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2005年12月29日

編集会議 093

(しびる)>ういーっす もう年賀状は書いたかー
(のりこ)>あ おはようございます 年賀状ですか 最近はメール
      で済ませますからねえ 数枚程度は書きますけど?
(しびる)>メールか それじゃあまりにも味気ないしな そもそも
      仕事関係はメールで『あけおめー』ってわけにはいかん
      だろ やっぱきっちり印刷所を通さなきゃ
(のりこ)>はあ もう長いことOLもやってないですし いまの仕
      事はなんしかメールでの連絡ばかりですもん?
(しびる)>それもそうか いつも会社のを先に片してから個人用に
      着手するからさ まあ30日までに投函できりゃ上出来
      って感じかな ちゃんと元日に到着してるのやら(笑)
(のりこ)>会社のですか 何通くらい作成するんですか?
(しびる)>まあ経費節減の時代だし3桁だわな さて そゆことは
      どうでもいいんだ もしかすればこれが年内最終になる
      かもしんないから なんか言いたいことがあれば言え
(のりこ)>ありゃ 年内最終ですか しびさんは仕事納めは何日な
      んです? 普通の社会人は既にお正月休みでしょうに
(しびる)>31日まできっちり仕事 んでもって3日から仕事 1
      月は既に休日ナシ決定 お母さん お正月ってなに?
(のりこ)>あー それはそれは(やれやれ)
(しびる)>そもそものりこのキモ付きで始めた旧作再掲載計画も途
      中で頓挫 ダメダメな事務所の活動に盆も正月もないわ
      な そこんとこ言い訳するなら聞いてやるぞ
(のりこ)>ダメダメと言われましてもねえ コーヒーっす 前の事
      務所が閉鎖されるってわかってれば 11月期だけでも
      100本以上掲載しましたのに それだけでもかなりの
      ロスタイムじゃないですか 私の責任じゃないです
(しびる)>前の事務所なあ それはたしかにのりこの責任じゃねー
      わな あー ココリコの黄金伝説に千秋がでてるな
(のりこ)>あらホントですね たまーにこのツーショットがいい感
      じじゃないですか 遠藤くんのお父さんもでてるし
(しびる)>千秋が『嫁の私が謝ります』とか言うのいいな こうい
      う感じに弱いんだわ 実のところ
(のりこ)>なんとなくわかります 別の枠では井戸田君が裕実ちゃ
      んネタで弄られてますし こっちの若手さんのチョイス
      はまた微妙ですね タイトルは『お笑い芸人大忘年会』
(しびる)>日テレだからエンタ系か しかしいま気が付いたけどさ
      この数日に今田司会のバラエティがやたら多くないか?
(のりこ)>今田さんですか んー そう言えば M1からこっちち
      ょくちょく見ますね おっと 隣りは所さん番組ですか
(しびる)>なんかコラージュ系の番組だな こういうのをいちいち
      チェックしててもキリないしなあ 年末年始の特番は場
      当たりで片すしかないと思うわけ 録画はナシで
(のりこ)>一般人はこういうときにHDD・DVD録画機を使うわ
      けですよ ウチはアニメとダウンタウンとSMAPにし
      か使ってませんけど(苦笑) あとゾンビ映画と
(しびる)>ふん ところでこの所番組おもしろいな 内容的にはこ
      れ深夜枠だろ ってもう24時前か 深夜枠だな(笑)
(のりこ)>ウチの活動時間は普通じゃないですから(笑) しかし
      この芸人さんを紹介するイラストはひどいですねえ
(しびる)>あんまし予算的に豊かな番組じゃないのかもな 実写を
      コラージュする企画なら タレントも写真を弄って処理
      すりゃいいのに 詰めの甘い制作と見た
(のりこ)>えーっと番組のタイトルは 『所さんの画スタマイズ天
      国』ですね いわゆる天国系の番組ですか
(しびる)>あの審査員の帽子かぶってるのは誰だ? まったく発言
      してないけど あの座席位置は文化人枠だわな
(のりこ)>調べましょうか?
(しびる)>別にいいや んじゃまそろそろ帰るわ あしたもやたら
      早いからさ なんか言い忘れてることとかないか?
(のりこ)>もうお帰りですか えーっと そうそう 例のクリスマ
      ス企画はどうなりましたか? メルマガも用意してます
(しびる)>あーあれな 結局はクリスマス特集は発行されなかった
      んだけど 30日とかに発行される通常版に掲載しても
      らえるらしい 内容はそれ以後に触れることとする
(のりこ)>ふうん 30日って もうそろそろですけど んじゃま
      そゆことで あとなにかありましたかねえ
(しびる)>ないなら帰るからな んじゃまた来年
(のりこ)>そんなこと言わずに来所してくださいよ
(しびる)>できればな んじゃ
posted by 篠原しびる at 23:48| シンガポール ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 編集会議 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

連作05 既連作10 がんばれ

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 種別 連作系第05期 戯連作10
 題名 『 がんばれ 』
 初出 ニフティサーブ/FJAMEA/18番会議室
    1995年06月09日00時49分
 注釈 行頭スペース+30W
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SUBJ:【既連作】10 がんばれ

 Sibi Temperate V.4.1 (space+30words)

 終わりから始めよう 既連作 #10(短編)




           『 がんばれ 』


                        作:しびる





  夕食を終えて雑誌を読んでいた 上の娘はテレビを見ている 妻
 は下の娘を寝かせに別室にいた 時間は午後9時 5月最後の夜

 『なあ あいか』俺は雑誌から娘に視線を移す『パパが参観日じゃ
 嫌なのか 別に仕事なんか休めるんだぞ』
  娘はソファーに横になってテレビを眺めている 話題は来週の授
 業参観 俺は妻から聞かされた
 『べつにぃ ママでいいよ みんなママが来てるもん』
 『母親参観じゃないからな 父親だって参観する義務があるんだぞ
 恥ずかしいのか』
 『きゃはは そんなに気になるの』
  娘はソファー越しにこちらを眺める 話し方も素振りも妻にそっ
 くりだ 顔は当然似ているし性格も同じだろう
 『そりゃぁ気になるぞ 小学校3年と言えば人生の転機だからな』
 『なんにも変わらないよ あたしは大人だもん 突然どうしたの』
  娘は足をばたばたと動かしている 俺は雑誌を閉じて立ち上がる
 そして回り込み娘の隣りソファーに座る
 『公文の教室を辞めたんだろ 勉強は面白くないか』
 『勉強なんてやらなくてもいいよ あいかはね 歌手になるから』
 『ふむ 歌手だって漢字を知らなかったり 計算ができなかったら
 困るんじゃないのか 本当は違うだろ』
  娘は俺の膝の上に頭を乗せる 髪質は俺と同じ猫毛だ
 『うーん 少し違うけど本当だよ あいかはね コマーシャルのタ
 レントになるんだよ だからレッスンが忙しいんだ』
 『まあ かわいいがなぁ なにをレッスンしているのかしらないが
 勉強のレッスンも必要じゃないか』
  俺は娘の頬を握る 娘も俺の頬を握る 確かに妻に似て美人では
 あろうが この歳にして既に真意がわからない
 『あーら 父娘の楽しいひとときね ママは仲間外れかしら』
 『ふむ 邪魔をしないでもらおう さいかは寝たのか』
  後ろから声を掛けたのは妻だ 俺と同じだけ歳を取っているのに
 妻は学生時代と少しも変わらない ひょっとして妖怪か
 『子供は寝る時間だよねぇ これからは大人の時間だ きゃはは』
 『笑ってる場合じゃないわよ 大人の会話はあいかちゃんが思って
 いる以上に凄いんだから 泣いちゃうかもよ』
 『ああ 世界情勢や経済の話なんかもする 会社の現状なんて涙が
 でるぞ 融資の話なんて胃が痛くなるほど』
 『わお てんちをひきさくぐらいの話 むぅ 我慢して聞くよ』
  天地を引き裂くかは知らないが 家計を引き裂いたり夫婦関係や
 雇用関係は引き裂くかもしれない 我慢してまで聞く話ではない
 『あいかはCMタレントになるそうだ まなみは知っていたか』
 『なによ ママみたいに塾の講師になるんじゃなかったの あたし
 ってば楽しみにしてたのに』
  俺と妻は同じ大学で 先に卒業した俺は今の会社を創業したと同
 時に妻と結婚 妻は結婚後数年間 塾の講師をしていた
 『じゅくのこうしって公文の先生でしょ あいかには無理だもん』
 『やってみなければわからないぞ ママだってやってたんだから』
 『だってってのは問題よねぇ 学校の先生よりは簡単なのに どう
 して無理だって思うの』
  俺の膝の上にはふたりの頭が乗っている 大きさこそ違えども同
 じ顔だ 美人だしかわいい 幸せの構図なのだろうが俺が置かれて
 いる立場の縮図でもある 楽観は禁物だ
 『あいかみたいな子が生徒に来るんだもん あいかには無理だと思
 う だから公文も辞めちゃったの』
 『あははははは なんかおかしな理屈よね ティーチャーあいかは
 あいかキッズに勝てないの レベルが上がってもヒットポイントが
 減少するのね』
 『なんだ ヒットポイント』
  妻と娘は妙な会話を続ける 娘はしかし自分を知っているのだろ
 う 枝葉はとにかく自我の確立はすべての基本だ
 『うん あいかはこれ以上賢くならないもん もう頭の中は勉強で
 いっぱい 見せてあげようか』
 『一杯ってことはないだろう あいかがパパとママの娘ならもっと
 賢くなるぞ 耳から流れるほどだ』
  俺は娘の耳を触る なんだか仕方がないので妻の耳も弄ってみる
 いったいなにをしてるんだか 膝の上のふたりは同じように笑う
 『あはははは 耳はくすぐったいわよ 気になるなら今度の授業参
 観に行けばいいのに』
 『うむ その話をしていたのだ しかしあいかはママがいいそうだ
 そう言えば俺は授業参観に行ったことがない』
 『いいよ とにかくいいよ』
  やはり恥ずかしいのか 自分で言うのもなんだが俺は歳のわりに
 本来の原形を留めていると思うのだが 女の子ってのは難しい
 『あいかの気持ちもわからなくはないけどね この前ね さいかの
 参観日に行ってきたのよ』
 『幼稚園も授業参観があるのか 2歳児のなにを見るんだ 寝て食
 ってるだけではないのか』
 『さいかもお遊戯ができるんだよ パパは知らないな』
  俺の意見は正しいと思う 確かに色々できるのだろうがアレは偶
 発的なものではないのか 参観するならば幾許かの規律も必要だろ
 う そんなものがあるのか2歳児に
 『その辺の配慮が凄いのよね そーちゃんも行ってくれば驚くわよ
 なんと覗き部屋参観 あははははは』
 『覗き部屋 なんだそれ』
 『あいかも知ってるよ 参観日なのに誰も来ないの 小さい子が緊
 張しないようにね』
 『そうよ 子供が緊張すると普段の活動が見れないから お母さん
 達は覗き窓から参観するのよ 変よねぇ あははははは』
  最近の幼稚園ではそんな配慮までするのか あいかは目を擦って
 いる 横になったから眠くなってきたのだろう まだ宿題をやって
 いないはずだが 自分の膝の上では注意するのも気が引ける
 『あいかもね ふあ 幼稚園の保母さんならできるかな あれくら
 いの子ならあいかだって勝てるもん ふああああ』
 『そうよね 今のあいかちゃんなら保母さんにはなれるかもね さ
 いかの面倒を良く見てくれるもん ふあ』
  ふたりとも目をしばしばさせて そして眠ってしまった

  今のあいかは確かに今のあいかに勝てないのだろう あいかも来
 年で10歳だ いつかきっと自分に勝てる日が来るのだろう それ
 までは俺の膝の上で眠るのも良かろう
  妻と娘の寝顔を眺めていると このままでもいいような気もする
 とにかくはまあゆっくりと頑張れ あまり急いで頑張ることもない
 と そんなふうに思うぞ




             》 しびる 《
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(のりこ)>やっぱし締めはこのシリーズですか 覗き部屋参観?
(しびる)>いやホントにあるんだそういうのが 最近はどうか知ら
      ないけど この当時は実際にあったのな
(のりこ)>どこでそういう情報を拾ってくるのやら
(しびる)>個人情報保護法とかあるからなあ 覗き部屋参観も プ
      ライバシー保護とかで最近は難しいかな
(のりこ)>関係ないんじゃないですか?
posted by 篠原しびる at 22:42| シンガポール ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 連作系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

連作05 既連作09 おいでよ

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 種別 連作系第05期 戯連作09
 題名 『 おいでよ 』
 初出 ニフティサーブ/FJAMEA/18番会議室
    1995年06月06日02時01分
 注釈 行頭スペース+30W
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SUBJ:【既連作】09 おいでよ

 Sibi Temperate V.4.1 (space+30words)

 終わりから始めよう 既連作 #09(短編)




           『 おいでよ 』


                        作:しびる





  廃棄処分を待つ巨大な工場や寂れた病院跡 深夜の沼地や海岸に
 迫りだす断崖絶壁 理由を明示しなくとも禁忌な場所は数多に存在
 する 多くは物理的に危険であったり また治安に問題のある場所
 なのだ いわゆる危ない場所
  しかし一見安全なロケーションであっても その場所に侵入した
 途端 自分の存在に違和感を感じることがある なにげない街角で
 あったりオフィスビルのロビーであったり 周囲に人間がいるにも
 関わらず悪寒が走る 敏感な人であればすぐさま逃げだすかもしれ
 ない なにか危ない場所
  その時の感想はそんな感じだった なにか変だ

  休暇を利用しての小旅行 友人達とは予定が合わず ただひとり
 だけの出発だった 季節は5月 新緑が香る快晴の正午
  単線の鈍行に1時間ほど揺られ 降り立った駅は無人だった ど
 うせひとりなら旅先でもひとりが良い 俺は改札に切符を放り込む
  駅をでたところで深呼吸 脇に設置されていた自動販売機でジュ
 ースを買う こんな場所でも利用する人間がいるのか 自分もその
 ひとりだと苦笑い 誰だって勝手なものだ
  ジュースをリュックにねじ込み歩き始めた 出発前に地図で調べ
 たが この地域は過疎化が進み現在では住民は皆無なのだ 先程の
 単線の終点駅は人口5千人ほどの地域であるが この駅は付近に設
 置されている変電所のメンテナンス用 便宜上残留しているに過ぎ
 ない 文字どおりの無人駅
  それでも昔は生活が営まれていたのであろう 半ば朽ちた民家の
 間を縫い歩く 木造建築は人間の生命力を糧に存在するのか 忘れ
 去られた建物は時間を早めて崩壊してゆくようだ
  歩き続けるとポストに出会った その場所から道は分かれている
 一方は繁る森林へ もう一方は一際大きな建物に向かっている あ
 れは小学校か村役場か 屋根が落ちて透き間から樹木が覗いている
  ポストには丁寧にビニール袋が被せられていた 風雨の侵入を防
 ぐためか 細やかな気配りが逆に風化を際だたせる これではまる
 で妖怪ポストではないか 時間を経た品物は魂を持って妖怪に転生
 するという もしこの中に郵便物が残っていたならば とうの昔に
 妖怪だろう 配達されなかった誰かの思念 いったい誰に祟るのか
  俺はポストの角を森林へ向かう

  ただ闇雲に散策していたのではない 俺には確かな目的があった
 目的地はこの森の中のはずだ 地図で調べたとおりなら1キロも歩
 かずに祠が見える 目的地は小さな神社 正一位の稲荷神社の分社
 キリシタン大名に守護されたという和洋折衷の様式 噂には聞いて
 いたが間近に見るまでは真偽の程は確かではない
  背の高い雑草を掻き分け 咲き誇る藤の花をくぐると その先に
 は林道が続いていた 神社のための参道かもしくは作業上の工夫か
 杉の巨木に挟まれた林道は 低木の発生を押さえつけて道としての
 体裁を保っていた
  巨木の林道に侵入した途端 冷たい風が林間から吹きつける 5
 月とは言ってもこの気温 額に滲んだ汗がさっと冷える
  林道は曲がりくねって続いていた 僅か差し込む木漏れ日がキラ
 キラ輝いて交差する あいかわらず天気が良いのだろう
  そしてその場所に侵入した

  最初に感じたのは煩わしさであった 急に開けた空間はそれまで
 の巨木が鳴りを潜め ぽっかりと低木すら生えていなかった それ
 を見たときすぐさま人為的なものを感じたのだ その証拠に空間の
 中央には小屋が建っていた
  整然とした眺めは人間の存在の証拠であろう こんなに山奥に好
 き好んで住み着く奇人もいる きっとその類だろうと思ったのだ
  俺は急に興醒めしてきびすを返す せっかく排他的な雰囲気に浸
 っていたのに人間に出会うのは面白くない
  そして後ろを向いたときに聞こえてきたのだ 妙な物音だった

  俺の存在を感知したのか 小屋の中から物音がする 戸板を引っ
 掻くような音 なにか動物が発するような音だ 小屋の中に動物が
 いるのか 俺はゆっくりと歩み寄る 近付くと呼吸音まで聞こえて
 きた いったいどうしたというのか
  引戸の前に立って気がついた 鴨居の中央になにかが突き刺さっ
 ている よく見ると朽ちた鎌だ 張りついている紙切れは御幣だろ
 うか この小屋にはなにかの因縁があるのか
  御幣を付帯させた刃物には幾つかの意味がある 結界そのもので
 ある場合と 結界を打ち破る際の禁忌の中和 どちらにしても尋常
 ではない 俺は判断に苦しんだ しかし引戸を掻く音は更に激しく
 なる 放置する勇気よりも好奇心が勝ったのだ
  俺は力を込めて引戸を開けた それと同時に物音も静まる それ
 まであれ程に騒いでいたのに 覗き込んだ小屋の中は薄暗くなにか
 の気配は感じられなかった 俺はゆっくりと侵入した
  一瞬だった 俺が踏み込むと同時に何かが外へ飛びだした 振り
 返ると走り去る犬の姿が見えた 引っ掻いていたのはあの犬なのだ
 ろう 俺は小屋から外へでようとして驚いた

  開け放たれた引戸の前には男が立っていた 男は真っ直ぐに俺を
 睨んでいた 俺は曖昧な笑顔を作る この男は小屋の持ち主なのだ
 ろう 留守宅に侵入したのは早計だったか
  しかし男は俺を見ていなかった こちらを睨み付けているが焦点
 は俺の後方で結ばれている なにか狂気を感じ取って身構える そ
 のままの姿勢で後ずさると男の持ち物が見えた 男は真新しい鎌を
 持っていたのだ これは危険だ 殺されるのかもしれない
  俺が叫ぶ間もなく男は鎌を振り上げる そして振り下ろした 俺
 の叫び声と同時に鈍い音 振り上げられた鎌は鴨居に刺さったのだ
  男が微笑むと同時に引戸が勢いよく閉まる 後は完全な闇だった
  なにが起こっているのか 俺は闇の中で考えていた 狂人に襲撃
 されているのか あの笑顔の意味 鴨居に刺さる鎌 そう言えば鎌
 には御幣が揺れていた なにかの冗談か そうでなければやはり危
 険なのか 身構えたまま考えていた

  どれくらい時間が経ったのか 外からは人間の気配が感じられな
 い いつまでもこのままでいるわけにもいかず 俺は引戸に手を掛
 けた 引戸は簡単に開いた 外はあいかわらずの快晴
  先程の男はどこに潜んでいるのか 身構えて周囲を見渡す しか
 し人の気配は感じられない どうしたものか とにかく足早に歩き
 始める 元来た道を戻ろう 薄暗い林道は危険だがこの場を離れる
 のが先決なのだ そして巨木の森へ踏み込んだ
  だが目の前には小屋があった 小屋を背にして歩き草の生えぬ広
 場から踏みだす その一瞬 目の前には小屋がある 背後には巨木
 の森があった おかしい
  再び歩く しかしある場所から脱出できなかった 巨木群の中の
 空間から踏みだす 何度繰り返しても同じだった 脱出できない

  禁忌の場所 閉鎖された空間 この場所は巨木の森のエアポケッ
 トか どの場所からも脱出できない 見上げると快晴 かなりの時
 間が経過しているのに陽が沈まない すべてが閉じ込められた空間
 俺は気が狂いそうだった このまま死ぬのか
  俺は踏み込み引戸を開けた 犬が飛びだし男が現れた 小屋の前
 に座り込んだ俺はじっと考えていた なにか解決方法があるはずだ
 
  じっと考えているとなにかが見えた 錯覚かと思い目を凝らした
 巨木の間になにかが見える 先程の犬だった 行き場のない犬はま
 だ付近を徘徊していたのか 麓に降りても食料などないだろう 引
 き返してきた犬はこちらを見ていた
  犬は遠くからじっと眺めている ずっと閉じ込められていたせい
 か警戒しているのだろう 俺はようやく理解した 俺は犬の身代わ
 りなのだ ならば犬は俺の身代わりだ 俺はリュックから缶ジュー
 スを取りだした
  腹が減っているなら飲めばいい 左手にジュースを溜めて差しだ
 す 犬は遠くから眺めている かなり警戒しているのがわかる 尻
 尾も振らずに見つめている 俺はジュースを手に滴らせる
  やはり欲求には勝てなかったのか 犬は一目散に走ってくる そ
 して俺の手からジュースを飲んだ 成功だ
  俺は犬の首筋を掴み後方へ放り投げる それと同時に駆けだした
 犬の鳴き声が聞こえたが構わずに走る そして杉の巨木にぶつかり
 派手に転んだ

  周囲は闇だった しかし振り返った背後には昼間が存在していた
 暗い世界を切り取ったように 眩しい空間は円形に存在していたの
 だ 草も生えぬ広場に小さな小屋 その前には先程の男が立ってい
 た 俺は額から流れる液体を気にせず睨み付けていた
  微笑む男の足元には犬が座っていた どちらも俺を見つめている
 あまりにも不思議な光景 男の口が僅かに動く 声は聞こえないが
 なにかを話している 俺は震えが止まらなかった
  ずっとつぶやき続けた男は 諦めたのか振り返る そして小屋の
 鴨居に突き刺さる鎌に手を掛けた そして闇が訪れた

  どうやって帰ったのか 気がつくと俺はポストの前にいた 身体
 中が痛い かなり怪我をしているのだろう ポストに寄り掛かり呼
 吸を整える
  その頃になってようやく男のつぶやきが理解できた

  男は繰り返しつぶやいていた そう おいでよ と







             》 しびる 《
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(のりこ)>こういうのを たしか身代わり地蔵とかいいますよね
(しびる)>だな わりと古典なんだけど いちどキチンとやってお
      こうという企画だったと思う 異世界ものは好きだし
(のりこ)>好きですよね 時間の流れのちょっと違う空地とか
(しびる)>ホントはそういう話ばかり書いていたいくらい
(のりこ)>こういうのキライな人もいるんですから
posted by 篠原しびる at 22:41| シンガポール ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 連作系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

連作05 既連作08 おねがい

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 種別 連作系第05期 戯連作08
 題名 『 おねがい 』
 初出 ニフティサーブ/FJAMEA/18番会議室
    1995年06月04日02時58分
 注釈 行頭スペース+30W
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SUBJ:【既連作】08 おねがい

 Sibi Temperate V.4.2 (space+30words)

 終わりから始めよう 既連作 #08(短編)




           『 おねがい 』


                        作:しびる





  5月には珍しく長雨 その合間を縫って数日間の快晴 雨が降っ
 ていた分だけ湿度が高い なんだか蒸すので納戸を開け放ってテレ
 ビを見ていた それが原因か
  夕食を食って1時間程度 なにか妙な気分なのだ 吐き気とも違
 うもっと精神的な感じ よくわからない
 『どうしたの? 幽体離脱って感じよ 仮死状態?』
 『ふむ どうにも妙だ なにか沸き上がってくる』
  俺はぼんやりとタバコの煙を吐きだす 俺の前にはテレビと灰皿
 十帖ほどの部屋には家具はなく 薄暗い縁側からは虫の鳴き声
  いつのまにか後ろにいたのは俺の女
 『ふーん そんな陽気かもしれないわね 沸き上がってくるのが夕
 食じゃなきゃいいけれど』
  そう言いながら俺の隣りに座る 彼女はいとこで同じ年齢 昔か
 ら一緒にいる この屋敷にはふたりだけ
 『なんだろな なにかもやもやしている』
 『なにを言ってるんだか あらら? そっちの方の衝動なの?』
  確かめてみたくて彼女を抱き寄せる 胸をまさぐりながら唇を奪
 う 柔らかい肌に鼻をくすぐる良い香り 暫く続けてみた
 『別に構わないが 性衝動とも違うな なんだかなぁ』
 『退屈してるようでもないわね ふーん これは性衝動の証拠じゃ
 ないの?』
  膝の上に彼女の頭を乗せる ぼんやり考えながら頬の肉を抓って
 みたり 彼女が抓っているのは別の部分だ こんなのとは少し違う
 『なにか急かされるような 誘惑と脅迫との中間 やはりこれが正
 解なのかな 試してみよう』
 『理屈をこねながら 臨戦態勢だったりする 縁側から見えるよ』
 『別に構わない』
  なにもない部屋の真ん中 彼女を転がして舌を這わす 華奢な体
 に豊満な肉付き 二十歳そこそこのくせに妙に漂う廃退感 続けて
 も構わないが少し違う
 『貴族趣味ね なんなら あたしがしてるのを見る?』
 『それも違うだろうが 試しに見てみよう やりたまえ 正座しよ
 うか?』
  転がった姿勢のまま 彼女は自分の股間に手を延ばす 俺は正座
 して見ている しかし少し違う
 『いつも同じ手順だな マンネリズムの醍醐味って奴だな』
 『角度を変えてみようか? できる限りの要望にはこたえるわよ』
 『ふむ でも二の次だろ?』
 『わかってるじゃない 二の次ね どれが正解?』
  そう尋ねられても答が見つからない なにが正解だろうか 俺は
 タバコに火を点ける 彼女はあくまでも二の次だ
 『なんだろな 選挙に出馬するってのはどうだ? どこかの会社を
 買収するって手もある』
 『続かないわよ 困難に立ち向かわなきゃ解決しないでしょ?』
 『お見通しだねぇ そろそろ終わりだな?』
  彼女の息が荒くなる 確かに不可能なことでなければ駄目なのか
 もしれない
 『ふぅ 興奮せずに見てられる方がいいのよね 同じじゃない?』
 『そんなに淡白じゃないよ 衝動なんだから』
  彼女は上気した顔で仰向けに寝そべる 先週替えたばかりの畳が
 彼女の体温でイグサの香りを際だたせる 彼女の体が触れる3帖と
 俺が座る1帖 それ以外は必要ないのだが
 『なんだか全然わからない なにが沸き上がってくるんだ?』
 『南欧にでも出掛ける? この時期なら泳げるわよ』
 『海水浴かぁ スポーツだよなぁ』
  俺も寝そべって泳ぐ真似 そのまま彼女の上に乗り掛かり胸の肉
 を噛む カニバリズムとも違うようだ そのまま天井を眺める
 『観察 分類 推測 検証 どこから始める?』
 『やはり検証かな 実験の位置付けによっては無限ループに陥る』
 『実験君の衝動じゃないんでしょ? 苦手克服が1学期の課題だわ
 分類から始めてはどう?』
  彼女の呼吸に合わせて俺の頭が上下する 苦手克服なら留年する
 のが手っ取り早い
 『これ以上なにを分類するんだ? 理路整然 問題なし』
 『虚数解を導いても解決しないわよ 案外毒殺される最中かもしれ
 ないじゃない 気分が悪いんでしょ?』
  先程食した夕食が スリルとサスペンスの発端とは考えられない
 もしそうだとしても それも違う
 『殺害されるのも悪くないが 若干能動的だな 殺害する方はどう
 だろう? 少しは近いか』
 『結局実験じゃない 分類の素振りだけね』
  話ながら俺は彼女に覆い被さる マンネリズムの醍醐味をどのよ
 うに分類するか いくら考えても推測の域は脱し得ない
 『これとは違うんだがな まあ構わないが』
 『いきなりでも構わないわよ さっきのままだから でもその前に
 魔法の言葉ね』
  俺は既に体を動かしていた その前もなにもないだろうが 魔法
 の言葉の延長線上になにかが見えるような気がしていた
 『あん? なんだっけ? そうそう おねがいしますだ』
 『そうよ あなたは感謝の気持ちが足りないのよ そうそう その
 辺りね』
  感謝の気持ちか 確かに少し足りないのかもしれない しかし誰
 に感謝すればいいのだろうか きっとその辺りだな




             》 しびる 《
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(のりこ)>なに書いてるんだか いけませんねえ
(しびる)>だわな んー
posted by 篠原しびる at 22:40| シンガポール ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 連作系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

連作05 既連作07 どうして

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 種別 連作系第05期 戯連作07
 題名 『 どうして 』
 初出 ニフティサーブ/FJAMEA/18番会議室
    1995年06月02日02時58分
 注釈 行頭スペース+30W
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SUBJ:【既連作】07 どうして

 Sibi Temperate V.4.2 (space+30words)

 終わりから始めよう 既連作 #07(短編)




           『 どうして 』


                        作:しびる





  一週間後に学園祭を控え校内は喧噪に包まれていた 主なイベン
 トは 文芸方面では演劇祭と音楽祭と展示発表 体育会方面では大
 運動会 どのクラスも大運動会は全員参加 文芸方面は3者からの
 選択なのだ
  うちのクラスは演劇祭を選択していた 俺はその助監督 業界で
 言うところのアシスタントディレクターだ やはり雑用係である
               □
 『小林さぁ 悪いけど今日は頼むわ』
  今朝方ようやく仕上がった原稿を眺めていた 声を掛けてきたの
 は監督の飯塚だ 既に帰り支度 事後承諾ってやつだな
 『なんだよ 今日は本読みの初回だぜ? いいの? ふーん』
 『なんなら代わってやるよ 俺 噛む気はないんだわ』
 『なんで? 乗り気だったじゃん 美短のドラマコース受けるんだ
 ろ? 辞めたのか?』
 『とにかくパス 顧問に辞表だしてくるわ それじゃな』
  飯塚は片手を上げてきびすを返す なにが気に入らないのか知ら
 ないが突然の降板は無責任じゃないか
  しかしそれはそれで好都合かもしれない 飯塚が降りたなら自動
 的に監督は俺だ 脚本に演出 好き放題だろう
  そろそろ時間なので2Gの教室へ向かう うちの学校は各学年に
 8クラス 練習に割り当ての教室は2年のG組だ
               □
 『遅せーじゃねーか 本なしで何をしろって言うんだ?』
  既に全員が揃っていた 今回の登場人物は4人 男が久松と佐藤
 女子が渡部と河村 スタッフ連中は運動会の方に出向なのだ
 『できてるよ それから今回は俺が監督な 飯塚は降りたからさ』
 『どうかしたの? なにか喧嘩でもしたの?』
  机に座っているのが久松 ニヤリと微笑んで渡部が質問する 佐
 藤は渡した脚本に落書きをしている 河村は外を眺めている
 『知らない とにかく降りるらしいな あいつ我が侭だもん』
 『へへん ようこが運動会に行ったからじゃねーの? 好きもんだ
 よな あんなののどこがいいんだか』
 『人のこと言えるかよ』
  それまで黙っていた河村がつぶやく 久松が森山ようこにふられ
 たのを河村も知っているのか 超極秘事項のはずだったが
 『なんだよ! お前なんか誰にも相手にされないじゃん っせーん
 だよ! 黙ってろよ』
 『ほーう 久松ラインが怪しいわね 小林君はなにか知ってるでし
 ょ? 話しちゃいなさいよ あははははは』
  渡部は妙に勘がいい とにかく本読みを始めなければならないの
 で俺は教壇へ向かう 佐藤はあいかわらず落書きをしている
 『喧嘩なら後でしてくれよ とにかく今日は配役と本読みな 勝手
 に決めたからそれに従ってもらう』
 『全部お前が決めるのかよ? すげー権力だよな』
 『あははは いいじゃない 決めてもらった方が楽じゃないのさ』
  騒いではいるものの仕切りやすいのは久松と渡部だ 河村と佐藤
 はよくわからない
 『あー 今回は閉鎖空間での人間ドラマ 小さな無人島が舞台 役
 名は実名にするな 構わないだろう?』
 『なんかリアル過ぎねーか? 俺は構わねーけど』
  佐藤は黙って頷いている 他も構わないらしい 勝手に進めなけ
 れば収拾がつかない
 『それじゃ 脚本の名前どおりの配役で行こう 卜書きは俺が読む
 からな』
               □
  場面は南国の小島 とにかく遭難して漂着した4人 食料は乏し
 く付近に船影は見えない いずれ全員が死亡することは確実だった
 『領土を決めないか 助け合いなんて言わないだろう?』
  提案したのは久松 嘲ったように全員を見渡す 答えたのは河村
 『そう言う奴に限って泣くんだよな ふふん 素直になれば?』
 『あたしは河村さんと暮らすわね どうせなら男女で分けるのがい
 いじゃない?』
  渡部は楽しそうに笑う 将来の心配よりも状況に奇妙さに楽しさ
 を感じているらしい
 『それじゃ俺は佐藤と暮らすのか?』
  と久松は渡部に耳打ちする
 『一緒にふけねーか? ふたりなら楽しいぜ いいだろ?』
 『あはははは いやらしいことを考えてるわね? 駄目よ趣味じゃ
 ないもの あはははは』
 『それなら‥‥南側が良い』
  それまで黙って聞いていた佐藤がつぶやく 全員が佐藤を見つめ
 る 最初に言葉を発したのは久松
 『お前 なにか知ってるな? 隠すんじゃねーよ 秘密を独り占め
 しようって考えだな 俺は佐藤と暮らすぜ』
 『それじゃ決まりだな 南北に分けることで決定だ』
  河村は腕を組んで話す 渡部は肩を窄めて両手を広げた
               □
  島の南側 佐藤は黙々と小枝を集めている 久松はそれを眺めて
 いた
 『早く秘密を話せよ 水か? 食い物か? 何かあるんだろ?』
 『この付近の海流は‥‥南に向かって流れている』
 『それがなんだよ? もったいぶるんじゃねーよ』
  イライラした久松は佐藤が集めた小枝を蹴散らす ゆっくりと振
 り返った佐藤は久松を睨む
 『海流に乗れば‥‥帰れるかもしれない 記憶によれば‥‥そんな
 に遠くはないはずだ』
 『筏を作って浮かべるのか? それが秘密なのかよ? 馬鹿じゃね
 ーの 無理に決まってるじゃねーか』
 『夜になれば‥‥もっと海流が早くなる』
  再び佐藤は小枝を集める 久松は歩きだした
 『ひとりでやってろよ 俺はアマゾネス村の偵察だ』
               □
  島の北側 河村と渡部は並んで座っていた
 『どうしたのもかしらね? 学校に行かなくてもいいのは嬉しいけ
 れど 死んじゃうわよね あはははは それもいいかぁ』
 『そうだな』
  河村は素っ気なく答える 構わずに渡部は喋り続ける
 『あたしは知ってるのよねぇ 河村さんって久松君に気があるでし
 ょ? 態度を見てればわかるのよ あはははは 図星じゃない?』
 『そんなことない』
 『ここってば無人島だもん なにをしたって誰も見てないし それ
 にどうせ死んじゃうんだからさ ねぇ?』
 『なんの話だ』
 『やだぁ 全部言っちゃうと身も蓋もないじゃない あはははは』
  渡部は馬鹿笑いしている 河村は返事をせずに立ち上がる そし
 て歩き始めた 渡部が声を掛ける
 『どこに行くの?』
 『散歩』
  それを聞いて渡部が僅かに微笑む
               □
  島の中心部 深い森の中で河村と久松が出会う 瞬間ふたりは立
 ち止まり そして久松が話した
 『なんだよ 寂しくなったのか? あっちに行っても佐藤しかいな
 いぜ 趣味なら構わねーけどさ』
 『あんたこそ 渡部さんが趣味なんでしょ あたしは誰にも興味は
 ないわ すぐに死ぬのに馬鹿らしい』
 『そうだな 違いない しかし助かる方法もなくはない』
  急に久松が河村の手を掴む そして小声で続ける
 『佐藤の奴はひとりで脱出するつもりだ ふたりで筏をう奪わねー
 か なんなら佐藤の奴を』
 『ふん 悪い男ね』
  そう言いながら河村は微笑んだ 久松が河村の顎を掴む
               □
  島の南側 佐藤はあいかわらず小枝を集めていた その後ろから
 渡部が声を掛ける 佐藤は驚いて振り返る
 『なーにしてるの? あら驚かしたかしら あははははは なにを
 してるの?』
 『筏を作る‥‥海流に乗れば助かるかもしれない』
  渡部も一緒に小枝を集める そして佐藤を見つめた
 『ふーん それよりも久松君はどうしたのよ? 一緒に暮らすんじ
 ゃなかったの?』
 『北側に行った‥‥それからは知らない』
 『なるほどね』
  渡部は少し考えて佐藤の手を掴む 佐藤は驚いて小枝を落とす
 『やっぱり久松君じゃ駄目だわ あたしひとりじゃ心細いし でも
 4人じゃ半分になるもの ねぇ? うふふふ』
  渡部は佐藤に向かって微笑む 佐藤は理解できずに首を傾げる
 『ここだけの話 食料も流れ着いてるのよね どうしたものかしら
 ねぇ? 佐藤君 あたしじゃ決められないわ あははははは』
 『それなら‥‥ふたりで食べるしかない』
 『佐藤君がそう言うなら あはははは そうしましょうか』
  渡部は馬鹿笑いする 佐藤は小枝を抱えて立ち上がった
               □
  島の南側 河村がたどり着いたときには渡部の姿はなかった 佐
 藤は大量の小枝を集めツタを使ってなにかを作っていた
 『筏でも作るのかい? 久松はいないんだね?』
 『さっき向こうに向かった‥‥それから見ていない』
  河村は佐藤の作業を見つめている
 『こんな孤島で方角もなにもないだろう? 筏なんかじゃ助からな
 いじゃない』
 『海流の方向なら‥‥知っている 複雑だけど‥‥大丈夫』
 『ほう 妙なことに詳しいんだな』
  河村は少し考えて話す 佐藤は額の汗を拭う
 『久松はあんたから筏を奪うつもりだよ でも久松じゃ助からない
 だろうな あたしも乗せてくれるかい』
  河村は佐藤を見つめる 佐藤は黙々と作業を続ける そして手を
 止めて河村を眺めた
 『ふたり乗りに改造するのは‥‥少し時間が掛かる』
  そして再び作業を続けた
               □
  島の北側 久松が到着したとき茂みの中から渡部が現れた
 『そんなところでなにをしてるんだよ? トイレか?』
 『女の子に向かってなんてことを言うのよ あははは ばれたとあ
 っちゃ仕方がない 河村さんに出会わなかった?』
  服の木の葉を払いながら渡部は馬鹿笑い 久松はその場に座って
 首を横に振る
 『いいや どこかに行ったのか?』
 『さぁ 散歩らしいわよ どこに行ったのかはしらなーい それよ
 りもなにか用なの?』
 『なんだよ さっき約束したじゃねーか ふたりっきりで暮らすん
 だろ? わははははは』
  久松は微笑みながら渡部を見つめる 渡部はなにかを考えている
 素振りで砂を弄っている
 『一緒に暮らすならお前の方がいいよな やっぱりさ 美人だし』
 『ふん そりゃ格好良い方が楽しいわよね そうよね やっぱり』
  ふたりは見つめあって微笑む そして同時に声をだした
 『筏がな』
 『食料がね』
  そして再び微笑みあった
               □
  そして夜がやってきた それぞれの思惑を潜めて南海の孤島は闇
 に包まれていた 夜がやってきたのだ
               □
  いよいよクライマックスというところで 久松が脚本を床に叩き
 つけた 俺は驚いて尋ねた
 『なんだよ? これからが物語の深層なのに』
 『没だな やっぱり監督は飯塚にやらせよーぜ それから脚本も書
 き直しだ』
  俺が監督として苦情を言おうとしたとき 河村も脚本を放り投げ
 た 佐藤は既に落書きを始めている 続けたのは渡部
 『あはははは それがいいわよ それじゃあたしは運動会の方に行
 くわね また明日』
  渡部の言葉が合図になったのか 全員が立ち上がり帰り支度を始
 めた 俺はなにがなんだかわからなかった
 『なんだよ? みんな帰っちまうのか? どうして‥‥』
  説明してくれたのは最後にドアに向かった河村だった
 『良くできてるからだよ それじゃあな』

  良くできていればいいじゃないか どうして怒るんだよ?






             》 しびる 《
+++++++++++++++++++++++++++++++
(のりこ)>ようこちゃんシリーズ というかようこちゃんの高校生
      のときのお話っす いかにもな内容ですけど?
(しびる)>密室劇っぽくしてみようって企画だったと思う でもな
      んかうまくいってないよなあ こゆのは難しいから
(のりこ)>そもそも普段から密室劇なんですけどね
(しびる)>そゆのとはちょっと違う
posted by 篠原しびる at 22:39| シンガポール ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 連作系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

連作05 既連作06 たべてね

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 種別 連作系第05期 戯連作06
 題名 『 たべてね 』
 初出 ニフティサーブ/FJAMEA/18番会議室
    1995年05月31日03時35分
 注釈 行頭スペース+30W
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SUBJ:【既連作】06 たべてね

 Sibi Temperate V.4.2 (space+30words)

 終わりから始めよう 既連作 #06(短編)




           『 たべてね 』


                        作:しびる





  軍用艦の採用には反対意見が多かったのだ 連邦軍と科学省の軋
 轢は数百年来のものであり それはとりもなおさず科学技術の軍事
 転用への自己矛盾でもある 予算獲得には手っ取り早いのだから仕
 方がなかろう
  そんな背景もあり すったもんだの挙げ句 調査船は貨物船を使
 用することになった 前回の荷物はガストリュウムだったりしたの
 だから 危険度からすれば軍艦の方が無難じゃなかろうか
  連邦認識コード490210200413 船名は『クイドプロ
 クオウ』ラテン語で代用品って意味らしい 妙な名前だ
               □
 『また手作りカレーか? インスタント食品をくれよ』
  俺は目の前の皿を眺めていた 台詞どおりメニューはカレーなの
 だ すぐさまシェフが反論する
 『天然素材よ だからおぼっちゃまは困るのよね 女性の手作り料
 理が毎日食べられる 特権階級じゃない』
 『俺は機械が作った物がいいんだ ハンドメイドは嫌いなの』
 『文句言わずに食べなさい フーズサーバーは積んでないんだから
 地球に帰るまでは手料理しか食べられないわよ 嫌なら結構』
  嫌がりながらも毎食食べている この調査船には搭乗員が2名だ
 け 俺と彼女 俺は料理なんかできるわけがない
 『食べればいいんだろ ああインスタントが懐かしい』
 『手作りの楽しさがわからないなんて まったく子供ね』
  貨物船クイドの艦橋部分 殺風景な艦内での食事はこれで32回
 目になる つまり11日目の昼食なのだ 毎回彼女の手料理
               □
  今回の目的地はオウトクイジン星系の第5惑星ホイポロイ 開拓
 時代に独立した移民星である この300年来連邦との国交が断絶
 しているのだ 資料では地球クラスの温暖な惑星らしい
  そのホイポロイから奇妙な伝聞がもたらされたのが2年前 なん
 でも前世紀のDED通信だったらしい 文面は簡潔なもので若干文
 法的な誤りはあったものの判読作業は容易であった いわく『救助
 を求む』突然の救助要請だ
  本来は連邦軍の仕事だろうが そこにストップを掛けたのが科学
 省 連邦との国交はなくとも鎖国していたわけではなく ホイポロ
 イは他星人とは若干の交流を保っていた 聞くところによると危険
 な政権ではないらしい ここのところ優勢な軍部に対しての牽制の
 意味もあったのだろう
  つまり俺達は救助を名目に 他文化の技術を調査する任務に就か
 されたわけである 迷惑な話だ
               □
 『そろそろワープ6が解除されるわ なにかすることはないの?』
  カレーにスプーンを突き刺しながら彼女が話す 脇に置いた小型
 のモニターを眺めているらしい 彼女の名前はエリカ・フリーガン
 所属は言語解析部 主任部長である
 『航法コンピューターなんか知らないぜ シャトルの免許なら持っ
 てるけど』
  突発事故を含めて運行に関するすべてのことは クイドの中心部
 の航法コンピューターが仕切っている 俺の所属は鉱物研究部 彼
 女と同じく主任部長だ ふたりとも科学者だからと言って貨物船の
 操縦ができるわけでもなく 会話はおざなりだ
 『とにかく 救助を求めてるんでしょ? 2年も経ってるなら救助
 もなにもないじゃない 少ししょっぱいかな』
 『構わないだろう どうせ調査が目的だしな 絶滅してる方が楽じ
 ゃないか ジャガイモなんか入れるなよな』
 『科学は人類の幸福のために 教官に叱られるわ ごちそうさま』
 『俺は全部も食べられない ランチは以上 それじゃ17時に集合
 ということで』
  彼女が先に立ち上がる 軍人なんかは愛情なんかも考慮してチー
 ムを結成するらしいが 俺達は研究目的の急拵え 非常に淡白な関
 係である まあ好意を持たなくもないが 手作り料理が趣味なら楽
 しい生活は無理だろう
  17時にはホイポロイに到着する予定である
               □
  熱源や空間湾曲についての報告が届いていたが 俺に理解できた
 のは大気の組成表ぐらいであった 俺が理解しなくても調査船は予
 定どおりに運行していた 俺達は惑星ホイポロイに降り立ったのだ
 『さてとなにから始めたものか 予想どおり有機反応は皆無らしい
 な 気味の仕事はなくなったというわけだ』
 『担当は決めたでしょ? あなたは政府のメインコンピュータを調
 べるのよ 私は文化データを圧縮するから』
  生命反応はなくとも惑星の機能自体は維持されている 彼女は淡
 白に言い放つとすぐにどこかに姿を消した まことに学者肌な性格
 だ 俺もすぐに仕事に掛かろう
               □
  誰もいない街並み すべての住人が突然姿を消したかのように街
 の機能は稼働していた しかし妙に生活感がない 閑散としている
 のだ この惑星になにが起こったのか
  ウィルスや有害物質 各種の放射線や気候の異常 すべては調査
 船でグリーン反応 外部からの攻撃でないことは連邦軍が保証して
 いた しかし住人達は姿を消した なにかが起こったのだ
  政府ビルへ向かう途中 なにかの気配を感じた 妙だ
               □
 『妙なのよ』
  ホイポロイでの夕食は 現地のサーバーシステムを使用した既製
 品 満足している俺に彼女が話す
 『俺もだ 作業記録は2年前から修正されていない 自己メンテ以
 外はなにも作業していないらしい』
 『こちらも同じよ いえ 妙な流れは12年前からのものだわ』
  彼女は既製品が気に入らないらしい 露骨に表情を歪めてスプー
 ンを動かしている 洗練された味覚に膨大な情報の蓄積 既製品は
 大衆による人工淘汰の芸術品だ 個人レベルではこうはいかない
 『妙な流れってのは? 12年前ってのに意味があるのか?』
 『そう 劣性遺伝子の偶発的増大ね 12年前にホイポロイの人口
 はただひとり みんな死んじゃったようね』
 『なるほど その最後の住人が寂しくなって電報を打ったのか そ
 れじゃ その住人を探さなきゃな この街にいるのか?』
  万人受けする無難な味覚 このスープはどうだ 濃すぎず薄すぎ
 ず子供から老人まで楽しめる味だろう 既製品の醍醐味だ
 『ははん 彼も2年前に死んでるわ でもね12年前からデータベ
 ース上の人口は数万人に増加してるの』
 『なにそれ? ゲームの対戦相手でも作っていたのか? おや?』
  またもや妙な気配 今度は物音も伴っていた 彼女も聞いたらし
 い 俺達はさっと緊張した
               □
  ホイポロイは無人の惑星だ 有機反応は皆無 人間はおろか他の
 生物も生息していない 本来ホイポロイは岩石の惑星であり 資料
 によると生態系を形成する試みは実施されなかったらしい
  初期の移民では人類だけを送り付けるのが常であった
 『報告するほどの価値はないな こんな不気味な星は早々に立ち去
 ろう プログラムは改竄できないのか?』
 『壊れても知らないわよ まだ13時間 それまでに調べられるだ
 け調べるのよ』
  俺達は環境局と呼ばれる建物にいた 航法コンピューターは時限
 装置で制御されている 俺達はそれに合わせるしかないのだ
 『なにを調べるんだよ? みんな死んじまったんだろ?』
 『36時間毎に市場調査が実施されてるのよ 昨日の夜も実施され
 てたわ 不気味だと思わない?』
 『誰もいないんだろう なにを調査してるんだ? 白紙回答ばかり
 じゃサンプルないならないじゃん』
 『解答数は5万8千人分 数百項目の質問が12秒で集計されてる
 わ あなたもアンケートには記入した?』
  彼女が操作する画面上には なにやら見たことのない単語に混じ
 って 俺でも知っている食品の名前が表示されている
 『食品 ファッション インテリア ドアの取っ手の形状なんての
 もあるわね 住環境に必要なすべてが質問されている』
 『どこかで生き残った人間が暮らしてるんじゃないか? お!』
  今度は気配なんかじゃない 僅か開いたドアの隙間を人影が移動
 した 俺は慌てて立ち上がる 彼女も続いて駆けだした
  生存者がいるのだ かなりの高速で影だけが移動している 俺達
 の前方を走る影は建物から外へ
  そして一件の居住エリアに消えた
               □
  あまりにも日常的な眺めだった 向かい合ったソファーには男性
 と女性が座り 輝くテレビの前には子供らしい姿があった この惑
 星に人間などがいるはずもなく しかしそんなことは一瞬にして失
 念してしまった
 『生存者がいたんだな? いったいなにが起こっているのだ? 宇
 宙船が到着したのは知らないのか? なにがなんだか』
 『待って! なんだか様子が変よ』
  俺が大声をだしているのに住人達は返事はおろか 振り返りもし
 ない なにか病気かそうでなければ
 『アンドロイドよ 凄く精巧に作られているみたい』
 『最後の住人の家族だろうか それにしても不気味だな あまり良
 い趣味だとは思えないぞ』
  その時背後のドアからアンドロイドが現れた 無表情なそれは俺
 達の存在など意にも介さずソファーに座る もっとたくさんのアン
 ドロイドがいるのか
  俺達は他の居住区も調べた
               □
 『メンテナンスに行くみたいね この調子だとアンドロイドは5万
 8千体はいるわよ ここはアンドロイドの街ね』
  政府ビルから地上を眺める よく観察すれば道路のあちこちに人
 影が見える あれのすべてが作り物なのか
 『みょうちくりんな街だな するとアンケートに回答しているのは
 アンドロイドなのか? 人間がいないのに必要なんかないだろ?』
 『アンドロイドは12年前に生産開始されたみたいね すべては生
 産工場から自動的に産みだされるようよ』
  コンピューター相手の仕事は彼女の専任となってしまった 俺は
 こちら方面には弱いのだ
 『すると最後の住人がこの街を造ったのか 寂しいからと言っても
 趣味が悪いな 他に解決方法があっただろうに』
 『だから通信してきたんじゃないの?』
  まあ気持ちはわからなくもないが 不気味には違いない 俺なら
 ごめんだ
               □
  出発寸前の昼食はホイポロイでの予定だった 俺は前回の食事が
 楽しみたかったので同じものを注文する 彼女は不満顔だ
 『これで既製品ともおわかれだと思うと』
 『せいせいするわ 無難だからベストってわけでもないでしょう?
 作る度に違うから手作りは楽しいのよ』
 『なにを言うか このスープなんてのはだな おや?』
  俺は楽しみにしていたスープを一口 なにかが違う 不味いわけ
 ではないが昨夜とは微妙に違う 既製品なのにこの変化は妙だ
 『どうしたのよ?』
 『味が変わっている いや更に美味くなったのは確かだが 昨夜食
 べたのとは微妙に違う』
  俺は唸りながら飲み続けた 黙って考えていた彼女が急に笑いだ
 す なにがおかしいのか一頻り笑って説明した
 『なるほどね 市場調査が反映されたのよ』
 『なにそれ? さっき話してたやつ?』
 『そう きっと最後の住人もあなたと同じ趣味の人だったのよ 既
 製品じゃないと満足できない性格ね でもよりよい既製品を作るに
 はサンプルが必要』
  なるほど俺にも理解できた 街中のアンドロイド達は人工的に製
 品を淘汰するためのサンプルなのだ システム上の演算ではなく実
 際の生活に即した市場の反映 サンプル数は多いほど全体としての
 精度は向上する
 『私が代わりに渡してあげるわよ』
  腕を組んで考える俺に彼女が笑う
 『なにを渡すんだ?』
 『あははははは 辞職してこの星に残りたいでしょ? 辞表なら代
 わりに私が渡しておいてあげるわよ』
  そんなこと考えるまでもなかった
               □
  貨物船クイドでの33回目の食事もカレーだった 俺の意見が反
 映されたのか カレーの中にジャガイモは入っていなかった
  既にワープ6の速度らしい あと32回の間にはきっとカレーに
 も慣れるだろう
  俺はカレーを食べながらホイポロイでの生活を想像していた






             》 しびる 《
+++++++++++++++++++++++++++++++
(のりこ)>ふうん やたらSFっぽいSFですね
(しびる)>レディメイドってのは つきつめるとどういう仕組みよ
      って企画だったと思う しかしあれだな もうちょい説
      明して もうちょいダイエットして このリズムの悪さ
      はなんだろうねえ 修行が足りないよなあ
(のりこ)>足りませんか
(しびる)>足りないねえ
posted by 篠原しびる at 22:37| シンガポール ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 連作系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

連作05 既連作05 さよなら

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 種別 連作系第05期 戯連作05
 題名 『 さよなら 』
 初出 ニフティサーブ/FJAMEA/18番会議室
    1995年05月29日01時59分
 注釈 行頭スペース+30W
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SUBJ:【既連作】05 さよなら

 Sibi Temperate V.4.1 (space+30words)

 終わりから始めよう 既連作 #05(短編)




           『 さよなら 』


                        作:しびる





  マンションに帰ると鍵が開いていた ドアを開けると照明も点い
 ていた 景気よく叫んだ声は秒速340メートルの速度で壁に反響
 しかし返事はなかった 俺の部屋には誰もいなかった
  この時間だから近くのコンビニへ買い物に出掛けたのだろう 俺
 はカバンを放り投げてネクタイを緩めた
 『不用心だな 何か食うものは』
  更にテレビも点けっぱなしだった 食べる物を探して卓袱台を眺
 めたとき まるで安物のドラマのような置き手紙が目に入った
  B5版のスーパーの広告 その裏側にはルージュで書かれたひら
 がなの文字 いわく『さよなら さがさないで』なんだこれは
 『なんだこれは? なつみーっ どこかに隠れてるんだろーっ!』
  あまりに突然の展開に開いた口が塞がらなかった

  なつみと暮らし始めたのはいつからだったか 気がつけば既に同
 棲生活 籍を入れるのも面倒なままの暮らし 偶然にも同じ姓だっ
 たのも影響して まるで妻のように振舞っていたなつみ
  今になって考えれば ふたりの間にはなんら拘束するものなどな
 かったのだ 彼女は文章を書いて暮らせるし ふたりの間には子供
 はいない 日常の積み重ねは少しの力にもなれなかったのだろうか

  どうしたものか いや何故なのか なつみは何故姿を消したのか
 今朝家をでたときはなつみはベッドで眠っていた 喧嘩をしたわけ
 でもない なにか恒常的な問題が存在していたのか なにも思い当
 たらない
  確かに昨夜のなつみは不機嫌だった 女性誌に連載している原稿
 が仕上がらず うんうん唸って暴れていた しかしそれが原因だと
 は考えられない それと離別は次元が違う だいいち締め切り間近
 の爆発は日常的なものなのだ
  俺は広告を掴んだまま考えていた 腹は減っているがそれどころ
 ではない 焦燥感が冷や汗に変わる
  なつみは妙なところで思い切りが良い 一度決めたことは絶対に
 決行する だから不安なのだ もし妙なことを考えていれば今ごろ
 救急車が走っているかもしれない 思慮が浅いから視界が狭いのだ
  俺は部屋をとびだした とにかく辺りを探してみよう

 『なつみーっ! どこだあああ!』
  サンダルを履いて大声で叫ぶ すれ違う人々が振り返る しかし
 そんなことには構っていられない 今は一大事なのだ
  俺がなにかしたのか 俺がなにかをしなかったからか さよなら
 と書いてさがさないでと続けたのだから それはつまり探して欲し
 いことの裏返しだろう 生活のまま部屋を放置したのはきっと時限
 装置なのだろう 距離的なヒントに違いない
  俺がなにをしたのだ 毎日会社に出掛け 休日にはふたりで出掛
 け できることはなんでもしたし 第一なによりもなつみを愛して
 いた 問題などなかったはずだ
  俺がなにをしなかったのか 仕事の愚痴は言わなかった なつみ
 の仕事には口を挟まなかった してはならないことは熟知していた
 し 愛情を強要することはなかった 問題などなかったはずだ
  それがいけなかったのか いやそれすらも知っていた 適当に曖
 昧でチャランポランでなまくらで 肝心なことは押さえて それ以
 外は状況に流していた 完璧ではないか
  なにが不満だったのか なにが不安だったのか なにに不機嫌だ
 ったのか 俺は走り続けた

  息が切れたので立ち止まる いくら5月の夜風と言っても汗が吹
 きだす 爆走の後の壮快感が脳内麻薬の分泌となって不安を消し去
 る なつみは帰ってこないのだろう それだけが実感できた
  道路に座り込んでタバコに火を点ける 煙を吐きだすと楽しい思
 い出だけが浮かんできた 案外女々しかったのだと情けなくなる
  ふたくち吸って地面にもみ消す なつみは良い体をしていた 昨
 夜無理にでも関係を持っておけばよかった もったいないことをし
 たものだ
  ため息をついて立ち上がった マンションに帰ろう

  よく考えれば探すなと言うのだから 探しても無駄だってことな
 のだろう 知らなかっただけで新しい男でもできたのかもしれない
 俺がどんなに工夫しても なつみが愛想をつかしたのなら それは
 仕方のないことなのだろう 賢い女だから見付けて欲しくないなら
 世界中を探しても見つからないだろう
  だろうだろう 俺ひとりが馬鹿なのだろう まるで女房のように
 思っていたのに 死ぬまで一緒に馬鹿騒ぎができると思っていたの
 に そんなことは独り善がりだったのだろう
  やはり俺は馬鹿だったのだろう ドアノブに手を掛けて そして
 力なくドアを開いた

 『あ!』
  部屋の卓袱台にはなつみが座っていた 長い髪を後ろで結わえて
 大きな眼鏡を鼻に乗せてこちらを見つめていた
  俺は言葉を選ぶのに一瞬躊躇した
 『待って! ここが一番大事なんだから 色々考えたでしょ? や
 けになって自殺とか考えなかった?』
  なつみは慌てて制止する 俺には事の展開が理解できなかった
 『よく考えて聞かせてね ショッカーにさらわれたとか 4次元に
 消えたとか思わなかった? ただ家出したと考えたなら その女に
 向かって言葉があるでしょ?』
  俺はすべてを理解した なつみの前に広げられているのは昨夜か
 らの原稿だ なにかエッセイを書いていたらしいが ネタ探しに自
 分の男を利用するなんて
  俺はどっと疲れた ああ馬鹿馬鹿しい 考えるまでもなく俺は言
 葉を発していた それは素直な感想である
 『腹が減った なにか食べ物を作りやがれ 馬鹿女!』
 『ふむ そう来るかぁ それも面白いかもね 食事による迎合ね』

  なつみはぶつぶつ言いながら原稿にペンを走らせる 晩飯はきっ
 とかなり後になるだろう 構わないけど 一生馬鹿騒ぎが続くだろ
 うってことは なんとなく想像できたのだ





             》 しびる 《
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(のりこ)>いろいろタイヘンですねえ
(しびる)>タイヘンだわな まったく
posted by 篠原しびる at 22:36| シンガポール ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 連作系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

連作05 既連作04 もしもし

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 種別 連作系第05期 戯連作04
 題名 『 もしもし 』
 初出 ニフティサーブ/FJAMEA/18番会議室
    1995年05月27日02時08分
 注釈 行頭スペース+30W
+++++++++++++++++++++++++++++++
SUBJ:【既連作】04 もしもし

 Sibi Temperate V.4.1 (space+30words)

 終わりから始めよう 既連作 #04(短編)




           『 もしもし 』


                        作:しびる





  けたたましく電話が鳴っている つい習慣で目覚まし時計を探す
 サイドボードをまさぐって妙な違和感 手に掴んだものを眺めると
 サングラスだった 部屋の様子も普段と違う
  なんだかよくわからない頭で電話に応答した 声の主はマネージ
 ャーの内藤さんだった
 『ふんがあ もしもし?』
 『なにしてるんですか ゆみりさん! 10時から撮影だって言っ
 てたでしょう』と内藤さんは叫んでいる『どこでも同じなんですか
 ら 迎えに行きますからね』
 『ふあ? あや‥‥』
  昨夜は大量に飲んで ホテルに帰ったのも覚えていない 未成年
 だって構うもんか こんな銀河の果てまで写真週刊誌も追ってこな
 いだろう
  あたしが答える前に電話は切れた 内藤さんだってどこでも同じ
 だと思う 迎えに来るまでに少し眠れると思う

  アクリノール星系の第4惑星 名前は確かスレオニン いやバリ
 ンだったかな良く覚えていない とにかく地球クラスの熱帯雨林の
 星なのだ すごく蒸し暑い
  社長が休暇をくれるって言うものだから喜んでいたのに 来てみ
 ればやはり予定調和のブッキング なんでもCFの撮影らしい 騙
 されたとは言え少し嬉しいのも確かなのだ
  万年リゾート惑星だけど ホテルの中はとても爽やかなのだ 休
 暇を過ごすには絶好の環境だと思う 思うんだから ふあ

 『気をつけてくださいよ 世間に知れたら大変なスキャンダルなん
 ですから』
 『大丈夫だよ 身内ばっかりじゃないか』
  現場へ向かうチューブライナーは特別チャーター しかしそんな
 ことをしなくても地球人なんて全然いない
 『本当に世情に疎いですね 戦時下ですよ 兵器メーカーのCFだ
 から許可が降りているんです』
 『ふーん だったらさぁ スキャンダルもなにもないじゃない?』
 『軍人ほどミーハーなんですよ』
  それはそうかもしれない 以前連邦軍関係の仕事をしてから な
 んだか軍人さんのファンが増大しているらしい ゆみりクラブの会
 長さんが話していたもの
 『ですから行動には責任を持ってくださいね 社長も釘を刺してた
 でしょ? 仕事なんですから』
 『その辺りは意見があるよ 休暇じゃなかったのかなぁ ぶう!』
  就業環境の話題を持ちだしたところで到着 撮影現場は海岸なの
 であった

  強い日差しに蒸し暑い気候 だけどここの太陽はほとんど紫外線
 を放出しなくて 撮影するときに干渉が少ないらしい 良くは知ら
 ないけれど
 『これはこれはゆみりちゃーん 昨日は楽しかったな わははは』
 『きゃはは ゆみりに勝とうなんてのは10年早いよ』
  馬鹿笑いしているのはプロデューサーの唐沢さんだ 大きな体の
 割にお酒に弱い 楽しいおじさんなのだ
 『自重してくださいよ ゆみりは大切なタレントなのですから』
 『わははは ふむ 誘われたのは私なんだがな 早速始めようか』
 『うひょう! このロボットにゆみりが乗るの?』
  海岸には巨大なロボットが座っていた ビルの3階くらいはある
 だろうか こんな大きいロボットは見たことがない
 『ロボットなぁ 正式名称は機密型動態複写機甲タイプSSV 原
 型は歯科医のドリルだそーだ 俺も詳しくは知らんぞ』
 『ふむ こんなので治療するなら虫歯は嫌だな』
  見上げていると首が痛くなる CF撮影なのだから誰かが買うの
 だろうな やはり歯医者さんだろうか
 『さて着替えてくれな 午後からは低気圧が出張ってくるらしい』
 『更衣室の場所はスタイリストさんに聞いてくださいね ところで
 唐沢さん 例の特注の件ですが‥‥』
  せっかく海岸なのに仕事の話ばかりでつまらない 内藤さんは唐
 沢さんと仕事の話をしている
  あたしはぶらぶら歩いて女の人を捕まえた
 『スタイリストさんって誰かなぁ?』
 『あ やっと見つけた ゆみりちゃん 早く着替えましょう』
  女の人はスタイリストさんだったようだ 関係ない話だけど知ら
 ない人に知られているのは たまに妙な気分なのだ
  こんなに晴れてるのに低気圧って来るのかな

 『歯医者さんのドリルが水着なのだぁ! なんでだよ!』
  用意されていたのは またもや水着 最近の撮影は水着ばかりな
 のだ こんなのは聞いていない
 『かわいいぞぉ ゆみりちゃーん 兵器と言えば水着の美人』
 『おやじ達は何を考えてるんだぁ! と言いながら踊ってみる』
  海岸なら水着だろう 怒ってはみたものの こっちの方が過ごし
 やすいのは確かなのだ 動きやすいし
 『ゆみりちゃんならコンテを見なくていいだろう 好きなようにし
 てくれていいぞ カメラは勝手に回すからな 音は必要か?』
 『きゃはは よーし 新曲のプロモにしよう』
  あたしがステップを踏み始めると どこからか音楽が聞こえてく
 る マイクを持ってないと手が寂しい 転がりながら小枝を拾った
 『きゃはは 最後に笑うのはだーれっ! ふふん!』
  サビに合わせて指を振る コーラスパートでジャンプする 前回
 のライブで試したステップだ 勢いをつけてロボットによじ登る
 『女の子は複雑なんてーっ 簡単にゆーじゃない!』
  Cパートで振り返る 急に開いたハッチにお尻から落ちる 驚い
 たけど歌い続ける でたらめにボタンを押すと妙な轟音が体に響く
 『いけーっ! スーパーゆみりマシーン! きゃははは』
  目の前のモニターが突如点灯する うろうろしているのは内藤さ
 んだ 腰に手を当てて馬鹿笑いしてるのは唐沢さんだな
  よく見ると内藤さんが何か叫んでいる どうにかしろって言って
 もどうすればいいのだろうか
  ロボットは歩いているのだろう そんな感じが体に伝わる なん
 だかくすぐったい感触だ こんなので虫歯の治療なんてできるのだ
 ろうか 先端技術ってのは不思議なものだ
  感心しているとモニターの映像が消えてしまった それでもロボ
 ットは動いているらしい どうなっても知らない あたしの責任で
 はないと思う あたしは全然悪くない はずだ

  退屈になった頃 急にロボットの動きが止まった 別にボタンな
 んか押していないけれど そんな仕組みなのかもしれない
 『もしもし ゆみりさん 聞こえますか?』
 『どうしたの? 内藤さんの声だよね どうかしたの? お昼ご飯
 の時間かな』
  どこかから内藤さんの声が聞こえる 生の声じゃないようだ
 『あのですねぇ まあ いいですけどね とほほ』
 『お昼ご飯なら ここからだしてよ もう退屈だよ』
 『今すぐハッチを開けますからね 変なところを触らないでくださ
 いよ ふぅ』
  なんだか内藤さんは疲れているようだ あたしがこんなに頑張っ
 てるのにマネージャーが疲れてちゃ駄目だと思う 姿勢を直そうと
 してなにかに触れた
 『うわわわわ!』
  ハッチが開く寸前に内藤さんの叫び声が聞こえたような気がした
 そしてハッチが開くと同時に眩しい光がさし込んだ まだ天気は良
 いらしい
 『ひゃっほう! ゆみりの登場だあ!』
  勢いをつけて飛びだし大きな声で叫んだ 現場を和ませようと思
 っての演出だったのに あたしの声は誰にも聞こえていなかったら
 しい 全員が寝ていたのだ
  知らないうちに低気圧がやってきていたのか 現場は凄い有り様
 だった 編集車は横倒しだし機材なんかは四散している 全員が渦
 巻き目玉で寝ているし内藤さんまでも寝ているのだ
 『もしもーし みんなどうしたのかな? ふむ 不真面目だあね』
  問いかけても誰も答えない この様子じゃ先にお昼を食べたのか
 もしれない うーんなんて言っているのは満腹の証拠だろう
 『それならゆみりにも考えがあるぞ!』

  あたしはロボットの肩から海に飛び込んだ みんなが起きるまで
 は休暇を楽しんでやるのだ こんなに熱いのに仕事なんかしていら
 れるもんか
  なんたってリゾート惑星なのだ ふうむ バシャバシャ




             》 しびる 《
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(のりこ)>銀河アイドルゆみりちゃんシリーズですね もう既にア
      クリノール星系に幽閉されてます でもテンション高し
(しびる)>いけー スーパーゆみりマシーン! とかさあ
(のりこ)>自作に対する批評はカラダに毒ですよ
(しびる)>だわな
posted by 篠原しびる at 22:35| シンガポール ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 連作系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

連作05 既連作03 おやすみ

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 種別 連作系第05期 戯連作03
 題名 『 おやすみ 』
 初出 ニフティサーブ/FJAMEA/18番会議室
    1995年05月24日14時52分
 注釈 行頭スペース+30W
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SUBJ:【既連作】03 おやすみ

 Sibi Temperate V.4.1 (space+30words)

 終わりから始めよう 既連作 #03(短編)




           『 おやすみ 』


                        作:しびる





  部屋をでようとしてドアに手を掛ける その時ちょうど外からド
 アが開かれた 勢い余って体勢を崩す 予想どおり聞こえてきたの
 は馬鹿笑い あいかわらずの遅刻である
 『いやいや 相性が良いやね すんごい確率だよ同時にドアを開け
 るのは きゃはははは 怒ってるのかや』
 『胎内時計が狂ってるんじゃないのか 時間どおりってことはない
 よな 記憶に間違いがなければさ 構わないけど』
  馬鹿笑いの主は婚約者のるみこだ なにが楽しいのか終始笑って
 いる 既に約束の時間から1時間経過しているのだ 遅刻45分ま
 ではるみこ時間として納得しているが あまりにも遅刻だ
 『不可抗力だもん 仕方がないよ』
 『いいよ理由は 聞くだけ無駄 すぐに出掛けよう』
  ドアの向こうに立つるみこを押し退けて退室しようとした こん
 な所で話していても始まらない 馬鹿話なら移動しながらでも聞け
 るだろう 平行処理は人類の英知なのだ
 『ふみゅぅ まずは部屋に入れてよ 渡したいものがあるだよ』
 『ああん この期に及んで余裕だな 時間がねーよ 車の中にして
 くれないか』
  妙な直感 るみことのつき合いも長いから直感でわかる なにか
 普段と違うようだ これでも幾分おとなしい
 『どうかしたのか 鼻が乾いているじゃないか 珍しいぞ』
 『ふんがあ 女の子状態がヘビーだから自宅待機のココロだよ 勝
 手に出掛けてくるがよろしだね』
  なるほど珍しく理由があったのか 大抵は幽霊だとかUFOなん
 かが理由なのだが それならそうと話せばいいのだ 普段どうりに
 展開するなら超常現象も肯定することになる
 『なんだ そんなことなら電話しろよ パーティーったってただの
 宴会なんだから 延期でも結構』
 『それはそうなんだけどね ぐぅ お腹が痛いよ』
  今更の発見なのだが るみこは苦痛でも微笑んでいる ひょっと
 すればこんな顔なのだろうか 気丈なのとは少し違うような気がす
 る 変は変だが可哀想なのは確かだ
  とにかく部屋に退避だ 立ち話する必要もないだろう
 『薬でも買ってきてやろうか どうしたもんだかよく知らないが』
 『えへへへへ それじゃね抱っこして なら我慢できるから』
  ベッドの上で丸くなっている様はなんともかわいいものだ 普段
 は切れてしまっている姿しか見せないが 女の子なんだなって少し
 実感したりもする
 『むうむうむう ぐるるるるるる』
 『こんな事で構わないのか 満足ならいいんだけどな 断りの電話
 を入れておくぞ』
 『あいや それには及ばぬと思うな いてててて』
  体を離して立ち上がろうとする すると丸まった状態でなにか喋
 っている
  今夜は本当なら友人を集めての披露宴の予定だったのだ 主賓の
 るみこが欠席なら なにも無理して開く必要はない たいしたイベ
 ントでもないから延期が妥当だろう
 『一緒にいてやるよ その方がいいんだろ』
 『いやいや それがそうとも断言できないな 周期的にうっとうし
 くなるから 総合的にはいない方がましだよ』
  抱けと頼んでおきながら なんという言い草だろうか 普通だと
 思った途端にこの論理展開だ 慣れてはいるが困った娘だ
 『なんだそれは それなら部屋で寝てればいいだろ』
 『今はね いてくれるのがいいんだよ くぅ 抱っこだよ』
 『すげぇわがままだよな まあ 大変なのは少し理解できるがな』
  文句を言ってやろうとして辞めた るみこはへらへら笑っている
 が 額には脂汗が浮いている わがままなのも仕方がないだろう
  どうしてやるのが良いのかわからないので 丸まった背中を後ろ
 から抱き締める
 『ふむ なんだかしおらしいな おとなしいるみこもいいもんだぞ
 元気じゃないときもあるんだな』
 『ぐうぐう うるさいよ そろそろうっとうしくなってきたからね
 出掛けちゃわないと暴れるよ』
 『なに言ってるんだかなぁ 暴れるわけ 言い始めたら聞かないか
 らな 本当に良いのか』
  るみこの体がもぞもぞ動いている なにの周期がやってきたのか
 知らないが 人の部屋で勝手なものだ るみこがこの部屋で寝てる
 光景は珍しいことではないが でて行けってのは酷いのではないか
  ひとりで出席しても仕方がないが 飲み会は嫌いじゃなし うる
 さい女がいないなら 存分に飲んで騒ぐのも良かろう
 『出掛ければいいんだよ かわいい奥さんを残してね ふーんだ』
 『どっちなんだよ 良いようにしてやるぞ』
 『ふみゅぅ お腹が痛いんだもん だから作ってきたんだよ』
  るみこはなにか話しながら腹の辺りをごそごそしている 痛いか
 ら作ってきた物ってなんだろう 普通に考えても無駄だ
 『寝て待ってるからね ひとりで飲み会に行くと 飲みすぎるのを
 危惧してるわけだよ いててて 良くできた奥さんだよね』
 『なにを言ってるんだ なにか作ってきたのか』
  飲みすぎる云々はさすがに勘のよいところだ るみこは取りだし
 たものを片手で差しだす なにか小袋のようなものだ
 『ふむむ 朝から作ってたんだよ これは泥酔防止のお守りなので
 あった おやすみ』
 『泥酔防止のお守り なにを考えて おいおい』
  それっきりるみこは喋らなくなった 朝からお守りを作っていた
 というのだろうか
  生理が辛いのは理解できる 逢ってから送りだしたい気持ちもわ
 からなくはない だからといって朝からお守りを作っていたのだろ
 うか 行動原理が理解できない しかしなにやら真剣なのであろう
  しばらくその場でるみこを眺めていた
 『よくわかんないが 出掛けることとしよう あまり飲まないで帰
 ってくるから 本当に寝てしまうのがいいぞ』
  るみこは小さく頷いている その仕草があまりにかわいかったの
 で 最後にもう一度しゃがみ込んで抱き締める るみこは小声でつ
 ぶやいていた
 『中身は見ちゃ駄目だよ 効果がなくなるからね むうむう』
 『はいはい わかったわかった それじゃ おやすみだな』
  頭を撫でて部屋をでた 既に約束の時間は過ぎている 友人ばか
 りとはいっても あまり不義理なこともできないだろう
  厚手の布で作られた小袋は 赤いリボンで閉じられている 表に
 は徳利マークと禁酒の文字 変なところで器用なのだ 見るなとは
 言っていたが こっそり中身を覗いてみた
  中身は硬貨が4枚 1円玉で4円 4円と酔えんを掛けているの
 か なにを考えているのだろうな

  かわいいお守りを握り締めて 駐車場に向かった 5月の夕日は
 とても綺麗だった





             》 しびる 《
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(のりこ)>あいかわらず異常にテンションの高い『るみこちゃんシ
      リーズ』です でもちょっとダウンしてます
(しびる)>こういうテンションのキャラはあれだ めんどうだな
(のりこ)>危ないことをさらっと断言されてますが
(しびる)>んー だってさあ
posted by 篠原しびる at 22:34| シンガポール ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 連作系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

連作05 既連作02 ただいま

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 種別 連作系第05期 戯連作02
 題名 『 ただいま 』
 初出 ニフティサーブ/FJAMEA/18番会議室
    1995年05月23日01時49分
 注釈 行頭スペース+30W
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SUBJ:【既連作】02 ただいま

 Sibi Temperate V.4.1 (space+30words)

 終わりから始めよう 既連作 #02(短編)




           『 ただいま 』


                        作:しびる





  帰省シーズンから少し遅れて車を走らせる 午後3時 昼過ぎの
 高速道路は緩やかな停滞 こまめに車線を替えればそれほど停車せ
 ずに進むことができる 助手席の妻が欠伸をした
  マンションから妻の実家までは車で4時間あまり 昼食を採って
 から出掛けたのでちょうど中間地点か 夕食までには到着するだろ
 う 後部座席には子供がふたり
 『親父さん 怒っているだろ』と妻に話し掛ける『教えてくれなき
 ゃわからないからな』
  少し俯いて目をこする妻が答える
 『むぅ 構わないわよん 全部わかってて怒ってるんだから そー
 ちゃんが気に入らないんじゃなくて』
 『俺って気に入られてないのか まなみんちの風習はよくわからん
 な 今更だが』
  妻の実家では先だっての帰省シーズンには 子供を連れて訪問す
 るはずだと考えていたらしい 下の娘が生まれて1年 そう度々顔
 見せってものでもないだろうに 折に触れての薮入りは地域の風習
 なのだそうだ
  そんな理由での時期外れの帰省 土日1泊旅行も楽じゃない
 『あはは だから嫌ってないって言ってるでしょ あたしは独り娘
 だから そーちゃんがかわいいのよ』
 『変な理屈だな 普通は逆だろ 憎き誘拐犯じゃないのか』
 『お父さんはね 息子が欲しかったのよ 複雑な愛情よねぇ だか
 ら嫌ってるわけないの』
  そう言って妻は笑っている ウインドゥを開けてタバコに火を点
 ける 少し考えて反論
 『まなみは娘だからな 血縁者の観点は甘いんじゃないのか 俺な
 んか冷たくあしらわれてるって気がするぞ 他人だからな』
 『淡白なのよ 愛情を表面に表さないタイプね あははは 不器用
 なのよねぇ 誰かさんと同じで』
 『俺って愛情に溢れてるだろ あいかやさいかには優しい爺さんだ
 けどな』
  そこまで話して俺は沈黙する 俺は言葉にしながら考えがまとま
 るタイプなのだ 妻もその辺は熟知している なんと言っても長い
 つき合いなのだ
 『うふふん 大人だよね 自分の経験則から他人を類推できるんだ
 もん あははは 同じだよ そーちゃんもね』
 『ううむ どんな気分だろうな』
  後部座席の娘達は眠っている 長女のあいかは8歳 次女のさい
 かは満1歳 さすがにこれ以上は無理だな つまり俺の子供は娘が
 ふたりってわけだ 親父さんの気分は嫌でも思い知ることになるだ
 ろう
  娘婿 さてどんなふうに接するのか
 『そーちゃんも男の子が欲しかったかな うふふ もうひと頑張り
 いこうか 無理じゃないかもってお医者さんは言ってたよ』
 『俺が無理だよ 確かに自分の子供に会社を継いでもらいたいって
 気分はあるがな 娘婿に譲って楽隠居だな』
  俺が経営している設計事務所は既に社員80名以上 他人に譲る
 のは惜しい気がするが 娘達のためなら仕方がない
 『継がないって言うかもよん 金髪の芸術家がさぁ パパさん お
 嬢さんを下さいってね 絶対に許さないわけ』
 『俺はさ そんなに非常識じゃなかったぜ 融資を頼みに行っただ
 けじゃないか』
 『充分に非常識だよ 結婚の承諾と借金を同時に頼み込むなんてさ
 持ってけドロボー状態にも程があるよ 呆れるわね』
  娘が結婚する 理屈では理解していても具体的な話題にすると妙
 なものだ 話しているうちにどんどん混乱してくる 経験則と言っ
 ても観点の相違は乗り越えられない
  少し話題を戻そう あまり先のことを考えると頭がおかしくなる
 『親父さんとも長いつき合いだよな しかし未だに理解できないこ
 とがある 完全迎合は不可能じゃないか』
 『薮入りの件のこと それだって気にしなくていいよ 氏神祭りな
 んて奇習の一種だもん 適当に合わせてればいいのよ』
 『名字を奉ってるんだろ そう言えば毎年あまり参加してないよな
 なんでまた今年は怒ってるんだろ』
  妻の実家の周辺地域では 理解不能な風習が多く残存しているの
 だ 例年隔年周期的なもの 全部に参加するには永住するしかない
 結婚前はそんなこと聞かされていなかったが 今更どうにも仕方が
 ない
 『話してなかったっけ 十何年かに一度の当番だったらしいね 一
 応は断ったんだよ 仕事だからって 帰属意識が強いのよ』
 『なんだよ 結婚すれば俺の姓だろ その調子ならそのうち世界中
 がお前んちの子孫になるぜ』
 『あははははは そーちゃんにそんな繁殖力があるかしらね 父親
 の理想郷なのよん だから適当にね』
  双方の文化に折中な妻は構わないだろうが 俺なんか未だに面食
 らうばかりだ 自分の実家とも疎遠なのに義理の家族に煩わされる
 なんて まあ義理だからこそ義理があるのだが
 『なんだか面倒だな』
 『簡単なことじゃない 少し姿勢を変えればいいのよ それだけで
 すべて解決 あはははは 問題なし』
  なにが簡単なものか 妻の実家と付き合うほどの苦労が他のなに
 に劣るというのだ 実際今日だって予定を曲げての帰省 訪れたと
 ころで苦虫潰しの義父 仕事の苦労の方が数倍楽だ
 『お前はいいよな あいか達にしたって血縁だ 他人は俺だけじゃ
 ないのか 肩身が狭いよなぁ』
 『あはははは それを変えればいいのよ まずは挨拶からね 父親
 の心理なんて簡単よねぇ』と妻は笑う『そーちゃん自身に置き換え
 て考えるべし』
 『ふーむ なるほどな わかったよ 言えばいいんだろ』
 『みんなで揃って大きな声で叫ぼうね ただいまーってね』
  娘が他人になる不快感 譲歩ってやつだろう そんな言葉で解決
 するのなら いくらでも叫ぼうではないか
 『ただいま か』
  そろそろインターチェンジが近い 俺はずっと魔法の呪文をつぶ
 やいていた





             》 しびる 《
+++++++++++++++++++++++++++++++
(のりこ)>さいかちゃんはお眠りデビューっす 満1歳のさいかち
      ゃんもなんだかんだいろいろあって1児のママです
(しびる)>読み返すまで忘れてたなあ んー
(のりこ)>あまりにもなにげない風景ですからね
posted by 篠原しびる at 22:33| シンガポール ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 連作系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

連作05 既連作01 おはよう

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 種別 連作系第05期 戯連作01
 題名 『 おはよう 』
 初出 ニフティサーブ/FJAMEA/18番会議室
    1995年05月20日02時58分
 注釈 行頭スペース+30W
+++++++++++++++++++++++++++++++
SUBJ:【既連作】01 おはよう

 Sibi Temperate V.4.1 (space+30words)

 終わりから始めよう 既連作 #01(短編)




           『 おはよう 』


                        作:しびる





  意外とすっきり目が覚めた 体温は充分上昇してるし眠気もない
 お腹は空いているけど倦怠感は不快ではなかった それもその筈で
 既に午前9時を過ぎていた 完全に遅刻だ
  目覚ましは止められずに放置されていた お母さんは起こしてく
 れなかったようだ 諦めよう 今日は欠席に決定
  それでも眠り続ける体調ではないので起き上がる ぼんやりとし
 ているうちに条件反射で制服を着ていた 習慣ってのは恐ろしい
 『おかーさん なんか食べる物』
  キッチンには誰もいない そう言えばお母さんは出掛けるって話
 していた だから寝過ごしたのだ 仕方がないな
  冷蔵庫を開けて内部を物色する とにかく朝食だ 血糖値が上が
 らなければ頭が回転しない なにも考える気がしない はあ
  発見できたのはシーチキンの缶詰 マヨネーズを掛けてテレビを
 つける なんだかベタベタして気味が悪い それなりに美味しいの
 は確かだけどカロリーは高いだろうな 構わないけれど
  テレビを見ているうちに10時になってしまった 学校にも行か
 ずに制服を着てテレビを見ている あまりの不毛感に情けなくなっ
 た やっぱり行こう 遅刻でも構わない
  鏡を眺めると顔がむくんでいる 寝癖を直そうとして諦めた 制
 服がかわいいのが救いか ああ面倒臭い ふむ
  あたしが入学する年に制服が変わって 1年の時にはかなり目立
 ったものだけど 2年になれば全体の66%が新しい制服なのだか
 ら 既に多数派 面白くない
  ちなみにネクタイ代わりのリボンは5色から選べるのだ 学年と
 か派閥とかリボンの色の選択は面倒だけど あたしは関係ないから
 好きに選ぶ ダークブラウンのジャケットには真紅が似合う
 『け せらぁ せらぁ なるようにーなるぅ』
  鼻歌を歌いながらエンスィの肩紐を短く括る 通学用なら手に持
 つのが基本だな モデーロのローファーに足を突っ込んでドアを開
 けた
 『ぐっ こりゃぁ着く前に溶けるな』
  5月の快晴 不規則な生活には酷な陽気だ クラクラと眩暈を感
 じながら目を伏せる 完全に日陰者 手探りで自転車を探す
 『あららん まみこちゃん 余裕の重役通学ね』
  道路の方から声が聞こえる 確かめようにも目が開けられないの
 だ まあ確かめる必要もないのだけど
 『学校があたしを呼んでるのよ ケッターマシーンならお昼までに
 到着するもん』
 『あははは 元気よねぇ なんならウチのに送らせようか?』
  声の主は近所のちはるさんだ ちはるさんは不動産関係の仕事を
 している 旦那さんは仕事をしていない しかし美形なのだ ふむ
 『危ないからヤダ 愛人にならないかって誘われたよ』
 『ほう それは聞き捨てならないわね あははははは』
  日差しに目が慣れたので自転車を引っ張りだす 楽しそうに笑う
 ちはるさんと並んで歩く ちはるさんは美人だ
 『ちはるさんも仕事なの?』
  僅かの風にちはるさんの髪が揺れる 長い髪は手入れが面倒だろ
 うな 良い香りが漂う
 『法務局に寄っていこうと思ってね 今度の物件 不在地主が絡ん
 でるのよ それから交渉ね』
 『色仕掛けで?』
 『あはははは よくわかってるじゃない お色気作戦よ』
  ちはるさんはカッコイイ 美人だし仕事もバリバリだし 働かな
 い美形の旦那も理想的なのだ ちはるさんはあたしの一番の仲良し
 『あたしも一緒に行ってあげようか? なんだかわからないうちに
 ハンコを押させればいいんでしょ? 得意分野だよ』
 『うふふん 卒業したらウチに来なさいよ 優秀な人材しか採らな
 いから ほら! 頑張って行ってきなさい あははははは』
  ちはるさんは微笑んで手を振る 本当のところは面倒臭かったけ
 ど少しやる気も沸いてきた
  ひとりになったので自転車に跨る 向かい風にスカートが翻りそ
 うになる 誰も見ていないから構うもんか 全力失踪
  しかしシーチキンパワーもここまでだ 突然襲う倦怠感 太陽は
 容赦なく照りつけるし道のりは果てしない おまけに登り坂 仕方
 がないのでババチャリモードで押して歩く
  時間はもうすぐ昼食だろう 遅刻は構わないけど昼食抜きは辛い
 授業中に学食を確保して悠々自適作戦だが そうもいかないかもし
 れない 遅れると混雑するのだ 別の作戦を考えるのが正解だな
 『おや? まみこじゃん 珍しく登校か?』
  あたしの脇でバイクが停まる 声を掛けてきたのはプーのかおり
 去年までクラスメートだったのだ
 『ふにゃ 死にそうだ CBR買ったの?』
 『男に貰った 乗せてってやろうか』
 『そりゃ助かるぞ この調子じゃ 昼食は食いっぱぐれだもん』
  救けに船とはこれいかにだ 自転車を歩道に停めてバイクに跨る
 かおりのお腹に手を回した途端に急発車 楽しくなって大声で叫ぶ
 『やっほう! こーれはラクチンだ!』
  かおりの運転は乱暴だけど 別になんだって構うものか 昼食に
 間に合えばそれでいいのだ 途中でかおりがなにか話していたけど
 聞こえなかった
  予定より早く到着して校門の前でバイクを降りる
 『ありがとね 食事の恩義は一生忘れない あははは 友情』
 『ふむ 友情 頑張ってくるがよろしだ』
  つぶやいたかおりは走り去った これはこれでカッコイイな そ
 れはとにかく席の確保だ 昼食が重要である
  新館には寄らずに直接学食に向かう どうせ4時限目はすぐに終
 わるから意味がないのだ 誰もいない学食にひとりで座っていた
 ひとりでぼんやりしていると睡魔が襲う なんだかとても眠い 5
 月の気温は催惰眠性の効果が いや それよりも ふむ
  あたしは眠ってしまったようだ 最後の記憶は終業のベル
 『まみこってば またこんな所で寝てる しょうがない娘ねぇ』
 『ふにゃ? あやややや? なんだ?』
  聞き覚えのある声に起こされた なにがなんだかわからない こ
 こはどこだ あたしは誰だ ふむ
  周りを見渡して目をこする とにかくあたしは挨拶をした 相手
 が誰だろうが挨拶は肝心だ
 『ふあ おはよう』
 『暢気よねぇ 既に正午なのであった あはははははは』

  そうかお昼ご飯の時間だったんだ そうか ふむ





             》 しびる 《
+++++++++++++++++++++++++++++++
(のりこ)>まみこ総裁登場の巻ですね RRTシリーズの前身です
      か 最初はかなり飛ばしてたまみこ総裁っす
(しびる)>あのシリーズは毎回飛ばしてるけどな 締めなきゃなあ
(のりこ)>締めるおつもりがございましたか ほほう
(しびる)>あるのよ それがまた意外なことに
(のりこ)>真剣に収束させますか? かなりマジに?
(しびる)>あー まあ あと5年くらいの間には とか まあ
(のりこ)>そんな感じですよね ちなみに今回から既連作の始まり
      です 通称あいさつシリーズ ってきのうも言ったかな
(しびる)>なんでもいいからどんどこ進めよう
posted by 篠原しびる at 22:32| シンガポール ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 連作系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年12月28日

連作04 戯連作29 独獨湯

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 種別 連作系第04期 戯連作29
 題名 『 独獨湯 』
 初出 ニフティサーブ/FJAMEA/18番会議室
    1995年05月18日02時47分
 注釈 行頭スペース+30W
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SUBJ:【戯連作】29 独獨湯

 Sibi Temperate V.4.2 (space+30words)

 有無を言わせず世界の果てまで 戯連作 #29(短編)




           『 独獨湯 』


                        作:しびる





  外来患者の対応に午前中は忙殺された 午後からは一応の予定は
 あるのだが 事実上は自由時間 整理しなければならない書類の量
 はそれほども多くない 白衣のまま部屋をでた
  医師及び看護担当者 それに施設職員の総数は3千人あまり 入
 院患者と日中の外来患者を含めれば 正午間際の人口は2万人を越
 える 既に病院とは表現できないだろう 大規模な人員の常駐は行
 政サービスだけではなく各種の産業も混在させる これは特殊な形
 の都市である
  現在いるのはS8棟 施設全体から見れば最南端に位置している
 広い中央通路を歩いてステーションに合流する IDカードを提示
 して乗り込んだ 施設内は鉄道で移動するのが普通である
  乗り込むのと同時に列車は音もなく動き始めた 僅かな振動に体
 を任せて少し眠ったしまったようだ
               □
  車内放送で目が覚める すぐさま研究棟に向かった 夕食の予定
 までに論文の基礎データを仕上げなければならない
  生活の便宜上仕事をしているが できることならば研究だけに没
 頭したい 院を卒業して3年になり婚約者もいる 真剣であっても
 やはり研究生活は遊びでしかないのか 自分を責めるのはよそう
               □
  被験者は女性 年齢は24歳と11カ月 目立った病歴はなく精
 検部からの報告でも身体的な異常は認められない まったくの健康
 体だ 不眠症を訴えての来院 治療は既に終了している
  体裁は大学病院であるから 来院患者のカルテは基本的に研究用
 のデータである 詳しく調べる者もいないだろうが診察券には研究
 への流用が第一の目的であると記されている この資料もその類で
 ある
               □
  カルテを眺めながら解析器の電源を投入する 研究棟のメインシ
 ステムとリンクした頃に画面を眺めた 必要な機能を取り込み室内
 のシステムが完全に独立した 機密保持の意味合いもあるが他シス
 テムへの感染防止も考慮しての処置だ
  亜空間ジェネレーション理論は既存の理論の集合体である 基礎
 理論の分野は既に世界の果てまで研究されている 新しい理論は応
 用分野でしか開拓されない 組み合わせか改良か どちらにしても
 レゴブロックのような作業である つまりは積み木遊びだ
  微調整が安定したのを確認してフルフェイスの端子を被る フォ
 ーカス調整用の光点を見つめていると睡魔が襲う 最近どうにも睡
 眠不足なのだ
               □
  青い閃光に目が覚める 既に投影は開始されていた これは被験
 者が睡眠中に見ていた夢の再現である
               □
  夢を見る この現象は身体体積に比例した頭脳量が一定の値を越
 えた生物に特有の精神的現象である 現在ではある種の爬虫類以上
 での発現が確認されており それ以下では起こらない
  夢を見る まるで映画を見るように語られる現象だが 実の所は
 断片的な概念の残留現象である 見ているのではなくて思いだして
 いる もしくは想像している 映像を見るわけがない睡眠中は感覚
 器の機能は最低まで低下しているのだ
  既存の理論であった亜空間ジェネレーション理論 本来は星間航
 法において多重に混在する重力干渉を映像化する技術であった そ
 れを精神医学に応用しようとしたのが今回の研究
  脳内の微弱電流を感知してパターン化 膨大な映像ストックから
 類似画像を選別してアニメーション処理 更に3D処理を施して実
 験者にも判別できるようにする
  まさに夢を見る 他人の夢を見る機械装置
               □
  青い世界が広がる 夢の中に特有な遠近感の異常 遠くにあるも
 のも一瞬にして間近に迫る 青が次第に緑に変化する これは広が
 る草原か 彼方には山脈 頭上は青い空
  被験者は草原の中を歩く 誰かがいるのかしきりと右側を眺める
 感情の高まりが音声に置換される なにやら低く唸るような音
  夢の中の登場人物が映像化される 少年だ 表情までは描写され
 ないが少年の先導で被験者の視界が移動する タイプ道案内 夢の
 分析では顕著に確認されている存在だ 自分自身であることも多く
 大抵の場合は不安要素の具現化 知らないことは夢にも現れない
  少年の呼びかけで彼方の山脈を眺める あまりに抽象的な概念は
 音声に置換されない 突然山脈が巨大に描写される その向こう側
 から白いガスの塊が流れてくる なにかの意味があるのか ガスの
 塊は草原の中央に静止している
  再び少年が現れる 少年が足元を指さす 少年の笑い声だけが音
 声に置換される 唸るような低音に甲高い声が重なる
  視界が足元に移動する ゆっくりと変化する映像に動物の頭部が
 現れる 地面から頭部だけを露出させて動物は蠢いている 巨大化
 した頭部は腐敗していた 白い昆虫が無数に這い回りそれでも頭部
 は蠢いていた
  突如として映像が変化する 目前には幅数メートルの溝が存在し
 ていた 本来の水の色よりもかなり青く底を感じさせないぐらい澄
 んでいる 狂ったように笑いながら少年が飛び込み そして水中に
 消えてしまった
  その映像を後に無意味な光線の渦が続く 検出される領域を逸脱
 したのか それともなにか別の意味があるのか 眺めていると睡魔
 が襲った 少し眠ってしまったようだ
               □
  耳をつんざく高音に目が覚めた 再び映像は復活していた 被験
 者は非常に不快な精神状態にいるようだ それが音声に置換されて
 いるのだ
  目前に壁が広がる 壁には無数の貝が付着している 見上げられ
 た頭上には青い空が広がる ここは先程の溝の中か 猛烈な速度で
 空が小さくなる それに合わせて不快音も高まる タイプ落下 す
 べての夢に共通した落下概念 かなりの高確率で夢からの脱出の合
 図になる 身体機能の復活が影響しているとの学説がある
  しかし夢は継続した 完全に暗闇の中で高音だけが響く 再び閃
 光が煌めき白い光に覆われた
  白い曖昧な映像が次第に形になる どこか白い室内に被験者はい
 る 眺めながら既視感に襲われた これはまるで診察室ではないか
  被験者は不眠症で通院していたのだから それが具現化されたと
 ころで問題はない 本来被験者の知り得ぬことは現れないのだ
  そして映像が変化する 既に少年は登場していない 継続してい
 るようでも先程の続きではないのだろう 室内の映像が目まぐるし
 く変化して通路にでる 見覚えのある通路だ やはりどこかの診察
 なのだろう 遠近感の異常がピークに達する 壁や床や照明が不規
 則に拡大されて歪み色彩も変化する 音声も最高レベルで鳴り響き
 あまりの変調に中断しようとして そして間に合わなかった
               □
  なにか夢を見ていた 曖昧なそしてリアルな夢
               □
  どれだけの時間気を失っていたのか 目前にはノイズだけが表示
 されていた なにか夢の残像が頭の中を支配していた
  試験データを書類にするため端末を外す 時計を眺めると既に約
 束の時間を過ぎていた 慌てて電源を切ると立ち上がった
               □
  夢を見る どこまでが夢でどこからが現実か 夢のような生活に
 現実感溢れる妄想 判断基準は観察者ではない 観察者もまた夢の
 住人かもしれない すべては夢か それともすべてが現実なのか
  立ち上がった途端に未視感が襲う 妙に浮遊した感覚 疲れてい
 るのかもしれない
  時間に遅れていることも厭わず座り直す そして少し眠ったよう
 だ
               □
  夢の中に登場したのは髪の長い女性 彼女がタイプ案内者なのだ
 ろう 彼女が不安要素だと思うと少し可笑しかった
  今度目が覚めれば彼女にそのことを話してやろう とにかくは早
 く目覚めなければ 方法は知っていた どこかから飛び降りればい
 いのだ 簡単なことである

  早く起きなければ 時間がない 早く そして






             》 しびる 《
+++++++++++++++++++++++++++++++
(のりこ)>なんか不思議なお話で
(しびる)>たしか夢関係をいちど詰めてしまおうという企画だった
      と思う 夢は短編と相性がいいからな
(のりこ)>夢オチは最低ですけどね ちなみに今回で長丁場だった
      戯連作は終了です 次回からは4文字ひらがなタイトル
      でお馴染の『既連作』が始まります 別名あいさつシリ
      ーズとも呼ばれてます
(しびる)>縛りモノはいいよねえ
posted by 篠原しびる at 17:28| シンガポール ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 連作系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

連作04 戯連作28 CAUTION!

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 種別 連作系第04期 戯連作28
 題名 『 CAUTION! 』
 初出 ニフティサーブ/FJAMEA/18番会議室
    1995年05月17日03時57分
 注釈 行頭スペース+30W
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SUBJ:【戯連作】28 CAUTION!

 Sibi Temperate V.4.1 (space+30words)

 有無を言わせず世界の果てまで 戯連作 #28(短編)




         『 CAUTION! 』


                        作:しびる





  気配に気付いて見上げた瞬間 残像だけが僅かに見えた その後
 は閃光が輝き 爆音に驚き地面に倒れ込んだ
  目蓋に残る残像は そう飛び掛かろうと目を見開いた男性だった
 両手両足を大の字に開き 物凄い形相は鼻孔と歯茎と血走った白目
 あたしと目が合った瞬間に男性は大爆発したのだ 驚いたままあた
 しは気を失った なにがなんだかわからなかった

  自分で言うのも何だけど あたしは普通のOL 美人だって自負
 はあるけど彼氏はいない 来月で25歳 職場はマンションから電
 車&徒歩で1時間 その帰宅中の出来事だった
  商店街の真ん中だったから 周囲にはたくさんの通行人 爆風が
 収まった頃に意識が戻った
 『ぐ‥‥なによ! なにが爆発したわけ?』
  道路に座り込んであたしは叫んだ 事件か事故かそれ以外なのか
 とにかくあたしは驚いていた しかし周囲の反応は穏やかだった
 『見たでしょ?』と通りかかった女の人を捕まえる『人が爆発した
 のよ どかーんって あたしってば驚いて』
 『お家がわからないの? お母さんはどこ? ごめんね忙しいの』
 『いや‥‥そうじゃなくて‥‥』
  通り過ぎる人達と同じく白い視線 あきらかに異端視されている
 誰も見ていなかったのか 物凄い爆発だったのに
  あたしはその場で考える 白昼夢+貧血失神 それとも脳味噌の
 タガが外れたのか 周囲を見渡しても男性の痕跡は見つからない
  あたしは立ち上がった 謎の解明よりは体裁が重要だったから

  5月の風はこんな街なかだって爽やかだ 昨日の出来事を検証し
 ながら道路を歩いていた やはり白昼夢の可能性が大きいだろう
 少し疲れているのかもしれない これでも仕事には真剣なのだ
 『‥‥ぞ!』
  またもや気配 誰かが叫ぶ語尾だけ聞こえた 振り返ると同時に
 大爆発 今度は身構えていたのだ
  昨日とは違った男性 しかし同じ形相 真っ直ぐあたしを睨んで
 飛び掛かる瞬間だった
  閃光に目を細めながらも観察していた ほぼ瞬間 僅かの時間の
 中で男性の体が輝き四散した そして瞬時に縮んで点になって消え
 た 声が聞こえたのは爆発以前か以後か
  あたしはとにかく走りだした なにがなんだか尋常じゃない

  息を切らせて走り続けた 考えている余裕はない とにかくなに
 かに襲われている 逃げるのだ 本能の行動
  誰かに助けを求めよう あたしは見つけた交番に駆け込む 非常
 事態はお巡りさんの仕事なのだ
 『なんだかわからないんです! とにかく爆発が』
 『‥‥たわ!』
  まったくの突然 あたしとお巡りさんの間に人間が現れた 今度
 は女性だ しかし形相は変わらない 同時に爆発そして消滅
 『あああ! また!』
 『どうかしたのですか? なにが爆発ですか?』
  すぐに理解した この現象はあたしにしか見えないのだ 突然現
 れる人間も閃光も爆音も 驚いているのはあたしだけなのだろう
  頭が変になったのだろうか そしてまた
 『‥‥けたぜ!』
  間髪入れずに爆発する人間 どうしてみんな血眼なのだろう 気
 が狂うってのはこんな感じだったのか 強迫観念が助長されるとこ
 んな光景が展開されるのかもしれない
  心臓はドキドキしているが少し慣れた

  頭がおかしくなっても仕事は休めない 変な格好はしていないよ
 うなので 自分で普通だと考える姿勢で歩く 狂った価値観の正常
 が はたして正常な価値観の正常なのか 考えても無駄だ あたし
 は狂っているのだから
  電車の中でも歩道を歩いていても 突然現れた人々は爆発して消
 えていった これで通算何人目だろう 全員が血眼で睨み付けてい
 た 恐怖心より孤独感が心を襲う とても辛い
  誰もが叫んでいた しかし内容は理解できなかった 現れると同
 時に爆発するのだ 聞こえてくるのは語尾ばかり
  そんな現象は終業時間まで続いた 仕事なんか手につくはずはな
 かった 誰にも見えないらしいが あたしの周囲には人間が現れて
 は爆発していたのだ

  爆発人間達に囲まれてマンションに帰った 既に数百人の爆発に
 立ち会っただろうか 明日は休日なので病院に行こう あきらかに
 精神の病気である 滅入りながらドアを開けた
 『‥‥のはずなんだけど‥‥見つけた!』
  ドアを開けたと同時に男性と目が合った 驚いたことは驚いたが
 状況はそれまでと少し違っていた 男性が爆発するまでに僅かの時
 間があったのだ
 『それって?』と尋ねたときには男性は四散していた『なにを見つ
 けたか‥‥って聞いてるのに 無駄か』

  そして少しずつ状況は変化していった 人間が現れて爆発するま
 での時間が微妙に長くなっていったのだ ある人は瞬間に爆発した
 が そうでない人は3秒くらいは爆発しないでいた
  バスルームに現れた女性はかなり長かった
 『この辺りのはずなのに‥‥』
 『あのさあ 聞きたいんだけど‥‥』
  声を掛けたが無駄だった すべての人間に共通しているのは あ
 たしの存在に気付くまではまったく違った世界にいるみたいだって
 こと この女性も壁なんか関係なしに徘徊していた
  そして視線が絡んだ
 『‥‥あ 見つけたわよ!』
  瞬間に爆発 なにか残念そうな表情を残して女性は四散した

  少しずつ理解してきた とにかくはあたしを探しているようなの
 だ あたしを探している人々は違う世界にいて それはあたしにし
 か見えなくて 発見されると同時に爆発そして消滅
  通勤途中だって仕事中だって 食事をしていてもベッドで寝てい
 ても 色々な年齢の人々が現れては消えていった 誰にも見えない
 らしくて相談する気にもなれない
  精神科を訪れるのを億劫うに感じながら数日が過ぎた 気が狂っ
 ているにしては日常生活に支障がなかった

  最初は爆発人間だとは思わなかった その男性はやつれた表情で
 道を歩いていた なにかぶつぶつつぶやきながら その男性はあた
 しの脇をすり抜けようとした
 『早くしないと時間がない どこだ どこだ』
  なにかの予感に一瞬身を避けた瞬間 男性と視線が絡んだ 瞬間
 あたしの動きは対応しきれなかったのだ
 『おう! 見つけたぞ! おおおおお!』
  普段ならここで男性は大爆発して消える しかしこの男性は違っ
 ていた 血眼の形相で駆け寄り そして両手を伸ばした
 『なによ! なんなのよ!』
 『うおおおおおおおおおおお!』
  男性の両手は実物であった 叫びながら延ばされたその手はあた
 しの肩を掴んだ あたしは恐怖に叫んだ こいつはただの変質者か
 爆発人間だとタカを括っていたのが間違いだった
 『やったぁ! 俺は成功したんだぁ! 助かったぞ!』
 『やめてぇ 放してよ!』
 『うわはははははははは 助かったんだぞ わはははははははは』
  あたしは必死に振りほどこうとした しかし男性の力は異常に強
 かった 有無を言わさず肩を掴んでいる
  そして一頻り馬鹿笑いした男性は 突如として静かになった そ
 れまでの表情とは一転して なにやら不気味に微笑んでいる
 『普段なら女は皆殺しだが お前は殺さずにおいてやるぜ 早くサ
 インしろ 急がねえと殺すぜ』
 『なによ‥‥サインって‥‥』
  男性は肩を片手で掴んだまま書類を差しだす なんだかわからな
 いまま あたしは震える手でサインをした 言うことを聞かなけれ
 ば本当に殺されそうな表情なのだ
 『それじゃ また来るわ そん時も頼むぜ わははははははは』
  男性は複写を手渡し消えてしまった あたしは紙切れを掴んだま
 ま呆然としていた
  その複写用紙には簡単な言葉が記されていた



            CAUTION

    時間内に発見できれば減刑します 頑張ってください

                       懲罰執行省



  




             》 しびる 《
+++++++++++++++++++++++++++++++
(のりこ)>ひどいお話ですね ぶっちゃけ最低ですよこれ
(しびる)>そうか? こうして読み返してみると それほどじゃな
      いな インチキSFらしいケレン味たっぷりでさ
(のりこ)>ちなみにケレン味は外連味と書きます
posted by 篠原しびる at 17:26| シンガポール ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 連作系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

連作04 戯連作27 事後承諾

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 種別 連作系第04期 戯連作27
 題名 『 事後承諾 』
 初出 ニフティサーブ/FJAMEA/18番会議室
    1995年05月15日01時58分
 注釈 行頭スペース+30W
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SUBJ:【戯連作】27 事後承諾

 Sibi Temperate V.4.1 (space+30words)

 有無を言わせず世界の果てまで 戯連作 #27(短編)




          『 事後承諾 』


                        作:しびる





  ファミレスで夕食を食べてあたしの部屋にいる 散らかった部屋
 にはもはや部屋の一部と化した彼が座っている こいつがいるから
 片付かないのだ
  あたしは基本的に綺麗好き 我慢できなくなって叫ぶ
 『どうしてそんなに散らかすわけ? 不必要なものは捨てる だし
 た物は元に戻す 小学校で習わなかったの?』
 『俺は私立だったからな 教科書が違うんじゃないのか 薄いのを
 頼む 砂糖は多めな』
 『ちゃんと人間の学校に通ってたのかしらねぇ 濃いのを作るから
 お湯でもなんでも入れなさい そこは駄目よ 宝箱の中はミミック
 だもん』
  積み重ねられた雑誌の上でコーヒーメーカーが湯気をだしている
 彼はテレビ画面を見つめている
 『聖なるほこらってどこだっけ? 確かルビスの守りってほこらの
 中で貰うんだよな いかん! アキナのHPが』
 『どこか島だったわね ほら飲みなさい』とカップを差しだす『す
 んごく薄いわよ 眠れなくても知らないから』
 『構わねーよ 明日は休みだもんな すぐ寝ると怒るくせに』
 『濃度が問題ね すんごく濃いのなら短時間で合格よ そこじゃな
 くてアリアハンの左の海じゃなかったかな』
  画面は真っ青 暢気な音楽に船が浮かぶ 昔の記憶を引っ張りだ
 しながらコーヒーをひとくち
 『見つかんねーな』と彼が振り返る『攻略本を見よう緊急事態だ』
  彼は会社員 銀行系列の子会社でシステムエンジニアをしている
 あたしはフリーのアルバイター 今は結婚式場で派遣社員をやって
 いる 結婚はしてないけど半ば同棲 こいつは寄生虫だ
 『ああ! こぼしてるじゃない! フローリングは水分に弱いんだ
 から もう ほこらの場所は載ってないわよ』
 『仕方がないから虱潰しだな 明日は休みなんだろう?』
  彼は大きなクッションの上で仰け反る パッドを握りながらかわ
 いらしくこちらを見ている あたしはなんだか愛苦しくなって肘十
 字固めの体勢に持ち込む
 『仕事よ 式場は土日が修羅場なんだから こらこら胸を噛まない
 でよ 窒息させてやる あはははは』
 『はふんひゃえひょ くるひい ふがああああ!』
  あたしの胸の下で彼が苦しそうに暴れている 少し体勢を移動さ
 せて彼のお腹に頭を乗せる ごろんと横になって画面を眺める
 『休んじゃえよ バイトなんだろ? 構わねーじゃん』
 『そうもいかないわよん あら全滅ね 所持金50%オーフ!』
 『生き返らせる金がない 棺桶を引っ張って旅にでよう なんか荒
 んだ光景だな そんなに働かなくても暮らせるだろ?』
  彼は部屋を持っていない 会社とあたしの部屋の往復で暮らして
 いる なんにも囚われない性格だから そんなことでいいらしい
 『お姫様だけ生き返らせれば? 絶好のチャンスじゃない 邪魔者
 は棺桶の中だしね 宿屋に泊まろう』
 『死体と一緒で興奮できるのだろうか? クリアする頃には子連れ
 だったりして 怪物と戦ってる場合じゃないよな』
  結婚なんて今更だけど 考えなくもなくもない それに今と変わ
 らないだろう 彼はこの調子だし あたしはあたしだし
 『実家の方はどうなのよ? お父さんの跡は継がないの?』
 『親父は怪物と戦って死んだらしいぜ こんな世界じゃ無理もねー
 よな 諦めてるみたいだな』
 『ふーん 女王様も悪くないかな』と頭をグリグリ『社長婦人も悪
 くないけどさ どっちだっていいや』
 『お前んちは大変だろう? 親父さんは魔法が効かないしな 是非
 ともルビスの守りが欲しいところだ』
  そう言いながら彼が覆い被さる 別にクッションの上だって構わ
 ない あたしのトレーナーの中に彼の頭が入ってくる
 『シャワー浴びてないよ 気にしないだろうけどね』
 『むしろ好きだったりして 勝手にやるから構わないで結構 ああ
 良い香りだな 普段から付けてるわけ?』
 『んん? ふあ?』
  気がつくとあたしの両ももの間に彼の足が潜り込んでいる 質問
 なんかされたって答えられる場合じゃない トレーナーを茶巾絞り
 にされてなにも見えない ずるいけどそれもいいのだ
 『高かったんだからな 節約して使うのが ふむふむ』
 『ふにゃ むむむむむ? だからね』
  胸の辺りからお腹の辺りを彼が舐めまわす その下へってところ
 で少し意識が現実に戻る
 『なんだよ? 17の18の19日だから セーフティーゾーンで
 問題なしじゃないか 構わないけどな』
 『最近は不規則だからわかんないわよ でもそうじゃなくて』
  話している間も彼の動きは止まらない 急に彼の顔が見たくなっ
 たので首を引っ張る 喋れなくされそうなので頭を押さえる
 『でもねいいと思うの 好きなようにしてちょーだい ふふふん』
 『なに言ってるんだろうね ふが 宿屋の周囲は怪物だらけなのに
 いつでも好きにしてるけどな へいへい』
  再び彼は動き始める いつもと同じ手順を体が覚えている クッ
 ションに体を預けて目を閉じる 彼の鼻息だってとてもかわいい
  冒険の途中で子連れになっても 事後承諾ってかたちで構わない
 と思う いろいろ万事解決だし なんたって気持ちがいいからね

  あたしは片手でテレビのスイッチを切った





             》 しびる 《
+++++++++++++++++++++++++++++++
(のりこ)>あー RPGプレイ?
(しびる)>女の子がプレイとか言うんじゃない それにロールプレ
      イングゲームプレイって 意味が重複してるだろ
(のりこ)>事後承諾かあ そゆのもアリですかね
(しびる)>最近の基本になりつつあるよな
posted by 篠原しびる at 17:25| シンガポール ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 連作系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

連作04 戯連作26 ディナーのまえに?

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 種別 連作系第04期 戯連作26
 題名 『 ディナーのまえに? 』
 初出 ニフティサーブ/FJAMEA/18番会議室
    1995年05月13日01時42分
 注釈 行頭スペース+30W
+++++++++++++++++++++++++++++++
SUBJ:【戯連作】26 ディナーのまえに?

 Sibi Temperate V.4.1 (space+30words)

 有無を言わせず世界の果てまで 戯連作 #26(短編)




        『 ディナーのまえに? 』


                        作:しびる





  最近は学校なんかでも懇切丁寧に教えるそうだ 正しい知識って
 のは必要だと思う 男女平等なんて概念もその辺りを正確に押さえ
 なければならないと思う 理屈はそうだ なにも隠すようなことは
 ない
  少し誤解を生じそうだな 言いたいのはそんなことではなくて
 つまりは子供ってのは女の所有物だってことだ 両性の合意のもと
 にふたりの愛情の結晶として生まれてくる そこまでは納得しよう
 しかし子供は女の物だ
  懐いても微笑んでも基本は変わらない

 『なーにふくれてるのよん? せっかくの休日なんだから少しは楽
 しそうな顔しなさい』
 『こんな顔なんだよ』とタバコに火を点ける『まなみはいいよなぁ
 母親だからな』
 『なに言ってるんだか』
  俺は少し不機嫌だった 妻と俺と娘の3人 休日のイベントとい
 っても近所の公園 遠出は問題があるからだ
 『父親って存在に疑問を感じる 失恋は男を哲学者にする』
 『あはははは おいおい 父親+失恋は不倫騒動だよ 言葉を選ば
 なきゃ そーちゃんは誰に失恋したわけ?』
 『失恋は女を現実主義者にする ふむ あの若い女性だ』
  俺はタバコで指し示す 天気が良い5月の公園だ
 『ほう あいかに振られたの? 若いって‥‥小学生よね 現実主
 義者ってのは正解かもよ』
 『衝撃だった もう誰も信じられない』
 『芝居掛かってるな? 甘えたって知らないわよ 30過ぎれば子
 供じゃないんだから あはははははは どうしたのよ?』
 『ふむ あいかが言うんだぜ パパといても面白くないってな』
  俺は肩を落とす 芝居じゃない心底力が抜ける 隣りに座ったま
 なみは馬鹿みたいに笑っている この女は少しも変わらないな
 『反抗期じゃないの? あはははは そうじゃなきゃ本当にそう思
 ってるんじゃないの? 諦めなさい』
 『最初は考えたんだ こりゃぁ女の子として恥じらってるんだなと
 しかし違うんだ‥‥緊張するそうだ 悪い意味で』
 『ふーん あたしが言うのもアレだけど』と振り向く『歳の割りに
 は崩れてないわよ デブじゃなしハゲじゃなし 格好良い方の部類
 なのよねぇ ふふふん ほら喜びなさい』
 『女房に褒められてもなぁ‥‥なんだかなぁ‥‥』

  笑うまなみはフゥと息を吐く 今月初めで40週 長女のあいか
 とは7歳離れた第2子 だから遠出はしない
  ふたり並んで娘を眺める ついこの前まで乳児だったのに子供っ
 てのはすぐに大きくなる 俺も歳を取るわけだ その割に女房は変
 わらない 変な女だ すぐに馬鹿笑いするし
  とにかく天気が良い あいかは砂場で遊んでいる 俺に似て美人
 だ 性格はまなみそっくりだが

 『あいかはね うんしょっと そーちゃんに似て難しい性格なのよ
 波が大きいのよねぇ 感情の』
 『そりゃぁまなみの方だろう? 親父って嫌いなのか?』
  まなみが俺に寄り添う 自分のときはどうだったのか 覚えてな
 いから尋ねる
 『あいかの言ったとおりよ 面白くないのよねぇ 変に緊張したり
 して 怖いんじゃないのよ』
 『なにそれ? 努力してるじゃん 毎日話してるのは‥‥そりゃぁ
 お前の方が多いけどさ 母親の優位性だな』
 『あたしにも責任があるのかもね こう見えても持ち上げてるのよ
 あははは 現実以上にね 嬉しいでしょ?』
  持ち上げてもらってもそれで娘に疎遠に扱われるのなら なんに
 もならない 馬鹿にされても仲良くしたいものだ
 『次は男を産んでくれよな 娘は寂しいぜ? ふたりでチーム作っ
 て 俺なんか部外者だもんな なんだかなぁ』
 『男なら尚更よ あははははは パパさんの宿命ね 心配しなくて
 もだいじょーぶ 間隔を置いてるのよ 良い意味で』
  なにを言っているのかわからない 疎遠に良い意味なんかあるも
 のか 娘は黙々と作業している なにをしてるのか知らないが公園
 の砂場はあまり清潔ではないそうだ
 『どうして面白くないわけ? つまらない男なのかなぁ 自信なく
 すよなぁ あーあ 理想の家族ってこんなのかなぁ』
 『わかってんじゃない それそれ あはははははは』
 『なに笑ってんだよ? 亭主が人生に悩んでるってのに‥‥』

  まなみは大義そうに立ち上がる 重いのだろうそれは理解できる
 ふたり分の体重は熟知している
  立ち上がったまなみはあいかのもとへ歩いてゆく 普段話してい
 る所は姉妹のようだ 理想的な母娘関係だよな 羨ましい なにを
 喋っているのか娘は楽しそうに笑っている 笑顔は女房にそっくり
 だ いいよな やはり俺は部外者だ
  黙って眺めていると まなみが手招きした

 『パパさーん! あはははは かわいい娘が呼んでるわよ』
 『なんだよ? パパも仲間に入れてくれるわけ?』
  娘は再び作業を続けている 砂をこね繰り回して楽しいのか
 『いじけてるわね あははははは 駄目よいじけちゃ じじむさい
 から あははははは』
 『なにしてるんだ? あいかちゃんはなにを作ってるんだ?』
  娘は答えずに砂をこねる 大小いくらかの砂団子が並んでいるの
 は一体なんの遊びだろう 俺はしゃがんで眺める
 『パパが来ないと始まらないらしいわよ ね? あいかちゃん?』
 『そうだよ はい! これ‥‥』
  あいかは小さい砂団子を差しだす 上目使いでニヤリとしている
 のは曖昧で僅かに淫靡 なんだろう少し戸惑う
 『食べるのか? パパの分を作ってくれたわけ? ほう』
 『あはははは 半分正解ね 食べられるかどうか試して欲しいのよ
 パパさんの役目よ あはははははは』
 『‥‥食べてくれる?』

  まなみとあいかは同じ表情で俺を見つめる 少し考えて俺は納得
 した つまりはこういうことなのだろう 部外者ならそれでも構わ
 ない 毒味役ってのは命懸けの仕事なのだ

  じっと砂団子を眺めて そして口の中に放り込んだ




             》 しびる 《
+++++++++++++++++++++++++++++++
(のりこ)>そーちゃん若いですねえ いまはおじいちゃんなのに
(しびる)>そうだな そろそろサイクルの時期かね
(のりこ)>サイクル?
posted by 篠原しびる at 17:24| シンガポール ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 連作系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

連作04 戯連作25 鳥居をくぐれば

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 種別 連作系第04期 戯連作25
 題名 『 鳥居をくぐれば 』
 初出 ニフティサーブ/FJAMEA/18番会議室
    1995年05月11日01時29分
 注釈 行頭スペース+30W
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SUBJ:【戯連作】25 鳥居をくぐれば

 Sibi Temperate V.4.1 (space+30words)

 有無を言わせず世界の果てまで 戯連作 #25(短編)




         『 鳥居をくぐれば 』


                        作:しびる





  時間のわりに空いている電車 工事中の駅に降り立ったのは午後
 6時を過ぎていた 夕焼けの茜色は消え去り 周囲は濃い青色に染
 め抜かれていた 妙になま暖かい5月の初旬
  同じく降り立った数名の乗客とともに改札を過ぎる 駅前は寂れ
 た商店街 点滅する街灯が狭い道路を照らしだす 夕食時なのだろ
 うが商店街にはほとんど人影が見えない
  シャッターの閉じられた商店の前を歩く 日用品よりも外食や土
 産物を売る店が多い
  少し前方に明りが漏れている 到達する前に慌ただしく閉じられ
 る 通り過ぎる一瞬に店主と視線が絡む まるで睨み付けるような
 冷たい一瞥 排他的よりはむしろ恐怖に近い感覚 道路上には誰も
 いなくなった

  勤務中に届いた一本の電話 内容は業務連絡 人員の配置要請で
 あったが 詳細に調べればでたらめな内容であることはすぐに判明
 する つまりは個人宛の仕事の依頼 だからこんな所を歩いている
  見知らぬ街並みだが それはいつも同じことだ

  商店街を抜けて石畳を歩く 両脇は朱色の木塀 等間隔に石灯篭
 が並ぶ 足元が玉砂利になったところで行き当たる 折れ曲がると
 巨大な鳥居が聳えていた 暗闇に浮かび上がる赤い鳥居
  市街地から離れた神社 太古はその存在すらも隔離していた領域
 は 現在では猥雑な商業主義に包囲され しかし確固として巨大な
 山を完全に自らの領土として君臨していた この鳥居は結界である
  分社数万の頂点として 神社の放つ威光は鳥居の大きさに象徴さ
 れていた
  深く息を吸って鳥居をくぐる 一瞬無数の視線が皮膚に突き刺さ
 る 睨み返すとざわめきを残し気配が消えた
 『馬鹿なことは辞める方が良い』
  薄暗闇の中に老人が佇む 殺気を感じないが僅かに緊張する
 『忠告は聞いておこう』と一瞥もせず答える『信教の自由だ 構わ
 ないでもらおう』
  老人が何について話しているのか この時間に神社を訪れる者は
 多いのだろう
  神聖であることはまた邪悪であることも内包する 本来神社は魔
 を封じ込めるために設置されている 信仰は付加的であり正邪の区
 別は観点の方向によってのみ規定される
  踏み砕かれた玉砂利を踏み締める 煌々と照らされた社屋の脇に
 参道を覆って無数の鳥居が並ぶ 御神体は遥か山上の社屋に安置さ
 れているのだ 目的はその山中にある

  いつからだったか 周囲との違和感は気がつけば身体に備わって
 いた 神秘的とも神聖なものとも感じていなかった ただ違和感だ
 けが心を支配していた それは今も変わらない
  違うのは目的意識 違和感とはつまり個性だ 方向を定める行為
 は職業であっても信仰であっても構わない

  広い参道は緩やかな傾斜で頂上を目指す 計算された間隔で樹齢
 数百年の大木が聳える 石段と同じ数だけ鳥居が並ぶ 赤い鳥居を
 淡い青色の照明が浮かび上がらせる 吹き下ろす風に僅かの異臭が
 混ざる
  彼方まで続く参道は強力な照明によって日中よりも明るいのだろ
 うか 人間の気配を感じさせない参道に染のように黒い点が見える
 人影だろう僅かに蠢いている
  警戒心に肌が鳥立つ しかし肉体はリラックスしていた 歩調を
 変えず確実に石段を踏む 緊張を悟られては元も子もない 任務と
 いうよりはむしろ宿命 取り逃がすことは許されない
  数百メートル先の染はこちらを見つめている 視線だけが増幅さ
 れて感知される 淫靡な感情それは愛情と同等のものだ 異臭の原
 因は強烈な感情の具象化だろう
  視線を逸らさず歩き続ける 染が年配の女性であることが判別で
 きた頃 あからさまな結界が身体を襲う 感知している素振りを見
 せず僅かに顔を歪ませる
 『金はいらぬ 誰も見ておらぬ』
  女の前で立ち止まる 曖昧な笑顔を無理に作る 背の低い女も微
 笑んでいた
 『聞いてきた』と答える『早く済ませてくれないか 場所を替える
 のかそれとも』
 『恥じるなら帰れば良い 時間は掛からぬ おぬし次第じゃて』
  そう言って女は顔を歪ませる 笑顔であることがわかるには少し
 の時間が必要だ 歯のない口が開かれて不気味な嗚咽が漏れていた
  奇妙な間合いの後に女はその場にしゃがみ込む 身動きせずにそ
 の姿を眺めていた
  女は股間をまさぐり始めた 能力を見切るためにするに任せる

  暖かい日差しの下 賑やかな喧噪の中 暗い世界が重複して見え
 た 違和感が最高潮に達したとき為すべき方向が完全に理解できた
  エクソシストか祈祷師か 同化して消去する方法論はむしろ精神
 科の医師に似た行為だ 消し去ることの正邪は関係がない

  女は陰部をくわえ込んでいた 小刻みに蠢く感触に思わず体が反
 応する それを知って女が微笑む 前後するリズムが徐々に早くな
 る 女は何かつぶやいていた
  性欲を処理する女の噂 深夜の神社に出没するその存在は複数の
 人間の前には現れなかった 治安維持のために巡回する作業員もま
 たその存在を確認できなかった
  しかし噂は確実に広がる まるで正体のない都市伝説のように女
 の噂は半ば怪談のように語られていた 先程の老人はどれだけの若
 者に声を掛けたのだろうか その中の数割りは再び下山することは
 なかったのだ
 『‥‥‥‥‥‥』
  女の嗚咽の内容は聞き取れない 結界内の威圧感が増幅する 意
 識を集中して嗚咽を解読する 聞くのではなくて感じ取る作業だ
  風もないのに周囲の樹木がざわめく それに呼応して淫靡な快感
 が高まる そして女の嗚咽が理解できた
  女は我が子の名前を呼んでいた 声ではなく波動で感じる 女の
 意識の中には母性愛と劣情が混在していた 徐々に結界が縮小して
 ゆく このままでは取り込まれ逃れることができなくなるだろう
  おそらく葛藤かもしくは狂気か 女の魂は劣情の中に暗黒の空間
 を形成してしまっていた 無限に満たされない欲望に取り込まれ何
 人の若者が虚空へと消えたのか
  結界は限界まで収縮していた 女の表情も快感に歪む 肌に感じ
 る感情はやはり既に狂気であった 女の姿もまた既に人間の形を留
 めていなかった これは魔物だ
  陰部をむしゃぶる魔物は邪悪な瞳で睨み付ける この期に及んで
 感付いたのか それでも反復運動は継続されていた 女は劣情の虜
 なのだ

  強烈な感情の具象化 それはシンプルなエネルギーの集合体であ
 る 感知できぬ人間には圧倒的な存在であるが 消去するためには
 扱いやすいタイプでもある
  要は方向を変えてやればよい 盲目な愛情や鬼神と化した憎しみ
 それらは普く人間に内在するもの 中和するのは容易いことだ

  タイミングを計る 快感の高まりに合わせて呪文を唱える 呪文
 は手段でしかない 女もまた絶頂を迎えようとしていた
  絶頂が合図なのだろう 波長の合った人間は女の世界に飲み込ま
 れる それは消去の合図でもある
  絶頂を迎えながら精神を同化させる 真黒の感情に潜り込みなが
 ら最期の言葉をつぶやいた
 『すべて理解した‥‥‥‥母さん‥‥』
  女の求めていた最期の言葉 そして一気に精神を解放する 淡く
 輝いた女の姿は なにも残さず消え去った
  まるで何事もなかったかのように 涼しい風が麓から吹き上がる
 これでこの山腹には女は現れないだろう 噂もまた自然消滅するだ
 ろう

  再び歩き始めて山頂を目指す 最後の鳥居をくぐればこの件も解
 決というわけだ




             》 しびる 《
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(のりこ)>いけませんねえ こーゆーお話は
(しびる)>だわな もう書かない
posted by 篠原しびる at 17:23| シンガポール ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 連作系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

連作04 戯連作24 悲しみ

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 種別 連作系第04期 戯連作24
 題名 『 悲しみ 』
 初出 ニフティサーブ/FJAMEA/18番会議室
    1995年05月05日02時16分
 注釈 行頭スペース+30W
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SUBJ:【戯連作】24 悲しみ

 Sibi Temperate V.4.1 (space+30words)

 有無を言わせず世界の果てまで 戯連作 #24(短編)




           『 悲しみ 』


                        作:しびる





  人混みの中を歩く 午前中に上がった雨が人々の体臭に変化する
 ポケットに手を突っ込んで 少し前のめりになりながら歩く 流れ
 に逆らって 歩調を会わせず 隙間を縫うように歩く 赤信号に飛
 びだし クラクションに鼻白らむ
  ずっと歩き続けて建物に行きあたる 右に折れて水溜を歩く 濡
 れるのも構わずに肩を振る 路上の看板を蹴飛ばし足を取られる
  よろめいて手をつく 少し切れて血が流れる その場に座り込ん
 で そして泣き続けた
  大きな声をだして いつまでもずっと泣き続けた

  なにが悲しいのか

  私の存在は悲しみだ 私の体は悲しみの粒子だけでかたちづくら
 れている 悲しみは孤独 悲しみは哀愁 悲しみは優しさ 悲しみ
 は愛情 悲しみは両親の存在 悲しみは記憶 悲しみは生活 悲し
 みは憤り 悲しみは私が生きていること
  絶対的な悲しみは負の剰算も無効にする 裏の裏は裏でしかない
 どこまで裏返しても悲しみ以外現れない 死ぬこともまた悲しみし
 か生みださない なにをすることも悲しみ なにもしないことも悲
 しみ 自己矛盾を飲み込んで覆い被さる悲しみ
  いっそ狂えればいいのに 狂えずに泣き続けた

  なにが悲しいのか

  青く澄み切った空 可能性を秘めて横たわる将来 周囲からの愛
 情 健康な体 信頼 友情 慈しみ 労り 心 私の存在
  すべての曖昧な そして確固とした状況の中で なにに悲しみな
 にを悲しむのか 遥か過去 過去 昨日 現在 明日 未来 遥か
 未来 とても曖昧な そして確固とした悲しみ
  誰からも愛されることは誰も愛せないことの裏返し
  誰からも信頼されることは誰も信頼できないことの裏返し
  すべての楽しみはすべての悲しみの裏返し
  裏返せ裏返し裏返しても裏なのだ

  すべてが幸福に包まれていた私のすべては ある瞬間に裏がえっ
 た なにもかもが辛く重く そして悲しみに包まれていた
  これは心の病気だ 明が暗になるように 陽が陰になるように
 世界中の裏側しか見えない 見たくもない見なければならない見え
 てしまう見るしかないのだ
  妬み 嫉み 憎悪 嫌悪 羞恥心 猜疑心 怒り 憤り それら
 を許せない私の存在 その存在すらも黙認している悲しみ 悲しん
 でいることも耐えることができない脆弱さ 死んでしまいたい 死
 にたい 消えてしまいたい 元から存在していなかったように記憶
 すらも残さぬように 自分を飲み込んで丸くなって点になって最後
 には点すらも消え去って 誰もいないところ自分すらいないところ
  悲しんでいたことを消して 自分も消して 消えたことも消えて
 どうして私はいるんだろう 消えることも悲しみなのに

  座り込んで泣き続けた 大きな声をだして髪の毛を掴んで 鼻水
 を流して血を吐いて いつまでも泣き続けた
  だめだいやだやめてたすけてかえしてはなしてわすれてみないで
 もどしてなおしてだめいやだにらまないでみつめないでとらないで
 かえらないでつれていかないでいやだ いやなんだから

  なにが悲しいのか

  なにがかなしいのか なぜかなしいのか どうして どうしてか
 なしいのか どうして なぜなのかしら かなしみってなんだろう
 かなしむわたし わたしはなんだろう かなしみがわたしのそんざ
 いなら わたしはなんだろう わたしはなんだろう わたし

  すっとわたしがかわった いろのかわるねんどのように にぎっ
 てはなすてくびのように すっとわたしがかわった
  すっと私が変わった なにがなんだかわからない 考えがまとま
 らない 周囲を見渡してもなにも存在していなかった 真っ白な世
 界 気でも狂ったのか 悲しくはなかった
  人々のざわめきが聞こえる ふわふわとして捕らえどころのない
 感覚 私は死んだのか 悲しくはなかった
  これまでの記憶これからの計画 すべてが鮮明で曖昧で 思考が
 一点に定まらない 流れてゆく流されてゆく 神にでもなったのか
 悲しくはなかった
  すっと意識が遠のき そして消えた

  なにが悲しいのか

  わたしは建物を後にした 周囲には瓦礫だけが風に曝されていた
 頭部に付着する端子を剥ぎ取り歩き続けた 最後の役目を終えた建
 物も瓦礫と化した 既になにも残っていなかった この世界には私
 だけが佇んでいた
  世界の最後のひとり 私が自我に芽生えたときには世界のすべて
 が失われていた 膨大な情報と共に私は暮らした すべては過去の
 記憶であり すべては最初から失われていたものだ 私はすべての
 感情を共有し鑑賞した
  そしてすべての情報を吐きだした建物は瓦礫と化した 私はすべ
 てを納得して歩き続けた

  なにが悲しいのか

  なにも悲しくはなかった 最後に残された悲しみすらも 既に失
 われて久しかった

  ただそれだけだ なにも悲しくはない




             》 しびる 《
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(のりこ)>なにが悲しいですか
(しびる)>なにが悲しいかね 孤独自体は悲しみじゃなし
(のりこ)>ふうん
posted by 篠原しびる at 17:22| シンガポール ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 連作系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

連作04 戯連作21 inedible frogs

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 種別 連作系第04期 戯連作21
 題名 『 inedible frogs 』
 初出 ニフティサーブ/FJAMEA/18番会議室
    1995年04月30日02時16分
 注釈 行頭スペース+30W
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SUBJ:【戯連作】21 inedible frogs

 Sibi Temperate V.4.1 (space+30words)

 有無を言わせず世界の果てまで 戯連作 #21(短編)




          『 inedible frogs 』


                        作:しびる





  非常に小型な種類である 主な生息地は南米大陸の大西洋岸地域
 存在が確認されたのは3年前であり 学名はナナノリウムヘクタリ
 スリアピア 俗名の邦訳は『死霊を蘇らせる秘薬』 学名のリアピ
 アは(reappear【再現する】)からの引用である
  産卵から20時間あまりで孵化し 完全体にまで変態するのには
 丸3日掛からない カエル科の生物には珍しく 柑橘類種の限られ
 た種類の果実のみを食し 発生および産卵は果実の結実時期に同期
 して多発する 最近の報告では結実時期以外には成体はおろか卵体
 での存在も確認されない まったく謎に満ちた種類である

 『この程度の資料しかないのか? 写真はまるでモザイク処理だし
 スケッチなんぞは子供の落書きだ』
  真っ白な広い部屋には事務机が2台 新設された両生類課蛙科科
 には科員が2名 俺以外には部下がひとり
 『部のデータベースには登録されていませんから 現地の研究者に
 依頼しました イラストは彼の手書きです』
 『政府のシステムにアクセスできるのは何時からだ? 時間が掛か
 るのなら非常モードを発令しても構わん』
  部下は容姿端麗な女性である 勿論だが秀才でもある 俺が手に
 している資料は彼女が翻訳したものだ 原文に記されている言語を
 日常的に使用している人類は 地球上には500名程度しかいない
 『あと5分少々です 発令いたしましょうか?』
 『それならば必要はないだろう』俺は立ち上がり窓の外を眺めた『
 発足早々に問題を起こすこともないからな』

  正式名称は検疫省脊髄動物調査部両生類課蛙科科 俺が所属する
 脊髄動物調査部は海外からの害的生物の検疫を任務としている部署
 なのだ
  旧来は植物や少数の昆虫類を検疫していた検疫省だが 10年来
 の対外通貨レートの高沸が海外輸入を爆発的に増加させ それに伴
 った害的生物の入国は ただでさえ貧弱な自国農業や場合によって
 は国民の健康自体をも危険に曝していた
  必然的に検疫省の機能拡大が行われたのだ 各調査係は現在も増
 加している 地球上は危険な生物に溢れていたのであった

 『繋がりました』滑らかなキー入力の合間に彼女が報告する『クロ
 ツブガエルを検索します』
  彼女の報告を確認する間もなく 俺のデスクに設置された端末に
 鮮明な写真が表示される
 『邦名の方がわかりやすいな 肉眼では米粒だ 確かに間違って食
 うこともあるかもしれんな』
 『産卵可能な成体で体長2ミリです 卵体は肉眼では確認できませ
 ん』
 『確認できぬとも構わん 駆除できればいいのだ』俺は写真から彼
 女に視線を移す『関連文献を調査してくれ』

  南米から輸入されるオレンジの一種 名称はニゲラズッパ 紫色
 の酸味のきつい果物だ 産出国では見向きもされなかった果物なの
 だが 昨年暮からの酸味ブームに乗って輸入量は月次で200%の
 伸びである
  それと平行して発生した奇病 その原因がニゲラズッパを主食と
 するクロツブガエルではないかという仮説が報告されたのが先日の
 こと 任務はいつも突然に訪れる 原因が蛙なら俺の科の仕事なの
 だろう
  秘密に告白するが 俺は先日までニゲラズッパの存在自体知らな
 かったのだ 輸入食物の名前なぞ逐一覚えていられるもんか

 『ロスの州立両生類研究所の資料です』彼女はこちらを見ずに話す
 『タイトルは 古代宗教に於けるスピリットラッピングの考察』
 『そのスピリットなんとかと言うのは何者だ?』
  俺は横文字が苦手だ 彼女の配置は適材適所である
 『降神術 地域によっては降霊術とも表現します 口寄せの類だと
 ご理解ください』
 『なるほどイタコだな それとクロツブガエルが関係するのか?』
  先程の資料ではなにやら死霊がどうとかと書いてあったが どう
 もよくわからない
 『資料によりますと』彼女は画面表示を解説する 俺には判読でき
 ないからだ『土着宗教ではクロツブガエルが霊媒として使用されて
 いたそうです』
 『幻覚作用でもあるのだろうか その辺のことは記されていないの
 か?』
 『綿密な調査が行われたようですね しかし該当するような物質は
 発見されなかったようです あ 別の資料が検出されました』
  画面表示はまたもや横文字だ 英語ではなさそうだし それ以外
 なら一文字すら読むことはできない
 『ニゲラズッパに関するものです 少々お待ちください』彼女のデ
 スクからけたたましいキー入力が聞こえる『ニゲラズッパの主成分
 表とクロツブガエルの内臓分泌液の組成表です』
  画面にはようやく判読できる文字が並ぶ 俺は画面を凝視した
 『これがなにか おお!』俺は思わず声をあげた『どうしてこんな
 危険なものを放置しているのだ?』

  俺が学生時代に専攻したのは有機化学 ニゲラズッパとクロツブ
 ガエルを単独で観察しても問題はない しかし双方の成分を混合す
 れば人体には有害な物質が精製される
  この事実が確認されたのは史上初だろう だがよく考えればニゲ
 ラズッパなぞを食すのは この国の人間だけであろう 必要がなか
 っただけかもしれない

 『演算結果がでました』彼女はあくまでも冷静に話す『ニゲラズッ
 パ1個とクロツブガエル1匹の混合シュミレーションです』
 『ふむ 表示してくれ』
 『概算値で200万マウスユニット 致死量ですね』
  1マウスユニットは体重20グラムのマウスを15分で死亡させ
 る毒物量だ 普段なら4MUで出荷規制の対象になる 検疫省で慣
 例的に使用する単位である
 『食えば即死だな なるほどな』俺は再び立ち上がる『早速上層部
 へ報告しなければならんだろう』
 『報告書は作成いたします』彼女は俺の方を一瞥する 今日は初め
 てのことだ『それだけでよろしいのですか?』
  彼女の言わんとすることは理解できた しかし俺の仕事は輸入物
 の危険度を判別することにある クロツブガエルが人体に有害な生
 物である その事実は判明したのだ
  それ以上の任務は課せられていない
 『ああ それだけで構わん 報告書ができ上がれば目を通そう』
 『わかりました』

  彼女は再び視線を戻す それと同時に小気味の良い入力音が響き
 始める すぐに報告書はでき上がるだろう
  俺は窓の外を眺めた そして天気の良い空から地上に視線を異動
 させる 地上には人が溢れていた 本来なら立ち入ってはならぬ検
 疫省の敷地内 その場所にも人間が徘徊していた
  爆発的に増加した病人の群れ 一度死亡した人間は再び起き上が
 り 生前の意識を失い人々を襲っていた 亡者の群れは国中を占領
 しつつあったのだ
  毒物以上のなにが存在するのか 俺には関係のないことであった
 有害ならそれだけのこと あとはどこかで調べればよい

 『よく洗ってから食べなかったのかなぁ』
  俺はぽつりとつぶやいた




             》 しびる 《
+++++++++++++++++++++++++++++++
(のりこ)>ニゲラズッパとナナノリウムヘクタリスリアピア(邦名
      クロツブガエル)ですか こゆの好きですね
(しびる)>好きだねえ インチキSFの醍醐味じゃん
(のりこ)>つまり酸っぱくて誰も食べないような果実がグルメブー
      ムで輸入されて それに寄生する小さなカエルが原因で
      人々がゾンビ化して人々を襲ってるってことですね
(しびる)>文脈わかりにくいか? オチまで引っぱる手法はリズム
      が難しいんだよな もうちょい平易な展開がいいかな
(のりこ)>うんまあ 一読ではわかりにくい人がいるかも?
(しびる)>まだまだ修行が足りないよねえ
posted by 篠原しびる at 17:22| シンガポール ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 連作系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

連作04 戯連作23 YEAH!

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 種別 連作系第04期 戯連作23
 題名 『 YEAH! 』
 初出 ニフティサーブ/FJAMEA/18番会議室
    1995年05月03日03時08分
 注釈 行頭スペース+30W
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SUBJ:【戯連作】23 YEAH!

 Sibi Temperate V.4.1 (space+30words)

 有無を言わせず世界の果てまで 戯連作 #23(短編)




          『 YEAH! 』


                        作:しびる





  なにか夢を見ていたみたい 男の人がいたような感じが残ってい
 る 楽しくてそして少し悲しい夢の残像 ずっと昔に体験したよう
 な途方もないような感覚
  続きを見たいなと思っていた ふかふかのまくらに顔をうずめて
 いつまでも微睡んで ぼんやりとぐずぐずと

 『‥‥! ‥‥よ!』
 『ふにゃ?』
  なにかの物音に意識が引き戻される 夢と現実の区別がつかない
 『‥‥くださいよ! ゆみりさん 起きてくださいよ!』と叫んで
 いるのはマネージャーの内藤さんだ『時間がないです 早く起きて
 ください』
 『ふにゃあ 眠いもん ゆみりは起きないもーん むう』
 『9時までにスタジオ入りなんです もう8時過ぎてますよ』
 『やあやあ キャンセルだよん ゆみりは眠いもん』
  そうは言ってもお仕事だ 起きないわけにはいかないだろう
 『お願いですよ ゆみりさんはいいでしょうけど社長に叱られるの
 は私なんですから この仕事をクビになれば妻と娘が路頭に迷うこ
 とに‥‥』
 『えへへへ おはよう』
  さっさと着替えてドアを開ける 最近の内藤さんはすぐに泣きが
 入るんだから
 『なんですか 起きてたんですね‥‥急ぎましょう時間がないです
 今日の予定は車の中で説明します』
 『シャワー浴びたいんだけど』
 『駄目です』内藤さんは先に歩きだす『わがまま言うのなら少しは
 早く起きてください』
 『ぶうぶう 内藤さんは冷たいよ そんなことなら若い子にはもて
 ないよ 女の子のわがままは聞くもんだね』
 『妻がおりますので結構です 急ぎましょう』
  あたしは欠伸をしながら内藤さんの後ろを歩く そういえば今日
 の内藤さんは昨日と同じネクタイだ 家には帰ってないのだろうか

  あたしの仕事はいわゆるアイドル 年齢は17歳 性別は当然女
 の子 デビューしてから1年と3カ月 シングルが20枚にアルバ
 ムが3枚 自分で言うのもアレだけどヘタクソな歌がよく売れるも
 んだわ どのディスクも業界の記録を塗り替えているそうだ
  毎日仕事で忙しいけど アイドル稼業も悪くない なにをやって
 も面白いから そんな時期だってのは自分でも知ってる

 『9時には間に合いませんね』内藤さんは運転しながら喋る『予定
 は順送りにしましょう 昼食は移動中になりますね』
 『だあだあ 朝御飯も食べてないのにぃ』
 『撮りの間に済ませてください 10時から新曲の打ち合わせです
 それからインクイのジャケット撮影です』
 『アレは一昨日撮ったじゃない?』と不満を漏らす『同じことをす
 るのは嫌だな それにカメラマンの人が変だし』
 『我慢してください 社長からNGがでました』と内藤さん『かわ
 いくないそうです‥‥この前の写真』
  車は渋滞に捕まっているみたい いつになく混雑している
 『進まないね 順送りなら最後の予定はなくなっちゃうよ』
 『仕事はなくならないです それにですね‥‥』と内藤さんは振り
 返る『‥‥最後の仕事だけは なにがなんでもなくなりません』
 『ふーん なんでもいいけれどね ジャケットだけは社長に苦情を
 言おう かわいくないなんてのは問題だもん』
 『無駄ですよ あははは わがままな人ですから』
  それからスタジオに到着したのは9時を20分も過ぎていた

  内容はよくわからなかったけれどテレビ番組で新曲を歌った そ
 れからすぐに本社で次の曲のデモテープを受け取った 社長には会
 えなかったけれどメッセージは残しておいた そしてまたすぐに1
 8区のスタジオでジャケット撮影 水着になるのは恥ずかしかった
 けれど まあお仕事だから仕方がないか
  ちなみに昼食は内藤さんの運転する車の中 1時からはトーク番
 組の録画だった すんごく忙しい 未成年の仕事量じゃないぞ 責
 任者でてこいって感じかしら

 『現場責任者は誰でしょうか?』
 『プロデューサーは対応に追われています お話は私が聞きましょ
 う‥‥チーフディレクターの槙原です』
  あたしは長い時間待たされていた いつまで待っても収録は始ま
 らない 内藤さんは誰かと議論しているみたいだ
 『とにかく押してるんです 別撮りで編集していただけませんか』
 『どうしたの? 始まんないの?』
 『あ ゆみりさん すみません‥‥キムさんが遅れているんですよ
 渋滞に巻き込まれているみたいでして‥‥』
  キムさんってのは番組司会の木村さん あたしも渋滞に巻き込ま
 れて辟易だったから 仕方がないんじゃないかしら
 『仕方がないじゃ済みませんよ ゆみりはこの後も予定があるので
 すから あと30分待って駄目でしたら』と内藤さんは少し怒って
 いる『後日に延期していただきます 構いませんね?』
 『ゆみりなら待つよ? キムさんとの対談は楽しみだから』
 『駄目です この後の予定は外せません』
  ウチの事務所が勝ち気なのは あたしが売れているからだろうな
 『とにかく準備してください この調子なら直行しなければならな
 いかもしれません』
 『‥‥どこに直行するの?』と尋ねる『そういえば最後の仕事は聞
 いてなかったよ』
 『連邦軍の総司令部に向かいます』
 『ほえ? 一日司令官でもするの? 変な仕事だね』
  あたしが驚いていると内藤さんは真顔で話した よく考えると真
 顔以外の内藤さんは見たことがない 生真面目な人だな
 『始球式のようなものです あ‥‥プロデューサーの落合さんです
 ね‥‥』
  内藤さんは詳しく説明せずに立ち去った なんだろう始球式って
 のは ビームボールの始球式ならやったことがあるけれど ふむ連
 邦軍とはこの業界も奥が深いな

  軌道エレベーターは好きじゃない 高い所が苦手ってのは今更な
 んだけど この重力の感覚が嫌いなんだ
 『うへぇ 気分が悪いよ』
 『我慢してください 地上からだと画像が荒れるんです』
  広い室内にはあたしと内藤さん それに軍服を着た男の人がひと
 り さっきから黙っているけれど話し掛けちゃいけないのかな
 『さっきさ』とひそひそ声『始球式って話してたよね? なんか試
 合でもあるの?』
 『少しは世情の勉強もしてください 社長も話していましたでしょ
 う? スクールでは必須なんですから』
 『ゆみりは特待生だからスクールなんて関係ないもん きゃは 純
 真爛漫が売りなんだからねぇ』
 『渋滞の原因も間接的にはゆみりさんにあるんですよ』
 『構いませんでしょうか?』
  突然軍服の人が声をだす 格好の割りには女の子みたいな声だな
 『どうかしましたか?』
 『お仕事中に失礼いたしますが‥‥サインを頂けませんでしょうか
 自分はゆみりさんのファンであります』
 『きゃはは ゆみりのファンの人だあ サインなら構わないよん』
 『恐縮であります!』
  あたしは軍服の人にサインをしてあげた こんな所にもファンの
 目があるなんて油断できない仕事である
  結局始球式の話は聞けずに到着した 最上階は宇宙空間らしい

  連行されたのは いやいや違うな通されたのはかなり広いところ
 巨大なモニターが壁中に広がり 学校の体育館ぐらいのところに数
 百人の軍服の人がいる
  ここが連邦軍の総司令部なのだろうか ライブでもやりたい気分
 になるのはキャパのせいだな
 『お待ちしておりました 連邦総司令部提督の都築と申します』
 『ゆみりだよ』と馴れ合ってみる『もっと怖い人かなって思ってた
 のに 楽しそうなおじさんですね きゃは』
 『どうも ZAP企画の内藤です』
 『ご足労頂いて恐縮ですな 勝手な依頼を快諾いただけて‥‥士気
 も上がろうというものです』
 『来期の新機種のCFに採用してくださると伺っておりますのでね
 デモとしては格好のイベントですよ この業界も慢性的な過当競争
 でして』
  提督と内藤さんは難しい話を始めてしまった あたしが主賓じゃ
 ないのか いったいなんの仕事だろう
 『ゆみりはなにをすればいいのかな?』と痺れを切らす『サイン会
 なら色紙でも買ってこようか? ぶう』
 『わはは サイン会は後程お願いしたいですな 早速説明いたしま
 しょう‥‥こちらへ』
  普通ならこんな仕事は部下の人がやるんじゃないのかな 提督自
 ら説明してくれるなんて これじゃまるで
 『実のところ私はゆみりさんのファンでしてな わがままを通すの
 も提督の特権のひとつでありますな ご覧ください』
 『わあお! すんごいぞ!』
  高台に登ると室内が一望できる 巨大なモニターが全部こちらを
 向いているのだ それだけでもかなりの壮観なのだけど 画面の中
 身はもっと凄かった
 『連邦軍の85%が集結しておるのです 旗艦だけでも2万艦以上
 巡洋艦クラスなら100万は越えておるでしょうな わはははは』
 『観客としては申し分がないです』
  内藤さんは冷静だけどあたしは凄く興奮していた サイン会なら
 1万年ぐらいは掛かるぞ 歌うのかな
 『それでゆみりはなにをするの?』
 『ニュースなんか見てませんね? 連邦軍の出陣式ですよ ゆみり
 さんは新曲を歌ってMCをこなすのがお仕事です』
 『軍人にはゆみりさんのファンが多いですからな 詰まらん仕事で
 しょうが我慢してやってください』と提督さんは頭を下げる『すべ
 ての艦でモニターしております』
 『なんだって構わないもん! 照明はあるかな? カメラは何台?
 用意がいいならすぐに始めるよーん!』

  ライブはノリが命 あたしの鼓動に会わせてみんなが動かなきゃ
 いけない その点では合格だな 観客だってスタッフだってあたし
 がみんな仕切っちゃうんだ 真っ暗な中にあたしだけライトアップ
 『ひゃっほう! みんな総立ちだあ!』テンションを上げてジャン
 プ『最初の歌は新曲だよ! インファントクイーン!』
  足が地面に着いた瞬間 間を置かずに音楽が流れる ここのスタ
 ッフは良い仕事をしている 調子に乗って2メロを間違えた
 『‥‥愛想笑いじゃゆっるさーない! イエーイ!』
  モニターにはさっき撮り直した写真が写ってる こんなところで
 使うとはな 水着の写真はやはり恥ずかしいもんだ
 『そんなわけで ゆみりが参上だあ! ひゃっほう!』
  聞こえては来ないがどよめきが肌に伝わる テレビじゃこの感覚
 は楽しめない やはりライブだ一気に煽ってやるわよ
  MCを始めた途端 あたしの目の前にセットが盛り上がる その
 上には赤いリボンを施した大きなボタンがついている 内藤さんが
 言っていた始球式のボタンだろうか
 『なんだなんだ ゆみりになにかの責任を取らせるのかあ?』とお
 どけてみせる『提督さんは責任回避だ いくわよーん!』
  笑いながら一気にボタンを殴りつける すると鈍い機械音 モニ
 ター上に閃光が輝く なにかの発射ボタンだったのだろうか
  あたしは馬鹿笑いしながら2曲目を歌い始めた

 『お疲れさま』と内藤さんが帰りの車の中で『あんな慰労会なてフ
 ケても構わなかったんだよ』
 『提督さんが面白い人だったから ゆみりのファンサービスだよ』
 『断れない仕事だからね 連邦の新型機SSVのCFが掛かってい
 るからね そうだゆみりさん』
 『ふにゃ? なんだか眠いよ』
 『少し眠ってても構いませんよ‥‥それでね 社長は黙っていろっ
 て口止めされてるんですが CF撮影はアクリノール星系で‥‥』
  急に眠くなって内藤さんの言葉は最後まで聞けなかった 毎日忙
 しいから最近疲れているんだな すぐに眠くなる
  覚えていないけど内藤さんがマンションまで運んでくれたらしい

  車の中でもなにか夢を見ていたような気がするけれど あまり覚
 えていないや とにかくは明日も仕事なんだな ゆっくり眠るのも
 アイドルの仕事だ
  きっとそうだよね ふむ





             》 しびる 《
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(のりこ)>銀河アイドルのゆみりちゃん登場の巻ですね それとい
      ま気が付きましたけど『星の記憶』だかで 大艦隊が消
      滅したってクダリ あれって この艦隊ですか
(しびる)>そうだけど 打ち合わせしてなかったか? あの当時
(のりこ)>聞いてましたっけ? それとアクリノール星系はゆみり
      ちゃんが幽閉される例の撮影現場ですか
(しびる)>そうだけど 打ち合わせしただろ それも
(のりこ)>はあ もう10年も前のことですし
posted by 篠原しびる at 17:21| シンガポール ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 連作系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

連作04 戯連作22 家族オプション

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 種別 連作系第04期 戯連作22
 題名 『 家族オプション 』
 初出 ニフティサーブ/FJAMEA/18番会議室
    1995年05月02日00時29分
 注釈 行頭スペース+30W
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SUBJ:【戯連作】22 家族オプション

 Sibi Temperate V.4.1 (space+30words)

 有無を言わせず世界の果てまで 戯連作 #22(短編)




         『 家族オプション 』


                        作:しびる





  紙袋を抱えて歩道を歩く 夕暮れの風は頬に小気味よい 茜色の
 空を見上げてニヤリ 今日は金曜日なので明日は休日だ
  新興住宅街に夕餉の香りが漂う 歩くリズムが早くなる 角を曲
 がれば我が家が見えた

 『ただいま 買ってきたよーん』
  玄関のドアを開けて俺は叫んだ 美味しそうな臭いが鼻をくすぐ
 る 少しも待たずに妻が現れた
 『おかえんなさい どうしたのよ早いじゃないの』
 『電車1本早かったからな それはとにかく買ってきたぞよ』
 『買ってきたって』妻はエプロンで手を拭いながら覗き込む『高か
 ったでしょ 本当に買っちゃったの?』
  俺は靴を脱ぎながら胸を張る
 『120回均等払い 10年間のボーナスはこれに消える』
 『あややや 心の準備ができてないわよ なんだか恥ずかしいな』
 『とにかくは食事だ 腹が減っては云々だよな わはははははは』
  赤面している妻を他所に俺は豪快に馬鹿笑い なに俺だって恥ず
 かしいのだ しかし威厳は示さなければなんだろう
 『登録もしてきたの? まさか海賊版じゃないでしょうね』
 『なにを語るか 正真正銘の既製品だ 政府公認の純正品』
 『そうか』妻は上目使いで俺の肘を掴む『実家に連絡しなきゃねぇ
 ママも楽しみにしてるんだもん』
 『構わんが 後でな』
  少しむっとした態度を悟られまいか 俺は慌てて話題を替える
 『飯を食ったら早速実行だ』

  夕食の団欒はふたりっきり 結婚して5年になるが子供はいない
 慣れたようでも少し寂しい 妻に飽きたわけでもないし ましてや
 倦怠期ってわけでもない
  だが子供は必要だ この5年間話題に困ったことはないが 子供
 をネタに妻との会話 成長過程の楽しさ辛さ そして悦びや悲しみ
 考えるだけでもワクがムネムネ いや胸がワクワクするではないか
  妻も同じことを考えているのか 食卓の端に置かれた紙袋はふた
 りの会話をぎこちなくさせる

 『なんだ』俺は箸でハムを摘む『ペットを飼おうと言ってたな』
 『そうね そんな話もしてたわね』
 『アレは白紙で構わんだろう』
 『将来的には考えてよね』妻はカップのジュースを飲み干す『情操
 教育には有効なのよ あたしも昔 ネコを飼ってたもの』
 『しかし動物の体毛はアレルギーの元だな』
 『先に抗体検査をすればいいじゃない』
 『そりゃぁ』
  そこまで話して言葉を途切る なにかを話そうとして忘れてしま
 った どうも会話に集中できない
 『そのとおりだな』
 『それにね』妻は急に真顔になる『あなたの稼ぎじゃ二人目は望め
 ないから お友達としても大切でしょ?』
 『リアルな話題だな』
 『シビアな話題よ』
  先走りな話題なのは承知している しかし自然とそちら関係の展
 開になる 仕方がないのだ今日は特別な夜だから
 『さてと』俺は食事を終えた『飯は食ったな』
  それまで勝ち気に話していたのに 妻は途端に頬を赤らめる な
 んだかんだ言ってもかわいいものだ
 『だからね 心の準備ができてないのよ』
 『明日にするのか?』
 『そういうわけでもないけど 少し待ってよ』
 『無理矢理ってのもケレン味があって面白いかもな わはははは』
  俺は馬鹿笑いしながら紙袋を掴んだ 妻は頬を赤らめてモジモジ
 している
 『本当にいいの? 変更はできないのよ』
 『構うもんか 高価な買い物だったんだからな』俺は我慢の限界だ
 った『俺の子供を産ませてやるううう‥‥』


 『‥‥うううう なにするんだよ』
  俺の肩の上に妻の頭が乗っている なんだか良い臭いがする
 『また下らないもの買ってきて 高かったんでしょ?』
 『下らないってなんだよ 家族オプションは入手が困難なんだぞ』
  俺は画面に向かっていた 画面の中には先程までの団欒が展開し
 ていた
 『子供を買ってくるってのは問題があるんじゃないの?』妻は頭を
 グリグリ動かす『まるで人身売買じゃない』
 『違うぜ お前が生むんじゃないか』
 『それまではないの?』
  妻は俺の耳を噛んだ なんだかくすぐったい
 『それまでってなんだよ?』
 『だからさ』俺は俺の座るイスを回す『子作りの部分はないわけ』
 『ポルノソフトじゃないんだから』
  画面は俺の会話の入力状態で待機している なんならオートにし
 て眺めていても構わない そんな楽しみ方もある
 『つまんないの なにが楽しいんだか』
 『箱庭感覚だな わははははは この中のお前は素直だしな なに
 をしても法律には触れないし』
  俺は妻を抱き寄せた なにをしても法律に触れない それは現実
 世界でも同じことだ 夫婦間でなにをしても別に誰に叱られるわけ
 じゃなし 画面もこちらも同じことだ

  軟らかい体をまさぐりながら 俺は妻につぶやいた
 『ひょっとして この世界も箱庭だったりしてな』
 『あら 知らなかったの? うふふん』
 『やはりそうだったのか わはははははははは』
  馬鹿笑いしながら俺は妻の服を脱がしに掛かった なんだか毎日
 同じことをしているような気がしたが それはそれで構わない

  画面もそちらも同じことなのだ




             》 しびる 《
+++++++++++++++++++++++++++++++
(のりこ)>さっきのクロツブガエルからそうなんですけど シビテ
      ンのバージョンが4の1に上ってますね
(しびる)>うん 会話文の間にト書きを挟むって形式なんだけども
      そのうち廃止されたよな なんか馴染まないから
(のりこ)>ですね ちょい読みにくいですし
posted by 篠原しびる at 17:20| シンガポール ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 連作系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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