





  どんな出来事にも波がある ゼロから始まってピークを向かえて
 そして結局はゼロに戻る なだらかな山や険しい山 谷にしても同
 じで やがてはゼロになる単純曲線だ
  世の中が複雑に見えるのは ただ単に波がたくさん重なっている
 だけだ それぞれの波は単純な増減なのに 鳥瞰する癖が身につい
 ているから苦痛になる 分離して考える それができれば幸せに暮
 らせる
  しかしながら できないから不幸せとは言えない その辺りが人
 生の妙味だ 波に乗る 波に飲まれる さてどう生きるか

 『どちらにしても人生の転機だよ 自分で決めてもいいけどね 他
 人に決めてもらうのも面白いかなと思って どうする』
 『どうもこうも なんだよそれ 面倒は御免だな』
  朝から凄く機嫌がいい 昨日の午後から機嫌が良くて 今朝にな
 って更に加速的上機嫌 誰かに話したくてウズウズしている気持ち
 とにかく責任者を呼んで片をつけよう それが筋だろうな
 『ここに2枚の書類があるよ どちらも封筒で封がしてある 中身
 を尋ねるも良し 直感で決めるのも一興だと思うな どうする』
 『ふあ 旅行のパンフかなにかだろ 機会ならいくらでもあるから
 な どちらか選んで順に行けばいいだろうさ』
  場所はいつもの喫茶店 いやもう夜だからバーだ 窓際のテーブ
 ルで封筒を前にして微笑む 対面するのは背の高い男性 他に客が
 いないのはいつものこと こんな調子で経営が維持できるのか
 『それがだね 順番には無理な話 どちらか選ぶ それのみ有効』
 『自分で決めるって言ったな なら人生の転機は俺じゃない そん
 な話には付き合いきれんな 今日はあまり気分が乗らないんだ』
 『気分が乗るとか乗らないとか まあいいや』
  楽しそうでないのは最初からわかっていた しかしながら人生の
 転機である 仕方がないので順に封を切る 中身を広げてテーブル
 に並べる 足を組み直し肩肘を突く
 『エメラルドパレス それにヤマナプロダクション 新企画なら担
 当者に言えよ 俺はFAには無関係だぜ だいたいエメラルドパレ
 スと言えば もしかして いやまて』
 『その通り 業界最大手の結婚式場だよ ちなみにヤマナプロも業
 界最大手の芸能プロダクションだったりするね』
  書類はどちらもパンフレットの類だ 最初のはかなり以前から持
 っていて昨日の夜に封筒に入れたもの 後のは今朝方送ってきたも
 のだ どちらも担当者の直筆レターが同封されている
 『まてまて なにを決めさせようってつもりだ 詳しく説明しろよ
 あいかの話は要領を得ないぞ なにも相談せずに決めるのか』
 『だから 相談してるじゃないの どうする できれば今日中に決
 めちゃってさ 明日からそれに向かって活動する そんな感じで』
 『どんな感じだ なにもわからないぞ 急に結婚しようってな そ
 んな話が納得できると思って いや 嫌だって意味じゃなくてだ』
  慌てふためく表情を観察する 正直に言えばこれが今日の楽しみ
 だったのだ 澄ました顔が衝撃に崩れる瞬間 なにが楽しいって慌
 てる男ほど悩ましいものはない 趣味は個人的なものだ
 『あはははは そんなに慌てなくてもさ 付き合って何年になるか
 な あたしもできれば30までには結婚したいもんだあね 責任を
 取るのが筋じゃないのかね それに急いだ方が良い事もある』
 『なんだ良い事ってのは もしかして いやまて』
  慌てている割りに勘がいいことおびただしい 結婚式場のパンフ
 レットに同封した書類 それを広げて振ってみせる
 『正解 3カ月だってさ 驚いてくれるのは嬉しいけれど その前
 にこちらも見てもらおうか 診断書はここに置くね こっちだよ』
 『あああああ なんだその なんて話したものか こっちってのは
 なんだ 専属契約書 なにか凄い金額が書いてあるぞ なんだ』
  もうひとつ 芸能プロの方に同封した書類 それも差しだして広
 げてみせる 各社に送付したデモCD 業界最大手に引っ掛かると
 は運だけでは説明できない実力だろう
 『いやいや あはははは 選択の境地だね 凄いチャンスが目の前
 に広がっているわけ そんでもって凄い幸せもお腹の中に育ってい
 るの ここはひとつ責任者の判断に委ねようかなって』
 『うむむむん 考えるまでもないと言うべきだろうな そりゃまあ
 責任を取って結婚すべきだろうな FA関係者からは袋叩きに遭う
 だろうが だろうなあじゃ無責任だな』
  あまり面白くない意見だ できればもっと過酷な選択も期待して
 いたのだけど この男も十人並みでしかない 当たり前と言えば当
 たり前だが そんなものだろう
 『ふうん やっぱりその意見か まあいいや そんじゃあ明日にも
 パパに挨拶に来てね 殴られるだろうけど 心配しなくていいから
 それと式場はこのパンフレットで決めるからね』
 『まてまて 凄く淡白だな 俺が話すのもなんだが もう少し感慨
 みたいなものはないのか 葛藤とか後悔とか 凄いチャンスだろ』
  書類を集めて鞄にしまい込む この期に及んで葛藤も後悔もない
 だろうに そんなことを尋ねるのは優しさか それとも自分の不安
 からか
 『両方は無理 どちらかを選べば幸せになれる まあこの場合は選
 択の余地なんてないわけだけど なら後悔しても意味ないよ それ
 ともさ 幸せになる自信がないわけ それは問題だよ』
 『そんなわけじゃないが なにせ急な話でさ なんとも ふうむ』

  考えても仕方がないのに なにを今更小難しい顔をするのか と
 っとと決断して実行に移す だからこそ他人に決めてもらったのだ
 なにを選んでもなるようにしかならない 裏返せば失敗なんか存在
 しない 後悔するのは邪推の結果 どんと強気で渡っていこう
  そんな感じで構わないと思う おそらくは たぶん






             》 しびる 《
+++++++++++++++++++++++++++++++
(のりこ)>もでらーとシリーズですね 怪しいので番振りは辞めま
      した あいかちゃんてばお母さんですか いやはや
(しびる)>最初は予定してなかったんだけど どうも結婚を迫ると
      きに懐妊させる悪いクセがあってさあ(苦笑)
(のりこ)>悪いクセってこともないでしょうに でもまあ選択の余
      地がないって方がいいかもしれませんね こういうのっ
      て悩んで決めるべきじゃないと思いますし
(しびる)>それもそうなんだけど あのときB選択ならいまの人生
      はってのも企画としてはおもしろいかな
(のりこ)>でも結局は人生にタラレバなしでしょ 悔やむだけなら
      意味ないですよ モチーフとしては不完全です
(しびる)>断言するなあ のりこの人生でタラレバなんかあったの
      かよ? こうなるべくしてこうなってるだけじゃん
(のりこ)>それを言うならみんなそうですよ

posted by 篠原しびる at 20:48| シンガポール ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 連作系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

連作11 緋連作02 閑話休題4

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 種別 連作系第11期 緋連作02
 題名 『 閑話休題4 』
 初出 ニフティサーブ/FJAMEA/18番会議室
    1996年01月02日07時38分
 注釈 行頭スペース+30W
+++++++++++++++++++++++++++++++
(しびる)>パス2のなんたらで
(のりこ)>閑話休題系は全部パス扱いですか この辺りになればそ
      れほど気にする内容でもないと思うんですけど
(しびる)>カンベンしてください
(のりこ)>お正月特番ですね 内容的には しびさんがお客様をお
      迎えするお正月特有のスタイルで 普段からこうなら非
      常にラクなんですけどねえ
(しびる)>なんで部下をもてなさなきゃならんのか
(のりこ)>知りませんよ しびさんがご自分でなさることですし
(しびる)>まあそうなんだけど

posted by 篠原しびる at 20:47| シンガポール ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 連作系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

連作11 緋連作01 それなりに

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 種別 連作系第11期 緋連作01
 題名 『 それなりに 』
 初出 ニフティサーブ/FJAMEA/18番会議室
    1995年12月29日01時02分
 注釈 行頭スペース+30W
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SUBJ:【緋連作】01 それなりに

 Sibi-Tem V.4.1 (s+30)

 崩壊寸前の赤色巨星のように 膨張して 緋連作 #01(短編)




           『 それなりに 』


                        作:しびる





  どんな指標か忘れたけれど 確か3種類の周期の相関計数 生年
 月日で決めるだなんて とても科学的とは言えないだろう バイオ
 リズムでなら同じ波形 似た者同士とはこれいかに
  最初に出逢ったのは高校生の頃だから 苗字が同じなのはただの
 偶然 名前が一文字違いなのも偶然だろう 誕生日が同じなのには
 異論がある あたしの誕生日は11月12日が正解 ほんの数秒だ
 けど13日じゃない 実際の出生時間と届出は1日ずれている

 『バカ こんなバカ知らないわよ なによ! こんなもの!』
  赤いラッピングに緑のリボン 金色のハートのシールが輝く小箱
 手に掴んで壁に投げつける 急加速で止まらない
 『なにすんだよ! わけのわかんねーこと言うんじゃねーぞ!』
 『わけわかんないのはお前だあああ! きいい ぶん殴ってやる』
  本当に握り拳 振り上げずに正拳突き 腹部に2発 そして顔面
 への攻撃は回避された 間髪入れずに蹴り 息を継がずに連続攻撃
 『てめえ! 真剣に怒るぞ 理由が納得できないなら帰るからな』
 『帰れ帰れ もう来なくていいからね バカバカバカバカヤロウ』
  師走の26日 昨日はクリスマスで一昨日はイブだ さっき壁に
 投げつけたのはクリスマスプレゼント 今日渡されたって受け取れ
 ない 26日の意味は知らないだろう
 『無理して時間を作って怒られるわけだ 馬鹿らしい 俺の苦労な
 んて少しも考えていないな わがまま言うんじゃねーぞ』
 『わがままじゃない! どんな気持ちで待ってたか知りもしないで
 電話一本であたしの気持ちなんか踏みにじれるんだ バカ!』
  半分本音で半分は嘘だ さっきまでは泣きながら待っていたのに
 今は泣きながら怒っている 壁際の小箱 テーブルの料理
 『あのさあ 本当に怒ってるわけ 今日なんか休んでさ 時間作っ
 てるのに 怒鳴り散らして俺なんか帰るわけ それでいいのかよ』
 『気分台無し 最悪 こんなのじゃ楽しくないもん』
  昨日電話があって仕事でキャンセル この頃は忙しくってたまに
 しか逢えない だからこそのクリスマス 要はイベントじゃない
 『ふう 悪かったと思うよ でもさ不可抗力な 理屈じゃないのは
 理解してるけどさ これ 投げるのは酷いんじゃねーの』
 『むうううん だってさ だって 楽しみなぶんだけ寂しいし 街
 もテレビも責めたてるし 怒んないと嘘になるもん だってさあ』
 『収まったなら飯にしような まだ晩飯は食ってねーんだぜ ケー
 キとニワトリと煮抜きタマゴだろ これ 聞いてた奴だ』
  簡単にあやされる どんなに怒り心頭でも やはり楽しみなのは
 確かなのだ 怒っていたぶんだけ悲しくなる 上目使いで涙が止ま
 らない 気分の中に甘えが増大する それにしてもタマゴってなん
 だ 聞いてた奴はプレゼントのリクエスト これでいいのか
 『なんか聞いたことのないブランドだけど まあいいや えへへへ
 寂しかったんだよ ふむん 優しくしてくんないとまた暴れるよ』
 『へいへい 慣れっこだからな この際だからなんでもしてやるぞ
 悪かったよな これは美味いな そんなに寂しかったか ふむ』
  小さなテーブルに向かい合わずに並んで座る 顔を見るよりは密
 着していたい なんだって思うがまま 料理は完璧 セッティング
 に手間取る歳じゃなし 要はイベントじゃない
 『ローソク立てるの それから少し飲んで楽しい話題に素敵な音楽
 静かに歌ってくれてもいいけど 変だから今日はいいや』
 『煮抜きタマゴがねーな 歌ってもいーぞ 声楽科は伊達じゃない
 からな ケーキのスポンジが鉛色だぞ なんか飲物だ』
  甘えの気分が母性本能に昇華される 注文の多い男は両刃の剣だ
 ケーキ造りはガラスのボールが基本 どうしてタマゴに固執するの
 か 冷えたシャンペンはシャンパーヌ地方が原産
 『どうしてこんなになし崩しなのかな さっきはあんなに怒ってい
 たのにさ こんなんじゃいけないのかもしんないね』
 『いいだろうに 他人に迷惑を掛けなきゃな 俺なんかほら 愛情
 だな 大事にしようって気持ちは理解するべきだぞ なんだ』
 『いやあ まあ それはそうなんだろうけどね 愛情かあ 照れず
 に言ってくれるところが格好良いと思うよ ありがとね』
  凄く楽しい気分になってきた 精神状態が凄く不安定なのは自覚
 している だけど仕方がない 昔は対処方法も知っていたのに 今
 はどうにも解決できない とにかく凄く 凄くちぐはぐ
 『美味いな 照れてちゃ暮らしていけねーな だから仕事も納得し
 ろな なんだってやるが一度には無理だ 悪いようにはしないぞ』
 『なんかね その辺がダメなんだもん もう大人だからさ 無理な
 のは理解できるよ あたしだって働いてるんだもん でもね そん
 なのとは違う自分が泣いてるの 寂しいって』
  膝の上に頭を乗せる お腹に響くドルビーサウンド 今話してい
 るのはどちらの自分だろうか 説明もその通りじゃない
 『ふうん 昔からそんなだな 奥の方に小学生みたいなのがいるぞ
 クリスマスなんか子供の祭だからな 構わねーんじゃないか』
 『そだね あたしってば小学生から成長してないから その娘が暴
 れてるんだと思う 大人のあたしはズルイもんね』
 『全部引っ括めて面倒見ようじゃないか ズルくて大人だろ そう
 やってるならニワトリは全部食べるぞ あとで煮抜きタマゴだな』

  同じ性格らしいから だから理解できるのだろうか それとも適
 当に話を合わせているだけなのか どちらにしてもなだめてくれれ
 ばそれで良い どうにかする気は遥か彼方に 昔からそう そんな
 関係 これからもずっとこんな関係
  どこが好きなのか知らないけれど こんなあたしを愛せるものか
 楽しくても悲しくても それなりに ダメでもそれなりに





             》 しびる 《
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(のりこ)>なぜクリスマスにゆでタマゴ? 10年来の謎です
(しびる)>クリスマスってのはさ つまり西洋の神さんの誕生日じ
      ゃないのか? なら にぬきタマゴで正解じゃん?
(のりこ)>だから なぜお誕生日にはタマゴを茹でるんです?
(しびる)>なぜって そんなもんに理由なんかあるのか んじゃな
      ぜ正月にモチを食うよ クリスマスのケーキの意味は?
(のりこ)>理由もなにもそういうものでしょうに
(しびる)>だからそういうことじゃん なにを言うかな
(のりこ)>だーかーらー むう

posted by 篠原しびる at 20:47| シンガポール ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 連作系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

連作10 蓼連作15 フェーブルカンパニー26

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 種別 連作系第10期 蓼連作15
 題名 『 フェーブルカンパニー26 』
 初出 ニフティサーブ/FJAMEA/18番会議室
    1995年12月24日02時17分
 注釈 行頭スペース+30W
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(のりこ)>FC26です ひかるちゃんが自分は拾われたか もら
      われてきたって言うクダリがあるじゃないですか ああ
      いうのを混ぜるところがうまいなあと思うんですよ
(しびる)>事務所の中で褒め合うのはよそうや 気持ち悪いから
(のりこ)>素直じゃないですねえ まあいいです ジョグトロット
      って たしかウマの歩き方のなにかでしたよね
(しびる)>馬な 動物はすべてカタカナに統一すべきなんだろうな
(のりこ)>ひかるちゃんのルーツ探しシリーズですね
(しびる)>まあ全編がそうなんだけど 父娘関係は描くのがちょっ
      と苦手でさ どうしてもこういう関係ばかりになるな
(のりこ)>そうですね 父娘は相容れないものですし
(しびる)>断言するなよ 世の親父連中が泣くぞ
(のりこ)>だって やっぱし生物として対極にいますし
(しびる)>うわあ(笑)

posted by 篠原しびる at 20:46| シンガポール ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 連作系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

連作10 蓼連作14 28:15−28:50

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 種別 連作系第10期 蓼連作14
 題名 『 28:15−28:50 』
 初出 ニフティサーブ/FJAMEA/18番会議室
    1995年12月18日01時12分
 注釈 行頭スペース+30W
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SUBJ:【蓼連作】14 28:15−28:50

 Sibi-Tem V.4.1 (s+30)

 タデ科の一年草 辛いけど好き好きだね 蓼連作 #14(短編)




        『 28:15−28:50 』


                        作:しびる





  夏時間なら早朝に区分しても構わないような時間だけれど 年間
 で最も昼間の短い季節だから 午前4時なんてのは朝よりも夜の世
 界 まだ太陽の気配もない あと1時間は夜も終わらない
  歩き始めた時にはうっすらと地面に雪が広がっていたのに 到着
 した頃には溶けて流れてしまった 気温はこんなに低くても地面に
 はまだ秋の名残り べちゃべちゃ歩くのはそんなにも楽しくない
  そんな気分も加わって 怠惰な気分は言訳を探していた 時間は
 まだ4時15分 タクシーはやめて始発で帰ろう

 『このまま帰って寝るのが正解よね 体が資本って格言もあるわ』
 『今日も続きに仕事ですか 死んじゃいますよ あ コーヒーのお
 代わりをください モカがいいです』
  毎日決まった時間に訪れる いや毎日じゃないな たまに近所の
 中華料理店に足を向けたりもするから それでもほとんど毎日 馴
 染みのわりに無愛想な店員 客だって顔見知りばかり 話したこと
 はないけれど
 『ゆりこちゃんは自宅だったわよね お母さんがうるさいでしょう
 娘が毎日朝帰りじゃ なら あたしも欲しいわ カプチーノをシナ
 モン抜きで それと灰皿を掃除してね』
 『いえいえ 先週からマンション暮らしですよ 晴れて独立ですね
 だから誰も怒らないんです いいですよ気楽で』
  朝刊をテーブルに広げて答える 周囲にいるのは中年の男性ばか
 り 聞いたところによるとタクシーの運転手が大半らしい 怠けて
 いるのか休憩しているのか みんなそれぞれに新聞や雑誌を黙読中
 『ふうん それじゃあアルバイトは独立資金ね アパートじゃなく
 てマンションなわけ 自己資金だけじゃないでしょ』
 『えへへへ お父さんに半分だしてもらいました 出世払いです』
  夜の仕事 そうじゃなくて夜に仕事 24時間営業のレストラン
 の深夜組 午後11時から翌朝4時までの5時間労働 話している
 のは同僚のなるみさんだ 歳は2個上らしいけれど実際はどうだか
 『ほうほう それなら彼氏も喜んでるでしょうに でもねえ あま
 りだらしなくすると きりがないわよ 程度に締めなきゃね』
 『彼氏なんていませんよ やだなあ なるみさんも独り暮らしでし
 たよね そんなふうに話すところを見ると彼氏がいるわけですね』
 『男ね 飼ってるわよ 役に立たないのが1匹 困ったもんだわ』
  なるみさんは足を組んで小さな新聞を読んでいる 第1面に大き
 な文字で『馬』 右耳に挟んだボールペンは先程から放置されたま
 まだ
  お互いに視線を合わせずに会話をしている いつもこんな調子
 『結婚してるわけじゃないですよね 同棲ってやつですか 憧れる
 んですよねえ 独り暮らしの醍醐味だと思います』
 『そんなの初めて聞いたわ どちらかと言えば 独り暮らしの足枷
 じゃないかしら 男なんていないに越したことはないもの 同居さ
 せてるのは仕方なしにね』
  なるみさんに視線を移す なるみさんは紙面を凝視したまま し
 かし僅かに表情が緩む やはり満更じゃないらしいな 男なんてい
 るに越したことはないと思う 好きこそものの哀れなり 格言かな
 『ところでですね なるみさん』
 『うん どうかしたの』
  少し気になってることを話してみる 深夜組のアルバイトはあた
 し達以外に3人 他の人もみんな女性だ 男の人は社員さんが2人
 でもこんなふうに終業後も一緒にいるのはふたりだけ なるみさん
 は次の仕事までの時間潰し あたしはなんだか暇潰し
 『夜組のるみちゃん 知ってますよね 彼女から聞いたんですけれ
 ども ウチの店長が辞めるって本当ですか どうも今週限りで』
 『ゆりこちゃんは知らないのよねえ アルバイト始めてから3週間
 だっけ 先月は大変だったのよ まあ誰が悪いのかは決められない
 けれど』
  るみちゃんは夜組のアルバイトだ 夜組は午後5時から深夜組と
 の交代までの6時間労働 話しているのは噂話 詳細は知らない
 『あたしってば店長さん関係で入りましたから なんか知らないの
 って不義理だなあって なにがあったんです 直接聞くわけにも』
 『ふうん この業界に限ってじゃないわけだけど まま あるのよ
 ねえ そうか ゆりこちゃんは杉本さんの紹介だったもんね』
  杉本さんはウチの店のOBで あたしが大学で所属しているサー
 クルの先輩でもある 杉本さんは店長と親友だから 紹介してもら
 ってバイトに入ったわけなのだ なるみさんは杉本さんとも親しい
 『なにか問題があったのですか あたしが入った途端に店長さんが
 辞めるだなんて もしかして あたしがなにか原因かなって』
 『あはははは 意外と心配性ね ゆりこちゃんは関係ないわよ 今
 話したように ゆりこちゃんが入る前の話だから そうね 要は縄
 張り争いかしら』
  凄く不穏な話題なのに なるみさんは楽しそうに話している 大
 手チェーンの型決め店舗において 縄張り争いなんて発生するもの
 なのか なんか変な話だ ひょっとしてなるみさんは関係者なのか
  競馬新聞を畳んでタバコに火を点けているが その心中はいかほ
 どだろう
 『縄張り争いですか なんです それ』
 『慢性的な人手不足でしょ どこの店舗だって欲しいのよね 特に
 慣れた人って 素人の何倍もできるじゃない 同じ人件費なのに』
 『はあ なんかわかるようなわかんないような』
  需要と供給とか言う図式だ 社会の時間に習った曲線 本当なら
 アルバイト料が上がりそうなものなのに なぜかそうはならない
 『ふふん 簡単に説明すれば引き抜きね だから縄張りを決めるの
 よ 勝手ってわけにもいかないでしょ なら全部が勝手だもの』
 『引き抜き事件があったわけですか それで店長さんが辞める 凄
 く短絡的な展開ですよね 仕方がないのかなあ あ どうも』
  ようやくコーヒーがやってきた 茶髪の店員が無愛想にテーブル
 に並べる この彼も4時50分で仕事が終わる おそらくは5時ま
 でだろうけど 10分前に帰っちゃうのだ そんな喫茶店
 『ウチは6区南店でしょ 環状線の向こうから通ってた娘がいたの
 よ でも遠いから西店の方に行っちゃったのね それで大喧嘩にな
 ったわけ 30過ぎた大の男がねえ 馬鹿よね』
 『うーん とにかく熱い話ですね そんなことで進退決めるのは問
 題でしょうけど そんなに短気じゃ駄目ですね』
  コーヒーは美味しいのだ 5時が近付くと店内の空気が変化する
 あたしは純粋に賞味しているだけなのだが そろそろ本当に朝がや
 ってくる 世界の転換期 乗る人と乗らない人
 『まあそれでも 仕事に片をつけてから退職するだけの知能はある
 じゃない あ ごめんなさい 馬鹿にしてるんじゃないのよ』
 『はあ なにが馬鹿にするもなにも なんです』
  茶髪の店員君がタバコを揉み消す その手前でなるみさんが同じ
 く揉み消す 深く座っていたから重ねて見えた 今日の奇跡その1
 『西店の店長はその日に辞職よ 周囲を考える知能はなかったみた
 いね こんな事件は世間じゃ日常茶飯事 ゆりこちゃんが気にする
 ことじゃないの 時間ね』
 『次の仕事ですか 大変ですねえ あたしは帰って寝ますよ ふた
 り分の生活費なら仕事も倍ですか 理想と現実ですね』
  なるみさんは競馬新聞をバッグに押し込む そしてタバコとライ
 ターを掴んで立ち上がる あたしは背伸び ひとりならこんな所に
 いる義理はない あたしも帰ろう
 『そうよねえ その馬鹿が家にいるのよ 部屋でゴロゴロ寝てるわ
 あははは なんとかならないものかしらね 今日は払うわね』
 『ほあ そうなんですか その辺の経緯も聞かなきゃなあ あ ど
 うも 明日はあたしが払いますから』

  仕事の後の倦怠感と それを更に増幅させるこの喫茶店 なにが
 楽しくて毎日来るのか いや毎日じゃないかな たまには近所の中
 華料理店に足を向けるから それでもほとんど毎日だ
  ドアを開けると紫色の光 電車に乗る頃には朝になるだろう 午
 前4時は午後28時 朝5時を境に替わる世界もある
  凄く寒くてブルリと震えた 早く帰って寝るとしよう ふむ





             》 しびる 《
+++++++++++++++++++++++++++++++
(のりこ)>この喫茶店って デュランタじゃないですよね
(しびる)>違うわな 終日やってるから
(のりこ)>それと この彼女達がやってるアルバイトってなんです
      かね なんか非常に場末っぽい空気が漂ってますけど?
(しびる)>さあな 昼組や夜組や深夜組ってのは 24のファミレ
      スじゃねーの? 場所なんかは知らないけど
(のりこ)>その辺は設定されてないんですか
(しびる)>必要ないじゃん カキワリの裏側なんざ
(のりこ)>んー

posted by 篠原しびる at 20:46| シンガポール ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 連作系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

連作10 蓼連作13 フェーブルカンパニー25

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 種別 連作系第10期 蓼連作13
 題名 『 フェーブルカンパニー25 』
 初出 ニフティサーブ/FJAMEA/18番会議室
    1995年12月14日04時26分
 注釈 行頭スペース+30W
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(のりこ)>FC25です この24とか25はけっこう好きなんで
      すよねえ なにも事件が起きないですし
(しびる)>まあな 個人的にはこういう繋ぎっぽい話ばかり描いて
      いたいわけだけど そうもいかないしな
(のりこ)>ラングルとひかるちゃんのツーショットも珍しいですか
(しびる)>うん ひかるは一人称だからとにかく ラングルについ
      て整理しておこうというか ちょいぶれてた部分の修正
      作業かな って感じの企画だったと思う
(のりこ)>ふうん ところで その『企画』ってお言葉をよく聞き
      ますけど そんじゃなにを描こうかって企画ですか?
(しびる)>いまいち質問の意味がわかりかねるが 言葉そのままの
      企画じゃん まずぼやーっとどういう形式のものがいい
      かねえとか なんか片さなきゃいけないシリーズはなか
      ったかねえとか そういう企画がまずあるのな
(のりこ)>あんまし相談されたことはないですけど 会議として
(しびる)>まあな そこは会議する部分じゃないと思うし
(のりこ)>ふうん まあいいですけど

posted by 篠原しびる at 20:46| シンガポール ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 連作系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

連作10 蓼連作12 優しさって

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 種別 連作系第10期 蓼連作12
 題名 『 優しさって 』
 初出 ニフティサーブ/FJAMEA/18番会議室
    1995年12月13日17時27分
 注釈 行頭スペース+30W
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SUBJ:【蓼連作】12 優しさって

 Sibi-Tem V.4.1 (s+30)

 タデ科の一年草 辛いけど好き好きだね 蓼連作 #12(短編)




          『 優しさって 』


                        作:しびる





  自分でも少し驚いていた こんなに冷たくなれるなんて思っても
 いなかった なんでも理詰めで考えられるはずだったから それは
 即ち優しく暮らせる証拠だと思っていたのだ
  一瞬の興奮が冷めると 照れ臭さと後悔の念が頭を支配する 咄
 嗟に反省できないのは やはり自分の非を認めないから 普段の優
 しさは本物じゃない
  本当の気持ちを露呈させると あたしはこんなにも弱いのだ 弱
 い人間は優しくなれない 優しさはすべてを包み込む強さだと そ
 んなふうに痛感していた

 『当面の着替えなんかは段ボールの中に入れておいたわよ 最初の
 ケジメは大切だから きちんと挨拶しなさいね』
  部屋のドアが開き 背後からは変わらぬ優しい声 なにか気の効
 いたことを答えようとして 言葉にならないまま荷造りをしていた
 『パパが帰ってきてから出掛けなさいね 他所の子になるわけじゃ
 ないんだから 一番心配しているパパに話してから』
 『あたしの勝手 そんなのあたしが自分で決める いちいち教えて
 もらわなくても なんだって自分で決められる』
 『そう そうよね ごめんなさい』
  考えた末に形になったのは悪態 一番心配しているのはママなの
 に 優しい声に意地ばかりが募る あたしは馬鹿だ
 『もうほっといてよ 構わないでよ 監視されてると息が詰まる』
 『お昼ご飯は食べなさいね さいかちゃんの分も用意したのよ』
  返事も聞かずにドアが閉まる 結局ママの姿を直視できないまま
 握り締めた掌の中でヌイグルミの顔が歪んでいた

  よく考えると 少しずつのわだかまりは蓄積していたのに それ
 でも表面上の余裕は すべてを超越した奸知だと誤解していた 人
 に対する優しさなんて 自分の気持ちを騙すに変わらない行為だと
 思い込んでいた 事実今まではそれで暮らしてこれた
  生涯初めての衝突は 20歳の秋 短大の卒業を間近に控えての
 進路決定作業 あたしの選択はこの家で最も望まれぬもの 衝突す
 ることは最初から考えていた 越えなければならない壁 自立こそ
 がなににも増して重要なことなのだ それは今も変わらない
  あえて衝突を選択したのなら 穏便に回避することを拒んだのな
 ら それに堪え得るだけの精神が必要なのだ

 『お 戦う女の背中だね なんか手伝おうか』
 『いい お姉ちゃんに見られたくないものもあるから やめてよ』
  ノックもなしにドアが開く こんな不躾な人物は考えるまでもな
 い 断ったのに背中にのし掛かるふくよかなバスト
 『なんで機嫌が悪いのかな ママもなんだか寂しそうだったよ 社
 会人を目指すなら 優しい気持ちが肝心ね こんなふうに』
  人の気持ちも知らないで 暢気に話してあたしの頬を握る 姉は
 今年で27歳なのに どうしてこんなに気楽に暮らせるのか 誰と
 も衝突せずに問題なく穏やかに 陽気で明るく羨ましい
 『お姉ちゃんさあ』
 『なによ さいかって良い臭いがするね 高い化粧品使ってるもん
 な あははははは 投資額に見合った香りって奴だあね』
  床に座るあたし その後ろで笑う姉 7歳違いってことは小学校
 で出会わない年齢差 この差は絶対的だ まさに大人と子供
 『お姉ちゃんはパパの会社に就職したよね そりゃあその方が良い
 と思うけれど なんかしたいことってなかったの その他に』
 『日曜日の午前中から重い質問ね さいかの質問で自己完結してる
 ように聞こえるわよ そりゃあその方が良いからじゃない』
 『茶化さないで答えてよ お姉ちゃん』
  重いから向き直る 世間ではソックリって言われる姉の顔 しか
 しまったく似ていない あたしはこんなに楽しそうに笑えない あ
 たしはもっと嫌な顔をしているはずだ
 『真面目に話しても同じじゃないの さいかのしたいようにするの
 が一番だしね それに おじさんのところに行くわけだよね それ
 は今では楽な方かもしれないけれど 近い将来どうかしらね』
 『楽とかそんなんじゃないよ このままじゃいけないって思うから
 だから このままじゃいられないんだもん』
  姉の会話の真意が理解できない 楽だから逃げたいからじゃなく
 て この家にいるとあたしは駄目になる 社交的に暮らせない分だ
 け甘えが激しくなる そんなに器用に暮らせないから だから何か
 を選ばなくちゃならない
 『なるほどねえ さいかは真っ直ぐだからねえ パパもママもその
 辺を心配してるわけね あたしが話せば納得するんだろうけど』
 『あたしはお姉ちゃんみたいにできないよ なにもかもを丸く収め
 て笑えないよ パパとだってきちんと話せないし ママにだって冷
 たく当っちゃうし だってね だってね』
 『あははは さいかのね そんなところがカワイイんだね この家
 じゃ一番小さいんだから そんなことならみんな知ってるわよ』
  なにか凄く情けなくなって なにか凄く寂しくなって 急に涙が
 止まらなくなる みんななにがあっても優しいのだ そんなことな
 ら知っているのに 素直に優しく笑えない あたしはきっと病気な
 のだ こんな人間はいない方がいいのだ
 『ほらほら あはははは お姉ちゃんが抱っこしてあげよう さい
 かが小さいときには いっつも抱っこしてたんだけどね』
 『うん でもね さいかは あたしは おじさんのところへ行くよ
 みんなと離れて強くなんないといけないと思うから こんなふうに
 ね 甘えてちゃいけないから だからね』
 『甘えてもいいんだけどね まあ好きなようにやんなさいな なん
 か見付かるだろうし なんか変わると思うよ』
  抱っこされて頭を撫でられる 7歳上の姉は いつも優しくてあ
 たしを救けてかばってくれた なのにいつからか どうしてこんな
 にできなかったんだろう 安心感と後悔の念
 『お姉ちゃんお姉ちゃん なんだかさ なんだかなんだもん』
 『決めたら突き進む あははは 失敗しても構わない なんかあれ
 ば帰ってくればいいからね さいかは賢いからなんでもOK』
  やっぱり姉にはかなわない なにが言いたいのかわからないけど
 素敵な笑顔で勇気を与えてくれる この魅力は天性のものだろうな
 『うん わかった とにかく頑張ってみる』
 『ほいさ それでこそあたしの妹だな 下で待ってるから顔を洗っ
 て降りてきなさいね 最後の昼餉ってわけじゃないけどさ ふむ』
 『そうだよね 最後じゃないもんね』
  姉は立ち上がって微笑む なにか少し吹っ切れて なにかが少し
 整理できた とにかくは頑張ってみよう 考えるのはそれからだ
 『あっと それとさっきの質問に答えてなかったかな なんかやり
 たかったことって 将来の夢ってやつだあね』
 『うん 聞いてない なにかやりたいことってあったの』
  なにかもうどうでも良い話だけど 姉の意味深な表情は用心しな
 いといけない たぶん馬鹿話だろうけど それも聞きたかった
 『ふむ 未だにインディーズの域を脱し得ないけれども あたしの
 昔からの夢はアイドルスターね 既にそんな歳じゃないけどね』
 『お姉ちゃんなら夢じゃないと思うよ 自費レーベルのCDがもっ
 と売れればいいのにね あはははは あたしも応援するよ』
 『ふむ 家族の応援ってやつだな 家族対抗歌合戦には呼んでやろ
 う クマさんチームだよ あははははは そんじゃあね』

  決めたからには頑張ろう 不安をぶつけるのは甘えているからだ
 いろんな事を吸収して あたしも素敵に微笑んでみせる 家族の中
 でイライラしてるようじゃ きっと世間相手に勝負はできない
  だから今日は大きな声で 行ってきますって別れよう あたしの
 将来あたしの夢 期待と不安は表裏一体だもの






             》 しびる 《
+++++++++++++++++++++++++++++++
(のりこ)>もでらーと13でいいのかな ちょっとナンバーが怪し
      くなってきてますけど さいかちゃん悩んでますねえ
(しびる)>これは展開的にはかなり以前から そうな 彼女が生ま
      れる前から決まってたことだし ざっと関係図を作った
      頃だから 生まれる前後ってくらいかな
(のりこ)>義理のおじさんちに居候で働くんですよね しかしまあ
      思い切ったことを そーちゃん氏も大反対でしょうし
(しびる)>あのさ まなみは向こうんちのひとり娘で 婿でももら
      って事業を継承するのが筋だわな でそれがダメになっ
      たからふじこたちを養子夫婦として籍に入れたわけだろ
(のりこ)>そういう経緯でしたね だから向こうのおじさんとそー
      ちゃん氏は仲良くできない そんな感じですか
(しびる)>でもな もうちょっと上から見てみろや そのふじこ夫
      婦にはこどもがいないんだろ あっちの夫婦とはまった
      く関係ないけど さいかは向こうの血筋バリバリじゃん
      先代の孫なわけだしな てことはこっちには娘がふたり
      気分を除外してコマの配置だけで考えりゃ 次女のさい
      かを向こうのこどもにしちゃうのが収まりがいいよな
(のりこ)>それはひどいでしょ 誰もそんなひどいことを 例え思
      ってても死んでもクチにしませんよ 極悪な思考ですね
(しびる)>でもさ その極悪な考え方を唯一公言してもいい人物が
      いるじゃん そうたがそれに気付いたとしたらどうよ?
(のりこ)>あー あーあー さいかちゃんか さいかちゃんがそこ
      まで計算して向こうに行くって考えたと それに気付い
      たそーちゃんが大反対 でもさいかちゃんはー
(しびる)>そこまで考えたないんだわ そのことはあいかも気付い
      てるんだけど てのはさいかの気持ちと父親の気持ちな
      だから『あたしが話せば納得する』って発言になる
(のりこ)>んー 作り込んでますねえ いやはや
(しびる)>このシリーズはどこまで詰め込んで作り込めるかにムキ
      になってたしな もうちょっとめんどうだけど(苦笑)

posted by 篠原しびる at 20:46| シンガポール ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 連作系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年02月21日

連作10 蓼連作11 喧噪の中で

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 種別 連作系第10期 蓼連作11
 題名 『 喧噪の中で 』
 初出 ニフティサーブ/FJAMEA/18番会議室
    1995年12月11日01時55分
 注釈 行頭スペース+30W
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SUBJ:【蓼連作】11 喧噪の中で

 Sibi-Tem V.4.1 (s+30)

 タデ科の一年草 辛いけど好き好きだね 蓼連作 #11(短編)




          『 喧噪の中で 』


                        作:しびる





  なにか記念日だったわけじゃないけれど たまに夫婦揃って食事
 に出掛けるのも良い 別に豪勢な食事じゃなくても 近所のファミ
 レスで結構楽しかったりするもの
  こんなことで満足するんだから 釣った魚にもエサをあげるべき
 だと思う 普段はこちらがエサを作ってるんだもの 催促されて渋
 々じゃなくて 不意に突然 そんな感じが良いと思うな

 『あらまあ 仲が良いのね 結婚記念日かなにかなの』
 『あ 神崎のおじさんとおばさんだ 一緒がいいな ねえママさ』
  夫婦で外食は月に3回ぐらい ウチは子供もいないから もっと
 頻繁でも構わないと思う 仕事なんか理由にならない
 『うん そうじゃないけど みきちゃんはママと夕食だな お姉さ
 んたちも一緒に食べようかな お邪魔じゃないかしら』
 『たくさんで食べた方が楽しいわよ 家にいても みきことふたり
 だけだから みきこは嬉しいよね ご夫婦でよく外食するの』
  旦那の運転で少し離れたファミレス ウエイトレスに案内されて
 る最中に出逢った母娘 あたし達夫婦との関係を簡潔に説明するの
 は大変だけど あえて説明するなら 母親の方は旦那の昔の彼女だ
 ったりする かなり昔の話になるけど
 『みきはピアノを続けているか 公文みたいに途中で辞めちゃいか
 んぞ 血筋はいいんだからな なにを食べてるんだ』
 『ミニハンバーグセットだよ めんどくさいからあんまり行ってな
 い バイエルの真ん中ぐらいかな』
 『変調の辺りでしょ みんなその辺りで嫌になるのよね あたしは
 なにを食べようかな あ こっちです』
  彼女の独り娘は みきこちゃん 縮尺が違うだけで同じ顔がふた
 つ 細胞分裂で複製じゃないだろうから やはり半分は他人様の血
 が混じる なのにソックリ この母娘はなにか変だ いつも感じる
 『みきはカワイイからな そのうち略取誘拐をしようと計画してる
 んだぜ 俺の子供になんないか』
 『奥さんと昔の女を前にして 無神経にも呆れるわね あたしなん
 か結婚しなくて成功なのか失敗なのか 奥さんに尋ねようかしら』
  夕食の時間だから店内は騒然としている 静かな部屋で話せば刃
 傷沙汰になりそうな話題だが 喧噪はアルコールと同じ効用をもた
 らす それでもあたしは少し苦笑い
 『みきはねえ ママと一緒がいいんだもん おじさんもおばさんも
 楽しいけどさあ お出掛けだから みきも楽しいのだと思うな』
 『ほうほう 言うねえ そんなことを理解するのは高学年の人だぞ
 2年生の人は低学年だな 俺なんかこの女と結婚して正解』
 『あたしは正解かどうか怪しいわね 正解と言えば何年になるかし
 ら 間違えちゃ駄目よ みきちゃんは3年生だもんね』
  みきこちゃんの母親に最初に出逢ったのは何年前だったか 確か
 みきこちゃんは3歳ぐらいだった 雨の降る夕暮れ 認知を迫りに
 来た愛人だと思ったのに あれからどれくらい
 『実のところはですね 明後日が命日だったりするんですよ です
 からみきこを連れて食事に来たのですけどね よっちゃん いや神
 崎さん達に出逢ったのも』
 『偶然だな 想い出は大事にすればいいが 将来は運命じゃないぞ
 みきのピアノも同じだな なにか良くなることもあるだろう』
  大きな体に優しい笑顔 旦那を褒めるのも手前味噌だけど 未亡
 人に優しいのは心配の種だろうな ただ疑えないのも確か
 『よくなんないよ みきの指はピアノをするようにできてないもん
 なんか思い通りに動かないよ 家ではママもみきもよっちゃんって
 言ってるのにね 秘密だよ』
 『自分の旦那が他所様の家で話題になってるのねえ なんか新鮮な
 体験だわ 遅いわね オーダー取ってくれないのかしら』
 『あははは でもこの人とは再婚したくないわね なんかこりごり
 凄く失礼な話をしてるのかしら あたしってばね』
  向かい合って食事するふたりの隣りに座ったから 旦那は彼女の
 隣り あたしはみきこちゃんの隣り これではまるで立場が逆では
 ないか 店内は更に混雑 ひょっとして済ませたと思われているの
 かもしれない
 『こうして並べると お前って みきとも似てるのな 俺の女達っ
 てみんな同じ顔か なんか工夫が足りないよな いや俺にだぜ』
 『なに言ってもフォローにはなんないわ でもねえ みきちゃんは
 ウチの子にしてしまい衝動ね 浚っちゃおうかしら』
 『誘拐されてもねえ 昼間のうちに逃げだすもんね 条件によって
 は考えなくもないけれど ママも一緒に誘拐されるといいね』
 『なんか誘拐じゃないよな 構わないが』
  あたし達が結婚してもうすぐ10年 それでも子供はいない 本
 当ならみきこちゃんぐらいの子供がいてもおかしくないのに 原因
 はわかっているのだ あたしの体が原因 妊娠する確率は普通の人
 の1割以下らしい それでもゼロではないのだ そして10年
 『みきこだけはあげないわよ うふふん あたしなんかこの娘だけ
 が人生のすべてだもん だから再婚はしないかな』
 『あたしだって旦那はあげないわよ このトッチャンボウヤが唯一
 の家族ですもん そうねえ 貸してあげるくらいなら構わないかな
 最近は凄く弱いけども どうにかなんないかしらねえ』

  結局30分経ってもウエイトレスは気付かなかった 騒がしいつ
 いでにいろいろな話をしたが どんな話題も対処方法なんて存在し
 ない 仕方のないことばかり
  夫婦揃ってミニハンバーグセット こんなに待たせたのに注文か
 ら到着までは5分少々 それはそれで問題だと思う





             》 しびる 《
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(のりこ)>こういう内容こそしびさんの真骨頂だと思うんですよ
(しびる)>それは褒めてるのかけなしてるのか どっちだ
(のりこ)>スタイルは母娘ものと こどものいない夫婦者 どちら
      もウチの定番じゃないですか それを併せてらさにファ
      ミレスで食事 これ以上はないくらいウチの作品ですし
(しびる)>まあそうだけど たしかこのちょい前にデカイ花火大会
      を見に行ってさ あまりの混雑に駐車場は見付からない
      わ 結局花火は見れないわ 帰りも一般道が大渋滞でさ
      やりすごすのに入ったファミレスでも大混雑でさ
(のりこ)>実話ですか ご主人の元彼女が未亡人になって娘さんと
      食事してるところに鉢合わせ? それはまた(苦笑)
(しびる)>ぜんぜん組み合わせは違うわい てかファミレスが混雑
      してたところしか使ってないもん そんときに起きた事
      件はまた別のところにそれとわからないように
(のりこ)>やっぱし使ってるんじゃないですか
(しびる)>そりゃだって物書きなんてもんは私生活を(以下略)
(のりこ)>そゆのがリアリティでしょうけど

posted by 篠原しびる at 21:02| シンガポール ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 連作系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

連作10 蓼連作10 秋の花 春の花

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 種別 連作系第10期 蓼連作10
 題名 『 秋の花 春の花 』
 初出 ニフティサーブ/FJAMEA/18番会議室
    1995年12月06日20時49分
 注釈 行頭スペース+30W
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SUBJ:【蓼連作】10 秋の花 春の花

 Sibi-Tem V.4.1 (s+30)

 タデ科の一年草 辛いけど好き好きだね 蓼連作 #10(短編)




         『 秋の花 春の花 』


                        作:しびる





  この最近どうも様子がおかしい おかしいと言えば常に変な女だ
 が それはそれなりにカワイイのだ 特異なのは個性的である証拠
 だから 世界中が変でひとりだけ正常なのかもしれない いやそん
 なことじゃなくて 様子がおかしいのだ 変の変で正常かもしれな
 いが そんな議論は不毛だから辞めておこう
  どちらにしても少し心配だ 長い付合いだからすぐわかる

 『タバコはねえ 辞めた方がいいよ 長生きできなくなるからね』
 『なんだ今更 煙が嫌ならそう言えよな 直球勝負が信条じゃなか
 ったのかよ まわりくどいぞ この数日のるみこは』
  俺の部屋だ タバコだろうがなんだろうがすべて自由 苦情を言
 われる筋合いじゃないが 論点はそんなところにあるのではない
 『ふみゅうん 聞いてくれないなら仕方がないかなあ』
 『それはなんだ もっと注意しないのかよ それにだな どうして
 正座して座ってるんだ なんか企んでるだろう』
 『そんなことはないですね 純粋に心配しているのですね ほら』
  夕食を喰って書類の整理 仕事に集中していれば邪魔をするのが
 普通だ 相手は婚約者 まだ苦情を承諾する権利義務はない
 『涙ぐまれてもなあ 本当にどうしたわけだ 心配事があるなら聞
 かなくもないぞ そんなふうにも見えないけどな』
 『少しは聞いてくれるんですねえ でもなあ 言ったもんかなあ』
  双方の両親へ挨拶も済まし 後は式を挙げるだけなのだが それ
 がズルズル延びている どちらにしても半同棲だから同じ 彼女が
 こちらに泊まるのは あちらサイドでは黙認状態
 『俺なんか忙しいからな 説明するつもりがあるなら聞いてやろう
 ないなら黙ってテレビを見てろ なにか るみこらしくないぞ』
 『いやあ それがですねえ 来ないから行ってみたわけですなあ』
  真面目に話していると思ったが 途端に説明が怪しくなる ネタ
 話なら向かい合って聞くまでもない なにが来ないのか
 『ほおう 人生の重大事ではないようだな 陽気のせいかは知らん
 が 体調が悪いなら早く寝ろ 待ってても今日は仕事だからな』
 『それがねえ 人生の重大事だったりもするんだよ 寝なさいって
 言うなら 今日は寝るけどさあ そんじゃあおやすみね』
 『待て 寝る前に説明しろ』
  人生の重大事の割りには暢気じゃないか やはり心配事があるの
 だな 来ないから行ってみた それってのは緊急事態か
 『いいよ えへへへへ 今日は寝るもん どうするって類のことじ
 ゃないからね ごめんなさい 心配を掛けちゃったみたいだあね』
 『結婚を目前にしてだな 他人行儀だな そんなことを言う女は立
 派な若奥様になれないぞ ましてやママさんには程遠いな』
  嫌な予感だ 普段から馬鹿が付くくらいの陽気 能天気とも言え
 るぐらいハイな女なのに 普通に喋り他人様の心配や社交辞令まで
 会話に混じる 改心したのなら驚異的な現象だが そうじゃないだ
 ろう なにか問題が発生している
 『そんなことないよ 既に人生設計はできちゃってるからね 結婚
 してくれるなら問題ないよ なんか凄くポカポカした感じかな』
 『るみこの口からそんな言葉が聞けるなんてなあ お母さんに聞か
 せてあげたいと思うぞ 正直に話せ こうか!』
  なにか埒が明かないので乗り掛かる ふくよかな胸を両膝で挟み
 頬を引っ張って伸ばす なにやら劣情を催すが そんなことよりも
 真相解明だ しかしこんな顔もカワイイものだ
 『ひててててて お腹には乗らないでよ そんなことすると』
 『なんだ 待て 来ないってのはつまり なんだその』
 『えへへへへへ 昔からの夢だったんだよねえ 真面目な顔で言う
 のがポイントかな できちゃったみたい うひゃあああ』
  毎回用心していたのだが 結婚を目前にして御懐妊か なにか複
 雑な感情が脳裏を交錯する 緊急事態に狼狽えるのはるみこではな
 かったようだ なんと言ったものか
 『マジ 行ったってってのは産婦人科だな つまり子供ができたわ
 け るみこに 俺の子供が こんな子供みたいな女に子供ができた
 のかよ なんだその』
 『ぶう 喜ぶとか怒るとかさあ なんかドラマみたいな反応はでき
 ないもんかね 期待して引き伸ばしてたのに もうもう』
  発言のとおりだ 俺の下にはるみこが寝転がっている 年齢こそ
 は結婚適齢期だが こんなのは完全に子供だ 原因あってこその結
 果なのは承知している それにしても御懐妊とは
 『いやまあ 嬉しいのかな 考えればだな ダラダラ伸びてる挙式
 スケジュールに拍車を掛けれると思うぞ で 何カ月だ』
 『うんとね 9週目だから2カ月半ぐらいかな 秋中に結婚すれば
 お腹も目立たないと思うよ 春にはパパだね』
 『すると原因は7月の初旬だな やはり折り紙じゃ駄目か 2時間
 が限度って言うもんな なんともはや』
  そのまま腹部に騎乗するのも問題があるか 隣りに座ってシゲシ
 ゲ眺める この中に子供がいるのだ 子供が子供を産む 大人のす
 ることは残されていない時代になってしまったのか そんな懸念は
 この際関係はないが
 『だからね』
 『なんだ やはり不安があるのか そんなに心配することもないと
 思うぞ 結婚することには変更はないからな』
 『そうじゃなくて その逆だよ 期待に胸膨らむって感じかな』
  無邪気な微笑みも母親の自信か 俺はなにも変化していないのに
 るみこは確実に変化している ハイな母親になるのだろう
 『膨らんでるのは腹だな それに結婚に関する資金も膨らむぞ』
 『きゃははは 縮むのはパパさんのスネだったりしてね それとさ
 ここも縮んじゃってるのかな きゃはははははは』

  男ができると女は変わる 子供ができればもっと変わる 儀式化
 すれば妻に母親だ 人生設計が完璧だろうと 悩まなくちゃならん
 のは男の方だと思う 不安と悩みは大きく違う その辺のところは
 これからの課題なのだろうな
  とにかく秋には亭主で 春には父親だ すごくその 妙な感じ




             》 しびる 《
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(のりこ)>るみこちゃんシリーズですね いやまあご懐妊ですか
(しびる)>ちょっと放置してたしなあ なんかオチつけてごくろう
      さんってカタチにしようって企画だったと思う
(のりこ)>おめでたいお話ですけど こんな感じですかね
(しびる)>なにが? ああ婚約とか懐妊とか 人それぞれじゃない
      の こんなことに定型はないし 別にいいじゃん
(のりこ)>そりゃそうですけど

posted by 篠原しびる at 21:02| シンガポール ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 連作系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

連作10 蓼連作09 フェーブルカンパニー24

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 種別 連作系第10期 蓼連作09
 題名 『 フェーブルカンパニー24 』
 初出 ニフティサーブ/FJAMEA/18番会議室
    1995年12月05日02時20分
 注釈 行頭スペース+30W
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(のりこ)>FC24です ちょっと久しぶりですね
(しびる)>まあ外伝も終了して ちょっと休憩って感じだったかな
      ちなみにこの頃の『中村』は何話くらいなんだ?
(のりこ)>いきなり話題を替えますねえ えーっと 通算は#16
      3で サブタイトルは『おはよう その3』ですか 内
      容的にはふうこRとレプリカント博士の騒動が落着して
      のちになってポンタ亜種と認識されるPECが至るとこ
      ろでおはようモードになってるときに なおちゃんとめ
      ーてるの首都横断チキチキレースが始まるちょい前です
(しびる)>いやあ まったくわからん説明だな わかるけど よほ
      ど読み込んでるヘビーリーダーの方々でも なんとなく
      くらいしか理解できないよな おそらく その説明じゃ
(のりこ)>わからなくてもいいじゃないですか コーナーが違いま
      すし フェーブルカンパニーの話をしないと
(しびる)>ふむ そろそろ後半の大ネタに向けてのネタ振りを始め
      たって感じか イエイツサドムもネタ振りの内だけど
(のりこ)>このスリーショットはあるようでなかったですね でで
      すね ネタバレはダメだと思うんですけど この先の展
      開はどうなるんですか?
(しびる)>あー まあラストの大ネタを展開中だわな 最新作では
      とにかくそれを終わらせて ひかるをスクールに返して
      一旦終了する そのあとはスクール編をやるかな
(のりこ)>ほうほう んでもスクール編ならラマルクとかは出演し
      ないですよね ちょっと寂しいかな
(しびる)>ふむ そこはそれ いじりようはあるわな
(のりこ)>ほうほう それ以上は聞きませんけど

posted by 篠原しびる at 21:02| シンガポール ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 連作系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

連作10 蓼連作08 羽音

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 種別 連作系第10期 蓼連作08
 題名 『 羽音 』
 初出 ニフティサーブ/FJAMEA/18番会議室
    1995年12月02日03時53分
 注釈 行頭スペース+30W
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SUBJ:【蓼連作】08 羽音

 Sibi-Tem V.4.1 (s+30)

 タデ科の一年草 辛いけど好き好きだね 蓼連作 #08(短編)




           『 羽音 』


                        作:しびる





  凄まじい童顔 縮尺を変化させれば小学生にも見える 小奇麗な
 髪型とセンスの良い衣装でごまかしているが たまに見せる笑顔は
 カッコイイよりはカワイイが適切な描写 あまり喋らないが声だっ
 てかなりの高音 第二次性徴期を跳び越して大人になったのか
  そのくせ妙に重鎮だから ひとりで読書なんかしている姿は歪ん
 で観察される 眼鏡の奥の瞳は笑っているのに 誰もがその真意を
 深読みするのだ しかし勘のいい娘は気付きはじめているかもしれ
 ない 早い者勝ち 先手必勝が基本だと思う

 『探しましたよ 新情報も3日持ちませんからね 解読したのはあ
 たしが最初だと思いますね 座っていいですか』
  返事なんかどうせないから勝手に座る 場所はウナギ料理の店で
 目の前に座るのは細身の男性 木目の店内に仕立ての良いスーツ
 『ウナギですか 毎日暑いですからね あたしも食べようかな』
 『あら どうしてあなたがここにいるの』
  時間差にすれば1分程度 ウナギを注文しようとした途端に不快
 な声 振り返るまでもなく馴染みの人物
 『どうもこうもデートじゃない ふたり楽しくウナギを食べる 至
 福な時間を邪魔しないでもらいましょうか』
 『なにがデートよ 水沢さんは食べてないじゃない 遊びに来たの
 なら帰りなさい ファンはひとりで充分だわ』
  腰に手を当てているのは長い髪の女性 背も高いしスタイルも良
 い 見た目そのまま御令嬢らしいが なにが悲しくて水沢マニアか
 『タマシロの48話 ベーダがバラモン教の教典だって調べるのに
 梵語の辞書まで買ったんだからね 今回は譲らないわよ』
 『理解が浅いわ あたしの立ち位置 今回の勝利者はすみれ様に決
 まりね 2時ちょうどにこの場所 正解でしょ 水沢さん』
  説明が遅れたが 水沢さんは作家だ 同時に舞台演出家でもあり
 本業を博物学者と名乗ることも多い お父さまは風水学の権威 お
 母さまは有名な政治家だ しかしその御子息は隠遁生活者
 『ふうん 立ち位置かあ やはり台詞部分まで調べるべきだったな
 でも早い者勝ちだもの 勝利宣言が終わったなら離れるのが賢明』
 『言われなくてもわかってるわよ 嫌な臭いの場所ね』
  すみれ御嬢様はあたしの隣りへ こんな事でもなければウナギ料
 理なんて耳にもしないような風貌 嫌なら来なければいいのに
  ちなみに現在時刻は2時少し前 あたしは時刻まで特定できずに
 駆けつけたのだが 結局は直感の勝利 出現までには間に合った
 『今回は誰も来ないと思っていた 後悔しないなら見せてやろう』
 『いやいや 今回は期待しているんですよ 本文の方は純愛路線で
 したからね おそらくはその線だと 深読みでしょうか』
  久し振りの水沢さんの声 長い足を組み斜に座り 生真面目な瞳
 はなにを見ているのか ラブロマンスを描く端正な男性 容姿だけ
 でも鑑賞に堪え得る 実像を知るのは一部の人間だけだ
 『それはいかほどのものかしら 古代神には厄介なものも多いわよ
 あたしは傍観しているから 危なくなったらひとりでどうぞ』
  水沢さんの描く文章は 一見すれば純愛小説 巧みな心理描写と
 奇抜な展開 それはそれで素晴らしいものだけど 本当の意味はそ
 の根底に潜んでいる 真意は闇の彼方 作為的な単語の配置
 『それにしてもね ここのところ ふたりだけじゃない ついて来
 れなくなったのかな そうだといいのだけども』
 『そう信じたいけど 妙な噂も聞かなくはないわね 近いわ』
  水沢さんの文章を読むときの不思議な感覚 どこかで経験したよ
 うな内容は 統計による恋愛のパターンからだと思っていた 誰か
 と喋っていたような会話 経験したことのあるような情景 今だっ
 てそうだ 夢の記憶か既視感か 原因は確かに存在していた
 『余喘の森 骸に寄生する蟲達の森だ』
 『ヨゼンですか 人の形をしたものもいますね あれなんか宗教画
 で見たことがありますよ まだこちらに気付いてないかな』
  重なる異世界 この世界の情動は重複する世界の影でしかないの
 だ 水沢さんの文章はその接点 見えているのに認識されない広大
 な世界 だからこその既視感 常に見ているのだ
 『あの方向なら神社があるわ 虫の息ってのは素敵なネーミングで
 すね 願いを叶えてもらいなさいよ』
 『なにか期待していたのとは違うかな もっと巨大な神様だと思っ
 ていたのに 虫じゃ困るもの 水沢さん』
  水沢さんにはいつでも見えている光景なのだ 限られた場所で限
 られた時間 文章に隠されたメッセージ 大抵は巨大な生物の近く
 に窓が開かれる 作用する現象は様々だ
 『骸の主は2千年前に死んだ生物だ この区域を支配していた神』
 『死んだ神様にお願いしてもねえ 願掛けしても神様を食べてる虫
 でしょ 御利益なんかあるのかなあ あたしも辞めておこう』
  人間の精神は虫達の羽音 巨大な存在なら現象すら捩曲げる な
 にか方向があるのではない ただ生物達の活動が喜怒哀楽を生む
 『まあ今回は 水沢さんに会えただけで良しとするか』
 『それが正解でしょうね 変になった人の噂も聞くわよ あなたも
 気を付けるべきね 帰ってこれなくなっても知らないから』
  しかし何故か魅了される 一線を踏み越えれば逆戻りはできない
 こんなふうに話していた女の子を数人知っているが みんないつか
 らか姿を現さなくなってしまった
 『そんなこと言ってね 独り占めしようと あ』

  不意に水沢さんが立ち上がる それまで真面目だった顔に笑顔が
 過る この笑顔に深い意味はない この人だけは虫の羽音に微笑ま
 ないのだ 童顔なのは原因か結果か どちらでもないかもしれない

  勘の良い娘なら既に気付いているのだろう





             》 しびる 《
+++++++++++++++++++++++++++++++
(のりこ)>まずタイトルにもなっている羽音ですが 虫ですか
(しびる)>この世界ってのは本当は幾重にも重なる位相のひとつで
      しかないってことは知っているわな 認知できるかどう
      かは別として たいていの場合はやたら意味量の大きい
      世界同士は隣接しないもんなんだわ 干渉するから
(のりこ)>理屈は知ってます 意味量ですか
(しびる)>ふむ この世界 って作中の娘っ子たちの世界はとても
      レアなケースとして かなり意味内容の違った世界と密
      接に存在しちゃってるのな もう薄皮一枚って感じで
(のりこ)>作家の水沢某さんはそれを認知できる人ですか
(しびる)>そうそう でだな その別位相には虫と呼ばれる生物が
      生息していて こっちの世界の人間に感情的な干渉をす
      るのよ 煽られるって感じかな 作中にもあったけど人
      間の喜怒哀楽の大半はこの虫達の羽音に影響されてるも
      のなのな でも虫はその世界では最小単位の生物で 当
      然のこともっと巨大な生物たちもいる 作中にあったの
      は神と呼ばれるくらい巨大な体と能力を持って地域の生
      物の羽音 つまり隣接する現世界の人間の感情や行動を
      支配していたとんでもない生物なのな
(のりこ)>その辺は読んでてなんとなく理解しました
(しびる)>この世界は ちょっと目がよければすごい光景が見える
      のよ まあ見えない方が幸せっちゃ幸せなんだけど
(のりこ)>あー あの しびさんは見えるんですか?
(しびる)>んじゃ次いこう

posted by 篠原しびる at 21:02| シンガポール ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 連作系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

連作10 蓼連作06 遅きに逸して

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 種別 連作系第10期 蓼連作06
 題名 『 遅きに逸して 』
 初出 ニフティサーブ/FJAMEA/18番会議室
    1995年11月29日07時43分
 注釈 行頭スペース+30W
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SUBJ:【蓼連作】06 遅きに逸して

 Sibi-Tem V.4.1 (s+30)

 タデ科の一年草 辛いけど好き好きだね 蓼連作 #06(短編)




         『 遅きに逸して 』


                        作:しびる





  どうにかなるとは自分でも考えていなかった どうにかしなけれ
 ばって気持ちはいつも手遅れで すべてが駄目になってから 慌て
 ふためき狼狽えたりする
  憎悪に変化した焦燥感 実のところは稚拙な性欲 考え方の基本
 は思春期のそれと大差ない まるで子供だ

 『部屋の様子が変わったな この変な匂いはなんだよ 臭いぜ』
 『文句があるなら帰ってよ どうしてもって言うから入れてあげた
 んでしょ 自分で辛くなるのがわからないの』
  ドアを開けた途端に仏具屋のような香り それに混じって見知ら
 ぬ生活臭 なにか非常に違和感 カーテンの色も違う
 『そ そんなこと コーヒーぐらい飲ませろよ 話ぐらいしても構
 わないじゃないか 本当にいないのか』
 『いないわよ いるわけないじゃない 10分で帰ってよ 悲しま
 せたくないのよね』
  この部屋には1カ月振りか 電話の中では記憶のままに想像して
 いたが 家具の位置の変化 それに音楽の趣味も違う
 『そんなセリフ 聞かせてもらったことないな 灰皿はないのか』
 『あなたみたいにタバコは吸わないもん あまり吸わないでよね』
  クッションに座りタバコに火を点ける 差しだされた空き缶は灰
 皿代わりに使うのだろう そのまま捨てて証拠隠滅 俺の灰皿は処
 分されてしまっている しかしビデオデッキは俺が買ったものだ
 『服とか下着とか 全部持って帰ってよね 捨てるわけにもいかな
 いし 凄く邪魔で困ってるのよ あそこにあるから』
 『捨てればいいじゃん どうして置いておくんだよ さては未練が
 あるんだな そんなに嫌なら置いとけよ』
 『少しも理解してくれないのね なんにも変わってない』
  自分でも論旨の稚拙さは理解している なにか気の効いたことで
 も話したいが 声になるのは十人並みの皮肉か もしくは未練
 『そうじゃないだろう あのビデオや玄関の傘立て この絨毯だっ
 て選んだのは俺だ 選んだのなら このベッドだって くっ』
 『そんなに文句があるなら捨てるわよ 無下に捨てるのが かわい
 そうだと思っただけでしょ 馬鹿じゃないの 今更そんなこと』
  反論しようとして口篭もる すべて原因は俺にある なにを言い
 争ったところで彼女は正論だ それに争うのが目的ではない こん
 なことではなにも変化していない
 『ああ いや 好きにしてくれればいい』
 『もう決めたわ 明日全部を捨てる 置いておいたのが間違いだっ
 たと思う こんなのはケジメをつけるべきだったのね』
 『捨てなくてもいい 捨てるなって言ってんだよ』
  それでも視線は合わせられない 睨み付けられている気配だけが
 皮膚に痛い 見上げることもできずに彼女の足を眺めていた ミニ
 のスカートから覗く白い両股 少し太ったか それとも記憶違いか
 『そんなの勝手じゃない あたしが何をしても意見なんてしないで
 ちょうだい 全部自分で決めるし あたしの自由』
  こんな言い争いが何カ月続いたか 原因は怠慢で 解決方法は馴
 れ合いによるごまかし 結局なにも解決されぬまま わだかまりだ
 けが鬱積していった その方法に体が反応する
 『喧嘩しようと思って来たんじゃない そのなんだ いいだろう』
 『なにを考えてるのよ いいわけないじゃない もうそんなことは
 しないの 全部終わったんだから ちょっと! やめてよ!』
  拒絶する言動に拍車が掛かる 言い争って性行為を無理強い 何
 百回となく繰り返された手順 どんなにあがいても覆水が盆に返ら
 ないことは理解している それでも衝動は治まらない
 『いいだろう 一回だけ 一回だけすれば帰るから だから』
 『嫌だって言ってるのに! 馬鹿! 放してよ』
  ベッドの上に押し倒す 乗り掛かり身動きを封じる 薄手のセー
 ターに片手を潜り込ませ もう片方の手を尻にまわす 慣れ親しん
 だ感触 当然のように既視感が襲ってくる
 『もうすぐ帰ってくるのに こんなところ見られたら』
 『なんだって構うもんか 見せてやればいいじゃないか それに』
  頭や背中が殴りつけられる 露出した乳房に舌を這わせる 片手
 を下着に潜り込ませたまま 堅く閉じられた両股に足をねじ込む
 『いやだいやだ 放してよ もうこんなことはしないんだから』
  叫び声が泣き声に変化する 乳房を噛み切りそうな衝動を無理や
 り抑え込んで 片手が茂みの下部に到達したところで 急に抵抗す
 る力が抜けた
 『馬鹿 そんなにしたければすればいいじゃない こんなことで満
 足できるなら したいようにすればいいじゃない さあ しなさい
 よ なんだって自分の思うように!』
  髪の毛を握り締めたまま静かな呪詛 這わす指に粘液が絡みつく
 胸の谷間に顔を埋め その臭いを脳裏に刻む おそらくは二度と嗅
 ぐことのない最後の香り それだけが意識を支配する
 『優しい言葉なんてね 言ってあげないわよ』
  静かな声が胸に響いている 気分が急速に萎えてゆく
 『だからもう 帰りなさい 逢わないし電話も取らないわ』
  優しい声に絶望感が募る 性欲と愛情を区別できない稚拙さ こ
 んなにも彼女は大人なのに 今更ながらの慈しみ こんな感情もす
 べて後手 なにをしても後の祭り
 『悪かった もう二度と現われない 帰る』
 『それがあなたのためだと そう思うわよ 二度と来ないで』

  走るように部屋を後にした 夕暮れの空気は肌に冷たく どこを
 どんなふうに走ったのかは覚えていない ただ走っていた






             》 しびる 《
+++++++++++++++++++++++++++++++
(のりこ)>なんですかその いろいろタイヘンですね
(しびる)>んー

posted by 篠原しびる at 21:02| シンガポール ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 連作系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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